特許第6192525号(P6192525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192525
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】砥材埋め込み方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/12 20120101AFI20170828BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20170828BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   B24B37/12 C
   H01L21/304 622F
   B24D3/00 340
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-257600(P2013-257600)
(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-112696(P2015-112696A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(72)【発明者】
【氏名】田篠 文照
(72)【発明者】
【氏名】ニール ガートン
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−540955(JP,A)
【文献】 特開2006−026820(JP,A)
【文献】 特開2003−311605(JP,A)
【文献】 特開2011−212752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/11 − 37/16
B24D 3/00
H01L 21/304
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨定盤上に砥材を埋め込む砥材埋め込み方法であって、
砥材を含むスラリーを介して研磨定盤の上面に押圧部材を押圧して該研磨定盤の上面に砥材を埋め込む埋め込みステップと、
該埋め込みステップ前または実施中に、該研磨定盤の上面に対面する該押圧部材の押圧面と該研磨定盤の上面との間の距離を検出手段で検出する距離検出ステップと、
該埋め込みステップの前または実施中に、該距離検出ステップで検出された該距離に基づいて該押圧部材で該研磨定盤を押圧する圧力を調整する圧力調整ステップと、を備えたことを特徴とする砥材埋め込み方法。
【請求項2】
前記距離検出ステップで検出された前記距離の値が前記砥材の平均砥粒径よりも小さい場合に、前記圧力調整ステップでは、前記押圧部材で前記研磨定盤を押圧する圧力を低下させることを特徴とする請求項1に記載の砥材埋め込み方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置の研磨定盤に砥材を埋め込む砥材埋め込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハに代表される板状の被加工物は、例えば、上面に砥材を埋め込んだ研磨定盤(例えば、特許文献1参照)と、当該研磨定盤の上方において被加工物を吸引保持する保持機構とを備えた研磨装置で研磨される。
【0003】
この研磨定盤に砥材を埋め込む際には、例えば、砥材を含むスラリーを研磨定盤の上面に供給しながら、押圧部材を所定の圧力で研磨定盤に押し当てる。押圧部材を押し当てる圧力(押し当て圧力)は、作業者の経験等に基づいて調節されている。最適な押し当て圧力で押圧部材を押し当てることにより、押圧部材と研磨定盤との間にスラリーを介在させて研磨定盤に砥材を埋め込むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−52455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように、作業者の経験等に基づいて押し当て圧力を最適な値に調節するのは、必ずしも容易でない。仮に、押し当て圧力が最適な値より大きく設定されると、押圧部材と研磨定盤との間にスラリーが侵入しなくなって、砥材を適切に埋め込むことができない。一方、押し当て圧力が最適な値より小さく設定されると、押圧部材と研磨定盤との隙間が過度に大きくなって、砥材の埋め込みに時間がかかる。
【0006】
