特許第6194832号(P6194832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194832
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】ブルートナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/09 20060101AFI20170904BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   G03G9/08 361
   G03G9/08 331
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-60714(P2014-60714)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-184481(P2015-184481A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今本 健太
(72)【発明者】
【氏名】中里 健一
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−037863(JP,A)
【文献】 特開昭63−058357(JP,A)
【文献】 特開昭62−280779(JP,A)
【文献】 特開2004−070313(JP,A)
【文献】 特開2002−258535(JP,A)
【文献】 特開2005−055482(JP,A)
【文献】 特開2007−225917(JP,A)
【文献】 特開2011−150275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G9/00−9/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂、着色剤を含有するトナーであって、該着色剤がシアン顔料及びマ
ゼンタ顔料を含有し、トナーの印字画像の色相が下記条件(A)〜(C)を満たし、且つ
トナーの動的粘弾性において、110℃における貯蔵弾性率G’が25000Pa以上5
5000Pa以下であり、180℃における貯蔵弾性率G’が550Pa以上1100
以下であることを特徴とする単色カラー複写機用トナー。
(A)L*が28以上36以下である
(B)a*が9以上23以下である
(C)b*が−53以上−34以下である
【請求項2】
前記トナーの動的粘弾性において、110℃における貯蔵弾性率G’が30000Pa
以上55000Pa以下であり、180℃における貯蔵弾性率G’が600Pa以上11
00Pa以下であることを特徴とする請求項1に記載の単色カラー複写機用トナー。
【請求項3】
前記顔料中、マゼンタ顔料がキナクリドン系顔料またはカーミン系顔料であることを特
徴とする請求項1または請求項2に記載の単色カラー複写機用トナー。
【請求項4】
前記マゼンタ顔料と前記シアン顔料の混合比率(シアン顔料の質量部数)/(マゼンタ
顔料の質量部数)が、1.30以上3.90以下であることを特徴とする請求項1乃至3
のいずれかに記載の単色カラー複写機用トナー。
【請求項5】
前記結着樹脂が、ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか
に記載の単色カラー複写機用トナー。
【請求項6】
前記請求項1乃至4のいずれかに記載の単色カラー複写機用トナーを有することを特徴
とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結着樹脂、着色剤を含有するトナーにおいて、該着色剤にフタロシアニンブルー系顔料とカーミン系顔料およびキナクリドン系顔料およびナフトール系顔料のいずれかを含む単色カラー複写機用トナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、比較的印刷面積が小判(A3以下等)の複写を作成することを目的とした印刷には電子写真式による複写機(通称、白焼き機)が主流であり数多く上市されている。一方で、印刷面積が大判(A2〜A0等)の印刷画像を得る際には、ジアゾ式複写機(通称、青焼き機)を用いる事がある(特許文献1及び2)。ジアゾ式複写(青焼き印刷)には、等倍精度が高い、コストが安い、歪みが少ない等のメリットがあり、書類の複写や図面の複製に広く使用されている。特に図面に使用する場合は、改ざんし辛い、摩擦により印字が薄くなり難い、光の反射率が少なく屋外で見やすい、赤鉛筆等での加筆を行いやすいといった使いやすさが挙げられる。しかしながら、デメリットとしては、(待機時を含めた)消費電力が大きい、アンモニアを使用する場合は環境に問題がある、感光紙や感熱紙などの特殊な紙が必要である場合があることなどが挙げられる。また、ジアゾ式複写の最大のメリットである等倍精度の高さも、電子写真式複写の技術の進歩により差が無くなってきている。
