【実施例】
【0025】
以下、本発明による銀被覆銅合金粉末の製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0026】
[実施例1]
銅8.0kgとニッケル1.0kgと亜鉛1.0kgを加熱した溶湯をタンディッシュ下部から落下させながら高圧水を吹付けて急冷凝固させ、得られた合金粉末をろ過し、水洗し、乾燥し、解砕し、分級して、銅合金粉末(銅−ニッケル−亜鉛合金粉末)を得た。
【0027】
次に、得られた銅合金粉末(銅−ニッケル−亜鉛合金粉末)353.7gと、直径1.6mmのステンレスボール2144.7gと、工業用アルコール(日本アルコール販売株式会社製のソルミックスAP7)136.3gを湿式メディア攪拌型ミル(タンク容積1リットル、棒状アーム型の攪拌羽根)に投入し、羽根の周速2.5m/秒で15分間攪拌し、得られたスラリーをろ過し、乾燥して、フレーク状銅合金粉末(フレーク状の銅−ニッケル−亜鉛合金粉末)を得た。
【0028】
また、EDTA−2Na二水和物157.1gと炭酸アンモニウム157.1gを純水1828.2gに溶解した溶液(溶液1)と、EDTA−2Na二水和物346.5gと炭酸アンモニウム173.2gを純水1380.1gに溶解した溶液に、硝酸銀57.7gを純水178.4gに溶解した溶液を加えて得られた溶液(溶液2)を用意した。
【0029】
次に、窒素雰囲気下において、得られたフレーク状銅合金粉末(フレーク状の銅−ニッケル−亜鉛合金粉末)330gを溶液1に加えて、攪拌しながら35℃まで昇温させた。このフレーク状銅合金粉末(フレーク状の銅−ニッケル−亜鉛合金粉末)が分散した溶液に溶液2を加えて20分間攪拌した後、分散剤としてパルミチン酸1.0gを工業用アルコール(日本アルコール販売株式会社製のソルミックスAP7)32.0gに溶解させた溶液を添加し、さらに40分間攪拌した後、ろ過し、水洗し、乾燥し、解砕して、銀により被覆されたフレーク状銅合金粉末(銀被覆フレーク状銅合金粉末)を得た。
【0030】
このようにして得られた(銀被覆前の)銅合金粉末の組成および粒度分布を求めるとともに、銀被覆フレーク状銅合金粉末の組成、粒度分布、アスペクト比、BET比表面積、タップ密度、酸素含有量および炭素含有量を求めた。
【0031】
銀被覆前の銅合金粉末中の銅、ニッケルおよび亜鉛の含有量は、銅合金粉末(約2.5g)を塩化ビニル製リング(内径3.2mm×厚さ4mm)内に敷き詰めた後、錠剤型の成型圧縮機(株式会社前川試験製作所製の型番BRE−50)により100kNの荷重をかけて、銅合金粉末のペレットを作製し、このペレットをサンプルホルダー(開口径3.0cm)に入れて蛍光X線分析装置(株式会社リガク製のRIX2000)内の測定位置にセットし、測定雰囲気を減圧下(8.0Pa)とし、X線出力を50kV、50mAとした条件で測定した結果から、装置に付属のソフトウェアで自動計算することによって求め、ナトリウム未満の軽元素を除いた成分の比率を算出した。その結果、銀被覆前の銅合金粉末中の銅の含有量は80.8質量%、ニッケルの含有量は10.8質量%、亜鉛の含有量は8.4質量%であり、銅合金粉末はCu
80Ni
10Zn
10合金の粉末であった。
【0032】
銀被覆前の銅合金粉末の粒度分布は、レーザー回折式粒度分布装置(SYMPATEC社製のヘロス粒度分布測定装置(HELOS&RODOS))により測定して、累積10%粒子径(D
10)、累積50%粒子径(D
50)、累積90%粒子径(D
90)を求めた。その結果、銀被覆前の銅合金粉末の累積10%粒子径(D
10)は0.9μm、累積50%粒子径(D
50)は2.1μm、累積90%粒子径(D
90)は3.9μmであった。
【0033】
銀被覆フレーク状銅合金粉末中の銅、ニッケルおよび亜鉛の含有量は、銀被覆前の銅合金粉末中の銅、ニッケルおよび亜鉛の含有量と同様の方法により、銀被覆フレーク状銅合金粉末のペレットを作製して求めた。また、銀被覆フレーク状銅合金粉末の断面を集束イオンビーム(FIB)加工観察装置(日本電子株式会社製のJEM−9310FIB)によって加工した後、電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)(日本電子株式会社製のJSM−6700F)によって観察したところ、フレーク状銅合金粉末の表面が銀で被覆されていることが確認され、銀被覆フレーク状銅合金粉末の銀の被覆量も、銀被覆フレーク状銅合金粉末中の銅、ニッケルおよび亜鉛の含有量と同様の方法により求めた。その結果、銀被覆フレーク状銅合金粉末の銀の被覆量は10.8質量%、銅の含有量は73.6質量%、ニッケルの含有量は9.7質量%、亜鉛の含有量は5.9質量%であった。
【0034】
