(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長手方向、幅方向及び厚さ方向を有し、表面シートと、前記表面シートの非肌側に位置する吸収体と、を備え、前記吸収体は、第1の吸収層と、前記第1の吸収層の非肌側に積層された第2の吸収層と、を含み、前記長手方向に延設され前記幅方向に間隔を空けて並んだ、前記表面シートと前記第1の吸収層及び第2の吸収層とが圧搾された一対の圧搾溝を備える、吸収性物品であって、
前記第1の吸収層は、
前記幅方向の中央に位置し、吸収性ポリマーが存在する中央存在領域と、
前記中央存在領域の前記幅方向の両外側に位置し、吸収性ポリマーが存在する一対の外側存在領域と、
前記中央存在領域と前記一対の外側存在領域との間に位置し、吸収性ポリマーが存在しない一対の非存在領域と、を含み、
前記中央存在領域と前記非存在領域との境界は、前記非存在領域と接する前記中央存在領域の吸収性ポリマーの坪量が、前記中央存在領域の吸収性ポリマーの坪量の最高値の1/3となる箇所であり、前記外側存在領域と前記非存在領域との境界は、前記非存在領域と接する前記外側存在領域の吸収性ポリマーの坪量が、前記外側存在領域の吸収性ポリマーの坪量の最高値の1/3となる箇所であり、
前記一対の圧搾溝の一方及び他方は、前記幅方向において、それぞれ前記一対の非存在領域の一方及び他方の内に位置し、前記中央存在領域及び前記一対の外側存在領域と離間しており、
前記幅方向において、互いに向かい合う前記圧搾溝の端縁と前記中央存在領域の端縁との距離は、前記圧搾溝のうちの前記幅方向に前記中央存在領域と隣り合う部分が前記長手方向において存在する位置の少なくとも一部分では、互いに向かい合う前記圧搾溝の端縁と前記外側存在領域の端縁との距離よりも短く、残りの部分では、等しい、
吸収性物品。
前記厚さ方向において、前記第2の吸収層の厚さをaとし、前記圧搾溝における前記第2の吸収層への侵入深さをbとしたとき、前記bは、(a/2)<b<a、を満たす、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の吸収性物品の散布領域の吸収性ポリマーは、圧搾溝の排泄物を吸収しようとするときには、その空隙を介して排泄物を吸収することになる。しかし、その場合、排泄物の吸収経路に存在するその空隙が吸収を抑制して、各散布領域の吸収性ポリマーによる排泄物の吸収速度が低下してしまう。吸収速度が低下すると、排泄物の量が多いときなど、排泄物が吸収されずに残存し易くなり、各散布領域が排泄物を吸収する前に、吸収性物品の外へ排泄物が漏れてしまうおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、吸収性ポリマーを有する第1の吸収層及び第2の吸収層を含む吸収体と、表面シートと第1の吸収層及び第2の吸収層とが圧搾された一対の圧搾溝と、を備える吸収性物品において、圧搾溝の閉塞を抑制しつつ、吸収速度を向上させることが可能な吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の吸収性物品は次のとおりである。(1)長手方向、幅方向及び厚さ方向を有し、表面シートと、前記表面シートの非肌側に位置する吸収体と、を備え、前記吸収体は、第1の吸収層と、前記第1の吸収層の非肌側に積層された第2の吸収層と、を含み、前記長手方向に延設され前記幅方向に間隔を空けて並んだ、前記表面シートと前記第1の吸収層及び第2の吸収層とが圧搾された一対の圧搾溝を備える、吸収性物品であって、前記第1の吸収層は、前記幅方向の中央に位置し、吸収性ポリマーが存在する中央存在領域と、前記中央存在領域の前記幅方向の両外側に位置し、吸収性ポリマーが存在する一対の外側存在領域と、前記中央存在領域と前記一対の外側存在領域との間に位置し、吸収性ポリマーが存在しない一対の非存在領域と、を含み、前記一対の圧搾溝の一方及び他方は、前記幅方向において、それぞれ前記一対の非存在領域の一方及び他方の内に位置し、前記中央存在領域及び前記一対の外側存在領域と離間しており、前記幅方向において、互いに向かい合う前記圧搾溝の端縁と前記中央存在領域の端縁との距離は、互いに向かい合う前記圧搾溝の端縁と前記外側存在領域の端縁との距離よりも短い、吸収性物品。
【0009】
本吸収性物品では、上記のように構成され、圧搾溝が、非存在領域内に位置し、中央存在領域及び外側存在領域と離間しており、かつ、幅方向において外側存在領域よりも中央存在領域の近くに位置している。そのため、圧搾溝で幅方向に分割された非存在領域のうち、中央存在領域側の領域では空隙(吸収性ポリマーの実質的に存在しない領域)が小さく、外側存在領域側の領域では空隙が大きくなる。
その結果、中央存在領域側の空隙が小さいため、排泄物のうち、圧搾溝に排泄された排泄物は中央存在領域の吸収性ポリマーに吸収され易くなる。したがって、排泄物は小さい空隙を介して中央存在領域の吸収性ポリマーに優先的に吸収され、したがって中央存在領域の吸収性ポリマーに多く吸収される。その結果、中央存在領域の吸収性ポリマーの体積が著しく膨張する。それにより、圧搾溝の中央存在領域側の壁面が厚み方向に急激に立ち上がって、急峻な壁面を形成する。そのため、中央存在領域の略中央部分の排尿点で排泄された排泄物は、中央存在領域から急峻な壁面を伝って圧搾溝内へ誘導され易くなり、圧搾溝内に蓄積され易くなる。その結果、圧搾溝の底部から非肌側の第2の吸収層へ排泄物を拡散させ吸収させ易くできる。
一方、圧搾溝内に排泄された排泄物は、大きい空隙を介するので外側存在領域の吸収性ポリマーに吸収され難くなる。そのとき、外側存在領域の吸収性ポリマーが排泄物をあまり吸収しないことで、その体積があまり膨張しない。それにより、圧搾溝内の外側存在領域側の壁面が厚み方向にあまり立ち上がらず、緩やかな壁面を形成する。そのため、圧搾溝内に蓄積される排泄物は、外側存在領域側の緩やかな壁面側に拡がりつつ蓄積され、すなわち圧搾溝内の幅方向の外側に拡がりつつ蓄積される。その結果、通常の圧搾溝内に蓄積される場合と比較して、圧搾溝の外側に多くの排泄物を蓄積できる。それにより、吸収性物品の表面シートと接する表面積を大きくでき、排泄物が拡散し難い圧搾溝の外側の領域を有効に利用して、排泄物を吸収することができる。それゆえ、表面シートを介して幅方向の第1の吸収層へ排泄物を吸収させ易くできる。
このように、圧搾溝を伝って厚さ方向に第2の吸収層へ排泄物を拡散させ易くするだけでなく、幅方向に第1の吸収層へ排泄物を拡散させ易くできるため、吸収性物品全体として吸収速度を向上でき、かつ表面のさらっと感を維持し易くすることができる。
【0010】
本発明の吸収性物品は、(2)前記第1の吸収層は、前記第1の吸収層に含まれる吸収性ポリマーを包む液透過性シートを備え、前記非存在領域において、前記液透過性シートの肌側の面と非肌側の面とが互いに接合された接合領域を有し、前記接合領域は、平面視で、前記圧搾溝の前記幅方向の両側に拡がり、前記幅方向において、前記接合領域における内側の端縁と前記圧搾溝における内側の端縁との距離は、前記接合領域における外側の端縁と前記圧搾溝における外側の端縁との距離よりも短い、上記(1)に記載の吸収性物品、でもよい。
本吸収性物品では、上記構成を有することにより、幅方向において、吸収性ポリマーを液透過性シート内に保持し、閉じ込めることができる。吸収性ポリマーが排泄物を吸収し、膨潤したとき、液透過性シートが吸収性ポリマーの幅方向への膨潤を抑制して、圧搾溝が閉塞することを抑制できる。それにより圧搾溝を伝って厚さ方向に第2の吸収層へ排泄物を拡散させ、幅方向に第1の吸収層へ排泄物を拡散させ、吸収性物品全体として吸収速度を向上し、表面のさらっと感を維持し易くする効果をより確実に奏することができる。
【0011】