【0003】
こうした中、ジアゾ式複写と電子写真式複写のメリットを組み合わせる検討が進められている。電子写真式により複写を行うことで、環境問題が無く消費電力を抑え、印刷画像の色相をジアゾ式に合わせることで、昔ながらの使いやすさを両立させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭48−60633
【特許文献2】特開昭52−4829
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなジアゾ式複写と電子写真式複写のメリットを両立しつつ、電子写真方式による複写を達成するために、摩擦による印字濃度の低下抑制の観点から定着性に優れ、印字の良好な視認性確保の観点から青色の印字画像であるトナーが求められる。
このようなトナーは、一般的なシアントナーとマゼンタトナーを混ぜ合わせて作ることも可能ではあるが、生産の効率を考えると現実的ではなく、当然ながら均一な色相の画像を得る事は困難を極める。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明者らが鋭意検討した結果、結
着樹脂にポリエステルを用い、着色剤において、カーミン系顔料、キナクリドン系顔料お
よびナフトール系顔料のうちいずれかと、フタロシアニンブルー系顔料とを含むトナーと
することで解決できることがわかった。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
<1>少なくとも結着樹脂、着色剤を含有するトナーであって、該着色剤がシアン顔料及
びマゼンタ顔料を含有し、トナーの印字画像の色相が下記条件(A)〜(C)を満たし、
且つトナーの動的粘弾性において、110℃における貯蔵弾性率G’が25000Pa以
上55000Pa以下であり、180℃における貯蔵弾性率G’が550Pa以上110
Pa以下であることを特徴とする単色カラー複写機用トナー。
【0007】
(A)L*が28以上36以下である
(B)a*が9以上23以下である
(C)b*が−53以上−34以下である
<2> 前記トナーの動的粘弾性において、110℃における貯蔵弾性率G’が3000
0Pa以上55000Pa以下であり、180℃における貯蔵弾性率G’が600Pa以
1100Pa以下であることを特徴とする<1>に記載の単色カラー複写機用トナー。
<3> 前記顔料中、マゼンタ顔料がキナクリドン系顔料またはカーミン系顔料であるこ
とを特徴とする<1>または<2>に記載の単色カラー複写機用トナー。
<4> 前記マゼンタ顔料と前記シアン顔料の混合比率(シアン顔料の質量部数)/(マ
ゼンタ顔料の質量部数)が、1.30以上3.90以下であることを特徴とする<1>乃
至<3>のいずれかに記載の単色カラー複写機用トナー。
<5> 前記結着樹脂が、ポリエステル樹脂である<1>乃至<4>のいずれかに記載の
単色カラー複写機用トナー。
<6> 前記<1>乃至<5>のいずれかに記載の単色カラー複写機用トナーを有するこ
とを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、十分な定着性、最適な色相、良好な画像濃度を有するトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
以下、「静電荷像現像用トナー」を単に「トナー」と略記する場合がある。
また、本発明においては、外添剤を固着又は付着させる前のトナーをトナー粒子と称することがある。
【0010】
<本発明のトナー>
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤を含有し、該着色剤がシアン顔料及びマゼンタ顔料を含有し、トナーの印字画像の色相が下記条件(A)〜(C)を満たし、且つトナーの動的粘弾性において、110℃における貯蔵弾性率G’が25000Pa以上55000以下であり、180℃における貯蔵弾性率G’が550Pa以上1100以下であることを特徴とする。
(A)L*が28以上36以下である
(B)a*が9以上23以下である
(C)b*が−53以上−34以下である
【0011】
<色相>
本発明のトナーは、トナーの印字画像の色相が下記条件(A)〜(C)を満たすことを必須とする。
(A)L*が28以上36以下である
(B)a*が9以上23以下である
(C)b*が−34以上53以下である
