(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0033】
[0043] 本明細書は、本発明の特徴を組み込んだ1つ以上の実施形態を開示する。開示される実施形態は本発明を例示するに過ぎない。本発明の範囲は開示される実施形態に限定されない。
【0034】
[0044] 説明される(1つ以上の)実施形態、および明細書中の「一実施形態」、「ある実施形態」、「例示的な実施形態」等への言及は、説明される実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含み得ることを示すが、必ずしもすべての実施形態がその特定の特徴、構造、または特性を含んでいなくてもよい。また、かかる表現は、必ずしも同じ実施形態を指すものではない。また、特定の特徴、構造、または特性がある実施形態に関連して説明される場合、他の実施形態との関連においてかかる特徴、構造、または特性に影響を及ぼすことは、それが明示的に説明されているか否かにかかわらず、当業者の知識内のことであると理解される。
【0035】
[0045]
図1は、本発明の一実施形態に係るソースコレクタ装置SOを含むリソグラフィ装置100を概略的に示している。この装置は、
−放射ビームB(例えば、EUV放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、
−パターニングデバイス(例えば、マスクまたはレチクル)MAを支持するように構築され、かつパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1ポジショナPMに連結されたサポート構造(例えば、マスクテーブル)MTと、
−基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、かつ基板を正確に位置決めするように構成された第2ポジショナPWに連結された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WTと、
−パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付けられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、反射型投影システム)PSと、を備える。
【0036】
[0046] 照明システムとしては、放射を誘導し、整形し、または制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、またはその他のタイプの光学コンポーネント、あるいはそれらのあらゆる組合せなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。
【0037】
[0047] サポート構造MTは、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、および、パターニングデバイスが真空環境内で保持されているか否かなどの他の条件に応じた態様で、パターニングデバイスMAを保持する。サポート構造は、機械式、真空式、静電式またはその他のクランプ技術を使って、パターニングデバイスを保持することができる。サポート構造は、例えば、必要に応じて固定または可動式にすることができるフレームまたはテーブルであってもよい。サポート構造は、パターニングデバイスを、例えば、投影システムに対して所望の位置に確実に置くことができる。
【0038】
[0048] 「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分内にパターンを作り出すように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用できるあらゆるデバイスを指していると、広く解釈されるべきである。放射ビームに付与されたパターンは、集積回路などのターゲット部分内に作り出されるデバイス内の特定の機能層に対応するものとしてよい。
【0039】
[0049] パターニングデバイスは、透過型であっても、反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスク、プログラマブルミラーアレイ、およびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクは、リソグラフィでは公知であり、バイナリ、レべンソン型(alternating)位相シフト、およびハーフトーン型(attenuated)位相シフトなどのマスク型、ならびに種々のハイブリッドマスク型を含む。プログラマブルミラーアレイの一例では、小型ミラーのマトリックス配列が用いられており、各小型ミラーは、入射する放射ビームを様々な方向に反射させるように、個別に傾斜させることができる。傾斜されたミラーは、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームにパターンを付ける。
【0040】
[0050] 照明システムと同様、投影システムも、使われている露光放射にとって、あるいは真空の使用といった他の要因にとって適切な、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、またはその他のタイプの光学コンポーネント、あるいはそれらのあらゆる組合せを含むさまざまなタイプの光学コンポーネントを含み得る。他のガスは放射を吸収し過ぎる場合があるため、EUV放射には真空を使用することが望ましい場合がある。そのため、真空壁と真空ポンプとを用いて全ビーム経路に真空環境を作り出してもよい。
【0041】
[0051] 本明細書に示されているとおり、リソグラフィ装置は、反射型のもの(例えば、反射型マスクを採用しているもの)である。
【0042】
[0052] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブル(および/または2つ以上のマスクテーブル)を有する型のものであってもよい。そのような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブルは並行して使うことができ、または予備工程を1つ以上のテーブル上で実行しつつ、別の1つ以上のテーブルを露光用に使うこともできる。
【0043】
[0053]
