(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定子コイルエンドの両端部のうちの、前記回転電機の固定子コアに接している端部を第1位置とし、その他端部を第2位置とした場合、前記試験箇所は、前記第1位置から前記長手方向に延びる距離を表し、
前記表面電位測定処理において、前記ミラーの裏面に対して、前記第1位置から前記第2位置まで各々異なる位置に前記試験箇所が設けられたときに、前記演算部は、各々異なる前記試験箇所と、前記ミラーの裏面に前記試験箇所が設けられたときに特定される前記電界緩和システムの前記表面電位との関係を示す試験箇所対表面電位特性を生成する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の表面電位分布計測装置。
前記表面電位測定処理において、前記演算部は、前記試験箇所対表面電位特性から、各々異なる前記試験箇所のうちの、第1試験箇所と第2試験箇所との2点間における電界を算出する、
ことを特徴とする請求項4ないし請求項6のいずれか一項に記載の表面電位分布計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
表面電位を計測する場合、通常、表面電位計が用いられる(特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術では、電界緩和システムにプローブを接触または接近させて、表面電位計で計測される表面電位を用いて非線形抵抗を算出している。
【0010】
しかし、インバータパルス電圧は、kHzオーダー以上の高周波成分を有している。この場合、表面電位計は、上述の高周波成分に追従できず、インバータパルス電圧の発生を想定した電界緩和システムの表面電位を計測することができない。
【0011】
また、プローブには、通常、金属材料が用いられる。このため、電界緩和システムにプローブを接触または接近させる方法では、電界緩和システムとプローブとの間で静電気が発生する可能性がある。また、インバータサージが発生したときなどには電界緩和システムとプローブとの間でコロナ放電が発生する可能性がある。このように、測定点に金属材料を用いる場合、測定対象への擾乱により、インバータパルス電圧の発生を想定した電界緩和システムの表面電位を計測することができない。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、
インバータパルス電圧
の発生を想定した電界緩和システムの表面電位を計測することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の表面電位分布計測装置は
、回転電機の固定子コイルの端部である固定子コイルエンドに施された電界緩和システムの表面電位を計測する表面電位分布計測装置であって、レーザ光を出射するレーザと、前記レーザから出射された前記レーザ光が一端面に入射され
、前記レーザ光の伝搬方向に沿って長手方向に延びたポッケルス結晶と
、前記ポッケルス結晶の他端面に設けられ、前記ポッケルス結晶の一端面から入射された前記レーザ光を入射方向とは反対方向に反射するミラーと、
インバータパルス電圧の高周波成分に追従する帯域を有し、前記ミラーにより反射された前記レーザ光を入射して、前記レーザ光の光強度として、前記ポッケルス結晶の一端面と他端面との間の電位差である出力電圧に対応する検出光強度を検出する光検出器と、試験前に行われる電圧校正処理において、前記ミラーの裏面に対して各々異なる入力電圧が印加されたときに、各々異なる前記入力電圧と前記ミラーの裏面に前記入力電圧が印加されたときの前記ポッケルス結晶の前記出力電圧との関係を示す入力電圧対出力電圧特性が格納された電圧校正データベースと、試験時に行われる表面電位測定処理において、前記ミラーの裏面に
前記電界緩和システムの表面の一部が試験箇所として配置された場合に、前記
固定子コイルに電圧が印加されたときの前記ポッケルス結晶の前記出力電圧を試験時出力電圧とし、前記電圧校正データベースに格納された前記入力電圧対出力電圧特性から、前記試験時出力電圧に対応する入力電圧を前記
電界緩和システムの表面電位として特定する演算部と、を具備することを特徴とする。
【0014】
