(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
マルトース生成αアミラーゼ及びαアミラーゼを含有するロールイン用油脂組成物であり、前記ロールイン用油脂組成物100g中に、125〜840Uのマルトース生成αアミラーゼ及び11〜115Uのαアミラーゼが添加されていることを特徴とするロールイン用油脂組成物。
前記ロールイン用油脂組成物中に、前記マルトース生成αアミラーゼ及びαアミラーゼが、酵素活性として、2:1〜15:1となる量で添加されていることを特徴とする請求項1に記載のロールイン用油脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0012】
[ロールイン用油脂組成物]
本発明のロールイン用油脂組成物は、マルトース生成αアミラーゼ及びαアミラーゼを含有し、該ロールイン用油脂組成物100g中に、125〜840Uのマルトース生成αアミラーゼ及び11〜115Uのαアミラーゼが添加されていることを特徴とするロールイン用油脂組成物である。以下、各成分について説明する。
【0013】
(マルトース生成αアミラーゼ)
本発明に使用するマルトース生成αアミラーゼは、アミロースとアミロペクチンのα−1,4グリコシド結合を非還元末端からマルトース単位で加水分解するエキソ型の酵素である。マルトース生成αアミラーゼとしては、酵素製剤を使用することもできる。マルトース生成αアミラーゼ酵素製剤1g中のマルトース生成αアミラーゼの酵素活性は、好ましくは2000〜12000U、より好ましくは3000〜7500U、さらに好ましくは3500〜5000Uである。市販のマルトース生成αアミラーゼ酵素製剤としては、例えば、ノボザイムジャパン(株)の商品名:NovamylL等を使用することができる。
【0014】
本発明のロールイン用油脂組成物100g中に添加されるマルトース生成αアミラーゼは、125〜840Uであり、150〜600Uであることが好ましく、175〜500Uであることがより好ましく、250〜400Uであることがさらに好ましい。例えば、市販されている一般的なマルトース生成αアミラーゼ製剤(力価:4000U/g)を用いる場合であれば、本発明のロールイン用油脂組成物100gに対して、マルトース生成αアミラーゼ製剤を0.031〜0.21g添加する。
前記マルトース生成αアミラーゼの添加量が上記範囲にあると、本発明の層状穀粉膨化食品が、ソフト感の優れたものになる。
【0015】
(αアミラーゼ)
本発明に使用するαアミラーゼは、アミロースとアミロペクチンをランダムに加水分解し、二糖類、三糖類、デキストリンを生成するエンド型の酵素である。αアミラーゼとしては、酵素製剤を使用することもできる。αアミラーゼ酵素製剤1g中のαアミラーゼの酵素活性は、好ましくは200〜3000U、より好ましくは500〜1500U、さらに好ましくは700〜900Uである。市販のαアミラーゼ酵素製剤としては、例えば、ナガセケムテックスジャパン(株)のスピターゼCP3及びスピターゼL、ノボザイムジャパン(株)のFungamyl800L、天野エンザイム(株)のクライスターゼL1等を使用することができる。
【0016】
本発明のロールイン用油脂組成物100g中に添加されるαアミラーゼは、11〜115Uであり、15〜100Uであることが好ましく、20〜90Uであることがより好ましく、20〜70Uであることがさらに好ましい。例えば、市販されている一般的なαアミラーゼ製剤(力価:800U/g)を用いる場合であれば、本発明のロールイン用油脂組成物100gに対して、αアミラーゼ製剤を0.014〜0.14g添加する。
前記αアミラーゼの添加量が上記範囲にあると、本発明の層状穀粉膨化食品が、ソフト感の優れたものになる。
【0017】
また、本発明のロールイン用油脂組成物100gに対するマルトース生成αアミラーゼとαアミラーゼの添加量は、酵素活性(マルトース生成αアミラーゼ活性:αアミラーゼ活性)として、2:1〜15:1となる量で添加することが好ましく、3:1〜13:1となる量で添加することがより好ましく、7:1〜13:1となる量で添加することがさらに好ましい。
前記マルトース生成αアミラーゼと該αアミラーゼの添加量が上記範囲にあると、本発明の層状穀粉膨化食品が、ソフト感のより優れたものになる。
【0018】
(油脂)