図1を参照すると、イルミネータILは、ソースコレクタ装置SOから極端紫外線放射ビームを受ける。EUV放射を生成する方法としては、例えばキセノン、リチウム、またはスズといったEUV範囲内に1以上の輝線をもつ少なくとも1つの元素を有する材料をプラズマ状態に変換する方法があるが、必ずしもこれに限定されない。しばしばレーザ生成プラズマ(「LLP」)と呼ばれるそのような一方法において、所要のプラズマは、所要の線発光元素を有する材料の小滴、流れ、またはクラスタといった燃料にレーザビームを照射することにより生成することができる。ソースコレクタ装置SOは、
図1には示されない、燃料を励起するレーザビームを提供するためのレーザを含むEUV放射システムの一部であってもよい。こうして得られるプラズマは、出力放射、例えばEUV放射を放出し、これがソースコレクタ装置内に配置された放射コレクタを用いて集められる。レーザとソースコレクタ装置とは、例えば、燃料励起のためのレーザビームを提供するためにCO2レーザが使用される場合には、別個の構成要素であってもよい。
【0044】
[0054] そのような場合、レーザは、リソグラフィ装置の一部を形成しているとはみなされず、放射ビームは、レーザからソースコレクタ装置へ、例えば、適切な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを備えるビームデリバリシステムを使って送られる。
【0045】
[0055] しばしば放電生成プラズマ(「DPP」)と呼ばれる別の方法においては、放電によって燃料を気化させることでEUV放出プラズマが生成される。燃料は、キセノン、リチウムまたはスズといった、EUV範囲内に1以上の輝線を有する元素であってよい。放電は電源によって発生させることができ、電源は、ソースコレクタ装置の一部を形成しても、電気的接続によりソースコレクタ装置に接続された別個の構成要素であってもよい。
【0046】
[0056] イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調節するアジャスタを含むことができる。一般に、イルミネータの瞳面内の強度分布の少なくとも外側および/または内側半径範囲(通常、それぞれσ-outerおよびσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。さらに、イルミネータILは、ファセットフィールドおよび瞳ミラーデバイスといった、様々な他のコンポーネントを含むことができる。イルミネータを使って放射ビームを調整すれば、放射ビームの断面に所望の均一性および強度分布をもたせることができる。
【0047】
[0057] 放射ビームBは、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されているパターニングデバイス(例えば、マスク)MA上に入射して、パターニングデバイスによってパターン形成される。パターニングデバイス(例えば、マスク)MAから反射した後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSは、基板Wのターゲット部分C上にビームの焦点をあわせる。第2ポジショナPWおよび位置センサPS2(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、または静電容量センサ)を使って、例えば、様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路内に位置決めするように、基板テーブルWTを正確に動かすことができる。同様に、第1ポジショナPMおよび別の位置センサPS1を使い、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを放射ビームBの経路に対して正確に位置決めすることもできる。パターニングデバイス(例えば、マスク)MAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1およびM2と、基板アライメントマークP1およびP2とを使って、位置合わせされてもよい。
【0048】
[0058] 例示の装置は、以下に説明するモードのうち少なくとも1つのモードで使用できる。
【0049】
[0059] 1.ステップモードにおいては、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTおよび基板テーブルWTを基本的に静止状態に保ちつつ、放射ビームに付けられたパターン全体を一度にターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一静的露光)。その後、基板テーブルWTは、Xおよび/またはY方向に移動され、それによって別のターゲット部分Cを露光することができる。
【0050】
[0060] 2.スキャンモードにおいては、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTおよび基板テーブルWTを同期的にスキャンする一方で、放射ビームに付けられたパターンをターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一動的露光)。サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPSの(縮小)拡大率および像反転特性によって決めることができる。
【0051】
[0061] 3.別のモードにおいては、プログラマブルパターニングデバイスを保持した状態で、サポート構造(例えば、マスクテーブル)MTを基本的に静止状態に保ち、また基板テーブルWTを動かす、またはスキャンする一方で、放射ビームに付けられているパターンをターゲット部分C上に投影する。このモードにおいては、通常、パルス放射源が採用されており、さらにプログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTの移動後ごとに、またはスキャン中の連続する放射パルスと放射パルスの間に、必要に応じて更新される。この動作モードは、前述の型のプログラマブルミラーアレイといったプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0052】
[0062] 上述の使用モードの組合せおよび/またはバリエーション、あるいは完全に異なる使用モードもまた採用可能である。