本発明の吸収性物品は、(3)前記第1の吸収層は、前記中央存在領域における前記長手方向の前方及び後方の外側に位置し、吸収性ポリマーが存在しない前方非存在領域及び後方非存在領域を含み、前記幅方向に延設され前記長手方向に間隔を空けて並んだ、前記表面シートと前記第1の吸収層及び第2の吸収層とが圧搾された前方圧搾溝及び後方圧搾溝を備え、前記前方圧搾溝及び前記後方圧搾溝は、それぞれ前記前方非存在領域及び前記後方非存在領域の内に位置し、前記中央存在領域及び前記一対の外側存在領域と離間しており、前記長手方向において、互いに向かい合う前記前方圧搾溝の端縁と前記中央存在領域の端縁との距離は、互いに向かい合う前記前方圧搾溝の端縁と前記前方非存在領域の外側の端縁との距離よりも短く、互いに向かい合う前記後方圧搾溝の端縁と前記中央存在領域の端縁との距離は、互いに向かい合う前記後方圧搾溝の端縁と前記後方非存在領域の外側の端縁との距離よりも短い、上記(1)又は(2)に記載の吸収性物品、でもよい。
本吸収性物品では、上記構成を有することで、前方、後方圧搾溝が、それぞれ前方、後方非存在領域内に位置し、中央存在領域及び一対の外側存在領域と離間し、長手方向にて中央存在領域の近くに位置する。そのため前方、後方圧搾溝でそれぞれ長手方向に分割された前方、後方非存在領域のうち、中央存在領域側の領域では空隙が小さく、その反対側の領域では空隙が大きくなる。その結果、中央存在領域側の空隙が小さいため、前方、後方圧搾溝に排泄された排泄物は中央存在領域の吸収性ポリマーに優先的に吸収され、より多く吸収される。その結果、吸収性ポリマーの体積が著しく膨張して、それにより前方、後方圧搾溝の中央存在領域側の壁面が厚み方向に急激に立ち上がり、急峻な壁面を形成する。そのため中央存在領域の略中央部分の排尿点で排泄された排泄物は、中央存在領域から急峻な壁面を伝って前方、後方圧搾溝へ誘導され、前方、後方圧搾溝に蓄積され易くなる。その結果、前方、後方圧搾溝の底部から非肌側の第2の吸収層へ排泄物を拡散させ吸収させ易くできる。一方、前方、後方圧搾溝を挟んで中央存在領域と反対側の領域では、前方、後方圧搾溝の壁面が厚み方向にあまり立ち上がらず、緩やかな壁面を形成する。そのため前方、後方圧搾溝に蓄積される排泄物は、その緩やかな壁面側に拡がりつつ蓄積される。その結果、通常の圧搾溝に蓄積される場合と比較して、前方、後方圧搾溝の外側に多くの排泄物を蓄積できる。それにより吸収性物品の表面シートと接する表面積を大きくでき、排泄物が拡散し難い前方、後方圧搾溝の外側の領域を、排泄物の吸収に有効に利用できる。それゆえ表面シートを介して長手方向の第1の吸収層へ排泄物を吸収させ易くできる。このように前方、後方圧搾溝を伝って厚さ方向に第2の吸収層へ排泄物を拡散させ易くするだけでなく、長手方向に第1の吸収層へ排泄物を拡散させ易くできるため、吸収性物品全体として吸収速度を向上でき、かつ表面のさらっと感を維持し易くできる。
【0012】
本発明の吸収性物品は、(4)前記第1の吸収層は、前記第1の吸収層に含まれる吸収性ポリマーを包む液透過性シートを備え、前記前方非存在領域及び前記後方非存在領域において、それぞれ前記液透過性シートの肌側の面と非肌側の面とが互いに接合された前方接合領域及び後方接合領域を有し、前記前方接合領域及び前記後方接合領域は、平面視で、前記前方圧搾溝及び前記後方圧搾溝の前記長手方向の両側に拡がり、前記長手方向において、前記前方接合領域における内側の端縁と前記前方圧搾溝における内側の端縁との距離は、前記前方接合領域における外側の端縁と前記前方圧搾溝における外側の端縁との距離よりも短く、前記後方接合領域における内側の端縁と前記後方圧搾溝における内側の端縁との距離は、前記後方接合領域における外側の端縁と前記後方圧搾溝における外側の端縁との距離よりも短い、上記(3)に記載の吸収性物品、でもよい。
本吸収性物品では、上記構成を有することで、長手方向にて吸収性ポリマーを液透過性シート内に保持し、閉じ込めることができる。吸収性ポリマーが排泄物を吸収し、膨潤したとき、液透過性シートが吸収性ポリマーの長手方向への膨潤を抑制し、前方、後方圧搾溝の閉塞を抑制できる。それにより前方、後方圧搾溝を伝って厚さ方向に第2の吸収層へ排泄物を拡散させ、幅方向に第1の吸収層へ排泄物を拡散させ、吸収性物品全体で吸収速度を向上し、表面のさらっと感を維持し易くする効果をより確実に奏することができる。
【0013】
本発明の吸収性物品は、(5)前記長手方向において、前記前方接合領域における内側の端縁と、当該端縁と対向する前記中央存在領域の端縁との距離は、前記前方接合領域における内側の端縁と前記前方圧搾溝における内側の端縁との距離よりも短く、前記後方接合領域における内側の端縁と、当該端縁と対向する前記中央存在領域の端縁との距離は、前記後方接合領域における内側の端縁と前記後方圧搾溝における内側の端縁との距離よりも短い、上記(4)に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、上記構成を有することにより、第1の吸収層において、前方接合領域における内側の端縁と中央存在領域の端縁との間の距離が短いので、中央存在領域の吸収性ポリマーが長手方向に膨潤する領域を小さくできる。その結果、吸収性ポリマーをより厚さ方向の上方へ膨潤させることができ、前方圧搾溝の中央存在領域側の壁面をより急峻にすることができる。それゆえ、前方圧搾溝の外側の領域において、長手方向の外側の第2の吸収層の上方へ排泄物を拡散させて、長手方向Lの外側の第2の吸収層に排泄物を吸収させることができる。それにより、吸収性物品全体として吸収速度を向上し、表面のさらっと感を維持し易くする効果をより確実に奏することが可能となる。
【0014】
本発明の吸収性物品は、(6)前記表面シートにおいて、前記中央存在領域に対応する領域の繊維密度は、前記一対の外側存在領域の各々に対応する領域の繊維密度よりも高い、上記(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、上記構成を有することにより、表面シートにおいて、繊維密度の高い中央存在領域に対応する領域に、排泄物を優先的に引き込ませ易くでき、中央存在領域の吸収性ポリマーにより多く吸収させることができる。したがって、中央存在領域の吸収性ポリマーを、外側存在領域の吸収性ポリマーよりも優先的に膨張させることができる。それにより、圧搾溝の中央存在領域側の壁面を急激に立ち上がらせて、圧搾溝に蓄積され易くでき、圧搾溝の底部から裏面シート側の第2の吸収層へ排泄物を拡散させ吸収させ易くできる。一方、繊維密度の低い外側存在領域に対応する領域に、排泄物を優先的に引き込ませないようにして、外側存在領域の吸収性ポリマーにあまり吸収させないようにできる。したがって、外側存在領域の吸収性ポリマーの膨らみを、中央存在領域の吸収性ポリマーよりも抑制することができる。それにより、圧搾溝の外側存在領域側の壁面を緩やかな傾斜にして、吸収性物品の表面シートと接する表面積を大きくして、幅方向の第1の吸収層へ排泄物を吸収させ易くできる。それらにより、吸収性物品全体として吸収速度を向上し、表面のさらっと感を維持し易くする効果をより確実に奏することが可能となる。
【0015】
本発明の吸収性物品は、(7)前記厚さ方向において、前記第2の吸収層の厚さをaとし、前記圧搾溝における前記第2の吸収層への侵入深さをbとしたとき、前記bは、(a/2)<b<a、を満たす、上記(1)乃至(6)のいずれか一項に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、上記構成を有することにより、圧搾溝から第2の吸収層へ排泄物を引き込み易くでき、かつ、引き込んだ排泄物を第2の吸収層の面内方向へ拡散し易くすることができる。それにより、吸収性物品全体として吸収速度を向上し、表面のさらっと感を維持し易くする効果をより確実に奏することが可能となる。bの値が小さ過ぎると、第2の吸収層内での圧搾溝の壁面(側面)の面積が小さくなり、その壁面から第2の吸収層へ排泄物が拡散し難くなる。その結果、第2の吸収層へ排泄物を引き込む量や、引き込んだ排泄物が第2の吸収層の面内方向へ拡散する量が小さくなってしまう。更に、bの値が小さ過ぎると、吸収体4が全体として低強度になり、よじれ易くなってしまう。一方、bの値が大き過ぎると、圧搾溝5が実質的に第2の吸収層を突き抜けてしまう。その結果、圧搾溝の底部から第2の吸収層へ排泄物を拡散できず、第2の吸収層へ排泄物を引き込む量がすくなくなったり、吸収性物品の外に漏れたりするおそれがある。
【0016】