銀被覆フレーク状銅合金粉末の粒度分布は、銀被覆前の銅合金粉末の粒度分布と同様の方法により求めた。その結果、銀被覆フレーク状銅合金粉末の累積10%粒子径(D
10)は1.3μm、累積50%粒子径(D
50)は3.0μm、累積90%粒子径(D
90)は5.8μmであった。
【0035】
銀被覆フレーク状銅合金粉末のアスペクト比は、銀被覆フレーク状銅合金粉末を樹脂と混ぜてペースト化し、銅板に塗布して乾燥させて塗膜を作り、その塗膜の側面を電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)(株式会社日立製作所製のS−4700型)により2000倍の倍率で観察し、その観察した画面に対して垂直に立っている銀被覆フレーク状銅合金粉末の粒子100個について、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(マウンテック社のMac−View Ver4)を用いて、粒子の最長となる長さを測定し、それらを算術平均することにより求めた平均長径Lと、同じ粒子で最短となる長さを測定し、それらを算術平均することにより求めた平均厚さTを用いて、(平均長径L/平均厚さT)をアスペクト比として求めた。その結果、銀被覆フレーク状銅合金粉末のアスペクト比は4であった。
【0036】
銀被覆フレーク状銅合金粉末のBET比表面積は、BET比表面積測定装置(ユアサイオニクス株式会社製の4ソーブUS)を用いてBET法により求めた。その結果、銀被覆フレーク状銅合金粉末のBET比表面積は0.46m
2/gであった。
【0037】
銀被覆フレーク状銅合金粉末のタップ密度(TAP)は、特開2007−263860号公報に記載された方法に準拠して求めた。その結果、銀被覆フレーク状銅合金粉末のタップ密度は4.9g/cm
3であった。
【0038】
銀被覆フレーク状銅合金粉末中の酸素含有量は、酸素・窒素分析装置(LECO社製のTC−436型)により測定した。その結果、銀被覆フレーク状銅合金粉末中の酸素含有量は0.09質量%であった。
【0039】
銀被覆フレーク状銅合金粉末中の炭素含有量は、炭素・硫黄分析装置(堀場製作所製のEMIA−220V)により測定した。その結果、銀被覆フレーク状銅合金粉末中の炭素含有量は0.17質量%であった。
【0040】
これらの結果を表1および表2に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
次に、得られた銀被覆フレーク状銅合金粉末8.92gと、熱硬化型樹脂としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製のアデカレジンEP−4901E)0.79gと、三フッ化ホウ素モノエチルアミン0.04gと、溶媒としてブチルカルビトールアセテート0.24gと、オレイン酸0.01gとを混練脱泡機で混合した後、三本ロールを5回パスして均一に分散させることによって導電ペーストを得た。
【0044】
この導電ペーストをスクリーン印刷法によってアルミナ基板上に(線幅500μm、線長37.5mmのパターンに)印刷した後、大気中において200℃で40分間焼成して硬化させることによって導電膜を形成し、得られた導電膜の体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。
【0045】
導電膜の体積抵抗率は、得られた導電膜のライン抵抗を二端子型抵抗率計(日置電機株式会社製の3540ミリオームハイテスタ)により測定し、膜厚を表面粗さ形状測定機(株式会社東京精密製のサーフコム1500DX型)により測定して、体積抵抗率(Ω・cm)=ライン抵抗(Ω)×膜厚(cm)×線幅(cm)/線長(cm)により算出した。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は146μΩ・cmであった。
【0046】
導電膜の保存安定性(信頼性)は、一定温度(150℃)に保たれた試験室内において1週間保存した導電膜の体積抵抗率(1週間保存後の体積抵抗率)を算出し、体積抵抗率の変化率(%)={(1週間保存後の体積抵抗率)−(初期の体積抵抗率)}×100/(初期の体積抵抗率)によって評価した。その結果、1週間保存後の体積抵抗率は152μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は4%であった。同様に2週間保存後の体積抵抗率を算出して、2週間の保存安定性(信頼性)を評価したところ、2週間保存後の体積抵抗率は155μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は6%であった。
【0047】
これらの結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