【0053】
[0063]
図2は、リソグラフィ装置100を、ソースコレクタ装置SO、照明システムIL、および投影システムPSを含めてより詳細に示す。ソースコレクタ装置SOは、ソースコレクタ装置SOの閉鎖構造220内に真空環境を維持できるように構築されかつ配置される。EUV放射放出プラズマ210は、放電生成プラズマ源によって形成し得る。EUV放射は、例えば、Xeガス、Li蒸気、またはSn蒸気といった、その中で非常に高温のプラズマ210が作り出されて電磁スペクトルのEUV範囲内の放射が放出されるガスまたは蒸気によって生成し得る。非常に高温のプラズマ210は、例えば、少なくとも部分的にイオン化されたプラズマを生じる放電によって作り出される。放射を効率よく生成するためには、例えば、分圧10PaのXe、Li、Sn蒸気、あるいはその他の好適なガスまたは蒸気が必要となり得る。一実施形態では、EUV放射を生成するために励起スズ(Sn)のプラズマが提供される。
【0054】
[0064] 高温のプラズマ210から放出された放射は、ソースチャンバ211内の開口部内またはその後方に位置する任意のガスバリアまたは汚染物質トラップ230(汚染物質バリアまたはフォイルトラップと呼ばれることもある)を介して、ソースチャンバ211からコレクタチャンバ212へと送られる。汚染物質トラップ230は、チャネル構造を含んでよい。汚染物質トラップ230はまた、ガスバリア、あるいはガスバリアとチャネル構造との組合せを含んでもよい。本明細書においてさらに言及される汚染物質トラップまたは汚染物質バリア230は、当該技術分野において公知のように、少なくともチャネル構造を含むものとする。
【0055】
[0065] コレクタチャンバ212は、いわゆるかすめ入射コレクタであってもよい放射コレクタCOを含み得る。放射コレクタCOは、放射コレクタ上流側251および放射コレクタ下流側252を有する。コレクタCOを通過する放射は、格子スペクトルフィルタ240で反射し、仮想光源点IFに集束させることができる。仮想光源点IFは、通常、中間焦点と呼ばれるもので、中間焦点IFが閉鎖構造220内の開口部219に位置する、あるいはその近傍に位置するように、ソースコレクタ装置が配置される。仮想光源点IFは、放射放出プラズマ210の像である。
【0056】
[0066] 放射は続いて照明システムILを通過する。この照明システムILは、パターニングデバイスMAにおいて放射ビーム221に所望の角分布をもたせるとともに、パターニングデバイスMAにおいて所望の放射強度均一性をもたせるように配置されたファセットフィールドミラーデバイス222およびファセット瞳ミラーデバイス224を含み得る。放射ビーム221がサポート構造MTによって保持されたパターニングデバイスMAで反射されると、パターン付きビーム226が形成され、このパターン付きビーム226が、投影システムPSによって、反射要素228および230を介して、ウェーハステージまたは基板テーブルWTによって保持された基板W上に結像される。
【0057】
[0067] 照明光学ユニットILおよび投影システムPSには、通常、図示されるより多くの要素が存在し得る。リソグラフィ装置のタイプにより、格子スペクトルフィルタ240が任意選択的に存在してもよい。さらに、図面に示されたものより多くのミラーが存在してもよく、例えば、投影システムPSには、
図2に示されたものに対して1〜6個の追加の反射要素が存在してもよい。
【0058】
[0068]
図2に示すとおり、コレクタ光学系COは、コレクタ(またはコレクタミラー)の単なる一例として、かすめ入射リフレクタ253、254および255を有する入れ子状のコレクタとして描かれている。かすめ入射リフレクタ253、254および255は、光軸Oの周りに軸対称となるように配置されており、このようなタイプのコレクタ光学系COは、しばしばDPP源と呼ばれる放電生成プラズマ源と組み合わせて用いられることが好ましい。
【0059】
[0069] あるいは、ソースコレクタ装置SOは、
図3に示されるようなLPP放射システムの一部であってもよい。レーザLAは、キセノン(Xe)、スズ(Sn)またはリチウム(Li)といった燃料にレーザエネルギーを蓄積し、それによって数十eVの電子温度をもつ高イオン化プラズマ210を作り出すように構成されている。これらのイオンの脱励起および再結合中に生じるエネルギー放射がプラズマから放出され、近法線入射コレクタ光学系COによって集められ、閉鎖構造220内の開口部221上に集束される。
【0060】
[0070]
図4は、マスク(またはその他のパターニングデバイス)あるいはウェーハ(またはその他の基板)などの物体をクランプするために使用し得る、従来技術に係る静電クランプ1の一部を断面図で示す。クランプ1は、誘電体材料から形成される誘電体部分2と、電極4とを備える。誘電体部分2の上面には複数のバール5が位置する。バール5は誘電体材料から形成されてよい。バールの上面によって、物体(図示せず)の下面が保持されるべき平面6が決まる。電極4は、誘電体部分2のバール5と反対側の表面上に設けられる。
【0061】
[0071] 電極4は、クランプ1と物体との間に静電クランプ力を発生させるための電圧に保持されるように構成される。電極4に電圧が印加されると、静電クランプ力により物体は平面6内に保持され得る。静電クランプ力またはクーロンクランプ力は、以下の式にしたがい、印加電圧と関係付けることができる。
【数1】
上記において、
Pは、クランプすべき物体にかかるクーロンクランプ圧であり、
ε0は、真空の誘電率(8.854×10−12)であり、
Eは、クランプされた物体が受ける電界強度である。
電界強度Eは、クランプの表面であってそこから電界が広がる表面(この場合、誘電体部分2の上面)における電圧Vに比例し、この電界が広がる起点である表面とクランプされた物体との間の間隙g(この場合、間隙gはバール5の高さに等しい)に反比例する。
【0062】
[0072] 誘電体部分2の厚みを減らすこと、物体がクランプされる平面6と電極4との間の離隔距離を短くすること、および誘電体部分の静電容量を上げることによりクランプ力を上げることができる。しかしながら、誘電体部分2の厚みが減少すると、電極4とクランプされている物体との間に、あるいは、バール5が導電性であるか、または導体で覆われている(かつ接地接続されている)場合は電極4とバール5との間に短絡を引き起こす破損が発生するリスクが高まる。電極4とシステムの接地された一部との間に短絡または著しい放電が発生すると、電極4と物体との間の電圧は降下し、また、クランプ力はこの電圧の2乗によって決まるためクランプ力が著しく減少する場合がある。また、静電クランプ1に損傷を与える場合もある。
