特許第6193582号(P6193582)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6193582
(24)【登録日】2017年8月18日
(45)【発行日】2017年9月6日
(54)【発明の名称】調味液
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20170828BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20170828BHJP
   A23L 11/00 20160101ALN20170828BHJP
【FI】
   A23L27/00 D
   A23L29/20
   !A23L11/00 109Z
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-28282(P2013-28282)
(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公開番号】特開2014-155466(P2014-155466A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2016年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(73)【特許権者】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】花井 康充
(72)【発明者】
【氏名】山中 直人
【審査官】 野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−261216(JP,A)
【文献】 特開2011−193863(JP,A)
【文献】 特開2011−024484(JP,A)
【文献】 特開2003−169624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
納豆と混合して、調味納豆を得るための納豆用調味液であって、
粘度調整剤を含
20℃における粘度が800〜4000cpであり、
前記納豆に対する使用量が質量比(納豆:納豆用調味液)で、1:(0.5〜5)で用いられるものであり、
前記調味納豆は、食材と混合して使用されることを特徴とする納豆用調味液。
【請求項2】
20℃における粘度が1800〜3500cpであり、納豆に対する使用量が質量比(納豆:納豆用調味液)で、1:(1〜4)で用いられる請求項1に記載の納豆用調味液。
【請求項3】
固形分濃度が10〜50質量%である請求項1又は2に記載の納豆用調味液。
【請求項4】
前記粘度調整剤は、キサンタンガム、でんぷん、加工でんぷん、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タラガム、カラギーナン、ペクチン及びカルボキシメチルセルロースからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の納豆用調味液。
【請求項5】
前記粘度調整剤として、でんぷん又は加工でんぷんを含み、これらの含有割合の合計が、納豆用調味液全体を100質量%とした場合に、4.5質量%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の納豆用調味液。
【請求項6】
前記粘度調整剤として、キサンタンガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タラガム、カラギーナン、ペクチン又はカルボキシメチルセルロースを含み、これらの含有割合の合計が、納豆用調味液全体を100質量%とした場合に、1質量%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の納豆用調味液。
【請求項7】
油分を含有する請求項1乃至のうちのいずれか一項に記載の納豆用調味液。
【請求項8】
前記食材は、麺類及び豆腐から選ばれる少なくとも一種である請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の納豆用調味液。
【請求項9】
納豆と、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の納豆用調味液とを、
質量比(納豆:納豆用調味液)で、1:(0.5〜5)の割合で混合することを特徴とする調味納豆の製造方法。
【請求項10】
粘度調整剤を含む納豆用調味液の使用方法であって、
前記納豆用調味液は、20℃における粘度が800〜4000cpであり、
前記納豆用調味液の納豆に対する使用量が、質量比(納豆:納豆用調味液)で1:(0.5〜5)の範囲であることを特徴とする納豆用調味液の使用方法。
