(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192303
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】復元可能な乾燥食肉加工品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/00 20160101AFI20170828BHJP
A23B 4/03 20060101ALI20170828BHJP
A23B 4/037 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
A23L13/00 A
A23B4/04 501B
A23B4/04 501C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-12619(P2013-12619)
(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公開番号】特開2014-143922(P2014-143922A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 護一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康明
(72)【発明者】
【氏名】田中 充
【審査官】
福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭54−080457(JP,A)
【文献】
特開平07−008224(JP,A)
【文献】
特開平06−277007(JP,A)
【文献】
特開2000−032956(JP,A)
【文献】
特開2000−069903(JP,A)
【文献】
特開2004−041041(JP,A)
【文献】
特開2012−000060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B 4/00−4/14
A23L 13/00−13/70
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食肉から脂身を分離し、当該脂身をペースト状又は粒状にして脂身加工品を得る工程、前記工程で得られた脂身加工品を前記脂身が分離された残りの食肉に層状に塗布する工程、及び、前記工程を経た食肉を真空凍結乾燥する工程、を含む、湯又は水により復元可能な真空凍結乾燥食肉加工品の製造方法。
【請求項2】
前記脂身加工品を前記脂身が分離された残りの食肉に層状に塗布する工程において、前記脂身加工品を、前記脂身が分離された残りの食肉に2層以上の多層状に塗布することを特徴とする請求項1記載の湯又は水により復元可能な真空凍結乾燥食肉加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯又は水により復元可能な乾燥食肉加工品に関する。また、本発明は、湯又は水により復元可能な乾燥食肉加工品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、湯又は水により復元することができる即席食品は、極めて簡便な方法により手軽に喫食できるため、さまざまな場面で大変親しまれている。このような即席食品には、種々の乾燥食品が用いられており、チャーシュー等の乾燥食肉加工品(いわゆる乾燥具材)も用いられている。
【0003】
このような乾燥食肉加工品は、湯又は水を注加し、3〜5分程度で復元することが手軽に喫食する上で好ましい。乾燥食肉加工品を所定の時間内に復元するためには、当該乾燥食肉加工品の大きさ(厚み)が重要である。
【0004】
当該乾燥食肉加工品の種類や製造方法によって多少の差異はあるが、加熱後の食肉を凍結し、凍結状態で減圧下にて乾燥する方法(いわゆる凍結乾燥法)を用いることで、5mm程度のものであれば3〜5分程度で復元することができる。しかしながら、この程度の大きさの乾燥食肉加工品であっても、脂身を有する場合、この脂身部分が十分に復元できなかった。すなわち、脂身を多く含んだ乾燥食肉加工品の復元はこれまで困難とされてきた。
全体の厚みが大きく、脂身を多く含む食肉系の具材が実現できれば、具材自体も味わうことができるような、肉らしい濃厚感とボリューム感のある即席食品を消費者に提供できるようになる。