【0063】
[0073]
図5は、マスク(またはその他のパターニングデバイス)あるいはウェーハ(またはその他の基板)などの物体をクランプするために使用し得る、従来技術に係る別の静電クランプ11の一部を断面図で示す。このタイプのクランプは、クランプと呼ばれることがある。クランプ11は、抵抗材料から形成される抵抗部分13と、電極14とを備える。抵抗部分13の上面には複数のバール15が位置する。バール15は抵抗材料(例えば、抵抗部分13と同じ材料)から形成される。バール15の上面によって、物体(図示せず)の下面が保持されるべき平面16が決まる。電極14は、抵抗部分13のバール15と反対側の表面上に設けられる。
【0064】
[0074] 電極14は、クランプ11と物体との間に静電クランプ力を発生させるための電圧に保持されるように構成される。物体は平面16内に保持され得る。バール15とクランプされた物体との間の電流の流れが、バールおよびクランプされた物体を合わせて引っ張る作用を生じることになる。
【0065】
[0075] バール15の上面には接地接続された導電性被膜を設けることが可能である。こうすると、バールからクランプされた物体へと電流が流れず、上記作用はクランプ力をもたらさない。電極14に電圧が印加されると、クーロンの法則による静電クランプ力(前述の式(1)参照)により物体が静電クランプ11にクランプされる。この力は、バール15とバール15の間の領域に存在するが、これらのバールは接地接続されているためバールそのものには存在しない。抵抗部分13の上面における電圧は、バールを流れる電流のためバール15の近傍で下がる。したがって、物体にかかる力もバール15の近傍で下がる。
【0066】
[0076]
図6は、マスク(またはその他のパターニングデバイス)あるいはウェーハ(またはその他の基板)などの物体をクランプするために使用し得る、本発明の一実施形態に係る静電クランプ21の一部を、断面図と上から見た図とで概略的に示す。クランプ21は、誘電体材料から形成される誘電体部分22と、抵抗材料から形成される抵抗部分23と、電極24とを備える。電極24は、抵抗部分23の誘電体部分22とは反対側の表面上に設けられる。電極は、クランプ21と物体との間に静電クランプ力を発生させるための電圧に保持されるように構成される。誘電体部分22の上には複数のバール25が設けられる。バール25の上面によって、物体(図示せず)が保持されるべき平面26が決まる。誘電体層22は、(図に示すように)バール25の下に設けられてもよいし、バールの上に設けられてもよい。静電クランプ21に関する文脈における「上(upper)」および「下(lower)」との用語は、静電クランプが
図6に示す向きにある場合の、かかる静電クランプの特徴を記述している。使用時、静電クランプは他の適当な向きとしてよい。
【0067】
[0077]
図6bから分かるように、バール25は導体線27によって互いに接続され、かつ接地29に接続される。接地29はゼロボルトであってもよいし、ゼロボルト以外の固定電圧であってもよい。さらに
図6bから分かるように、電極24(静電クランプ21の図示された側と反対側にあるため点線で示されている)は電圧源28に接続されている。電圧源28は電極24に所望の電圧をかける(例えば、kV程度)。クーロン力によって、物体は静電クランプ21にクランプされることになる。このクーロン力は、物体が静電クランプ21にクランプされる際に物体によって汚染粒子が粉砕される程度に十分な強さであり得る。
【0068】
[0078] 抵抗部分23は、例えば、セラミックから形成され得る。抵抗部分23は、例えば、所望の厚さのセラミック層を形成するためにいくつかのセラミックシートを合わせて焼結することにより形成され得る。このプロセスでは抵抗部分に平坦でない表面ができる可能性がある。したがって、十分な枚数のセラミックシートを合わせて焼結し、余分な厚さのセラミックを作った後、研磨することによりセラミック表面の平坦性を改良することが可能である(研磨することにより、セラミックの厚さも所望の厚さまで薄くなる)。セラミックは、例えば、1mmの厚さであってよい。セラミックは、例えば、0.1mm以上の厚さであってよい。セラミックは、例えば、10mm以下の厚さであってよい。
【0069】
[0079] 誘電体部分22は、例えば、石英から形成されてよく、あるいは、任意の好適な絶縁体から形成されてよい。電極は、例えば、クロムまたはアルミニウム、あるいはその他の好適な導体から形成されてよい。静電クランプ21の製造が高温で行われる場合、電極24は、タングステンまたはモリブデンといった融点の高い金属から(あるいは複合材料のようなその他の好適な導体から)形成され得る。静電クランプは金属窒化物から形成され得る。導体線27は、クロム、アルミニウム、タングステン、モリブデン、金属窒化物、複合材料またはその他の好適な導体から同様に形成され得る。
【0070】
[0080] 抵抗部分23に(そうであることが予想され得るように)実質的に電流が流れないとすると、抵抗部分23の表面上の任意の点における電圧は電極24に印加された電圧と実質的に同じになる。誘電体部分22の上面の電圧は、誘電体部分、およびクランプされた物体と誘電体部分との間の隙間を直列のコンデンサとみなすことにより、以下の式にしたがって求めることができる。
【数2】
上記において、Vsは誘電体部分の上面の電圧であり、Cdは誘電体部分22の静電容量であり、Cvは誘電体部分とクランプされた物体との間の間隙の静電容量である。クランプ21とクランプされた物体との間の有効な力は、式(1)において与えられる関係によって定義される。
【0071】
[0081] 誘電体部分22は、抵抗部分23によって構造的に支持されているため、
