(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1乃至3に記載の発明においては、殺菌対象物に光が十分に届いていないことがあり、光の当たらない箇所の殺菌ができていないという問題があった。この現象は、特に光源を紫外線発光ダイオード(UV−LED)とした場合に顕著である。特許文献4の発明においても、被殺菌対象に光が十分届かないために殺菌効果が十分でなく、また発光面に担持した光触媒に深紫外光が吸収されるという問題があった。
【0009】
特に現在は、制御の容易さや消費電力の低さからUV−LEDが注目を集めているが、UV−LEDには発光出力が小さいという欠点がある。特許文献1乃至4に記載の技術においてUV−LEDを紫外線光源として使用した場合には、殺菌対象物を十分に殺菌できないことが懸念される。
【0010】
また紫外線の透過率は、液体の種類に応じて変動する。すなわち、純水の紫外線透過率は比較的高いものの、紫外線を吸収する溶質が溶解した水溶液や紫外線を吸収又は散乱する懸濁物質を含む懸濁液では、紫外線線透過率は低下し、その低下率は溶質や懸濁物質の種類や含有量によって著しく変化する。たとえば、蒸留水において253.7nmの紫外線に対する透過率が10%となるときの厚さ(光路長:光が試料内を透過する長さ)は300mmであるのに対し、牛乳およびジュースの同厚さは夫々0.07mmおよび0.5〜1mmであることが知られている。そのため、溶液や懸濁液に対して、特許文献5に記載された技術を含む従来の技術で紫外線殺菌を試みた場合には、殺菌が不十分となる可能性がさらに高くなることが懸念される。
【0011】
そこで本発明は、例えばジュースや牛乳などの溶液や懸濁液に対してもUV−LEDによる紫外線殺菌が可能な液体殺菌方法、および、該液体殺菌方法に用いることができる液体殺菌装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1] 一の実施形態において、本発明の液体殺菌方法は、
(1)所定の幅の間隙を設けて平行に配置された一対の隔壁の間に形成された流路に、溶液又は懸濁液である被殺菌液体を流通させる工程と、
(2)上記流路を通過する被殺菌液体に、前記一対の隔壁の向かい合う2面の一方または両方に設けられた1又は2の紫外線発光面から紫外線を照射する工程とを含み、
上記間隙の、上記紫外線発光面に垂直な方向の幅は、上記1又は2の紫外線発光面の有効光路長の総和以下であり、
上記紫外線発光面の有効光路長は、該紫外線発光面から照射される紫外線が上記被殺菌液体の層を透過したときの透過紫外線の放射照度が0.001mW/cm
2(=1μW/cm
2)となる上記被殺菌液体の層の厚さとして定義される
ことを特徴とする。
【0013】
なお、上記有効光路長を規定する放射照度の値:0.001mW/cm
2(1μW/cm
2)は、その数値自体に臨界的意義があるわけではなく、実用的な処理時間(紫外線照射時間)において、有効な殺菌効果を得ることができるという観点から決定した指標である。例えば、99.9%不活性化に必要な紫外線照射量(積算照射量)が約10(mJ/cm
2=mW・sec/cm
2)である大腸菌の殺菌を考えた場合、1μW/cm
2の放射照度では10,000秒(約2.8時間)の照射で99.9%の不活性化が可能であるが、0.1μW/cm
2の放射照度ではその10倍の約28時間を要し、現実的ではない。すなわち、上記本発明の方法の基本的な技術思想は、紫外線透過性の低い被殺菌液体の殺菌を行うに際し、流路内を流れる被殺菌液体層において、実用的な時間の紫外線照射を行っても殺菌に必要な積算照射量を得ることができないような領域を作らないために、流路幅及び/又は紫外線発光面から照射される紫外線強度を制御するという点にある。
本発明の方法においては、その効果が顕著であるという理由から、被殺菌液体としては、253.7nmの紫外線に対する透過率が10%となるときの厚さ(光路長:光が試料内を透過する長さ)が50mm以下5μm以上である溶液又は懸濁液、特に該厚さが10mm以下10μm以上である溶液又は懸濁液であることが好ましい。
【0014】
[2] 上記[1]の形態において、上記流路を通過する被殺菌液体に照射される紫外線は、200nm以上300nm未満の波長領域に主ピークを有することが好ましい。
本出願において、紫外線が或る一の波長領域に「主ピークを有する」とは、当該紫外線のパワースペクトルが1つ以上のピークを有し、ピーク高さが最大であるピークのピーク波長が当該波長領域に存在することを意味する。
【0015】
[3] 上記[1]〜[2]の形態において、本発明の液体殺菌方法は、
(a)所定の光路長を有する紫外線透過性光学測定用セルの内部に上記被殺菌液体を充填する工程と、
(b)上記紫外線発光面を上記光学測定用セルに密着させて、該紫外線発光面から殺菌処理時と同一の発光条件で発光させた紫外線を該光学測定用セル内に向けて照射する工程と、
(c)上記セルを通過した透過紫外線の放射照度(単位:mW/cm
2)を測定する工程と、
(d)上記工程(a)乃至(c)を、異なる光路長を有する複数の上記光学測定用セルについて行うことにより、上記透過紫外線の放射照度と光路長との関係を求める工程と
をさらに有することが好ましい。
【0016】
[4] 上記[3]の形態において、本発明の液体殺菌方法は、
(e)上記工程(d)において求めた関係に基づいて、上記紫外線発光面の有効光路長を決定する工程をさらに有することが好ましい。
【0017】
[5] 上記[3]の形態において、本発明の液体殺菌方法は、
(f)上記紫外線発光面における透過紫外線の放射照度と光路長との関係、および、上記流路の紫外線発光面に垂直な方向の幅に基づいて、上記流路の紫外線発光面に垂直な方向における紫外線の放射照度分布、及び、該放射照度分布における最低放射照度(単位:mW/cm
2)を決定する工程と、
(g)上記被殺菌液体の殺菌に必要な紫外線の積算照射量(単位:mJ/cm
2)を決定する工程と、
(h)積算照射量を最低放射照度で除した値で定義される最低照射時間(単位:秒)を決定する工程と、
(i)上記被殺菌液体が上記流路内に滞在する滞在時間が最低照射時間以上となるように、上記流路の長さ及び/又は該流路を流れる上記被殺菌液体の流速を調整する工程と
をさらに有することが好ましい。
【0018】
[6] 上記[1]〜[5]の形態において、
工程(1)において、2以上の上記流路に上記被殺菌液体を流通させ、
工程(2)において、該2以上の流路を通過する被殺菌液体に紫外線を照射し、
該2以上の流路のそれぞれは、平行に配置された3以上の隔壁の、各一対の隣接する隔壁の間に形成された流路であり、
該3以上の隔壁のそれぞれの両面に、紫外線発光面が設けられていることが好ましい。
【0019】
[7] 上記[1]〜[5]の形態において、
工程(1)において、2以上の上記流路に上記被殺菌液体を流通させ、
工程(2)において、該2以上の流路を通過する被殺菌液体に紫外線を照射し、
該2以上の流路のそれぞれは、平行に配置された3以上の隔壁の、各一対の隣接する隔壁の間に形成された流路であり、
該3以上の隔壁のそれぞれの片面のみに紫外線発光面が設けられており、
該3以上の隔壁は、紫外線発光面が設けられた面を同じ方向に向けて配置されている。
【0020】
[8] 上記[1]〜[5]の形態において、
上記一対の隔壁は、第1の隔壁と第2の隔壁とからなり、
第1の隔壁は、少なくとも第2の隔壁と向かい合う面に、紫外線発光面を有し、
第2の隔壁は、少なくとも第1の隔壁と向かい合う面に、光触媒作用を有する面を有し、