本発明の吸収性物品は、(8)前記第2の吸収層において、前記中央存在領域に対応する領域の厚みは、前記外側存在領域に対応する領域の厚みよりも厚い、上記(1)乃至(7)のいずれか一項に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、上記構成を有することにより、第1の吸収層における非肌側の面を基準とした中央存在領域の高さ位置が外側存在領域の高さ位置よりも高くなる。それにより、排泄物が圧搾溝に排泄されたとき、中央存在領域が排泄物を多く吸収して圧搾溝の中央存在領域側の壁面が立ち上がるという効果をより高めることができる(より早期に急峻に立ち上がらせることができる)。加えて、外側存在領域が排泄物をあまり吸収せず、圧搾溝の外側存在領域側の壁面が緩やかな傾斜になるという効果をより高めることができる。それらにより、圧搾溝を伝って厚さ方向に第2の吸収層へ排泄物をより拡散させ易くでき、幅方向に第1の吸収層へ排泄物をより拡散させ易くでき、よって吸収性物品全体として吸収速度をより向上でき、かつ表面のさらっと感をより維持し易くすることができる。
【0017】
本発明の吸収性物品は、(9)前記圧搾溝は、前記厚さ方向の深さが深い高圧搾部と、前記厚さ方向の深さが浅い低圧搾部と、を含み、前記高圧搾部と前記低圧搾部とが交互に並んで形成されている、上記(1)乃至(8)のいずれか一項に記載の吸収性物品、であってもよい。
本吸収性物品では、上記構成を有することにより、高圧搾部で第2吸収層の深い領域に排泄物を拡散させ、低圧搾部で第2の吸収層の浅い領域に排泄物を拡散させることができる。第2の吸収層の異なる深さの領域に概ね同時に排泄物を拡散できるので、第2の吸収層を深さ方向に効率的に使用することができる。それにより、圧搾溝内での排泄物の流通を良くし、圧搾溝を介した排泄物の吸収速度を向上できる。よって吸収性物品全体として吸収速度をより向上でき、かつ表面のさらっと感をより維持し易くすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、吸収性ポリマーを有する第1の吸収層と第2の吸収層とを含む吸収体と、表面シートと第1の吸収層及び第2の吸収層とが圧搾された一対の圧搾溝と、を備える吸収性物品において、圧搾溝の閉塞を抑制しつつ、吸収速度を向上させることが可能な吸収性物品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態に係る吸収性物品について軽失禁パッドを例に説明する。この場合、吸収性物品の吸収対象である排泄物は尿である。吸収性物品の種類及び用途は特に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限り、他の吸収性物品でもよい。その吸収性物品として、例えばパンティライナー、生理用ナプキン、使い捨ておむつが挙げられる。
【0021】
図1〜
図2は実施形態に係る吸収性物品1(軽失禁パッド)の構成を示す図であり、
図1は展開した状態の吸収性物品1の平面図を示し、
図2は
図1のII−II線に沿う断面図を示す。吸収性物品1は、互いに直交する長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tを有し、幅方向Wの中心を通り長手方向Lに延びる長手方向中心線CLと、長手方向Lの中心を通り幅方向Wに延びる幅方向中心線CWとを有する。吸収性物品1の長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tと、吸収性物品1の各資材の長手方向、幅方向及び厚さ方向とは一致するので、吸収性物品1及びその各資材に対して共通に長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tを用いる。長手方向Lの一方向及び他方向をそれぞれ前方及び後方とする。「平面視」とは展開した状態の吸収性物品1を上面側から厚さ方向Tに見ることをいう。「肌側」及び「非肌側」とは吸収性物品1の装着者による吸収性物品1の装着時、厚さ方向Tにて相対的に装着者の肌面に近い側及び遠い側をそれぞれ意味する。「面内方向」とは幅方向W及び長手方向Lを含む面と平行な方向である。長手方向中心線CLに向かう方向及び遠ざかる方向をそれぞれ幅方向Wの内側及び外側の方向とする。幅方向中心線CWに向かう方向及び遠ざかる方向をそれぞれ長手方向Lの内側及び外側の方向とする。これら定義も吸収性物品1の各資材に共通に用いる。
【0022】
図1に示すように、吸収性物品1は、平面視にて、長手方向Lに延びる長辺と幅方向Wに延びる短辺を有する長方形の長手方向Lの両端縁が円弧状に膨らんだ形状を有している。ただし、本実施の形態において吸収性物品1の形状は、このような形状に限定されず、長手方向Lの長さ寸法が幅方向Wの幅寸法よりも長い長形状のものであれば、任意の縦長の形状(例示:長方形、楕円形、瓢箪形)とすることができる。
【0023】
図2に示すように、吸収性物品1は、表面シート2と、裏面シート3と、表面シート2の非肌側、すなわち表面シート2と裏面シート3との間に位置する吸収体4と、を備える。表面シート2は、着用者の肌側に位置する液透過性シートである。表面シート2としては、例えば液透過性の不織布や織布、液透過孔を有する合成樹脂フィルム、これらの複合シート等、任意の液透過性シートが挙げられる。裏面シート3は、着用者の非肌側に位置する液不透過性のシートである。裏面シート3としては、例えば液不透過性の不織布や合成樹脂フィルム、不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート、SMS不織布等、任意の液不透過性シートが挙げられる。吸収体4は、液吸収性能及び液保持性能を有する層である。表面シート2の非肌側の面と吸収体4の肌側の面とは相互に接合され、吸収体4の非肌側の面と裏面シート3の肌側の面とは相互に接合される。表面シート2の非肌側の面の周縁部分と裏面シート3の肌側の面の周縁部分とは相互に接合される。
【0024】
吸収体4は、第1の吸収層11と、第1の吸収層の非肌側に積層された第2の吸収層12と、を含む。第1の吸収層11は、平面視で長手方向Lに長い略矩形の形状を有し、表面シート2と裏面シート3との間に位置する、液吸収性及び液保持性を有するシートである。第1の吸収層11は、吸収性ポリマー14、15を含む吸収性材料11bを2枚の液透過性シート11a、11a’で挟持した構成を有する。吸収性ポリマー14、15としては、水を吸収し保持できるポリマーであれば特に制限はなく、例えばデンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系の粒子状又は繊維状の高吸収性ポリマー(SAP)が挙げられる。吸収性材料11bとしては、上記の吸収性ポリマー14、15を含めば特に制限はなく、吸収性ポリマー14、15のほか、例えばパルプのような吸水性繊維を含んでもよい。吸水性繊維の含有量は、吸収性ポリマー14、15の質量の0〜90%の範囲内である。本実施の形態では、吸収性材料11bは、例えば吸収性ポリマー14、15のみで構成される。液透過性シート11a、11a’としては、液透過性を有するシートであれば特に制限はなく、例えばエアスルー不織布、スパンボンド、積層不織布(例示:SMS不織布)、ティッシュなどの親水性の不織布を適用できる。液透過性の観点から、液透過性シート11a、11a’はエアスルー不織布が好ましい。吸収性ポリマー14、15は、ホットメルト接着剤等(図示されず)で液透過性シート11a、11a’に固定されることが好ましいが、固定されずに液透過性シート11a、11a’で覆われて存在してもよい。吸収性ポリマー14、15の坪量としては例えば100〜400g/m
2が挙げられる。
【0025】
