【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。また、以下では、実施例または比較例で得られた光重合性組成物を単に組成物と呼ぶことがある。すなわち、例えば光重合性組成物1を組成物1と呼ぶことがある。
【0050】
[実施例1]
水溶性のラジカル重合性化合物(A)として、NKエステルA-GLY-9E(商品名;新中村化学工業(株)、以後A-GLY-9Eと略す)、光重合開始剤(B)として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドであるLucirin TPO(商品名;BASFジャパン(株)、以後TPOと略す)、イオン性界面活性剤(C)としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムであるネオペレックスG−15(商品名;花王(株)、以後G-15と略す)を下記組成にて混合・溶解した後、PTFE製のメンブレンフィルター(5μm)でろ過し、光重合性組成物1を調製した。
(A)A−GLY−9E 8.00g
(B)TPO 0.40g
(C)G−15 0.084g
E型粘度計(東機産業(株)製 TV−22、以下同じ)を用い、25℃における光重合性組成物1の粘度を測定した結果、97mPa・sであった。
【0051】
[実施例2]
水溶性のラジカル重合性化合物(A)として、NKエステルA-GLY-20E(商品名;新中村化学工業(株)、以後A-GLY-20Eと略す)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、光重合性組成物2を調製した。
(A)A−GLY−20E 8.00g
(B)TPO 0.40g
(C)G−15 0.084g
E型粘度計を用い、25℃における光重合性組成物2の粘度を測定した結果、213mPa・sであった。
【0052】
[実施例3]
水溶性のラジカル重合性化合物(D)として、4−ヒドロキシブチルアクリレートである4HBA(商品名;日本化成(株)、以後4HBAと略す)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、光重合性組成物3を調製した。
(A)A−GLY−20E 5.00g
(B)TPO 0.40g
(C)G−15 0.084g
(D)4HBA 3.00g
E型粘度計を用い、25℃における光重合性組成物3の粘度を測定した結果、28mPa・sであった。
【0053】
[実施例4]
水溶性のラジカル重合性化合物(D)として、N,N−ジエチルアクリルアミドであるDEAA(商品名;興人(株)、以後DEAAと略す)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、光重合性組成物4を調製した。
(A)A−GLY―9E 6.00g
(B)TPO 0.40g
(C)G−15 0.084g
(D)DEAA 2.00g
E型粘度計を用い、25℃における光重合性組成物4の粘度を測定した結果、31mPa・sであった。
【0054】
[実施例5]
水溶性のラジカル重合性化合物(A)として、A-GLY-9Eとライトアクリレート4EG-A(商品名;共栄社化学(株)、以後4EG-Aと略す)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、光重合性組成物5を調製した。
(A)A−GLY−9E 4.00g
(A)4EG−A 4.00g
(B)TPO 0.40g
(C)G−15 0.084g
E型粘度計を用い、25℃における光重合性組成物5の粘度を測定した結果、46mPa・sであった。
【0055】
[実施例6]
水溶性のラジカル重合性化合物(A)として、A-GLY-9Eとライトアクリレート9EG-A(商品名;共栄社化学(株)、以後9EG-Aと略す)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、光重合性組成物6を調製した。
(A)A−GLY−9E 4.00g
(A)9EG−A 4.00g
(B)TPO 0.40g
(C)G−15 0.084g
E型粘度計を用い、25℃における光重合性組成物6の粘度を測定した結果、79mPa・sであった。
【0056】
[実施例7]
水溶性のラジカル重合性化合物(A)として、A-GLY-9Eとライトアクリレート14EG-A(商品名;共栄社化学(株)、以後14EG-Aと略す)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、光重合性組成物7を調製した。
(A)A−GLY−9E 4.00g
(A)14EG−A 4.00g
(B)TPO 0.40g
(C)G−15 0.084g
E型粘度計を用い、25℃における光重合性組成物7の粘度を測定した結果、107mPa・sであった。
【0057】
[実施例8]
水溶性のラジカル重合性化合物(A)として、A-GLY-9EとブレンマーDA-800AU(商品名;日油(株)、以後DA-800AUと略す)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、光重合性組成物8を調製した。
(A)A−GLY−9E 6.00g
(A)DA−800AU 2.00g
(B)TPO 0.40g
(C)G−15 0.084g
