【実施例】
【0025】
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
実施例において用いた測定方法及び分析装置は以下の通りである。
【0026】
<NMRの測定>
得られた化合物を重水素化クロロホルムに溶解し、内部標準としてテトラメチルシラン(TMS)0.05wt%を加え、400MHzの
1H NMR(バリアン社製)を用いて測定した。
<黄変度及び光透過率の測定>
島津製作所社製の分光光度計UV−3100PCを用いて、黄変度と、波長400nmにおける光線透過率を測定した。
【0027】
<屈折率の測定>
溝尻光学工業所社製の自動エリプソメータDVA−FLVWを用いて、測定波長633nmにおける屈折率を測定した。
<耐光性の評価>
皮膜を形成した石英基板に、アトラス社製のCi4000を用いて、300〜400nmにおける放射照度が60W/m
2の条件で72時間照射を行い、照射前後の黄変度の変化量を評価した。
【0028】
(実施例1)
特定化合物 [M1]の合成
1L(リットル)四口フラスコに、シアヌル酸クロリド38.5g、及びテトラヒドロフラン385gを加え、氷浴にて冷却した。温度0℃下で、2モル/Lのフェニルマグネシウムクロリドのテトラヒドロフラン溶液を240mL滴下し、その後、室温にて15時間攪拌した。反応液に、1規定塩酸300mLを加え、酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を分離後、有機層に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルの有機層を分離した。有機層に無水硫酸マグネシウムを加え、ろ過した後に、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去を行った。残渣をシリカカラムクロマトグラフィー(流出液はヘキサン/酢酸エチル=3/1を使用)により精製して、(L1)で表される中間体化合物を42.8g得た。
【化6】
【0029】
中間体化合物(L1)10.0gを300mL四口フラスコに加え、さらにテトラヒドロフラン100gを加えて溶解した。溶液を温度0℃に冷却し、水素化ナトリウム1.8gを添加し、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル5.3gとテトラヒドロフラン80gの溶液を滴下し、30分攪拌した。反応液に15wt%塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルを用いて抽出した。分離した有機層に無水硫酸マグネシウムを加え、ろ過した後に、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去を行った。残渣をシリカカラムクロマトグラフィー(流出液はヘキサン/酢酸エチル=3/1を使用)により精製して、白色固体を9.7g得た。
この白色固体の
1H NMRの測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(M1)で表される化合物であることを確認した。
【0030】
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ8.66−8.61(m,4H),7.64−7.50(m,6H),6.15−6.12(m,1H),5.57−5.53(m,1H),4.94−4.89(m,2H),4.66−4.61(m,2H),1.94−1.90(m,3H)
【化7】
【0031】
(比較合成例1)
化合物[M2]の合成
500mL四口フラスコに、シアヌル酸クロリド15.0g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル12.7g、及びテトラヒドロフラン150gを加え、氷浴にて冷却した。温度0℃下で、水素化ナトリウム3.9gを添加し、その後、室温で3時間攪拌した。さらに4−フェニルフェノール12.5g、水酸化ナトリウム2.9g、テトラヒドロフラン23g、及び水30gの水溶液を加えた。その後、15wt%塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルを用いて抽出した。分離した有機層に無水硫酸マグネシウムを加え、ろ過した後に、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去を行った。残渣を再結晶により精製して、(L2)で表される中間体を21.7g得た。
【化8】
【0032】
500mL四口フラスコに、中間体化合物(L2)21.4g、及びアセトン170gを加え、還流下で、4−フェニルフェノール9.3g、水酸化ナトリウム2.2g、アセトン43g、及び水43gの水溶液を滴下した。その後、15wt%塩化アンモニウム水溶液を加え、生成した結晶をろ過した。結晶は再結晶により精製して、白色固体を25.2g得た(収率89%)。
