【実施例】
【0032】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0033】
<実施例1>
図1に示す結晶製造装置(オートクレーブ)を用いて、以下の手順にしたがって窒化物単結晶を成長させた。
白金を内張りした内寸が直径22mm、長さ293mmのオートクレーブ(容積約119ml)内の下部にアモノサーマル法で作製した外径2.00mmのGaN針状結晶を種結晶6として設置し、次いで、オートクレーブ内部にバッフル板5を設置し、バッフル板より上部に原料4としてHVPE法で作製した多結晶体GaNを38.6g入れた。次いでその上から鉱化剤として十分に乾燥した純度99.99%のNH
4Fを溶媒として用いるNH
3充填量に対し2.0mol%投入した。その後、素早くバルブが装着されたオートクレーブの蓋を閉じ、オートクレーブの計量を行った。次いで、オートクレーブに付属したバルブを介して導管を真空ポンプ部に通じるように操作し、バルブを開けてオートクレーブ内を真空脱気した。その後、真空状態を維持しながら、オートクレーブをドライアイス/メタノールによって冷却し、一旦バルブを閉じた。次いで、導管をバルブを介してNH
3ボンベに通じるように操作した後、再びバルブを開け、外気に触れることなくNH
3を連続してオートクレーブ内に充填した。流量を制御して、NH
3をオートクレーブ内に液体として充填した後、再びバルブを閉じた。オートクレーブの温度を室温に戻し、外表面を十分に乾燥させて充填したNH
3の増加分の計量を行った。
【0034】
続いて、オートクレーブを上下に2分割されたヒーターで構成された電気炉内に収納した。オートクレーブ内の下部2の結晶成長領域の温度が615℃に、上部1の原料溶解領域の温度が567℃になるように昇温し、その温度で96時間保持した。オートクレーブ内の圧力は50MPaであった。また、保持中の温度幅は±5℃以下に制御した。このときの、圧力[MPa]×鉱化剤濃度[mol/NH
3mol]は1.0である。その後、オートクレーブの下部外面の温度が50℃になるまで約9時間かけて降温した後、ヒーターによる加熱を止め、電気炉内で自然放冷した。オートクレーブの下部外面の温度がほぼ室温まで降下したことを確認した後、まずオートクレーブに付属したバルブを開放し、オートクレーブ内のNH
3を取り除いた。その後、オートクレーブを計量し、NH
3の排出を確認した。その後、一旦バルブを閉じ、真空ポンプに通ずるように導管を操作し、バルブを再び開放し、オートクレーブのNH
3をほぼ完全に除去した。その後、オートクレーブの蓋を開け、種結晶を取り出した。育成後の種結晶を観察したところ、針状の種結晶の口径が2.60mmになっていた。このときの外径の成長速度は150μm/dayであり、m軸の成長速度にすると75μm/dayである。
【0035】
<実施例2〜29>
鉱化剤濃度、上部温度、下部温度および圧力を表1に記載される条件に変更し、種結晶としてHVPE法で作製したC面を主面とするGaN結晶を加えたこと以外は、実施例1と同様に結晶成長を行った。なお、実施例13では、鉱化剤として十分に乾燥した純度99.99%のNH
4Iを溶媒として用いるNH
3充填量に対し0.5mol%投入した。+c軸方向(Ga面)および/またはm軸方向の成長速度を表1に示す。
【0036】
実施例3および実施例5で得られた結晶の室温でのPL測定を行ったところ、いずれの結晶についても364nm付近にバンド端発光が確認された。
また、実施例7で得られた結晶のSIMS分析を行ったところ、酸素濃度が10
18atoms/cc台であり、同じオートクレーブでヨウ化アンモニウムを鉱化剤として用いたときの1/100程度であることが確認された。また、フッ素濃度は7×10
15atoms/cc程度、Fe濃度は1×10
19atoms/cc、Ni濃度は10
15atoms/cc台であった。