本発明の表面電位分布計測方法は
、パルス電圧に追従し回転電機の固定子コイルの端部である固定子コイルエンドに施された電界緩和システムの表面電位を計測する表面電位分布計測方法であって、レーザによりレーザ光を
、前記レーザ光の伝搬方向に沿って長手方向に延びたポッケルス結晶の一端面から他端面に向かって出射するステップと
、前記ポッケルス結晶の他端面に設けられたミラーにより、前記ポッケルス結晶の一端面から入射された前記レーザ光を入射方向とは反対方向に反射するステップと、
インバータパルス電圧の高周波成分に追従する帯域を有する光検出器により、前記ミラーにより反射された前記レーザ光を入射して、前記レーザ光の光強度として、前記ポッケルス結晶の一端面と他端面との間の電位差である出力電圧に対応する検出光強度を検出するステップと、試験前に行われる電圧校正処理において、前記ミラーの裏面に対して各々異なる入力電圧が印加されたときに、各々異なる前記入力電圧と前記ミラーの裏面に前記入力電圧が印加されたときの前記ポッケルス結晶の前記出力電圧との関係を示す入力電圧対出力電圧特性を電圧校正データベースに格納するステップと、試験時に行われる表面電位測定処理において、前記ミラーの裏面に前記
電界緩和システムの表面の一部が試験箇所として配置された場合に、前記
固定子コイルに電圧が印加されたときの前記ポッケルス結晶の前記出力電圧を試験時出力電圧とし、前記電圧校正データベースに格納された前記入力電圧対出力電圧特性から、前記試験時出力電圧に対応する入力電圧を前記
電界緩和システムの表面電位として特定するステップと、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、
インバータパルス電圧
の発生を想定した電界緩和システムの表面電位を計測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る表面電位分布計測装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る表面電位分布計測装置1の構成を示すブロック図である。
図2は、簡易的に表した回転電機の固定子、電界緩和システム3、および、表面電位分布計測装置1のポッケルス結晶23の斜視図である。
【0019】
表面電位分布計測装置1は後述の電界緩和システム3に適用され、その電界緩和システム3は、インバータ駆動の回転電機に施される。
【0020】
その回転電機について、
図2を用いて説明する。ここで、後述の電界緩和システム3に直接関連しない構成要素については図示を省略している。
【0021】
回転電機は固定子と回転子とを具備している。回転子は固定子の内部に配置されて回転する。
【0022】
回転子は回転軸と回転子コアと回転子コイルとを具備している。回転子コアは回転軸とともに回転する。回転子コイルは回転子コアに巻回される。
【0023】
固定子は、固定子コア11と、固定子コイルと、主絶縁層13と、を具備している。
【0024】
固定子コア11は、回転子の径方向外側に所定間隔に配置される。固定子コア11の内周縁に沿って所定間隔にスロットが形成されている。
【0025】
そのスロット内には、コイル導体12であるハーフターンコイルが収納される。固定子コアの外ではハーフターンコイル同士が結線される。すなわち、ハーフターンコイル同士が電気的に接続され、固定子コイルが製作される。この固定子コイルがU相、V相、W相に対して製作されることにより、U相、V相、W相の三相巻線コイルが製作される。
【0026】
固定子コイルの外周には、固定子コイルに対して絶縁被覆を行うための主絶縁層13が設けられる。具体的には、固定子コイルの外周には、マイカエポキシを主成分とする対地絶縁テープが主絶縁層13として巻回される(
図4参照)。
【0027】
主絶縁層13が設けられた固定子コイルの端部(以下、固定子コイルエンド16と称する)は直接発電に寄与する部分ではないため、固定子コイルエンド16におけるハーフターンコイル同士の結線部が3次元的に曲げられた(湾曲された)形状が採用される。いわゆる、インボリュート形状が採用される。これにより、回転電機をコンパクトにすることができる。
【0028】
固定子コイルエンド16には、後述のコロナ放電の発生を防ぐための電界緩和システム3が施される。次に、電界緩和システム3について、
