(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハロゲン化オレフィンが、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペンまたは1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は真球状の無機粒子を、可燃性有機溶媒を用いず、かつ、地球大気圏のオゾン層破壊や、地球温暖化への影響も小さい方法で製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、界面活性剤の存在下、一般式C
kH
pF
mCl
n(ここでk=3または4、pは2以下の整数、(p+m+n)=2k)で表されるハロゲン化オレフィン中に、ケイ酸アルカリ水溶液を乳化させて、W/O型エマルションを形成し、次いで前記W/O型エマルション中の前記ケイ酸アルカリ水溶液の液滴をゲル化して球状シリカを形成することを特徴とする球状シリカの製造方法である。
【0007】
本発明はさらに、W/O型エマルション中の前記ハロゲン化オレフィンの割合が30〜90体積%である、球状シリカの製造方法である。
本発明はさらに、W/O型エマルション中の前記界面活性剤の含有量が、前記ハロゲン化オレフィンに対して0.1〜5質量%である、球状シリカの製造方法である。
本発明はまた、前記ハロゲン化オレフィンが1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(以下、CFO−1214yaともいう)、1−クロロ−2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(以下、HCFO−1224ydともいう)または1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(以下、HCFO−1233zdともいう)である、球状シリカの製造方法である。
本発明はさらに、前記ケイ酸アルカリ水溶液がケイ酸ナトリウム水溶液ある、球状シリカの製造方法である。
本発明はさらに、W/O型エマルションに炭酸ガスを導入してケイ酸アルカリ水溶液の液滴をゲル化する、球状シリカの製造方法である。
本発明はさらに、前記ゲル化した粒子をハロゲン化オレフィンから分離する、製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に用いるハロゲン化オレフィンは、炭素原子−炭素原子間に不飽和結合を1つ有するオレフィン化合物であるため、大気中での寿命が短く、オゾン破壊係数や地球温暖化係数が小さいことが知られている。本発明者らが検討した結果、分子内に塩素を含むことで、HFE類やHFC類では溶解性が低い界面活性剤などの乳化剤を溶解することができ、乳化法で球状無機粒子を製造するのに用いる連続相として優れることが判明した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ハロゲン化オレフィン]
本願発明の製造方法に用いるのに好適なハロゲン化オレフィンとしては、沸点が0〜100℃であり、一般式C
kH
pF
mCl
n(ここでk=3または4、pは2以下の整数、n=1または2であり、かつ(p+m+n)=2k)で表わされるハロゲン化オレフィンが挙げられる。
【0011】
さらに、前記ハロゲン化オレフィンのうち、乾燥時の粒子からの連続相除去、および、無機粒子製造時の扱いやすさの観点から、沸点は20〜80℃が好ましく、より好ましくは30〜70℃がよく、最も好ましくは40〜60℃が望ましい。
【0012】
これらの点を満たす化合物のうち、入手性容易性や製造可能性より、沸点46℃のCFO−1214ya、沸点15℃のHCFO−1224yd、沸点が40℃のHCFO−1233zdシス体および沸点が18℃のHCFO−1233zdトランス体が、球状シリカの製造に適している。CFO−1214yaは、例えば国際公開第2010/074254号の方法で製造することができる。HCFO−1224ydは、例えば国際公開第WO2011/162336号の方法で製造することができる。HCFO−1233zdシス体およびトランス体は、たとえば特開2012−158552、特開2013−107848の方法で製造することができる。
【0013】
CFO−1214ya、HCFO−1224yd、HCFO−1233zdシス体およびHCFO−1233zdトランス体は、炭素原子−炭素原子間に二重結合を持つオレフィンであるため、大気中での寿命が短く、オゾン破壊係数や地球温暖化係数が小さく、表面張力や粘度が低いため、CFC類やHCFC類と同様に球状シリカの製造に優れた性能を有している。またCFO−1214ya、HCFO−1224yd、HCFO−1233zdシス体およびHCFO−1233zdトランス体は引火点を持たない。これらの観点からも造粒溶媒として最も優れている。
【0014】
[界面活性剤]
乳化剤として界面活性剤を用いる。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の中から選択したものを用いることが出来る。
