(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
現在、一般に普及している光通信システムに用いられる光ファイバは、1本のコアの外周がクラッドにより被覆される構造をしており、このコア内を光信号が伝搬することで情報が伝送される。近年光ファイバ通信システムの普及に伴い、伝送される情報量が飛躍的に増大している。このような伝送される情報量の増大に伴い、複数のコアの外周が1つのクラッドにより囲まれたマルチコアファイバが開発されている。
【0003】
マルチコアファイバとしては、それぞれのコアが互いに独立した伝送路とされ、それぞれのコアのクロストークが出来るだけ低減された非結合型マルチコアファイバと、それぞれのコアを伝播する光が互いにモード結合してスーパーモードを励振する結合型マルチコアファイバとが知られている。この結合型マルチコアファイバによれば、光のモード毎に異なる信号を伝送するモード多重伝送が可能とされる。
【0004】
下記特許文献1には、このような結合型マルチコアファイバの一例が記載されている。下記特許文献1に記載の結合型マルチコアファイバは、結合するそれぞれのコアの光の伝搬定数が互いに等しくされる。下記特許文献1によれば、このような結合型マルチコアファイバでは、それぞれのコア間距離が近いほどスーパーモード間の実効屈折率差(Δn
eff)が大きくなるとされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1に記載の結合型マルチコアファイバにおいて、励振される各スーパーモード間の結合を抑制して受信側での信号処理を容易に行える程度まで各スーパーモード間の実効屈折率差を大きくする場合、それぞれのコアを略接する程度まで近付ける必要がある。このようにそれぞれのコアを近づけると、光ファイバを製造するときにコアに対する汚染の問題が生じ易く、光の損失が大きくなる傾向がある。従って、製造時に上記汚染の問題が生じない程度まで、それぞれのコア間に十分な距離を確保したいという要請がある。一方、特許文献1の結合型マルチコアファイバにおいて、それぞれのコア間の距離を大きくすると、励振される各スーパーモード間の実効屈折率差が小さくなる。この場合励振されるスーパーモード間にモード結合が生じ易く、光信号の入出力部における信号処理が複雑化し、例えばMIMO(multiple-input and multiple-output)等を用いた信号処理をする必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、それぞれのコア間に十分な距離を確保しつつ、各スーパーモード間の実効屈折率差を大きくすることができる結合型マルチコアファイバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の結合型マルチコアファイバは、複数のコアがクラッド内に配置され、それぞれのコアを伝播する光のモード結合により、スーパーモードが生じる結合型マルチコアファイバであって、それぞれの前記コアの伝搬定数が互いに異なることを特徴とするものである。
【0009】
従来の結合型マルチコアファイバでは、それぞれのコアの伝搬定数が互いに同じであった。本発明者らはこの理由をそれぞれのコアを伝播する光のモードを結合し易くさせ、スーパーモードを生じ易くさせるためであると考えている。しかし、本発明者らの鋭意検討の結果、それぞれのコアの伝搬定数が異なる場合であってもスーパーモードが励振出来ることが明らかとなった。しかも、それぞれのコアの伝搬定数が異なることにより、コアを略接する状態とせずとも、励振されるそれぞれのスーパーモードの実効屈折率差を大きくすることができることが見出された。従って、このような結合型マルチコアファイバによれば、製造時における上記コアの汚染を抑制できる程度までそれぞれのコア間に十分な距離を確保しつつ、スーパーモード間にモード結合が生じることを抑制できる程度まで各スーパーモード間の実効屈折率差を大きくすることができる。
【0010】
なお、スーパーモードの実効屈折率とは、導波する光のうちスーパーモードとなっている光の実効屈折率を意味し、同様にスーパーモードの実効断面積とは、導波する光のうちスーパーモードとなっている光の実効断面積を意味する。
【0011】
また、上記結合型マルチコアファイバにおいて、特定のコアに光が入射される場合に、入射された前記光に含まれる情報を含むスーパーモードが前記特定のコアに局在することが好ましい。
【0012】