[比較例1]
実施例1と同様の方法により銅合金粉末(銅−ニッケル−亜鉛合金粉末)を得た後、得られた(銀被覆前の)銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成および粒度分布を求めた。その結果、銀被覆前の銅合金粉末中の銅の含有量は82.9質量%、ニッケルの含有量は10.2質量%、亜鉛の含有量は6.9質量%であり、銅合金粉末はCu
80Ni
10Zn
10合金の粉末であった。また、銀被覆前の銅合金粉末の累積10%粒子径(D
10)は0.7μm、累積50%粒子径(D
50)は1.8μm、累積90%粒子径(D
90)は3.3μmであった。
【0050】
次に、窒素雰囲気下において、得られた銅合金粉末(銅−ニッケル−亜鉛合金粉末)330gを実施例1と同様の溶液1に加えて、攪拌しながら35℃まで昇温させた。この銅合金粉末(銅−ニッケル−亜鉛合金粉末)が分散した溶液に実施例1と同様の溶液2を加えて60分間攪拌した後、ろ過し、水洗し、乾燥し、解砕して、銀により被覆された銅合金粉末(銀被覆銅合金粉末)を得た。
【0051】
次に、窒素雰囲気下において、得られた銀被覆銅合金粉末58.7gとパルミチン酸0.2gをコーヒーミルで混合し、この混合粉末を、直径1.6mmのステンレスボール552.8gが入った振動ボールミル(株式会社シー・エム・ティ製のTI−100)に投入し、60Hzで30分間振動させて、銀被覆フレーク状銅合金粉末を得た。
【0052】
このようにして得られた銀被覆フレーク状銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、粒度分布、アスペクト比、BET比表面積、タップ密度、酸素含有量および炭素含有量を求めた。その結果、銀被覆フレーク状銅合金粉末の銀の被覆量は11.1質量%、銅の含有量は74.9質量%、ニッケルの含有量は9.2質量%、亜鉛の含有量は4.8質量%であった。また、銀被覆フレーク状銅合金粉末の累積10%粒子径(D
10)は0.8μm、累積50%粒子径(D
50)は2.0μm、累積90%粒子径(D
90)は4.0μmであった。また、銀被覆フレーク状銅合金粉末のアスペクト比は4、BET比表面積は0.57m
2/g、タップ密度は5.7g/cm
3であった。さらに、銀被覆フレーク状銅合金粉末中の酸素含有量は0.14質量%、炭素含有量は0.18質量%であった。
【0053】
また、得られた銀被覆フレーク状銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は226μΩ・cmであった。また、1週間保存後の体積抵抗率は233μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は3%であった。さらに、2週間保存後の体積抵抗率は239μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は6%であった。
【0054】
これらの結果を表1〜表3に示す。
【0055】
[実施例2]
銅8.0kgとニッケル1.0kgと亜鉛1.0kgの代わりに銅9.0kgと亜鉛1.0kgを使用した以外は、実施例1と同様の方法により、銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を得た。
【0056】
このようにして得られた(銀被覆前の)銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成および粒度分布を求めた。その結果、銀被覆前の銅合金粉末中の銅の含有量は90.1質量%、亜鉛の含有量は9.9質量%であり、銅合金粉末はCu
90Zn
10合金の粉末であった。また、銀被覆前の銅合金粉末の累積10%粒子径(D
10)は0.7μm、累積50%粒子径(D
50)は1.9μm、累積90%粒子径(D
90)は3.6μmであった。
【0057】
また、得られた銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を使用して、実施例1と同様の方法により、銀被覆フレーク状銅合金粉末を得た。
【0058】
このようにして得られた銀被覆フレーク状銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、粒度分布、アスペクト比、BET比表面積、タップ密度、酸素含有量および炭素含有量を求めた。その結果、銀被覆フレーク状銅合金粉末の銀の被覆量は10.7質量%、銅の含有量は81.8質量%、亜鉛の含有量は7.5質量%であった。また、銀被覆フレーク状銅合金粉末の累積10%粒子径(D
10)は1.5μm、累積50%粒子径(D
50)は3.4μm、累積90%粒子径(D