第2の吸収層12は、平面視で長手方向Lに長い略矩形であって、長手方向Lの両端部が円弧状で、長手方向Lの中央部が幅方向Wにくびれた形状を有し、第1の吸収層11と裏面シート3との間に位置する、液吸収性能及び液保持性能を有する層である。第2の吸収層12は、吸収性ポリマー及び液保持性物質の混合物16を含む吸収コア12bを2枚の液透過性シート12a、12a’で挟持した構成を有する。吸収性ポリマーとしては、第1の吸収層11の吸収性ポリマー14、15と同様である。液保持性物質としては、例えばパルプなどの吸水性繊維が挙げられる。吸収性ポリマーの含有量は、吸水性繊維の質量の0〜90%の範囲内である。液透過性シート12a、12a’としては、第1の吸収層11の液透過性シート11a、11a’ が挙げられる。混合物16は、ホットメルトなどの接着剤(図示されず)で液透過性シート12a、12a’に固定されることが好ましいが、固定されずに液透過性シート12a、12a’で覆われて存在してもよい。吸収性ポリマーの坪量としては例えば0〜600g/m
2が挙げられ、吸水性繊維の坪量としては例えば100〜700g/m
2が挙げられる。
【0026】
吸収性物品1は、長手方向Lに延設され幅方向Wに所定間隔を空けて並んだ、表面シート2と第1の吸収層11及び第2の吸収層12とが圧搾された一対の圧搾溝5、5を備える。一対の圧搾溝5、5は、長手方向Lにおいて、第2の吸収層12の両端部の近傍まで延設される。圧搾溝5は、厚さ方向Tにおいて、表面シート2から第1の吸収層11を貫通し、第2の吸収層12の内部へ延設されており、例えばエンボス加工により形成される。本実施の形態では、圧搾溝5の底部の下側部分(非肌側部分)には、圧搾によって周囲よりも繊維密度の高い高密度部5tが形成される。圧搾溝5の幅方向Wの内側の端縁E01及び外側の端縁E02は、高密度部5tの幅方向Wの内側の端縁及び外側の端縁とする。なお圧搾溝5は、厚さ方向Tに表面シート2の表面から裏面シート3の肌側の表面近くまで達してもよい。圧搾溝5の幅は1〜5mmが好ましく、2〜3mmがより好ましい。本実施の形態では、一対の圧搾溝5、5のパターンは、例えば一対の圧搾溝5、5間の距離が、長手方向Lの中央付近において小さく(狭く)、長手方向Lの両外側に向かうに連れて大きくなり(拡がり)、第2の吸収層12の両端部に近づくに連れて再び小さく(狭く)なるように形成される。このパターンは一対の圧搾溝5、5を伝って長手方向Lに移動する排泄物を幅方向W及び長手方向Lの両方に拡散させ易くできる。
【0027】
本実施の形態では、吸収性物品1は、幅方向Wに延設され長手方向Lに所定間隔を空けて並んだ、前方側の前方圧搾溝6と、後方側の後方圧搾溝6’とを更に備える。前方圧搾溝6及び後方圧搾溝6’は、厚さ方向Tにおいて、表面シート2と第1の吸収層11及び第2の吸収層12とが圧搾されることにより(例示:エンボス加工)形成されており、表面シート2から第1の吸収層11を貫通し、第2の吸収層12の内部へ延設されている。本実施の形態では、前方圧搾溝6及び後方圧搾溝6’の底部の下側部分(非肌側部分)には、圧搾によって周囲よりも繊維密度の高い高密度部6tが形成される。前方圧搾溝6及び後方圧搾溝6’の長手方向Lの内側の端縁及び外側の端縁は、高密度部6tの長手方向Lの内側の端縁及び外側の端縁とする。前方圧搾溝6及び後方圧搾溝6’は、厚さ方向Tに表面シート2の表面から裏面シート3の肌側の表面近くまで達してもよい。前方圧搾溝6及び後方圧搾溝6’の幅は1〜5mmが好ましく、2〜3mmがより好ましい。本実施の形態では、前方圧搾溝6及び後方圧搾溝6’は、一対の圧搾溝5、5の長手方向Lの両端部の近傍において、外側に凸な円弧状で、一対の圧搾溝5、5間に配置されている。
【0028】
本実施の形態では、一対の圧搾溝5、5及び前方圧搾溝6及び後方圧搾溝6’で囲まれた領域では、各圧搾溝を形成するときの圧搾加工(エンボス加工)により表面シート2が周囲から引っ張られて厚さが薄くなっている。そのため、圧搾溝に囲まれた領域では、圧搾溝の外側の領域と比較して、表面シート2の繊維密度が高くなっている。したがって、圧搾溝に囲まれた領域の表面シート2は、吸収性が高く、排泄物を第1の吸収層11へ引き込み易い。
【0029】
図2に示すように、本実施の形態では、吸収性物品1は、更に、一対のサイドギャザーシート7、7と、線状弾性部材8、8と、外装シート9と、固定部10、…、10と、を備えている。一対のサイドギャザーシート7、7は、表面シート2における幅方向Wの両側の表面を覆うように配置され、長手方向Lに延びる防漏壁である。一対のサイドギャザーシート7、7は、表面シート2の幅方向Wの両側の表面において立設可能に折り畳まれ、幅方向Wの内側の端縁がギャザー部を形成するように自由端とされている。線状弾性部材8、8は、一対のサイドギャザーシート7、7の自由端の近傍に、長手方向Lに沿って延びる線状の弾性体である。線状弾性部材8、8は、例えば一対のサイドギャザーシート7、7のそれぞれに例えば1本ずつ配置され、一対のサイドギャザーシート7、7の端縁を収縮させる。外装シート9は、裏面シート3の非肌面側の表面に接合され、その周縁部分において一対のサイドギャザーシート7、7と相互に接合されている。固定部10、…、10は、外装シート9における裏面シート3と反対側に、長手方向Lに沿って貼り付けられた細長い矩形状の粘着テープである。本実施の形態では、幅方向Wに並んだ6本の固定部10、…、10が設けられている。固定部10、…、10は、吸収性物品1の個包装時にはセパレータを介して吸収性物品1を包装シート(図示されず)に固定し、吸収性物品1の使用時には吸収性物品1を着用者の下着などに再固定する。
【0030】
次に、
図2及び
図3〜
図6を参照して、第1の吸収層11について更に説明する。
図3は第1の吸収層11の平面図であり、
図4は
図3の第1の吸収層11のIV−IV断面図であり、
図5は
図3の第1の吸収層11のV−V断面図であり、
図6は
図3の第1の吸収層11の存在領域と非存在領域とを模式的に示す平面図である。なお、
図3〜
図5には、圧搾溝5、前方圧搾溝6及び後方圧搾溝6’の少なくとも一つを仮想的に記載している。
【0031】
図3〜
図5に示すように、第1の吸収層11では、肌側の液透過性シート11aと非肌側の液透過性シート11a’との間に形成される空間が、いくつかの接合領域により、平面視で複数の領域に区画される。接合領域は、液透過性シート11aの一部分とそれに対向する液透過性シート11a’の一部分とを厚さ方向Tに圧搾すること(例示:エンボス加工)又は接着剤(例示:ホットメルト接着剤)を介して押圧することで形成される。
【0032】
本実施の形態では、第1の吸収層11は、一対の接合領域11t1、11t1により幅方向Wに三つの領域に区画されており、それら三つの領域は、長手方向Lの前方及び後方を前方接合領域11t2及び後方接合領域11t2’により封止されている。三つの領域とは、中央配置領域11s1、及びその幅方向Wの両外側に位置する一対の外側配置領域11s2、11s2である。ただし、一対の接合領域11t1、11t1は、長手方向Lに延設され、長手方向中心線CLを挟んで幅方向Wの両側に所定間隔で並んだ帯状の領域である。一対の接合領域11t1、11t1のパターンは、例えば両者の間隔が、長手方向Lの中央付近において狭く、長手方向Lの両外側に向かうに連れて拡がるように形成されたパターンであり、一対の圧搾溝5のパターンに沿うように形成される。前方接合領域11t2及び後方接合領域11t2’は、幅方向Wに延設され、幅方向中心線CWを挟んで長手方向Lの両側に所定間隔で並んだ帯状の領域である。
【0033】
したがって、本実施の形態では、液透過性シート11a、11a’と、一対の接合領域11t1、11t1と、前方接合領域11t2及び後方接合領域11t2’とにより、中央配置領域11s1が形成される。中央配置領域11s1は、長手方向Lに長い略砂時計型の形状を有する。液透過性シート11a、11a’と、各接合領域11t1と、前方接合領域11t2及び後方接合領域11t2’とにより、各外側配置領域11s2が形成される。各外側配置領域11s2は、内側の一辺が長手方向中心線CLに対して凸曲線の、長手方向Lに長い略矩形の形状を有する。本実施の形態では、接合領域11t1は、圧搾によって周囲よりも繊維密度の高い高密度部である。よって、接合領域11t1の幅方向Wの内側の端縁E21及び外側の端縁E22は、高密度部の幅方向Wの内側の端縁及び外側の端縁である。同様に、前方接合領域11t2及び後方接合領域11t2’は、圧搾によって周囲よりも繊維密度の高い高密度部である。よって前方接合領域11t2及び後方接合領域11t2’の長手方向Lの内側の端縁及び外側の端縁は、高密度部の長手方向の内側の端縁及び外側の端縁である。なお、一対の接合領域11t1、11t1及び前方接合領域11t2及び後方接合領域11t2’の形状、すなわち中央配置領域11s1、及び一対の外側配置領域11s2、11s2の形状は任意である。
