(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、数値A及びBについて「A〜B」なる表記は、特に別途規定されない限り、「A以上B以下」を意味するものとする。該表記において数値Aの単位が省略された場合には、数値Bに付された単位が数値Aの単位として適用されるものとする。
本明細書において、「平均粒子径」とは、レーザー回折法によって測定される体積分布の中間値を与える球相当径(体積平均値D50)を意味するものとする。レーザー回折法による粒子の体積分布の測定は、日機装株式会社製マイクロトラックを用いて好ましく行うことができる。
【0018】
<1.硬化性樹脂組成物>
本発明の第1の態様に係る硬化性樹脂組成物について説明する。
(窒化アルミニウム粒子)
本発明の硬化性樹脂組成物における窒化アルミニウム粒子としては、公知の窒化アルミニウム粒子を特に制限なく採用できる。その製法も特に制限されるものではなく、直接窒化法であってもよく、還元窒化法であってもよい。窒化アルミニウム粒子の平均粒子径は特に制限されるものではなく、例えば10nm〜100μmの平均粒子径を有する窒化アルミニウム粒子を採用できる。
好ましい一態様として、平均粒子径の異なる窒化アルミニウム粒子を混合して用いる態様を例示できる。例えば窒化アルミニウム粒子の全量に対して、平均粒子径10〜100μmの窒化アルミニウム粒子を30〜80質量%、平均粒子径1μm以上10μm未満の窒化アルミニウム粒子を10〜60質量%、及び平均粒子径100nm以上1μm未満の窒化アルミニウム粒子を3〜30質量%の割合で含む混合粒子によれば、硬化性樹脂組成物の粘度をより低く抑える事ができるので、硬化性樹脂組成物中の窒化アルミニウム粒子の充填量をさらに高めることが可能になる。
なお硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる高熱伝導性樹脂組成物に高い耐水性が要求される場合には、窒化アルミニウム粒子の平均粒子径が100nm〜100μmであることが好ましい。
【0019】
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる高熱伝導性樹脂組成物に特に高い耐水性が要求される場合の好ましい一例としては、窒化アルミニウム粒子を予め耐水化処理することにより得た耐水性窒化アルミニウム粒子を、エポキシ樹脂等との混合に供する態様を挙げることができる。この様な耐水化処理に用いる処理剤(以下、「耐水化処理剤」と略記することがある。)としては、リン酸、リン酸アルミニウム等の金属リン酸塩、酸性リン酸エステル、ホスホン酸化合物、シランカップリング剤、有機酸等を例示できる。耐水化処理剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記例示した耐水化処理剤の中でも、リン酸、リン酸アルミニウム等の金属リン酸塩、及び酸性リン酸エステルから選ばれる1種以上を好ましく用いることができる。これらの中でも酸性リン酸エステルを用いて耐水化処理を行うことにより、特に良好な耐水性を得ることが可能であり、また、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる高熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率をさらに高めることが容易になる。なお、窒化アルミニウム粒子の疎水化処理に使用する酸性リン酸エステルは、本発明の硬化性樹脂組成物における必須成分である酸性リン酸エステル(上記一般式(1))の要件を必ずしも満たしている必要はない。
【0020】
窒化アルミニウム粒子を耐水化処理するにあたっては、公知の方法を特に制限なく採用することができる。例えば、窒化アルミニウム粒子と耐水化処理剤とを溶媒中(湿式)で又は無溶媒(乾式)で混合した後、熱処理により個々の窒化アルミニウム粒子表面に被膜を形成する事が一般的である。但し、熱伝導率および耐水性を同時に高めるためには、均一で薄い被膜を形成する事が望ましく、したがって溶媒中に分散させた窒化アルミニウム粒子に対して耐水化処理剤による処理を行うことが好ましい。耐水化処理における溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール等のアルコール類;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル類、等から、耐水化処理剤が溶解する溶媒を適宜採用することができる。
【0021】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて窒化アルミニウム粒子以外のセラミックス粒子をさらに含有させてもよい。窒化アルミニウム粒子以外のセラミックス粒子をさらに含有する形態の本発明の硬化性樹脂組成物においては、窒化アルミニウム粒子、窒化アルミニウム粒子以外のセラミックス粒子、エポキシ樹脂、硬化剤、および上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルが、相互に混合されている。言い換えれば、窒化アルミニウム粒子、及び、窒化アルミニウム粒子以外のセラミックス粒子が、エポキシ樹脂、硬化剤、および上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルを含む混合物中に分散されている。本発明の硬化性樹脂組成物において使用可能な窒化アルミニウム粒子以外のセラミックス粒子としては、アルミナ粒子、マグネシア粒子、酸化亜鉛粒子、シリカ粒子、窒化珪素粒子、窒化ホウ素粒子、及び炭化珪素粒子等を例示できる。窒化アルミニウム粒子以外のセラミックス粒子は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。窒化アルミニウム粒子以外のセラミックス粒子の好ましい平均粒子径の範囲は、上記説明した窒化アルミニウム粒子と同様、特に制限されるものではない。例えば10nm〜100μmの平均粒子径を有する粒子を採用でき、高い耐水性が要求される場合には、100nm〜100μmの平均粒子径を有する粒子を好ましく採用できる。
また上記同様、好ましい一態様として、平均粒子径の異なるセラミックス粒子を混合して用いる態様を例示できる。なお本明細書において「セラミックス粒子」とは、「窒化アルミニウム粒子以外の」と規定しない限り、窒化アルミニウム粒子をも包含する概念である。例えばセラミックス粒子の全量に対して、(1)平均粒子径10〜100μmのセラミックス粒子を30〜80質量%、(2)平均粒子径1μm以上10μm未満のセラミックス粒子を10〜60質量%、及び(3)平均粒子径100nm以上1μm未満のセラミックス粒子を3〜30質量%の割合で含む混合粒子(ただし上記(1)(2)及び(3)のセラミックス粒子のうち1つ以上が窒化アルミニウム粒子を含有するセラミックス粒子である。)によれば、硬化性樹脂組成物の粘度をより低く抑える事ができるので、硬化性樹脂組成物中のセラミックス粒子の充填量をさらに高めることが可能になる。
【0022】
但し、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる高熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率を高める観点からは、アルミナ、マグネシア、又は酸化亜鉛の粒子の含有量は、これら粒子の総表面積が、窒化アルミニウム粒子の総表面積に対して2倍以下となる量であることが好ましく、1倍以下となる量であることがより好ましい。シリカは熱伝導率が低いため、シリカ粒子の含有量は、その総表面積が、窒化アルミニウム粒子の総表面積に対して1倍以下となる量であることが好ましく、1/2倍以下となる量であることがより好ましい。窒化珪素および炭化珪素は熱伝導率が高いため、窒化珪素又は炭化珪素の粒子の含有量は、これら粒子の総表面積が、窒化アルミニウム粒子の総表面積に対して4倍以下となる量であることが好ましく、3倍以下となる量であることがより好ましい。窒化ホウ素粒子の場合には含有量の増加に伴って熱伝導率が高くなる場合もある一方で組成物の粘度が増大するため、窒化ホウ素粒子の含有量は、その総表面積が、窒化アルミニウム粒子の総表面積に対して4倍以下となる量であることが好ましい。
なお本明細書において、ある粒子の「総表面積」とは、該粒子のBET法による比表面積(BET比表面積)(m
2/g)に、該粒子の総質量(g)を乗じた値を意味するものとする。
【0023】
(エポキシ樹脂)
本発明の硬化性樹脂組成物におけるエポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂を特に制限なく採用できる。その具体例としては、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂に多官能エポキシ樹脂を加えたもの、が挙げられる。
【0024】
(硬化剤)
本発明の硬化性樹脂組成物における硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として公知の硬化剤を特に制限なく採用できる。その具体例としては、アミン;ポリアミド;イミダゾール;酸無水物;潜在性硬化剤と呼ばれる三フッ化ホウ素−アミン錯体;ジシアンジアミド;有機酸ヒドラジド;フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有する化合物;並びに、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスフェート等の光硬化剤、が挙げられる。これらの中でも、アミン、イミダゾール、酸無水物が好ましい。
【0025】
上記アミンの具体例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の鎖状脂肪族ポリアミン;N−アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミン等の環状脂肪族ポリアミン;m−キシレンジアミン等の脂肪芳香族アミン;メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェミルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン等が挙げられる。
上記イミダゾールの具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、エポキシイミダゾールアダクト等が挙げられる。
上記酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、アルキルスチレン−無水マレイン酸共重合体、クロレンド酸無水物、ポリアゼライン酸無水物等が挙げられる。
【0026】
(酸性リン酸エステル)
本発明の硬化性樹脂組成物における酸性リン酸エステルは、下記一般式(1)で表される構造を有する。
【0027】
【化2】
(式(1)中、
R
1:炭素数4〜20の飽和または不飽和ヒドロカルビル基
R
2:炭素数1〜20の飽和ヒドロカルビレン基
R
3:炭素数2または3の飽和ヒドロカルビレン基
R
4:炭素数1〜8の飽和または不飽和ヒドロカルビレン基
k:0〜20の整数
l:0〜20の整数
m:0〜20の整数
n:1または2
であって、
R
1が複数存在する場合には、複数のR
1は同一でも異なっていてもよく、
R
2が複数存在する場合には、複数のR
2は同一でも異なっていてもよく、