【0005】
復元性を向上させる方法として、生肉に対して、砂糖含量が5重量%以上となるように砂糖溶液をインジェクションした後、加熱して得た肉を3mm以下の厚さにスライスして乾燥する乾燥肉の製造方法が開示されている(特許文献1)。しかしながら、前記方法では、脂肪がきわめて少なく、厚さが不十分であり、また、砂糖等の含量が多く乾燥肉に対する味の影響も大きくなってしまうといった問題点があった。
一方で、畜肉原料又は畜肉系食品に、過熱蒸気処理及び凍結乾燥処理を組み合わせることで、従来よりも厚みのある乾燥肉を製造することができる(特許文献2)。
【0006】
また、近年、食品の廃棄が大きな社会問題とされ、また、製品のコストダウンの要求が高まっており、歩留まりを向上させる技術の開発も求められている。
歩留まり向上のための技術として、塊状の原料肉の内部に結着材料と調味材料を混合させた混合調味液を注入し、原料肉中に混合調味液を分散させた後、加熱工程、カット工程及び乾燥工程を経て得られる乾燥調味肉の製造方法が開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−115158号公報
【特許文献2】PCT/JP2012/067917
【特許文献3】特開2000−32956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、脂肪層を含み、かつ、厚みが従来よりも大きい食肉加工品についても、湯又は水により復元可能となるような乾燥食肉加工品、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記のごとき課題を解決すべく鋭意研究した結果、赤身肉に脂身加工品を脂肪層として結着させた乾燥食肉加工品は、脂肪層を含み、かつ、厚みを従来よりも大きくした場合であっても、湯又は水により復元することができることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の態様を有する湯又は水により復元可能となるような乾燥食肉加工品に関する。
項1.赤身肉に食肉由来の脂身加工品が脂肪層として結着されている、湯又は水により復元可能な乾燥食肉加工品。
項2.食肉から分離された脂身を加工した脂身加工品が、脂身が分離されたもとの食肉に脂肪層として結着されている、湯又は水により復元可能な乾燥食肉加工品。
項3.前記脂身加工品が、食肉由来の脂身をペースト状又は粒状としたものである、項1又は2に記載の湯又は水により復元可能な乾燥食肉加工品。
項4.前記結着された脂肪層が、2層以上の多層状である、項1乃至3のいずれかに記載の湯又は水により復元可能な乾燥食肉加工品。
項5.前記脂身加工品が、結着剤を含む、項1乃至4のいずれかに記載の湯又は水により復元可能な乾燥食肉加工品。
項6.前記脂身加工品が、ピックル液を含む、項1乃至5のいずれかに記載の湯又は水により復元可能な乾燥食肉加工品。
項7.前記脂身加工品が、食肉由来の赤身肉を含む、項1乃至6のいずれかに記載の湯又は水により復元可能な乾燥食肉加工品。
【0011】
また、本発明は、以下の態様を有する湯又は水により復元可能となるような乾燥食肉加工品を含む即席食品に関する。
項8.項1乃至7のいずれかに記載の湯又は水により復元可能な乾燥食肉加工品を含む、即席食品。
【0012】
また、本発明は、以下の態様を有する湯又は水により復元可能となるような乾燥食肉加工品の製造方法に関する。
項9.以下(1)〜(3)の工程を含む、湯又は水により復元可能な乾燥食肉加工品の製造方法;
(1)食肉由来の脂身をペースト状又は粒状にし、脂身加工品を得る工程、
(2)前記(1)で得られた脂身加工品を、赤身肉に層状に塗布する工程、
(3)前記(2)を経た食肉を乾燥する工程。
項10.以下(1)〜(3)の工程を含む、湯又は水により復元可能な乾燥食肉加工品の製造方法;
(1)食肉から脂身を分離し、当該脂身をペースト状又は粒状にして、脂身加工品を得る工程、
(2)前記(1)で得られた脂身加工品を、前記(1)において脂身が分離された食肉に層状に塗布する工程、
(3)前記(2)を経た食肉を乾燥する工程。
項11.前記(2)工程において、脂身加工品を食肉に2層以上の多層状に塗布する、項9又は10に記載の湯又は水により復元可能な乾燥食肉加工品の製造方法。