この白色固体の
1H NMRの測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(M2)で表される重合性単量体であることを確認した。
【0033】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3):δ7.62−7.52 (m, 8H), 7.46−7.39 (m, 4H), 7.39―7.33 (m, 2H), 7.26−7.21 (m, 4H), 6.13−6.10 (m, 1H), 5.62−5.56 (m, 1H), 4.65−4.58 (m, 2H), 4.48−4.42 (m, 2H), 1.95−1.92 (m, 3H)
【化9】
【0034】
(比較合成例2)
化合物[M3]の合成
500mL四口フラスコに、シアヌル酸クロリド15.0g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル12.7g、及びテトラヒドロフラン150gを加え、氷浴にて冷却した。温度0℃下で、水素化ナトリウム3.9gを添加し、室温で3時間攪拌した。さらにフェノール14.9g、水酸化ナトリウム6.3g、及び水60gの水溶液を加え、温度50℃に加熱して、2時間攪拌した。その後、室温に冷却し、15wt%塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルを用いて抽出した。分離した有機層に無水硫酸マグネシウムを加え、ろ過した後に、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去を行った。残渣をシリカカラムクロマトグラフィー(流出液はヘキサン/酢酸エチル=3/1を使用)により精製して、白色固体を20.5g得た。
この白色固体の
1H NMRの測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体が、下記式(M3)で表される重合性単量体であることを確認した。
【0035】
1H NMR (400 MHz, CDCl
3):δ7.43−7.34 (m, 4H), 7.28−7.22 (m, 2H), 7.19―7.12 (m, 4H), 6.14−6.08 (m, 1H), 5.60−5.55 (m, 1H), 4.58−4.52 (m, 2H), 4.42−4.37 (m, 2H), 1.94−1.90 (m, 3H)
【化10】
【0036】
「樹脂溶液の製造例」
(実施例2)
窒素導入管の付いた3つ口フラスコに、重合性単量体(M1)8.6g、メタクリル酸0.5g、及び溶剤としてシクロヘキサノンを21g仕込み、攪拌しながら窒素1Lを、キャピラリー管を通じてバブリング(Bubbling)させた。その後、キャピラリー管を外し、微量の窒素をフラスコ内の気相に通じて空気を遮断した。次いで、フラスコを加温し、内温が85℃になった時点で、重合開始剤として、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−シクロヘキサンを0.3g加えて重合を開始した。85℃にて3時間反応後、115℃に昇温して2時間熟成させた。その後、室温まで冷却して、高屈折樹脂溶液P1を得た。
【0037】
(比較製造例1)
窒素導入管の付いた3つ口フラスコに、重合性単量体(M2)8.6g、メタクリル酸0.5g、及び溶剤としてシクロヘキサノンを21g仕込み、攪拌しながら窒素1Lを、キャピラリー管を通じてバブリングさせた。その後、キャピラリー管を外し、微量の窒素をフラスコ内の気相に通じて空気を遮断した。次いで、フラスコを加温し、内温が85℃になった時点で、重合開始剤として、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−シクロヘキサンを0.3g加えて重合を開始した。85℃にて3時間反応後、115℃に昇温して2時間熟成させた。その後、室温まで冷却して、高屈折樹脂溶液Q1を得た。
【0038】
(比較製造例3)
窒素導入管の付いた3つ口フラスコに、重合性単量体(M3)8.6g、メタクリル酸0.5g、及び溶剤としてシクロヘキサノンを21g仕込み、攪拌しながら窒素1Lを、キャピラリー管を通じてバブリングさせた。その後、キャピラリー管を外し、微量の窒素をフラスコ内の気相に通じて空気を遮断した。次いで、フラスコを加温し、内温が85℃になった時点で、重合開始剤として、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−シクロヘキサンを0.3g加えて重合を開始した。85℃にて3時間反応後、115℃に昇温して2時間熟成させた。その後、室温まで冷却して、高屈折樹脂溶液Q2を得た。