図2を用いて説明する。
【0029】
電界緩和システム3は、低抵抗層14と、電界緩和層15と、を具備している。
【0030】
固定子コイルエンド16の主絶縁層13と固定子コア11のスロット壁面に面する部分との間では、コロナ放電である部分放電が発生する可能性がある。その部分放電の発生を防ぐために、主絶縁層13の外周には、低抵抗層14が設けられる。具体的には、主絶縁層13の外周には、主絶縁層13が固定子コア11の内周に対面する部分から、主絶縁層13が固定子コア11の外に露出される部分まで、低抵抗半導電テープが低抵抗層14として巻回される(
図4参照)。固定子コア11の外に設けられた低抵抗層14の幅(以下、低抵抗層14の端部17と称する)は数十ミリ程度である。
【0031】
低抵抗層14は固定子コア11とともに接地される。そのため、コイル導体12に電圧(交流電圧)が印加された場合、コイル導体12が駆動電極となり、低抵抗層14が接地電極となる。この場合、コイル導体12と固定子コア11内の低抵抗層14との間で生じる等電位線は略並行となる。一方、コイル導体12と固定子コイルエンド16における低抵抗層14との間で生じる等電位線は、主絶縁層13の厚み方向に分布する。固定子コイルエンド16では、主絶縁層13とコイル導体12との比誘電率の相違やコイル導体12の表面の抵抗率に依存して等電位線が密に分布する。このため、固定子コイルエンド16の表面では電位傾度が大きくなり、固定子コイルエンド16の沿面方向に電界が集中する。特に、低抵抗層14の端部17においては、電位傾度が著しく大きくなり、コロナ放電である部分放電または沿面放電が発生しやすくなる。したがって、部分放電または沿面放電の発生を防ぐために、低抵抗層14の端部17と固定子コイルエンド16の主絶縁層13との外周には、電界緩和層15が設けられる。具体的には、固定子コイルエンド16の主絶縁層13の外周には、電位傾度を緩やかにするための高抵抗半導電テープが電界緩和層15として、低抵抗層14の端部17を覆うように巻回される(
図4参照)。
【0032】
次に、表面電位分布計測装置1について、
図1を用いて説明する。表面電位分布計測装置1は、固定子コイルエンド16に施された電界緩和システム3の表面電位を計測する。
【0033】
表面電位分布計測装置1は、半導体レーザ発生器(以下、レーザと称する)21と、偏光ビームスプリッタ(以下、PBSと称する)22と、ポッケルス結晶23と、誘電体ミラー(以下、ミラーと称する)24と、光検出器25と、演算装置30と、を具備している。
【0034】
レーザ21は、電界緩和システム3の長手方向(y方向)に垂直な入射方向(x方向)に向かって、レーザ光を出射する。そのレーザ光は、その波長が532.0nmであり、最大出力が10mWであり、口径が0.34mmである。ここではレーザ光の波長を、532.0nmとしているが、ポッケルス結晶23内や工学部品内を大きく減衰することなく伝搬できれば良い。
【0035】
レーザ光は直線偏光であり、その直線偏光の偏波面は、入射方向xおよび長手方向yに垂直な方向(z方向)に対して平行である。
【0036】
PBS22は、上記直線偏光だけを通過させる。PBS22は、レーザ21から出射されたレーザ光を入射方向xに向かって通過させる。
【0037】
ポッケルス結晶23は、その長手方向が入射方向xに平行になるように配置され、レーザ21およびPBS22とともに入射方向xに並べて配置されている。ポッケルス結晶23の一端面は接地されている。または、ポッケルス結晶23の一端面は電源装置により0[V]にしている。PBS22からのレーザ光は、ポッケルス結晶23の一端面に入射され、ポッケルス結晶23の一端面に交わらない他端面に向かう。
【0038】
ミラー24の表面は、ポッケルス結晶23の他端面に設けられている。ミラー24の裏面には測定対象物から電圧がかけられる。すなわち、ポッケルス結晶23の他端面には電圧がかけられる。その測定対象物は電界緩和システム3である。
【0039】
ミラー24の裏面には、電界緩和システム3の表面の一部が試験箇所として設けられる。具体的には、ミラー24の裏面は、試験箇所に対して所定距離だけ離れて設けられる。その所定距離は、本実施形態においては1mmとしたが、空間分解能を考慮して変更される。ミラー24は、ポッケルス結晶23の一端面から入射されたレーザ光を入射方向xとは反対方向に反射する。