前記界面活性剤としては、前記ハロゲン化オレフィン中に少なくとも0.1質量%以上溶解する界面活性剤が好ましい。
前記界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。
【0015】
これらの界面活性剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
界面活性剤の含有量は、界面活性剤の種類、界面活性剤の親水性あるいは疎水性の程度を表す指標であるHLB(Hydrophile−lipophile balance)や、目的とする球状シリカの粒子径などの条件により異なるが、上記ハロゲン化オレフィン中に0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜3質量%で含有させることが好ましい。
【0017】
上記ハロゲン化オレフィン中に界面活性剤が0.1質量%以上であれば、均一に乳化することができ、エマルションをより安定化することができる。一方、5質量%以下であれば、最終製品である球状シリカに界面活性剤が付着して混入することを防止することができる。分散相の粘度が低い場合、均一に乳化するためには界面活性剤の濃度が上記範囲内でより低い方が好ましい。
【0018】
[W/O型エマルションの形成]
本発明においては、水系分散相を、界面活性剤の存在下、上記ハロゲン化オレフィン中にて攪拌や膜乳化等の既知の手法にて乳化させW/O型エマルションを形成する。
【0019】
W/O型エマルションを形成するために用いるケイ酸アルカリ水溶液としては、具体的には、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸カリウム等の水溶液が好ましく、ケイ酸ナトリウム水溶液がより好ましい。また、生成する粒子の細孔特性を調整するために塩類、あるいは、水溶性ポリマーが溶解していても良い。
【0020】
上記界面活性剤を溶解させたハロゲン化オレフィンの非極性連続相中にケイ酸アルカリ水溶液を加えた後、撹拌することにより乳化させる。あるいは、上記界面活性剤を溶解させた非極性溶媒中に多孔質膜を通じてケイ酸アルカリ水溶液を供給することで乳化させる。
【0021】
乳化方法としては、例えば、マイクロミキサー法、膜乳化、撹拌乳化、超音波乳化等、静止型混合機による方法等を用いることができ、目的とする粒子径、粒度分布等の特定により適宜選択することができる。
【0022】
得られたエマルション中のケイ酸アルカリ水溶液の液滴をゲル化することにより、球状であるケイ酸アルカリ水溶液の液滴はこの形状を保持したままゲル化され、球状のシリカヒドロゲル粒子が生成する。ゲル化には、エマルション中にゲル化剤を導入するのが好ましい。
ゲル化剤としては、無機酸や有機酸などの酸が用いられ、特に無機酸である硫酸、塩酸、硝酸、炭酸などが好ましい。また、塩の水溶液を添加する方法も好ましい。塩としては、炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムがある。操作の容易性などの点で、最も簡便で好ましいのは、炭酸ガスを用いる方法である。炭酸ガスは、100%濃度の純炭酸ガスを導入してもよいし、空気や不活性ガスで希釈した炭酸ガスを導入してもよい。
【0023】
ゲル化の際の温度は4〜30℃が好ましく、より好ましくは5〜25℃である。これによって、表面がなめらかな球状のシリカ粒子を得ることができる。ゲル化に要する時間は、1〜30分が好ましい。
【0024】
ゲル化後には、シリカヒドロゲル粒子を水相に移動させて、シリカヒドロゲル粒子を含む水スラリーとして回収することができる。
例えば、ゲル化後に、2層分離や遠心分離によって、シリカヒドロゲル粒子を水相に移動させることができる。また、ゲル化後に、水の存在下で蒸留を行って、使用したハロゲン化オレフィンを揮発させて、シリカヒドロゲル粒子を水相に移動させることができる。この際に、水をさらに添加して、シリカヒドロゲル粒子の濃度を0.5〜20質量%に調整してもよい。
【0025】
ゲル化後、シリカヒドロゲル粒子中の共存塩を除去するために洗浄してもよい。シリカヒドロゲルの洗浄は、水スラリーをろ過した後に、イオン交換水等の純水を用いて洗浄することができる。
【0026】
[乾燥]
次に、シリカヒドロゲル粒子を、乾燥して球状のシリカ粒子とする。乾燥方法は、シリカヒドロゲル粒子から水分を除去する方法であれば、特に限定されない。前記のようにして製造した水スラリー、特に洗浄を行った後の水スラリーを乾燥することが好ましい。また、前記ウエットケーキなどの水分離後のシリカヒドロゲル粒子集合体を乾燥するなどの方法で乾燥を行うこともできる。
好ましい乾燥方法としては、粒子一粒を短時間で乾燥可能な方法であり、乾燥収縮を防いで吸油量をより高めることができる。このような乾燥方法としては、シリカヒドロゲル粒子を含む水スラリーを気流乾燥法、スプレードライ乾燥法、キルン乾燥法等で乾燥する方法が好ましい。この他、凍結乾燥法、超臨界乾燥法、溶媒置換乾燥法等でもよい。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶媒置換乾燥法は、シリカゲル内部を低表面張力となる液体で置換後に乾燥する方法であり、置換する薬剤としては、メタノール、アセトン等の水溶性の有機液体を用いることができる。