【請求項11】
納豆用調味液の20℃における粘度が1800〜3500cpであり、納豆に対する使用量が質量比(納豆:納豆用調味液)で、1:(1〜4)で使用する請求項10に記載の納豆用調味液の使用方法。
【請求項12】
粘度調整剤を含む納豆用調味液の使用方法であって、
前記納豆用調味液は、20℃における粘度が1800〜3500cpであり、
前記納豆用調味液の納豆に対する使用量が、質量比(納豆:納豆用調味液)で1:(1〜4)の範囲で納豆と混合して調味納豆を得て、
前記調味納豆を食材と混合して使用することを特徴とする納豆用調味液の使用方法。
【請求項13】
粘度調整剤を含む納豆用調味液を納豆に添加する納豆の風味向上方法であって、
前記納豆用調味液の20℃における粘度は、1800〜3500cpであり、
前記納豆用調味液を、納豆1質量部に対して、1〜4質量部添加することを特徴とする納豆の風味向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、納豆用の調味液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、納豆用の調味液としては、一般に市販されている納豆パックに同包されたカラシや納豆たれ等が知られている。更には、納豆に対して、味噌風味等の他の風味を付与することができる調味液が知られている(例えば、特許文献1を参照)。そして、これらの調味液は、通常、納豆に対して少量添加して使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−334018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、消費者の嗜好の変化等により、納豆の様々な調理方法が模索されており、種々の風味を納豆に付与することができる調味液の開発が望まれている。そこで、本出願人は、納豆に対する使用量が従来よりも大幅に多い調味液を検討した。その結果、調味液と納豆との混ぜ合わせが容易ではないとともに、納豆独特の糸引き感や風味が損なわれやすいという問題点を見つけた。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、納豆との混ぜ合わせが容易であり、納豆独特の糸引き感や風味を損なうことなく、納豆を調味することができる調味液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のとおりである。
[1]納豆と混合して、調味納豆を得るための納豆用調味液であって
粘度調整剤を含
20℃における粘度が800〜4000cpであり、
前記納豆に対する使用量が質量比(納豆:納豆用調味液)で、1:(0.5〜5)で用いられるものであり、
前記調味納豆は、食材と混合して使用されることを特徴とする納豆用調味液
[2]20℃における粘度が1800〜3500cpであり、納豆に対する使用量が質量比(納豆:納豆用調味液)で、1:(1〜4)で用いられる前記[1]に記載の納豆用調味液。
]固形分濃度が10〜50質量%である前記[1]又は[2]に記載の納豆用調味液。
]前記粘度調整剤は、キサンタンガム、でんぷん、加工でんぷん、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タラガム、カラギーナン、ペクチン及びカルボキシメチルセルロースからなる群より選ばれる少なくとも1種である前記[1]乃至[3]のいずれかに記載の納豆用調味液。
]前記粘度調整剤として、でんぷん又は加工でんぷんを含み、これらの含有割合の合計が、調味液全体を100質量%とした場合に、4.5質量%以下である前記[1]乃至[3]のいずれかに記載の納豆用調味液。
]前記粘度調整剤として、キサンタンガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タラガム、カラギーナン、ペクチン又はカルボキシメチルセルロースを含み、これらの含有割合の合計が、納豆用調味液全体を100質量%とした場合に、1質量%以下である前記[1]乃至[3]のいずれかに記載の納豆用調味液。
]油分を含有する前記[1]乃至[]のうちのいずれかに記載の納豆用調味液。
[8]前記食材は、麺類及び豆腐から選ばれる少なくとも一種である前記[1]乃至[7]のうちのいずれかに記載の納豆用調味液。
[9]納豆と、前記[1]乃至[8]のいずれかに記載の納豆用調味液とを、
質量比(納豆:納豆用調味液)で、1:(0.5〜5)の割合で混合することを特徴とする調味納豆の製造方法。
[10]粘度調整剤を含む納豆用調味液の使用方法であって、
前記納豆用調味液は、20℃における粘度が800〜4000cpであり、
前記納豆用調味液の納豆に対する使用量が、質量比(納豆:納豆用調味液)で1:(0.5〜5)の範囲であることを特徴とする納豆用調味液の使用方法。