工程(2)において、上記流路を通過する被殺菌液体に、200nm以上300nm未満の波長領域及び300nm以上400nm以下の波長領域に夫々主ピークを有する紫外線を、第1の隔壁の紫外線発光面から照射し、
上記流路の紫外線発光面に垂直な方向の幅は、上記200nm以上300nm未満の波長領域に主ピークを有する紫外線が当該被殺菌液体の層を透過し得る最大厚さ以下であることが好ましい。
本出願において、紫外線が「200nm以上300nm未満の波長領域及び300nm以上400nm以下の波長領域に夫々主ピークを有する」とは、その紫外線のパワースペクトルが2つ以上のピークを有し、最も大きなピーク高さを有するピークのピーク波長が、200nm以上300nm未満の波長領域及び300nm以上400nm以下の波長領域のうち一方の波長領域に存在し、かつ、2番目に大きなピーク高さを有するピークのピーク波長が、他方の波長領域に存在することを意味する。
【0021】
[9] 一の実施形態において、本発明の液体殺菌装置は、上記[1]の形態の液体殺菌方法により液体の殺菌を行うための装置であって、
紫外線を発する一対の紫外線発光面を有する面光源を複数有し、
該複数の面光源が相互に対向するように平行に配列されていることにより、隣接する二つの面光源に挟まれた、スリット状の流路を複数有し、
該スリット状の流路の、紫外線発光面に垂直な方向の幅が、該流路を挟む紫外線発光面の有効光路長の総和以下であり、
該スリット状の流路に液体を流通させることにより、当該液体を殺菌することを特徴とする。
【0022】
[10] 上記[9]の形態において、上記面光源は、一対の紫外線発光面を有する導光板と、該導光板の一方の端部に配列された、200nm以上300nm未満の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する複数の深紫外線発光ダイオードとを有することが好ましい。
【0023】
[11] 上記[9]の形態において、上記面光源は、一対の紫外線発光面を有する導光板と、該導光板から離隔して配置され、上記紫外線を発生する、紫外線発生装置と、該紫外線発生装置から導光板の一方の端部へ紫外線を導く、紫外線導波手段とを有し、
紫外線発生装置は、紫外線を出射する棒状光源と、該棒状光源から出射された紫外線を集光する集光装置とを有し、
棒状光源は、円筒状または多角柱状の基体と、200nm以上300nm未満の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する複数の深紫外線発光ダイオードとを有し、
該複数の深紫外線発光ダイオードは、各紫外線発光ダイオードの光軸が基体の中心軸を通るように上記基体の側面に配置されており、前記中心軸に対して放射状に深紫外線を出射することが好ましい。
【0024】
[12] 一の実施形態において、本発明の液体殺菌装置は、上記[8]の形態の液体殺菌方法により液体の殺菌を行うための装置であって、
200nm以上300nm未満の波長領域及び300nm以上400nm以下の波長領域に夫々主ピークを有する紫外線を発する一対の紫外線発光面を有する面光源を複数有し、
複数の光触媒担持板を有し、
それぞれの光触媒担持板の表面には光触媒材料が担持されており、
上記複数の面光源および上記複数の光触媒担持板は平行に配列されており、
複数の光触媒担持板のそれぞれが、隣り合う一対の面光源の間に配置されることにより、隣接する面光源と光触媒担持板との間にスリット状の流路が形成されており、
スリット状の流路の、該流路の側面を構成する紫外線発光面に垂直な方向の幅が、該紫外線発光面の有効光路長以下であり、
スリット状の流路に液体を流通させることにより前記液体を殺菌することを特徴とする。
【0025】
[13] 上記[12]の形態において、上記面光源は、一対の紫外線発光面を有する導光板と、該導光板の一方の端部に配列された、200nm以上300nm未満の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する複数の深紫外線発光ダイオード及び300nm以上400nm以下の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する複数の紫外線発光ダイオードとを有することが好ましい。
【0026】
[14] 上記[12]の形態において、上記面光源は、一対の紫外線発光面を有する導光板と、導光板から離隔して配置され、上記紫外線を発生する、紫外線発生装置と、紫外線発生装置から導光板の一方の端部へ紫外線を導く、紫外線導波手段とを有し、
紫外線発生装置は、上記紫外線を出射する棒状光源と、該棒状光源から出射された紫外線を集光する集光装置とを有し、
該光源は、円筒状または多角柱状の基体と、200nm以上300nm未満の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する複数の深紫外線発光ダイオードと、300nm以上400nm以下の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する複数の紫外線発光ダイオードとを有し、
該複数の深紫外線発光ダイオードおよび該複数の紫外線発光ダイオードは、各深紫外線発光ダイオードおよび各紫外線発光ダイオードの光軸が上記基体の中心軸を通るように上記基体の側面に配置されており、上記中心軸に対して放射状に前記紫外線を出射することが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の液体殺菌方法によれば、例えばジュースや牛乳などの溶液や懸濁液に対しても、UV−LEDによる紫外線殺菌が可能である。
【0028】
本発明の液体殺菌装置は、本発明の液体殺菌方法による液体の殺菌に好ましく用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の上記した作用および利得は、以下に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。なお、図では、一部の符号を省略することがある。
【0031】
図1は、本発明の一の実施形態に係る液体殺菌装置100を模式的に説明する図である。液体殺菌装置100は、本発明の一の実施形態に係る液体殺菌方法S1に用いられる装置である。
図1に示すように、液体殺菌装置100は、胴部の横断面が矩形である筒状のケーシング1を有しており、ケーシング1の一方の端部には流入口1aが、ケーシング1の他方の端部には流出口1bが、それぞれ設けられている。流入口1aからケーシング1の内部に流入した液体は、ケーシング1の内部で紫外線による殺菌を受けた後、流出口1bからケーシング1の外部に流出する。
【0032】
図2は、
図1のA−A断面図である。
図2に示すように、液体殺菌装置100は、ケーシング1の内部に複数の面光源2、2、…(以下において単に「面光源2」ということがある。)を有している。後述するようにそれぞれの面光源2は一対の紫外線発光面を有している。ケーシング1の内部には、複数の面光源2、2、…が、その紫外線発光面を相互に対向させるように配列されており、隣接する面光源2同士に挟まれた複数の並列に並んだスリット状の流路3、3、…(以下において単に「流路3」ということがある。)を有している。流入口1aからケーシング1内部に流入した液体は、スリット状の流路3、3、…を通過する間に、面光源2からの紫外線の照射を受けて殺菌される。流路3、3、…を通過した殺菌済みの液体は、流出口1bからケーシング1の外部に流出する。
【0033】
図3(a)は、面光源2を説明する平面図であり、
図3(b)は面光源2を説明する側面図である。