図4に示す従来技術の静電クランプ1の誘電体部分より薄くてよい。誘電体部分22は、例えば、10ミクロン以下の厚さでよく、例えば、5ミクロン以上の厚さでよい(あるいはそれ以外の厚さであってもよい)。式(2)を参照すると、誘電体部分22を薄くしてその静電容量を上げると、誘電体部分の上面の電圧Vsが高くなると言うことができる。したがって、電極24に印加された任意の電圧に関し、誘電体部分22を薄くすると、従来技術の静電クランプ1によってかけられるよりも大きな力が物体にかけられる。逆に言えば、誘電体部分22を薄くすると、従来技術の静電クランプによってかけられるのと同じ力を電極24におけるより低い電圧によって発生させることができる。
【0072】
[0082]
図4に示される従来技術の静電クランプと比較した、
図6に示される実施形態のさらなる利点は、誘電体部分22に割れ目や欠陥が生じた場合、電極24とクランプされている物体との間に抵抗部分23があることによって物体に流れる電流がごくわずかなものになることである。したがって、放電によるクランプの損傷を回避できる可能性が高く、このクランプを使用し続けることが可能となり得る。電圧源28の損傷も同様に回避され得る。欠陥によって生じるクランプ圧の減少は局在化され、静電クランプ21の動作に対して致命的なものにならないようにし得る。
【0073】
[0083] 前述のとおり、誘電体層22は(図に示されるように)バール25の下に設けられてもよいし、バールの上に設けられてもよい。バールは、任意の好適な材料から形成され得る。
【0074】
[0084] バールが誘電体層22の上に設けられる実施形態において、バール25は、例えば、導電性材料から形成され、例えば、導体線27によって接地接続されてもよい。あるいは、バールは、例えば、抵抗材料または誘電体材料から形成され、これに導電性被膜が設けられて導体線27によって接地接続されてもよい。
【0075】
[0085] バールが誘電体層22の下に設けられる実施形態においては、(誘電体層の上の)バールの上に導体線27によって接続された導電性被膜が設けられてもよい。バールは、例えば、誘電体材料またはその他の好適な材料から形成されてよい。
【0076】
[0086]
図7は、マスク(またはその他のパターニングデバイス)あるいはウェーハ(またはその他の基板)などの物体をクランプするために使用し得る、本発明の一実施形態に係る静電クランプ21aの平面図を示す。静電クランプ21aは、
図6aに示される断面構造に全体として対応する断面構造を有する。ただし、静電クランプ21aはバイポーラクランプである。バイポーラクランプ21aは、
図6に示される単一の電極24ではなく一対の電極24a、24b(点線で記載)を備える。電極24aおよび24bは、それぞれ電圧源28aおよび28bにより、互いに同じ大きさであり、かつ互いに反対の符号の電圧に保持される。
図6に示される実施形態と同様に、バール25は導体線27によって互いに接続され、かつ接地29に接続される。バール25は、導電性材料から形成されてもよいし、絶縁材料または抵抗材料から形成され、導電性材料の被膜が設けられてもよい。誘電体層22は、(図に示すように)バール25の下に設けられてもよいし、バールの上に設けられてもよい。いずれの場合も、バール25の最上面(すなわち、使用時にクランプされた物体と接触する面)は導電性であってよく、かつ接地接続され得る。
【0077】
[0087]
図7に示されるバイポーラ静電クランプ21aは、例えば、いくつかの従来技術のバイポーラ静電クランプと比較して利点を有する。いくつかの従来技術のバイポーラ静電クランプでは、一方の電極からクランプされた物体への電流伝送と、他方の電極からクランプされた物体への電流伝送との間にずれが生じる場合がある。このずれによって、クランプされた物体が時間とともに帯電するようになる場合がある。
図7に示されるバイポーラ静電クランプ21aでは、誘電体層22がクランプされた物体に電荷が移動することを防ぐため、クランプされた物体におけるこの望ましくない電荷の蓄積が回避される。
【0078】
[0088]
図8は、
図6に示される静電クランプ21の一部を断面図で示し、この静電クランプ21においては誘電体部分22に欠陥30が存在する。誘電体部分22における欠陥30は、導電性であり、かつ接地29に接続されたバール25に抵抗部分23を接続する。欠陥30は、欠陥30のごく近傍において抵抗部分23の表面とバール25との間に低抵抗経路をもたらすことが理解されるだろう。欠陥30の電位はゼロであり、したがって、この領域におけるクランプ力は低下することになる。
【0079】
[0089] 抵抗部分23の表面上の別の位置31における電位は、位置31と電極24の間の抵抗(ここでは抵抗R1bとして示される)と、位置31と欠陥30の間の抵抗(ここでは抵抗R2として示される)の比によって定義される。抵抗部分23が分散されたレジスタとして機能するため、抵抗R1bおよび抵抗R2は近似値であることが理解されるだろう。しかしながら、抵抗部分23内の任意の2つの位置の間の距離は有限抵抗をもつことになり、この有限抵抗は、これら2つの位置の間の距離に比例して増加する。
【0080】
[0090] そのため、図に示されるように欠陥30が誘電体部分22において発生し、抵抗部分23の表面上のある位置がバール25を介して接地29に結合されるようになった場合、抵抗部分23の表面上の位置31における電位は、第1レジスタR1bと第2レジスタR2の抵抗の比によって、以下の式に記載されるように定義される。
【数3】
上記において、
V31は位置31における電圧であり、
R1bは電極24と位置31の間の抵抗部分23の抵抗であり、
R2は位置31と欠陥30の間の抵抗部分23の抵抗であり、
VSは電圧供給部28により供給される電圧である。
【0081】
[0091] 位置31における表面電位は欠陥30により減少し得る。しかしながら、位置31と欠陥30の間の距離が抵抗部分23の厚さと同程度となるため、位置31における表面電位は電極24における電圧のおよそ半分になる。位置31と欠陥30の間の距離が抵抗部分23の厚さより大きくなると、位置31における表面電位は電極24における電圧に近づく。このように、電極24と誘電体部分22との間に抵抗部分23があることで、欠陥30のようなあらゆる欠陥が抵抗部分23の表面電圧に及ぼす影響は局所的なもののみであり、したがって、クランプ21と物体との間の有効クランプ圧に及ぼす影響も局所的なもののみとなることが保証される。
【0082】
[0092] 本発明の実施形態の抵抗部分23を形成する抵抗材料は、抵抗材料がスイッチング速度に及ぼす影響を考慮して選択され得る。できるだけ大きなレジスタを使うことが欠陥に流れる電流を減らし、電力消失の減少につながるため有利である一方、大きな抵抗は応答時間の増大に寄与することになる。このことは以下の実施例によって説明することができる。
