(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記対物系(52;152;252;352;452)は、少なくとも1つの瞳面(60;160;360;460)を備えることを特徴とする請求項1に記載の照明システム。
前記ビーム偏向要素は、少なくとも1つのビーム偏向要素が、前記ビーム偏向アレイの両端の間で走査方向に平行に延びるいずれかの任意の線上で照明されるように千鳥方式で配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の照明システム。
前記対物系(152)は、前記対物面(50)上の法線及び前記像平面(54)上の法線の両方に対して傾いている光軸(OA)を有することを特徴とする請求項10に記載の照明システム。
【背景技術】
【0002】
マイクロリソグラフィ(フォトリソグラフィ又は単にリソグラフィとも呼ばれる)は、集積回路、液晶ディスプレイ、及び他の微細構造デバイスの加工のための技術である。より具体的には、マイクロリソグラフィ処理は、エッチング処理と併せて、基板、例えば、シリコンウェーハ上に形成された薄膜スタック内に特徴部をパターン形成するのに用いられる。加工の各層において、最初にウェーハが、深紫外(DUV)光のような放射線に敏感な材料であるフォトレジストで被覆される。次に、その上にフォトレジストを有するウェーハが、投影露光装置内で投影光に露光される。この装置は、フォトレジストがマスクパターンによって判断されるある一定の位置においてのみ露光されるように、パターンを含むマスクをフォトレジスト上に投影する。露光後にフォトレジストが現像され、マスクパターンに対応する像が生成される。次に、エッチング処理が、このパターンをウェーハ上の薄膜スタック内に転写する。最後に、フォトレジストが除去される。異なるマスクを用いたこの処理の繰返しは、多層微細構造構成要素をもたらす。
【0003】
一般的に、投影露光装置は、マスクを照明するための照明システム、マスクを整列させるためのマスク台、投影対物系、及びフォトレジストで被覆したウェーハを整列させるためのウェーハ整列台を含む。照明システムは、例えば、細長い矩形スリットの形状を有することができる視野をマスク上に照明する。
現在の投影露光装置では、2つの異なる種類の装置の間で区別することができる。1つの種類では、ウェーハ上の各ターゲット部分は、マスクパターン全体をターゲット部分上に1回で露光させることによって照射され、そのような装置は、一般的に、ウェーハステッパと呼ばれる。一般的に、逐次走査装置又はスキャナと呼ばれる他方の種類の装置では、各ターゲット部分は、所定の基準方向に投影ビーム下でマスクパターンを漸次的に走査し、それと同時にこの方向に対して平行又は非平行に基板テーブルを同期して走査することによって照射される。ウェーハの速度とマスクの速度の比は、通常は1よりも小さく、例えば、1:4である投影対物系の倍率に等しい。
【0004】
「マスク」(又はレチクル)という用語は、広義にパターン形成手段と解釈されるものとすることは理解されるものとする。一般的に、用いられるマスクは、透過又は反射パターンを含み、例えば、バイナリ、交互位相シフト、減衰位相シフト、又は様々な混成マスク型のものとすることができる。しかし、能動的マスク、例えば、プログラマブルミラーアレイとして実現されるマスクも存在する。そのようなデバイスの例は、粘弾性制御層及び反射面を有するマトリックスアドレス可能表面である。そのようなミラーアレイに関するより多くの情報は、例えば、US5、296、891、US5、523、193、US6、285、488B1、US6、515、257B1、及びWO2005/096098A2から拾い集めることができる。US5、229、872に説明されているように、プログラマブルLCDアレイを能動的マスクとして用いることができる。簡略化のために、本明細書の残りの部分は、特にマスク及びマスク台を含む装置に関連する場合もあるが、そのような装置において解説する一般的な原理は、上述のパターン形成手段という広義の関連で捉えるべきである。
【0005】
微細構造デバイスを製造するための技術が進歩すると、照明システムに対しても絶えず高まる要求が存在する。理想的には、照明システムは、マスク上の照明視野の各点を適切に定められた放射照度及び角度分布を有する投影光で照明する。角度分布という用語は、マスク平面内の特定の点に向けて収束する光束の全光エネルギが、光束を構成する光線が伝播する様々な方向の間で如何に配分されるかを表している。マスク平面内の角度分布は、多くの場合に単純に照明設定と呼ばれる。
【0006】