[11]納豆用調味液の20℃における粘度が1800〜3500cpであり、納豆に対する使用量が質量比(納豆:納豆用調味液)で、1:(1〜4)で使用する前記[10]に記載の納豆用調味液の使用方法。
[12]粘度調整剤を含む納豆用調味液の使用方法であって、
前記納豆用調味液は、20℃における粘度が1800〜3500cpであり、
前記納豆用調味液の納豆に対する使用量が、質量比(納豆:納豆用調味液)で1:(1〜4)の範囲で納豆と混合して調味納豆を得て、
前記調味納豆を食材と混合して使用することを特徴とする納豆用調味液の使用方法。
[13]粘度調整剤を含む納豆用調味液を納豆に添加する納豆の風味向上方法であって、
前記納豆用調味液の20℃における粘度は、1800〜3500cpであり、
前記納豆用調味液を、納豆1質量部に対して、1〜4質量部添加することを特徴とする納豆の風味向上方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の納豆用調味液(以下、単に「調味液」ともいう。)は、粘度調整剤により特定の粘度範囲に調整されており、納豆に対して特定の割合で使用されるものであるため、納豆との混ぜ合わせが容易であり、納豆独特の糸引き感や風味を損なうことなく、納豆を調味することができる。
また、調味液の固形分濃度が特定範囲となっている場合には、納豆独特の糸引き感や風味を損なうことなく、様々な嗜好に応じて風味付けされた調味納豆を得ることができる。
更に、特定の粘度調整剤を、特定の含有割合で用いる場合には、納豆と混ぜ合わせた際に、納豆独特の糸引き感や風味を損なうことなく、調味液を所定粘度に調整することができる。
また、油分を含有している場合、納豆と混ぜ合わせて得られる調味納豆の風味等をより向上させることができる。
更に、納豆と混ぜ合わせて得られる調味納豆を、食材の調味料として用いる場合には、食材との混ぜ合わせが容易であり、食材にうまく絡ませることができるとともに、納豆独特の糸引き感や風味を損なうことなく、食材を美味しく調味することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の納豆用調味液は、納豆と混合して、調味納豆を得るための納豆用調味液であって、粘度調整剤を含、20℃における粘度が800〜4000cpであり、前記納豆に対する使用量が質量比(納豆:納豆用調味液)で、1:(0.5〜5)で用いられるものであり、前記調味納豆は、食材と混合して使用されることを特徴とする。
【0009】
本発明における調味液の粘度(20℃)は800〜4000cpであり、好ましくは1800〜3500cp、更に好ましくは2000〜3000cpである。この粘度が800cp未満である場合、納豆と混ぜ合わせた際に、納豆独特の糸引き感や風味が損なわれるおそれがある。一方、粘度が10000cpを超える場合、納豆との混ぜ合わせを容易に行うことができないおそれがある。
尚、この粘度は、B型粘度計等の粘度測定装置により測定することができる。
【0010】
本発明の調味液に含有される上記粘度調整剤は、食品に用いることができるものであれば特に限定されない。具体的には、例えば、キサンタンガム、でんぷん、加工でんぷん、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タラガム、カラギーナン、ペクチン及びカルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらのなかでも、入手し易く、粘度調整が容易であるという観点から、キサンタンガム、加工でんぷん、グアーガムが好ましい。
尚、粘度調整剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0011】
粘度調整剤の含有量は、調味液の粘度を上記範囲とすることができる限り特に限定されない。
特に、粘度調整剤として、でんぷん又は加工でんぷんを用いる場合には、これらの含有割合の合計が、調味液全体を100質量%とした場合に、4.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜4.5質量%、更に好ましくは1.5〜4質量%、特に好ましくは2〜3.5質量%である。これらの含有量が上記範囲内である場合には、納豆と混ぜ合わせた際に、納豆独特の糸引き感や風味を損なうことなく、調味液を所定粘度に調整することができる。
また、粘度調整剤として、キサンタンガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タラガム、カラギーナン、ペクチン又はカルボキシメチルセルロースを用いる場合には、これらの含有割合の合計が、調味液全体を100質量%とした場合に、1質量%以下であることが好ましく、より好ましは0.1〜1質量%、更に好ましくは0.2〜0.9質量%、特に好ましくは0.25〜0.8質量%である。これらの含有量が上記範囲内である場合には、納豆と混ぜ合わせた際に、納豆独特の糸引き感や風味を損なうことなく、調味液を所定粘度に調整することができる。