90)は7.1μmであった。また、銀被覆フレーク状銅合金粉末のアスペクト比は4、BET比表面積は0.47m
2/g、タップ密度は4.6g/cm
3であった。さらに、銀被覆フレーク状銅合金粉末中の酸素含有量は0.10質量%、炭素含有量は0.18質量%であった。
【0059】
また、得られた銀被覆フレーク状銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は99μΩ・cmであった。また、1週間保存後の体積抵抗率は113μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は14%であった。さらに、2週間保存後の体積抵抗率は127μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は29%であった。
【0060】
これらの結果を表1〜表3に示す。
【0061】
[比較例2]
実施例2と同様の方法により銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を得た後、得られた(銀被覆前の)銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成および粒度分布を求めた。その結果、銀被覆前の銅合金粉末中の銅の含有量は90.2質量%、亜鉛の含有量は9.8質量%であり、銅合金粉末はCu
90Zn
10合金の粉末であった。また、銀被覆前の銅合金粉末の累積10%粒子径(D
10)は0.6μm、累積50%粒子径(D
50)は1.7μm、累積90%粒子径(D
90)は3.2μmであった。
【0062】
また、得られた銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を使用して、比較例1と同様の方法により、銀被覆フレーク状銅合金粉末を得た。
【0063】
このようにして得られた銀被覆フレーク状銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、粒度分布、アスペクト比、BET比表面積、タップ密度、酸素含有量および炭素含有量を求めた。その結果、銀被覆フレーク状銅合金粉末の銀の被覆量は10.9質量%、銅の含有量は81.6質量%、亜鉛の含有量は7.5質量%であった。また、銀被覆フレーク状銅合金粉末の累積10%粒子径(D
10)は0.7μm、累積50%粒子径(D
50)は1.9μm、累積90%粒子径(D
90)は3.6μmであった。また、銀被覆フレーク状銅合金粉末のアスペクト比は4、BET比表面積は0.54m
2/g、タップ密度は5.5g/cm
3であった。さらに、銀被覆フレーク状銅合金粉末中の酸素含有量は0.16質量%、炭素含有量は0.22質量%であった。
【0064】
また、得られた銀被覆フレーク状銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は129μΩ・cmであった。また、1週間保存後の体積抵抗率は167μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は29%であった。さらに、2週間保存後の体積抵抗率は192μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は48%であった。
【0065】
これらの結果を表1〜表3に示す。
【0066】
[実施例3]
実施例1と同様の方法により得られた銅合金粉末(銅−ニッケル−亜鉛合金粉末)を使用し、EDTA−2Na二水和物779.5gと炭酸アンモニウム389.8gを純水3105.1gに溶解した溶液に、硝酸銀129.9gを純水401.5gに溶解した溶液を加えて得られた溶液を溶液2として使用した以外は、実施例1と同様の方法により、銀被覆フレーク状銅合金粉末を得た。
【0067】
このようにして得られた銀被覆フレーク状銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、粒度分布、アスペクト比、BET比表面積、タップ密度、酸素含有量および炭素含有量を求めた。その結果、銀被覆フレーク状銅合金粉末の銀の被覆量は21.9質量%、銅の含有量は64.5質量%、ニッケルの含有量は8.4質量%、亜鉛の含有量は5.2質量%であった。また、銀被覆フレーク状銅合金粉末の累積10%粒子径(D
10)は1.9μm、累積50%粒子径(D
50)は4.0μm、累積90%粒子径(D
90)は7.2μmであった。また、銀被覆フレーク状銅合金粉末のアスペクト比は4、BET比表面積は0.42m
2/g、タップ密度は4.4g/cm
3であった。さらに、銀被覆フレーク状銅合金粉末中の酸素含有量は0.22質量%、炭素含有量は0.20質量%であった。