【0034】
中央配置領域11s1は、吸収性ポリマー14を含み、吸収性ポリマー14の存在する領域、すなわち中央存在領域21の周囲に、吸収性ポリマー14が存在しない空隙G11を有する。外側配置領域11s2は、吸収性ポリマー15を含み、吸収性ポリマー15の存在する領域、すなわち外側存在領域22における幅方向Wの外側を除く周囲に、吸収性ポリマー15が存在しない空隙G12を有する。本実施の形態では、各空隙は、面内方向において、それぞれ概ね一定の幅の帯状に形成される。その幅は、例えば0.5〜6mmが好ましく、1〜4mmがより好ましい。幅が小さ過ぎると吸収性ポリマーが接合領域に噛む量が無視できなくなり、幅が大き過ぎると吸収性ポリマーを十分に搭載できない。
【0035】
空隙G11と中央存在領域21との境界、及び、空隙G12と外側存在領域22との境界は、吸収性ポリマーの多寡で設定される。すなわち、吸収性ポリマー14、15の坪量の最高値をMxとすると、吸収性ポリマー14、15の坪量が1/n(ただし、nは正の実数、例示:n=3)となる箇所を境界とする。例えば、吸収性ポリマー14の坪量の最高値をMx21とすると、空隙G11と中央存在領域21との境界は、中央存在領域21の周縁において吸収性ポリマー14の坪量がMx21/nとなる箇所を境界とする。この境界は、中央存在領域21の端縁であり、空隙G11の端縁でもある。同様に、吸収性ポリマー15の坪量の最高値をMx22とすると、空隙G12と外側存在領域22は、外側存在領域22の周縁において吸収性ポリマー15の坪量がMx22/nとなる箇所を境界とする。この境界は、外側存在領域22の端縁であり、空隙G12の端縁でもある。
【0036】
第1の吸収層11は、中央存在領域21及び空隙G11を含む中央配置領域11s1と、外側存在領域22及び空隙G12を含む一対の外側配置領域11s2、11s2とを備える。ここで、第1の吸収層11に対する見方を変えると、第1の吸収層11は、吸収性ポリマーが存在する存在領域PEAと、吸収性ポリマーが存在しない非存在領域NPAと、を備える。本実施の形態では、
図6に示すように、第1の吸収層11は、存在領域PEAとしての吸収性ポリマー14を含む中央存在領域21及び吸収性ポリマー15を含む一対の外側存在領域22、22と、非存在領域NPAとしての吸収性ポリマーを含まない一対の非存在領域31、31、前方非存在領域32及び後方非存在領域32’とを含む。一対の非存在領域31、31の一方及び他方は、それぞれ中央存在領域21と一対の外側存在領域22、22の一方及び他方との間に位置する。前方非存在領域32及び後方非存在領域32’は、それぞれ中央存在領域21の長手方向Lの前方及び後方の外側の領域に位置する。一対の非存在領域31、31及び前方非存在領域32及び後方非存在領域32’では、いずれも吸収性ポリマーは存在しない。ただし、吸収性ポリマーが「存在しない」及び「非存在」とは、吸収性ポリマーが全く存在しない場合だけではなく、吸収性ポリマーが「存在する」領域での吸収性ポリマーの最大坪量と比べ、その0〜5%程度の坪量の吸収性ポリマーを含み得るものとする(本明細書全体において同じ)。
【0037】
第1の吸収層11において、中央存在領域21の大きさの一例としては、幅方向Wでは第1の吸収層11を幅方向Wに略三等分したときの中央の一個分の大きさであり、長手方向Lでは、第1の吸収層11を長手方向Lに略八等分したときの中央の六個分の大きさである。中央存在領域21には、吸収性ポリマー14が概ね均一の坪量で分布していることが好ましい。中央存在領域21は、例えば中央配置領域11s1よりも空隙G11分だけ一回り小さい略相似な形状を有する。各外側存在領域22の大きさの一例としては、幅方向Wでは、第1の吸収層11を幅方向Wに略三等分したときの両側のそれぞれ一個分の大きさであり、長手方向Lでは、第1の吸収層11を長手方向Lに略八等分したときの中央の六個分の大きさである。各外側存在領域22には、それぞれ吸収性ポリマー15が概ね一定の坪量で分布していることが好ましい。各外側存在領域は、例えば各外側配置領域11s2よりも空隙G12分だけ一回り小さい略相似な形状を有する。幅方向Wにおいて、中央存在領域21の幅と各外側存在領域22の幅との比は、1.2〜2:1である。ここで、中央存在領域21と非存在領域31との境界は、吸収性ポリマー14の存在する領域と空隙G11との境界と同じである。この境界は、中央存在領域21の端縁E11であり、非存在領域31の端縁でもある。また、外側存在領域22と非存在領域31との境界は、吸収性ポリマー15の存在する領域と空隙G12との境界と同じである。この境界は、外側存在領域22の端縁E12であり、非存在領域31の端縁でもある。
【0038】
空隙G01、G02は、それぞれ第1の吸収層11の液透過性シート11a、11a’と圧搾溝5の内側及び外側の壁面(表面シート2)とで囲まれた空間である。空隙G04、G05は、それぞれ第1の吸収層11の液透過性シート11a(接合領域11t1を含む)と圧搾溝6(又は6’)の内側及び外側の壁面(表面シート2)とで囲まれた空間である。空隙G03は、表面シート2と接合領域11t1とで囲まれた空間である。
【0039】
次に、
図2及び
図7〜
図8を参照して、第2の吸収層12について更に説明する。ただし、
図7は第2の吸収層12の平面図であり、
図8は
図7の第2の吸収層12のVIII−VIII断面図である。なお、
図7には、圧搾溝5、前方圧搾溝6及び後方圧搾溝6’の平面視での位置を仮想的に記載している。
【0040】
図7〜
図8に示すように、第2の吸収層12では、肌側の液透過性シート12aと非肌側の液透過性シート12a’との間に形成される空間が、吸収性ポリマー及び液保持性物質の混合物16で満たされている。第2の吸収層12は、幅方向W及び長手方向Lの中央における角の丸い略矩形の形状を有する厚肉領域12Tと、厚肉領域12Tの周囲を取り囲む略環状の形状を有する中肉領域12Sと、中肉領域12Sの周囲を取り囲む略環状で第2の吸収層12の外形を有する薄肉領域12Rと、を有する。厚肉領域12Tの厚さ方向Tの厚さは最も厚く、薄肉領域12Rの厚さ方向Tの厚さは最も薄く、中肉領域12Sの厚さ方向Tの厚さは薄肉領域12Rから厚肉領域12Tへ向かって徐々に厚くなる。したがって、第2の吸収層12は、中高(例示:中央部の嵩が高い)な構造を有する。本実施の形態では、幅方向Wにおいて、平面視で、概ね、厚肉領域12Tは中央存在領域21に対応する領域であり、薄肉領域12Rは外側存在領域22に対応する領域であり、中肉領域12Sは非存在領域31に対応する領域である。
【0041】
一対の圧搾溝5の一方及び他方は、幅方向Wにおいて、それぞれ一対の非存在領域31の一方及び他方の内に位置しており、中央存在領域21及び一対の外側存在領域22と離間している。したがって、幅方向Wにおいて、圧搾溝5の内側の端縁E01と外側の端縁E02とは、中央存在領域21の端縁E11と外側存在領域22の端縁E12との間に存在している。好ましくは、一対の圧搾溝5の一方及び他方は、幅方向Wにおいて、それぞれ一対の接合領域11t1、11t1の内に位置している。したがって、好ましくは、幅方向Wにおいて、圧搾溝5の内側の端縁E01と外側の端縁E02とは、接合領域11t1の内側の端縁E21と外側の端縁E22との間に存在している。
【0042】
本実施の形態では、
図2〜
図4に示すように、圧搾溝5は、非存在領域31における中央存在領域21に近く、外側存在領域22から遠くに位置する。幅方向Wにおいて、互いに向かい合う圧搾溝5の端縁E01と中央存在領域21の端縁E11との距離d11は、互いに向かい合う圧搾溝5の端縁E02と外側存在領域22の端縁E12との距離d12よりも短い(d11<d12)。これら幅方向Wの距離は、例えば幅方向中心線CW上で計測される。圧搾溝5が中央存在領域21に近く、外側存在領域22から遠くに位置すると、中央存在領域21の吸収性ポリマー14が外側存在領域22の吸収性ポリマー15よりも優先的に圧搾溝5内の排泄物を吸収でき好ましい。その詳細は以下に説明される。