非特許文献1に記載された結合するそれぞれのコアの光の伝搬定数が互いに等しい結合型マルチコアファイバでは、励振されるスーパーモードがどのコアに生じるかは、それぞれのコアに入射する光の組み合わせにより変化する。つまり、それぞれのコアに入射する光を正確に制御しないと、例えば、ある瞬間ではスーパーモードが特定のコアに励振され次の瞬間にはスーパーモードが他のコア或いは特定のコアと他のコアの双方に励振されるといった状態となる。このような状態を回避してスーパーモードを個別のコアに励振するには、それぞれのスーパーモードの次数に応じた位相の光をそれぞれのコアに入射する必要がある。しかし、このような光の入射には複雑な処理が必要である。例えば、それぞれのコアで励振されるスーパーモードの組み合わせを信号処理により解読し復調する処理や、特定のコアの光を特定のモードに変換するモード変換器による処理等が必要となる。そこで、本発明者らの鋭意検討により、それぞれの前記コアの伝搬定数が互いに異なる結合型マルチコアファイバにおいて、光を入射したコアに当該光に含まれる情報を含むスーパーモードが当該コアに局在することが発見された。従って、上記のようにそれぞれのスーパーモードの次数に応じた位相の光をそれぞれのコアに入射する等といった複雑な処理をせずとも、光を入射したコアから出射する光のうちスーパーモードを示す光を読み取ることで、当該コアに入射した光に含まれる情報を得ることができる。従って、複雑な制御を行わなくとも結合型マルチコアファイバを用いた光通信を行うことができる。
【0013】
また、上記結合型マルチコアファイバにおいて、互いの隣り合う前記コアの中心間距離が、前記コアを伝播する光の波長の7.5倍以上であることが好ましい。
【0014】
本発明者らは、コアの中心間距離(コア間距離)が、コアを伝播する波長の7.5倍以上である場合に、特定のコアに入射された光に含まれる情報を含むスーパーモードが当該特定のコアに局在する傾向がより顕著であることを見出した。従って、このような構成の結合型マルチコアファイバによれば、より容易にコアに入射した光に含まれる情報を得ることができる。
【0015】
また、それぞれの前記コアに局在する各スーパーモードの実効断面積が互いに等しいことが好ましい。
【0016】
光の実効断面積は、光に含まれる信号の歪に影響する。従って、スーパーモードの実効断面積が互いに等しくされることで、それぞれのコアから出射するスーパーモードを示す光の歪が同様となり、受信側の処理が複雑化することを抑制することができる。
【0017】
また、それぞれの前記
スーパーモードの実効屈折率の差が5×10
−4以上であることが好ましい。このようにそれぞれのコアを構成することで、スーパーモード同士のモード結合をより弱くすることができ、受信側の信号よりが複雑化することをより抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、それぞれのコア間に十分な距離を確保しつつ、各スーパーモード間の実効屈折率差を大きくすることができる結合型マルチコアファイバが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る結合型マルチコアファイバの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、理解の容易のため、それぞれの図に記載のスケールと、以下の説明に記載のスケールとが異なる場合がある。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る結合型マルチコアファイバ(以下マルチコアファイバと呼ぶ)の様子を示す図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態のマルチコアファイバ1は、複数のコア11a〜11cと、複数のコア11a〜11cの外周面を隙間なく囲むクラッド12と、クラッド12の外周面を被覆する内側保護層13と、内側保護層13の外周面を被覆する外側保護層14と、を備える。なお、本実施形態では、コアの数が3つの場合について説明する。
【0023】
本実施形態のマルチコアファイバ1では、それぞれのコア11a〜11cが互いに所定距離離れて等間隔で配置されている。それぞれのコア11a〜11cの直径は、例えば、7.76μm〜9.74μmとされ、クラッド12の直径は、特に限定されるわけではないが、例えば、125μmとされる。また、それぞれのコア11a〜11cのクラッド12に対する比屈折率差は、例えば、0.354%〜0.42%とされる。そして、それぞれのコア11a〜11cは、互いに異なる伝搬定数とされる。このようにそれぞれのコア11a〜11cが互いに異なる伝搬定数とされるには、例えば、それぞれのコア11a〜11cの直径が互いに異なる大きさとされたり、それぞれのコア11a〜11cのクラッド12に対する比屈折率差(コアΔ)が互いに異なる値とされれば良い。また、それぞれのコア11a〜11cの直径の大きさ及びクラッド12に対する比屈折率差が互いに異なった状態とされて、それぞれのコア11a〜11cが互いに異なる伝搬定数とされても良い。