項12.前記(1)工程において、脂身のペースト又は粒状物に結着剤を添加する、項9乃至11のいずれかに記載の湯又は水により復元可能な乾燥食肉加工品の製造方法。
項13.前記(1)工程において、脂身のペースト又は粒状物にピックル液を添加する、項9乃至12のいずれかに記載の湯又は水により復元可能な乾燥食肉加工品の製造方法。
項14.前記(1)工程において、脂身のペースト又は粒状物に赤身肉を添加する、項9乃至13のいずれかに記載の湯又は水により復元可能な乾燥食肉加工品の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の乾燥食肉加工品によれば、この厚みを大きくした場合であっても、湯又は水により3〜5分程度で復元することが可能となり、また、復元が困難とされている脂肪層についてもこの時間で復元できることから、当該乾燥食肉加工品に脂肪を多く含めることができる。さらには、本発明の乾燥食肉加工品によれば、本来、乾燥具材として利用できず廃棄されていた脂身の多くを、余すことなく利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で使用される食肉としては、豚肉、牛肉、鶏肉、馬肉、羊肉、猪肉、猪豚肉、鴨肉、合鴨肉、七面鳥肉、家鴨肉などが挙げられる。また、本発明で使用される食肉の部位は、特に限定されないが、獣肉においてはばら、ロース、かた、もも、サーロイン、また、鳥肉においてはもも、むねなどが一例として挙げられる。
【0015】
本発明における脂身加工品とは、食肉由来の脂身を加工したものを意味し、脂身をペースト状にしたもの、脂身を粒状にしたもの、脂身を細切れにしたもの、これらに赤身肉若しくはそのミンチ又は大豆等のタンパク質高含有素材を配合したもの、ラード及び/又はヘットそのもの、ラード及び/又はヘットに脂身、赤身肉若しくはそのミンチ又は大豆等のタンパク質高含有素材を配合したもの、などが挙げられる。これらの内、脂身加工品として、脂身をペースト状又は粒状にしたものが復元性や歩留まりの改善の点から好ましい。
【0016】
なお、本発明でいう「脂身」とは、皮下脂肪(鳥肉の場合は皮の脂も含む)及び筋間脂肪のことを指す。また、本発明の「赤身肉」とは、実質的に脂身を含まない食肉、すなわち復元性に悪影響が及ばない範囲で脂身を除去した食肉であり、例えば、厚さ5mm以上の皮下脂肪及び筋間脂肪を含まない食肉のことを示す。さらに、本発明の「食肉から脂身を分離」とは、食肉からほとんどの脂身を分離すること、すなわち復元性に悪影響が及ばない範囲で脂身を分離することであり、例えば、食肉から厚さ5mm以上の皮下脂肪及び筋間脂肪が含まれないように脂身を分離することを示す。なお、さしといわれる筋繊維間の脂肪組織は「赤身肉」の一部として扱う。以上は、文部科学省の「五訂増補日本食品標準成分表 第3章1.食品群別留意点 11)肉類」の記載に準ずる。
【0017】
また、脂身加工品には、本発明の乾燥食肉加工品の復元性に影響しない程度に結着剤を含有することもできる。結着剤としては、公知のものを使用することができるが、一例として、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどのリン酸塩、アルギニン、カゼインナトリウムなどの乳由来のタンパク質、アルブミンなどの卵由来のタンパク質、大豆由来のタンパク質、グルテンなどの小麦由来のタンパク質、アルギン酸塩、キサンタンガム、カラギーナンなどの増粘剤、トランスグルタミナーゼなどの酵素、これらを含有するつなぎなどが挙げられる。結着剤を用いることで、食肉の歩留まりが向上する。
【0018】
また、脂身加工品には、加水し、又は、ピックル液を含有することで、復元性をさらに向上することができる。
前記ピックル液は、従来の食塩を含有するものを使用することができる。ピックル液における食塩以外の含有物の一例として、砂糖、水あめ、還元水あめ、醤油、みそ、胡椒、唐辛子、ナツメグ、コリアンダー、にんにく、たまねぎ、生姜、りんご、レモン、バジル、セージ、セロリ、ローリエ、酒類、グルタミン酸ナトリウムなどの各種調味料、各種ハーブ、各種香辛料、各種香味野菜・果実などを適宜配合することができる。
【0019】
さらに、脂肪加工品には、少量の赤身肉を配合することで、結着性や復元性をさらに向上することができる。