本発明のロールイン用油脂組成物は、油脂中に油脂A及び油脂Bを含有することができる。油脂Aは、該油脂Aを構成する全脂肪酸中に炭素数8〜14の脂肪酸を15〜45質量%、好ましくは20〜40質量%、更に好ましくは25〜35質量%含有し、炭素数16以上の脂肪酸を55〜85質量%、好ましくは60〜80質量%、更に好ましくは65〜75量%含有し、且つヨウ素価が0〜50、好ましくは10〜40、更に好ましくは15〜30であるエステル交換油脂である。なお、炭素数8〜14の脂肪酸と炭素数16以上の脂肪酸が上記を満たす範囲で、油脂Aを構成する脂肪酸には、その他の脂肪酸が含まれてもよい。
【0019】
前記油脂Aを構成する脂肪酸の組成及び含有量、並びに油脂Aのヨウ素価が上記範囲であると、得られるロールイン用油脂組成物は、適正な伸展性が得られるため作業性が良い。また、本発明のロールイン用油脂組成物を使用した層状穀粉膨化食品は、ボリューム感があり、また実際に食してみると、良好なソフト感を有する。
【0020】
前記油脂Aは、1種のエステル交換油脂を用いてもよいし、2種以上のエステル交換油脂の混合物を用いてもよい。また、エステル交換の方法に特に制限はなく、1種の油脂又は2種以上の混合油脂に、触媒としてナトリウムメトキシド等のアルカリ触媒、又はリパーゼ等の酵素を用いて反応させる方法が挙げられる。エステル交換は、位置特異的なエステル交換であっても、ランダムエステル交換であってもよいが、ランダムエステル交換が好ましい。
【0021】
また、前記油脂Aのエステル交換油脂の原料油脂は、ラウリン系油脂を30〜70質量%、好ましくは40〜60質量%、及びパーム系油脂を30〜70質量%、好ましくは40〜60質量%を含むことができる。
【0022】
さらに、前記油脂Aは、次の油脂A−1及び油脂A−2を含み、且つヨウ素価が10〜40であることが好ましい。具体的には、例えば、油脂A−1は、ラウリン系油脂とパーム系油脂とを含む混合物をエステル交換して得られた油脂で、且つヨウ素価が21〜50の油脂である。そして、油脂A−2は、ラウリン系油脂とパーム系油脂とを含む混合物をエステル交換して得られた油脂で、且つヨウ素価が0〜20の油脂である。
【0023】
ここで、ラウリン系油脂とは、該油脂の構成脂肪酸中におけるラウリン酸含有量が30質量%以上ものをいい、パーム核油や、ヤシ油及びこれらの分別油等が挙げられる。また、パーム系油脂とは、パーム油及びパーム油を原料に分別されてできる油脂であり、例えば、パームステアリン、パームハードステアリン、パームオレイン、パームスーパーオレイン、パーム油中融点画分等が挙げられる。
また、ヨウ素価は、水素添加により適宜調整することができる。なお、水素添加の方法は、特に制限はなく、例えば、ニッケル触媒の下、160〜200℃の条件にて行うことができる。さらに、エステル交換と水素添加の順序は逆であってもよく、例えば、ラウリン系油脂及び/又はパーム系油脂を水素添加した後に、エステル交換を行ってもよい。
【0024】
油脂Bは、該油脂Bを構成する全脂肪酸中に、炭素数16以上の脂肪酸を86質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上含有し、且つ該油脂Bを構成する全脂肪酸中に、飽和脂肪酸を20〜45質量%、好ましくは25〜45質量%、更に好ましくは30〜40質量%含有するエステル交換油脂である。
【0025】
前記油脂Bを構成する脂肪酸の組成及び含有量が上記範囲であると、該ロールイン用油脂組成物を使用した層状穀粉膨化食品は、ボリューム感があり、また実際に食してみると、良好なソフト感を有する。
【0026】
前記油脂Bとしては、1種のエステル交換油脂を用いてもよいし、2種以上のエステル交換油脂の混合物を用いてもよい。また、エステル交換の方法に特に制限はなく、1種の油脂、又は2種以上の混合油脂に触媒としてナトリウムメトキシド等のアルカリ触媒、又はリパーゼ等の酵素を用いて反応させる方法が挙げられる。エステル交換は、位置特異的なエステル交換であっても、ランダムエステル交換であってもよい。
【0027】
前記油脂Bは、具体的には、例えば、エステル交換油脂の原料油脂にパーム系油脂を含有し、且つ飽和脂肪酸中のパルミチン酸含量が70質量%以上である原料油を1,3位特異的エステル交換した油脂である。
【0028】
本発明のロールイン用油脂組成物における油脂Aと油脂Bの質量比は、油脂A:油脂Bが3:1〜1:1、好ましくは3:1〜1.5:1、更に好ましくは2.5:1〜1.5:1である。