【0083】
[0093]
図7を参照すると、第2電極26bはおよそ35000mm2の面積を有してよい。説明を簡単にするため、この実施例において、誘電体は充電/放電時間に影響を及ぼさないよう十分薄いものとみなしてよい(実際には、充電/放電時間を30%程度増加させ得る)。第2電極とバール上部(および、したがって、クランプされた物体の底部)の間の間隙は10ミクロンであってよい。電極26bと間隙とで設定されるコンデンサは30nFの静電容量を有してよい。(例えば、放電が0.5秒以内に起こるよう確実にするために)0.1秒未満のRC定数が求められる場合がある。したがって、抵抗部分によって第2電極26bにもたらされる抵抗が3MΩ未満であることが望ましい場合がある。この値は、抵抗部分23の厚さとともに、抵抗部分を形成するために使用する抵抗材料に求められる抵抗率を求めるために使用され得る。例えば、抵抗材料は、(例えば抵抗材料が1mm程度の厚さである場合)109Ωm程度の抵抗率を有してよい。例えば、抵抗材料は、(例えば抵抗材料が0.1mm程度の厚さである場合)108Ωm程度の抵抗率を有してよい。
【0084】
[0094] 前述のとおり、誘電体部分22は、例えば、石英から形成されてよく、あるいは、任意の好適な絶縁体から形成されてよい。誘電体部分22を形成するために使用される材料は、抵抗部分23を形成するために使用される材料の抵抗より数桁大きい抵抗を有してよい。誘電体部分22の抵抗は、例えば、1013Ωを超えてよい(例えば、誘電体部分が厚さ10ミクロンである場合、1016Ωを超える抵抗)。誘電体部分22は絶縁体とみなし得る。誘電体部分22は、誘電体部分22の外面上に電荷を蓄積するためのRC時間であって、1000秒を超える時間を生じる抵抗を有してよい。
【0085】
[0095] 誘電体部分22は、2ミクロン以上の厚さを有してよい(これより少ない厚さでは電荷が突破してしまう場合がある)。誘電体部分22は、100ミクロン以下の厚さを有してよい(これより厚くてもよいが、その場合、静電クランプによりもたらされるクランプ力が減少する)。
【0086】
[0096] 誘電体部分22の抵抗率は、抵抗部分23の抵抗率より少なくとも2桁大きくてよい。
【0087】
[0097] バール25上の導体の抵抗率は、1Ωm未満であってよい。
【0088】
[0098] 誘電体部分22は、例えば、約2から約5の間の誘電率を有してよい。
【0089】
[0099] バール25の高さは、例えば、5から1000ミクロンの間であってよい。バールの高さは、例えば、200ミクロン以下であってよい(この程度のバール高さは液浸リソグラフィの基板テーブルにおいて使用し得る)。バール25の高さは、任意の直径の汚染粒子の収容を可能にするように選択され得る。バールの高さは、静電クランプの意図される使用方法に基づいて必要に応じて選んでよい。
【0090】
[00100] 静電クランプには任意の好適な数のバールを設けてよい。バール同士は、例えば、2.5mm隔てられてよい(またはその他の離隔距離を有してよい)。バールは、格子状配置またはその他の好適な配置で設けられてよい。
【0091】
[00101] 一実施形態において、静電クランプはバールを持たなくてもよい。この場合、誘電体層の上に導体が設けられてよい。かかる導体は、例えば、格子状に配置されてよく、あるいはその他の配置で設けられてよい。
【0092】
[00102] 静電クランプは、50mbarの最低クランプ圧をもたらすように構成され得る。バールの高さが10ミクロンである場合、電極に印加される電圧は少なくとも300Vであり得る。これより高い電圧または低い電圧を電極に印加してもよい。例えば、1000V以下またはそれ以上の電圧が電極に印加されてもよい。
【0093】
[00103] 静電クランプは任意の好適な形状を有し得る。静電クランプは、例えば、矩形であってよく、それによりマスク(またはその他の矩形物体)をクランプするのに好適であり得る。静電クランプは、例えば、全体として円弧の形状であってよく、それによりウェーハ(またはその他の円形基板)をクランプするのに好適であり得る。
【0094】
[00104] 上記の説明において、接地29についての言及がなされた。接地29はゼロボルトであってよく、あるいは、何らかの他の固定電圧を有してよい((1つ以上の)電極に印加される電圧はこの固定電圧に対して決められる)。接地29がゼロボルトであることの利点は、接地29をリソグラフィ装置の部品に接続し得ることである。
【0095】
[00105] 一実施形態において、水などの冷却流体が循環し得る導管がクランプ内に設けられてもよい。
【0096】
[00106] 静電クランプの誘電体部分22は、単一の誘電体層を備えてよい。あるいは、誘電体部分は2以上の積み重ねられた誘電体層を備えてもよい。
【0097】
[00107] 一実施形態において、クランプは両面型であってもよい。例えば、互いに離間した2つの電極が抵抗部分23内に設けられ、抵抗部分の上面および底面の両方に絶縁体部分が設けられてもよい。両面型クランプは一方の側で基板テーブルへのクランプを提供し、反対側で基板(またはその他の物体)へのクランプを提供し得る。
【0098】
[00108]
図9は、本発明の一実施形態に係るジョンソン・ラーベック(Johnsen-Rahbek)クランプ111の一部を断面図で概略的に示す。このジョンソン・ラーベッククランプは、マスク(またはその他のパターニングデバイス)あるいはウェーハ(またはその他の基板)などの物体をクランプするために使用し得る。クランプ111は、その内部に第1および第2電極114、117が設けられた抵抗材料113を備える。抵抗材料113は、例えば、AlNまたはその他の好適な材料であってよい。使用中に冷却液が通される冷却流体導管120は、抵抗材料113内に位置する。冷却流体導管120は、
図9では3つの別々の導管であるように見えるが、実際には単一の導管であり、これについては以下でさらに説明する。
【0099】
[00109] 抵抗材料113の上面上には複数のバール115が位置する。バール115は抵抗材料(例えば、抵抗部分113と同じ材料)から形成される。バール115の上面によって、使用時に物体(図示せず)の下面が保持される平面116が決まる。3つのバールのみが示されているが、多数のバールをクランプ111上に設けてよい。バール115はクランプ111の上面にわたって分散されてもよい。