【0012】
本発明における調味液は、上記粘度調整剤以外にも、原材料として、油分を含有していてもよい。
上記油分は、食品に用いることができるものであれば特に限定されず、植物性であっても、動物性であってもよい。具体的には、例えば、菜種油、ごま油、大豆油等の植物性油脂や、牛脂、豚脂、鶏脂、魚油等の動物性油脂を挙げることができる。更に、この油分は、ビーフエキス、ポークエキス、チキンエキス等のエキス類に由来する油分(即ち、エキス類に含まれる油分)であってもよい。これらの油分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。尚、油分は、乳化されていてもよいし、乳化されていてなくてもよい。また、擬乳化と呼ばれる状態のものであってもよい。
【0013】
油分の含有量は、調味液の風味等を損なわない限り特に限定されず、適宜調整できる。具体的には、例えば、調味液全体を100質量%とした場合に、0.1〜3質量%(特に0.25〜2質量%、更には0.5〜1.5質量%)とすることができる。
【0014】
本発明における調味液は、上記油分以外にも、原材料として、調味料、具材及び添加剤等を含有していてもよい。具体的には、例えば、食塩、上白糖等の糖類、味噌、酢、みりん、醤油等の基本調味料、畜産物、農産物、水産物等から得られる天然調味料、畜産物、農産物、水産物等から得られる具材、水、アルコール、旨味調味料、甘味料、香辛料、品質改良剤、香料、保存料、安定剤、着色剤、乳化剤、酸化防止剤等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。尚、これらの原料の形態は特に限定されず、液体、ペースト状、粉末及び顆粒状等のいずれであってもよい。
【0015】
また、本発明における調味液の固形分濃度は、10〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは18〜48質量%、更に好ましくは20〜45質量%である。
この固形分濃度が上記範囲内である場合には、納豆独特の糸引き感や風味を損なうことなく、様々な嗜好に応じた調味納豆を得ることができる。
尚、ここでいう「固形分」とは、調味液中に含まれる成分のうち、水分を除いたものを示す。水分の測定法としては、例えば、減圧加熱乾燥法が挙げられる。この方法においては、一般に水銀柱5〜100mmの減圧度で、熱によって変化しやすい成分を含む調味液については60〜70℃、比較的安定な調味液については90〜100℃で加熱したときの乾燥減量を水分量とする。但し、調味液にアルコール、有機酸等の揮発性の高い成分が含まれる場合には、これらの成分の含有量を測定し、乾燥減量よりこれらの成分の含有量を減じた量を水分量とする。
【0016】
また、本発明の調味液は、調味液全体を100質量%とした場合に、たんぱく質の含有量が0〜8質量%(特に1〜6質量%、更には2〜5質量%)であるものとすることができる。
尚、たんぱく質の含有量は、ケルダール法(窒素係数;6.25)にて測定することができる。
【0017】
更に、本発明の調味液は、調味液全体を100質量%とした場合に、脂質の含有量が0〜15質量%(特に1〜12質量%、更には2〜10質量%)であるものとすることができる。
尚、脂質の含有量は、ソックスレー抽出法にて測定することができる。
【0018】
また、本発明の調味液は、調味液全体を100質量%とした場合に、灰分の含有量が1〜8質量%(特に2〜6質量%、更には3〜5質量%)であるものとすることができる。
尚、灰分の含有量は、直接灰化法にて測定することができる。
【0019】
更に、本発明の調味液は、調味液全体を100質量%とした場合に、炭水化物の含有量が0〜50質量%(特に5〜40質量%、更には10〜30質量%)であるものとすることができる。
尚、炭水化物の含有量は、調味液100質量%から、水分、たんぱく質、脂質及び灰分の各含有量の合計を減じることで算出できる。但し、水分量は、減圧加熱乾燥法にて測定することができる。
【0020】
また、本発明の調味液は、調味液全体を100質量%とした場合に、ナトリウムの含有量が0.5〜5質量%(特に0.5〜3質量%、更には1〜2質量%)であるものとすることができる。
尚、ナトリウムの含有量は、原子吸光光度法にて測定することができる。
【0021】
また、本発明の調味液は、納豆に対する使用量が質量比(納豆:調味液)で、1:(0.5〜5)である。特に、この質量比(納豆:調味液)は、1:(1〜4)であることが好ましく、より好ましくは1:(2〜4)である。この質量比が上記範囲を外れる場合には、納豆と混ぜ合わせた際に、納豆独特の糸引き感や風味が損なわれること等により、目的の調味納豆が得られないおそれがある。