E型粘度計を用い、25℃における光重合性組成物8の粘度を測定した結果、184mPa・sであった。
【0058】
[実施例9]
水溶性のラジカル重合性化合物(A)として、DA-800AUを用い、水溶性のラジカル重合性化合物(D)として、4HBAと下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、光重合性組成物9を調製した。
(A)DA−800AU 5.00g
(B)TPO 0.40g
(C)G−15 0.084g
(D)4HBA 3.00g
E型粘度計を用い、25℃における光重合性組成物9の粘度を測定した結果、170mPa・sであった。
【0059】
[実施例10]
水溶性のラジカル重合性化合物(D)として、DEAAと下記組成割合とした以外は、実施例9と同様にして、光重合性組成物10を調製した。
(A)DEAA 2.00g
(A)DA−800AU 6.00g
(B)TPO 0.40g
(C)G−15 0.084g
E型粘度計を用い、25℃における光重合性組成物10の粘度を測定した結果、203mPa・sであった。
【0060】
[実施例11]
水溶性のラジカル重合性化合物(A)として、4EG−AとDA−800AUを用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、光重合性組成物11を調製した。
(A)4EG−A 4.00g
(A)DA−800AU 4.00g
(B)TPO 0.40g
(C)G−15 0.084g
E型粘度計を用い、25℃における光重合性組成物11の粘度を測定した結果、176mPa・sであった。
【0061】
[実施例12]
波長が400nm以上である光線の照射によりラジカルを発生する光重合開始剤(B)として、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンであるIRGACURE379EG(商品名;BASFジャパン(株)、以後Irg379と略す)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、光重合性組成物12を調製した。
(A)A−GLY−9E 8.00g
(B)Irg379 0.40g
(C)G−15 0.084g
E型粘度計を用い、25℃における光重合性組成物12の粘度を測定した結果、123mPa・sであった。
【0062】
[実施例13]
イオン性界面活性剤(C)として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムであるラテムルE-118B(商品名;花王(株)、以後E-118Bと略す)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、光重合性組成物13を調製した。
(A)A−GLY−9E 8.00g
(B)Irg379 0.40g
(C)E−118B 0.084g
E型粘度計を用い、25℃における光重合性組成物12の粘度を測定した結果、123mPa・sであった。
【0063】
[比較例1]
化合物(A)を用いず、代わりに、トリメチロールプロパントリアクリレートであるアロニックス
M−309(非水溶性のラジカル重合性化合物;東亞合成(株)製、以後「M−309」と略す。)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、インク14を調製した。
(B)TPO 0.40g
(C)G−15 0.084g
(その他)M−309 8.00g
E型粘度計を用い、25℃における光重合性組成物14の粘度を測定した結果、109mPa・sであった。
【0064】
[比較例2]
化合物(A)を用いず、代わりに、ペンタエリスリトールトリアクリレートであるアロニックスM−305(非水溶性のラジカル重合性化合物;東亞合成(株)製、以後「M−305」と略す。)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、光重合性組成物15を調製した。
(B)TPO 0.40g
(C)G−15 0.084g
(その他)M−305 8.00g
E型粘度計を用い、25℃における光重合性組成物15の粘度を測定した結果、647mPa・sであった。
【0065】
[比較例3]
化合物(A)を用いず、代わりに、M−305を用い、下記組成割合とした以外は、実施例3と同様にして、光重合性組成物16を調製した。
(B)TPO 0.40g
(C)G−15 0.084g
(D)4HBA 3.00g
(その他)M−305 5.00g
E型粘度計を用い、25℃における光重合性組成物16の粘度を測定した結果、52mPa・sであった。
【0066】
[比較例4]
化合物(A)を用いず、代わりに、M−305を用い、下記組成割合とした以外は、実施例4と同様にして、光重合性組成物17を調製した。
(B)TPO 0.40g
(C)G−15 0.084g
(D)DEAA 3.00g
(その他)M−305 5.00g
E型粘度計を用い、25℃における光重合性組成物17の粘度を測定した結果、70mPa・sであった。
【0067】
[比較例5]