押し当て圧力を変更しながら加工を繰り返すことで、最適な値を選定することも可能である。しかしながら、このように試行錯誤で押し当て圧力を選定する方法は、多大な労力を要する。
【0007】
また、研磨対象の被加工物やスラリーの種類、要求される埋め込み品質等の条件が変われば、最適な押し当て圧力も変わるので、その場合には、最適な値を再び選定し直さなくてはならないという問題もある。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、研磨定盤に対してより簡単に砥材を埋め込むことができる砥材埋め込み方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、研磨定盤上に砥材を埋め込む砥材埋め込み方法であって、砥材を含むスラリーを介して研磨定盤の上面に押圧部材を押圧して該研磨定盤の上面に砥材を埋め込む埋め込みステップと、該埋め込みステップ前または実施中に、該研磨定盤の上面に対面する該押圧部材の押圧面と該研磨定盤の上面との間の距離を検出手段で検出する距離検出ステップと、該埋め込みステップの前または実施中に、該距離検出ステップで検出された該距離に基づいて該押圧部材で該研磨定盤を押圧する圧力を調整する圧力調整ステップと、を備えたことを特徴とする砥材埋め込み方法が提供される。
【0010】
本発明において、前記距離検出ステップで検出された前記距離の値が前記砥材の平均砥粒径よりも小さい場合に、前記圧力調整ステップでは、前記押圧部材で前記研磨定盤を押圧する圧力を低下させることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の砥材埋め込み方法は、押圧部材の押圧面と、研磨定盤の上面との間の距離を検出手段で検出する距離検出ステップと、距離検出ステップで検出された距離に基づいて、押圧部材で研磨定盤を押圧する圧力を調整する圧力調整ステップと、を備えるので、例えば、押圧部材と研磨定盤との間に砥材を介在させることができる距離を制御の基準に用いることで、研磨定盤に対して簡単に砥材を埋め込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係る砥材埋め込み方法で砥材が埋め込まれる研磨定盤を備えた研磨装置の構成例を模式的に示す図である。
図2】距離検出ステップ及び圧力調整ステップを模式的に示す図である。
図3】埋め込みステップを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る砥材埋め込み方法は、距離検出ステップ(図2参照)、圧力調整ステップ(図2参照)、埋め込みステップ(図3参照)を含む。
【0014】
距離検出ステップでは、研磨装置が備える研磨定盤の上面と、砥材を埋め込むための押圧部材の押圧面との間の距離(間隔)をセンサユニット(検出手段)で検出する。圧力調整ステップでは、距離検出ステップの検出結果に基づいて、押圧部材を研磨定盤に押し当てる(押圧する)圧力(押し当て圧力)を調整する。
【0015】
埋め込みステップでは、砥材を含むスラリーを研磨定盤の上面に供給しながら、押圧部材を研磨定盤に押し当てて(押圧して)砥材を埋め込む。ここで、押圧部材の押し当て圧力は、距離検出ステップ及び圧力調整ステップにより制御される。以下、本実施の形態に係る砥材埋め込み方法について詳述する。
【0016】
はじめに、本実施の形態に係る砥材埋め込み方法で砥材が埋め込まれる研磨定盤を備えた研磨装置の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、研磨装置の構成例を模式的に示す図であり、図2は、距離検出ステップ及び圧力調整ステップを模式的に示す図である。図1に示すように、研磨装置2は、円盤状の研磨定盤4を備えている。
【0017】
この研磨定盤4は、下方に配置されたモータ等の回転機構(不図示)と連結されており、鉛直方向に伸びる回転軸の周りに回転する。研磨定盤4の上面4aは、略平坦である。また、研磨定盤4の上面4aは、ダイヤモンド等の砥材(砥粒)13(図2参照)を埋め込むことができるように、スズや鉛等の比較的柔らかい金属材料等で構成されている。
【0018】
研磨定盤4の上方には、被加工物11を吸引保持する保持機構(保持手段)6が配置されている。保持機構6は、上方に配置されたモータ等の回転機構(不図示)と連結されており、鉛直方向に伸びる回転軸の周りに回転する。また、この保持機構6は、昇降機構(不図示)で昇降(上下動)される。
【0019】