【0012】
本発明のトナーにおいて、上記色相を満たすためには、着色剤として、カーミン系顔料、キナクリドン系顔料およびナフトール系顔料のマゼンタ顔料のうちのいずれかと、フタロシアニンブルー系顔料のシアン顔料とを含むことが必要である。
【0013】
マゼンタ顔料としては、公知の顔料を任意に使用することができるが、具体的には、キナクリドン、カーミンやナフトールで代表されるモノアゾ系、縮合アゾ系、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料などが挙げられる。好ましくは、カーミン系顔料及びキナクリドン系顔料である。シアン顔料としては、公知の顔料を任意に使用することができるが、具体的には、アニリンブルー、フタロシアニンブルーなどが挙げられる。好ましくは、フタロシアニンブルー系顔料である。
【0014】
マゼンタ顔料の含有量は、従来の含有量であれば特に限定されないが、結着樹脂100質量部に対し、0.5質量部以上3.0質量部以下である。シアン顔料の含有量は、同様に、2.0質量部以上5.0質量部以下である。マゼンタ顔料とシアン顔料の混合比率は、特に限定されないが、(シアン顔料の質量部数)/(マゼンタ顔料の質量部数)が、下限が、通常1.30以上であり、好ましくは1.36以上であり、一方、上限が、通常3.90以下であり、好ましくは3.87以下である。上記の混合比率とすることで、印刷画像の色相が本発明の範囲であり、印字が見やすく使いやすいトナーを提供することができる。
【0015】
<動的粘弾性>
本発明のトナーは、上記色相を適正な範囲に収めつつ、十分な定着性及び画像濃度を得るために、トナーの動的粘弾性において、110℃における貯蔵弾性率G’が25000Pa以上55000以下であり、180℃における貯蔵弾性率G’が550Pa以上1100以下であることを必須とする。
【0016】
低温での弾性が高いと材料により剪断力が加わるためトナー材料の分散が良くなる。よって、110℃における貯蔵弾性率G’は25000Pa以上であり、好ましくは30000Pa以上であり、さらに好ましくは32000Pa以上である。110℃における貯蔵弾性率G’が25000Pa未満であると分散不良により綺麗な色が発言しない。
高温での弾性が高いとトナーの定着時にHOSが発生しにくくなる。よって、180℃における貯蔵弾性率G’は550Pa以上であり、好ましくは600Pa以上であり、さらに好ましくは630Pa以上である。180℃における貯蔵弾性率G’が550Pa未満であると容易にHOSが発生する。
【0017】
本発明のトナーの各温度における貯蔵弾性率G’を上記の範囲に収めるためには、公知の方法に従って行えば特に限定されないが、例えば、高分子量である若しくは架橋構造を有することにより一般的に軟化点の高いポリエステルと、低分子量である若しくは架橋構造を有しない一般的に軟化点の低いポリエステルとの混合比率を変更することによって、調整することができる。
【0018】
<トナーの製造方法>
本発明のトナー粒子の製造方法は特に限定されず、溶融混練粉砕法や懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法などの湿式法による製造方法などが挙げられる。
溶融混練粉砕法で製造する場合は、従来公知の方法に従って行うことができる。すなわち、結着樹脂、着色剤ならびに荷電制御剤に、必要に応じて、離型剤、磁性体等を乾式混合した後、押出機等で溶融混練し、次いで粉砕、分級し、トナー粒子を得る方法である。具体的には、結着樹脂、着色剤と、必要に応じてその他成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等がある。
【0019】
次に、上記配合し、混合したトナー原料を溶融混練して、樹脂類を溶融し、その中に着色剤等を分散させる。その溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリミキサー、密閉式ニーダー又は一軸若しくは二軸の押出機等で溶融混練することができる。更に、
トナー原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
【0020】
上記で得られた着色樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕され、更に、ジェットミル、高速ローター回転式ミル等で細粉砕し、風力分級機(例えば、慣性分級方式のエルボジェット、遠心力分級方式のミクロプレックス、DSセパレーターなど)等で分級しトナー粒子を得ることができる。
【0021】