【0022】
本発明の調味液は、上述のように、粘度調整剤により特定の粘度範囲に調整されており、納豆に対して特定の割合で使用されるものであるため、納豆との混ぜ合わせが容易であり、納豆独特の糸引き感や風味を損なうことなく、納豆を調味することができる。また、使用する原材料によって、種々の風味を納豆に対して付与することができる。
具体的には、納豆と調味液とを混ぜ合わせることにより、麻婆風味、ジャージャー麺風味、ミートソース風味、納豆パスタソース、肉じゃが風味等の調味納豆を得ることができる。この際、肉類を納豆で代替するような原材料の選択を行うことで、全体的な摂取カロリーを抑えることができる調味液とすることもできる。
【0023】
本発明の調味液は、納豆と調味液とを混合し、得られた調味納豆を、食材の調味料として用いるものとすることができる。この調味納豆は、食材との混ぜ合わせが容易であり、食材にうまく絡ませることができるとともに、納豆独特の糸引き感や風味を損なうことなく、食材を美味しく調味することができる。
上記食材としては、例えば、ご飯、麺類、豆腐、野菜・根菜類等が挙げられる。
【0024】
この際、調味納豆の食材に対する使用量は特に限定されないが、例えば、質量比(調味納豆:食材)で、1:(0.5〜3)とすることが好ましく、より好ましくは1:(0.8〜2.5)、更に好ましくは1:(1.2〜2.2)である。この質量比が上記範囲内である場合には、調味納豆と食材との混ぜ合わせが容易であり、食材にうまく絡ませることができるとともに、納豆独特の糸引き感や風味を損なうことなく、食材を美味しく調味することができる。
【0025】
本発明の調味液の製造方法は特に限定されない。例えば、混合槽を用いて原料を混合し、均一化することにより製造することができる。
原料を混合する際には、粘度調整剤を他の原料と同時に混合してもよいし、ダマになるのを防止するために、粘度調整剤を少量ずつ混合していってもよい。また、混合槽は複数用いることができ、原料を複数に分けて混合した後に、全体を混合してもよい。
この際、操作性向上の観点から、必要に応じて混合槽を加温することにより、油分や水への原料の溶解性を高めることができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]納豆用の調味液(ジャージャー麺風味)
(1−1)調味液の調製(実験例1〜16)
所定量の水に、キサンタンガム(粘度調整剤)を膨潤させた後、表1及び表2に示すように、他の原材料を加えて均一に混合した。その後、各原材料の含有割合が表1及び表2に示す値となるように、水を混合し、実験例1〜16の各調味液を調製した。
また、実験例6の調味液を分析したところ、水分:55.3質量%、たんぱく質:4.1質量%、脂質:8.3質量%、灰分:4.5質量%、炭水化物:27.8質量%、ナトリウム:1.59質量%であった。
【0027】
(1−2)調味液の粘度測定
B型粘度計(東機産業株式会社製、型番「BMII」)を用いて、20℃における各調味液の粘度を測定した。
【0028】
(1−3)評価
3名のパネラーに、表1及び表2に示す使用比率で各調味液と納豆(約45g)とを混ぜ合わせることにより、調味納豆を調製してもらい、下記の各評価を行った。
尚、比較例1としては、一般に市販されている納豆パックに同包された納豆たれ(株式会社ミツカン製、商品名「秘伝金印くめ納豆」)を使用した。
【0029】
(a)調味液と納豆との混ぜやすさ
調味液と納豆との混ぜやすさを下記の基準で評価し、結果を表1及び表2に示した。
「◎」;非常に混ぜやすい
「○」;混ぜやすい
「△」;やや混ぜやすい
「×」;混ぜにくい
【0030】
(b)調味納豆と食材との絡み
調味納豆と食材[麺(約200g)]とを、質量比(調味納豆:食材)で、1:1.4)となるように混ぜ合わせ、調味納豆と食材との絡みを下記の基準で評価し、結果を表1及び表2に示した。
「◎」;非常に絡みやすい
「○」;絡みやすい
「△」;やや絡みやすい
「×」;絡みにくい
【0031】
(c)喫食時の糸引き
上記(b)のように食材と絡めた調味納豆における糸引き感を下記の基準で評価し、結果を表1及び表2に示した。
「◎」;非常に好ましい
「○」;好ましい
「△」;やや好ましい
「×」;好ましくない
【0032】
(d)納豆の風味
上記(b)のように食材と絡めた調味納豆における納豆の風味を下記の基準で評価し、結果を表1及び表2に示した。
「◎」;非常に良い
「○」;良い
「△」;やや良い
「×」;悪い
【0033】
<総合評価>
上記(a)〜(d)の各評価結果を下記の基準で評価し、結果を表1及び表2に示した。
「◎」;非常に好ましい[上記(a)〜(d)の各評価結果が「◎」又は「○」であり、「◎」の数が3つ以上である]