図3(a)、(b)に示すように、面光源2は、一対の紫外線発光面21a、21bを有する導光板21と、導光板21の一方の端部に配列された複数の深紫外線発光ダイオード22、22、…(以下において単に「深紫外線発光ダイオード22」ということがある。)と、一対の紫外線発光面21a、21bの表面に設けられた光拡散ドット23、23、…(以下において単に「光拡散ドット23」ということがある。)を有している。
図2に示すように、面光源2(より具体的には導光板21)の一方の端部はケーシング1の胴部の外側に延出しており、該端部において深紫外線発光ダイオード22、22、…(
図2においては不図示。
図3参照。)と接続されると共に、深紫外線発光ダイオード22、22、…は不図示の電源に接続されており、紫外線を発する。紫外線は、200nm以上300nm未満の波長領域に主ピークを有する。紫外線発光面21a、21bから発せられる紫外線は、同一の主ピーク波長を有している。紫外線光拡散ドット23は、一方の表面が紫外線発光面21aまたは21bに接するように設けられた、紫外線を反射する反射膜23cと、反射膜23cの他方の表面に設けられた光拡散ドット基材23aと、光拡散ドット基材23aの内部に分散保持された光触媒粒子23b、23b、…(以下において単に「光触媒粒子23b」ということがある。)とを有している。
図3(b)の矢印Bに示すように、深紫外線発光ダイオード22から発せられた紫外線は、導光板21の一方の端部21cから導光板21内部に入射し、反射膜23c、23c、…によって反射されながら導光板21の内部を伝播し、反射膜23cのない紫外線発光面21a若しくは21b又は導光板21の他方の端部21dから導光板21の外部に出射される。
【0034】
光拡散ドット23、23、…が導光板21の表面に配置されていることにより、液体がスリット状の流路3を流通する際に液体が光拡散ドット23にぶつかり、乱流が発生する。乱流が発生することによって液体が撹拌されるので、紫外線による殺菌効率が向上する。
【0035】
光拡散ドット基材23aの内部に光触媒粒子23bが分散保持されていることにより、紫外線の拡散効果を向上させることが可能になり、また、紫外線による殺菌作用に加えて、光触媒による殺菌作用を利用することも可能になる。
【0036】
図3(a)及び(b)においては、反射膜23cの導光板21と接していない表面に光拡散ドット基材23aが設けられ、その結果光拡散ドット23が導光板21の紫外線発光面21a、21bの表面から突出している形態の面光源2を説明したが、面光源2は当該形態に限定されるものではなく、例えば、光拡散ドット23が導光板21の紫外線発光面21a、21bから突出していない形態の面光源を採用することも可能である。
図3(c)は、そのような面光源の他の一例を説明する側面図であって、
図3(b)に対応する図である。
図3(c)に示すように、光拡散ドット23を、紫外線発光面21a又は21bに埋没するように設けてもよい。
図3(c)において、反射膜23cは、光拡散ドット基材23aと導光板21との界面に設けられている。このように光拡散ドットを導光板表面に埋没させた形態によれば、光拡散ドットの脱落を防ぐことが容易になる。なお、
図3(b)に示したように導光板表面から突出するように設けた光拡散ドットと、
図3(c)に示すように導光板表面に埋没するように設けた光拡散ドットとの両方を有する形態の面光源を採用することも可能である。
【0037】
再び
図2を参照する。液体殺菌装置100においては、一対の紫外線発光面21a、21bを有する面光源2、2、…が、相互に対向するように、すなわち隣接する面光源の紫外線発光面どうしが相互に対向するように、平行に配列されているので、スリット状の流路3の両側から液体に紫外線を照射することができ、効率よく液体を殺菌することができる。後述するように、各スリット状の流路3の、紫外線発光面21a、21bに垂直な方向の幅dは、該流路3を挟む紫外線発光面21a、21bの有効光路長の総和以下となっている。
【0038】
本発明の一の実施形態に係る液体殺菌方法S1について、
図1〜
図3を参照しつつ説明する。液体殺菌方法S1は、(1)所定の幅の間隙を設けて平行に配置された一対の隔壁2、2(すなわち隣接する面光源2、2。)の間に形成された流路3に、溶液又は懸濁液である被殺菌液体5を流通させる工程S11と、(2)流路3を通過する被殺菌液体5に、一対の隔壁2、2の向かい合う2面の両方に設けられた紫外線発光面21a、21bから紫外線を照射する工程S12とを含む。そして、上記間隙(すなわち隣接する面光源2、2の間の距離。)の、紫外線発光面21a、21bに垂直な方向の幅dは、紫外線発光面21a、21bの有効光路長L
a、L
bの総和L
a+L
b以下とされる。ここで、各紫外線発光面21a、21bの有効光路長L
a、L
bは、該紫外線発光面21a/21bから照射される紫外線が被殺菌液体5の層を透過したときの透過紫外線の放射照度が0.001mW/cm
2(=1μW/cm
2)となる被殺菌液体5の層の厚さとして定義される。紫外線発光面21a、21bの有効光路長L
a、L
bは別途測定される。
【0039】
紫外線発光面21a、21bの有効光路長L
a、L
bの決定は、例えば次の工程(a)〜(e)(S101〜S105)により行うことができる:
(a)所定の光路長を有する紫外線透過性光学測定用セル(以下において単に「セル」ということがある。)の内部に、被殺菌液体5を充填する工程S101;
(b)紫外線発光面21a(又は21b)をセルに密着させて、紫外線発光面21a(又は21b)から、殺菌処理時と同一の発光条件で発光させた紫外線を、セル内に向けて照射する工程S102;
(c)セルを通過した透過紫外線の放射照度(単位:mW/cm
2)を測定する工程S15;
(d)上記工程(a)乃至(c)(S101〜S103)を、異なる光路長を有する複数のセルについて行うことにより、透過紫外線の放射照度と光路長との関係を求める工程S104;および、
(e)上記工程(d)(S104)において求めた、透過紫外線の放射照度と光路長との関係に基づいて、紫外線発光面21a(又は21b)の有効光路長L
a(又はL
b)を決定する工程S105。
【0040】
上記工程(d)〜(e)(S104〜S105)において、透過紫外線の放射照度と光路長との関係は、Lambert−Beerの法則に従う。すなわち、透過紫外線の放射照度I
1は、光路長Lに対して、次の式(1)の関係にある。
log(I
1/I
0)=−αL …(1)
式(1)中、I
0は媒質に入射する前の波長λの紫外線の放射照度であり、αは非殺菌液体5と波長λ
peakに対応して定まる比例定数(吸光係数)である。一般に、発光ダイオードの発光スペクトルのピーク幅は極めて狭いので、透過紫外線の放射照度の光路長依存性を議論するにあたっては、深紫外線発光ダイオード22の発光ピーク波長λ
peakにおける吸光係数α(λ
peak)のみを考えれば十分である。式(1)は次の式(2)のように変形できる。
logI
1=−αL+logI
0 …(2)
したがって主ピーク波長λ
peakにおける透過紫外線の放射照度I
1の対数と、セルの光路長Lとの組を複数得ることにより、主ピーク波長λ
peakにおける透過紫外線の放射照度I
1と光路長Lとを関係付ける回帰直線を求めることができる(上記(d)工程S104)。回帰直線の算出には例えば最小二乗法等の公知の方法を用いることができる。そして紫外線発光面21a(又は21b)の有効光路長L
a(又はL
b)は、該回帰直線においてI
1=0.001mW/cm
2(=1μW/cm
2)を与える光路長Lとして求めることができる(上記(e)工程S105)。紫外線発光面21a、21bの発光強度が同一であればL
a=L
bである。