懸濁重合法は、重合性単量体、重合開始剤、着色剤などを成分とする組成物を水系媒体中に懸濁分散した後に重合して粒子を製造し、それら粒子の洗浄乾燥等を行い、トナー粒子を得る方法である。
乳化重合凝集法は、重合開始剤及び乳化剤を含有する水性媒体中に重合性単量体を乳化し、攪拌下に重合性単量体を重合して重合体一次粒子を得て、これに着色剤並びに必要に応じて帯電制御剤等を添加して重合体一次粒子を凝集させ、さらに得られた凝集粒子を熟成させ粒子を製造し、それら粒子の洗浄乾燥等を行い、トナー粒子を得る方法である。
【0022】
溶解懸濁法は結着樹脂を有機溶剤に溶解し、着色剤などを添加分散して得られる溶液相を、分散剤等を含有した水相において機械的な剪断力で分散し液滴を形成し、液滴から有機溶剤を除去して粒子を製造し、それら粒子の洗浄乾燥等を行い、トナー粒子を得る方法である。
上記方法で得たトナー粒子表面に外添剤を付着または固着させることによりトナーを得ることが出来る。外添剤を付着又は固着させる方法は特に限定はなく、一般にトナーの製造に用いられる混合機を使用することができる。具体的には、上記トナー粒子製造方法により得られたトナー粒子と外添剤を混合し、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、レディゲミキサー、Q−ミキサー等の混合機により均一に攪拌、混合することによりなされる。
【0023】
外添剤をトナー粒子に付着又は固着させる方法としては、前記のヘンシェルミキサー等の混合機を用いる方法以外に、外添剤をトナー表面に固着処理を行う方法もある。固着処理の方法としては、圧縮剪断応力を加えることの出来る装置(以下、圧縮剪断処理装置という)やトナー粒子表面を溶融または軟化することの出来る装置(以下、粒子表面溶融処理装置という)の利用等が挙げられる。この処理により、外添微粒子がトナー粒子表面に強固に固着されるため、高温保存下での耐ブロッキング性が向上し、連続実写時にも複写機/プリンター部材への融着の起こりにくいトナーを製造することができる。
【0024】
前記圧縮剪断処理装置は、一般に、間隔を保持しながら相対的に運動するヘッド面とヘッド面、ヘッド面と壁面、あるいは壁面と壁面によって構成される狭い間隙部を有し、被処理粒子が該間隙部を強制的に通過させられることによって、実質的に粉砕されることなく、粒子表面に対して圧縮応力及び剪断応力が加えられるように構成されている。使用される圧縮剪断処理装置としては、例えばホソカワミクロン社製のメカノフュージョン装置等が挙げられる。
【0025】
前記粒子表面溶融処理装置は、一般に、熱風気流等を利用し、トナー粒子と外添微粒子の混合物をトナー粒子の溶融開始温度以上に瞬時に加熱し外添微粒子を固着できるように構成される。使用される粒子表面溶融処理装置としては、例えば日本ニューマチック社製のメテオレインボーシステム等が挙げられる。
【0026】
<結着樹脂>
本発明のトナーにおいて、構成する結着樹脂としては特に限定はないが、用いることが
できる結着樹脂としては、例えば、飽和又は不飽和ポリエステル樹脂、スチレン−アクリル系共重合体樹脂、ビニル系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−アクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等を挙げることができる。これらの結着樹脂は単独あるいは複数を併用する形で用いてもよいが、定着性と耐久性の観点からポリエステル樹脂であることが望ましい。
【0027】
<ワックス>
本発明のトナーは、必要に応じてワックスを含有していてもよい。ワックスとしては、公知のワックスを任意に使用することができるが、具体的には以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムの如き石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンの如きポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックス及びその誘導体(誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が挙げられる)、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、シリコ−ンワックス。これらワックスは単独で又は2種以上を併せて用いることが可能である。
【0028】
