特許第6192952号(P6192952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6192952
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20170828BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20170828BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20170828BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20170828BHJP
【FI】
   H01L29/78 618F
   H01L27/06 102A
   H01L29/78 624
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-41420(P2013-41420)
(22)【出願日】2013年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-170821(P2014-170821A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083840
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】金野 雄介
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−064342(JP,A)
【文献】 特開2009−071000(JP,A)
【文献】 米国特許第05804864(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0070084(US,A1)
【文献】 特開2005−159349(JP,A)
【文献】 特開2005−045080(JP,A)
【文献】 特開平11−186560(JP,A)
【文献】 特開2001−111043(JP,A)
【文献】 特開平05−136436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336、29/76、29/772−29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が形成される導体層である素子形成層の膜厚及び比抵抗値を決定する工程と、
基板上に、前記決定された膜厚及び比抵抗値を持つ半導体層を形成する工程と、
記半導体層に、ソース領域及びドレイン領域を含む半導体素子を形成する工程と
を有し、
前記膜厚及び前記比抵抗値を決定する前記工程は、
前記半導体層の膜厚をパラメータとし、複数の膜厚のそれぞれについて、前記半導体層の比抵抗値に対する前記半導体素子の破壊電圧を算出する処理と、
x軸に前記比抵抗値を示し、y軸に前記算出された破壊電圧を示す第1の2次元座標系に、極大値を有する複数の特性曲線を表す処理と、
前記第1の2次元座標系において前記複数の特性曲線が所定の基準電圧以上となる範囲に対応する高耐圧領域を、x軸に前記比抵抗値を示し、y軸に前記膜厚を示す第2の2次元座標系に表す処理とを含む
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記基板は、SOIウェハの支持半導体基板と埋め込み絶縁膜とから構成され、
記半導体層は、前記SOIウェハのシリコン単結晶層と、該シリコン単結晶層上に形成されたエピタキシャル層とから構成され、
記比抵抗値は、前記半導体層の不純物濃度によって設定される
ことを特徴とする請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記基板は、SOSウェハのサファイア基板から構成され、
記半導体層は、前記SOSウェハのシリコン単結晶層と、該シリコン単結晶層上に形成されたエピタキシャル層とから構成され、
記比抵抗値は、前記半導体層の不純物濃度によって設定される
ことを特徴とする請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体素子は、横型二重拡散MOSトランジスタであることを特徴とする請求項からまでのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記基準電圧は、500[V]であり、
前記膜厚は、11[μm]から19[μm]までの範囲内で決められた値であり、