R
3が複数存在する場合には、複数のR
3は同一でも異なっていてもよく、
R
4が複数存在する場合には、複数のR
4は同一でも異なっていてもよく、
k個の−COR
2O−基、l個の−R
3O−基、及びm個の−COR
4COO−基がなす順序は任意であり、
n=2の場合、2個のR
1O(COR
2O)
k(R
3O)
l(COR
4COO)
m基は同一でも異なっていてもよい。)
【0028】
式(1)中、R
1は、炭素数4〜20の飽和または不飽和ヒドロカルビル基である限り特に限定されない。R
1の具体例としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の飽和炭化水素基;フェニル基、ノニルフェニル基等の不飽和炭化水素基が挙げられる。R
1の炭素数は6〜18であることが好ましく、特にk=l=m=0の場合にはR
1の炭素数は10〜18であることが好ましい。
【0029】
式(1)中、R
2は炭素数1〜20の飽和ヒドロカルビレン基である。R
2の炭素数は1〜16であることが好ましい。R
2の具体例としては、メチレン基、エチレン基、ペンチレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基等が挙げられる。
【0030】
式(1)中、R
3は炭素数2または3の飽和ヒドロカルビレン基である。R
3の炭素数は2であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。
【0031】
式(1)中、R
4は炭素数1〜8の飽和または不飽和ヒドロカルビレン基である。R
4の炭素数は1〜6であることが好ましい。R
4の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等の飽和炭化水素;フェニル基等の不飽和炭化水素が挙げられる。
【0032】
式(1)中、kは0〜20の整数である限り特に限定されない。ただし好ましくは0〜10の整数である。
【0033】
式(1)中、lは0〜20の整数である限り特に限定されない。ただし好ましくは0〜10の整数である。
【0034】
式(1)中、mは0〜20の整数である限り特に限定されない。ただし好ましくは0〜10の整数である。
【0035】
式(1)中、k、l、及びmとともに表記されている単量体ユニット、すなわち、k個の−COR
2O−基、l個の−R
3O−基、及びm個の−COR
4COO−基が、R
1O−基とリン原子との間で並ぶ順序は任意である。これらの基は必ずしも式(1)の通りに並んでいる必要はない。また、−(COR
2O)
k(R
3O)
l(COR
4COO)
m−基はブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0036】
式(1)中、nは1又は2である。本発明の硬化性樹脂組成物における、一般式(1)で表される酸性リン酸エステルは、1個以上の酸性水酸基を必要とする。この理由は定かではないが、本発明者は、フィラーとなる窒化アルミニウムが固体塩基であり、その表面への吸着に酸性基が必要なためと推察している。
【0037】
一般式(1)で表される酸性リン酸エステルは、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物であってもよい。また、一般式(1)で表される酸性リン酸エステルがn=2の場合、同一分子内に異なる側鎖を有する化合物であってもよい。すなわち、n=2の場合、2個のR
1O(COR
2O)
k(R
3O)
l(COR
4COO)
m基は同一でも異なっていてもよい。更に、上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルは、構造の異なる化合物の混合物であってもよい。なお、一般式(1)で表される酸性リン酸エステルは、通常、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物として得られる。
【0038】
酸性リン酸エステルであっても、一般式(1)で表される酸性リン酸エステルではないものは、窒化アルミニウムとエポキシ樹脂との親和性が十分でないため、粘度が上昇する或いは熱伝導率が低下する等の虞がある。
【0039】
一般式(1)で表される酸性リン酸エステルの分子量は特に制限されるものではないが、好ましくは5000以下であり、より好ましくは2000以下であり、最も好ましくは1500以下である。これは窒化アルミニウム表面に吸着した酸性リン酸エステルの側鎖がある程度短い方が、窒化アルミニウム粒子とエポキシ樹脂との間の界面熱抵抗を低減するにあたって有利に作用するためと考えられる。
【0040】
上記酸性リン酸エステルのうち、商業的に入手可能な具体例としては、DYSPERBYK−111(ビックケミー・ジャパン社製)、BYK−W9010(ビックケミー・ジャパン社製)等が挙げられる。
【0041】
一般式(1)で表される酸性リン酸エステルの中でも、k=m=0である下記一般式(2)で表される構造を有する酸性リン酸エステルが好ましい。このような構造を有する酸性リン酸エステルを用いることにより、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させた樹脂組成物の熱伝導性をさらに高めることが容易になる。
【0042】
【化3】
(式(2)中、
R
1:炭素数4〜20の飽和または不飽和ヒドロカルビル基
R
3:炭素数2または3の飽和ヒドロカルビレン基
l:0〜20の整数
n:1または2
であって、
R
1が複数存在する場合には、複数のR
1は同一でも異なっていてもよく、
R
3が複数存在する場合には、複数のR
3は同一でも異なっていてもよい。)
【0043】
式(2)中、R
1は、炭素数4〜20の飽和または不飽和ヒドロカルビル基である限り、特に限定されない。R
1として、飽和ヒドロカルビル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基等が挙げられる。不飽和ヒドロカルビル基としては、フェニル基、ノニルフェニル基、オレイル基等が挙げられる。R
1の炭素数は6〜18であることが好ましく、特にlが0の場合にはR
1の炭素数は10〜18であることが好ましい。R
1として特に好ましい基としては、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基を挙げることができる。
【0044】
式(2)中、R
3は炭素数2または3の飽和ヒドロカルビレン基である。R
3の炭素数は2であることが好ましい。R
3として好ましい基としては、エチレン基を挙げることができる。
【0045】
式(2)中、lは0〜20の整数である限り特に限定されない。ただし好ましくは0〜10の整数である。
式(2)中、nは1又は2である。
【0046】
一般式(2)で表される酸性リン酸エステルはn=1の化合物とn=2の化合物との混合物であってもよい。また、一般式(2)で表される酸性リン酸エステルがn=2の場合、同一分子内に異なる側鎖を有する化合物であってもよい。すなわち、n=2の場合、2個のR
1O(R
3O)
l基は同一でも異なっていてもよい。更に、一般式(2)で表される酸性リン酸エステルは、構造の異なる化合物の混合物であってもよい。なお、一般式(2)で表される酸性リン酸エステルは、通常、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物として得られる。
【0047】
一般式(2)で表される酸性リン酸エステルの具体例としては、
(1)R
1がオクチル基、lが0であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(2)R
1がオクチル基、lが1、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(3)R
1がオクチル基、lが2、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(4)R
1がデシル基、lが0であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(5)R
1がデシル基、lが1、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(6)R
1がデシル基、lが2、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(7)R
1がデシル基、lが3、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(8)R
1がウンデシル基、lが0であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(9)R
1がウンデシル基、lが1、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(10)R
1がウンデシル基、lが2、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(11)R
1がウンデシル基、lが3、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(12)R
1がウンデシル基、lが4、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(13)R
1がウンデシル基、lが5、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(14)R
1がウンデシル基、lが6、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(15)R
1がウンデシル基、lが7、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(16)R
1がウンデシル基、lが8、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(17)R
1がウンデシル基、lが9、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(18)R
1がウンデシル基、lが10、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(19)R
1がドデシル基、lが0であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(20)R
1がドデシル基、lが1、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(21)R
1がドデシル基、lが2、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(22)R
1がドデシル基、lが3、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(23)R
1がドデシル基、lが4、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(24)R
1がドデシル基、lが5、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(25)R
1がドデシル基、lが6、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(26)R