【0068】
また、得られた銀被覆フレーク状銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は106μΩ・cmであった。また、1週間保存後の体積抵抗率は103μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は−3%であった。さらに、2週間保存後の体積抵抗率は100μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は−6%であった。
【0069】
これらの結果を表1〜表3に示す。
【0070】
[比較例3]
実施例1と同様の方法により銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を得た後、得られた(銀被覆前の)銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成および粒度分布を求めた。その結果、銀被覆前の銅合金粉末中の銅の含有量は83.7質量%、ニッケルの含有量は10.3質量%、亜鉛の含有量は6.0質量%であり、銅合金粉末はCu
80Ni
10Zn
10合金の粉末であった。また、銀被覆前の銅合金粉末の累積10%粒子径(D
10)は0.8μm、累積50%粒子径(D
50)は2.0μm、累積90%粒子径(D
90)は3.7μmであった。
【0071】
また、得られた銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を使用して、実施例3と同様の溶液2を使用した以外は、比較例1と同様の方法により、銀被覆フレーク状銅合金粉末を得た。
【0072】
このようにして得られた銀被覆フレーク状銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、粒度分布、アスペクト比、BET比表面積、タップ密度、酸素含有量および炭素含有量を求めた。その結果、銀被覆フレーク状銅合金粉末の銀の被覆量は22.8質量%、銅の含有量は65.4質量%、ニッケルの含有量は8.1質量%、亜鉛の含有量は3.7質量%であった。また、銀被覆フレーク状銅合金粉末の累積10%粒子径(D
10)は0.9μm、累積50%粒子径(D
50)は2.4μm、累積90%粒子径(D
90)は4.5μmであった。また、銀被覆フレーク状銅合金粉末のアスペクト比は4、BET比表面積は0.51m
2/g、タップ密度は5.6g/cm
3であった。さらに、銀被覆フレーク状銅合金粉末中の酸素含有量は0.22質量%、炭素含有量は0.23質量%であった。
【0073】
また、得られた銀被覆フレーク状銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は130μΩ・cmであった。また、1週間保存後の体積抵抗率は131μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は1%であった。さらに、2週間保存後の体積抵抗率は129μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は−1%であった。
【0074】
これらの結果を表1〜表3に示す。
【0075】
[実施例4]
実施例2と同様の方法により得られた銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を使用し、実施例3と同様の方法により、銀被覆フレーク状銅合金粉末を得た。
【0076】
このようにして得られた銀被覆フレーク状銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、粒度分布、アスペクト比、BET比表面積、タップ密度、酸素含有量および炭素含有量を求めた。その結果、銀被覆フレーク状銅合金粉末の銀の被覆量は21.8質量%、銅の含有量は71.7質量%、亜鉛の含有量は6.5質量%であった。また、銀被覆フレーク状銅合金粉末の累積10%粒子径(D
10)は1.6μm、累積50%粒子径(D
50)は3.7μm、累積90%粒子径(D
90)は7.1μmであった。また、銀被覆フレーク状銅合金粉末のアスペクト比は4、BET比表面積は0.46m
2/g、タップ密度は4.6g/cm
3であった。さらに、銀被覆フレーク状銅合金粉末中の酸素含有量は0.19質量%、炭素含有量は0.20質量%であった。
【0077】
また、得られた銀被覆フレーク状銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は73μΩ・cmであった。また、1週間保存後の体積抵抗率は79μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は8%であった。さらに、2週間保存後の体積抵抗率は87μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は18%であった。