記比抵抗値は、2[Ω・cm]から13[Ω・cm]までの範囲内で決められた値である
ことを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及びこの製造方法において半導体素子が形成される半導体層に設定する比抵抗値を決定する処理を支援する開発支援システムに関し、特に、高耐圧用の半導体素子を含む半導体装置の製造方法及び開発支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
SOI(Silicon On Insulator)ウェハは、シリコン(Si)支持基板と、Si支持基板上の埋め込み酸化膜(BOX層)と、BOX層上のSi薄膜(SOI層)とから構成される。SOIウェハを用いて半導体素子を形成する際には、隣り合う半導体素子間に素子分離構造としてのトレンチを形成することで、完全素子分離が可能になる。素子分離構造により、破壊電圧が比較的高電圧である高耐圧用の半導体素子と破壊電圧が比較的低電圧である低電圧動作用の半導体素子とを、同じチップに混載することができる。
【0003】
近年、SOIウェハを用いて形成される半導体素子(例えば、横型MOSトランジスタ)のさらなる高耐圧化が求められている(例えば、特許文献1参照)。高耐圧化のための方法として、SOI層の厚膜化及び半導体素子のドリフト長の延長が考えられる。SOI層を厚くすると、空乏層をSi支持基板側に拡げて深くできるので、半導体素子の耐圧を向上させることができる。また、ドリフト長を延長すると、空乏層が横方向に拡がって伸びるので、半導体素子の耐圧を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−334184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、SOI層の厚膜化(すなわち、SOI層の厚み方向における半導体素子のサイズの拡大)は、SOIウェハのコストの上昇を招く。また、半導体素子のドリフト長の延長(すなわち、SOI層に平行な方向における半導体素子のサイズの拡大)は、SOIウェハ1枚から製造できる半導体チップの数(取れ数)を減少させ、半導体チップ1個当たりの製品コストを上昇させる。このように、従来の方法では、半導体素子のサイズを拡大させずに高耐圧化を図ることが難しいという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、半導体素子のサイズを拡大しなくても高耐圧化を図ることができる半導体装置の製造方法及びこの製造方法において半導体素子が形成される半導体層に設定する比抵抗値を決定する処理を支援する開発支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法は、半導体素子が形成される半導体層である素子形成層の膜厚及び比抵抗値を決定する工程と、基板上に、前記決定された膜厚及び比抵抗値を持つ半導体層を形成する工程と、前記半導体層に、ソース領域及びドレイン領域を含む半導体素子を形成する工程とを有し、前記膜厚及び前記比抵抗値を決定する前記工程は、前記半導体層の膜厚をパラメータとし、複数の膜厚のそれぞれについて、前記半導体層の比抵抗値に対する前記半導体素子の破壊電圧を算出する処理と、x軸に前記比抵抗値を示し、y軸に前記算出された破壊電圧を示す第1の2次元座標系に、極大値を有する複数の特性曲線を表す処理と、前記第1の2次元座標系において前記複数の特性曲線が所定の基準電圧以上となる範囲に対応する高耐圧領域を、x軸に前記比抵抗値を示し、y軸に前記膜厚を示す第2の2次元座標系に表す処理とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体素子のサイズを拡大せずに高耐圧化を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1及び2に係る半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置の一例の構成を示す概略断面図である。
図2】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法の工程を示す概略断面図(その1)である。
図3】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法の工程を示す概略断面図(その2)である。
図4】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法の工程を示す概略断面図(その3)である。