【0040】
ポッケルス結晶23は、“結晶点群3m”に属する圧電性のある等方性結晶であり、ポッケルス効果を発生させる。ポッケルス効果とは、誘電体の等方性結晶に電場(電圧)をかけたときに複屈折性を示す現象であり、そのときの電圧に比例して屈折率(光強度)が変化するものである。ポッケルス結晶23としては、BGO(Bi12GeO20)結晶などが例示される。
【0041】
ポッケルス結晶は、結晶方位と入射光の伝搬方向との成す向きにより、外部電場の光の伝搬方向と平行もしくは垂直な成分に対して感度を持たせることができる。前者は縦型変調、後者は横型変調と呼ばれる。“結晶点群3m”に属するポッケルス結晶は縦型変調配置が行える結晶であり、縦型変調配置とした場合、光強度は、外部電場の光路に平行な成分の積分値、即ち電圧に比例して変化する。
【0042】
ミラー24により反射されたレーザ光の光強度は、ポッケルス結晶23の一端面と他端面との間(以下、両面間とも称する)の電位差である出力電圧VPoutに対応する。
【0043】
PBS22は、ミラー24により反射されたレーザ光を長手方向y(本実施形態では長手方向yとは反対方向)に通過させる。
【0044】
光検出器25は、インバータパルス電圧の高周波成分に追従する帯域を有している。その光検出器25は、PBS22に対して長手方向y(本実施形態では長手方向yとは反対方向)に配置されている。光検出器25にはPBS22からのレーザ光が入射される。光検出器25は、そのレーザ光の光強度として、検出光強度Poutを検出する。
【0045】
検出光強度Poutは、ポッケルス結晶23の一端面と他端面との間の電位差である出力電圧VPoutに対応する。その検出光強度Poutは、出力電圧VPoutの余弦関数として下式のように表される。
【0046】
Pout=(Pin/2)×{1−cos(π(VPout/Vπ)−θ0)}
上記余弦関数において、Pinはポッケルス結晶23の入射光強度であり、Vπは半波長電圧であり、θ0は波長板によって与える位相差(任意)である。本実施形態では、検出光強度Poutにより、上記余弦関数の逆関数からポッケルス結晶23の出力電圧VPoutを求めている。ポッケルス結晶23は、100mm長と比較的長い結晶を用いているため、ポッケルス結晶23を近づけることによる誘電体表面の電界分布の乱れは小さい。そのため、ポッケルス結晶23の出力電圧VPoutは、測定対象である電界緩和システム3の表面電位に比例する。
【0047】
演算装置30は、光検出器25および出力装置34に接続されたコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)と記憶装置とを具備している。記憶装置にはコンピュータプログラムが格納され、CPUは、記憶装置からコンピュータプログラムを読み出して、そのコンピュータプログラムを実行する。出力装置34としては表示装置や印刷装置が例示される。演算装置30は、CPUの機能ブロックとして、演算部31と、電圧校正データベース32と、表面電位測定データベース33と、を具備している。
【0048】
次に、第1実施形態に係る表面電位分布計測装置1の動作について説明する。
【0049】
表面電位分布計測装置1は、試験前に後述の電圧校正処理を行い、その後の試験時に後述の表面電位測定処理を行う。演算部31は、電圧校正処理により電圧校正データベース32を構築し、表面電位測定処理により電圧校正データベース32を参照する。演算部31には、たとえば試験者の入力操作により電圧校正処理または表面電位測定処理が設定される。
【0050】
図5は、電圧校正処理の一例を示すフローチャートである。
【0051】
まず、演算部31に電圧校正処理が設定される(ステップS11;電圧校正設定処理)。
【0052】
次に、表面電位分布計測装置1のポッケルス結晶23の端部に設けられたミラー24の裏面に対して、たとえば50Hzの交流電圧が入力電圧Vin[kV]として印加される(ステップS12;入力電圧印加処理)。
【0053】