上記工程(a)〜(e)(S101〜S105)は、上記工程S11及びS12の前に別途行うことができる。
【0041】
上記したように、液体殺菌方法S1において、紫外線発光面21a、21bに垂直な方向の幅dは、紫外線発光面21a、21bの有効光路長L
a、L
bの総和L
a+L
b以下とする。このとき、dの下限値は、使用する面光源の紫外線発光面から照射される紫外線強度の制御可能範囲(特に最高強度)や被殺菌液体の流速の制御可能範囲(特に最低流速)を考慮して、想定する処理時間(紫外線照射時間内)で殺菌に必要な積算照射量を得るという観点から決定される。dの下限値は、有効光路長L
a、L
bの総和L
a+L
bの10〜90%であることが好ましく、20〜80%であることがより好ましく、30〜70%であることが最も好ましい。
流路3の長さ及び/又は被殺菌液体5の流速(流路3の長さが調整可能でない場合には、被殺菌液体5の流速)は、被殺菌液体5の殺菌に必要な紫外線の積算照射量I
int(mJ/cm
2)が確実に達成されるように定めることが好ましい。これは例えば、上記工程(a)〜(d)(S101〜S104)および、次の工程(f)〜(i)(S106〜S109)により行うことができる:
(f)紫外線発光面21a、21bにおける透過紫外線の放射照度I
1と光路長Lとの関係、および、流路3の紫外線発光面21a、21bに垂直な方向の幅dに基づいて、流路3の紫外線発光面21a、21bに垂直な方向における紫外線の放射照度分布、及び、該放射照度分布における最低放射照度I
min(単位:mW/cm
2)を決定する工程S106;
(g)被殺菌液体5の殺菌に必要な紫外線の積算照射量I
int(単位:mJ/cm
2)を決定する工程S107;
(h)積算照射量I
intを最低放射照度I
minで除した値で定義される最低照射時間t
min(単位:秒)を決定する工程S108;および、
(i)被殺菌液体5が流路3内に滞在する滞在時間Tが最低照射時間t
min以上となるように、流路3の長さl及び/又は流路3を流れる被殺菌液体5の流速(線速度)vを調整する工程S109。
【0042】
上記工程(f)(S106)において、紫外線発光面21a、21bに係る透過紫外線の放射照度I
1と光路長Lとの関係は、上記工程(a)〜(d)(S101〜S104)により求められる。
図4を参照する。
図4には、隣接する面光源(隔壁)2、2を紫外線発光面21a、21bに平行な方向から見た模式断面図、及び、透過紫外線の放射照度I
1の座標依存性を説明するグラフが表れている。紫外線発光面21a、21bに垂直な方向にx軸をとり、紫外線発光面21aの位置をx軸の原点とする。座標xにおける透過紫外線の放射照度I(x)に対する、紫外線発光面21a、21bから発せられた紫外線の寄与I
a(x)、I
b(x)は、次の式(3a)及び(3b)で表される。
I
a(x)=I
0,a・10
−αx …(3a)
I
b(x)=I
0,b・10
−α(d−x) …(3b)
ただしdは流路3の紫外線発光面21a、21bに垂直な方向の幅である。
したがって座標xにおける透過紫外線の放射照度I(x)は、
I(x)=I
a(x)+I
b(x)
=I
0,a・10
−αx+I
0,b・10
−α(d−x) …(4)
で表される。I(x)は流路3の紫外線発光面21a、21bにおける紫外線の放射照度分布である。dI(x)/dx=0を与える座標x
1は
x
1=(log(I
0,a/I
0,b)+αd)/2α …(6)
である。紫外線発光面21a、21bの発光強度が同一である場合にはI
0,a=I
0,bなので、この場合には式(6)はαの値に関わらず
x
1=d/2 …(7)
となる。0≦x≦dにおいて常に
d
2I(x)/dx
2>0 …(8)
であるので、式(6)の座標x
1において透過紫外線の放射照度I(x)は極小値(最小値)I(x
1)をとる。I(x
1)は放射照度分布I(x)における最低放射照度I
minである。
【0043】
上記工程(g)(S107)において、被殺菌液体5の殺菌に必要な紫外線の積算照射量I
int(単位:mJ/cm
2)は、紫外線発光面21a、21bから照射される紫外線の主ピーク波長(すなわち深紫外線発光ダイオード22の発光ピーク波長λ
peak)と、被殺菌液体5に含まれることが想定される、殺菌すべき微生物とに基づいて定めることができる。I
intとしては例えば、波長λ
peakの深紫外線を照射したときに、殺菌すべき微生物の99.9%が死滅する積算照射量を選択することができる。そのような積算照射量は、予備実験または文献により知ることができる。
【0044】
上記工程(h)(S108)において、最低照射時間t
minは、上記(f)工程S106において決定された最低放射照度I
minと、上記(g)工程S107において決定された積算照射量I
intとから、次の式(9)によって決定することができる。
t
min=I
int/I
min …(9)
【0045】
上記工程(i)(S109)において、被殺菌液体5が流路3内に滞在する滞在時間Tは、流路3の長さl及び流路3を流れる被殺菌液体5の流速(線速度)vから、
T=l/v …(10)
によって定まる。上記(h)工程S108において求めた最低照射時間t
minに対して
T=l/v≧t
min …(11)
となるように、l及び/又はvを調整する。複数の流路3、3、…が存在し、流路によって被殺菌液体5の流速が異なる場合には、最も流速の大きな流路について式(11)が満たされるべきである。流路3の長さlが調整可能でない場合には、被殺菌液体5の流速vを調整する。被殺菌液体5の流速vは、液体殺菌装置100の上流側および/または下流側に配置される送液ポンプ(不図示)の送液速度を変更することにより容易に調整できる。
【0046】
本発明に関する上記説明では、上記(1)工程S11において、2以上の流路3、3、…に被殺菌液体5を流通させ、上記(2)工程S12において、該2以上の流路3、3、…を通過する被殺菌液体5に紫外線を照射し、該2以上の流路3、3、…のそれぞれは、平行に配置された3以上の隔壁2、2、…の、各一対の隣接する隔壁2、2の間に形成された流路3であり、上記3以上の隔壁2、2、…のそれぞれの両面に、紫外線発光面21a、21bが設けられている形態の液体殺菌方法を例示したが、本発明の液体殺菌方法は当該形態に限定されない。例えば、上記3以上の隔壁2、2、…のそれぞれの片面のみに紫外線発光面21aが設けられており(紫外線発光面21bが存在せず)、上記3以上の隔壁2、2、…は、該紫外線発光面21aが設けられた面を同じ方向に向けて(
図2参照。)配置される形態の液体殺菌方法とすることも可能である。そのような形態としては例えば、
図3(a)〜(c)において、紫外線発光面21bが全て紫外線反射膜で覆われている形態を例示できる。かかる形態においては、上記工程(2)は、流路3を通過する被殺菌液体5に、一対の隔壁2、2の向かい合う2面の一方に設けられた1の紫外線発光面21aから紫外線を照射する工程となる。
また、上記工程(1)において、単一の流路3に被殺菌液体5を流通させ、上記工程(2)において、該単一の流路3を通過する被殺菌液体5に紫外線を照射する形態の液体殺菌方法とすることも可能である。
【0047】
本発明に関する上記説明では、各面光源2が、一対の紫外線発光面21a、21bを有する導光板21と、該導光板21の一方の端部21cに配列された、200nm以上300nm未満の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する複数の深紫外線発光ダイオード22、22、…とを有する形態の液体殺菌装置100を例示したが、本発明の液体殺菌装置は当該形態に限定されない。例えば、面光源に関しては、他の形態の導光板の他、特許文献5に記載されたLEDモジュールのように、深紫外線発光ダイオード22を多数平面上に整列配置したものを使用することも可能である。しかし、このような面光源では必然的に面光源の厚さが厚くなり装置のコンパクト化が困難となるばかりでなく、深紫外線発光ダイオード22自体をケーシング1内部に配置しなければならないことから装置のメンテナンスが煩雑となる。このような理由から面光源としては導光板を利用したものが好ましい。