1がドデシル基、lが7、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(27)R
1がドデシル基、lが8、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(28)R
1がドデシル基、lが9、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(29)R
1がドデシル基、lが10、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(30)R
1がオクチルデシル基、lが0であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(31)R
1がオクチルデシル基、lが1、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(32)R
1がオクチルデシル基、lが2、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(33)R
1がオクチルデシル基、lが3、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(34)R
1がオクチルデシル基、lが4、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(35)R
1がオクチルデシル基、lが5、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(36)R
1がオクチルデシル基、lが6、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(37)R
1がオクチルデシル基、lが7、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(38)R
1がオクチルデシル基、lが8、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(39)R
1がオクチルデシル基、lが9、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(40)R
1がオクチルデシル基、lが10、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(41)R
1がヘキシル基、lが0、nが1である化合物と、
R
1がヘキシル基、lが0、nが2である化合物と、
R
1がヘプチル基、lが0、nが1である化合物と、
R
1がヘプチル基、lが0、nが2である化合物と、
R
1がオクチル基、lが0、nが1である化合物と、
R
1がオクチル基、lが0、nが2である化合物と、
R
1がノニル基、lが0、nが1である化合物と、
R
1がノニル基、lが0、nが2である化合物と、
R
1がデシル基、lが0、nが1である化合物と、
R
1がデシル基、lが0、nが2である化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(42)上記(41)の酸性リン酸エステル中、n=2の化合物においては2個のR
1のうち一方が該化合物について指定された基(例えば「R
1がデシル基、lが0、nが2である化合物」においてはデシル基が指定されている。)であり、他方がヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、又はデシル基である、酸性リン酸エステル;
(43)R
1がヘキシル基、lが1、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がヘキシル基、lが1、R
3がエチレン基、nが2である化合物と、
R
1がヘプチル基、lが1、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がヘプチル基、lが1、R
3がエチレン基、nが2である化合物と、
R
1がオクチル基、lが1、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がオクチル基、lが1、R
3がエチレン基、nが2である化合物と、
R
1がノニル基、lが1、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がノニル基、lが1、R
3がエチレン基、nが2である化合物と、
R
1がデシル基、lが1、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がデシル基、lが1、R
3がエチレン基、nが2である化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(44)上記(43)の酸性リン酸エステル中、n=2の化合物においては2個のR
1のうち一方が該化合物について指定された基(例えば「R
1がデシル基、lが1、R
3がエチレン基、nが2である化合物」においてはデシル基が指定されている。)であり、他方がヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、又はデシル基である、酸性リン酸エステル;
(45)R
1がヘキシル基、lが2、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がヘキシル基、lが2、R
3がエチレン基、nが2である化合物と、
R
1がヘプチル基、lが2、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がヘプチル基、lが2、R
3がエチレン基、nが2である化合物と、
R
1がオクチル基、lが2、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がオクチル基、lが2、R
3がエチレン基、nが2である化合物と、
R
1がノニル基、lが2、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がノニル基、lが2、R
3がエチレン基、nが2である化合物と、
R
1がデシル基、lが2、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がデシル基、lが2、R
3がエチレン基、nが2である化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(46)上記(45)の酸性リン酸エステル中、n=2の化合物においては2個のR
1のうち一方が該化合物について指定された基(例えば「R
1がデシル基、lが2、R
3がエチレン基、nが2である化合物」においてはデシル基が指定されている。)であり、他方がヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、又はデシル基である、酸性リン酸エステル;
(47)R
1がヘキシル基、lが3、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がヘキシル基、lが3、R
3がエチレン基、nが2である化合物と、
R
1がヘプチル基、lが3、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がヘプチル基、lが3、R
3がエチレン基、nが2である化合物と、
R
1がオクチル基、lが3、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がオクチル基、lが3、R
3がエチレン基、nが2である化合物と、
R
1がノニル基、lが3、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がノニル基、lが3、R
3がエチレン基、nが2である化合物と、
R
1がデシル基、lが3、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がデシル基、lが3、R
3がエチレン基、nが2である化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(48)上記(47)の酸性リン酸エステル中、n=2の化合物においては2個のR
1のうち一方が該化合物について指定された基(例えば「R
1がデシル基、lが3、R
3がエチレン基、nが2である化合物」においてはデシル基が指定されている。)であり、他方がヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、又はデシル基である、酸性リン酸エステル;
(49)R
1がヘキシル基、lが4、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がヘキシル基、lが4、R
3がエチレン基、nが2である化合物と、
R
1がヘプチル基、lが4、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がヘプチル基、lが4、R
3がエチレン基、nが2である化合物と、
R
1がオクチル基、lが4、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がオクチル基、lが4、R
3がエチレン基、nが2である化合物と、
R
1がノニル基、lが4、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がノニル基、lが4、R
3がエチレン基、nが2である化合物と、
R
1がデシル基、lが4、R
3がエチレン基、nが1である化合物と、
R
1がデシル基、lが4、R
3がエチレン基、nが2である化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(50)上記(49)の酸性リン酸エステル中、n=2の化合物においては2個のR
1のうち一方が該化合物について指定された基(例えば「R
1がデシル基、lが3、R
3がエチレン基、nが2である化合物」においてはデシル基が指定されている。)であり、他方がヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、又はデシル基である、酸性リン酸エステル;
等を挙げることができる。
【0048】
以上の化合物群の中でも好ましい酸性リン酸エステルとしては、
(5)R
1がデシル基、lが1、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(6)R
1がデシル基、lが2、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(7)R
1がデシル基、lが3、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(8)R
1がウンデシル基、lが0であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(9)R
1がウンデシル基、lが1、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(10)R
1がウンデシル基、lが2、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(11)R