通常、マスク上に入射する投影光の角度分布は、フォトレジスト上に投影されるパターンの種類に適応される。例えば、比較的大きいサイズの特徴部は、小さいサイズの特徴部とは異なる角度分布を必要とする場合がある。投影光の最も一般的に用いられる角度分布は、従来照明設定、環状照明設定、双極照明設定、及び四重極照明設定と呼ばれる。これらの用語は、照明システムの瞳面内の放射照度分布を意味する。環状照明設定では、例えば、瞳面内の環状領域のみが照明される。従って、投影光の角度分布において小さい角度範囲しか存在せず、すなわち、全ての光線は、マスク上に類似の角度で傾斜して入射する。
【0007】
望ましい照明設定を得るために、マスク平面内の投影光の角度分布を修正する異なる手段が当業技術で公知である。最も単純な場合には、1つ又はそれよりも多くの開口を含む開口絞り(ダイヤフラム)が、照明システムの瞳面内に位置決めされる。瞳面内の位置は、マスク平面のようなフーリエ関係にある視野平面内の角度へと変換されるので、瞳面内の開口のサイズ、形状、及び位置は、マスク平面内の角度分布を決める。しかし、照明設定のいかなる変更も、絞りの交換を必要とする。それによって若干異なるサイズ、形状、又は位置の開口を有する非常に多数の絞りが必要になるので、照明設定を最終的に調節することが困難になる。この点とは別に、そのような絞りは大量の光を吸収する。この吸収により、投影露光装置全体の処理機能が低下する。
【0008】
従って、多くの一般的な照明システムは、瞳面の照明を連続的に変更することを少なくともある一定の程度まで可能にする調節可能な要素を含む。従来、ズーム対物系及び1対のアキシコン要素を含むズームアキシコンシステムが上述の目的に用いられる。アキシコン要素は、片側に円錐表面を有し、通常は反対側が平面である屈折レンズである。一方が凸の円錐表面を有し、他方が補完的な凹の円錐表面を有する1対のそのような要素を設けることにより、光エネルギを半径方向にシフトさせることができる。このシフトは、アキシコン要素間の距離の関数である。ズーム対物系は、瞳面内の照明区域のサイズを変更することを可能にする。
【0009】
しかし、そのようなズームアキシコンシステムを用いては、従来照明設定及び環状照明設定を生成することしかできない。他の照明設定、例えば、双極又は四重極照明設定に対しては、付加的な絞り又は光学ラスター要素が必要である。光学ラスター要素は、その表面上の各点において、遠視野におけるある一定の照明区域に対応する角度分布を生成する。多くの場合に、そのような光学ラスター要素は、回折光学要素、特にコンピュータ生成ホログラム(CGH)として実現される。そのような要素を瞳面の前方に、任意的に、これらの間の付加的な集光レンズと共に位置決めすることにより、瞳面内にほぼあらゆる任意の強度分布を生成することができる。光学ラスター要素によって瞳面内に生成される照明分布をある限られた程度まで変更するのに、付加的なズームアキシコンシステムを用いることができる。
【0010】
しかし、ズームアキシコンシステムでは、照明設定の調節可能性は限られている。例えば、四重極照明設定の4つの極のうちの1つだけを任意の方向に沿って変位させることはできない。この目的のためには、瞳面内のこの特定の強度分布に向けて特別に設計された別の光学ラスター要素を用いなければならない。そのような光学ラスター要素の設計、製造、及び輸送は、時間を消費する高価な工程であり、従って、瞳面内の光強度分布を投影露光装置のオペレータの要求に適応させる柔軟性に乏しい。
【0011】
マスク平面内で異なる角度分布を生成する柔軟性を高めるために、瞳面を照明するミラーアレイを用いることが提案されている。
EP1、262、836Alでは、そのようなミラーアレイは、1000個を超える微細ミラーを含むマイクロ電気機械システム(MEMS)として実現されている。ミラーの各々は、互いに対して垂直な2つの異なる平面内で傾斜させることができる。すなわち、そのようなミラーデバイス上に入射する放射線を半球の(実質的に)あらゆる望ましい方向へと反射することができる。ミラーアレイと瞳面の間に配置された集光レンズは、ミラーによって生成される反射角を瞳面内の位置へと変換する。ビーム均一化に向けて石英ロッドのような光結合器が用いられる。この公知の照明システムは、瞳面を各々が1つの特定の微細ミラーに関連付けられ、これらのミラーを傾斜させることによって瞳面にわたって自由に移動させることができる複数の円形スポットで照明することを可能にする。
類似の照明システムは、US2006/0087634A1、及びUS7、061、582B2のような他の特許文献から公知である。
【0012】
WO2005/026843A2は、ミラーアレイと照明システムの瞳面の間のビーム経路内に回折光学要素が配置された照明システムを開示している。回折光学要素は、ミラーアレイのミラーによって生成される角度分布上に重ね合わせされた付加的な角度分布を生成する。この場合、瞳面内の強度分布は、ミラーアレイによって生成される強度分布と、回折光学要素によって生成される強度分布との畳み込みとして説明することができる。ミラーアレイとマスクの間には、フライアイレンズ又は石英ロッドのような光結合器が配置される。光結合器は、マスクの均一な照明を保証し、また、照明視野の幾何学形状を少なくとも近似的に形成する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