図5】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法の工程を示す概略断面図(その4)である。
図6】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法の工程を示す概略断面図(その5)である。
図7】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法の工程を示す概略断面図(その6)である。
図8】実施の形態2において、半導体層の膜厚をパラメータとし、半導体層の比抵抗値に対する半導体素子の破壊電圧を算出して得られた複数の特性曲線を、x軸に抵抗値を示し、y軸に破壊電圧を示す第1の2次元座標系に表す図である。
図9】(a)は半導体層の比抵抗値が低い比較例の電界強度集中領域を示す図であり、(b)は半導体層の比抵抗値が適切である実施の形態2の電界強度集中領域を示す図であり、(c)は半導体層の比抵抗値が高い他の比較例の電界強度集中領域を示す図である。
図10】実施の形態2において、図8に示す第1の2次元座標系において複数の特性曲線が所定の基準電圧以上となる範囲に対応する高耐圧領域を、x軸に比抵抗値を示し、y軸に膜厚を示す第2の2次元座標系に表す図である。
図11】本発明の実施の形態1及び3に係る半導体装置の構成を示す概略断面図である。
図12】本発明の実施の形態4に係る開発支援システムの構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図13】本発明の実施の形態4の係る開発支援システムの構成の他の例を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《1》実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置の一例の構成を示す概略断面図である。図1に示される半導体装置は、基板と、この基板上に形成された第1の半導体層(素子形成層)6と、この第1の半導体層(素子形成層)6に形成された、ソース領域及びドレイン領域を含む半導体素子10とを有している。基板は、例えば、SOIウェハ5の一部を構成する支持基板である半導体基板(Si支持基板)1と埋め込み酸化膜(BOX層)2とから構成される。第1の半導体層(素子形成層)6は、例えば、SOIウェハ5のシリコン単結晶層(SOI層)3と、SOI層3上に形成されたエピタキシャル層4とから構成される。半導体素子は、例えば、横型二重拡散MOSトランジスタである。ただし、本発明が適用される半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置の構成は、図1の例に限定されない。
【0012】
本願の発明者は、半導体装置の素子形成層(例えば、第1の半導体層(素子形成層)6に対応)に形成される半導体素子の高耐圧化の研究において、素子形成層の膜厚、すなわち、SOI層(例えば、SOI層3に対応)及びエピタキシャル層(例えば、エピタキシャル層4に対応)の膜厚と、素子形成層に形成される半導体素子の破壊電圧BVsd[V]と、素子形成層(すなわち、SOI層3及びエピタキシャル層4から構成される層)の比抵抗値Rs[Ω・cm]との関係を新たに見出した。破壊電圧BVsd[V]は、半導体素子の耐圧性能を示す指標であって、半導体素子を正常に動作できない状態にするソース領域及びドレイン領域間の印加電圧である。具体的に言えば、本願の発明者は、素子形成層(例えば、第1の半導体層(素子形成層)6に対応)が所定の膜厚(例えば、11[μm]、15[μm]、19[μm])であるときの、素子形成層の比抵抗値に対する破壊電圧BVsdの関係は、比抵抗値Rsの増加に伴い破壊電圧BVsdが増加する第1の範囲(破壊電圧BVsdが極大値になる点の比抵抗値よりも比抵抗値が低い範囲)と、破壊電圧BVsdが極大値になる点と、比抵抗値Rsの増加に伴い破壊電圧BVsdが減少する第2の範囲(破壊電圧BVsdが極大値になる点の比抵抗値よりも比抵抗値が高い範囲)とを有することを見出した(後述する図8参照)。
【0013】
第1の範囲において極大値よりも低い破壊電圧BVsdを持つ理由は、破壊耐圧BVsdが極大値となるような素子形成層の不純物濃度に比べて、素子形成層の不純物濃度を高くすると、p型ウェル拡散領域42と半導体層との間の空乏層が十分に拡がらず、該空乏層に電界が集中して破壊電圧BVsdに達するからである(後述の図9(a)の領域51参照)。
【0014】