1がウンデシル基、lが3、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(12)R
1がウンデシル基、lが4、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(13)R
1がウンデシル基、lが5、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(14)R
1がウンデシル基、lが6、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(15)R
1がウンデシル基、lが7、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(16)R
1がウンデシル基、lが8、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(17)R
1がウンデシル基、lが9、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(18)R
1がウンデシル基、lが10、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(19)R
1がドデシル基、lが0であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(20)R
1がドデシル基、lが1、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(21)R
1がドデシル基、lが2、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(22)R
1がドデシル基、lが3、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(23)R
1がドデシル基、lが4、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(24)R
1がドデシル基、lが5、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(25)R
1がドデシル基、lが6、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(26)R
1がドデシル基、lが7、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(27)R
1がドデシル基、lが8、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(28)R
1がドデシル基、lが9、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
(29)R
1がドデシル基、lが10、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル;
等を例示できる。
【0049】
上記酸性リン酸エステルの中で、商業的に入手可能な酸性リン酸エステルとしては、
(7)R
1が
トリデシル基、lが3、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル(フォスファノールRS−410:東邦化学社製);
(14)R
1が
トリデシル基、lが6、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル(フォスファノールRS−610:東邦化学社製);
(18)R
1が
トリデシル基、lが10、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル(フォスファノールRS−710:東邦化学社製);
(32)R
1がオクチルデシル基、lが2、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル(フォスファノールRL−310:東邦化学社製);
(50)R
1がヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基の混合物であり、lが4であり、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物とのとの混合物である酸性リン酸エステル(フォスファノールRA−600:東邦化学社製);
(19a)R
1がドデシル基、lが0、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステルであって、n=1の化合物の含有量(mol)がn=2の化合物の含有量(mol)より多い混合物である酸性リン酸エステル(フォスファノールML−200:東邦化学社製);
(21)R
1がドデシル基、lが2、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル(フォスファノールML−220:東邦化学社製);
(23)R
1がドデシル基、lが4、R
3がエチレン基であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステル(フォスファノールML−240:東邦化学社製);
(19b)R
1がドデシル基、lが0であり、n=1の化合物とn=2の化合物との混合物である酸性リン酸エステルであって、n=1の化合物の含有量(mol)とn=2の化合物の含有量(mol)とがほぼ等しい混合物である酸性リン酸エステル(フォスファノールGF−199:東邦化学社製);
等を例示できる。
【0050】
(含有量)
本発明の硬化性樹脂組成物中の窒化アルミニウム粒子の含有量は特に限定されるものではない。ただし、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる高熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率をより高める観点から、窒化アルミニウム粒子の含有量は、エポキシ樹脂、硬化剤、および酸性リン酸エステルの合計量100質量部に対して好ましくは50質量部以上であり、より好ましくは100質量部以上であり、最も好ましくは200質量部以上である。また硬化性樹脂組成物の粘度、流動性、及び作業性の観点からは、900質量部以下であることが好ましく、600質量部以下であることがより好ましい。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、硬化剤の特性、エポキシ樹脂のエポキシ当量、酸性リン酸エステル及び窒化アルミニウム粒子の含有量等を考慮して、当業者が適宜決定することができる。一般的には、エポキシ樹脂100重量部に対し0.1〜200重量部であり、より好ましくは0.4〜150重量部である。
【0052】
本発明の硬化性樹脂組成物中の、一般式(1)で表される酸性リン酸エステルの含有量は、エポキシ樹脂の特性、硬化剤の特性、及び窒化アルミニウム粒子の比表面積などを考慮して、当業者が適宜決定することができる。ただし、窒化アルミニウム粒子とエポキシ樹脂との十分な親和性を保ちながら、エポキシ樹脂本来の物性を発揮させる観点からは、エポキシ樹脂100質量部に対して一般式(1)で表される酸性リン酸エステル0.4〜5質量部が好ましく、0.6〜4質量部がより好ましい。
【0053】
(その他の成分)
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて上記以外の成分を含有してもよい。そのような成分としては、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の単官能または多官能イソシアネート化合物;フェノール、アルコール、オキシム等のブロック剤により前記単官能または多官能イソシアネート化合物の末端を保護されたブロックイソシアネート化合物;カルボジイミド化合物;ウレタン化合物;アセチルアセトンアルミニウム等のルイス酸化合物を例示できる。これらの中でもルイス酸化合物は、本発明の硬化性樹脂組成物のポットライフ延長に有効である。これらの成分の添加量は、エポキシ樹脂100質量部に対して通常50質量部以下であり、好ましくは40質量部以下である。含有量が上記上限値を超える場合には、エポキシ樹脂の物性が低下し、例えば積層基板の接着強度が低下する等の虞がある。
【0054】
<2.硬化性樹脂組成物の製造方法>
本発明の第2の態様に係る硬化性樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、窒化アルミニウム粒子、エポキシ樹脂、硬化剤、および上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルを混合することにより、製造することができる。硬化性樹脂組成物の各成分を混合する順序は特に限定されるものではない。ただし、
(a)窒化アルミニウム粒子及び上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルのみを予め混合した後に、上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルを含まないその他の成分(エポキシ樹脂や硬化剤)との混合を行った場合;及び、
(b)窒化アルミニウム粒子を、上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルで表面処理された粒子とした後に、上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルを含まないその他の成分(エポキシ樹脂や硬化剤)との混合を行った場合
には、硬化後の樹脂組成物に高い熱伝導性を付与する効果が劣ったものとなる。よって上記(a)及び(b)以外の順序で混合を行うことが好ましい。この理由は完全に解明されてはいないものの、予め窒化アルミニウム粒子と酸性リン酸エステルとを接触させると、窒化アルミニウム粒子表面の酸性リン酸エステルの側鎖が収縮してしまい、窒化アルミニウム粒子とエポキシ樹脂との親和性が劣化するためであると考えられる。言い換えれば、上記(a)又は(b)の混合順序によって製造された硬化性樹脂組成物においては、「窒化アルミニウム粒子、エポキシ樹脂、硬化剤、および上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルが相互に混合されている」とはいえない。
【0055】
硬化性樹脂組成物の各成分の混合順序としては、
図1のフローチャートS1に示すように、窒化アルミニウム粒子を、エポキシ樹脂の全部又は一部と上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルとを含む混合物と混合する工程(工程S11)を経ることが、硬化後の樹脂組成物に高い熱伝導性を付与できる点で好ましい。その理由は、予め上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルとエポキシ樹脂とを混合することにより、酸性リン酸エステルの側鎖が十分に伸びた状態となり、その結果エポキシ樹脂との親和性が良好になるためであると推察される。工程S11において、「エポキシ樹脂の全部又は一部と上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルとを含む混合物」中のエポキシ樹脂の含有量は特に限定されるものではないが、当該混合物中の上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステル100質量部に対して、通常70質量部以上であり、好ましくは100質量部以上であり、より好ましくは150質量部以上であり、特に好ましくは200質量部以上である。工程S11において、「エポキシ樹脂の全部又は一部と上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルとを含む混合物」は硬化剤を含んでいてもよく、硬化剤を含んでいなくてもよいが、窒化アルミニウム粒子は含んでいないことが好ましい。