化合物(B)を用いず、代わりに、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノンであるIRGACURE2959(波長が400nm以上である光線の照射によりラジカルを発生しない光重合開始剤;BASFジャパン(株)製、以後「Irg2959」と略す。)を用い、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、光重合性組成物18を調製した。
(A)A−GLY−9E 8.00g
(C)G−15 0.084g
(その他)Irg2959 0.40g
E型粘度計を用い、25℃における光重合性組成物18の粘度を測定した結果、115mPa・sであった。
【0068】
[比較例6]
化合物(C)を用いず、下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、光重合性組成物19を調製した。
(A)A−GLY−9E 8.00g
(B)TPO 0.40g
E型粘度計を用い、25℃における光重合性組成物19の粘度を測定した結果、118mPa・sであった。
【0069】
[比較例7]
化合物(C)を用いず、代わりに非イオン性界面活性剤であるメガファックF477(DIC(株)製、以後「F477」と略す。)下記組成割合とした以外は、実施例1と同様にして、光重合性組成物20を調製した。
(A)A−GLY−9E 8.00g
(B)TPO 0.40g
(その他)F477 0.084g
しかし、光重合性組成物20は白濁したため、その後の評価を行わなかった。
【0070】
<光重合性組成物および硬化膜の評価>
上記で得られた光重合性組成物を以下では、インクとよぶことがある。
インクの光硬化性、水洗性、また、上記で得られたインクより得られる硬化物のPTFEシートからの剥離性、耐水性評価を行った。得られた結果を表1および表2に示す。
【0071】
[インク相溶性]インクを調整した後、インクの各成分がきちんと溶解しているかどうかを、目視観察した。評価基準は以下のとおりである。
○:インクが透明である。
×:インクが白濁している。
【0072】
[光硬化性] 4cm角のガラス基板を用意し、パスツールピペットを用いて、ガラス基板上にインク1〜20を0.05g垂らし、ガラス基板を重ねた。その後、さらに、h線透過フィルターを重ねた後、UV照射装置((株)トプコン製のTME−400PRC)を用いて、h線を500mJ/cm
2照射した。なお、積算露光量はウシオ電機(株)製の受光器UVD−405PDを取り付けた積算光量計UIT−201で測定した。
h線照射後、重ねたガラス基板の一方を剥がし、基板表面を触指した際の硬化膜の表面状態を顕微鏡観察した。評価基準は以下のとおりである。
○:硬化膜表面に触指跡が全く残らない。
△:硬化膜表面に触指跡が僅かに残る。
×:硬化膜表面に触指跡が完全に残る。
【0073】
[水洗性]
光硬化性評価の際に得られた硬化膜が形成されたガラス基板上に、インク1〜20を垂らした。その後、脱イオン水を用いてインクを洗い流した後の硬化膜の表面状態を顕微鏡観察した。評価基準は以下のとおりである。
◎:10秒以内に硬化膜表面のインクを完全に洗い流すことができる。
○:1分以内に硬化膜表面のインクを完全に洗い流すことができる。
△:1分以上水洗しても、硬化膜表面に部分的にインクが残る。
×:1分以上水洗しても、硬化膜表面にインクが完全に残っている。
【0074】
[硬化物のPTFEシートからの剥離性]
PTFEを貼り付けたガラス基板上にインク1〜17を0.05g垂らし、窒素置換したUV硬化装置用置換ボックスに収納した。その後、h線透過フィルターを重ね、UV照射装置((株)トプコン製のTME−400PRC)を用いて、h線を500mJ/cm
2照射した。なお、積算露光量はウシオ電機(株)製の受光器UVD−405PDを取り付けた積算光量計UIT−201で測定した。
なお、h線照射後、PTFE上に形成された硬化物については、例えば、インク1から得られた硬化物を硬化物1と呼ぶ。硬化物1〜20をピンセットで摘み、PTFEシートからの剥離抵抗を調べた。評価基準は以下のとおりである。
◎:殆ど力を加えなくても硬化物が剥がれる。
○:硬化物に傷が付かない程度に力を加えれば、硬化物が剥がれる。
×:力を加えても、硬化物が剥がれない。
【0075】
[耐水性]
硬化物のPTFEシートからの剥離性評価の際に得られた硬化物を一定時間脱イオン水に浸し、硬化物の変色を観察する。評価基準は以下のとおりである。
◎:24時間後でも全く変化しない。
○:12時間後までは全く変化しないが、24時間後に多少白くなった。
○△:6時間後までは全く変化しないが、12時間後に多少白くなった。
△:1時間後までは全く変化しないが、6時間後に多少白くなった。
×:1時間以内に白くなった。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
*1:インクの光硬化性が低下したため未評価
*2:PTFEからの剥離性が低下したため未評価
*3:インクが懸濁のため未評価
【0078】
表1に示す結果から明らかなように、インク1〜13は、インクの相溶性、光硬化
また、硬化物1〜13のPTFEからの剥離性、水洗性が良好であった。
その中でも特に、硬化物1〜12のPTFEからの剥離性がより良好であり、硬化物(1〜11)の水洗性がより良好であった。
また、耐水性については、硬化物5、6、および8が特に良好で、次いで、硬化物1、3、4、7、および11が良好で、次いで、硬化物2、9、および10が良好であった。