このとき、レーザ21から出射されたレーザ光はPBS22およびポッケルス結晶23を介してミラー24により反射され、ミラー24により反射されたレーザ光はポッケルス結晶23およびPBS22を介して光検出器25に入射される。光検出器25は、PBS22からのレーザ光の光強度を検出光強度Poutとして検出する(ステップS13;光強度検出処理)。
【0054】
電圧校正処理において、演算部31は、次の処理を行う。
【0055】
まず、演算部31は、上述の余弦関数を用いて、検出光強度Poutからポッケルス結晶23の出力電圧VPout[V]を算出する。すなわち、検出光強度Poutから、検出光強度Poutに対応する出力電圧VPout[V]を導き出す(ステップS14;出力電圧算出処理)。
【0056】
演算部31は、たとえば試験者の入力操作により入力される上述の入力電圧Vin[kV]とともに、上記出力電圧VPout[V]を電圧校正データベース32に格納する(ステップS15;出力電圧格納処理)。
【0057】
その後、電圧校正処理を終了しない場合(ステップS16−NO)、入力電圧Vin[kV]を変えながら、上述のステップS11〜S15を繰り返す。
【0058】
これにより、電圧校正データベース32には、各々異なる入力電圧Vin[kV]と、そのときのポッケルス結晶23の出力電圧VPout[V]との関係を示す入力電圧対出力電圧特性が格納される。すなわち、
図3に示されるような入力電圧対出力電圧特性が生成され、電圧校正データベース32が構築される。
【0059】
図3は、電圧校正処理における入力電圧対出力電圧特性を示す図である。演算部31は、電圧校正データベース32を参照して、各々異なる入力電圧Vin[kV]とポッケルス結晶23の出力電圧VPout[V]との関係からフィッティングを行い、電圧校正の関係式を求めることにより、
図3に示されるような入力電圧対出力電圧特性を得ることができる。
【0060】
電圧校正処理を終了する場合(ステップS16−YES)、演算部31は、電圧校正データベース32に格納された入力電圧対出力電圧特性を出力装置34に出力する。出力装置34が表示装置である場合、入力電圧対出力電圧特性が表示装置に表示され、出力装置34が印刷装置である場合、入力電圧対出力電圧特性が印刷装置により印字される(ステップS17;入力電圧対出力電圧特性出力処理)。
【0061】
図6は、表面電位測定処理の一例を示すフローチャートである。
【0062】
まず、演算部31に表面電位測定処理が設定される(ステップS21;表面電位測定設定処理)。
【0063】
次に、表面電位分布計測装置1のポッケルス結晶23の端部に設けられたミラー24の裏面に対して、電界緩和システム3の表面の一部が試験箇所として設けられる。固定子コイルエンド16の両端部のうちの、固定子コア11に接している一端部を第1位置P(P=0)[mm]とし、その他端部を第2位置Q[mm]とした場合、試験箇所L[mm]は、第1位置Pから長手方向yに延びる距離を表している(ステップS22;試験箇所配置処理)。
【0064】
次に、回転電機の固定子コイルに対して、たとえば周波数が50Hzであり、波高値が10kVの交流電圧が試験電圧として印加される(ステップS23;試験電圧印加処理)。
【0065】
このとき、レーザ21から出射されたレーザ光はPBS22およびポッケルス結晶23を介してミラー24により反射され、ミラー24により反射されたレーザ光はポッケルス結晶23およびPBS22を介して光検出器25に入射される。光検出器25は、PBS22からのレーザ光の光強度を検出光強度Poutとして検出する(ステップS24;光強度検出処理)。
【0066】
表面電位測定処理において、演算部31は、次の処理を行う。
【0067】
まず、演算部31は、上述の余弦関数を用いて、検出光強度Poutからポッケルス結晶23の出力電圧VPout[V]を算出する。すなわち、検出光強度Poutから、検出光強度Poutに対応する出力電圧VPout[V]を導き出す。ここで、出力電圧VPout[V]を試験時出力電圧Vout[V]とする(ステップS25;出力電圧算出処理)。
【0068】
演算部31は、電圧校正データベース32に格納された入力電圧対出力電圧特性から、試験時出力電圧Vout[V]に対応する入力電圧Vin[kV]を電界緩和システム3の表面電位Vsuf[kV]として特定する(ステップS26;表面電位特定処理)。