工程S11の後、混合すべき全ての材料の混合が完了している場合(判断工程S12で肯定判断がなされた場合)には、製造方法S1は終了する。工程S11の後、混合すべき未混合の材料(例えばエポキシ樹脂の残部や硬化剤等。)が存在する場合(判断工程S12で否定判断がなされた場合)には、工程S11で得られた混合物と、当該混合すべき未混合の材料とを混合する(工程S13)。
【0056】
典型的には例えば、
図2のフローチャートS2に示すように、上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルとエポキシ樹脂とを混合(工程S21)した後に、工程S21で得られた混合物と他の成分(窒化アルミニウム粒子や硬化剤)とを混合する(工程S22)ことにより、本発明の硬化性樹脂組成物を好ましく製造することができる。
【0057】
本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法においては、硬化剤と上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルとを接触させる前に、窒化アルミニウム粒子と上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルとを接触させることが好ましい。これは特にアミンやイミダゾール等の塩基性硬化剤を用いる場合に顕著である。具体的には、例えば
図3のフローチャートS3に示すように、酸性リン酸エステルと、エポキシ樹脂の全量または一部とを混合し(工程S31);該工程S31で得られた混合物と、窒化アルミニウム粒子とを混合し(工程S32);その後に、該工程S32で得られた混合物と、エポキシ樹脂の残部と、硬化剤とを混合する(工程S33)ことが好ましい。工程S33において、エポキシ樹脂の残部及び硬化剤は同時に混合してもよく、逐次的に混合してもよい。
工程S33を逐次的に行う場合には、
図4のフローチャートS4に示すように、酸性リン酸エステルと、エポキシ樹脂の全量または一部とを混合し(工程S41);該工程S41で得られた混合物と、窒化アルミニウム粒子とを混合し(工程S42);該工程S42で得られた混合物と、エポキシ樹脂の残部とを混合し(工程S43);最後に、工程S43で得られた混合物と硬化剤(塩基性硬化剤)とを混合する(工程S44)、という順序を好ましく採用できる。
また、窒化アルミニウム粒子を混合する工程の後、すなわち
図3のフローチャートS3においてはS32とS33との間、
図4のフローチャートS4においてはS42とS43との間において、養生(aging)と呼ばれる加熱下での保存処理を行う態様も好ましく採用できる。養生工程における一般的な加熱温度は40〜100℃であり、一般的な加熱時間は1〜72時間である。
【0058】
硬化剤と上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルとを接触させる前に窒化アルミニウム粒子と上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルとを接触させる混合手順が好ましい理由は完全には解明されていないものの、硬化剤が塩基性硬化剤である場合、窒化アルミニウム粒子と上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルとを接触させるより前に塩基性硬化剤と該酸性リン酸エステルとを接触させた場合には、塩基性硬化剤と該酸性リン酸エステルとが塩を形成することにより硬化剤の作用が低下する場合があるためと考えられる。窒化アルミニウムはそれ自体が塩基性であるから、まず窒化アルミニウム粒子表面への酸性リン酸エステル分子の吸着を促すことにより、上記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルの効果を十分に発揮させることができ、且つ他の塩基性成分や、全体としては塩基性でなくとも塩基性の反応部位を有する成分への副作用を抑制できるものと考えられる。そして窒化アルミニウム粒子の混合後に養生工程を行う態様によれば、窒化アルミニウム粒子表面への酸性リン酸エステル分子の吸着を一層促進できるものと考えられる。
【0059】
本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法において、混合の方法は特に制限されるものではない。混合にあたっては、公知の混合装置を特に制限なく用いることができる。混合装置の具体例としては、プラネタリーミキサー、トリミックスなどのニーダー、三本ロールなどのロール混練機、擂潰機等を挙げることができる。
なお混合すべき成分がいずれも常温で固体である等の場合には、加温することにより溶融状態で混合してもよい。また固体成分を溶媒に溶解させた状態で混合してもよく、その後必要であれば溶媒を乾燥除去してもよい。
【0060】
<3.高熱伝導性樹脂組成物>
本発明の第3の態様に係る高熱伝導性樹脂組成物について説明する。
本発明の第1の態様に係る硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、本発明の第3の態様に係る高熱伝導性樹脂組成物を得ることができる。エポキシ樹脂の硬化には、大別して加熱硬化と光等のエネルギー照射による光硬化との二種類があり、用途に応じて適宜選択することができる。ただし積層基板の製造においては加熱硬化が一般的である。加熱硬化の場合の加熱温度は通常120℃〜220℃であり、好ましくは140℃〜200℃である。
【0061】
本発明の高熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率は特に限定されないものの、後述する本発明の第4の態様に係る高熱伝導性積層基板の熱抵抗を低減する観点からは、4W/m・K以上であることが好ましく、5W/m・K以上であることがより好ましい。
【0062】
<4.高熱伝導性積層基板>
本発明の第4の態様に係る高熱伝導性積層基板について説明する。
本発明の第1の態様に係る硬化性樹脂組成物は、樹脂接着剤として用いることができる。例えば、
図5に示すように、金属基板または高熱伝導性セラミックス基板1(以下、単に「基板1」と略記することがある。)と、回路形成のための金属箔2とを、本発明の硬化性樹脂組成物3を介して積層する。その後、硬化性樹脂組成物3を硬化させることにより、
図6に示すように、金属箔2、硬化性樹脂組成物3の硬化体である高熱伝導性樹脂組成物層4、および、金属基板または高熱伝導性セラミックス基板1が上記順に積層されている、高熱伝導性積層基板10(以下、「積層基板10」と略記することがある。)を製造できる。
【0063】
(基板:金属基板)
本発明の積層基板10における基板1が金属基板である場合、該金属基板としては、一般に放熱基板として使用される金属基板を特に制限なく用いることができる。好ましい金属基板の材質としては、銅、アルミニウム、銅−タングステン合金、銅−モリブデン合金、及び、SiCにアルミニウムを含浸させたAl−SiC等を例示できる。
【0064】
(基板:高熱伝導性セラミックス基板)
本発明の積層基板10における基板1が高熱伝導性セラミックス基板である場合、該高熱伝導性セラミックス基板は、半導体素子からの発生する熱を放出するために十分な熱伝導率を有するセラミックス基板であり、好ましくは30W/m・K以上、より好ましくは70W/m・K以上の熱伝導率を有するセラミックス基板である。本発明において使用可能な高熱伝導性セラミックス基板の具体例としては、窒化アルミニウム基板、窒化珪素基板、アルミナ基板等を挙げることができる。中でも、特に高い放熱性を要求される場合には、窒化アルミニウム基板または窒化珪素基板を用いる事が特に好ましい。
【0065】
本発明の積層基板10における基板1の厚さは特に限定されない。ただし、基板の熱抵抗を低減する観点からは、不必要に厚くすることは好ましくない。よって金属基板又は高熱伝導性セラミックス基板1の厚さは好ましくは0.3〜10mmである。
【0066】
(金属箔)
本発明の積層基板10における金属箔2としては、金箔、銀箔、銅箔、アルミ箔など、公知の金属箔を特に制限なく採用できる。ただし、電気伝導率およびコストの観点から、銅箔が好適に使用される。銅箔の厚さは特に限定されないが、一般的には5〜105μm、好ましくは8〜35μmである。銅箔の製法は特に限定されないが、一般的に使用される銅箔は圧延銅箔または電解銅箔である。
【0067】
(高熱伝導性樹脂組成物層)
本発明の積層基板10における高熱伝導性樹脂組成物層4の厚さは特に限定されるものではなく、絶縁性、接着力、耐久性等を考慮して当業者が適宜決定することができる。基板1が金属基板である場合には、高熱伝導性樹脂組成物層4に絶縁層としての特性が要求されるため、高熱伝導性樹脂組成物層4の厚さは通常20〜300μmであり、好ましくは40〜250μmであり、より好ましくは50〜200μmである。高熱伝導性樹脂組成物層4の厚さが上記下限値未満の場合、絶縁性が低下する虞がある。高熱伝導性樹脂組成物層4の厚さが上記上限値を超える場合、積層基板10の熱伝導率が低下する虞がある。一方、基板1が高熱伝導性セラミックス基板である場合には、界面での熱抵抗を低減する観点から、高熱伝導性樹脂組成物層4の厚さは好ましくは1〜20μmであり、より好ましくは2〜10μmである。
【0068】
(熱伝導率)
本発明における高熱伝導性積層基板10の熱伝導率は、金属箔2の厚さにより基板全体の熱伝導率が大きく変化するので、金属箔2のない状態で評価する事が望ましい。基板1及び高熱伝導性樹脂組成物層4からなる複合層5(
図6参照。以下、単に「複合層5」と略記することがある。)の熱伝導率は、各層の熱伝導率及び厚さの関係を表す下記式(3):
【0069】
【数1】
(式(3)中、
d
1:複合層5の厚さ
d
2:高熱伝導性樹脂組成物層4の厚さ
d
3:金属基板または高熱伝導性セラミックス基板1の厚さ
λ
1:複合層5の熱伝導率
λ
2:高熱伝導性樹脂組成物層4の熱伝導率
λ
3:金属基板または高熱伝導性セラミックス基板1の熱伝導率
である。)
【0070】
から複合層5の熱伝導率λ
1を下記式(4)により理論的に求めることができる。
【0072】
複合層5の熱伝導率は、20W/m・K以上であることが好ましく、30W/m・Kであることがより好ましい。
【0073】
<5.高熱伝導性積層基板の製造方法>
本発明の第5の態様に係る高熱伝導性積層基板の製造方法について説明する。
本発明の高熱伝導性積層基板10を製造するプロセスとしては、例えば金属ベース基板等の積層基板の製造プロセスとして公知のプロセスを特に制限なく採用することができる。具体的には、例えば
図7のフローチャートS10に示すように、基板1の表面に本発明の硬化性樹脂組成物を塗布し(工程S101)、金属箔2と基板1とを圧着し(工程S102及び
図5)、その後、加熱することによって硬化性樹脂組成物3からなる樹脂層を硬化させる(工程S103及び