【0043】
図9は吸収性物品1の作用を説明する断面図である。この図では、第1の吸収層11を含む圧搾溝5付近の領域を示している。
図9(a)は排泄物S0が排泄される前の状態を示し、
図9(b)は排泄物S0が排泄されたときの状態を示している。ただし、ここでは、第2の吸収層12の厚さ方向Tの厚みは一定とする。
【0044】
図9(a)に示すように、吸収性物品1では、圧搾溝5が、非存在領域31内に位置し、中央存在領域21及び外側存在領域22と離間しており、かつ、幅方向Wにおいて外側存在領域22よりも中央存在領域21の近くに位置している(d11<d12)。そのため、圧搾溝5で幅方向Wに分割された非存在領域31のうち、中央存在領域21側の領域では吸収性ポリマーのない領域である空隙(G01+G11)が小さく、外側存在領域22側の領域では吸収性ポリマーの存在しない領域である空隙(G02+G12)が大きくなる。このとき、第1の吸収層11における中央存在領域21の厚さT01と、外側存在領域22の厚さT02とは概ね同じである。
このように中央存在領域21側の空隙(G01+G11)が小さいため、
図9(b)に示すように、排泄物S0のうち、圧搾溝5に排泄された排泄物S1は中央存在領域21の吸収性ポリマー14に吸収され易くなる。したがって、排泄物S2は小さい空隙(G01+G11)を介して中央存在領域21の吸収性ポリマー14に優先的に吸収され、したがって中央存在領域21の吸収性ポリマー14に多く吸収される。その結果、中央存在領域21の吸収性ポリマー14の体積が著しく膨張する。それにより、圧搾溝5の中央存在領域21側の壁面5W1が厚み方向Tに急激に立ち上がって、急峻な壁面5W1を形成する。そのとき、第1の吸収層11における中央存在領域21の厚さT11は、外側存在領域22の厚さT12よりも大きくなる(T11>T12)。そのため、中央存在領域21の略中央部分の排尿点で排泄された排泄物S0は、中央存在領域21から急峻な壁面5W1を伝って圧搾溝5内へ誘導され易くなり、圧搾溝5内に蓄積され易くなる(S1)。その結果、圧搾溝5の底部(高密度部5t)から非肌側の第2の吸収層12へ排泄物S4を拡散させ吸収させ易くできる。
一方、圧搾溝5内に排泄された排泄物S1は、大きい空隙(G02+G12)を介するので外側存在領域22の吸収性ポリマー15に吸収され難くなる。そのとき、外側存在領域22の吸収性ポリマー15が排泄物S1をあまり吸収しないことで、その体積があまり膨張しない。それにより、圧搾溝5内の外側存在領域22側の壁面5W2が厚み方向Tにあまり立ち上がらず、緩やかな壁面5W2を形成する。そのため、圧搾溝5内に蓄積される排泄物S1は、外側存在領域22側の緩やかな壁面5W2側に拡がりつつ蓄積され、すなわち圧搾溝5内の幅方向Wの外側に拡がりつつ蓄積される。その結果、通常の圧搾溝に蓄積される場合と比べ、圧搾溝5の外側に多くの排泄物S1を蓄積できる。それにより、吸収性物品1の表面シート2と接する表面積を大きくでき、排泄物S1が拡散し難い圧搾溝5の外側の領域を有効に利用して、排泄物S3を吸収することができる。それゆえ、表面シート2を介して幅方向Wの第1の吸収層11へ排泄物S3を吸収させ易くできる。
このように、圧搾溝5を伝って厚さ方向Tに第2の吸収層12へ排泄物S4を拡散させ易くするだけでなく、幅方向Wに第1の吸収層11へ排泄物S3を拡散させ易くできるため、吸収性物品1全体として吸収速度を向上でき(例えば、現行品の2倍以上)、かつ表面シート2の表面のさらっと感を維持し易くすることができる。
【0045】
距離d11としては、1mm〜10mmが好ましく、1.5mm〜3mmがより好ましい。距離d11が1mm以上なのは、中央存在領域21の吸収性ポリマー14が排泄物を吸収して膨張したとき、圧搾溝5を閉塞することを防止するためである。距離d11が10mm以下なのは、外側存在領域22の吸収性ポリマー15よりも中央存在領域21の吸収性ポリマー14に優先的に排泄物を吸収させ、中央存在領域21側の側壁をより急峻に立ち上がらせるためである(距離が大き過ぎると、中央存在領域21側の側壁が急峻に立ち上がり難い)。一方、距離d12としては、d12>d11の条件下で、2mm〜15mmが好ましく、2mm〜5mmがより好ましい。距離d12が2mm以上なのは、外側存在領域22の吸収性ポリマー15よりも中央存在領域21の吸収性ポリマー14に優先的に排泄物を吸収させつつ、外側存在領域22の吸収性ポリマー15が排泄物を吸収し膨張して、圧搾溝5を閉塞することを防止するためである。距離d12が15mm以下なのは、外側存在領域22の吸収性ポリマー15で排泄物を確実に吸収させるためである。本実施の形態では例えば距離d11を1.5mmとし、距離d12を2.5mmとしする。
【0046】
本実施の形態における好ましい形態として、平面視で、接合領域11t1は圧搾溝5の幅方向Wの両側に拡がり、圧搾溝5は接合領域11t1における中央存在領域21に近く、外側存在領域22から遠くに位置する。すなわち、幅方向Wにおいて、接合領域11t1における内側の端縁E21と圧搾溝5における内側の端縁E01との距離d21は、接合領域11t1における外側の端縁E22と圧搾溝5における外側の端縁E02との距離d22よりも短い(d21<d22)。上記構成を有する吸収性物品1は、幅方向Wにおいて、吸収性ポリマー14、15を液透過性シート11a、11a’内に保持し、閉じ込めることができる。そして、吸収性ポリマー14、15が排泄物を吸収し、膨潤したとき、液透過性シート11a、11a’が吸収性ポリマー14、15の幅方向Wへの膨潤を抑制して、圧搾溝5が閉塞することを抑制できる。
【0047】
本実施の形態では、前方圧搾溝6は、長手方向Lにおいて、前方非存在領域32の内に位置しており、中央存在領域21及び一対の外側存在領域22と離間している。そして、長手方向Lにおいて、前方圧搾溝6の内側の端縁E03と外側の端縁E04とは、中央存在領域21の端縁E31と第1の吸収層11の長手方向Lの端縁(前方非存在領域32の外側の端縁E42)との間に存在している。そして、本実施の形態における好ましい形態として、前方圧搾溝6は、前方非存在領域32における中央存在領域21に寄りに位置している。すなわち、長手方向Lにおいて、互いに向かい合う前方圧搾溝6の端縁E03と中央存在領域21の端縁E31との距離d31は、互いに向かい合う前方圧搾溝6の端縁E04と前方非存在領域32の外側の端縁E42との距離d32よりも短い(d31<d32)。これらの端縁などは、長手方向Lについては長手方向中心線CL上で計測される。なお、後方圧搾溝6’及び後方非存在領域32’についても、前方圧搾溝6及び前方非存在領域32と同様の構成を有する。
上記構成を有する吸収性物品1は、前方圧搾溝6が、前方非存在領域32内に位置し、中央存在領域21及び外側存在領域22と離間し、かつ長手方向Lにおいて中央存在領域21の近くに位置する。そのため、前方圧搾溝6で長手方向Lに分割された前方非存在領域32のうち、中央存在領域21側の領域では空隙(G11+G04)が小さく、その反対側の領域では空隙(G05+(長手方向Lにおける空隙G05より外側の、表面シート2と第2の吸収層12との間の空隙)が大きくなる。その結果、中央存在領域21側の空隙が小さいため、前方圧搾溝6に排泄された排泄物は中央存在領域21の吸収性ポリマー14に優先的に吸収される。そのため、中央存在領域21の吸収性ポリマー14が著しく膨張し、中央存在領域21側の壁面が厚み方向Tに急激に立ち上がり、急峻な壁面を形成する。それにより、中央存在領域21の略中央部分の排尿点で排泄された排泄物を、急峻な壁面を介して前方圧搾溝6へ誘導し、前方圧搾溝6の底部から非肌側の第2の吸収層12へ拡散させ吸収させ易くできる。一方、前方圧搾溝6を挟んで中央存在領域21と反対側の領域では、前方圧搾溝6の壁面が厚み方向Tにあまり立ち上がらず、緩やかな壁面を形成している。そのため、前方圧搾溝6に蓄積される排泄物は、その緩やかな壁面側に拡がりつつ蓄積され、吸収性物品1の表面シート2と接する表面積を大きくでき、排泄物が拡散し難い前方圧搾溝6の外側の領域を、排泄物の吸収に有効に利用することができる。それゆえ、表面シート2を介して長手方向Lの第1の吸収層11へ排泄物を吸収させ易くできる。このように前方圧搾溝6を伝って厚さ方向Tに第2の吸収層12へ排泄物を拡散させ易くするだけでなく、長手方向Lに第1の吸収層11へ排泄物を拡散させ易くでき、吸収性物品1全体として吸収速度を向上でき、かつ表面のさらっと感を維持し易くできる。なお、後方圧搾溝6’及び後方非存在領域32’の場合についても、前方圧搾溝6及び前方非存在領域32の場合と同様の作用効果を奏する。