また、水スラリーをろ過して、加熱によって乾燥する乾燥方法でもよい。
【0027】
より好ましい乾燥方法としては、コスト及び安全性の観点から、シリカヒドロゲル粒子を含む水スラリーを気流乾燥、スプレードライ乾燥法またはキルン乾燥法で乾燥する方法である。これらの乾燥方法は、水スラリーを溶媒置換を行わず水系のままで乾燥することができるので安全上好ましい。
【0028】
乾燥温度は、乾燥方法によるが、例えば、100〜150℃とすることで、シリカの物性に影響を与えずに、水分を除去することができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例2、3が比較例、例4〜6が実施例である。
【0030】
例1:界面活性剤の溶解試験(CFO−1214ya)
CFO−1214ya99g中にソルビタンモノオレイン酸エステル1gを混合し攪拌した。その結果ソルビタンモノオレイン酸エステルが分離のない1相の液体となった。このことから完全に溶解していると言える。
【0031】
例2:界面活性剤の溶解試験(3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン:C
4H
3F
5、塩素含まない含フッ素オレフィン、沸点3℃)
【0032】
0℃に冷却した3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン99g中にソルビタンモノオレイン酸エステル1gを混合し攪拌した。その結果、ソルビタンモノオレイン酸エステルが溶解せずに2相に分離した状態になった。また、3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン相中に食塩水を入れて振り混ぜたが乳化は起こらずに3相に分離した液体となった。この結果より、ソルビタンモノオレイン酸エステルは乳化剤として機能していないと言える。
【0033】
例3:界面活性剤の溶解試験(3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン:C6H3F9、沸点60℃)
3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン99g中にソルビタンモノオレイン酸エステル1gを混合し攪拌した。その結果、ソルビタンモノオレイン酸エステルが溶解せずに2相に分離した状態になった。また、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン相中に3号ケイ酸曹達を入れて振り混ぜたが乳化は起こらずに3相に分離した液体となった。この結果より、ソルビタンモノオレイン酸エステルは乳化剤として機能していないと言える。
【0034】
以上の例1〜3により、CFO−1214yaは、界面活性剤を溶解し、一方の分子内に塩素を含まない例2および3では、界面活性剤を溶解しなかったことから、分子内に塩素原子を有する化合物を溶媒とすることで造粒工程に用いる界面活性剤を溶解できることが明らかになった。
【0035】
例4(実施例1)
3号珪曹(AGCエスアイテック社製)と脱塩水を混合し、ケイ酸ナトリウム水溶液全体に対し、ケイ酸成分をSiO
2に換算したSiO
2濃度が17重量%のケイ酸ナトリウム水溶液を調製した。次にソルビタンモノオレイン酸エステル7.7gをCFO−1214ya763.5gに溶解させた連続相を、撹拌機(特殊機化工業製オートホモミキサー)により7000rpmで撹拌しつつ、上記ケイ酸ナトリウム水溶液を加え、5分間撹拌した。ついで炭酸ガスを200mL/分の速度で15℃の条件下で15分間吹き込んでゲル化を行った。生成したゲルを連続相から分離し、20%の硫酸でpH2とした後、80℃で1時間熟成し、1500mLの水で洗浄し、さらに120℃で4時間乾燥して真球状のシリカを得た。得られたシリカのSEM画像を
図1に示す。真球状の粒子が得られていることが分かる。
【0036】
得られたシリカの平均粒子直径は6.0μm(ベックマンコールタ社製:コールターカウンターによる)、粒子のd90/10は1.99であった。細孔容積は0.95mL/g、比表面積は680m2/g(島津製作所製:トライスターII3020による)であった。
【0037】
例5(実施例2)
CFO−1214yaのかわりに、同量のHCFO−1224ydを使用し、温度を7℃とした以外は例4(実施例1)と同様に操作し、シリカ粒子を得た。
【0038】
得られた粒子は、平均粒径5.9μm(ベックマンコールタ社製:コールターカウンターによる)、粒子のd90/10は1.92であった。SEMで観測した結果、実施例1同等の球状粒子であった。
【0039】
例6(実施例3)
CFO−1214yaのかわりに、同量のHCFO−1233zdシス体(沸点40℃)を使用して、温度を10℃とした以外は例4(実施例1)と同様に操作し、シリカ粒子を得た。得られた粒子は、平均粒径5.8μm(ベックマンコールタ社製:コールターカウンターによる)、粒子のd90/10は1.94であった。SEMで観測した結果、例4(実施例1)同等の球状粒子であった。