特許第6194443号(P6194443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6194443電気化学式ガスセンサ用作用極、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194443
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】電気化学式ガスセンサ用作用極、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/404 20060101AFI20170904BHJP
【FI】
   G01N27/404 341J
   G01N27/404 341G
【請求項の数】4
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-286462(P2012-286462)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-130018(P2014-130018A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250421
【氏名又は名称】理研計器株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100087974
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 直人
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 修
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 智之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−263458(JP,A)
【文献】 特開2003−121407(JP,A)
【文献】 特表2012−501954(JP,A)
【文献】 特開2010−210466(JP,A)
【文献】 特開平01−088245(JP,A)
【文献】 特開平01−216257(JP,A)
【文献】 米国特許第04662996(US,A)
【文献】 特表2012−510613(JP,A)
【文献】 特開平09−072875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/49
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性通気膜の一方の表面に、スパッタリングにより形成されたシリコン層を介してナノ白金粒子含有炭素層が形成されている電気化学式ガスセンサ用作用極。
【請求項2】
前記シリコン層の膜厚が20nm以上で被験ガスの透過を阻害しない程度である請求項1に記載の電気化学式ガスセンサ用作用極。
【請求項3】
撥水性通気膜の一方の表面にシリコン層をスパッタリングで形成する工程と、前記シリコン層の表面にナノ白金粒子含有炭素層を形成する工程とからなる電気化学式ガスセンサ用作用極の製造方法。
【請求項4】
前記シリコン層の膜厚が20nm以上で被験ガスの透過を阻害しない程度である請求項3に記載の電気化学式ガスセンサ用作用極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体透過性の隔膜を介して気体を電解液に接液させ、隔膜に形成されている作用極と対極との間の電気的変化から気体の濃度を検出する隔膜型電気化学式ガス検出器の作用極に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学式ガスセンサの作用極は撥水性多孔質膜の表面に被測定ガスと電解液とを酸化還元反応させる導電性物質の膜を形成して構成されている。
通常、酸性ガスを検出する電気化学式ガスセンサの作用極には金(Au)が用いられている。
【0003】
この電極を用いた電気化学式ガスセンサで酸性ガス、例えば臭化水素(HBr)を検出すると、
Au+4HBr→AuBr4+4H+3e
なる反応により検出できるが、作用極を構成する電極材料が臭化水素により化学変化を受け図3の符号Aの線図に示したように繰り返し特性、つまり感度に変化をきたすという問題がある。
【0004】
そこで特許文献1に見られるようなナノ白金粒子含有炭素を成膜した電極を用いると、繰り返し特性や経時特性が安定し、その結果、図4の符号Aの線図に示したようにスパン変化率は小さいものの、水素(H2)に対する感度が大きくなり、臭化水素に対する選択性が低下するという新たな問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−121407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであってその目的とするところは水素に対する感度を抑制できる酸性ガス用の電気化学式ガスセンサに適したナノ白金粒子含有炭素を成膜した作用極、及びこれの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を達成するために本発明は、撥水性通気膜の一方の表面に、スパッタリングにより形成されたシリコン層を介してナノ白金粒子含有炭素層が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
電極形成時に撥水性多孔質膜の細孔から遊離した不純物がシリコン層で遮断されているため、電極層であるナノ白金粒子含有炭素の純度が維持でき水素に対する感度を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の電気化学式ガスセンサ用作用極を模式的に示す図。
図2】シリコン膜の厚みと水素に対する相対感度を示す線図。
図3】金を使用した作用極(A)とナノ白金粒子含有炭素を使用した作用極(B)との繰り返し特性を示す線図である。
図4】金を使用した作用極(A)とナノ白金粒子含有炭素を使用した作用極(B)とのスパン変化率の経時変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
そこで以下に本発明の詳細を実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明の酸性ガス検出用作用極を模式的に示すものであって、フッ素樹脂等の撥水性通気膜1の一方の表面に電子サイクロトロン共鳴(ECR)スパッタ装置、またはアンバランストマグネトロンスパッタ(UBMS)装置により少なくとも20nm以上で、柔軟性及び通気性を阻害しない程度の厚みシリコン層2を形成する。
【0011】
すなわち、ターゲットとして純度の高いシリコンターゲットを用い、アルゴンガス圧を0.01Torr、基板を常温、ターゲット電圧を1kVとし、膜厚が20nmになるまでスパッタを行う。
【0012】
ついで特許文献1に見られる方法でナノ白金粒子を含有した炭素層3を形成する。
つまり純度の高いカーボンターゲットと白金ターゲットを配置し、アルゴンガス圧0.01Torr、基板温度を常温に保持、ターゲット電圧1kVとして膜厚2〜20nmになるまでスパッタを行う。
なお、カーボンへの白金の含有率(含有量25at%〜55at%)は、カーボンターゲットと白金ターゲットとのスパッタ面積比で調整できる。
【0013】
本発明においては撥水性通気膜1の表面に気体が不透過なシリコン層2が形成されているため、撥水性通気膜1に含まれている不純物がシリコン層2で吸収遮断される。
これによりスパッタ時にナノ白金粒子を含有した炭素層に、水素に感度を与える不純物である水素や酸素等が侵入するのを遮断できる。
【0014】
次に最適なシリコン膜の膜厚を調査すべくその膜厚を変えながら一定厚(5nm)のナノ白金粒子を含有した炭素層3を形成し、これを用いた電気化学式ガスセンサにより水素を検出したところ、図2のようになった。
【0015】
すなわち5nm乃至20nmまでは水素の感度は膜厚とともに急激に低下し、以後はほぼ一定となる。
このことからシリコン膜3の膜厚は20nm以上が好ましいことが判る。他方、シリコン膜の厚みが大きくなると、撥水性通気膜1の被験ガスの透過性や柔軟性が低下する。また上限は通気性や柔軟性を阻害しない程度が好ましい。
【0016】
このように構成された作用極を備えた電気化学式ガスセンサを用いてスパン変化率を調査したところ図4の符号Bの線図に示したように従来の金を用いた作用極よりも長期間に亘ってその変化は極めて小さかった。
【0017】
また、一定度の臭化水素を2分間、周期約7分で照射して繰り返し特性を調べたところ図3の符号Bの線図に示したようにほとんど変化が見られなかった。
【符号の説明】
【0018】
1 撥水性通気膜 2 シリコン層 3 ナノ白金粒子含有炭素層
図1
図2
図3
図4