1.投影露光装置の一般的な構造
図1は、集積回路及び他の微細構造構成要素の製造に用いられる投影露光装置10の概略斜視図である。投影露光装置は、投影光の発生のための光源と、投影光を注意深く定められた特性を有する投影光束へと変換する照明光学器械とを収容する照明システム12を含む。投影光束は、微細構造18を収容するマスク16上の視野14を照明する。この実施形態では、照明視野14は、ほぼリングセグメントの形状を有する。しかし、他の例えば矩形の照明視野14の形状も考えている。
【0027】
投影対物系20は、照明視野14内の構造18を基板24上に付加された感光層22、例えば、フォトレジスト上に結像する。シリコンウェーハによって形成することができる基板24は、感光層22の上面が投影対物系20の像平面に正確に位置するようにウェーハ台(示していない)上に配置される。マスク16は、マスク台(示していない)を用いて投影対物系20の対物面内に位置決めされる。投影対物系20は、1よりも小さい倍率、例えば、1:4を有するので、照明視野14内の構造18の縮小像14’が感光層22上に形成される。
【0028】
2.照明システム
図2は、
図1に示している照明システム12の第1の実施形態を通じたより詳細な子午断面である。明瞭化のために、
図2の図は、かなり簡略化しており、正しい縮尺のものではない。これは、特に、異なる光学ユニットを非常に少数の光学要素によってのみ表していることを意味する。現実には、これらのユニットは、かなり多くのレンズ及び他の光学要素を含むことができる。
照明システム12は、ハウジング28、及び図示の実施形態ではエキシマレーザ30として実現された光源を含む。エキシマレーザ30は、約193nmの波長を有する投影光を発射する。他の種類の光源及び他の波長、例えば、248nm又は157nmも考えている。
【0029】
図示の実施形態では、エキシマレーザ30によって発射された投影光は、ビーム拡大ユニット32に入射し、このユニットにおいて、光束は、その幾何学的光学流束を変化させることなく拡大される。ビーム拡大ユニット32は、
図2に示しているように、いくつかのレンズを含むことができ、又はミラー配列として実現させることができる。投影光は、ビーム拡大ユニット32を通過した後に視野形成光学ラスター要素34上に入射する。
【0030】
視野形成光学ラスター要素34は、複数の2次光源を生成する光結合器として構成することができる。一般的に、そのような光結合器は、実質的に平行な光ビームによって照明された場合に明確な角度分布を生成する1つ又はそれよりも多くのマイクロレンズアレイを含む。光結合器が、円筒形マイクロレンズから成る少なくとも2つの直交アレイを含む場合には、マイクロレンズが延びる方向に沿って異なる角度分布を生成することができる。更なる詳細に対しては、本出願人に譲渡された国際特許出願PCT/EP2007/001267を参照されたい。
【0031】
代替的に、視野形成光学ラスター要素34は、回折光学要素(DOE)、例えば、コンピュータ生成ホログラム(CGH)として構成することができる。回折光学要素は、ほぼあらゆる任意の角度分布、及び従ってほぼあらゆる望ましい遠視野強度分布を発生させることができるという利点を有する。
一般的に、視野形成光学ラスター要素34は、幾何学的光学流束を増大させるあらゆる光学要素によって実施することができる。これは、より具体的には、この要素の任意の表面区域上に入射するあらゆる光束の発散を増大させるあらゆる光学要素が適切であることを意味する。
【0032】
視野形成光学ラスター要素34によって生成される角度分布は、遠視野において局所的に変化する強度分布へと変換される。遠視野では、光学ラスター要素によって生成される強度分布が観測される距離は、この要素内に含まれる構造の一般的な幅と比較して大きい。回折光学要素の場合には、遠視野強度分布は、回折光学要素内に含まれる回折構造の波面に対する影響を説明する複素関数のフーリエ変換に依存する。
【0033】
主に照明システム12の縦寸法を縮小するために、視野形成光学要素34の後方には集光レンズ36が配置される。簡略化のために、
図2には、集光レンズ36を単一のレンズとして示している。実際のシステムでは、単一のレンズではなく複数の個々のレンズを含むレンズシステムを用いることができる。集光レンズ36は、その前側焦点面が、視野形成光学要素34が配置された平面に対応するように配置される。
【0034】