【0069】
演算部31は、たとえば試験者の入力操作により入力される上述の試験箇所L[mm]とともに、上記表面電位Vsuf[kV]を表面電位測定データベース33に格納する(ステップS27;表面電位格納処理)。
【0070】
その後、表面電位測定処理を終了しない場合(ステップS28−NO)、試験箇所L[mm]を変えながら、上述のステップS21〜S27を繰り返す。たとえば、ミラー24の裏面に対して、第1位置Pから第2位置Qまで各々異なる位置に試験箇所Lが設けられたときに、演算部31は、各々異なる試験箇所L[mm]と、そのときに特定される電界緩和システム3の表面電位Vsuf[kV]とを表面電位測定データベース33に格納する。
【0071】
これにより、表面電位測定データベース33には、各々異なる試験箇所L[mm]と、そのときに特定される電界緩和システム3の表面電位Vsuf[kV]との関係を示す試験箇所対表面電位特性が格納される。すなわち、演算部31は、表面電位測定データベース33を用いて、
図4に示されるような試験箇所対表面電位特性を生成する。
【0072】
図4は、回転電機の固定子と電界緩和システム3との概略断面に対応付けて、表面電位測定処理における試験箇所対表面電位特性を示す図である。
図4に示されるように、第1位置Pから第2位置Qまで長手方向yに表面電位Vsuf[kV]を計測した結果、表面電位Vsuf[kV]の傾きは低抵抗層14と電界緩和層15との境界領域から長手方向yに向かって急になり、この境界領域で高い電界が生じていることがわかる。
【0073】
表面電位測定処理を終了する場合(ステップS28−YES)、演算部31は、表面電位測定データベース33に格納された試験箇所対表面電位特性を出力装置34に出力する。出力装置34が表示装置である場合、試験箇所対表面電位特性が表示装置に表示され、出力装置34が印刷装置である場合、試験箇所対表面電位特性が印刷装置により印字される(ステップS29;試験箇所対表面電位特性出力処理)。
【0074】
さらに、ステップS29において、演算部31は、表面電位測定データベース33に格納された試験箇所対表面電位特性から、各々異なる試験箇所L[mm]のうちの、第1試験箇所L1[mm]と第2試験箇所L2[mm]との2点間における電界E[kV/m]を算出し、電界E[kV/m]を表す値を出力装置34に出力してもよい。ここで、第1試験箇所L1[mm]に対応する表面電位Vsuf[kV]を第1表面電位Vsuf1[kV]とし、第2試験箇所L1[mm]に対応する表面電位Vsuf[kV]を第2表面電位Vsuf2[kV]とした場合、演算部31は、E=(Vsuf2−Vsuf1)/(L2−L1)により、電界E[kV/m]を算出する。ここで、第1試験箇所L1[mm]および第2試験箇所L2[mm]は任意で選択されてもよいし、第2試験箇所L[mm]は第1試験箇所L[mm]の次の試験箇所として選択されてもよい。
【0075】
以上の説明により、第1実施形態の表面電位分布計測装置1では、レーザ21と電界緩和システム3の表面(試験箇所L)との間のポッケルス結晶23を用いている。すなわち、ポッケルス結晶23によりポッケルス効果を利用している。これにより、レーザ21によりレーザ光を試験箇所Lに向けて出射した場合、ポッケルス結晶23と試験箇所Lとの間のミラー24に反射されたレーザ光の光強度は、ポッケルス結晶23の一端面と他端面との間の電位差である出力電圧VPoutに対応する。このため、表面電位分布計測装置1は、そのレーザ光の光強度(出力電圧VPout)から、電界緩和システム3の表面電位Vsufを計測することができる。
【0076】
また、第1実施形態の表面電位分布計測装置1では、前述のインバータパルス電圧の高周波成分に追従する帯域を有する光検出器25を用いている。これにより、インバータパルス電圧が発生した場合でも、ポッケルス結晶23と試験箇所Lとの間のミラー24に反射されたレーザ光の光強度は、光検出器25により検出される。このため、表面電位分布計測装置1は、そのレーザ光の光強度(出力電圧VPout)から、インバータパルス電圧の発生を想定した電界緩和システム3の表面電位Vsufを計測することができる。
【0077】