液体殺菌装置100以外の装置で好適な装置を例示すれば、各面光源が、一対の紫外線発光面を有する導光板と、該導光板から離隔して配置され、紫外線を発生する、紫外線発生装置と、該紫外線発生装置から導光板の一方の端部へ紫外線を導く、紫外線導波手段とを有する形態の液体殺菌装置を挙げることができる。
図5は、そのような他の一の実施形態に係る液体殺菌装置1100を説明する図である。
図5は、液体殺菌装置1100を模式的に説明する断面図であって、
図5の紙面に垂直な方向が被殺菌液体5の流通する方向である。
図5において、
図1〜4に表れた要素と同一の要素には
図1〜4における符号と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0048】
液体殺菌装置1100は、面光源2、2、…に代えて面光源1002、1002、…を有する点において、上記説明した液体殺菌装置100と異なっている。各面光源1002は、一対の紫外線発光面21a、21bを有する導光板21と、該導光板21から離隔して配置され、紫外線を発生する、紫外線発生装置24と、該紫外線発生装置24から導光板21の一方の端部21cへ紫外線を導く、紫外線導波手段25とを有している。
図5においては、図面を簡単にするため、導光板21の表面に設けられる光拡散ドット23、23、…は省略している。紫外線導波手段25としては例えば、折り曲げられた導光板、可撓性の導光フィルムの張り合わせ、内壁が紫外線反射材で構成された導波管等、帯状の平行光を伝送可能な導波路を特に制限なく採用できる。液体殺菌装置1100において、導光板21の端部21cと紫外線導波手段25との接続を容易にするため、導光板21の一部は、ケーシング1の一の側壁に設けられた貫通孔を通じてケーシング1の内部からケーシング1の外部に延在しており、ケーシング1の外部に存在する導光板21の端部21cに紫外線導波手段25の一方の端部が接続されている。紫外線導波手段25の他方の端部は紫外線発生装置24に接続されている。
【0049】
紫外線発生装置24について、
図6〜8を参照しつつ説明する。紫外線発生装置24は、紫外線を出射する棒状光源110と、棒状光源110から出射された紫外線を集光する集光装置とを有し、棒状光源110は、円筒状または多角柱状の基体11と、200nm以上300nm未満の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する複数の深紫外線発光ダイオード112、112、…とを有し、該複数の深紫外線発光ダイオード112、112、…は、各深紫外線発光ダイオード112の光軸が基体11の中心軸114を通るように基体11の側面に配置されており、中心軸114に対して放射状に深紫外線を出射する、このような紫外線発生装置は、特許第5591305号公報(特許文献6)に記載されており、その内容はここに参照をもって組み入れられる。
【0050】
図6には、棒状光源(棒状紫外線発光モジュール)110の(X−X´面で切断したときの)横断面図および縦断面図を示している。
図6に示されるように、棒状光源110は円筒状基体111の表面上に複数の深紫外線発光ダイオード112、112、…(以下において単に「深紫外LED112」ということがある。)が整列配置されており、該円筒状基体11の内部には冷却媒体用流路113が形成されている。また、深紫外LED112が搭載された円筒状基体111は、石英などの紫外線透過性材料から形成されるカバー116で覆われている。該カバー116は封止剤やパッキン、O−リング等のシール部材117を用いて気密又は水密に円筒状基体111に装着され、その内部には深紫外LED112の耐久性を高めるために不活性ガスまたは乾燥空気が封入されている。
【0051】
深紫外LED112、112、…は、素子がサブマウントに搭載された状態またはパッケージに収容された状態で配置され、一定方向に向かって紫外線を出射する。なお、図示しないが、サブマウント又はパッケージには、外部から深紫外LED112に電力を供給するための配線や深紫外LED112を正常に作動させるための回路等が形成されており、該配線や回路への電力の供給は円筒状基体111の表面又は内部に形成された配線を介して行われる。
【0052】
円筒状基体111は、深紫外LED112を固定および保持するための支持体として機能するほか、ヒートシンクとしての機能も有し、内部の冷却媒体用流路113に冷却水や冷却用エアーなどの冷却媒体118を流通することにより深紫外LED112が発する熱による温度上昇を防止して、素子の安定作動を助け、素子寿命を延ばすことが可能となる。
【0053】
深紫外LED112で発生した熱を効率よく除去するため、円筒状基体111は、主として銅、アルミニウムなどの熱導電性の高い金属やセラミックスなどで構成されていることが好ましく、また、冷却媒体118の熱交換面積を増大させるために冷却媒体用流路113の内壁面には溝加工を施すことが好ましい。さらに、円筒状基体111を金属材料で構成する場合には、外部電源から深紫外LED112に電力を供給するための銅線または回路との絶縁を図るための絶縁層が形成されていることが好ましい。
【0054】
円筒状基体111の側面には、その周方向に沿って、複数の深紫外LED112、112、…が、各深紫外LED112の光軸115が基体111の中心軸114を通るように配置されている。その結果、深紫外LED112から出射される深紫外線は、基体111の中心軸114に対して放射状に出射されることになる。なお、深紫外LED112の光軸115とは、深紫外LED112から出射される光芒の中心軸を意味し、該光芒の進行方向とほぼ同義である。また、ここで、「光軸115が基体111の中心軸114を通るように配置する」とは、なるべくこのような状態を実現するように配置するという意味であり、その状態から僅かに傾いていても問題はない。
【0055】
図6には、基体111の周方向に4個の深紫外LEDを配置した例を示しているが、当該形態に限定されるものではなく、深紫外LED112の配置数は円筒状基体111の外径に応じて適宜変更できる。周方向に配置する深紫外LED112の数は、通常3〜20個、好ましくは4〜12個の範囲であるが、周方向に配置する深紫外LED112の数が多いほど深紫外光照射手段44’から出射される深紫外線の強度(光量子束密度)は高くなるので、より高強度の深紫外光が必要な場合には、円筒状基体111の径を大きくし、周方向に配置する紫外線発光素子の数を、上記範囲を超えて多くすることができる。
【0056】
深紫外LED112、112、…は、
図6の縦断面図に示すように円筒状基体111の長手方向に列を形成するように配置することが好ましい。このとき、深紫外LED112、112、…は、棒状光源110の軸方向における発光強度が均一になるように、円筒状基体111側面に密に規則正しく配列するように配置することが好ましい。
【0057】
図7及び