ワックスを含有する場合の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、下限が、通常、0.5質量部以上であり、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは2質量部以上である。一方、上限は、通常、20質量部以下であり、好ましくは15質量部以下であり、より好ましくは10質量部以下である。トナー中のワックス含有量が少なすぎる場合は、耐オフセット性が不十分となる場合があり、多すぎる場合は、耐ブロッキング性が不十分であったり、ワックスがトナーから漏出することにより装置を汚染したりする場合がある。
【0029】
<帯電制御剤>
本発明に荷電制御剤を用いる場合は、公知の任意のものを単独ないしは併用して用いることができ、例えば、正帯電性帯電制御剤として4級アンモニウム塩、塩基性・電子供与性の金属物質が挙げられ、負帯電性帯電制御剤として金属キレート類、有機酸の金属塩、含金属染料、ニグロシン染料、アミド基含有化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物及びそれらの金属塩、ウレタン結合含有化合物、酸性もしくは電子吸引性の有機物質が挙げられる。また、カラートナー適応性(帯電制御剤自体が無色ないしは淡色でトナーへの色調障害がないこと)を勘案すると、正帯電性帯電制御剤としては4級アンモニウム塩化合物が、負帯電性帯電制御剤としてはサリチル酸もしくはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウムなどとの金属塩、金属錯体や、ベンジル酸の金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物、4,4’−メチレンビス〔2−〔N−(4−クロロフェニル)アミド〕−3−ヒドロキシナフタレン〕等のヒドロキシナフタレン化合物が好ましい。その使用量はトナーに所望の帯電量により決定すればよいが、通常はバインダー樹脂100重量部に対し0.01〜10重量部用い、更に好ましくは0.1〜10重量部用いる。
【0030】
<外添剤>
本発明のトナーにおいては、必要に応じて外添剤を添加することができ、外添剤としては、トナーに用い得ることが知られているもののなかから適宜選択して用いればよい。1
種類以上の疎水性シリカ及び無機酸化物微粒子、有機微粒子などを有していてもよく、無機酸化物微粒子としては例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、マグネタイト、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等の無機粒子等が挙げられる。有機微粒子としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂等の微粒子等が挙げられる。
【0031】
本発明において、外添剤を使用する場合、外添剤の含有量は、特に限定はないが、トナー母粒子に対して、下限は、通常、0.1wt%以上であり、好ましくは0.5wt%以上、より好ましくは0.8wt%部以上であり、一方、上限は、通常、6wt%以下であ
り、好ましくは5wt%以下であり、より好ましくは4wt%以下である。
外添剤の添加方法としては、ヘンシェルミキサー等の高速攪拌機を用いる方法や、圧縮剪断応力を加えることの出来る装置による方法等が挙げられる。
【0032】
外添トナーは、トナー母粒子に全ての外添剤を同時添加して外添する一段外添法より作成できるが、外添剤毎に外添する分段外添法より作成してもよい。
外添における温度について、温度上昇を防止するために、容器に冷却装置を設置するか、分段外添することが好ましい。
本発明のトナーは、電子写真カートリッジやトナーボトル等に充填され、画像形成装置に搭載される。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下の例で「部」とあるのは「質量部」を意味する。
【0034】
<定着性能評価>
・コールドオフセット(COS)の評価
試験にはすべて厚紙(白色度 100、紙厚 0.102μm、坪量 105g/m
)を用いた。
市販の2成分複写機の定着機を外し、未定着画像を得た。その際に、トナーの紙への付着量を1.0mg/cmに調整した。
【0035】
得た未定着画像は熱定着ローラーの温度を170℃とプロセススピードを225mm/秒に調整した外部定着機により定着させ、オフセットの発生有無を目視にて評価を行った。オフセットが発生しない場合は○、発生した場合は×とした。外部定着機はシャープ社製複合機SF−2118の定着部を取り外し使用した。
・ホットオフセット(HOS)の評価
試験にはすべて薄紙(白色度 92、紙厚 0.087μm、坪量 64g/m)を
用いた。
【0036】
市販の2成分複写機の定着機を外し、未定着画像を得た。その際に、トナーの紙への付着量を1.0mg/cmに調整した。