図6)、という方法を挙げることができる。
工程S101において、もし硬化性樹脂組成物の粘度が高い場合には、
図8のフローチャートS11に示すように、溶媒に硬化性樹脂組成物を溶解した溶液を塗布することができる(工程S111)。その場合、硬化性樹脂組成物の溶液を塗布した後、金属箔2を圧着する前に溶媒を乾燥除去する(工程S112)。工程S112における加熱温度は硬化性樹脂組成物の組成により適宜決定することができる。ただし一般的には120℃〜220℃であり、好ましくは140℃〜200℃である。その後は上記製造方法S10同様に、金属箔2と基板1とを圧着し(工程S113及び
図5)、加熱することによって硬化性樹脂組成物3からなる樹脂層を硬化させる(工程S114及び
図6)ことにより、高熱伝導性積層基板10を製造することができる。
【0074】
なお本発明の高熱伝導性積層基板の製造方法に関する上記説明では、本発明の硬化性樹脂組成物3を基板1の表面に塗布した後に金属箔2と基板1とを圧着させる形態の製造方法S10及びS11を例示した。しかし本発明の高熱伝導性積層基板の製造方法は当該形態に限定されない。硬化性樹脂組成物層を予め金属箔表面に形成する形態の製造方法とすることも可能である。例えば
図9のフローチャートS12に示すように、金属箔2に本発明の硬化性樹脂組成物を塗布することにより、金属箔2の表面に硬化性樹脂組成物3の層を形成し(工程S121)、該硬化性樹脂組成物3の層が表面に形成された金属箔2を基板1に圧着し(工程S122及び
図5)、加熱することによって硬化性樹脂組成物3の層を硬化させる(工程S123及び
図6)ことにより、高熱伝導性積層基板10を製造できる。
【0075】
本発明の高熱伝導性積層基板の製造方法においては、基板1と金属箔2との接着性を向上させるために、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、有機酸性リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物などの接着促進成分を本発明の硬化性樹脂組成物に含有させてもよい。
また、これらの接着促進成分を硬化性樹脂組成物に含有させる代わりに、該接着促進成分を基板1の表面、および/または、金属箔2の表面に塗布し、その後に該接着促進成分と硬化性樹脂組成物とを接触させてもよい。例えば
図10のフローチャートS13に示すように、接着促進成分を溶媒で希釈することによってプライマー溶液を調製し(工程S131)、該プライマー溶液をスプレー、スピン、ディッピング等により基板1の表面および/または金属箔2の表面に塗布し(工程S132)、塗布したプライマー溶液を乾燥させて溶媒を除去する(工程S133)。その後、基板1の表面または金属箔2の表面に本発明の硬化性樹脂組成物を塗布することにより硬化性樹脂組成物3の層を形成し(工程S134)、金属箔2を基板1に圧着し(工程S135)、加熱することによって硬化性樹脂組成物3の層を硬化させる(工程S136)ことにより、本発明の高熱伝導性積層基板10を製造できる。なおプライマー溶液は溶媒および接着促進成分の他に、エポキシ樹脂や硬化剤を含んでいてもよい。
特に、基板1がアルミニウム基板、アルミナ基板または窒化アルミニウム基板である場合には、接着促進成分として有機酸性リン酸エステル化合物またはホスホン酸化合物を用い、そのプライマー溶液を基板1の表面に塗布することが好ましい。
【0076】
本発明の高熱伝導性積層基板の用途は特に制限されない。本発明の高熱伝導性積層基板は、放熱性および絶縁性を要求される電子回路基板として公知の用途に特に制限なく使用できる。本発明の高熱伝導性積層基板の用途を例示すれば、コンバーター、インバーター等のパワーエレクトロニクス用途、照明用LED、工業用LED、車載用LED等のLED用途、並びにIC、LSI用基板等が挙げられる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例および用途例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0078】
<試験方法>
(1)硬化性樹脂組成物の粘度
得られた硬化性樹脂組成物について、動的粘弾性測定装置(STRESS TECH:セイコー電子工業社製)を用い、直径20mmのパラレルプレート、ギャップ幅1.00mm、測定温度25℃、周波数=0.1Hz、定常応力=1000Paにて、測定開始から120秒後の粘度を求めた。
【0079】
(2)高熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率
得られた硬化性樹脂組成物をトルエンまたは2−メトキシエタノールにて適度な粘度に希釈後、バーコーター(PI−1210:テスター産業社製)を用いて離型PETフィルム上に製膜し、180℃での硬化後、PETフィルムを剥がした。硬化後の膜の厚さは約200〜300μmであった。これら試料の熱伝導率を迅速熱伝導率計(QTM−500:京都電子工業社製)にて測定した。レファレンスには、厚さ2cm、長さ15cm、幅6cmの、石英ガラス、シリコーンゴム、及びジルコニアを用いた。
【0080】
(3)高熱伝導性樹脂組成物層の厚さ
得られた高熱伝導性積層基板を切断し、走査型電子顕微鏡(JSM−5300:JEOL社製)を用いて倍率100倍、500倍、又は2000倍にて断面の観察を行い、同一視野中で等間隔に採った10点で高熱伝導性樹脂組成物層の厚さを測定し、その相加平均を高熱伝導性樹脂組成物の厚さとした。なお、高熱伝導性樹脂組成物層の厚さが100μm以上の試料を倍率100倍にて測定し、高熱伝導性樹脂組成物層の厚さが10μm以上100μm未満の試料を倍率500倍にて測定し、高熱伝導性樹脂組成物層の厚さが10μm未満の試料を倍率2000倍にて測定した。
【0081】
(4)高熱伝導性積層基板の接合強度
得られた高熱伝導性積層基板の銅箔表面にニッケルメッキ、及び続けて金メッキを行った後、表面にニッケルメッキを施したφ1.1mmの42アロイネイルヘッドピンを上記金メッキの表面にPb−Snハンダにてハンダ付けし、該ネイルヘッドピンを10mm/分の速度で垂直方向に引っ張り、該ネイルヘッドピンが剥がれた時の最大引っ張り強さを接合強度(MPa)とした。
【0082】
(5)絶縁性試験
得られた高熱伝導性積層基板を温度20℃、湿度85%の雰囲気中で24時間コンディショニングした後、基板の厚さ方向に1kVの交流電圧を1分間印加した。このとき絶縁層が破壊されたものを不合格、そうでなかったものを合格とした。
【0083】
<実施例1〜20及び比較例1〜8>
本発明の第1の態様に係る硬化性樹脂組成物を製造した実施例、及び、硬化性樹脂組成物の製造を試みた比較例である。
(実施例1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER1004:三菱化学社製)5g、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN703:東都化成社製)5g、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(2PZCN−PW:四国化成社製)0.2g、酸性リン酸エステル(フォスファノールRS−410:東邦化学社製)0.1gを混合して均一溶液とした。この溶液におよび窒化アルミニウム粒子(グレードH、BET比表面積2.6m
2/g:トクヤマ社製)35gを加えて混練した。
【0084】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表1に示す。
【0085】
(実施例2)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)2gに酸性リン酸エステル(フォスファノールRS−610:東邦化学社製)0.3gを溶解し、窒化アルミニウム粒子(グレードH:トクヤマ社製)45gと混練した。この混合物に、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)8gと2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2gの均一混合物を加え、更に混練した。
【0086】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表1に示す。
【0087】
(実施例3)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、および酸性リン酸エステル(フォスファノールRA−600:東邦化学社製)0.2gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードH:トクヤマ社製)40gを加えて混練した。
【0088】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表1に示す。
【0089】
(比較例1)
窒化アルミニウム粒子(グレードH:トクヤマ社製)1kg、酸性リン酸エステル(フォスファノールRA−600:東邦化学社製)5gおよび水1kgを加熱して均一溶液とした後、超音波分散機(GSD600HAT:ギンセン社製)にて流量0.5L/分にて3回処理を行なった後、スプレードライヤー(R−100、プリス社製)にて入り口温度200℃にて乾燥後、80℃にて15時間真空乾燥した。得られた粒子を耐水性窒化アルミニウム粒子Cとした。
【0090】
耐水性窒化アルミニウム粒子Cを用い、且つ酸性リン酸エステルを加えなかったこと以外は実施例3と同様にして硬化性樹脂組成物を得た。
【0091】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表1に示す。
【0092】
(実施例4)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EXA−4850−150:DIC社製)1gに酸性リン酸エステル(フォスファノールRS−710:東邦化学社製)0.35gを溶解し、窒化アルミニウム粒子(グレードH:トクヤマ社製)20gおよび球状アルミナ粒子(DAW−45、BET比表面積0.2m
2/g:電気化学社製)30gと混練した。この混合物にビスフェノールA型エポキシ樹脂(EXA−4850−150:DIC社製)9gと2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2gの均一混合物を加え、更に混練した。
【0093】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表1に示す。
【0094】
(実施例5)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EXA−4850−150:DIC社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、および酸性リン酸エステル(フォスファノールRA−600:東邦化学社製)0.25gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードH:トクヤマ社製)25gを加えて混練した。
【0095】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表1に示す。
【0096】