また、実施例5では、結晶成長後、原料は全て溶解し、結晶成長領域の内壁面に大量に多結晶GaNが析出した。GaN多結晶塊の中から、C面種結晶上に成長したGaN単結晶を取り出し、観察したところ、Ga極性面の成長速度が752μm/dayであり、成長した結晶は単結晶であったが、反応容器に析出する多結晶に種結晶が埋もれてしまい、種結晶の多結晶塊への埋没や、成長過程での原料の枯渇などにより、途中で成長がストップしており、実際の成長速度はこれよりも速い。
なお、鉱化剤濃度を0.25mol%とし、圧力×鉱化剤濃度を0.34にした場合は成長速度が実施例1〜29よりもやや遅くなる傾向がうかがえた。
【0037】
<実施例30>
種結晶としてアモノサーマル法で作製した10mm×5mm×330μmのm面を主面とするGaN結晶を白金ワイヤーで固定したものを結晶成長領域に設置し、実施例1と同様に結晶成長を行った。結晶成長後、黄色味がかった透明な結晶が得られた。育成後の結晶を実体顕微鏡および蛍光顕微鏡にて観察したところ、m面成長表面の観察ではクラックが観察されなかった。厚み方向に1820μm成長しており、成長速度は両面合わせて455μm/dayであった。育成結晶の育成した結晶のX線ロッキングカーブの(100)回折の半値幅は142秒であり、良好な結果が得られた。
【0038】
<比較例1>
比較例1において、鉱化剤としてヨウ化アンモニウムを用いて以下の手順にしたがって結晶成長を行った。
実施例1と同様に
図1に示すオートクレーブを使用したが、溶媒であるアンモニアに対して正の溶解度特性を有する鉱化剤を用いることから、反応容器の上部を結晶成長領域とし、反応容器の下部を原料溶解領域として種結晶および原料を配置した。オートクレーブの下部にHVPE法で作製した多結晶体GaNを15.1g投入し、さらに鉱化剤として十分に乾燥した純度99.999%のNH
4IをNH
3充填量に対し1.5mol%投入した。た。次いで、オートクレーブ内部にバッフル板を設置し、バッフル板より上部にHVPE法で作製したGaNを種結晶として設置した。その後、素早くバルブが装着されたオートクレーブの蓋を閉じ、オートクレーブの計量を行った。次いで、オートクレーブに付属したバルブを介して導管を真空ポンプ部に通じるように操作し、バルブを開けてオートクレーブ内を真空脱気した。その後、真空状態を維持しながら、オートクレーブをドライアイス/メタノールによって冷却し、一旦バルブを閉じた。次いで、導管をバルブを介してNH
3ボンベに通じるように操作した後、再びバルブを開け、外気に触れることなくNH
3を連続してオートクレーブ内に充填した。流量を制御して、NH
3をオートクレーブ内に液体として充填した後、再びバルブを閉じた。オートクレーブの温度を室温に戻し、外表面を十分に乾燥させて充填したNH
3の増加分の計量を行った。
【0039】
続いて、オートクレーブを上下に2分割されたヒーターで構成された電気炉内に収納した。オートクレーブ内の結晶育成領域(上部)の温度が558℃に、下部の原料溶解領域の温度が616℃になるように昇温し、その温度96保持した。オートクレーブ内の圧力は83MPaであった。また、保持中の温度幅は±5℃以下に制御した。このときの、圧力[MPa]×鉱化剤濃度[mol/NH
3mol]は1.24である。その後、オートクレーブの下部外面の温度が50℃になるまで約9時間かけて降温した後、ヒーターによる加熱を止め、電気炉内で自然放冷した。オートクレーブの下部外面の温度がほぼ室温まで降下したことを確認した後、まずオートクレーブに付属したバルブを開放し、オートクレーブ内のNH
3を取り除いた。その後、オートクレーブを計量し、NH
3の排出を確認した。その後、一旦バルブを閉じ、真空ポンプに通ずるように導管を操作し、バルブを再び開放し、オートクレーブのNH
3をほぼ完全に除去した。
その後、オートクレーブの蓋を開け、種結晶を取り出した。育成後の種結晶を観察したところ、種結晶の重量は僅かに増えたものの、成長速度は+c軸方向(Ga面)、−c軸方向(N面)合わせて10.5μm/day程度であった。
【0040】
<比較例2>
鉱化剤をNH
4Clに変更し、鉱化剤濃度、上部温度、下部温度および圧力を表1に記載される条件に変更したこと以外は、比較例1と同様に結晶成長を行った。成長速度は+c軸方向(Ga面)、−c軸方向(N面)合わせて26.3μm/day程度であった。