【0078】
これらの結果を表1〜表3に示す。
【0079】
[比較例4]
実施例2と同様の方法により銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を得た後、得られた(銀被覆前の)銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成および粒度分布を求めた。その結果、銀被覆前の銅合金粉末中の銅の含有量は90.0質量%、亜鉛の含有量は10.0質量%であり、銅合金粉末はCu
90Zn
10合金の粉末であった。また、銀被覆前の銅合金粉末の累積10%粒子径(D
10)は0.7μm、累積50%粒子径(D
50)は2.0μm、累積90%粒子径(D
90)は3.6μmであった。
【0080】
また、得られた銅合金粉末(銅−亜鉛合金粉末)を使用して、比較例3と同様の方法により、銀被覆フレーク状銅合金粉末を得た。
【0081】
このようにして得られた銀被覆フレーク状銅合金粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、粒度分布、アスペクト比、BET比表面積、タップ密度、酸素含有量および炭素含有量を求めた。その結果、銀被覆フレーク状銅合金粉末の銀の被覆量は22.5質量%、銅の含有量は70.9質量%、亜鉛の含有量は6.6質量%であった。また、銀被覆フレーク状銅合金粉末の累積10%粒子径(D
10)は0.9μm、累積50%粒子径(D
50)は2.3μm、累積90%粒子径(D
90)は4.3μmであった。また、銀被覆フレーク状銅合金粉末のアスペクト比は4、BET比表面積は0.47m
2/g、タップ密度は5.5g/cm
3であった。さらに、銀被覆フレーク状銅合金粉末中の酸素含有量は0.18質量%、炭素含有量は0.24質量%であった。
【0082】
また、得られた銀被覆フレーク状銅合金粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は78μΩ・cmであった。また、1週間保存後の体積抵抗率は87μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は11%であった。さらに、2週間保存後の体積抵抗率は97μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は24%であった。
【0083】
これらの結果を表1〜表3に示す。
【0084】
[比較例5]
銅8.0kgとニッケル1.0kgと亜鉛1.0kgの代わりに銅10.0kgを使用した以外は、実施例1と同様の方法により、銅粉末を得た。
【0085】
このようにして得られた(銀被覆前の)銅粉末について、実施例1と同様の方法により、粒度分布を求めた。その結果、銀被覆前の銅合金粉末の累積10%粒子径(D
10)は2.3μm、累積50%粒子径(D
50)は5.5μm、累積90%粒子径(D
90)は11.6μmであった。
【0086】
また、得られた銅粉末を使用して、比較例1と同様の方法により、銀被覆フレーク状銅合金粉末を得た。
【0087】
このようにして得られた銀被覆フレーク状銅粉末について、実施例1と同様の方法により、組成、粒度分布、アスペクト比、BET比表面積、タップ密度、酸素含有量および炭素含有量を求めた。その結果、銀被覆フレーク状銅粉末の銀の被覆量は10.7質量%、銅の含有量は89.3質量%であった。また、銀被覆フレーク状銅粉末の累積10%粒子径(D
10)は2.3μm、累積50%粒子径(D
50)は5.9μm、累積90%粒子径(D
90)は13.8μmであった。また、銀被覆フレーク状銅粉末のアスペクト比は4、BET比表面積は0.27m
2/g、タップ密度は5.6g/cm
3であった。さらに、銀被覆フレーク状銅粉末中の酸素含有量は0.28質量%、炭素含有量は0.22質量%であった。
【0088】
また、得られた銀被覆フレーク状銅粉末を使用して、実施例1と同様の方法により得られた導電膜について、実施例1と同様の方法により、体積抵抗率の算出と保存安定性(信頼性)の評価を行った。その結果、導電膜の体積抵抗率(初期の体積抵抗率)は131μΩ・cmであった。また、1週間保存後の体積抵抗率は166μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は27%であった。さらに、2週間保存後の体積抵抗率は188μΩ・cmであり、体積抵抗率の変化率は43%であった。
【0089】
これらの結果を表1〜表3に示す。