図8には、棒状光源110を有する紫外線発生装置24の横断面図及び側面図を示した。紫外線発生装置24は、内面が長楕円反射ミラーからなる出射側反射ミラー120となっている出射側筐体125と、内面が長楕円反射ミラーからなる集光側反射ミラー123となっていると共に紫外線出射用開口部130が形成されている集光側筐体126と、紫外線出射用開口部130に配置されたコリメート光学系140からなる本体150を有し、該本体150の内部に棒状光源110が配置されている。本体150において出射側筐体125と集光側筐体筐体126とは互いに着脱可能に又はヒンジ等を用いて開閉可能とされていることが好ましい。また、本体150の
図7及び
図8における上下両端開口部には、紫外線が外部に漏れ出ることを防止するためのカバー(不図示)が設けられている。
【0058】
図7及び
図8に示す態様では、出射側反射ミラー120と集光側反射ミラー123とは実質的に同形状の長楕円反射ミラーであるので、本体150において、出射側筐体125と集光側筐体126とが結合されて形成される内部空間の形状は、出射側反射ミラーの焦点軸121及び出射側反射ミラーの集光軸122の2軸をそれぞれ焦点軸とする楕円形の断面(ただし、開口部130に相当する部分が欠損している。)を有する柱状体となる。出射側反射ミラー120および集光側反射ミラー123の表面は、深紫外線に対する反射率が大きい材質、たとえばRu、Rh、Pd、Os、Ir、Pt等の白金族金属、Al、Ag、Ti、これらの金属の少なくとも一種を含む合金、又は酸化マグネシウムで構成されることが好ましく、反射率が特に高いという理由から、Al、白金族金属又は白金族金属を含む合金、又は酸化マグネシウムで形成されていることが特に好ましい。
【0059】
集光側反射ミラー123及び集光側筐体126には、スリット状に紫外線出射用開口部130が設けられ、該開口部130には、集光された紫外線を平行若しくは略平行な光束に変換するコリメート光学系140が配置されている。コリメート光学系140は合成又は天然石英、サファイア、紫外線透過性樹脂等の紫外線透過性の高い材質で構成されることが好ましい。該コリメート光学系140は紫外線出射用開口部130に脱着可能に取り付けられていることが好ましい。
【0060】
紫外線発生装置24において、棒状光源110は、その中心軸114が出射側反射ミラーの焦点軸121と一致するように配置される。このような位置に棒状光源110が配置されるので、該棒状光源110から放射状に出射される深紫外光は出射側反射ミラー120および集光側反射ミラー123で反射されて集光側反射ミラーの焦点軸124(すなわち出射側反射ミラーの集光軸122)上に収斂するように集光され、集光された深紫外光は紫外線出射用開口部130から紫外線導波手段25の一方の(導波板21に接続されている端部とは反対側の)端部に入射する。
【0061】
このように、紫外線発生装置24では、原理的には、棒状光源110から放射状に出射される深紫外線の全てを集光側反射ミラー123の焦点軸124上に集光でき、深紫外線出射用開口部130方向に向かわない方向(たとえば反対方向や横方向)に出射された深紫外線をも有効に利用することができる。すなわち、棒状光源110において、光軸115が紫外線出射用開口部130方向に向かうように深紫外LED112、112、…の全てを同一平面上に配置する必要はなく、横方向や反対方向に向けて配置することも可能となる。したがって、棒状光源110は、単位空間当たりに配置される深紫外線発光ダイオードの数を大幅に増やすことができ、紫外線発生装置24は、より高い強度の紫外線を導光板21に供給することができる。
【0062】
本発明に関する上記説明では、それぞれのスリット状の流路3が隣接する面光源2、2によって画定される形態の液体殺菌装置100を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、スリット状の流路が光触媒を担持した板と面光源とによって画定され、光触媒の殺菌作用をさらに利用する形態の液体殺菌装置とすることも可能である。
図9は、そのような他の一の実施形態に係る液体殺菌装置2100を模式的に説明する図であり、
図10は
図9のA’−A’断面図である。また
図11は、液体殺菌装置2100が備える面光源2002を模式的に説明する図である。
図9〜12において、
図1〜8に既に表れた要素と同一の要素には
図1〜8における符号と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0063】
図10に示すように、液体殺菌装置2100は、200nm以上300nm未満の波長領域及び300nm以上400nm以下の波長領域に夫々主ピークを有する紫外線を発する一対の紫外線発光面2021a、2021b(後述)を有する面光源2002、2002、…(以下において単に「面光源2002」ということがある。)に加えて、複数の光触媒担持板4、4、…(以下において単に「光触媒担持板4」ということがある。)をさらに有しており、複数の面光源2002、2002、…および複数の光触媒担持板4、4、…は平行に配列されており、光触媒担持板4のそれぞれが、隣り合う一対の面光源2002、2002の間に配置されることにより、隣接する面光源2002と光触媒担持板4との間にスリット状の流路2003が形成されている。各スリット状の流路2003の、該流路2003の側面を構成する紫外線発光面2021a(又は2021b)に垂直な方向の幅d’が、該紫外線発光面2021a(又は2021b)の有効光路長以下となっている。液体殺菌装置2100においては、スリット状の流路2003、2003、…に液体を流通させることによって液体の殺菌が行われる。
【0064】
図11(a)は面光源2002を模式的に説明する平面図であって、
図3(a)に対応する図である。
図11(b)は面光源2002を模式的に説明する側面図であって、
図3(b)に対応する図である。
図11(a)に示すように、面光源2002は、一対の紫外線発光面2021a、2021bを有する導光板2021と、導光板2021の一方の端部2021cに配列された、200nm以上300nm未満の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する複数の深紫外線発光ダイオード22、22、…、及び、300nm以上400nm以下の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する複数の紫外線発光ダイオード26、26、…と、一対の紫外線発光面2021a、2021bの表面に設けられた光拡散ドット2023、2023、…(以下において単に「光拡散ドット2023」ということがある。)を有している。
図10に示すように、面光源2002(より具体的には導光板2021)の一方の端部2021cはケーシング1の胴部の外側に演出し、該端部において深紫外線発光ダイオード22、22、…及び紫外線発光ダイオード26、26、…(
図10において不図示。
図11参照。)と接続されるともに、深紫外線発光ダイオード22、22、…及び紫外線発光ダイオード26、26、…は不図示の電源に接続されており、波長200nm以上300nm未満の深紫外線および波長300nm以上400nm以下の深紫外線をそれぞれ発する。光拡散ドット2023は、一方の表面が紫外線発光面2021aまたは2021bに接するように設けられた、紫外線を反射する反射膜2023cと、反射膜2023cの他方の表面に設けられた光拡散ドット基材2023aとを有している。
図11(b)の矢印Bに示すように、深紫外線発光ダイオード22又は紫外線発光ダイオード26から発せられた紫外線は、導光板2021の一方の端部2021cから導光板2021内部に入射し、反射膜2023c、2023c、…によって反射されながら導光板2021の内部を伝播し、反射膜2023cのない紫外線発光面2021a若しくは2021b又は導光板2021の他方の端部2021dから導光板2021の外部に出射される。