【0024】
また、それぞれのコア11a〜11cのコア間距離は、それぞれのコア11a〜11cを伝播する光のモード結合が生じて、スーパーモードが励振される程度の大きさとされる。このような距離は、伝送に使用する光の波長の20倍以下として求めることができ、例えば、使用波長の下限が1530nmの場合30.6μm以下とされる。また、マルチコアファイバ1が製造される際にコア11a〜11cに対する汚染を防止して、伝播される光の損失を抑制する観点から、コア11a〜11cのコア間距離は、広いほどが好ましく、少なくとも使用波長におけるモードフィールド直径(MFD)の1.1倍以上であることが望ましく、1.2倍以上あると更に好ましい。
【0025】
また、内側保護層13及び外側保護層14は、例えば、互いに異なる種類の紫外線硬化樹脂から成る。
【0026】
次に、マルチコアファイバ1に励振されるスーパーモードについて、それぞれのコアの伝搬定数が同じである従来の結合型マルチコアファイバとの比較をしつつ説明する。
【0027】
図2は、それぞれのコアの伝搬定数が同じである結合型マルチコアファイバのおけるスーパーモードの実効屈折率差についてコア間距離への依存性を示す図である。
図2において、横軸は、互いに隣り合うコアの中心間距離(コア間距離)[μm]を示し、縦軸は、コアの屈折率(n
co)とクラッドの屈折率(n
cl)との差(n
co−n
cl)とスーパーモードの実効屈折率(n
eff)とクラッドの屈折率との差(n
eff−n
cl)との比を示している。また、
図2で特性が示される結合型マルチコアファイバでは、コアの数が5つとされ、それぞれのコアがクラッドの径方向に沿って直線状に配置されている。また、この結合型マルチコアファイバのそれぞれのコアの直径は5.0μmとされ、それぞれのマルチコアファイバのクラッドに対する比屈折率差(Δ)は1.1%とされている。それぞれのコアが単独に機能するときのモードフィールド直径は、1550nmにおいて、5.8μm程度である。
【0028】
このようなマルチコアファイバにおいて、コアの番号を端から順に0,1,2,3,4とし、それぞれのスーパーモードの実効屈折率をn
eff,0,n
eff,1,n
eff,2,n
eff,3,n
eff,4とすると、
図2に示されるようにそれぞれのスーパーモードの実効屈折率(n
eff,0〜n
eff,4)は、それぞれのコア間距離に依存して、それぞれのコア間距離が小さくなるほど、それぞれのスーパーモードの実効屈折率(n
eff,0〜n
eff,4)の差が大きくなる。非特許文献1では、コア間距離をコア直径と等しくすることにより、最低時モードとそれに隣接する高次モードの実効屈折率の差は0.00064となることが開示されている。隣接モード間におけるモード結合が生じないようにするには、それぞれのモードの実効屈折率の差を0.0005以上とすればよい。したがって,非特許文献により開示されている条件は、スーパーモード間の結合を抑えた条件になっている。実効屈折率差を0.0005以上確保するためには,
図2に示されるようにコア間距離を約5.35μm以下としなければならず、コア単独の時のMFDよりも小さな値となってしまう。。このような条件であると、マルチコアファイバを製造する際にコア材表面に対する汚染が伝送損失に与える影響が大きくなる。従って、従来の結合型マルチコアファイバにおいて、それぞれのスーパーモードのモード結合が生じないように設計すると、コアに対する汚染により光の伝送損失が悪くなる傾向がある。一方、それぞれのコア間距離を大きくすると、それぞれのスーパーモード間のモード結合が生じ易くなる。それぞれのスーパーモードのモード結合が生じる場合には、少なくとも受信側においてMIMO等を用いた複雑な信号処理が必要となり、通信設備が複雑化してしまう。
【0029】
図3は、本実施形態のマルチコアファイバ1におけるスーパーモードの実効屈折率差についてコア間距離に対する依存性を示す図である。
図3において、横軸は、互いに隣り合うコア11a〜11cの中心間距離を示し、縦軸は、スーパーモードの実効屈折率を示している。また、