【0048】
本実施の形態における好ましい形態として、前方接合領域11t2は、平面視で、前方圧搾溝6の長手方向Lの両側に拡がっている。そして、前方圧搾溝6は、前方接合領域11t2における中央存在領域21に寄りに位置している。すなわち、長手方向Lにおいて、前方接合領域11t2における内側の端縁E41と前方圧搾溝6における内側の端縁E03との距離d41は、前方接合領域11t2における外側の端縁E42と前方圧搾溝6における外側の端縁E04との距離d42よりも短い(d41<d42)。上記構成を有する吸収性物品1は、長手方向Lにおいて、吸収性ポリマー14を液透過性シート11a、11a’内に保持し、閉じ込めることができる。吸収性ポリマー14が排泄物を吸収し、膨潤したとき、液透過性シート11a、11a’が吸収性ポリマー14の長手方向Lへの膨潤を抑制して、前方圧搾溝6が閉塞することを抑制できる。よって吸収性ポリマー14の前方接合領域11t2への侵入を抑制することができる。なお、後方圧搾溝6’及び後方接合領域11t2’の場合についても、前方圧搾溝6及び前方接合領域11t2の場合と同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。
【0049】
本実施の形態における好ましい形態として、長手方向Lにおいて、前方接合領域11t2の内側の端縁E41と、当該端縁E41と対向する中央存在領域21の端縁E31との距離(d31−d41)は、前方接合領域11t2の内側の端縁E41と前方圧搾溝6の内側の端縁E03との距離d41よりも短い。上記構成を有する吸収性物品1は、第1の吸収層11において、前方接合領域11t2の内側の端縁E41と中央存在領域21の端縁E31との間の距離が短いので、中央存在領域21の吸収性ポリマー14が長手方向Lに膨潤する領域を小さくできる。その結果、吸収性ポリマー14をより厚さ方向Tの上方へ膨潤させることができ、前方圧搾溝6の中央存在領域21側の壁面をより急峻にすることができる。なお後方圧搾溝6’及び後方接合領域11t2’の場合についても、前方圧搾溝6及び前方接合領域11t2の場合と同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。
【0050】
本実施の形態における好ましい形態として、厚さ方向Tにおいて、第2の吸収層12の厚さをaとし、圧搾溝5における第2の吸収層12への侵入深さをbとしたとき、bは、(a/2)<b<a、を満たす。
図10は、圧搾溝の深さと第2の吸収層の厚さとの関係を説明する断面図である。なお、第2の吸収層12の厚さa、及び、圧搾溝5における第2の吸収層12への侵入深さbは、平面視で圧搾溝5の高密度部5t(底部)の幅方向Wの中心の位置で計測するものとし、本実施の形態では幅方向中心線CW上で計測する。上記構成を有する吸収性物品1は、
図10に示すように、圧搾溝5から第2の吸収層12へ排泄物Sを引き込み易くでき、かつ、引き込んだ排泄物Sを第2の吸収層12の非肌側だけでなく、第2の吸収層12の面内方向へ拡散し易くすることができる。それにより、吸収性物品1全体として吸収速度を向上し、表面のさらっと感を維持し易くする効果をより確実に奏することが可能となる。このとき、bの値が小さ過ぎると(b≦(a/2))、第2の吸収層12内での圧搾溝5の壁面(側面)の面積が小さくなり、その壁面から第2の吸収層12へ排泄物が拡散し難くなる。その結果、第2の吸収層へ排泄物を引き込む量や、引き込んだ排泄物が第2の吸収層の面内方向へ拡散する量が小さくなってしまう。更に、bの値が小さ過ぎると、吸収体4が全体として低強度になり、よじれ易くなってしまう。一方、bの値が大き過ぎると(a≦b)、圧搾溝5が実質的に第2の吸収層を突き抜けてしまう。その結果、圧搾溝5の底部(高密度部5t)から第2の吸収層12へ排泄物を拡散できなくなったり、吸収性物品の外に漏れたりするおそれがある。
【0051】
本実施の形態における好ましい形態として、第2の吸収層12では、幅方向Wにおいて、平面視で、概ね、厚肉領域12Tは中央存在領域21に対応する領域であり、薄肉領域12Rは外側存在領域22に対応する領域であり、中肉領域12Sは非存在領域31に対応する領域である。したがって、第2の吸収層12は、中高(例示:中央部の嵩が高い)な構造を有する。上記構成を有する吸収性物品1は、第1の吸収層11における非肌側の面を基準とした中央存在領域21の高さ位置(例示:中央存在領域21の底面)が外側存在領域22の高さ位置(例示:外側存在領域22の底面)よりも高くなる。それにより、排泄物が圧搾溝5に排泄されたとき、中央存在領域21が排泄物を多く吸収して圧搾溝5の中央存在領域21側の壁面が立ち上がるという効果をより高めることができる(より早期且つ優先的に急峻に立ち上がらせることができる)。それに加えて、外側存在領域22が排泄物をあまり吸収せず、圧搾溝5の外側存在領域22側の壁面が緩やかな傾斜になるという効果をより高めることができる。
【0052】
本実施の形態における好ましい形態として、一対の圧搾溝5、5、前方圧搾溝6及び後方圧搾溝6’で囲まれた領域では、その周囲の領域と比較して、表面シート2の繊維密度が高い。そのため、表面シート2において、中央存在領域21に対応する領域の繊維密度は、一対の外側存在領域22の各々に対応する領域の繊維密度よりも高い。上記構成を有する吸収性物品1は、表面シート2において、繊維密度の高い中央存在領域21に対応する領域に、排泄物を優先的に引き込ませ易くできる。それにより、中央存在領域21の吸収性ポリマー14を、外側存在領域22の吸収性ポリマー15よりも優先的に膨張させることができ、圧搾溝5の中央存在領域21側の壁面を急激に立ち上がらせることができる。一方、繊維密度の低い外側存在領域22に対応する領域に、排泄物を優先的に引き込ませないようにできる。それにより、外側存在領域22の吸収性ポリマー15の膨らみを、中央存在領域21の吸収性ポリマー14よりも抑制することができ、圧搾溝5の外側存在領域22側の壁面を緩やかな傾斜にできる。
【0053】
本実施の形態における好ましい形態として、圧搾溝5は、厚さ方向Tの深さが深い高圧搾部41と、厚さ方向Tの深さが浅い低圧搾部42と、を含み、高圧搾部41と前記低圧搾部42とが交互に並んで形成される。
図11は、圧搾溝5(、前方圧搾溝6、後方圧搾溝6’)の構成を模式的に示す平面図である。上記構成を有する吸収性物品1では、高圧搾部41により第2の吸収層12の厚さ方向Tの深い領域に排泄物を拡散させ、低圧搾部42により第2の吸収層12の厚さ方向Tの浅い領域に排泄物を拡散させることができる。すなわち第2の吸収層12の異なる深さの領域にそれぞれ排泄物を拡散できるので、第2の吸収層12を厚さ方向Tに効率的に使用できる。それにより圧搾溝5(、前方圧搾溝6、後方圧搾溝6’)内での排泄物の流通を良くする、すなわち圧搾溝5(、前方圧搾溝6、後方圧搾溝6’)を介した排泄物の吸収速度を向上できる。よって吸収性物品全体として吸収速度をより向上でき、かつ表面のさらっと感をより維持し易くできる。
【0054】
<端縁間の距離>
各端縁間の距離は以下の方法で測定した。(1)吸収性物品を、測定対象領域を中心に20×40mmの大きさに切り出して試料とする。2)X線透視装置FLEX−M863を用い、試料の360度スキャンを行う。具体的には試料を0.2度回転させるごとにX線透視画像を撮影して、360度分、すなわち1800枚のX線透視画像を取得し、取得した1800枚のX線透視画像をつなぎ合わせて3D画像を作成する。3)3D画像から測定対象の端縁を含む断面図を抽出し、抽出された断面図から端縁間の距離を測定した。