第2の範囲において極大値よりも低い破壊電圧BVsdを持つ理由は、破壊耐圧BVsdが極大値となるような素子形成層の不純物濃度に比べて、素子形成層の不純物濃度を低くすると、p型ウェル拡散領域42と半導体層との間の空乏層が拡がりやすく、該空乏層がドレイン領域より先にBOX層に達するなどして局所的な電界の集中が生じ、電界が集中する箇所における電界が破壊電圧BVsdに達するからである(後述の図9(c)の領域53参照)。
【0015】
本願の発明者は、ある1つの素子形成層の膜厚に対し、比抵抗値が第1の範囲にある場合と第2の範囲にある場合とでは、半導体素子が絶縁破壊に至るメカニズムが異なる点に着目し、第1の範囲と第2の範囲の境界に破壊電圧BVsdの極大値があることを見出し、さらに、コンピュータにより、予めシミュレーション等を行ない、素子形成層の比抵抗値を最適化することで(例えば、極大値の近傍の範囲内のいずれかの値とすることで)、SOI層の厚膜化及び/又はドリフト長の延長によらずに、素子形成層の電界分布を適切な分布として(後述の図9(b)の領域52参照)、半導体装置の耐圧特性を向上させることができることを見出した。
【0016】
実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の一例は、例えば、
支持基板1と、所定の第1の比抵抗値が設定されて支持基板1上に形成された第1の半導体層(素子形成層)6とを備えて構成される第1の基板(5及び4)を準備する工程と、第1の半導体層6に半導体素子10を形成する工程とを備えている。
前記第1の比抵抗値は、ある半導体層の所定の膜厚における比抵抗値によって決定される前記半導体層の耐圧に関する情報であって比抵抗値の推移に応じて複数備えられた情報を用いて、半導体層の耐圧の極大値(例えば、図8参照)に対応する比抵抗値よりも低い値であって、且つ半導体層の耐圧が所望の耐圧条件を満たすような値に、設定されたものである。
なお、第1の基板(5及び4)は、支持基板1と第1の半導体層(素子形成層)6との間に絶縁層2が形成された基板であってもよい。
また、半導体素子10を形成する工程中に、不純物によって第1の半導体層(素子形成層)6の第1の比抵抗値を調整又は設定する処理を行ってもよい。
また、第1の比抵抗値を、決定した比抵抗値に設定する処理は、ウェハプロセスで実行される場合もあるが、一般には、比抵抗値の指示を受けたウェハメーカーにおいて、ウェハ形成時に実行される。
【0017】
実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の他の例は、
半導体素子10が形成される第1の半導体層(素子形成層)6の第1の比抵抗値を決定する工程Aと、
基板(すなわち、支持基板1とBOX層2)上に、決定された第1の比抵抗値を持つ半導体層を形成する工程Bと、
工程Aで形成された第1の比抵抗値の第1の半導体層(素子形成層)6に、ソース領域及びドレイン領域を含む半導体素子(例えば、MOSトランジスタ)を形成する工程Cとを有する。
【0018】
工程Aにおける半導体層の第1の比抵抗値の決定に際しては、例えば、コンピュータが、ある半導体層の比抵抗値に対する半導体素子の破壊電圧BVsdを算出する処理A1を実行する。
そして、半導体層の膜厚及び比抵抗値の決定に際しては、
x軸に比抵抗値を示し、y軸に算出された破壊電圧BVsdを示す第1の2次元座標系に、極大値を有する少なくとも1つの特性曲線を表す処理A2と(後述する図8参照)、
第1の2次元座標系において特性曲線が所定の基準電圧(例えば、500[V])以上となる範囲に対応する高耐圧領域を、x軸に比抵抗値を示し、y軸に膜厚を示す第2の2次元座標系に表す処理A3と(後述する図10参照)、
第2の2次元座標系に示される高耐圧領域内から膜厚及び比抵抗値を選択する処理A4とを実行する。
【0019】
処理A1は、例えば、コンピュータによって実行される。処理A2〜A4は、例えば、ユーザによって行われる。なお、処理A1〜A4のすべてを、コンピュータによって自動的に行うことも可能である。
【0020】
基板(すなわち、支持基板1とBOX層2)は、例えば、SOIウェハ5の支持半導体基板(支持基板1)と埋め込み酸化膜(BOX層2)とから構成され、第1の半導体層(素子形成層)6は、SOIウェハ5のシリコン単結晶層(SOI層3)と、このシリコン単結晶層上に形成されたエピタキシャル層4とから構成される(後述の実施の形態2参照)。また、第1の半導体層(素子形成層)6の比抵抗値は、第1の半導体層6の不純物濃度によって設定され、一般には、不純物濃度が高くなるほど、比抵抗値は低くなる。
【0021】