前記赤身肉は、赤身肉を細切れにしたもの、ミンチ状にしたもの、プロテアーゼ処理したものなどの加工が施されているものも使用することができる。
【0020】
本発明における、脂身をペースト状又は粒状とする方法は、脂身をミートチョッパーで挽く方法、脂身をミートチョッパーで挽いた後、攪拌機によりさらに粒状化する方法、脂身をサイレントカッターにより細切りにしつつ混練する方法、脂身を包丁でペースト状又は粒状になるまで細かく叩く方法、脂身をフードプロセッサー又はミルにより細かくする方法、などが挙げられる。このように脂身をペースト状又は粒状とすることで、湯又は水による復元性がさらに向上する。すなわち、当該脂身は、脂身の表面積をできるだけ大きくし、かつ、脂身加工品内に湯又は水が行き渡るような適度なサイズのペースト状又は粒状の形態とすることで、乾燥食肉加工品として復元しようとする際、湯又は水と接触する領域が広がるため、復元性がきわめて良好となる。
【0021】
本発明は、赤身肉に食肉由来の脂身加工品が脂肪層として結着されていることを特徴とする。
ここで、脂身加工品を結着させる食肉は、赤身肉、例えば、前述したとおり厚さ5mm以上の皮下脂肪及び筋間脂肪を含まない食肉を意味しているが、これよりさらに脂身の薄い食肉を用いることにより、乾燥食肉加工品の復元性が一層向上する。その一例として、厚さ3mm以上の皮下脂肪及び筋間脂肪を含まない食肉を用いることが好ましく、厚さ2mm以上の皮下脂肪及び筋間脂肪を含まない食肉を用いることが最適である。
なお、厚さが一定以上の皮下脂肪及び筋間脂肪を含む食肉を用いる場合、当該脂肪を分離、除去した上で、残った食肉を用いることができる。前記方法により分離した脂肪は、脂身加工品として、残ったもとの食肉に結着させて乾燥食肉加工品を得ることができる。すなわち、このような乾燥食肉加工品を得ることにより、製造時の廃棄を極力少なくし、歩留まりを向上させることができる。
また、脂身加工品と、当該脂身加工品を結着させる食肉とは、両者同一の食肉由来のものを用いることが製造工程上手間をかけずに済むため好ましいが、異なる食肉由来のもの、例えば、牛肉由来の脂身加工品を、豚肉に結着させることもできる。
【0022】
本発明において、脂肪加工品は食肉と結着させるが、その結着方法として、脂肪加工品を食肉に塗布する方法、脂肪加工品を食肉に塗布した後に圧力を加えて結着させる方法、食肉の結着面に結着剤を塗布し、その上から脂肪加工品を塗布する方法、などが挙げられる。
【0023】
これまで脂肪加工品を食肉に単一の層として結着させる方法を述べてきたが、脂身層が2層以上の多層状となるよう、具体的には、食肉の上に脂肪加工品を塗布し、その上に食肉を載置し、またその上に脂肪加工品を塗布する、というように複数の層状に脂肪加工品を塗布することもできる。
脂肪層が一層又は多層状である乾燥食肉加工品は、それぞれの層において塗布する脂肪加工品を2〜5mm程度の均一の厚さとすることで、一層一層が薄くても、乾燥食肉加工品全体として肉の脂を多く含有させることができ、結果、湯又は水による復元性が良好であるにもかかわらず、バラ肉を用いた角煮のような肉らしい濃厚感が付与される。
【0024】
こうして得られた脂肪加工品が結着された食肉は、従来行われている乾燥方法により乾燥させることで、乾燥食肉加工品が得られる。
本発明において利用できる乾燥方法の一例として、脂肪加工品が結着された食肉を一旦凍結して、当該凍結物を減圧下で乾燥する凍結乾燥方法が、素材そのものの風味や食感を損ないにくいため好ましい。
【0025】
本発明において、復元性をさらに向上させるために、乾燥前又は乾燥時に脂肪加工品が結着された食肉を過熱蒸気で処理する工程を追加することもできる。
【0026】
なお、本発明においては、本発明による製造を行う前にあらかじめ、原料の食肉に対して、テンダライズ、インジェクション、タンブリングなど、加工肉を製造する際に慣用される処理を加えることもできる。
【0027】
また、本発明において、赤身肉へは、ピックル液の打ち込み及び/又はタンブリングを実施することにより、復元性をさらに向上することもできる。
【0028】
このようにして得られた本発明における乾燥食肉加工品は、乾燥食肉加工品に脂肪が従来よりも多く含有されていても復元性がきわめて良好である。