【0029】
なお、前記油脂中の各構成脂肪酸含量の分析はガスクロマトグラフィー法、ヨウ素価は「社団法人 日本油化学会 基準油脂分析試験法2.3.4.−1996」の方法に準じて測定することができる。
【0030】
さらに、本発明のロールイン用油脂組成物は、油脂中に、油脂Aと油脂Bの他に液体油を配合することができる。ここで、液体油とは、常温(25℃)で流動性を有する油脂をいう。また、前記液体油は、5℃において流動性及び/又は透明性を有する植物性油脂が好ましい。前記液体油の植物性油脂としては、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、紅花油、ごま油、綿実油、米油、オリーブ油、落花生油、亜麻仁油、並びにそれら単独の油又は複数混合油の水素添加油、それら単独の油又は複数混合油のエステル交換油、及びそれら単独の油又は複数混合油の分別油等の加工油等が挙げられる。これらの中でも、入手の容易性及び価格の観点から、大豆油、菜種油、コーン油を用いることが好ましい。
【0031】
本発明のロールイン用油脂組成物は、油脂中に上記油脂Aと上記油脂Bを合わせて、50〜99質量%、好ましくは70〜99質量%、更に好ましくは75〜95質量%含有することができる。
また、本発明のロールイン用油脂組成物は、油脂中に上記液体油を、1〜50質量%、好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは5〜25質量%含有することができる。
【0032】
また、本発明のロールイン用油脂組成物は、本発明の特徴を損なわない限り、上記油脂A、油脂B、及び液体油以外の油脂も配合することができる。例えば、乳脂が挙げられる。
【0033】
なお、本発明のロールイン用油脂組成物中の油脂の含量は、40〜100質量%、好ましくは50〜98質量%、より好ましくは60〜95質量%である。
【0034】
本発明のロールイン用油脂組成物は、前記油脂以外のその他の成分を含有することができる。その他の成分としては、乳化剤、増粘安定剤、食塩、塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類や糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β‐カロテン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、卵及び各種卵加工品、香料、乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、ココアマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0035】
前記乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、縮合リシノレイン脂肪酸エステル、グリセリドエステル等の合成乳化剤や、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の合成乳化剤でない乳化剤が挙げられる。
【0036】
前記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等が挙げられる。
【0037】
本発明のロールイン用油脂組成物の形態は、油相及び水相を含む乳化油脂組成物と油相のみからなるショートニングが挙げられるが、好ましくは乳化油脂組成物である。乳化油脂組成物はマーガリンやファットスプレッドと呼ばれるものであり、その形態は、油中水型乳化物、水中油型乳化物、二重乳化型乳化物が挙げられるが、好ましくは油中水型乳化物である。また、該ロールイン用油脂組成物は、好ましくは可塑性を有する可塑性油脂組成物である。
【0038】
[ロールイン用油脂組成物の製造方法]
本発明のロールイン用油脂組成物の製造方法を説明する。本発明のロールイン用油脂組成物の製造方法は、アミラーゼを失活させない(酵素活性を下げない)ために、アミラーゼを添加する工程以降は、55℃以下の品温で製造することが好ましい。
具体的には、ショートニングを製造する場合は、先ず、上記油脂と、必要に応じて乳化剤等の油溶性原料とを加熱溶解する。次に前記加熱溶解した油脂組成物を55℃以下まで冷却した後、アミラーゼを添加する。また、マーガリンを製造する場合は、別途調製した水相(55℃以下)にアミラーゼを添加後、油相と55℃以下で混合乳化する。