図3で特性が示されるマルチコアファイバ1では、それぞれのコアが互いに正三角形を描くように互いに等間隔で配置されている。また、このマルチコアファイバ1のコア11aの半径は4.87μmとされ、コア11bの半径は4.50μmとされ、コア11cの半径は3.88μmとされている。更に、このマルチコアファイバ1のコア11aのクラッド12に対する比屈折率は0.42%とされ、コア11bのクラッド12に対する比屈折率は0.37%とされ、コア11cのクラッド12に対する比屈折率は0.354%とされている。この場合、コア11a、コア11b、コア11cの光の実効屈折率は1550nmにおいてそれぞれ1.44798,1.44708,1.44618とされ、それぞれのコア11a〜11cは互いに異なる伝搬定数とされる。
【0030】
このようなマルチコアファイバ1において、それぞれのスーパーモードの実効屈折率はそれぞれのコア間距離に依存し、それぞれのコア間距離が小さくなるほど、それぞれのスーパーモードの実効屈折率(n
eff,0〜n
eff,4)の差が大きくなる。しかし、
図2に示される各コアの光の伝搬定数が同じ従来の結合型マルチコアファイバのスーパーモードの特性と異なり、本実施形態のマルチコアファイバ1で励振されるそれぞれのスーパーモードは、スーパーモードが生じる範囲でコア間距離を大きくしても、スーパーモードのモード間結合を抑制できる程度に実効屈折率差を確保できる。例えば、それぞれのコア11a〜11cのコア間距離を12.8μmとする場合にスーパーモードの実効屈折率差を約0.0009とすることができ、スーパーモードのモード間結合を抑制できる。従って、このようなマルチコアファイバ1によれば、製造時におけるコアの汚染を抑制できる程度までそれぞれのコア間に十分な距離を確保することができ、更にスーパーモード間にモード結合が生じることを抑制できる程度まで各スーパーモード間の実効屈折率差を大きくすることができる。
【0031】
また、本発明者らはマルチコアファイバ1のようにそれぞれの伝搬定数が異なるコアを有する結合型マルチコアファイバの検討を行う上である重要な発見をした。それは、本発明者らが検討したそれぞれの伝搬定数が異なるコアを有する結合型マルチコアファイバによれば、特定のコアに光が入射される場合に、入射された光に含まれる信号を含むスーパーモードがこの特定のコアに局在するということである。つまり、コア11aに光を入射すると、コア11aに入射した光の情報を有するスーパーモードがコア11aに局在する。同様にコア11bに光を入射すると、コア11bに入射した光の情報を有するスーパーモードがコア11bに局在し、コア11cに光を入射すると、コア11cに入射した光の情報を有するスーパーモードがコア11cに局在するのである。この場合、光は3つのコア11a〜11cの2つ以上に同時に入射しても良い。例えば、3つのコア11a〜11cのそれぞれに光を入射すると、それぞれのコアに入射した光の情報を有するそれぞれのスーパーモードが光を入射したコアに励振される。そこで、
図3では、それぞれのスーパーモードの特性を示す線にスーパーモードが現れるコアの符号を付している。このように特定のコアに光が入射される場合に入射された光に含まれる信号を含むスーパーモードがこの特定のコアに局在する条件は、少なくとも使用波長の7.5倍以上のコア間隔であれば良い。通常の1550nm帯での使用を想定した場合、12μm程度のコア間隔が必要である。
【0032】
図4は、コア間距離を12.8μmとし、コア11aに局在するスーパーモードの実効屈折率n
effaを1.44798とし、コア11bに局在するスーパーモードの実効屈折率n
effbを1.44708とし、コア11cに局在するスーパーモードの実効屈折率n
effcを1.44618としたマルチコアファイバ1において、それぞれのコア11a〜11cに個別に光を入射した場合のスーパーモードの局在の様子を示すシミュレーション結果である。具体的には、
図4(A)はこのようなマルチコアファイバ1のコア11aに光を入射した場合のスーパーモードの局在の様子を示し、
図4(B)はコア11bに光を入射した場合のスーパーモードの局在の様子を示し、
図4(C)はコア11cに光を入射した場合のスーパーモードの局在の様子を示す。なお、このシミュレーションで各コアを伝播する光の波長は1550nmとした。
図4(A)〜
図4(C)に示すように、伝搬定数が異なるコアを有する結合型マルチコアファイバによれば、上記のように特定のコアに光が入射される場合に、入射された光に含まれる信号を含むスーパーモードがこの特定のコアに局在することが分かる。
【0033】
次にマルチコアファイバ1に励振されるスーパーモードのコアの直径とクラッドに対する比屈折率差について説明する。
【0034】
図5は、スーパーモードの実効屈折率差についてコアの直径及びコアのクラッドに対する比屈折率差(コアΔ)への依存性を示す図である。