保持機構6の下面6aは、被加工物11の上面11a側を吸引保持する保持面となっている。この保持面には、保持機構6の内部に形成された流路を通じて吸引源の負圧が作用し、被加工物11を吸引する吸引力が発生する。
【0020】
保持機構6と隣接する位置には、砥材13(図2)を分散させたスラリー15を研磨定盤4の上面4aに供給するノズル8が配置されている。このノズル8は、保持機構6等と干渉しない位置に位置付けられている。
【0021】
被加工物11は、代表的には、円盤状の半導体ウェーハである。この被加工物11を保持した保持機構6と、研磨定盤4とを相互に回転させた上で、保持機構6を昇降機構で下降させ、スラリー15を供給しながら研磨定盤4の上面4aに押し当てることで、被加工物11の下面11b側を研磨できる。
【0022】
さらに、図2に示すように、研磨定盤4の上方には、研磨定盤4の上面4aに砥材13を埋め込むための押圧部材10が設けられている。押圧部材10の下面(押圧面)10aは、平坦であり、研磨定盤4の上面4aと対面している。また、押圧部材10の下面10aは、例えば、研磨定盤4の上面4aより高硬度又は高弾性の材料で構成されている。
【0023】
これにより、砥材13を分散させたスラリー15を介して、回転する研磨定盤4の上面4aに押圧部材10を押し当てる(押圧する)と、研磨定盤4の上面4aに砥材13を埋め込むことができる。押圧部材10の上方には、圧力調整機構12が設けられており、押圧部材10を研磨定盤4に押し当てる押し当て圧力は、この圧力調整機構12で調整される。なお、回転する研磨定盤4の上面4aに押圧部材10を押し当てると、この押圧部材10は、研磨定盤4に従い回転する。
【0024】
押圧部材10の側部には、押圧部材10の下面10aと、研磨定盤4の上面4aとの間の距離を検出するためのセンサユニット(検出手段)14が設けられている。このセンサユニット14は、配線等を介して接続された制御装置16で制御される。制御装置16は、圧力調整機構12とも接続されており、センサユニット14の検出結果等に基づいて押圧部材10の押し当て圧力を制御する。
【0025】
センサユニット14の筐体下部には、検出対象となる研磨定盤4に向けて超音波を発信するとともに、その反射波を受信する超音波センサ18が配置されている。超音波センサ18は、電力(電圧)と振動(超音波)とを相互に変換する圧電素子(超音波振動子)18aを含んでいる。
【0026】
圧電素子18aは、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PB(Zi,Ti)O)、チタン酸バリウム(BaTiO)、リチウムナイオベート(LiNbO)、リチウムタンタレート(LiTaO)等の材料で形成される。なお、チタン酸ジルコン酸鉛は、PZT等と呼ばれることもある。
【0027】
この圧電素子18aに所定のパルス電圧(交流電圧)を印加すると、印加されたパルス電圧の周波数に対応する周波数の超音波が発生する。また、圧電素子18aに上述のような超音波を加えると、加えられた超音波の周波数に対応する周波数のパルス電圧が圧電素子18aの端子に発生する。
【0028】
この圧電素子18aの下端には、超音波を伝達する超音波伝達部材18bが設けられている。超音波伝達部材18bは、例えば、水晶、アクリル樹脂等の材料で形成されており、圧電素子18aで発生する超音波を良好に伝播する。超音波伝達部材18bの下面は、センサユニット14の筐体下部から露出しており、研磨定盤4の上面4aに供給されたスラリー15と接する。
【0029】
圧電素子18aの端子には、パルス電圧を発生するパルス電圧発生器20が接続されている。パルス電圧発生器20は、制御装置16の指示に基づき、例えば、電圧が250V程度で周波数が1kHz程度のパルス電圧を発生させ、超音波センサ18の圧電素子18aに印加する。
【0030】
また、圧電素子18aの端子には、圧電素子18aから出力されるパルス電圧を、制御装置16で識別可能な電気信号に変換する変換器(コンバータ)22が接続されている。変換器22は、超音波(反射波)の受信によって圧電素子18aで発生したパルス電圧を、制御装置16で識別可能な電気信号に変換して制御装置16に出力する。
【0031】
このように構成されたセンサユニット14は、制御装置16からの指示に基づいて、パルス電圧発生器20で発生したパルス電圧を圧電素子18aに印加する。その結果、圧電素子18aから超音波が発生し、超音波伝達部材18bを伝播する。
【0032】