【0100】
[00110] 抵抗材料113の下面には脚部119が設けられる。脚部は抵抗材料(例えば、抵抗材料113と同じ材料)から形成され得る。バールと同様に、脚部119は、使用時にクランプ111が基板テーブルWTと接触する平面122を設定し得る(
図1および2参照)。2つの脚部119のみが示されているが、多数の脚部をクランプ111上に設けてよい。脚部119はクランプ111の下面にわたって分散されてもよい。
【0101】
[00111] 使用時、クランプ111は基板テーブルWT上に位置決めされ、第2電極117に電圧が印加される。クランプ111と基板テーブルWTとの間の電流の流れがジョンソン・ラーベック効果を引き起こす。これがクランプ111および基板テーブルWTを合わせて引っ張ることにより、クランプが基板テーブル上に固定される。基板を露光する場合には、基板がバール115の上に位置決めされ、第1電極114に電圧が印加される。第1電極114から基板への電流の流れがジョンソン・ラーベック効果を引き起こす。これが基板をクランプ111上へと引っ張ることにより、基板がクランプに固定される。
【0102】
[00112] 抵抗材料113の抵抗率は高いため、その結果、電極114、117から抵抗材料を通って流れる電流は抵抗材料を著しく加熱することになる。クランプ111からのこの熱の一部を取り除くために、水(またはその他の液体)が冷却流体導管120に通される。
【0103】
[00113]
図10は、クランプ111を上から見た断面図において概略的に示す。この断面は冷却流体導管120を通る断面である。
図10から分かるように、冷却流体導管120は、クランプ111の外側縁部から始まり、クランプの中心に向かって渦巻きを描いた後、クランプの外側縁部に向かって外向きに渦巻きを描く単一の導管の形態であってよい。
図10に示す実施形態において、冷却流体導管120の入口130は、クランプ111における冷却流体導管の出口131とは反対側にある。
【0104】
[00114] ジョンソン・ラーベック効果はクランプ111において相当量の熱を引き起こす。そのため、出口131における流体の温度は入口130における流体の温度より著しく高い。入口130に入った流体は、出口131に到達間近の流体の近くを通過する。これが生じる領域が点線132で表示されている。このことは、領域132に位置する冷却流体導管120の一部分と一部分の間に望ましくない温度勾配を引き起こす。すなわち、熱せられていない流体が出口に到達間近の流体(出口に到達間近の流体はクランプ111によって熱せられている)の近くを通過する、冷却流体導管の一部分と一部分の間に望ましくない温度勾配が見られることになる。このような温度勾配は、かかる温度勾配の近傍でウェーハクランプ111上に保持されるウェーハにゆがみが生じることになるため望ましくない。望ましくない温度勾配により生じたウェーハのゆがみは、リソグラフィ装置のミラーまたはその他の光学部品を調整することで、ある程度補正することが可能であり得るが、この方法では十分有効な量の補正をもたらすことはできない可能性がある。例えば、投影されたパターンのオーバーレイ(すなわち、投影されたパターンがウェーハ上のパターンと位置合わせされる度合い)が所望のオーバーレイに一致しないことがあり得る。
【0105】
[00115]
図9および10に示される本発明の実施形態では、クランプ111にヒータ140を設けることでこの問題を解消している。ヒータ140は、例えば、電気ヒータ(例えば、電流を通すことによって加熱される金属プレート)であってよい。ヒータ140は、入口130に隣接する冷却流体導管120のおよそ最初の90°の周囲に延在する。この90°という角度は、クランプ111の中心からクランプの周囲を測定したものであり、0°をほぼ入口130の位置としたものである。この実施形態において、ヒータ140は冷却流体導管120と第1電極114との間に位置している。ヒータを使用して冷却流体導管120を通る流体を加熱することにより、冷却流体導管内の流体の温度が上昇する。このことが、点線132で囲まれた領域における冷却流体導管120の一部分と一部分の間の温度勾配を減少させるため、利点がある。いくらかの温度勾配は残るが、温度勾配は著しく減少し、残存する温度勾配により生じるウェーハゆがみはリソグラフィ装置のミラーまたはその他の光学部品を使って補正することが可能となり得る。このことは、所望のオーバーレイに一致するオーバーレイを達成することを可能にし得る。
【0106】
[00116]
図9において、ヒータ140は冷却流体導管120と第1電極114との間にあるものとして示されているが、代替的に(または付加的に)、ヒータ140は冷却流体導管と第2電極117との間に位置してもよい。ヒータ140はクランプ111内の任意の好適な場所に設けられてよい。ヒータは、入口130に隣接する流体を加熱することにより、入口に隣接する流体と出口に接近している流体との間の温度勾配を減少させるように位置決めされ得る。ヒータ140によりもたらされる加熱は局所的である。すなわち、ヒータ140は、その近傍で抵抗材料113の温度を著しく上昇させるが、例えば、クランプ111の他の部分において抵抗材料113の温度を著しく上昇させることはない。
【0107】
[00117] 「出口に接近している流体」との表現は、例えば、冷却流体導管120の長さの少なくともおよそ4分の3を既に進んだ流体を意味するとみなされ得る。「入口に隣接する」との表現は、流体がクランプ111に入る地点から特定の距離内にあることを意味することを意図していない。「入口に隣接する」との表現は、クランプ111内に入った流体が、クランプの相当部分を既に通過した流体であって、したがってかなり高温の流体の近くを初めて進む位置を意味し得る(例えば、
図10に示される通り)。
【0108】
[00118] 抵抗材料113は積層されたAlN層から形成されてもよい。ヒータ140は、クランプ111の製造過程において2つのAlN層の間に設けられてもよい。
【0109】
[00119]