集光レンズ36は、視野形成光学要素34から出射する発散光束を視野形成光学要素34によって判断される空間強度分布を有する実質的に平行なビーム38へと変換する。視野形成光学要素34によって導入される発散が、光軸OAに対して垂直な直交方向XとYとで異なる場合には、集光レンズ36から出射する平行ビーム38の断面は、矩形スリットの形状を有することができる。スリットのアスペクト比は、視野形成光学要素34によってX及びY方向に沿って生成される発散によって判断される。
【0035】
平行ビーム38は、図示の実施形態では、複数の矩形ミラー要素M
ijを含むミラーアレイ40上に入射する。ミラーアレイ40の斜視図である
図3は、ミラー要素M
ijが、隣接するミラー要素M
ijの間の幅狭な間隙だけによって遮蔽される矩形反射面を如何に形成するかを示している。各個々のミラー要素M
ijは、好ましくは互いに対して垂直に整列した2つの傾斜軸線によって互いに独立に傾斜することができる。
図3では、傾斜軸線を単一のミラー要素M
35に対して破線42、44によって示している。個々のミラー要素M
ijを傾斜させることにより、入射光線をミラー要素M
ijの傾斜範囲によって制限される方向範囲のあらゆる任意の方向に誘導することができる。
【0036】
ミラー要素M
ijのうちの一部の概略側面図である
図4は、平行ビーム38が、ミラー要素M
ijを傾斜させることによって様々な方向に誘導することができる複数の個々の部分ビームへとミラー要素M
ijによって如何に再分割されるかを示している。
2つの直交傾斜軸線42、44の回りに各個々のミラー要素M
ijを傾斜させるために、2つのアクチュエータ(示していない)が、各個々のミラー要素M
ijに接続される。アクチュエータは、アクチュエータに向けて適切な制御信号を発生させる制御ユニット46に接続される。従って、制御ユニット46は、ミラー要素M
ijの傾斜角を判断し、それによってミラー要素M
ijが入射光線を偏向する角度も判断される。制御ユニット46は、投影露光装置10の様々な作動を連係させる全体システム制御器48に接続される。
【0037】
ミラーアレイ40、又は厳密にはミラー要素M
ijの反射面は、
図2の概略図では2つのレンズ52a及び52bを含む対物系52の対物面50に又はその直近に配置される。下記に
図12を参照して解説することになるが、1つ又はそれよりも多くの中間像平面を有することができる対物系52は、対物面50と光学的に共役な像平面54を有する。像平面54は、露光処理中にマスク16が位置決めされるマスク平面に対応する。対物系52は、隣接する視野平面、この場合は、光学平面50及び像平面54とのフーリエ関係を有する少なくとも1つの瞳平面60を有する。
【0038】
ミラーアレイ40は、対物系52の対物面50に又はその直近に配置されるので、ミラー要素M
ijの像は、像平面54内のマスク16上に形成される。従って、ミラー要素M
ij上の各点と像平面54内の共役点との間に1対1の関係が存在する。
図2には、この共役性をそれぞれミラー要素M
ij上の2つの点62a、64aから出射し、像平面54内に位置する共役像点62b、64bに収束する僅かに発散する光束62、64によって例示している。
【0039】
物点62a、64aが位置するミラー要素は、異なる傾斜角を有するので、光束62、64は、異なる位置で瞳平面60と交差する。従って、マスク16上の像点62b、64bは、異なる角度分布で照明される。
図2に示している構成では、光束62、64は、像点62b、64bを反対方向から傾斜して照明する。
少なくとも、これらの物点が、平行ビーム38によって正確に同じ方式で照明される限り、特定のミラー要素M
ij上の全ての物点に対して同じ考えが相応に当て嵌まる。従って、特定のミラー要素M
ijから反射される全ての光は、同じスポットで瞳平面62と交差する。これはまた、所定の時点で特定のミラーの全ての像点における角度分布が実質的に同一であることを意味する。
【0040】
それにも関わらず、全てのミラー要素M
ijが等しい傾斜角を有する場合には、角度分布の僅かな偏差が認められる場合がある。この偏差は、平行ビーム38がミラーアレイ40を傾斜して照明し、従って、物点が正確に同じ方式では照明されないことに起因する。そのような偏差を回避するために、正確に同じ照明条件が全てのミラー要素M
ij上で成立するように、視野形成光学要素34を修正することができる。
【0041】
図2に示している構成では、ミラー要素M
ijから反射される全ての光束が、
図5の概略図に示しているように、瞳平面60内の同じ円形区域を通過するようにミラー要素M
ijが傾斜されると仮定している。以下で極P
1及びP
2と呼ぶこれら2つの区域は、Y方向に沿って、X−Z平面に関して鏡面対称に配置される。瞳平面のそのような照明は、特にX方向に沿って整列した結像構造に対して有効な双極照明設定を特徴付ける。極P
1、P
2の直径は、ミラーアレイ40上に入射するビーム38の残留発散によって判断される。この残留発散は、光源30及び視野形成光学要素34によって生成することができる。
【0042】
瞳平面60内で極P
1及びP