上述のように、超音波伝達部材18bの下面には、研磨定盤4の上面4aに供給されたスラリー15が接している。そのため、超音波伝達部材18bを伝播した超音波は、スラリー15に印加され、研磨定盤4の上面4aにおいて反射される。
【0033】
研磨定盤4の上面4aで反射された超音波(反射波)は、スラリー15及び超音波伝達部材18bを伝播して圧電素子18aに印加される。圧電素子18aは、印加された超音波をパルス電圧に変換して変換器22に出力する。圧電素子18aからパルス電圧が入力されると、変換器22は、当該パルス電圧を変換して制御装置16に出力する。
【0034】
制御装置16は、超音波センサ18から発信された超音波が、研磨定盤4の上面4aで反射され、超音波センサ18で受信されるまでの時間tを計測する時間計測部16aを備えている。
【0035】
時間計測部16aは、例えば、超音波センサ18に対して超音波の発信を指示した時刻t1と、研磨定盤4の上面4aにおいて反射した超音波を超音波センサ18で受信した時刻t2との差(t2−t1(=t))を計測する。
【0036】
時間計測部16aで計測された時間tは、制御装置16の距離算出部16bに通知される。距離算出部16bは、通知された時間tに基づいて、押圧部材10の下面10aと、研磨定盤4の上面4aとの間の距離(間隔)gを算出する。
【0037】
距離算出部16bは、例えば、下記式(1)に基づいて距離gを算出する。なお、式(1)において、vはスラリー15中の音速を、dは超音波伝達部材18bの下面から押圧部材10の下面10aまでの距離をそれぞれ示している。
(1) ・・・ g=v(t/2)−d
【0038】
制御装置16は、距離算出部16bで算出された距離gの値を、例えば、任意の基準値(基準となる距離)g,g(g≦g)と比較して、押圧部材10の押し当て圧力を適切な範囲に保つ。
【0039】
具体的には、距離gの値が基準値gより小さい場合、制御装置16は、圧力調整機構12によって押圧部材10の押し当て圧力を低下させる。押圧部材10の押し当て圧力を低下させると、押圧部材10の下面10aと、研磨定盤4の上面4aとは離反する。
【0040】
一方、距離gの値が基準値gより大きい場合、制御装置16は、圧力調整機構12によって押圧部材10の押し当て圧力を上昇させる。押圧部材10の押し当て圧力を上昇させると、押圧部材10の下面10aと、研磨定盤4の上面4aとは近接する。このような制御により、押圧部材10の押し当て圧力を適切な範囲に保つことができる。
【0041】
次に、上記研磨装置で実施される砥材埋め込み方法について説明する。本実施の形態に係る砥材埋め込み方法では、まず、準備ステップとして、砥材13を分散させたスラリー15を研磨定盤4の上面4aに供給する。そして、押圧部材10を下降させて、超音波伝達部材18bの下面にスラリー15を接触させる(図2)。
【0042】
準備ステップを実施した後には、押圧部材10の下面10aと、研磨定盤4の上面4aとの間の距離(間隔)gを検出する距離検出ステップを実施する。この距離検出ステップでは、まず、センサユニット14から研磨定盤4に向けて超音波USaを発信し、研磨定盤4の上面4aで反射した超音波USbをセンサユニット14で受信する(図2)。
【0043】
超音波USbが受信されると、時間計測部16aは、超音波USaの発信から超音波USbの受信までに要した時間tを算出し、距離算出部16bに通知する。距離算出部16bは、通知された時間tに基づいて、押圧部材10の下面10aと、研磨定盤4の上面4aとの間の距離gを算出する。
【0044】
距離検出ステップを実施した後には、距離gの値に基づき押圧部材10の押し当て圧力を調整する圧力調整ステップを実施する。この圧力調整ステップでは、まず、距離算出部16bで算出された距離gの値を、任意の基準値g,g(g≦g)と比較する。
【0045】
距離gの値が基準値gより小さい場合、制御装置16は、圧力調整機構12によって押圧部材10の押し当て圧力を低下させる。これにより、押圧部材10の下面10aと、研磨定盤4の上面4aとは離反する。
【0046】
一方、距離gの値が基準値gより大きい場合、制御装置16は、圧力調整機構12によって押圧部材10の押し当て圧力を上昇させる。これにより、押圧部材10の下面10aと、研磨定盤4の上面4aとは近接する。
【0047】
押し当て圧力の調整量(補正量)は任意である。例えば、押し当て圧力の調整量を、基準値g又は基準値gと、距離gの値との差に応じて決定することができる。この場合、距離gの値に応じて押し当て圧力の調整量が変化するので、押圧部材10の押し当て圧力を適切な範囲に保ちやすい。ただし、押し当て圧力の調整量はこれに限定されず、一定でも良い。