図9および10に関連して説明された本発明の実施形態の利点は、冷却流体導管120の隣接する部分同士の間の温度勾配をきわめて大きく減少し得るため、クランプ111を形成するために使用し得る抵抗材料113の選択により大きな自由度が与えられることである。すなわち、問題となる温度勾配が減少するため、もはや補償できない程度に温度勾配を増大させることなく、より高い抵抗率の抵抗材料を使用することができる。本発明の実施形態は、使用される冷却液についてもより大きな自由度を与え得る。これは、クランプ111内に望ましくない大きな温度勾配が生じることを防止するために必要となる冷却液の熱容量が下がるためである。
【0110】
[00120]
図10は、入口130に隣接する冷却流体導管120のおよそ最初の90°の周囲に延在するヒータ140を示しているが、ヒータ140は、入口130に隣接する冷却流体導管の別の部分の周囲に延在してもよい。例えば、ヒータ140は、冷却流体導管の最初の90°を超えて、例えば、入口130に隣接する冷却流体導管120のおよそ最初の180°の周囲に延在してもよい。ヒータ140は、冷却流体導管120の任意の好適な部分の周囲に延在してもよい。ヒータ140は、クランプ111内に入った後の冷却液を加熱するように位置決めされ得る(ヒータはクランプ内またはクランプ上に位置する)。ヒータ140は、入口130に隣接して(例えば、
図10に示されるように、あるいは
図10に示されるよりも入口により近くまたはより遠くに)設けられる。クランプ111内の冷却液の局所的加熱を、冷却液が高温の冷却液の近くを通過する位置に設けることにより、クランプ内の温度勾配が減少する。
【0111】
[00121] 冷却液は、例えば、水であってよく、あるいは、その他の好適な液体であってよい。冷却液が冷却流体導管120を通る際に受け取る熱は、冷却液が出口131に到達する前にその一部が気体になるのに十分な熱であってよい。
【0112】
[00122]
図10には渦巻き状の冷却流体導管120が示されているが、冷却流体導管は任意の好適な構成であってよい。
図10には1本の冷却流体導管120が示されているが、1以上の冷却流体導管がクランプに設けられてもよい。1以上の冷却流体導管が設けられる場合、各々の冷却流体導管にヒータを設けてよい。
【0113】
[00123] ヒータは、冷却流体導管の任意の一部を局所的に加熱するために使用し得る。例えば、ヒータは、冷却流体導管の一部であって、減らすことが望ましい温度勾配(例えば、レンズやミラー調整といったその他の手段では十分に補償することのできない温度勾配)が存在する一部を局所的に加熱するために使用し得る。例えば、冷却流体導管の異なる部分を局所的に加熱するために1以上のヒータを使用してもよい。
【0114】
[00124]
図9および10に示される本発明の実施形態はジョンソン・ラーベッククランプに関する文脈において説明されたが、本発明は任意の好適なクランプに使用し得る。例えば、本発明は、静電クランプまたは
図6〜8に関して前述したタイプのクランプに使用し得る。
【0115】
[00125] 本明細書において、IC製造におけるリソグラフィ装置の使用について具体的な言及がなされているが、本明細書記載のリソグラフィ装置が、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンスパターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造といった他の用途を有し得ることが理解されるべきである。当業者にとっては当然のことであるが、そのような別の用途においては、本明細書で使用される「ウェーハ」または「ダイ」という用語はすべて、それぞれより一般的な「基板」または「ターゲット部分」という用語と同義であるとみなしてよい。本明細書に記載した基板は、露光の前後を問わず、例えば、トラック(通常、基板にレジスト層を塗布し、かつ露光されたレジストを現像するツール)、メトロロジツール、および/または検査ツールで処理されてもよい。適用可能な場合には、本明細書中の開示内容を上記のような基板プロセシングツールおよびその他の基板プロセシングツールに適用してもよい。さらに基板は、例えば、多層ICを作るために複数回処理されてもよいので、本明細書で使用される基板という用語は、すでに多重処理層を包含している基板を表すものとしてもよい。
【0116】
[00126] 光リソグラフィの関連での本発明の実施形態の使用について上述のとおり具体的な言及がなされたが、当然のことながら、本発明は、他の用途、例えば、インプリントリソグラフィに使われてもよく、さらに状況が許すのであれば、光リソグラフィに限定されることはない。インプリントリソグラフィにおいては、パターニングデバイス内のトポグラフィによって、基板上に創出されるパターンが定義される。パターニングデバイスのトポグラフィは、基板に供給されたレジスト層の中にプレス加工され、基板上では、電磁放射、熱、圧力、またはそれらの組合せによってレジストは硬化される。パターニングデバイスは、レジストが硬化した後、レジスト内にパターンを残してレジストの外へ移動される。
【0117】
[00127] 本明細書において、リソグラフィ装置における静電クランプの使用について具体的な言及がなされているが、本明細書記載の静電クランプが、例えば、マスク検査装置、ウェーハ検査装置、空間像メトロロジシステムでの使用、ならびにより一般的には、真空または周囲(非真空)条件のいずれかにおいてウェーハ(またはその他の基板)あるいはマスク(またはその他のパターニングデバイス)などの物体を測定または処理するあらゆるシステム、例えば、プラズマエッチャーまたは蒸着装置での使用等、他の用途を有し得ることが理解されるべきである。
【0118】
[00128] 本明細書で使用される「放射」および「ビーム」という用語は、紫外線(UV)(例えば、365、355、248、193、157、または126nmの波長、またはおよそこれらの値の波長を有する)、および極端紫外線(EUV)(例えば、5〜20nmの範囲の波長を有する)、ならびにイオンビームや電子ビームなどの荷電粒子ビームを含むあらゆる種類の電磁放射を包含している。
【0119】
[00129] 「レンズ」という用語は、文脈によっては、屈折、反射、磁気、電磁気、および静電型光学コンポーネントを含む様々な種類の光学コンポーネントのいずれか1つまたはこれらの組合せを指すことができる。
【0120】
[00130] 以上、本発明の具体的な実施形態を説明してきたが、本発明は、上述以外の態様で実施できることが明らかである。上記の説明は、本発明を制限することを意図したものではない。