また、基板は、SOSウェハのサファイア基板から構成され、第1の半導体層6は、SOSウェハのシリコン単結晶層と、該シリコン単結晶層上に形成されたエピタキシャル層とから構成されてもよい(後述の実施の形態3参照)。
【0022】
また、実施の形態1に係る半導体装置は、例えば、基板(すなわち、支持基板1とBOX層2)と、この基板上に形成された半導体層である素子形成層と、この半導体層に形成された、ソース領域及びドレイン領域を含む半導体素子とを有する。半導体層の膜厚及び比抵抗値は、
半導体層の膜厚をパラメータとし、複数の膜厚のそれぞれについて、半導体層の比抵抗値に対する半導体素子の破壊電圧BVsdを算出する処理A1、
x軸に比抵抗値を示し、y軸に前記算出された破壊電圧BVsdを示す第1の2次元座標系に、極大値を有する複数の特性曲線を表す処理A2、
第1の2次元座標系において複数の特性曲線が所定の基準電圧以上となる範囲に対応する高耐圧領域を、x軸に比抵抗値を示し、y軸に膜厚を示す第2の2次元座標系に表す処理A3、及び
高耐圧領域内から膜厚及び比抵抗値を選択する処理A4によって決められる。処理A4は、例えば、高耐圧領域の中心位置の値とすることができるが、これに限定されない。
【0023】
実施の形態1に係る半導体装置の製造方法及び半導体装置によれば、半導体素子のサイズを拡大せずに、エピタキシャル層の最適な膜厚及び比抵抗値を選択することによって、高耐圧化を図ることができる。
【0024】
《2》実施の形態2
《2−1》実施の形態2の構成
実施の形態2においては、半導体素子が横型二重拡散MOSトランジスタである場合を説明する。先ず、実施の形態2に係る半導体装置の構成を、図1を用いて説明する。図1には、SOI層3上にエピタキシャル(Epi)層4を形成したSOIウェハ5を用いて作製した高耐圧用半導体素子であるLDMOSトランジスタ(横型二重拡散MOSトランジスタ)10を含む半導体装置の縦断面構造を概略的に示す。
【0025】
図1に示されように、実施の形態1に係る半導体装置は、SOIウェハ5と、その上に形成されたエピタキシャル層4と、エピタキシャル層4中に形成された半導体素子であるLDMOSトランジスタ10とを有している。SOIウェハ5は、シリコン(Si)支持基板1と、支持基板1上の埋め込み酸化膜(BOX層)2と、BOX層2上のSi薄膜(SOI層)3とから構成される。SOI層3とエピタキシャル層4とは、第1の半導体層(素子形成層)6を構成する。
【0026】
LDMOSトランジスタ10は、エピタキシャル層4に、LOCOSフィールド酸化膜41と、p型ウェル拡散領域(p well)42と、nソース領域43と、pバックゲートコンタクト領域44と、nドレイン領域45とを有する。LOCOSフィールド酸化膜41上には、ゲート電極46が備えられている。
【0027】
実施の形態2に係る半導体装置の製造方法は、実施の形態1に係る製造方法に従い行われる。例えば、半導体素子が形成される第1の半導体層6である素子形成層の第1の比抵抗値を決定する工程Aと、決定された第1の比抵抗値を持つ第1の半導体層6を形成する工程Bと、工程Aで形成された第1の比抵抗値の第1の半導体層6に半導体素子10を形成する工程Cとを有する。
【0028】
そして、工程Aにおける第1の半導体層6の第1の比抵抗値の決定は、例えば、ある半導体層の比抵抗値に対する半導体素子の破壊電圧BVsdを算出する処理A1と、x軸に比抵抗値を示し、y軸に算出された破壊電圧BVsdを示す第1の2次元座標系に、極大値を有する複数の特性曲線を表す処理A2と(後述する図8参照)、第1の2次元座標系において複数の特性曲線が所定の基準電圧(例えば、500[V])以上となる範囲に対応する高耐圧領域を、x軸に比抵抗値を示し、y軸に膜厚を示す第2の2次元座標系に表す処理A3と(後述する図10参照)、第2の2次元座標系に示される高耐圧領域内から膜厚及び比抵抗値を選択する処理A4とによって行われる(後述する図10参照)。処理A1は、例えば、コンピュータによって実行される。処理A2〜A4は、ユーザが、行う。なお、処理A1〜A4のすべてを、コンピュータによって自動的に行うことも可能である。
【0029】
図2図7は、図1に示される半導体装置の製造方法の工程を示す概略断面図(その1〜6)である。半導体素子の形成に際しては、先ず、図2に示されるように、SOIウェハ5上にエピタキシャル層(例えば、Pエピタキシャル層)4を形成する。
【0030】
次に、エピタキシャル層4の表面にパッド酸化物層を形成し、アニーリングによりパッド酸化物層の一部を成長させて、図3に示されるようなLOCOSフィールド酸化膜41を形成し、不要なパッド酸化物層を、例えば、プラズマエッチングを利用して除去する。