【0029】
以上により得られた乾燥食肉加工品は、即席麺、即席スープ、即席惣菜などの即席食品の具材として、湯又は水で復元することにより、手軽に喫食することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の内容を実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、処方中、特に記載がない限り「%」は「質量%」を意味する。
【0031】
(実施例1)
食肉原料として3枚豚ばら肉から余分な筋・筋膜・骨異物を除去して得られた豚ばら肉は、ジャガード処理(テンダライズ)し、ピックル液(食塩2.5%、大豆タンパク質製剤4.1%、複合リン酸塩1.2%などを含む)を140%加水まで打ち込み(インジェクション)、ピックル液によるタンブリング処理をした。
【0032】
このようにして得られた豚ばら肉から脂身を厚さ2〜3mm以下になるよう分離した。ここで分離された脂身はミートチョッパーにより粒状とし脂身加工品を得た。脂身加工品は、脂身が除去されたもとの豚ばら肉(以下、実施例において便宜的に「赤身肉」と呼ぶ)に対し、以下の3パターンの実施品が得られるように塗布した。
(a)赤身肉の上に1層(上層)だけ脂身加工品を塗布したものを実施例1−1、
(b)赤身肉の一部の上に1層(中層)、さらに、その上にこの赤身肉の残りを載置し、その上に1層(上層)の計2層、脂身加工品を均一な厚さとなるように塗布したものを実施例1−2、
(c)最下層に1層(下層)、その上に赤身肉の一部を載置し、さらに実施例1−2のように中層及び上層の計3層、脂身加工品を均一な厚さとなるように塗布したものを実施例1−3
として、それぞれ実施品を得た。なお、赤身肉と脂身加工品との間には、これらの結着性を強化するために、結着剤(トランスグルタミナーゼ30%、大豆タンパク質70%)をあらかじめ塗布した。
次に、それぞれの脂身加工品が結着された豚ばら肉加工品は、加熱成型後凍結し、半解凍したものを長辺45mm×短辺40mm×厚さ15mmサイズにカットして、過熱蒸気処理(蒸気流量180kg/h、温度210℃、60秒×3回)した。以上により製造された豚ばら肉加工品は、品温0〜−10℃に10時間程度かけて緩慢凍結させ、真空凍結乾燥(棚温度60℃、0.8Torr以下、24時間)を行い、実施例1−1〜1−3の乾燥豚ばら肉加工品を得た。
【0033】
(比較例1)
実施例1と同様の方法によりタンブリング処理までした豚ばら肉について、脂身を分離せずに、加熱成型後凍結し、半解凍したものを実施例1と同様のサイズにカットし、
(d)そのまま、実施例1と同様の方法により真空凍結乾燥を行った乾燥豚ばら肉加工品(比較例1−1)、
(e)実施例1と同様の方法により、過熱蒸気処理及び真空凍結乾燥を行った乾燥豚ばら肉加工品(比較例1−2)
をそれぞれ得た。
【0034】
上記の実施例1−1〜1−3、及び、比較例1−1,1−2で得られたそれぞれの乾燥豚ばら肉加工品について、1個をカップ上の容器に入れて、上部より熱湯を300g入れて5分後に喫食した。復元度の評価は熟練のパネラー4名で行い、以下表1のとおり評価した。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例1−1〜1−3の乾燥豚ばら肉加工品の復元性は、概ね25%程度の脂身層を含んでいるにもかかわらずいずれも良好であった。なお、実施例1−1については、脂身層が1層に集中していることもあって、脂身層のごく一部に復元性が不十分な箇所があったが、非常に厚い脂身層を有していても全体的な復元性は良好であった。
実施例1−3の乾燥豚ばら肉加工品は、脂身層を3層に均一に分けて結着させているため、豚ばら肉の角煮のような、肉らしい濃厚感が表現できており、それでいて復元性がきわめて良好であることから、湯又は水で復元することができる、即席麺、即席スープ、即席惣菜などの即席食品の乾燥具材として理想的であることが示された。
一方、比較例1−1の乾燥豚ばら肉加工品は、熱湯中に5分を超える長時間浸していても、脂身部分が完全に復元しなかった。
【0037】
なお、サイズ以外実施例1−3と同様の処方及び工程を経て製造された、脂肪加工品を結着し厚みが17mmの乾燥豚ばら肉加工品も、実施例1−3と同様に復元性がきわめて良好な乾燥食肉加工品であった。