図11(b)に示すように、光拡散ドット2023、2023、…が導光板2021の表面に配置されていることにより、液体がスリット状の流路2003を流通する際に液体が光拡散ドット2023にぶつかり、乱流が発生する。乱流が発生することによって液体が撹拌されるので、殺菌効率が向上する。
【0065】
図11(a)及び(b)においては、反射膜2023cの導光板2021と接していない表面に光拡散ドット基材2023aが設けられ、その結果光拡散ドット2023が導光板2021の紫外線発光面2021a、2021bの表面から突出している形態の面光源2002を説明したが、面光源2002は当該形態に限定されるものではなく、例えば、光拡散ドット2023が導光板2021の紫外線発光面2021a、2021bから突出していない形態の面光源を採用することも可能である。
図11(c)は、そのような面光源の他の一例を説明する側面図であって、
図11(b)に対応する図である。
図11(c)に示すように、光拡散ドット2023を、紫外線発光面2021a又は2021bに埋没するように設けてもよい。
図11(c)において、反射膜2023cは、光拡散ドット基材2023aと導光板2021との界面に設けられている。このように光拡散ドットを導光板表面に埋没させた形態によれば、光拡散ドットの脱落を防ぐことが容易になる。なお、
図11(b)に示したように導光板表面から突出するように設けた光拡散ドットと、
図11(c)に示すように導光板表面に埋没するように設けた光拡散ドットとの両方を有する形態の面光源を採用することも可能である。
【0066】
なお、液体殺菌装置2100は光触媒担持板4、4、…を備えているので、面光源2002の光拡散ドット2023内部に光触媒粒子を分散保持させる必要はない。光拡散ドット内部に光触媒を分散保持させないことにより、光触媒の作用による面光源2002の劣化を防止することが容易になる。
【0067】
図12(a)は光触媒担持板4を模式的に説明する平面図であり、
図12(b)は光触媒担持板4を模式的に説明する側面図である。
図12(b)に示すように、光触媒担持板4は、基材4aと、基材4aの表面を被覆するバリアコート層4bと、バリアコート層4bの表面を被覆する光触媒層4cとを有する。光触媒担持板の基材4aと光触媒層4cの間にバリアコート層4bを設けることによって、光触媒担持板の基材4aが光触媒層4cの光触媒作用によって劣化する事態を抑制できる。光触媒担持板の基材4aは、光触媒担持板4の形状を維持する十分な強度を有する材料によって形成されている。そのような材料としては、各種金属、セラミックス、ガラス、各種樹脂等を例示できる。バリアコート層4bは、光触媒層4cの酸化作用から光触媒担持板の基材4aを保護する層であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂等のフッ素樹脂により形成されている。光触媒層4cは、光触媒を含有する被膜層であって、光照射を受けることにより有機物を酸化分解する機能を有する。光触媒層4cに含有させる光触媒としては、安全性の観点から酸化チタンを好ましく用いることができる。なお、光触媒担持板の基材4aに光触媒層4cを形成する手段は特に制限されるものではなく、例えば、光触媒酸化チタン及びバインダーを含むコーティング剤をバリアコート層4bの表面に塗布した後、該コーティング剤を硬化させることにより形成することができる。バインダーとしては、例えばケイ酸塩系バインダー、リン酸塩系バインダー、無機コロイド、金属アルコキシド、フッ素樹脂などの、光触媒担持板の基材4aを劣化させない温度での硬化が可能な公知のバインダーを特に制限なく用いることができる。液体殺菌装置2100が殺菌すべき液体が食品(例えば牛乳や清涼飲料水、酒類等。)である場合には、硬化後にその成分が当該液体に溶出しない硬化剤を用いることが好ましく、このような観点からは、フッ素樹脂系バインダーを好ましく採用できる。
【0068】
再び
図10を参照する。液体殺菌装置2100においては、各光触媒担持板4が、隣り合う一対の面光源2002、2002の間に配置されることにより、隣接する面光源2002と光触媒担持板4との間にスリット状の流路2003が形成されている。流路2003に液体を流通させると、流路2003のうち面光源2002に近い領域においては深紫外線による殺菌が主に行われ、流路2003のうち光触媒担持板4に近い領域においては光触媒作用による殺菌が主に行われる。液体殺菌装置2100によれば、このようにして、効率よく液体を殺菌することが可能である。
【0069】
本発明の他の一の実施形態に係る液体殺菌方法S2について、
図9〜12を参照しつつ説明する。液体殺菌方法S2は、(1)所定の幅の間隙を設けて平行に配置された一対の隔壁2002、4(すなわち隣接する面光源2002及び光触媒担持板4。)の間に形成された流路2003に、溶液又は懸濁液である被殺菌液体5を流通させる工程S21と、(2)流路2003を通過する被殺菌液体5に、一対の隔壁2002、4の向かい合う2面の一方に設けられた紫外線発光面2021a(又は2021b)から紫外線を照射する工程S22とを含む。そして、上記間隙(すなわち隣接する面光源2002と光触媒担持板4との間の距離。)の、紫外線発光面2021a(又は2021b)に垂直な方向の幅d’は、該間隙の一方の側面を構成する紫外線面光源2002の紫外線発光面2021a(又は2021b)の有効光路長L
a(又はL
b)以下である。ここで、紫外線発光面2021a、2021bの有効光路長L
a、L
bの定義は上記説明した液体殺菌方法S1と同様であり、別途測定される。
【0070】
液体殺菌方法S2において、一対の隔壁2002、4は、第1の隔壁2002(すなわち面光源2002)と、第2の隔壁4(すなわち光触媒担持板4)とからなる。第1の隔壁2002は、少なくとも第2の隔壁4と向かい合う面に、紫外線発光面2021a(又は2021b)を有し、第2の隔壁4は、少なくとも第1の隔壁2002と向かい合う面に、光触媒作用を有する面を有する。上記(2)の工程S22において、流路2003を通過する被殺菌液体5に、200nm以上300nm未満の波長領域及び300nm以上400nm以下の波長領域に夫々主ピークを有する紫外線を、第1の隔壁2002の紫外線発光面2021a(又は2021b)から照射する。流路2003の紫外線発光面2021a(又は2021b)に垂直な方向の幅d’は、200nm以上300nm未満の波長領域に主ピークを有する紫外線に基づいて決定された有効光路長L
a(又はL
b)以下とされている。光源として200nm以上300nm未満の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する深紫外線発光ダイオード22と300nm以上400nm以下の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する紫外線発光ダイオード26とを併用した場合、一般に紫外線発光ダイオード26の発光強度の方が深紫外線発光ダイオード22の発光強度より高いので、幅d’が深紫外線発光ダイオード22から発せられる波長200nm以上300nm未満の波長領域に主ピークを有する深紫外線に基づいて決定された有効光路長L
a(又はL
b)以下である限り、光触媒の励起光となる300nm以上400nm以下の波長領域に主ピークを有する紫外線は第2の隔壁4(すなわち光触媒担持板4)に到達することができる。
なお、幅d’の下限値は、液体殺菌方法S1と同様にして決定すればよい。
【0071】
紫外線発光面2021a、2021bの有効光路長L
a、L