【0039】
「高屈折樹脂コーティング剤の製造」
(実施例3)
実施例2の高屈折率樹脂溶液P1に、ジャパンエポキシレジン社製の水素化ビスフェノールAエポキシ樹脂(YX−8000)を溶解し、高屈折率樹脂100重量部に対して、エポキシ樹脂の重量比率が5重量部になるように配合し、高屈折率コーティング剤C1を得た。
【0040】
(比較例1)
比較製造例1の高屈折率樹脂溶液Q1に、ジャパンエポキシレジン社製の水素化ビスフェノールAエポキシ樹脂(YX−8000)を溶解し、高屈折率樹脂100重量部に対して、エポキシ樹脂の重量比率が5重量部になるように配合し、高屈折率コーティング剤D1を得た。
(比較例2)
比較製造例2の高屈折率樹脂溶液Q2に、ジャパンエポキシレジン社製の水素化ビスフェノールAエポキシ樹脂(YX−8000)を溶解し、高屈折率樹脂100重量部に対して、エポキシ樹脂の重量比率が5重量部になるように配合し、高屈折率コーティング剤D2を得た。
【0041】
「高屈折樹脂コーティング剤の評価」
(実施例4)
実施例3の高屈折樹脂コーティング剤C1を、4cm×4cmの石英板にスピンコータを用いて塗布し、100℃にて1時間乾燥後、150℃にて1時間硬化させて、厚さ5ミクロンの透明な高屈折樹脂コーティング剤C1の皮膜を得た。外観は透明であり、着色は見られなかった。
また、高屈折樹脂コーティング剤C1の100重量部に対して、シクロヘキサノン500重量部を配合して、希釈溶液を調製した。調製した希釈溶液を用いて、シリコンウエハーにスピンコータを用いて塗布し、100℃にて1時間乾燥後、150℃にて1時間硬化させて、厚さ100ナノメートルの高屈折樹脂コーティング剤C1の皮膜を作製し、屈折率測定に使用した。
【0042】
厚さ5ミクロンの高屈折樹脂コーティング剤C1の皮膜の光線透過率を測定した。波長400nmにおける透過率は96.8%であり、黄変度は0.65であった。
また、厚さ100ナノメートルの高屈折樹脂コーティング剤C1の皮膜の屈折率を測定した。測定波長633nmにおける屈折率は、1.617であった。
また、耐光性試験を行ったところ、黄変度の変化量は、1.23であった。
【0043】
(比較例3)
比較例1の高屈折樹脂コーティング剤D1を、4cm×4cmの石英板にスピンコータを用いて塗布し、100℃にて1時間乾燥後、150℃にて1時間硬化させて、厚さ5ミクロンの透明な高屈折樹脂コーティング剤D1の皮膜を得た。外観は透明であり、着色は見られなかった。
また、高屈折樹脂コーティング剤D1の100重量部に対して、シクロヘキサノン500重量部を配合して、希釈溶液を調製した。調製した希釈溶液を用いて、シリコンウエハーにスピンコータを用いて塗布し、100℃にて1時間乾燥後、150℃にて1時間硬化させて、厚さ100ナノメートルの高屈折樹脂コーティング剤D1の皮膜を作製し、屈折率測定に使用した。
【0044】
厚さ5ミクロンの高屈折樹脂コーティング剤D1の皮膜の光線透過率を測定した。波長400nmにおける透過率は96.9%であり、黄変度は0.58であった。
また、厚さ100ナノメートルの高屈折樹脂コーティング剤D1の皮膜の屈折率を測定した。測定波長633nmにおける屈折率は、1.619であった。
また、耐光性試験を行ったところ、黄変度の変化量は、2.00であった。
【0045】
(比較例4)
比較例2の高屈折樹脂コーティング剤D2を、4cm×4cmの石英板にスピンコータを用いて塗布し、100℃にて1時間乾燥後、150℃にて1時間硬化させて、厚さ5ミクロンの透明な高屈折樹脂コーティング剤D2の皮膜を得た。外観は透明であり、着色は見られなかった。
また、高屈折樹脂コーティング剤D2の100重量部に対して、シクロヘキサノン500重量部を配合して、希釈溶液を調製した。調製した希釈溶液を用いて、シリコンウエハーにスピンコータを用いて塗布し、100℃にて1時間乾燥後、150℃にて1時間硬化させて、厚さ100ナノメートルの高屈折樹脂コーティング剤D2の皮膜を作製し、屈折率測定に使用した。
【0046】
厚さ5ミクロンの高屈折樹脂コーティング剤D2の皮膜の光線透過率を測定した。波長400nmにおける透過率は97.7%であった。
また、厚さ100ナノメートルの高屈折樹脂コーティング剤D2の皮膜の屈折率を測定した。測定波長633nmにおける屈折率は、1.578であった。
【0047】
【表1】
【0048】
表1の結果より、実施例4の透明な高屈折コーティング剤を用いて得られた皮膜は、透明性が高く、なおかつ、有機樹脂としての構成元素として、炭素、水素、酸素、及び窒素の4元素以外は一切使用していないにも拘らず、屈折率が測定波長633nmにおいて1.60を超えており、さらに高い耐光性を示した。
一方、比較例3で得られた皮膜は、実施例4で得られた皮膜と同程度の屈折率を示すが、耐光性に課題があり、比較例4で得られた皮膜は、屈折率に課題があった。