図5では、マルチコアファイバ1のコア間距離を12.8μmとし、それぞれのスーパーモードの実効屈折率差を0.0009としている。具体的には、コア11a〜11cに局在するスーパーモードの実効屈折率n
effa〜n
effcが
図4でシミュレーションしたマルチコアファイバ1のコア11a〜11cに局在するスーパーモードの実効屈折率n
effa〜n
effcと同様である状態をそれぞれ実線で示している。
図4に示すように、コアの直径が小さくなるほどコア11a〜11cのクラッド12に対する屈折率差が大きくなることが分かる。
【0035】
また、
図5において、破線は、波長1565nmの光が、半径30mmで100ターン巻回された場合に、曲げ損失が0.5dBなる状態を示す線であり、破線より下の領域は、波長1.5μm帯の光ファイバにおいて、曲げ損失が大きいために使用できない領域とされる。また、点線で示すλcは、1530nmのカットオフ波長を示しており、波長1.5μm帯の光ファイバでは、点線で示すλcよりも右(上)の領域はシングルモード通信ができずに使用できない領域とされる。従って、曲げ損失を示す破線とカットオフ波長を示す点線とで挟まれた領域における実線上の状態であれば、それぞれのスーパーモードの実効屈折率差を0.0009として通信を行うことができる。
【0036】
さらに
図5では、それぞれのスーパーモードの実効断面積が80μm
2となる状態が一点鎖線で示されている。従って、
図5において黒点で示されるポイントであれば、それぞれのスーパーモードの実効屈折率差を0.0009としつつ、それぞれのスーパーモードの実効断面積を80μm
2にそろえることができる。また、曲げ損失を示す破線とカットオフ波長を示す点線とで挟まれた領域における実線上であれば、実効断面積を他の面積でそろえることもできる。
【0037】
図6は、マルチコアファイバ1を
図4の説明で用いたマルチコアファイバと同じ条件とした場合に、それぞれのコア11a〜11cに局在するスーパーモードのパワーの割合とコア間距離との関係を示す図である。なお、それぞれのコア11a〜11cを伝播する光の波長も
図4の説明の光の波長と同様の波長である1550nmとした。
図6において、core11aと示される実線は、
図4(A)に示されるコア11aに局在するスーパーモードのパワーを示す。例えば、コア間隔20μmではコア11aに局在するスーパーモードのパワーの割合は0.86であり、このスーパーモードのパワーの86%はコア11aに存在しているが、残りの14%は他のコアやクラッドに分布していることを意味している。同様に、
図6において、core11bと示される実線は、
図4(B)に示されるコア11bに局在するスーパーモードのパワーを示し、core11cと示される実線は、
図4(C)に示されるコア11cに局在するスーパーモードのパワーを示す。コア間隔20μmにおいて、コア11b、コア11cに局在するパワーの割合は、それぞれ80%、68%となる。
【0038】
従って、
図6に示すように、どのコア間距離においてもそれぞれのコア11a〜11cにスーパーモードが局在していることが分かる。更にコア間距離が14μm以上の領域では、それぞれのコア11a〜11cに局在するスーパーモードのパワーは略一定となる。コア間距離が14μmにおいて、コア11aのスーパーモードのパワーの割合は0.85なり、コア11bのスーパーモードのパワーの割合は0.79となり、コア11cのスーパーモードのパワーの割合は0.68となる。従ってコア間距離が14μmの場合、それぞれのコア11a〜11cに局在するスーパーモードのパワーは、コア間隔が20μmの場合と殆ど変らないこととなる。また、コア間距離が11.7μmにおいて、コア11aのスーパーモードのパワーの割合は0.82となり、コア11bのスーパーモードのパワーの割合は0.75となり、コア11cのスーパーモードのパワーの割合は0.65となる。従って、コア間距離が11.7μm以上であれば、それぞれのコアに局在するスーパーモードのパワーとコア間距離が14μm以上の定常状態と比較しても、あるスーパーモードが特定のコアに局在するパワーの割合の低下は5%以内(0.05以下)となる。つまり、コア間距離がコアを伝播する光の波長の7.5倍以上であれば、光を入射したコアにスーパーモードが顕著に局在することが見出された。
【0039】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
例えば、上記実施形態において、マルチコアファイバ1は3つのコア11a〜11cを有して、それぞれのコア11a〜11cは互いに同じコア間隔となるように配置されたが、コアは複数であれば良くその数は特に限定されない。また、コア間隔は、スーパーモードが励振されれば互い等距離で無くても良い。