bの決定は、上記液体殺菌方法S1と同様の工程(a)〜(e)(S101〜S105)により行うことができる。
【0072】
流路2003の長さ及び/又は被殺菌液体5の流速(流路2003の長さが調整可能でない場合には、被殺菌液体5の流速)は、被殺菌液体5の殺菌に必要な紫外線の積算照射量I
int(mJ/cm
2)が確実に達成されるように定めることが好ましい。これは上記工程(a)〜(d)(S101〜S104)および上記工程(f)〜(i)(S106〜S109)により同様に行うことができる。ただし上記(f)の工程S106において、向かい合う一対の隔壁の一方は紫外線発光面を有しない光触媒担持板4であるので、当該流路2003に接する紫外線発光面2021a(又は2021b)に垂直な方向にx軸をとり、該紫外線発光面2021a(又は2021b)の位置をx軸の原点として、座標xにおける透過紫外線の放射照度I(x)は、
I(x)=I
0・10
−αx …(4’)
として表される。ただし0≦x≦d’である。これは座標x=d’において最小値I(d’)をとる。これが放射照度分布I(x)における最低放射照度I
minである。
【0073】
本発明に関する上記説明では、上記(1)工程S21において、2以上の流路2003、2003、…に被殺菌液体5を流通させ、上記(2)工程S22において、該2以上の流路2003、2003、…を通過する被殺菌液体5に紫外線を照射する形態の液体殺菌方法S2を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、上記工程(1)において、単一の流路2003に被殺菌液体5を流通させ、上記工程(2)において、該単一の流路2003を通過する被殺菌液体5に紫外線を照射する形態の液体殺菌方法とすることも可能である。
【0074】
本発明に関する上記説明では、各面光源2002が、一対の紫外線発光面2021a、2021bを有する導光板2021と、該導光板2021の一方の端部2021cに配列された、200nm以上300nm未満の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する複数の深紫外線発光ダイオード22、22、…及び300nm以上400nm以下の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する複数の紫外線発光ダイオード26、26、…とを有する形態の液体殺菌装置100を例示したが、本発明の液体殺菌装置は当該形態に限定されない。例えば、各面光源が、一対の紫外線発光面を有する導光板と、該導光板から離隔して配置され、紫外線を発生する、紫外線発生装置と、該紫外線発生装置から導光板の一方の端部へ紫外線を導く、紫外線導波手段とを有する形態の液体殺菌装置とすることも可能である。
図13は、そのような他の一の実施形態に係る液体殺菌装置3100を説明する図である。
図13は、液体殺菌装置3100を模式的に説明する断面図であって、
図13の紙面に垂直な方向が被殺菌液体5の流通する方向である。
図13において、
図1〜12において既に表れた要素と同一の要素には
図1〜12における符号と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0075】
液体殺菌装置3100は、面光源2002、2002、…に代えて面光源3002、3002、…を有する点において、上記説明した液体殺菌装置2100と異なっている。各面光源3002は、一対の紫外線発光面2021a、2021bを有する導光板2021と、該導光板2021から離隔して配置され、紫外線を発生する、紫外線発生装置3024と、該紫外線発生装置3024から導光板2021の一方の端部2021cへ紫外線を導く、紫外線導波手段25とを有している。
図13においては、図面を簡単にするため、導光板2021の表面に設けられる光拡散ドットは省略している。液体殺菌装置3100において、導光板2021の端部2021cと紫外線導波手段25との接続を容易にするため、導光板2021の一部は、ケーシング1の一の側壁に設けられた貫通孔を通じてケーシング1の内部からケーシング1の外部に延在しており、ケーシング1の外部に存在する導光板2021の端部2021cに紫外線導波手段25の一方の端部が接続されている。紫外線導波手段25の他方の端部は紫外線発生装置3024に接続されている。
【0076】
紫外線発生装置3024は、棒状光源110に代えて、棒状光源3110を有する点において、
図6〜8を参照しつつ上記説明した紫外線発生装置24と異なっている。
図14は、紫外線発生装置3024が有する棒状光源3110を説明する図であり、
図6に対応する図である。
図14において、
図6〜8に既に表れた要素と同一の要素には
図6〜8と同一の符号を付し、説明を省略する。棒状光源3110は、円筒状または多角柱状の基体11と、200nm以上300nm未満の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する複数の深紫外線発光ダイオード112、112、…と、300nm以上400nm以下の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する複数の紫外線発光ダイオード3026、3026、…とを有している。該複数の深紫外線発光ダイオード112、112、…及び該複数の紫外線発光ダイオード3026、3026、…は、各深紫外線発光ダイオード112および紫外線発光ダイオード3026の光軸が基体11の中心軸114を通るように基体11の側面に配置されており、中心軸114に対して放射状に深紫外線および紫外線を出射する。すなわち、棒状光源3110は、棒状光源110における深紫外線発光ダイオード112、112、…の一部が、300nm以上400nm以下の波長領域に主ピークを有する紫外線を発光する複数の紫外線発光ダイオード3026、3026、…に置き換えられている点において、上記説明した棒状光源110と異なっている。
【0077】
深紫外線発光ダイオード112、112、…及び紫外線発光ダイオード3026、3026、…は、
図6の縦断面図に示すように、円筒状基体111の長手方向に深紫外線発光ダイオード112、112、…の列と紫外線発光ダイオード3026、3026、…の列とが形成されるように配置することが好ましい。このように配置することにより、紫外線発生装置3024から出射される紫外線の、棒状光源3110の軸方向における強度のむらを低減することができる。
【0078】
紫外線発生装置3024では、原理的には、棒状光源3110から放射状に出射される深紫外線の全てを集光側反射ミラー123の焦点軸124上に集光でき、深紫外線出射用開口部130方向に向かわない方向(たとえば反対方向や横方向)に出射された紫外線をも有効に利用することができる。すなわち、棒状光源3110において、光軸115が紫外線出射用開口部130方向に向かうように深紫外線発光ダイオード112、112、…及び紫外線発光ダイオード3026、3026、…の全てを同一平面上に配置する必要はなく、横方向や反対方向に向けて配置することも可能となる。したがって、棒状光源3110は、単位空間当たりに配置される深紫外線発光ダイオードおよび紫外線発光ダイオードの数を大幅に増やすことができ、深紫外線発生装置3024は、より高い強度の紫外線を導光板2021に供給することができる。
【0079】
本発明に関する上記説明では、光拡散ドットを有する面光源を備える形態の液体殺菌装置100、1100、2100、3100を例示したが、本発明の液体殺菌装置は当該形態に限定されるものではない。例えば、光拡散ドットを有しない面光源を備える形態の液体殺菌装置とすることも可能である。