また、第1実施形態の表面電位分布計測装置1では、試験前に行われる電圧校正処理において、ミラー24の裏面に対して各々異なる入力電圧Vinが印加されたときに、各々異なる入力電圧Vinとそのときのポッケルス結晶23の出力電圧VPout(光検出器25により検出された検出光強度Pout)との関係を示す入力電圧対出力電圧特性が電圧校正データベース32に格納される。このため、試験時に行われる表面電位測定処理において、ミラー24の裏面に電界緩和システム3の表面の一部が試験箇所Lとして配置された場合、固定子コイルに電圧が印加されたときのポッケルス結晶23の出力電圧VPout(光検出器25により検出された検出光強度Pout)を試験時出力電圧Voutとし、電圧校正データベース32に格納された入力電圧対出力電圧特性から、試験時出力電圧Voutに対応する入力電圧Vinを電界緩和システム3の表面電位Vsufとして特定することができる。
【0078】
また、第1実施形態の表面電位分布計測装置1では、測定点(試験箇所)に金属材料を用いていないため、測定対象への擾乱を最小限に抑えることができる。
【0079】
このように、第1実施形態の表面電位分布計測装置1によれば、インバータパルス電圧の発生を想定した電界緩和システムの表面電位を計測することができる。
【0080】
[第2実施形態]
第2実施形態について、第1実施形態の変更点のみ説明する。特に記載していない部分は第1実施形態と同様である。
【0081】
第2実施形態に係る表面電位分布計測装置1の動作について説明する。
【0082】
表面電位分布計測装置1は、試験前に前述の電圧校正処理を行い、その後の試験時に前述の表面電位測定処理および後述の電位差算出処理を行う。演算部31には、たとえば試験者の入力操作により、電圧校正処理、または、表面電位測定処理および電位差算出処理が設定される。
【0083】
図7は、第2実施形態に係る表面電位分布計測装置1の構成を示すブロック図である。
【0084】
表面電位測定データベース33は、各々異なる電界緩和システム3に対して割り当てられる。すなわち、表面電位測定データベース33は、電界緩和システム3の数に対応して演算装置30に設けられる。
【0085】
図8は、電位差算出処理の一例を示すフローチャートである。
【0086】
まず、隣接する電界緩和システム3である第1電界緩和システム3Aおよび第2電界緩和システム3Bに対して前述の表面電位測定処理が行われる。このとき、演算部31には、たとえば試験者の入力操作により、電位差算出処理が設定される(ステップS31;電位差算出設定処理)。
【0087】
電位差算出処理において、演算部31は、次の処理を行う。
【0088】
演算部31は、第1電界緩和システム3Aおよび第2電界緩和システム3Bに割り当てられた表面電位測定データベース33に同一の試験箇所Lが格納されているか否かを確認する(ステップS32)。
【0089】
同一の試験箇所Lが格納されている場合(ステップS32−YES)、演算部31は、その同一の試験箇所Lにおいて、第1電界緩和システム3Aの表面電位Vsuf[kV]と第2電界緩和システム3Bの表面電位Vsufと[kV]の電位差である表面電位差VAB[kV]を算出する。ここで、第1電界緩和システム3Aの表面電位Vsuf[kV]を第1電界緩和システム表面電位Vsuf31[kV]とし、第2電界緩和システム3Bの表面電位Vsuf[kV]を第2電界緩和システム表面電位Vsuf32[kV]とした場合、演算部31は、VAB=Vsuf32−Vsuf31により、表面電位差VAB[kV]を算出する(ステップS33;表面電位差算出処理)。
【0090】
前述の表面電位測定処理が終了した場合(ステップS34−YES)、演算部31は、ステップS29において試験箇所対表面電位特性および電界E[kV/m]を表す値を出力装置34に出力するとともに、表面電位差VAB[kV]を表す値を出力装置34に出力する(ステップS35;表面電位差出力処理)。
【0091】
このように、第2実施形態の表面電位分布計測装置1によれば、隣接する電界緩和システム3の電位差を計測することができる。
【0092】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更することができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。