【0041】
<比較例3>
内寸が直径30mm、長さ450mmのRENE41製オートクレーブ(内容積約345cm
3)を耐圧容器として用い、Pt−Ir製カプセルを反応容器として結晶成長を行った。カプセルへの充填作業は十分に乾燥した窒素雰囲気グローブボックス内にて行った。原料として多結晶GaN粒子50.98gを秤量し、カプセル上部領域(原料溶解領域)内に設置した。次に鉱化剤として十分に乾燥した純度99.999%のGaF
3を充填NH
3量に対してF濃度が1mol%となるよう秤量しカプセル内に投入した。
【0042】
さらに上部の原料溶解領域と下部の結晶成長領域の間に白金製のバッフル板を設置した。種結晶としてHVPE法により成長した六方晶系GaN単結晶のC面を主面とするウェハー(10mmx5mmx0.3mm)2枚とM面を主面とするウェハー(5mm×7.5mm×0.3mm)2枚、およびHVPE法によって自発核生成した粒子状結晶(約5mm×5mm×5mm)1個を用いた。種結晶の主面は粒子状結晶を除きchemical mechanical polishing(CMP)仕上げされており、表面粗さは原子間力顕微鏡による計測によりRmsが0.5nm以下であることを確認した。これら種結晶を直径0.2mmの白金ワイヤーにより白金製種結晶支持枠に吊るし、カプセル上部の結晶成長領域に設置した。
【0043】
つぎにカプセルの上部にPt−Ir製のキャップを溶接により接続したのち、重量を測定した。キャップ上部に付属したチューブにバルブを接続し、真空ポンプで真空脱気した。その後、真空状態を維持したままカプセルをドライアイスエタノール溶媒により冷却した。つづいて外気に触れることなくNH
3を充填した。流量制御に基づき、NH
3をカプセルの有効容積の約57%に相当する液体として充填(−33℃のNH
3密度で換算)した後、再びバルブを閉じた。NH
3充填前と充填後の重量の差から充填量を確認した。
【0044】
つづいてバルブが装着されたオートクレーブにカプセルを挿入した後に蓋を閉じ、オートクレーブの重量を計測した。次いでオートクレーブに付属したバルブを開けて真空脱気した。その後、真空状態を維持しながらオートクレーブ1をドライアイスエタノール溶媒によって冷却した。次いで、外気に触れることなくNH
3をオートクレーブに充填した。流量制御に基づき、NH
3をオートクレーブの有効容積(オートクレーブ容積−充填物容積)の約59%に相当する液体として充填(−33℃のNH
3密度で換算)した後、再びバルブを閉じた。オートクレーブ1の温度を室温に戻し、外表面を十分に乾燥させオートクレーブの重量を計測した。NH
3充填前の重量との差からNH
3の重量を算出し充填量を確認した。
【0045】
続いてオートクレーブを上下に2分割されたヒーターで構成された電気炉内に収納した。オートクレーブ外表面の結晶成長領域の温度が625℃、原料溶解領域の温度が595℃(平均温度610℃)になるよう9時間かけて昇温し、設定温度に達した後、その温度にて4.7日間保持した。オートクレーブ内の圧力は250MPaであった。また保持中のオートクレーブ外面制御温度のバラツキは±0.3℃以下であった。
【0046】
その後、オートクレーブの外面の温度が室温に戻るまで自然冷却し、オートクレーブに付属したバルブを開放し、オートクレーブ内のNH3を取り除いた。その後オートクレーブを計量しNH
3の排出を確認した後、オートクレーブの蓋を開け、カプセルを取り出した。カプセル上部に付属したチューブに穴を開けカプセル内部からNH
3を取り除いた。カプセル内部を確認したところ、C面、M面いずれの種結晶上にも全面に窒化ガリウム結晶が析出していた。成長速度はそれぞれの面方位により異なり、Ga面:100μm/day、N面:140μm/day、M面:150μm/day、A面:330μm/dayであった。
N面成長した結晶は、クレパス状の欠陥が目視で確認できた。また、M面について光学顕微鏡で確認したところ、多くのクラックが入っていることを確認した。
【0047】
【表1】
【0048】
(PL評価1)