【0039】
次に、冷却し、油脂を結晶化させる。好ましくは冷却可塑化する。冷却条件は、好ましくは−0.5℃/分以上、更に好ましくは−5℃/分以上とする。この際、徐冷却より急冷却の方が好ましい。
冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組合せが挙げられる。
【0040】
本発明のロールイン用油脂組成物は、その形状として、シート状、ブロック状、円柱状、直方体状等様々な形状とすることができる。その中でも、加工の容易性の観点から、シート状とすることが好ましい。
本発明のロールイン用油脂組成物をシート状とした場合の好ましい大きさは、その幅が50〜1000mm、その長さが50〜1000mm、その厚さが1〜50mmである。
【0041】
[層状穀粉膨化食品用生地]
本発明の層状穀粉膨化食品用生地は、クロワッサン、デニッシュ、パイ等に使用される生地として、公知の製造方法で得ることができる。具体的には、小麦粉、砂糖、練り込み用油脂、イースト、卵、水等を混合して調製した穀粉生地を薄く延ばし、同様に薄く延ばした本発明のロールイン用油脂組成物をのせて穀粉生地で包みこむ。次に、前記穀粉生地をさらに圧延し、折り畳む工程を2〜4回繰り返すことによって得られる。
【0042】
本発明の層状穀粉膨化食品用生地は、穀粉100gに対して本発明のロールイン用油脂組成物20〜60gが折り込まれたことを特徴とする。層状穀粉膨化食品用生地に折り込まれる本発明のロールイン用油脂組成物の量は、穀粉100gに対して、25〜60gであることが好ましく、25〜55gであることがより好ましく、30〜50gであることがさらに好ましい。
本発明のロールイン用油脂組成物の折り込み量が上記範囲にあると、本発明の層状穀粉膨化食品が、ボリューム感とソフト感の優れたものになる。
【0043】
また、本発明の層状穀粉膨化食品用生地は、本発明のロールイン用油脂組成物に由来するマルトース生成αアミラーゼの添加量が、穀粉100gに対して60〜420Uであることが好ましく、65〜350Uであることがより好ましく、100〜200Uであることがさらに好ましい。
そして、本発明のロールイン用油脂組成物に由来するαアミラーゼの添加量が、穀粉100gに対して5〜58Uであることが好ましく、5〜45Uであることがより好ましく、8〜35Uであることがさらに好ましい。
本発明の層状穀粉膨化食品用生地に添加される各種アミラーゼの添加量が上記範囲にあると、本発明の層状穀粉膨化食品が、ソフト感の優れたものになる。また、生地の成型時の作業性も優れたものになる。
【0044】
なお、本発明において、穀粉とは、穀物を挽いて粉状にしたものであり、通常、層状穀粉膨化食品用の生地に配合されるものであれば、特に制限なく使用することができる。また、穀粉の配合量も、通常、層状穀粉膨化食品用の生地に配合される範囲で特に制限なく配合することができる。穀粉の具体例としては、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉等)、大麦粉、米粉、とうもろこし粉、ライ麦粉、そば粉、大豆粉等が挙げられるが、好ましくは小麦粉を使用する。
【0045】
[層状穀粉膨化食品]
本発明の層状穀粉膨化食品は、本発明の層状穀粉膨化食品用生地を用いて、公知の製造条件及び製造方法により製造することができる。本発明の層状穀粉膨化食品の具体例としては、クロワッサン、デニッシュ、パイ等が挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
[油脂A−1の調製]
パーム核油(日清オイリオグループ(株)製造品、ラウリン酸含量46質量%)40質量部と、パーム油(日清オイリオグループ(株)製造品)60質量部を混合した混合油を、減圧下120℃に加熱することにより十分に乾燥させた後、前記混合油に対し、0.2質量%のナトリウムメチラートを添加し、減圧下、110℃で0.5時間撹拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、ナトリウムメチラートを水洗除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、油脂A−1を得た。得られた油脂A−1のヨウ素価は39であった。
【0048】
[油脂A−2の調製]