<圧搾溝の深さ>
圧搾溝の深さは以下の方法で測定した。(1)吸収性物品から、圧搾溝を含む所定の大きさの試料を切り出す。(2)三次元測定器((株)キーエンス社製 高精度形状測定システム(高精度ステージ:KS−1100を含む))と、高速・高精度CCDレーザー変位計(コントローラ:LK−G3000Vセット、センサヘッド:LK−G30を含む)とを用い、試料の断面形状を測定する。(3)測定した断面形状に画像データ処理を行い、スムージング処理が施された断面形状の輪郭線を得る。(4)得られた輪郭線に基づいて圧搾溝の断面形状の輪郭線を特定し、圧搾溝の断面形状の輪郭線から得られる各部位の寸法に基づいて圧搾溝の深さを求める。
<シートの坪量>
各シート(吸収層を含む)の坪量は以下の方法で測定した。(1)シートから5cm×5cmの大きさの部分を切り出して試料とする。(2)試料について、100℃以上の空気雰囲気で乾燥処理を行う。(3)試料の質量を測定する。(4)質量の測定値を試料の面積で割り算して試料の坪量を算出する。(5)10個の試料の坪量を平均した値をシートの坪量とする。
<シートの厚さ>
各シート(吸収層を含む)の厚さは以下の方法で測定した。(1)シートから5cm×5cmの大きさの部分を切り出して試料とする。(2)試料について、100℃以上の空気雰囲気で乾燥処理を行う。(3)15cm
2の測定子を備えた厚さ計((株)大栄化学精器製作所製 型式FS−60DS)を用い、3g/cm
2の測定荷重の条件でシートの厚さを測定する。(4)1個の試料で3か所の厚さを測定し、3か所の厚さの平均値をシートの厚さとする。なおシートの厚さはX線透視画像による3D画像から求めてもよい。
<シートの繊維密度>
各シート(吸収層を含む)の繊維密度は以下の方法で測定した。(1)上記方法でシートの坪量及びシートの厚みを求める。(2)シートの秤量を、シートの厚みで割り算してシートの繊維密度を算出する。
【0055】
(実施例)
実施例の試料として本実施の形態の吸収性物品1を準備した。比較例の試料としては、幅方向において、圧搾溝の位置が非存在領域の中央にあり、中央存在領域にも外側存在領域にも寄っておらず、両者に対して概ね等しい距離である吸収性物品(現行品)を準備した。ただし、実施例1及び比較例1の試料は、第1の吸収層11に相当する吸収層が第1の吸収層11の坪量に対し100%の坪量の吸収性ポリマーを含み、第2の吸収層12に相当する吸収層が第2の吸収層12の坪量に対し30〜70%の坪量の吸収性ポリマーを含む製品である。一方、実施例2及び比較例2の試料は、第1の吸収層11に相当する吸収層が第1の吸収層11の坪量に対し100%の坪量の吸収性ポリマーを含み、第2の吸収層12に相当する吸収層が吸水性繊維のパルプから構成されており、吸収性ポリマーを含まない製品である。そして、実施例の試料及び比較例の試料の吸収速度(生理食塩水を吸収するのにかかる吸収時間)を測定した。
図12は測定方法を説明する模式図である。
【0056】
吸収速度(吸収時間)の測定方法は以下の方法を用いた。(1)略矩形の平板102の中央に内径30mmの円筒101が垂直に結合された円筒付き平板治具を用意する。平板102と円筒101との結合箇所には内径30mmの開口が形成されている。(2)基台103の上に試料104(吸収性物品)を載置し、円筒付き平板治具の平板102をその試料104の上に載置する。(3)基台103と平板102との間の試料104の吸収体に所定の圧力が印加されるように、平板102に所定の荷重Pを印加する。所定の圧力は、試料104の着用者が立位・中腰である状態を想定する場合、試料104の吸収体に対して0.005〜0.015kg/cm
2、好ましくは0.007〜0.012kg/cm
2の圧力が印加されるように、平板102に荷重Pを印加する。また、試料104の着用者が座位である状態を想定する場合、試料104の吸収体に対して0.03〜0.2kg/cm
2、好ましくは0.05〜0.1kg/cm
2の圧力が印加されるように、平板102に荷重Pを印加する。(4)円筒101の上方から0.9%の濃度の生理食塩水Qを試料104へ滴下する(着用者の排尿を模している)。10g/秒の滴下速度で、試料104の吸収体の吸収容量に対して35%〜50%、好ましくは40〜45%の量を1回の滴下量とする。そのとき、試料104の表面の生理食塩水Qが、試料104に吸収されて、試料104の表面から無くなるまでの吸収時間(秒)を測定する。(5)5分後にもう一度、上記(4)の生理食塩水Qの滴下及び吸収時間の測定を行う。なお、吸収速度(単位時間当たりの生理食塩水の吸収量)は、滴下量/吸収時間から算出できる。吸収速度の比較は、同一滴下量のときの吸収時間の比較により吸収速度の比較としてもよいし、滴下量/吸収時間から算出された吸収速度を直接比較してもよい。ここでは、同一滴下量のときの吸収時間の比較により吸収速度の比較とする。その場合、吸収時間が小さいほど吸収速度は大きいといえる。
【0057】
吸収時間の測定結果は以下のとおりである。
【表1】
【0058】
1回目の生理食塩水Qの滴下時(1回目の排尿時に相当)では、第1の吸収層11における吸収性ポリマーが膨張した。その結果、実施例1、2の試料では、第1の吸収層11の中央存在領域21が大きく膨らみ、外側存在領域22はあまり膨らまなかった。それにより、圧搾溝5の中央存在領域21側の壁面が裏面シート3に対して成す角と、圧搾溝5の外側存在領域22側の壁面が裏面シート3に対して成す角とが相違した。すなわち、中央存在領域21側の壁面が成す角は大きくなり、外側存在領域22側の壁面が成す角はあまり大きくならなかった。一方、比較例1、2の試料では、中央存在領域側の壁面が成す角と、外側存在領域側の壁面が成す角とは概ね同じであった。これにより、実施例1、2の試料では、それぞれ比較例1、2の試料と比較して、滴下された生理食塩水Qは速やかに圧搾溝5へ流れ易くなり、表1に示すように1回目の滴下時に吸収にかかる時間が短かった(吸収速度が速かった)。特に吸収容量の大きい実施例1の試料は、比較例1の試料と比較して、立位・中腰の条件では1.5倍以上、座位の条件では2倍以上、吸収速度が向上した。更に、2回目の生理食塩水Qの滴下時(2回目の排尿時に相当)では、第1の吸収層11における吸収性ポリマーが更に膨張してゲルブロッキングが生じ始める。そのため、実施例1、2の試料では、中央存在領域21側の壁面が成す角はより大きくなり、外側存在領域22側の壁面が成す角とより大きく相違した。一方、比較例1、2の試料では、中央存在領域側の壁面が成す角と、外側存在領域側の壁面が成す角との相違は、それぞれ実施例1、2の試料よりも小さかった。これにより、実施例1、2の試料は、それぞれ比較例1、2の試料と比較して、立位・中腰の条件及び座位の条件の何れの場合にも2倍以上、吸収速度が向上した。このように、第2の吸収層12に相当する吸収層が吸収性ポリマーを含むか否かに関わらず、実施例の試料では、比較例(現行品)の試料と比較して明らかに吸収速度が大きく改善されており、特に2回目の排尿時では2倍以上の吸収速度を有していることが分った。すなわち、本吸収性物品1は現行品と比較して、2回目の排尿時には、2倍以上の吸収速度を有していることが分った。このような高い吸収速度により、実施例の試料では、表面のさらっと感が維持され易くなることが分った。
【0059】
本発明の吸収性物品は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。
【解決手段】吸収性物品1は、表面シート2と、第1の吸収層11と第2の吸収層12とを含む吸収体4と、を備え、表面シートと吸収体とが圧搾された圧搾溝5を有する。第1の吸収層は、吸収性ポリマーが存在する、中央の中央存在領域21と、その外側の外側存在領域22と、中央存在領域と外側存在領域との間に位置し、吸収性ポリマーが少ない非存在領域31と、を含む。圧搾溝は、非存在領域31内に位置し、中央存在領域及び外側存在領域と離間している。互いに向かい合う圧搾溝の端縁と中央存在領域の端縁との距離は、互いに向かい合う圧搾溝の端縁と外側存在領域の端縁との距離よりも短い。