(実施例6)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EXA−4850−150:DIC社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、および酸性リン酸エステル(フォスファノールRA−600:東邦化学社製)0.25gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードF、BET比表面積3.4m
2/g:トクヤマ社製)30gを加えて混練した。
【0097】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表1に示す。
【0098】
(実施例7)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)7.7g、ポリアミン硬化剤(JERキュア113:三菱化学社製)2.3g、および酸性リン酸エステル(フォスファノールGF−199:東邦化学社製)0.3gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードUM、BET比表面積1.1m
2/g:東洋アルミニウム社製)35gを加えて混練した。
【0099】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表2に示す。
【0100】
(実施例8)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)5g、酸無水物(B−570:DIC社製)5g、促進剤としてN,N−ジメチルベンジルアミン(和光純薬社製)0.8g、および酸性リン酸エステル(フォスファノールML−200:東邦化学社製)0.1gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードJD、BET比表面積2.2m
2/g:東洋アルミニウム社製)40gを加えて混練した。
【0101】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表2に示す。
【0102】
(実施例9)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EXA−4850−150:DIC社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、および酸性リン酸エステル(フォスファノールML−200:東邦化学社製)0.1gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードJD:東洋アルミニウム社製)30g並びに窒化ホウ素(HCPL、BET比表面積7m
2/g:モメンティブ社製)を加えて混練した。
【0103】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表2に示す。
【0104】
(実施例10)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)10g、酸無水物(B−570:DIC社製)5g、促進剤としてN,N−ジメチルベンジルアミン(和光純薬社製)0.8g、および酸性リン酸エステル(フォスファノールBH−650:東邦化学社製)0.1gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードJD:東洋アルミニウム社製)40gを加えて混練した。
【0105】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表2に示す。
【0106】
(実施例11)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、オクチルイソシアネート(和光純薬社製)0.5g、および酸性リン酸エステル(フォスファノールRS−610:東邦化学社製)0.22gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードH:トクヤマ社製)30gを加えて混練した。
【0107】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表2に示す。
【0108】
(実施例12)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)8g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、カルボジイミド(カルボジライトV−05:日清紡社製)2g、および酸性リン酸エステル(フォスファノールRS−610:東邦化学社製)0.25gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードH:トクヤマ社製)40gを加えて混練した。
【0109】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表2に示す。
【0110】
(実施例13)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、アセチルアセトンアルミニウム(東京化成社製)0.1g、および酸性リン酸エステル(フォスファノールRS−610:東邦化学社製)0.22gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードH:トクヤマ社製)40gを加えて混練した。
【0111】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表2に示す。
【0112】
(保存安定性)
実施例2及び13の硬化性樹脂組成物を40℃にて48時間放置し、保存安定性の加速試験を行ったところ、実施例2の硬化性樹脂組成物は硬化したが、実施例13の硬化性樹脂組成物は硬化しなかった。この原因は明らかではないが、おそらく窒化アルミニウム表面に強力なルイス塩基点が存在し、エポキシ樹脂の安定性に負の影響を与えていたために実施例2の硬化性樹脂組成物は硬化したが、実施例13の硬化性樹脂組成物においては、この塩基点がルイス酸であるアセチルアセトンアルミニウムにより中和されたため硬化しなかったと推察している。
【0113】
(実施例14)
窒化アルミニウム粒子(粒子径1.1μm、BET比表面積1.6m2:トクヤマ社試作品)1kg、リン酸アルミニウム溶液(100L、Al2O3/8.5%、P2O5/33.0%:多木化学社製)4.0g、ラウリルリン酸エステル(ML−200:東邦化学社製)3.0gおよび水1kgを加熱して均一溶液とした後、超音波分散機(GSD600HAT:ギンセン社製)にて流量0.5L/分にて3回処理を行なった後、スプレードライヤー(R−100、プリス社製)にて入り口温度200℃にて乾燥後、80℃にて15時間真空乾燥した。得られた粒子を窒化アルミニウム粒子Aとした。
【0114】
窒化アルミニウム粒子(粒子径4.5μm、BET比表面積0.6m2:トクヤマ社試作品)1kg、リン酸アルミニウム溶液(100L、Al2O3/8.5%、P2O5/33.0%:多木化学社製)2.5g、ラウリルリン酸エステル(ML−200:東邦化学社製)1.5gおよび水1kgを加熱して均一溶液とした後、超音波分散機(GSD600HAT:ギンセン社製)にて流量0.5L/分にて3回処理を行なった後、スプレードライヤー(R−100、プリス社製)にて入り口温度200℃にて乾燥後、80℃にて15時間真空乾燥した。得られた粒子を窒化アルミニウム粒子Bとした。
【0115】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、および酸性リン酸エステル(フォスファノールRA−600:東邦化学社製)0.25gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子A20g、並びに窒化アルミニウム粒子B30gを加えて混練した。
【0116】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表3に示す。
【0117】
(実施例15)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)2gに酸性リン酸エステル(フォスファノールRA−600:東邦化学社製)0.25gを溶解し、窒化アルミニウム粒子A45gと混練した。この混合物にビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)8gと2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2gの均一溶液を加え、更に混練した。
【0118】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表3に示す。
【0119】
(実施例16)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)2gに酸性リン酸エステル(フォスファノールRA−600:東邦化学社製)0.25gを溶解し、窒化アルミニウム粒子A30g並びに窒化アルミニウム粒子B20gと混練した。この混合物を40℃にて8時間保存後、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)8gと2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2gの均一混合物を加え、更に混練した。
【0120】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表3に示す。
【0121】
(実施例17)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、および酸性リン酸エステル(フォスファノールRS−610:東邦化学社製)0.07gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードH:トクヤマ社試作品)30gを加えて混練した。
【0122】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表3に示す。
【0123】
(実施例18)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、および酸性リン酸エステル(フォスファノールRS−610:東邦化学社製)0.03gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードH:トクヤマ社製)25g並びにアルミナ粒子(AKP−20、BET比表面積5m
2/g:住友化学社製)25gを加えて混練した。
【0124】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表3に示す。
【0125】
(実施例19)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、および酸性リン酸エステル(フォスファノールRS−610:東邦化学社製)0.03gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードH:トクヤマ社製)12g並びに窒化ホウ素粒子(HCPL、BET比表面積7m
2/g、モメンティブ社製)を加えて混練した。
【0126】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表3に示す。