「○」;好ましい[上記(a)〜(d)の各評価結果が「◎」又は「○」であり、「◎」の数が2つ以下である]
「△」;やや好ましい[上記(a)〜(d)の各評価結果に「△」があり、「×」がない]
「×」;好ましくない[上記(a)〜(d)の各評価結果に「×」がある。]
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
(1−4)評価結果
表1及び表2によれば、粘度調製剤としてキサンタンガムを含有しており、粘度が868〜3952cpであり、納豆に対する使用量が質量比(納豆:調味液)で1:(0.5〜5)である実験例2〜15では、全評価結果が「△」、「○」又は「◎」であった。特に、粘度が1864〜3404cpであり、納豆に対する使用量が質量比(納豆:調味液)で1:(1〜4)である実験例4〜8、11〜13及び15では、全評価結果が「○」又は「◎」であった。
以上のことから、粘度調整剤により特定の粘度範囲に調整されており、納豆に対して特定の割合で使用される調味液では、納豆との混ぜ合わせが容易であり、納豆独特の糸引き感や風味を損なうことなく、納豆を調味することができることが確認できた。また、得られた調味納豆は、食材との混ぜ合わせが容易であり、食材にうまく絡ませることができるとともに、納豆独特の糸引き感や風味を損なうことなく、食材を美味しく調味することが確認できた。
また、実験例15及び6の結果より、油分の含有により、納豆風味を向上させることができることが確認できた。
【0037】
[2]納豆用の調味液(麻婆風味)
(2−1)調味液の調製(実験例16〜19)
所定量の水に、キサンタンガム(粘度調整剤)を膨潤させた後、表3に示すように、他の原材料を加えて均一に混合した。その後、各原材料の含有割合が表3に示す値となるように、水を混合し、実験例16〜19の各調味液を調製した。
また、実験例19の調味液を分析したところ、水分:79.1質量%、たんぱく質:2.9質量%、脂質:2.8質量%、灰分:3.9質量%、炭水化物:11.3質量%、ナトリウム:1.56質量%であった。
【0038】
(2−2)調味液の粘度測定
B型粘度計(東機産業株式会社製、型番「BMII」)を用いて、20℃における各調味液の粘度を測定した。
【0039】
(2−3)評価
3名のパネラーに、表3に示す使用比率で各調味液と納豆(約50g)とを混ぜ合わせることにより、調味納豆を調製してもらい、下記の各評価を行った。
【0040】
(a)調味液と納豆との混ぜやすさ
調味液と納豆との混ぜやすさを下記の基準で評価し、結果を表3に示した。
「◎」;非常に混ぜやすい
「○」;混ぜやすい
「△」;やや混ぜやすい
「×」;混ぜにくい
【0041】
(b)調味納豆と食材との絡み
調味納豆と食材[豆腐(約400g)]とを、質量比(調味納豆:食材)で、1:2)となるように混ぜ合わせ、調味納豆と食材との絡みを下記の基準で評価し、結果を表3に示した。
「◎」;非常に絡みやすい
「○」;絡みやすい
「△」;やや絡みやすい
「×」;絡みにくい
【0042】
(c)喫食時の糸引き
上記(b)のように食材と絡めた調味納豆における糸引き感を下記の基準で評価し、結果を表3に示した。
「◎」;非常に好ましい
「○」;好ましい
「△」;やや好ましい
「×」;好ましくない
【0043】
(d)納豆の風味
上記(b)のように食材と絡めた調味納豆における納豆の風味を下記の基準で評価し、結果を表3に示した。
「◎」;非常に良い
「○」;良い
「△」;やや良い
「×」;悪い
【0044】
<総合評価>
上記(a)〜(d)の各評価結果を下記の基準で評価し、結果を表3に示した。
「◎」;非常に好ましい[上記(a)〜(d)の各評価結果が「◎」又は「○」であり、「◎」の数が3つ以上である]
「○」;好ましい[上記(a)〜(d)の各評価結果が「◎」又は「○」であり、「◎」の数が2つ以下である]
「△」;やや好ましい[上記(a)〜(d)の各評価結果に「△」があり、「×」がない]
「×」;好ましくない[上記(a)〜(d)の各評価結果に「×」がある。]
【0045】
【表3】
【0046】
(2−4)評価結果
表3によれば、粘度調製剤として、キサンタンガム、グアーガム及び加工でんぷんのうちの少なくとも1種を含有しており、粘度が1940〜2593cpであり、納豆に対する使用量が質量比(納豆:調味液)で、1:3である実験例16〜19では、全評価結果が「○」又は「◎」であった。
以上のことから、キサンタンガム以外の粘度調整剤により粘度が調整された調味液であっても、上述の実験例2〜15と同様に好ましい結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の調味液は、消費者の好みに味付けされた調味納豆を得ることができるため、納豆用の調味液の分野で幅広く利用することができる。