得た未定着画像は熱定着ローラーの温度を220℃とプロセススピードを150mm/秒に調整した外部定着機により定着させ、オフセットの発生有無を目視にて評価を行った。オフセットが発生しない場合は○、発生した場合は×とした。外部定着機はシャープ社製複合機SF−2118の定着部を取り外し使用した。
【0037】
<色相と画像濃度評価>
試験にはすべて薄紙(白色度 92、紙厚 0.087μm、坪量 64g/m)を
用いた。
市販の2成分複写機の定着機を外し、未定着画像を得た。その際に、トナーの紙への付着量を1.0mg/cmに調整した。
【0038】
得た未定着画像は熱定着ローラーの温度を180℃とプロセススピードを225mm/秒に調整した外部定着機により定着させ、X−rite939にて色相と画像濃度を測定した。外部定着機はシャープ社製複合機SF−2118の定着部を取り外し使用した。
色相はX−rite939(光源:C2 レスポンス:A アパーチャ:8mm)で測定し、L*、a*、b*の値をそれぞれ用いた。L*が28〜36、a*が9〜23、b*が−34〜53であると良好な色相であると言える。
画像濃度はX−rite939(光源:C2 レスポンス:A アパーチャ:8mm)で測定し、シアンの画像濃度にて1.30以上を〇、1.30未満を×とした。
【0039】
<粘弾性評価>
外添トナーについて、動的粘弾性測定は、例えばTA Instruments製レオメーターARESを用いることができ、以下の通り行う。
サンプル約1.3gを25mm径用の治具に入れ、50℃に加熱したプレス機によって荷重30kgで10分間加圧し、ペレットに成型する。ペレットを直径25mmの円形パラレルプレートを装着した測定装置に入れ、120℃に昇温した状態で上部プレートを下げてペレットの厚さを3.0〜3.5mmに調整する。降温し、測定周波数6.28rad/sec、初期温度40℃、測定前遅延時間3分、自動テンション調整(引っ張り方向
、初期の力 0、自動テンション感度2.0g、自動テンション切り替え弾性率1.0E+08Pa)、最終温度205℃、昇温速度4℃/分、測定サイクル時間1分、初期歪み0.1%、自動歪み調整の条件で測定する。
【0040】
<比較例1>
以下に示す配合比により負帯電性非磁性トナーを作製した。
・樹脂A(ポリエステル 軟化点130℃ ガラス転移点60℃)92.1部
・マスターバッチA(樹脂F:Pigments Blue15:3=60部:40部)7.7部
樹脂F(ポリエステル 軟化点111℃ ガラス転移点65℃)
・マスターバッチB(樹脂G:Pigments Red122=60部:40部)5.6部
樹脂G(ポリエステル 軟化点99℃ ガラス転移点64℃)
・ワックスA(PPワックス 軟化点145℃)1.5部
・ワックスB(PEワックス 軟化点108℃)1.5部
・帯電制御剤(ホウ素金属錯体 商品名 日本カーリット社製 LR−147)1.0部
上記の原材料をヘンシェルミキサーで混合し、二軸押出機で溶融混練した後、粗粉砕し、ジェットミル粉砕機で微粉砕した後、分級して体積平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0041】
以下の配合比により外添剤を高速ミキサーで混合し現像剤を得た。
・トナー母体 100部
・疎水性シリカA(商品名 ワッカー社製 H05TD) 1.5部
・疎水性シリカB(商品名 キャボット社製 TG308F) 0.5部
【0042】
<比較例2>
以下に示す配合比により負帯電性非磁性トナーを作製した。
・樹脂A(ポリエステル 軟化点130℃ ガラス転移点60℃)97.1部
・顔料A(Pigments Blue15:3 一次粒子径約45nm)3.1部
・マスターバッチB(樹脂G:Pigments Red122=60部:40部)4.9部
・ワックスA(PPワックス 軟化点145℃)1.5部
・ワックスB(PEワックス 軟化点108℃)1.5部
・帯電制御剤(ホウ素金属錯体 商品名 日本カーリット社製 LR−147)1.0部
上記の原材料をヘンシェルミキサーで混合し、二軸押出機で溶融混練した後、粗粉砕し、ジェットミル粉砕機で微粉砕した後、分級して体積平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0043】
以下の配合比により外添剤を高速ミキサーで混合し現像剤を得た。
・トナー母体 100部
・疎水性シリカA(商品名 ワッカー社製 H05TD) 1.5部
・疎水性シリカB(商品名 キャボット社製 TG308F) 0.5部
【0044】
<比較例3>
以下に示す配合比により負帯電性非磁性トナーを作製した。