【0048】
また、基準値gとしては、スラリー15に含まれる砥材13の平均砥粒径の値を用いることが好ましい。例えば、距離gの値が砥材13の平均砥粒径の値より小さくなると、押圧部材10の下面10aと、研磨定盤4の上面4aとの間に十分な砥材13を介在させることが難しくなり、砥材13を適切に埋め込むことができない。
【0049】
そこで、スラリー15に含まれる砥材13の平均砥粒径の値を基準値gとして用い、距離gの値が砥材13の平均砥粒径の値を下回った場合に押圧部材10の押し当て圧力を低下させるようにする。これにより、押圧部材10の下面10aと、研磨定盤4の上面4aとが離反するので、十分な砥材13を介在させて、砥材13を適切に埋め込むことができる。
【0050】
基準値gとしては、例えば、砥材13の平均砥粒径と略同等程度の値を用いると良い。距離gの上限となる基準値gをこのように設定することで、砥材13の埋め込みに要する時間が長くならずに済む。なお、基準値gは、基準値gと同じでも良い。
【0051】
圧力調整ステップを実施した後には、研磨定盤4の上面4aに砥材13を埋め込む埋め込みステップを実施する。図3は、埋め込みステップを模式的に示す図である。この埋め込みステップでは、砥材13を含むスラリー14を研磨定盤4の上面4aに供給しながら、研磨定盤4を回転させる。
【0052】
上述した距離検出ステップ及び圧力調整ステップによって、押圧部材10の押し当て圧力はあらかじめ適切に制御されている。よって、砥材13を適切に埋め込むことができる。
【0053】
なお、埋め込みステップの進行とともに、押圧部材10の下面10aと、研磨定盤4の上面4aとの間の距離gは変化する可能性があるので、埋め込みステップの実施中にも、距離検出ステップ及び移動ステップを繰り返し実施することが好ましい。
【0054】
埋め込みステップの実施中において、距離検出ステップ及び圧力調整ステップは、連続的に繰り返されても良いし、所定の時間を空けて繰り返されても良い。距離検出ステップ及び圧力調整ステップを実施するタイミングは、埋め込みの進行速度等に応じて任意に設定される。
【0055】
以上のように、本実施の形態に係る砥材埋め込み方法は、押圧部材10の下面(押圧面)10aと、研磨定盤4の上面4aとの間の距離gをセンサユニット(検出手段)14で検出する距離検出ステップと、距離検出ステップで検出された距離gに基づいて、押圧部材10で研磨定盤4を押圧する圧力(押し当て圧力)を調整する圧力調整ステップと、を備えるので、例えば、押圧部材10と研磨定盤4との間に十分な砥材13を介在させることができる距離を制御の基準に用いることで、研磨定盤4に対して簡単に砥材を埋め込むことができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施の形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施の形態では、式(1)に基づいて距離gを算出しているが、距離gの算出方法はこれに限定されない。
【0057】
式(1)では、超音波伝達部材18bが十分に薄い場合(圧電素子18aの下面から超音波伝達部材18bの下面までの距離が短い場合)を想定している。超音波伝達部材18bが厚い場合には、超音波伝達部材18bの厚みや、超音波伝達部材18bを伝播する超音波の音速等を考慮して距離gを算出することが望ましい。
【0058】
また、押圧部材10には、超音波を付与する圧電素子(超音波振動子)等を設けても良い。押圧部材10に超音波を付与することで、砥材13をより効率的に埋め込むことができる。ただし、この場合には、押圧部材10に付与される超音波の振動等を考慮して、各ステップを実施することが好ましい。
【0059】
その他、上記実施の形態に係る構成、方法などは、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0060】
2 研磨装置
4 研磨定盤
4a 上面
6 保持機構(保持手段)
6a 下面
8 ノズル
10 押圧部材
10a 下面(押圧面)
12 圧力調整機構
14 センサユニット(検出手段)
16 制御装置
16a 時間計測部
16b 距離算出部
18 超音波センサ
18a 圧電素子(超音波振動子)
18b 超音波伝達部材
20 パルス電圧発生器
22 変換器(コンバータ)
11 被加工物
11a 上面
11b 下面
13 砥材
15 スラリー
USa 超音波
USb 超音波(反射波)
図1
図2
図3