【0031】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、図4に示されるように、ゲート電極46(例えば、ポリシリコン層)をゲート酸化物層及びLOCOSフィールド酸化膜41を覆って堆積する。
【0032】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて形成されたレジストの開口部を通してp型ウェル拡散領域(p well)42形成のために不純物をドープして、図5に示されるように、p型ウェル拡散領域42を形成する。
【0033】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて形成されたレジストの開口部を通して不純物をドープして、図6に示されるように、p型ウェル拡散領域42内にpバックゲートコンタクト領域44を形成する。
【0034】
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて形成されたレジストの開口部を通して不純物をドープして、図7に示されるように、p型ウェル拡散領域42内にnソース領域43を形成すると共に、nドレイン領域45を形成する。
【0035】
次に、pバックゲートコンタクト領域44及びnソース領域43に対してコンタクトするように、金属コンタクトを形成し、nドレイン領域45に対してコンタクトするように、金属コンタクトが形成される。なお、単一の金属コンタクトによってpバックゲートコンタクト領域44とnソース領域43とを一緒につなぐこともできる。
【0036】
《2−2》実施の形態2の特徴
図8は、実施の形態2において、半導体層6の膜厚(又はエピタキシャル層4の膜厚F6)をパラメータとし、半導体層の比抵抗値に対する半導体素子の破壊電圧BVsdを算出して得られた複数の特性曲線を、x軸に抵抗値を示し、y軸に破壊電圧BVsdを示す第1の2次元座標系に表す図である。図8には、エピタキシャル層4の膜厚が11[μm]、15[μm]、19[μm]の場合において、比抵抗値と半導体素子の破壊電圧BVsd[V]の変化を、コンピュータを用いたシミュレーションにより算出した結果のグラフを示す。なお、SOI層の膜厚は5[μm]であるから、半導体層6の膜厚では、16[μm]、20[μm]、24[μm]の場合を示している。図8から分かるように、いずれの膜厚の場合であっても、エピタキシャル層4の比抵抗値に対して半導体素子の破壊電圧BVsdの極大値が存在することが分かる。
【0037】
図9(a)は半導体層の比抵抗値が低い比較例の電界強度集中領域を示す図であり、同図(b)は半導体層の比抵抗値が適切である実施の形態2の電界強度集中領域を示す図であり、同図(c)は半導体層の比抵抗値が高い他の比較例の電界強度集中領域を示す図である。図9(a)〜(c)は、エピタキシャル層4の膜厚が15[μm]であり、エピタキシャル層4の比抵抗値が1[Ω・cm](比較例)、5[Ω・cm](実施の形態2)、20[Ω・cm](他の比較例)のそれぞれの場合の、破壊電圧BVsdにおける電界分布を示す。シミュレーション結果では、エピタキシャル層の膜厚が15[μm]の場合、比抵抗値が5[Ω・cm]のときに最も高い耐圧が得られた。
【0038】
これに対し、エピタキシャル層4の比抵抗値が低すぎる場合(例えば、1[Ω・cm])には、エピタキシャル層4の不純物濃度が高すぎるため、空乏層がドレイン領域まで拡がりきらず、ソース領域に電界が集中する。そして、臨界耐圧に達し、そこで素子の耐圧が決まってしまう(図9(a)の破線領域51参照)。
【0039】
また、エピタキシャル層4の比抵抗値が高すぎる場合(例えば、20[Ω・cm])には、エピタキシャル層4の不純物濃度が低すぎるため、空乏層が拡がりやすく、ドレイン領域より先にBOX層2に達してしまうため、SOI層3の膜厚で耐圧が決まってしまうことになる。
【0040】
このように、ある1つのエピタキシャル層の膜厚に対し、比抵抗値の条件によって、素子の破壊に至るメカニズムが異なるため、予めシミュレーション等を行ないエピタキシャル層4の比抵抗値を最適化することで、単にSOI層3の厚膜化や、ドリフト長Ldを延長することなく、所望の耐圧が得られる半導体素子を作ることができる。
【0041】