2のみを照明するためには、ミラー要素M
ijの各々又は少なくとも一部を制御ユニット46によって個々に制御すべきである。制御ユニット46は、各ミラー要素M
ijにおいて、平行ビーム38のうちのそれぞれのミラー要素M
ijに入射する部分が、瞳平面60内の極P
1、P
2を通過するように反射されることを保証する。通常、これは、全てのミラー要素M
ijが異なる傾斜角を有することを必要とすることになる。制御ユニット46は、特定の照明設定に対して全てのミラー要素M
ijに対する傾斜角が記憶されたルックアップテーブルを含むことができる。通常、照明設定の選択は、投影されるマスク16内に含まれる構造の特定の構成を考慮に入れ、システム制御器48において手動で実施される。
【0043】
しかし、所定の時点では、マスク16上の各特定の像点は、ミラーアレイ40のミラー要素M
ijのうちの1つの上の共役な物点から出射する光束によってのみ照明されることに注意すべきである。双極照明設定の場合には、これは、投影露光装置10の走査作動中の所定の時点において、マスク16上の各点が、極P
1を通過する光によって照明されるか、又は極P
2を通過する光によって照明されるかのいずれかであることを意味する。
【0044】
走査作動の結果として、マスク16は、走査方向Yに沿って照明視野を通じて移動される。従って、マスク16上の特定の点が通過する全ての物点からの照明視野内の寄与を積算することにより、マスク16上の特定の点の露光が得られる。例えば、マスク上の点が、走査作動の最初の半期を通じて一方の側(極P
1)から照明され、走査作動の残りの半期を通じて他方の側(極P
2)から照明される場合には、マスク上の特定の点が走査作動の完了の後に両側から対称に照明される双極照明が得られる。
【0045】
これを
図6に例示しており、この図は、その上半分に、反射光が極P
1を通過するようにミラー要素M
ijが傾斜されたミラーアレイ40の一部の行R
1、R
2、...を示している。
図6の左には、瞳平面60を略示している。
図6の下の部分では、反射光束が全て極P
2を通過するように、他の行R
iのミラー要素M
ijが傾斜されると仮定している。
ミラーアレイ40は、対物系52によってマスク16上に結像されるので、
図6に示している格子は、像平面54内でのミラーアレイ40の像を表すとも考えることができる。従って、走査作動中の特定の時点において、この格子の上側半分内に位置決めされたマスク16上の全ての点は一方の側(極P
1)から照明され、格子の残りの半分内に位置決めされた全ての点は反対側(極P
2)から照明される。マスク16上の点が照明視野を通じて、
図6に矢印70によって表している走査方向Yに沿って移動する場合には、この点は、最初は、極P
1を通過した光だけによって照明され、次に、極P
2を通過した光だけによって照明される。走査作動の完了の後には、左の「=」記号の下に示しているように、マスク16上の特定の点は、両方の側(極P
1及びP
2)から照明されている。
【0046】
本説明から、照明システム12が、走査作動の完了の後にマスク16上のあらゆる特定の点が受光することになる光の全強度だけでなく、全角度分布もほぼ連続的に変更することを可能にすることが明らかになる。例えば、マスクを反対側(極P
2)よりも一方の側(極P
1)から強く照明することが望ましい場合には、X方向に沿って延びるミラー要素M
ijの行R
iのうちの1つ又はそれよりも多くを反射光が瞳平面60を全く通過しないオフ状態へと簡単に切り換えることができる。代替的に、これらのミラー要素の傾斜角を反射光が極P
1を通過せず、極P
2を通過するように変更することができる。
【0047】
更に、マスク16上の異なる位置において異なる強度及び異なる角度分布を得ることさえ可能である。この場合、Y方向に沿って延びるミラー要素M
ijの列C
jは、ミラー要素M
ijのこの列C
jによって照明されるマスク上の全ての点において異なる全強度及び/又は異なる角度分布が得られるように制御ユニット46によって制御される。
例えば、この列の個々のミラー要素M
ijをオフ状態にすることができ、又は瞳平面60内の他の区域をこの列のミラー要素M
ijのうちの1つ又はそれよりも多くによって照明することができる。更に、この特定の列によって照明されるマスク16上の点が異なる角度分布を受けるように、特定の列C
j内に含まれるミラー要素の傾斜角を連続的又は急激に変更することを考えることさえ可能である。
【0048】
以上から、マスク16上で投影光のほぼあらゆる任意の角度分布を得ることができることも明らかになったはずである。
図7は、環状照明設定が達成されるようなミラー要素M
ijの構成を
図6と類似の表現で示している。より具体的には、ミラーアレイ40の各行R
iは、入射光を左手側にP
iによって示している瞳平面60内の特定の区域を通過するように反射する。部分的に重ね合わせることができる区域P
iは、