・樹脂B(ポリエステル 軟化点139℃ ガラス転移点60℃)97.1部
・顔料A(Pigments Blue15:3 一次粒子径約45nm)3.1部
・マスターバッチB(樹脂G:Pigments Red122=60部:40部)4.9部
・ワックスA(PPワックス 軟化点145℃)1.5部
・ワックスB(PEワックス 軟化点108℃)1.5部
・帯電制御剤(ホウ素金属錯体 商品名 日本カーリット社製 LR−147)1.0部
上記の原材料をヘンシェルミキサーで混合し、二軸押出機で溶融混練した後、粗粉砕し、ジェットミル粉砕機で微粉砕した後、分級して体積平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0045】
以下の配合比により外添剤を高速ミキサーで混合し現像剤を得た。
・トナー母体 100部
・疎水性シリカA(商品名 ワッカー社製 H05TD) 1.5部
・疎水性シリカB(商品名 キャボット社製 TG308F) 0.5部
【0046】
<比較例4>
以下に示す配合比により負帯電性非磁性トナーを作製した。
・樹脂C(ポリエステル 軟化点163℃ ガラス転移点63℃)70.0部
・樹脂D(ポリエステル 軟化点103℃ ガラス転移点52℃)27.1部
・顔料A(Pigments Blue15:3 一次粒子径約45nm)3.1部
・マスターバッチB(樹脂G:Pigments Red122=60部:40部)4.9部
・ワックスA(PPワックス 軟化点145℃)1.5部
・ワックスB(PEワックス 軟化点108℃)1.5部
・帯電制御剤(ホウ素金属錯体 商品名 日本カーリット社製 LR−147)1.0部
上記の原材料をヘンシェルミキサーで混合し、二軸押出機で溶融混練した後、粗粉砕し、ジェットミル粉砕機で微粉砕した後、分級して体積平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0047】
以下の配合比により外添剤を高速ミキサーで混合し現像剤を得た。
・トナー母体 100部
・疎水性シリカA(商品名 ワッカー社製 H05TD) 1.5部
・疎水性シリカB(商品名 キャボット社製 TG308F) 0.5部
【0048】
<実施例1>
以下に示す配合比により負帯電性非磁性トナーを作製した。
・樹脂E(ポリエステル 軟化点163℃ ガラス転移点63℃)92.1部
・マスターバッチA(樹脂F:Pigments Blue15:3=60部:40部)7.7部
・マスターバッチB(樹脂G:Pigments Red122=60部:40部)5.6部
・ワックスA(PPワックス 軟化点145℃)1.5部
・ワックスB(PEワックス 軟化点108℃)1.5部
・帯電制御剤(ホウ素金属錯体 商品名 日本カーリット社製 LR−147)1.0部
上記の原材料をヘンシェルミキサーで混合し、二軸押出機で溶融混練した後、粗粉砕し、ジェットミル粉砕機で微粉砕した後、分級して体積平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0049】
以下の配合比により外添剤を高速ミキサーで混合し現像剤を得た。
・トナー母体 100部
・疎水性シリカA(商品名 ワッカー社製 H05TD) 1.5部
・疎水性シリカB(商品名 キャボット社製 TG308F) 0.5部
【0050】
<実施例2>
以下に示す配合比により負帯電性非磁性トナーを作製した。
・樹脂E(ポリエステル 軟化点163℃ ガラス転移点63℃)92.2部
・マスターバッチA(樹脂F:Pigments Blue15:3=60部:40部)10.4部
・マスターバッチC(樹脂G:Pigments Red57:1=60部:40部)2.7部
・ワックスA(PPワックス 軟化点145℃)1.5部
・ワックスB(PEワックス 軟化点108℃)1.5部
・帯電制御剤(ホウ素金属錯体 商品名 日本カーリット社製 LR−147)1.0部
上記の原材料をヘンシェルミキサーで混合し、二軸押出機で溶融混練した後、粗粉砕し、ジェットミル粉砕機で微粉砕した後、分級して体積平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0051】
以下の配合比により外添剤を高速ミキサーで混合し現像剤を得た。
・トナー母体 100部
・疎水性シリカA(商品名 ワッカー社製 H05TD) 1.5部
・疎水性シリカB(商品名 キャボット社製 TG308F) 0.5部
【0052】
<実施例3>
以下に示す配合比により負帯電性非磁性トナーを作製した。
・樹脂E(ポリエステル 軟化点163℃ ガラス転移点63℃)92.2部
・顔料A(Pigments Blue15:3 一次粒子径約45nm)3.1部