図10は、実施の形態2において、図8に示す第1の2次元座標系において複数の特性曲線が所定の基準電圧以上となる範囲に対応する高耐圧領域を、x軸に比抵抗値を示し、y軸に膜厚を示す第2の2次元座標系に表す図である。図8に示されるグラフをもとに、素子耐圧が、例えば、500[V]以上となるエピタキシャル層の膜厚と比抵抗値の組み合わせの範囲を図10のグラフにハッチング領域として示した。このグラフのハッチング領域の範囲内でエピタキシャル層の膜厚と比抵抗値の組み合わせを設定すれば、半導体素子の耐圧が500[V]以上得られる。
【0042】
《2−3》実施の形態2の効果
実施の形態2に係る半導体装置の製造方法及び半導体装置によれば、半導体素子のサイズを拡大せずに高耐圧化を図ることができる。
【0043】
《3》実施の形態3
図11は、本発明の実施の形態3に係る半導体装置の構成を示す概略断面図である。図11において、図1に示される構成要素と同一又は対応する構成要素には、同じ符号を付す。実施の形態2においては、SOIウェハ5(図1)を用いて高耐圧用の半導体素子を形成した場合を説明したが、実施の形態3においては、SOIウェハ5(図1)に代えて、サファイア基板11とその上に形成されたシリコン単結晶層13とから構成されるSOS(Silicon On Sapphire)ウェハ15を用いて高耐圧用の半導体素子を形成する。実施の形態3に係る半導体装置の製造方法においては、SOSウェハ15に、実施の形態2に係る半導体装置の製造方法と同様の製造方法により、半導体素子を形成することが可能である。また、SOSウェハ以外の絶縁膜を支持基板として、実施の形態2に係る半導体装置の製造方法と同様の製造方法により、半導体素子を形成することも可能である。実施の形態3に係る半導体装置の製造方法及び半導体装置によれば、半導体素子のサイズを拡大せずに高耐圧化を図ることができる。
【0044】
《4》実施の形態4
図12は、本発明の実施の形態4に係る開発支援システム50の構成の一例を概略的に示すブロック図である。図12又は図1に示されるように、開発支援システム50は、支持基板1と、支持基板1上に形成された第1の半導体層6とを備えて構成される第1の基板(5+4)における第1の半導体層6に設定する第1の比抵抗値を決定するためのシステムである。開発支援システム50は、記憶部51と、比抵抗決定部52とを有する。記憶部51は、ある半導体層の所定の膜厚における比抵抗値によって決定される半導体層の耐圧に関する情報を比抵抗値の推移に応じて複数保持することができる。比抵抗決定部52は、記憶部51に記憶されている複数の半導体層の耐圧に関する情報の中から、半導体層の耐圧の極大値に対応する比抵抗値よりも低い値であって、且つ半導体層の耐圧が所望の耐圧条件を満たすような比抵抗値を、第1の半導体層6に適用すべき第1の比抵抗値として決定することができる。開発支援システム50を用いることによって、実施の形態1から3に係る半導体装置の製造方法を容易に実施することができる。
【0045】
図13は、本発明の実施の形態4の係る開発支援システム60の構成の他の例を概略的に示すブロック図である。図13又は図1に示されるように、開発支援システム60は、支持基板1と、支持基板1上に形成された第1の半導体層6とを備えて構成される第1の基板(5+4)における第1の半導体層6に設定する第1の比抵抗値を決定するためのシステムである。開発支援システム60は、記憶部61と、画像データ生成部62とを有する。記憶部61は、ある半導体層の所定の膜厚における比抵抗値によって決定される半導体層の耐圧に関する情報を比抵抗値の推移に応じて複数保持することができる。画像データ生成部62は、記憶部61に記憶されている前記情報に基づいて、x軸に比抵抗値を示し、y軸に算出された耐圧を示した第1の2次元座標系を視覚的に認識可能とする画像データを生成することができる。開発支援システム60を用いることによって、実施の形態1から3に係る半導体装置の製造方法を容易に実施することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 支持基板、 2 埋め込み酸化膜(BOX層)、 3 SOI層、 4 エピタキシャル(Epi)層、 5 SOIウェハ、 6 半導体層(素子形成層)、 11 サファイア基板、 13 シリコン単結晶層、 15 SOSウェハ、 41 LOCOSフィールド酸化膜、 42 p型ウェル拡散領域(p well)、 43 nソース領域、 44 pバックゲートコンタクト領域、 45 nドレイン領域、 46 ゲート電極、 50,60 開発支援システム、 51,61 記憶部、 52 比抵抗決定部、 62 画像データ生成部、 Ld ドリフト長、 F6 エピタキシャル層の膜厚。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13