図7の左下コーナの「=」記号の下に示しているように、ほぼ環状のパターンP
aを形成するように組み合わされる。
【0049】
マスク16上の点が特定の列C
jのミラー要素によって連続して照明される場合には、その後、この点は、走査作動中にこの点に傾斜してではあるが異なる立体角から入射する投影光に露光されることになる。走査作動が完了した後には、上述の点は、
図7の左下部分に示している環状区域P
aに関連付けられた全ての方向からの投影光に露光されていることになる。
ここでもまた、角度分布は、ミラーアレイ40の個々のミラーM
ijを傾斜させることによって修正することができる。この点とは別に、上述の方式で1つ又はそれよりも多くの列C
jによって照明されるマスク上の点において環状照明設定を達成し、異なる列C
j’のミラー要素M
ijによって照明されるマスク上の他の点において異なる照明設定、例えば、双極又は四重極照明設定を達成することができる。
【0050】
マスク16上の異なる点を異なる角度分布で照明する可能性は、マスク16上の異なる構造の結像を改善するのに用いることができる。別の用途は、照明システム12の他の構成要素によって生成される角度分布の視野依存の外乱の補償である。後者の場合には、その目標は、マスク16上の全ての点に対して同じ角度分布を達成することであるが、ある一定の光学構成要素は、この均一性に対して悪影響を有する場合がある。
【0051】
3.代替的な実施形態
本発明の範囲に依然として収まる様々な代替的な実施形態が現時点で考えられることを十分に理解すべきである。
【0052】
3.1.Scheimpflug配列
図8は、
図2と類似の更に簡略化した表現で代替的な実施形態を示している。
図8では、
図2に示しているものに対応する構成要素を同じ参照番号に100を加算したもので表しており、これらの構成要素の大部分に対しては、再度詳細には説明しないことにする。
図8に図示の実施形態では、対物系152の対物面150と像平面154とは平行ではなく、互いに傾いている。傾いた対物面150の鮮明な像を像平面154上に形成するためには、対物系152は、その光軸OAが対物面150上の法線及び像平面154上の法線の両方に対してある角度を形成するように配列すべきである。
【0053】
そのような構成は、通常、Scheimpflug条件と呼ばれるものに従う。この条件は、対物面と
図8にH
oで示している対物系の物体主平面とが少なくとも近似的に直線に沿って交差することを必要とする。像側主平面H
iと像平面154に同じことが適用されるべきである。Scheimpflug条件が成立する場合には、傾いた対物面150は、像平面154上に鮮明に結像される。ミラーアレイ140の像は、像平面154内で歪曲されることになるが、この歪曲は、マスク16上に入射する光の強度又は角度分布のいずれに対しても悪影響を持たない。
Scheimpflug条件の充足は、ミラーアレイ40が配置される対物面50と集光レンズ36の光軸との間の角度が小さくなるという利点を有する。それによって平行ビーム38によるミラーアレイ40の照明の歪曲が低減する。
【0054】
3.2.ミラー要素間の間隙
ミラー要素M
ijが対物系52の対物面50内に正確に配置される場合には、ミラー要素M
ij間の不可避の間隙が、マスク16上に鮮明に結像されることになる。これを
図9の略子午断面に例示しており、この図は、それぞれミラー要素M
2及びM
3から反射され、マスク16上に入射する2つの光束B
2及びB
3を示している。
図9で明らかに分るように、隣接するミラー要素M
2、M
3の間の間隙が、マスク16上の72において結像される。間隙像の幅は、対物系52の倍率に依存する。
そのような間隙72が走査方向Yに対して垂直に延びる場合には、走査作動によって得られる積算効果に起因して、これらの間隙は殆ど心配しなくてよい。しかし、走査方向Yに対して平行に延びる間隙72(本明細書ではY間隙と呼ぶ)は、マスク16の不均一な照明を生じる場合があり、これは、最終的にウェーハ24上の望ましくない構造サイズへと転化することになる。
【0055】
この問題に対する1つの解決法は、Y間隙が走査方向Yに沿って整列せず、照明視野にわたってX方向に沿って幾分均等に配分されることを保証することである。
Y間隙がX方向に沿って均等に配分されない場合には、Y方向に沿って延びる他の補償対策なしには低い光エネルギしか受光しない複数のストライプが存在することになる。しかし、適切な補償対策の適用時には、上述したことにも関わらず、走査作動中の均一なエネルギ分布を達成することができる。そのような補償対策は、例えば、これらのストライプの間の残りの区域内の強度の低減を含むことができる。この目的のために、個々のミラー要素M
ijをオフ状態にすることができる。
【0056】
ストライプの間の残りの区域内の強度を低減する別の手法は、対物面50、像平面54、又は中間像平面に特別な視野絞りを配置することである。