・マスターバッチB(樹脂G:Pigments Red122=60部:40部)4.9部
・ワックスA(PPワックス 軟化点145℃)1.5部
・ワックスB(PEワックス 軟化点108℃)1.5部
・帯電制御剤(ホウ素金属錯体 商品名 日本カーリット社製 LR−147)1.0部
上記の原材料をヘンシェルミキサーで混合し、二軸押出機で溶融混練した後、粗粉砕し、ジェットミル粉砕機で微粉砕した後、分級して体積平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0053】
以下の配合比により外添剤を高速ミキサーで混合し現像剤を得た。
・トナー母体 100部
・疎水性シリカA(商品名 ワッカー社製 H05TD) 1.5部
・疎水性シリカB(商品名 キャボット社製 TG308F) 0.5部
【0054】
<実施例4>
以下に示す配合比により負帯電性非磁性トナーを作製した。
・樹脂E(ポリエステル 軟化点163℃ ガラス転移点63℃)95.3部
・マスターバッチA(樹脂F:Pigments Blue15:3=60部:40部)7.9部
・顔料B(Pigments Red57:1 一次粒子径約100nm)2.1部
・ワックスA(PPワックス 軟化点145℃)1.5部
・ワックスB(PEワックス 軟化点108℃)1.5部
・帯電制御剤(ホウ素金属錯体 商品名 日本カーリット社製 LR−147)1.0部
上記の原材料をヘンシェルミキサーで混合し、二軸押出機で溶融混練した後、粗粉砕し、ジェットミル粉砕機で微粉砕した後、分級して体積平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0055】
以下の配合比により外添剤を高速ミキサーで混合し現像剤を得た。
・トナー母体 100部
・疎水性シリカA(商品名 ワッカー社製 H05TD) 1.5部
・疎水性シリカB(商品名 キャボット社製 TG308F) 0.5部
【0056】
<実施例5>
以下に示す配合比により負帯電性非磁性トナーを作製した。
・樹脂E(ポリエステル 軟化点163℃ ガラス転移点63℃)93.8部
・マスターバッチA(樹脂F:Pigments Blue15:3=60部:40部)10.4部
・顔料B(Pigments Red57:1 一次粒子径約100nm)1.1部
・ワックスA(PPワックス 軟化点145℃)1.5部
・ワックスB(PEワックス 軟化点108℃)1.5部
・帯電制御剤(ホウ素金属錯体 商品名 日本カーリット社製 LR−147)1.0部
上記の原材料をヘンシェルミキサーで混合し、二軸押出機で溶融混練した後、粗粉砕し、ジェットミル粉砕機で微粉砕した後、分級して体積平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0057】
以下の配合比により外添剤を高速ミキサーで混合し現像剤を得た。
・トナー母体 100部
・疎水性シリカA(商品名 ワッカー社製 H05TD) 1.5部
・疎水性シリカB(商品名 キャボット社製 TG308F) 0.5部
【0058】
<実施例6>
以下に示す配合比により負帯電性非磁性トナーを作製した。
・樹脂E(ポリエステル 軟化点163℃ ガラス転移点63℃)97.1部
・顔料A(Pigments Blue15:3 一次粒子径約45nm)3.1部
・マスターバッチB(樹脂G:Pigments Red122=60部:40部)4.9部
・ワックスB(PEワックス 軟化点108℃)3.0部
・帯電制御剤(ホウ素金属錯体 商品名 日本カーリット社製 LR−147)1.0部
上記の原材料をヘンシェルミキサーで混合し、二軸押出機で溶融混練した後、粗粉砕し、ジェットミル粉砕機で微粉砕した後、分級して体積平均粒径9μmのトナー母体を得た。
【0059】
以下の配合比により外添剤を高速ミキサーで混合し現像剤を得た。
・トナー母体 100部
・疎水性シリカA(商品名 ワッカー社製 H05TD) 1.5部
・疎水性シリカB(商品名 キャボット社製 TG308F) 0.5部
以下に比較例1〜4及び実施例1〜6にて製造したトナーについて、上記の項目について評価を行った結果を表−1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
上記表−1より、トナーの動的粘弾性において100℃における貯蔵弾性率(G’)が本発明の適正範囲外である比較例1〜2は定着性能や画像濃度、色相を満足できず、180℃における貯蔵弾性率(G’)が本発明の適正範囲外である比較例3〜4は定着性能を満足できないことがわかる。トナーの動的粘弾性が本発明の範囲内である実施例1〜6は十分な定着性能と高い画像濃度、最適な色相を達成できることがわかる。