PL測定は、光源にHe−Cdレーザー(波長325nm)をビーム強度38 W/cm2で試料に照射して、浜松ホトニクス社製分光器(型番:C5094)および浜松ホトニクス社製検出器(型番:BT−CCD PMA−50)で発光スペクトルを測定することにより行った。
実施例3と比較例1、2では、HVPE法で作製されたc面を主面とするGaN種結晶上に結晶成長した窒化ガリウム結晶のPL測定を行った。
比較例1、2の結果を
図2及び
図3に示す。なお、図
2では、PL強度を対数で表している。
実施例3、比較例1の結晶は364nm付近にバンド端発光ピークが観察されたが、鉱化剤に塩化アンモニウムを用いた比較例2はピークが観察されなかった。このことから、比較例2の結晶は実施例3、比較例1の結晶と比較して結晶性が良くないことがわかった。
比較例1のバンド端発光のピークエネルギーが3.387eVで、半値幅が155meVであった。
また、実施例3は比較例1と比較して、バンド端発光のピークエネルギーが大きく、半値幅が小さいことが分かる。一般に、バンド端のピークエネルギーが大きいほど、半値幅が小さいほど不純物が少ないといえることから、実施例3は比較例1に比べて不純物が少ない結晶であるといえる。
【0049】
図3には、実施例3、比較例1、比較例2のバンド端発光(NBE)とルミネッセンス波長が500〜600nmに観察されるイエローバンド発光(YB)の強度比(YB/NBE)を示した
(実施例3は図示せず)。比較例1のYB/NBEは
22.06、比較例2のYB/NBEはバンド端発光ピークが検出できず算出できなかった。一般に、イエローバンド発光は、Ga欠陥がある場合に観察されることから、YB/NBEの値が低い方が欠陥が少ない結晶であるといえる。このことから。フッ化アンモニウムを鉱化剤として成長した実施例3は、ヨウ化アンモニウムや塩化アンモニウムを鉱化剤に使用して成長した比較例1、比較例2よりも欠陥の少ない結晶が得られているといえる。
このことから、F含有鉱化剤を使用した場合には、I含有鉱化剤、Cl含有鉱化剤で成長するよりも、不純物の少なく欠陥も少ない高品質な結晶が得られることがわかった。
【0050】
(PL評価2)
実施例30と比較例3で板状の主面をm面とするシード上に窒化ガリウムを結晶成長したm面成長表面を、室温でPL測定を行った。測定法はPL評価1に記載の方法で行った。その結果を
図4及び
図5に示す。なお、図
4では、PL強度を対数で表している。
実施例30のバンド端発光のピークエネルギーが3.413eVで、半値幅が56meVであった。一方、比較例3のバンド端発光のピークエネルギーが3.407eVで、半値幅が63meVであった。実施例30は比較例3と比較して、バンド端発光のピークエネルギーが大きく、半値幅が小さいことが分かる。一般に、バンド端のピークエネルギーが大きいほど、半値幅が小さいほど不純物が少ないといえることから、実施例30は比較例3に比べて不純物が少ない結晶であるといえる。
また、
図4に示したスペクトルを比較すると、成長圧力を低圧とした実施例30の方がバンド端発光強度が高く、高純度であることを確認した。
【0051】
図5には、実施例30、比較例3のバンド端発光(NBE)とルミネッセンス波長が500〜600nmに観察されるイエローバンド発光(YB)の強度比(YB/NBE)を示した。実施例30のYB/NBEは0.74、比較例3のYB/NBEは20.39であった。一般に、イエローバンド発光は、Ga欠陥がある場合に観察されることから、
YB/NBEの値が低い方が欠陥が少ない結晶であるといえる。このことから。低圧成長した実施例30は、高圧成長した比較例3よりも欠陥の少ない結晶が得られているといえる。
このことから、F含有鉱化剤を使用した場合には、高圧で成長するよりも、低圧で成長した方が不純物の少なく、欠陥も少ない高品質な結晶が得られることがわかった。
【0052】
以上の結果から、フッ素を含有する鉱化剤を用いて、圧力を10〜200MPaにして結晶を成長させた実施例では、効率良く窒化物単結晶を成長させうることが確認された。これに対して、フッ素を含有する鉱化剤を用いずに結晶を成長させた比較例では、十分な成長速度を達成することができなかった。