図10は、アクチュエータ78を用いてY方向に沿って移動することができる複数の隣接するブレード76を含む適切な視野絞りデバイス74を略上面図に示している。ブレード76の短手縁部80は、Y方向に沿った照明視野のサイズを決める。これらの短手縁部80は、組み合わされて矩形スリットの2つの長手辺を形成する。短手縁部80が後退する位置では、これらの長手辺は、窪みを有する。対向するブレード76間の距離が大きいこれらの窪みは、Y間隙像が存在する位置に対応する。それは、望ましい補償を保証する。
【0057】
走査方向Yに沿って延びる暗いストライプを回避する別の手法は、対物面50を若干外してミラー要素M
ijを配置することである。この手法は、ミラー要素M
ijから反射される光束が少なくとも小さい発散を有するということを利用する。例えば、ミラー要素M
ijが対物面50の後方に配置された場合には、反射光は、完全に明るい対物面50から出射したかのように見える。ミラー要素M
ijが対物面50の前方に配置された場合には、発散光ビームは、対物面50内で重ね合わされ、それによって対物面50は完全に照明される。
ミラー要素M
ijが対物面50の前方に配置された場合を
図11に例示しており、この図は、2つのミラー要素M
1、M
2を断面で示している。簡略化のために、反射面821、822は、(少なくとも近似的に)距離A
minだけ対物系52の対物面50から分離した平面83に配置されると仮定する。2つの隣接するミラー要素M
1、M
2の間の間隙の幅をDで表している。
【0058】
図10では反射された発散光束を円錐84によって例示している。ミラー要素M
2において破線で示しているように、ミラー要素M
1、M
2が傾斜された場合には、反射光束84はその方向を変化するが、限られた最大傾斜角に起因して、開口角αを有する円錐又は立体角85内に依然として留まる。従って、ミラー表面822上の点86から出射する光線は、円錐85内のあらゆる線に沿って通過することができる。
【0059】
図10の中心には、それぞれミラー要素M
1及びM
2の隣接する縁部上の2つの点861、862に関連付けられた2つの円錐851、852を示している。平面83からの最短距離A
minのところでは、点861、862から出射する光線は、間隙の近くに対物面50の照明されない区域が存在しないように交差することができる。好ましくは、全ての傾斜角において対物面50が発散光束84によって完全に照明されることを保証するためには、対物面50とミラー表面821、822の平面83との間の距離Aは、A
minを超えなければならない。
【0060】
小さい円錐角αでは、最短距離A
minは、間隙の幅D及び角度αから次式によって判断することができる。
A
min>D/α
【0061】
一方、反射面821、822の平面83と対物面50の間の距離は、それ程大きくてはならない。ミラーアレイ40が対物面50から過度に分離して位置決めされた場合には、反射光束の方向は、マスク16上の望ましい角度分布へと正しく変換されない。
距離Aの有効な上限は、単一のミラー要素M
ijから出射する光束が対物面50内で交差しないところとすることができる。これを
図12に例示しており、この図は、幅Lの2つのミラー要素M
1’及びM
2’を示している。ミラー要素M
1’の両縁上の点821a’、821b’から出射する光束の開口角をδで表している。距離A
maxにおいて、光束884a’、884b’は交差する。距離A
maxは、幅L及び開口角δから次式によって判断される。
A
max<L/δ
【0062】
3.3視野絞り
図1から
図7に図示の実施形態では、マスク16上の照明視野14が、ほぼリングセグメントの形状を有すると仮定している。そのような幾何学形状は、例えば、適切な回折光学要素として構成される視野形成光学要素34によって得ることができる。しかし、遠視野内で鮮明な縁部を得ることは困難である。通常、照明視野14では、少なくとも走査方向Yに沿って延びる縁部が鮮明でなければならない。
【0063】
少なくとも走査方向Yに沿って鮮明な縁部を得るために、ミラーアレイ40のマスク16上に結像してはならない部分を覆う視野絞り要素94、96(
図2及び
図3を参照されたい)を用いることができる。また、走査方向Yに対して垂直に延びる縁部もマスク16上に鮮明に結像すべきである場合には、付加的な視野絞り要素を設けることができる。
図3には、そのような更に別の視野絞り要素を破線で示し、98で表している。また、
図10に示しているより複雑な視野絞りデバイス74を対物系52の対物面50内に位置決めすることができる。これは、
図11及び
図12を参照して上述したように、ミラーアレイ40が対物面50から距離Aのところに位置決めされた場合に特に有用である。
【0064】
図13は、本発明による照明システムの代替的な実施形態を
図2と類似の子午断面に示している。