パームステアリン(日清オイリオグループ(株)製造品)50質量部と、パーム核オレイン(日清オイリオグループ(株)製造品、ラウリン酸含量41質量%)50質量部を混合した混合油を、減圧下120℃に加熱することにより十分に乾燥させた後、前記混合油に対し、0.2質量%のナトリウムメチラートを添加し、減圧下、110℃で0.5時間撹拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、ナトリウムメチラートを水洗除去し、脱色した後、ニッケル触媒を用いて160〜200℃にて水素添加を行い、ヨウ素価が2以下になったのを確認した後、温度を100℃以下に下げ、ニッケル触媒をろ過により除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、油脂A−2を得た。得られた油脂A−2のヨウ素価は0.3であった。
【0049】
[油脂Bの調製]
パーム油(日清オイリオグループ(株)製造品)65質量部と、菜種油(商品名:日清菜種サラダ油、日清オイリオグループ(株)製)35質量部を混合し、前記混合油に対し、1.2質量%の1,3位特異性リパーゼ(商品名:リポザイムTLIM、ノボザイムズ社製)を添加した後、40℃で20時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。反応終了後、リパーゼをろ過によって除去し、常法の精製方法に従って、脱色、脱臭処理して、油脂Bを得た。なお、反応前の混合油の飽和脂肪酸中のパルミチン酸含量は、85質量%であった。
【0050】
[液体油]
液体油は、菜種油(商品名:日清菜種サラダ油、日清オイリオグループ(株)製)を使用した。
【0051】
[マルトース生成αアミラーゼ]
マルトース生成αアミラーゼは、マルトース生成αアミラーゼ酵素製剤(商品名:NovamylL(酵素活性:4108U/酵素製剤g)、ノボザイムズジャパン(株)製
)を使用した。
【0052】
[αアミラーゼ]
αアミラーゼは、αアミラーゼ酵素製剤(商品名:Fungamyl800L(酵素活性:880U/酵素製剤g)、ノボザイムズジャパン(株)製)を使用した。
【0053】
[測定方法]
本願実施例における、ロールイン用油脂組成物の油脂中の各構成脂肪酸含量は、ガスクロマトグラフィー法、また、ヨウ素価は「社団法人 日本油化学会 基準油脂分析試験法2.3.4.−1996」に準じて測定した。
【0054】
[ロールイン用油脂組成物の調製−1]
はじめに、以下の表1に示す配合で各油脂を溶解混合して、配合例1及び2の油脂を調製した。続いて、以下の表2及び3に示す配合でロールイン用油脂組成物を調製した。すなわち、各配合例の油脂、レシチン、乳化剤を混合することで油相を調製した。次に、水、アミラーゼ製剤、食塩を混合することで水相を調製し、調製した油相と水相を混合して予備乳化を行った。得られた予備乳化物を、コンビネーターを用いて急冷可塑化した後、レスティングチューブを通してシート状に成型することで、厚さ10mmのロールイン用油脂組成物を得た。なお、前記調製において、アミラーゼを添加する工程以降は、55℃以下の品温でロールイン用油脂組成物を調製した。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
次に、実施例1〜4及び比較例1、2のロールイン用油脂組成物を用いて、下記の配合と製法でデニッシュを製造した。そして、デニッシュの製造における穀粉生地製造時の作業性、及びロールイン時の作業性、並びに焼成したデニッシュのボリューム感(生地浮き)、及びソフト感を下記評価基準により比較評価した。結果を以下の表6に示した。
【0059】
[デニッシュの製造−1]
下記の表4及び5の配合で穀粉生地を製造(捏上げ温度:24℃)し、得られた穀粉生地にシート状に成型した各種のロールイン用油脂組成物をのせ(生地1925gに対してロールイン用油脂組成物500g)、常法に従い、ロールイン用油脂組成物を生地に3回折り込んで、層状穀粉膨化食品用生地を製造した。層状穀粉膨化食品用生地を一辺9cmの正方形に切断した後、焼成してデニッシュを製造した。なお、実施例1〜4のロールイン用油脂組成物を使用したデニッシュを実施例5〜8、比較例1及び2のロールイン用油脂組成物を使用したデニッシュを比較例4及び5とした。
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
[穀粉生地製造時の作業性の評価基準]
○:生地ダレが起きず、良好