【0127】
(実施例20)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、および酸性リン酸エステル(BYK−W9010:ビックケミー・ジャパン社製)0.25gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードH:トクヤマ社製)40gを加えて混練した。
【0128】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表3に示す。
【0129】
(比較例2)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER1004:三菱化学社製)5g、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN703:東都化成社製)5g、および1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(2PZCN−PW:四国化成社製)0.2gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードH:トクヤマ社製)35gを加えて練和した。
【0130】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表4に示す。
【0131】
(比較例3)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、および酸性リン酸エステル(モノイソプロピルリン酸とジイソプロピルリン酸の混合物、A−3:SC有機化学社製)0.25gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードH:トクヤマ社製)40gを加えて混練した。
【0132】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表4に示す。
【0133】
(比較例4)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、およびラウリン酸(東京化成社製)0.25gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードH:トクヤマ社製)40gを加えて混練した。
【0134】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表4に示す。
【0135】
(比較例5)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、およびテトラエチレングリコールラウリルエーテル(ペグノールL−4:東邦化学社製)0.25gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードH:トクヤマ社製)40gを加えて混練した。
【0136】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表4に示す。
【0137】
(比較例6)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、および酸性リン酸エステル(フォスファノールRS−610:東邦化学社製)0.25gを混合して均一溶液とした。この溶液にアルミナ粒子(AKP−20、BET比表面積5m
2/g:住友化学社製)40gを加えて混練した。
【0138】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表4に示す。
【0139】
(比較例7)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、およびエチルカルビトール(東京化成社製)0.25gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードH:トクヤマ社製)40gを加えて混練した。
【0140】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表4に示す。
【0141】
(比較例8)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、および酸性基を持たないリン酸エステル(〔(CH
3)
2C
6H
3O〕
2P(O)OC
6H
4OP(O)〔OC
6H
3(CH
3)
2〕
2、PX−200:大八化学社製)0.03gを混合して均一溶液とした。この溶液に窒化アルミニウム粒子(グレードH:トクヤマ社製)12g並びに窒化ホウ素粒子(HCPL、BET比表面積7m
2/gモメンティブ社製)を加えて混練した。
【0142】
得られた硬化性樹脂組成物の粘度および硬化後の熱伝導率を測定した結果を表4に示す。
【0143】
<実施例21〜28及び比較例9〜11>
本発明の第4の態様に係る高熱伝導性積層基板を製造した実施例、及び、高熱伝導性積層基板の製造を試みた比較例である。
(実施例21)
厚さ18μmの電解銅箔(JTC:JX日鉱日石金属社製)に実施例9の硬化性樹脂組成物を薄く塗布し、その塗布面にアルミニウム基板(A1050、厚さ1mm、熱伝導率225W/m・K:大河内金属社製)を置いた後、180℃にて3時間真空プレスして高熱伝導性積層基板を得た。
【0144】
得られた高熱伝導性積層基板の接着強さ、絶縁耐圧、並びに、高熱伝導性樹脂及びアルミニウム基板からなる複合層の熱伝導率の理論計算値を表5に示す。
【0145】
(実施例22)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EXA−830CRP:DIC社製)10g、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成社製)0.2g、および酸性リン酸エステル(フォスファノールRS−610:東邦化学社製)10gおよびトルエン100gを混合してプライマー溶液とした。アルミニウム基板(A1050、厚さ1mm:大河内金属社製)にこのプライマー溶液をスピンコートした後、120℃にて1時間乾燥した。厚さ35μmの圧延銅箔(HPF−ST35−X:日立電線社製)に実施例14の硬化性樹脂組成物を薄く塗布し、その面に上記アルミニウム基板のプライマー塗布面を置いた後、180℃にて3時間真空プレスして高熱伝導性積層基板を得た。
【0146】
得られた高熱伝導性積層基板の接着強さ、絶縁耐圧、並びに、高熱伝導性樹脂組成物層およびアルミニウム基板からなる複合層の熱伝導率の理論計算値を表5に示す。
【0147】
(実施例23)
厚さ12μmの電解銅箔(JTC:JX日鉱日石金属社製)に実施例16の硬化性樹脂組成物を薄く塗布し、その塗布面にアルミニウム基板(A1050、厚さ0.5mm:大河内金属社製)を置いた後、180℃にて3時間真空プレスして高熱伝導性積層基板を得た。
【0148】
得られた高熱伝導性積層基板の接着強さ、絶縁耐圧、並びに、高熱伝導性樹脂組成物層およびアルミニウム基板からなる複合層の熱伝導率の理論計算値を表5に示す。
【0149】
(実施例24)
厚さ12μmの電解銅箔(JTC:JX日鉱日石金属社製)に実施例3の硬化性樹脂組成物を薄く塗布し、その塗布面に窒化アルミニウム基板(厚さ0.64mm、熱伝導率170W/m・K:TDパワーマテリアル社製)を置いた後、180℃にて3時間真空プレスして高熱伝導性積層基板を得た。
【0150】
得られた高熱伝導性積層基板の接着強さ、絶縁耐圧、並びに、高熱伝導性樹脂組成物層および窒化アルミニウム基板からなる複合層の熱伝導率の理論計算値を表5に示す。
【0151】
(実施例25)
厚さ9μmの電解銅箔(JTC:JX日鉱日石金属社製)に実施例8の硬化性樹脂組成物を薄く塗布し、その塗布面に窒化アルミニウム基板(厚さ1mm:TDパワーマテリアル社製)を置いた後、180℃にて3時間真空プレスして高熱伝導性積層基板を得た。
【0152】
得られた高熱伝導性積層基板の接着強さ、絶縁耐圧、並びに、高熱伝導性樹脂組成物層および窒化アルミニウム基板からなる複合層の熱伝導率の理論計算値を表5に示す。
【0153】
(実施例26)
厚さ18μmの電解銅箔(JTC:JX日鉱日石金属社製)に実施例13の硬化性樹脂組成物を薄く塗布し、その塗布面に窒化アルミニウム基板(厚さ1mm:TDパワーマテリアル社製)を置いた後、180℃にて3時間真空プレスして高熱伝導性積層基板を得た。
【0154】
得られた高熱伝導性積層基板の接着強さ、絶縁耐圧、並びに、高熱伝導性樹脂組成物層および窒化アルミニウム基板からなる複合層の熱伝導率の理論計算値を表5に示す。
【0155】
(実施例27)
厚さ18μmの電解銅箔(JTC:JX日鉱日石金属社製)に実施例14の硬化性樹脂組成物を薄く塗布し、その塗布面にアルミニウム基板(A1050、厚さ1mm:大河内金属社製)を置いた後、180℃にて3時間真空プレスして高熱伝導性積層基板を得た。
【0156】
得られた高熱伝導性積層基板の接着強さ、絶縁耐圧、並びに、高熱伝導性樹脂組成物層およびアルミニウム基板からなる複合層の熱伝導率の理論計算値を表5に示す。
【0157】
(実施例28)
厚さ18μmの電解銅箔(JTC:JX日鉱日石金属社製)に実施例4の硬化性樹脂組成物を薄く塗布し、その塗布面に窒化アルミニウム基板(厚さ1mm:TDパワーマテリアル社製)を置いた後、180℃にて3時間真空プレスして高熱伝導性積層基板を得た。
【0158】
得られた高熱伝導性積層基板の接着強さ、絶縁耐圧、並びに、高熱伝導性樹脂組成物層および窒化アルミニウム基板からなる複合層の熱伝導率の理論計算値を表5に示す。
【0159】
(比較例9)
厚さ18μmの電解銅箔(JTC:JX日鉱日石金属社製)に比較例5の硬化性樹脂組成物を薄く塗布し、その塗布面にアルミニウム基板(A1050、厚さ1mm:大河内金属社製)を置いた後、180℃にて3時間真空プレスして積層基板を得た。
【0160】
得られた高熱伝導性積層基板の接着強さ、絶縁耐圧、並びに、樹脂組成物層およびアルミニウム基板からなる複合層の熱伝導率の理論計算値を表6に示す。
【0161】
(比較例10)
厚さ35μmの電解銅箔(JTC:JX日鉱日石金属社製)に比較例5の硬化性樹脂組成物を薄く塗布し、その塗布面に窒化アルミニウム基板(厚さ1mm:TDパワーマテリアル社製)を置いた後、180℃にて3時間真空プレスして積層基板を得た。
【0162】
得られた高熱伝導性積層基板の接着強さ、絶縁耐圧、並びに、樹脂組成物層および窒化アルミニウム基板からなる複合層の熱伝導率の理論計算値を表6に示す。
【0163】
(比較例11)
厚さ12μmの電解銅箔(JTC:JX日鉱日石金属社製)に比較例4の硬化性樹脂組成物を薄く塗布し、その塗布面に窒化アルミニウム基板(厚さ1mm:TDパワーマテリアル社製)を置いた後、180℃にて3時間真空プレスして積層基板を得た。
【0164】
得られた高熱伝導性積層基板の接着強さ、絶縁耐圧、並びに、樹脂組成物層および窒化アルミニウム基板からなる複合層の熱伝導率の理論計算値を表6に示す。
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】
【0167】
【表3】
【0168】
【表4】
【0169】
【表5】
【0170】
【表6】
【0171】
以上の結果から、本発明の硬化性樹脂組成物を使用することにより、実用上必要十分な接着強さを有する高熱伝導性積層基板を低コストで製造できることが示された。