図2に示しているものに対応する構成要素を同じ参照番号に300を加算したもので表しており、これらの構成要素の大部分に対しては再度説明しないことにする。
照明システム312では、対物系352は、視野絞り374が配置された中間像平面391を有する。視野絞り374は、
図10を参照して上述したように、調節可能な種類のものとすることができる。付加的な中間像平面391は、照明システム312内でより大きな視野絞りデバイスも設置するより大きな自由度をもたらす。
【0065】
3.4透過偏向要素
図14は、本発明による照明システムの別の代替的な実施形態を
図2と類似の子午断面に示している。
図2に示しているものに対応する構成要素を同じ参照番号に400を加算したもので表しており、これらの構成要素の大部分に対しては再度説明しないことにする。
照明システム412は、
図2に示している照明システム12から、主に2つの点において異なる。
【0066】
第1に、ミラーアレイ40が、複数の透過屈折要素T
ijを含む屈折アレイ440によって置換されている。これらの透過屈折要素T
ijは、例えば、電気光学又は音響光学要素として構成することができる。そのような要素では、適切な材料をそれぞれ超音波又は電界に露出することによって屈折率を変更することができる。これらの効果は、入射光を様々な方向に偏向する屈折率格子を生成するのに利用することができる。方向は、適切な制御信号に応答して変更することができる。
【0067】
3.4付加的な瞳形成要素
別の相違点は、視野形成光学要素434が、屈折アレイ440を直接照明せず、対物系499によって対物面450と光学的に共役である平面450’内に位置決めされた瞳形成光学要素493を通じて照明する。マイクロレンズアレイ又は回折光学要素のような光学ラスター要素として構成することができる瞳形成光学要素493は、対物系499によって屈折アレイ440上に結像される角度分布を生成する。その結果、屈折要素T
ijから出射する光線の方向は、個々の屈折要素T
ijによって生成される偏向角だけではなく、瞳形成要素493によって生成される角度分布にも依存する。瞳形成要素は、個々の屈折要素T
ijに関連付けられた区画を含むことができ、これらの区画は、異なる遠視野強度分布を生成する。これは、例えば、ある一定の透過要素T
ijに対して共通の又は異なる固定オフセット角を与えるのに用いることができる。そのようなオフセット角は、屈折要素T
ijの代わりにミラー要素が用いられる場合は特に有用なものとすることができる。
【0068】
対物系452の瞳平面460内の強度分布は、次に、瞳形成要素493によって生成される遠視野強度分布と、屈折アレイ440によって生成される遠視野強度分布との畳み込みとして説明することができる。
これを
図15に例示しており、この図は、その上の部分に瞳形成要素493によって生成された例示的遠視野強度分布D
PDEを示している。この場合、この遠視野強度分布が正六角形の形状を有すると仮定している。
図15の中央部分は、屈折アレイ440によって生成された例示的遠視野強度分布D
RAを示している。遠視野強度分布D
RAは、各々が単一の屈折要素T
ijによって生成された複数の個々の遠視野強度分布D
ijによって作られる。これらの個々の遠視野強度分布D
ijは、小さいスポットである。
【0069】
図15に記号CONVによって表しているこれら2つの遠視野強度分布D
PDEとD
RAとの畳み込みは、複数の六角形の分布D
PDEが点の分布D
RAに従って作られた遠視野強度分布D
totを生じる。この例示的な事例では、上述のことにより、瞳平面460内で照明される2つの反対極P
1’、P
2’を生じる。これらの六角形は、その間にいかなる間隙も残らないように作ることができるので、極P
1’、P
2’は、ほぼ連続的に照明される。屈折要素T
ijによって生成される偏向角を変更することにより、六角形の遠視野強度分布D
PDEを他の幾何学形状、例えば、異なる位置に配置されるか又は異なる全強度を有する異なる形状の極へと作ることができる。
【0070】
また、ミラーアレイとの関連でも、当然ながら付加的な瞳形成要素を用いることができる。この点とは別に、瞳形成要素は、別の視野平面に配置することができる。例えば、
図13に示す実施形態では、中間視野平面391は、この目的に理想的に適することになる。この点とは別に、瞳形成光学ラスター要素494と同じ効果を生成する回折構造を有する透過的な反射又は屈折要素を設けることができる。
【0071】
好ましい実施形態の以上の説明は、一例として与えたものである。与えた開示内容から、当業者は、本発明及びそれに伴う利点を理解するだけでなく、開示した構造及び方法に対する明らかな様々な変更及び修正も見出すであろう。従って、本出願人は、全てのそのような変更及び修正を特許請求の範囲及びその均等物によって定められる本発明の精神及び範囲に収まるものとして含めるように求めるものである。