△:若干の生地ダレが起こり、やや不良
×:生地ダレが起こり、不良
【0063】
[ロールイン時の作業性の評価基準]
○:ロールイン用油脂組成物と穀粉生地が均一に伸び、良好
△:ロールイン用油脂組成物に若干のひび割れが起こり、やや不良であるか、又は、穀粉生地が軟化して均一に伸びにくく、やや不良
×:ロールイン用油脂組成物にひび割れが起こり、不良であるか、又は、穀粉生地が軟化しすぎて均一に伸びず、不良
【0064】
[ボリューム感(生地浮き)の評価基準]
○:大きい
△:やや小さい
×:小さい
【0065】
[ソフト感の評価基準]
◎:ソフトであり、くちゃつきもなく、良好
○:◎よりも若干劣るが、良好
△:やや硬い、又はソフト過ぎて若干くちゃつき、やや不良
×:硬い、又はソフト過ぎてくちゃつき、不良
【0066】
[総合評価]
上記の4種類の評価結果(穀粉生地製造時の作業性、ロールイン時の作業性、ボリューム感、及びソフト感)に基づき、各デニッシュについて総合評価を行った。
◎:ソフト感が◎であり、且つ、その他の評価結果が○以上である
○:ソフト感が○であり、且つ、その他の評価結果が×を含まず、△が1つ以下である
×:評価結果のいずれかが×である、又は、△が2つ以上ある
【0067】
【表6】
【0068】
[ロールイン用油脂組成物の調製−2]
上記の配合例1の油脂を使用し、以下の表7に示す配合で、上記の“ロールイン用油脂組成物の調製−1”に記載の方法と同様に製造して、アミラーゼ製剤を添加しないロールイン用油脂組成物(比較例6)を得た。
【0069】
【表7】
【0070】
[デニッシュの製造−2]
下記の表8の配合で穀粉生地を調製し、得られた穀粉生地にシート状に成型したアミラーゼを含有しない比較例6のロールイン用油脂組成物をのせ、上記の“デニッシュの製造−1”に記載の方法と同様にデニッシュ(比較例7)を製造した。
そして、上記の実施例5〜8及び比較例4、5と同様に、デニッシュの製造における穀粉生地製造時の作業性、及びロールイン時の作業性、並びに焼成したデニッシュのボリューム感(生地浮き)、及びソフト感を比較評価した。結果を以下の表11に示した。
【0071】
【表8】
【0072】
[アミラーゼ添加マーガリンの調製]
表4で使用したマーガリン(商品名:日清ロイヤルシャープ180、日清オイリオグループ(株)製)200gを40℃に加温し、表2で使用したマルトース生成αアミラーゼを0.83g、及びαアミラーゼを0.52g添加し、撹拌して各種アミラーゼを均一に分散させた後、室温まで放冷して、アミラーゼ添加マーガリンを調製した。
【0073】
[デニッシュの製造−3]
下記の表9の配合で穀粉生地を調製し、得られた穀粉生地にシート状に成型したアミラーゼを含有しない比較例6のロールイン用油脂組成物をのせ、上記の“デニッシュの製造−1”に記載の方法と同様にデニッシュ(比較例8)を製造した。
そして、上記の実施例5〜8及び比較例4、5と同様に、デニッシュの製造における穀粉生地製造時の作業性、及びロールイン時の作業性、並びに焼成したデニッシュのボリューム感(生地浮き)、及びソフト感を比較評価した。結果を以下の表11に示した。
【0074】
【表9】
【0075】
[デニッシュの製造−4]
下記の表10の配合で穀粉生地を調製し、得られた穀粉生地にシート状に成型した実施例2のロールイン用油脂組成物をのせ、上記の“デニッシュの製造−1”に記載の方法と同様にデニッシュ(実施例9及び10)を製造した。
そして、上記の実施例5〜8及び比較例4、5と同様に、デニッシュの製造における穀粉生地製造時の作業性、及びロールイン時の作業性、並びに焼成したデニッシュのボリューム感(生地浮き)、及びソフト感を比較評価した。結果を以下の表11に示した。
【0076】
【表10】
【0077】
【表11】
【0078】
表6及び表11に示すように、本発明のロールイン用油脂組成物(実施例1〜4)を使用して、層状穀粉膨化食品用生地を調製し、製造したデニッシュ(実施例5〜10)は、ボリューム感とソフト感に優れるものであった。また、前記ロールイン用油脂組成物のロールイン時の作業性も良好で、生地の成形時に生地ダレを起こさないものであった。
また、表11に示すように、本発明のロールイン用油脂組成物を使用せずに、マルトース生成αアミラーゼ及びαアミラーゼを、穀粉生地に直接添加した場合(比較例7)や、練り込み用マーガリンに添加した場合(比較例8)は、デニッシュ生地の成形時に生地ダレを起こした。