特許第6194900号(P6194900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6194900電子部品用液状樹脂組成物及びその製造方法、並びに電子部品装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6194900
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】電子部品用液状樹脂組成物及びその製造方法、並びに電子部品装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20170904BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20170904BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20170904BHJP
   C08L 51/08 20060101ALI20170904BHJP
   C08K 5/1539 20060101ALI20170904BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20170904BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20170904BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20170904BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   C08L63/00 A
   C08L51/04
   C08L51/06
   C08L51/08
   C08K5/1539
   C08J3/20 ACFC
   H01L23/30 R
   H01L21/60 311S
【請求項の数】19
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-1368(P2015-1368)
(22)【出願日】2015年1月7日
(62)【分割の表示】特願2012-214360(P2012-214360)の分割
【原出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-71792(P2015-71792A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2015年8月31日
(31)【優先権主張番号】特願2011-285751(P2011-285751)
(32)【優先日】2011年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寿登
(72)【発明者】
【氏名】塚原 寿
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 滋
【審査官】 小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−082064(JP,A)
【文献】 特開2002−146160(JP,A)
【文献】 特開2010−254951(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/061037(WO,A1)
【文献】 特開2010−138384(JP,A)
【文献】 特開2012−193284(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/013407(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08G59,H01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、25℃で液体の環状酸無水物と、コアシェル構造をもつ粒子とを含有し、EMD型回転粘度計を用いて測定される25℃における粘度が1.2Pa・s以下であり、前記コアシェル構造をもつ粒子のコアが、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリシロキサン、並びに共重合体成分としてブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及びラウリルメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含む共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含み、無機充填材を含まないか、無機充填材の含有率が10質量%以下である、電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項2】
前記コアシェル構造をもつ粒子のコアがポリシロキサンを含む、請求項1に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項3】
前記コアシェル構造をもつ粒子の一次平均粒子径が100nm以上500nm以下である、請求項1又は請求項2に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項4】
前記コアシェル構造をもつ粒子のコアとシェルの質量比(コア/シェル)が1/10〜1/0.1である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項5】
前記コアシェル構造をもつ粒子のコアとシェルの半径比(コア半径/シェル厚み)が4.5/5.5〜9.7/0.3である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項6】
前記コアシェル構造をもつ粒子と前記25℃で液体の環状酸無水物の質量比(コアシェル構造をもつ粒子/25℃で液体の環状酸無水物)が1/1〜1/10である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項7】
前記コアシェル構造をもつ粒子のシェルが、重合成分としてアクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、アクリルアミド誘導体及びマレイミド誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む重合体を含む、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項8】
前記コアシェル構造をもつ粒子がエポキシ樹脂に予備混合された予備混合物を用いて得られる請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項9】
前記予備混合物に含まれる遊離塩素イオン量が100ppm以下である請求項8に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項10】
前記コアシェル構造をもつ粒子の含有率が前記電子部品用液状樹脂組成物全体の1質量%以上10質量%以下である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項11】
前記常温で液体の環状酸無水物の無水酸当量が200以上である請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項12】
さらに酸化防止剤を含有する請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項13】
さらにイオントラップ剤を含有する請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項14】
さらに硬化促進剤を含有する請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項15】
配線基板上に電子部品がフリップチップ接続された構造を有する電子部品装置に用いられる請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項16】
前記配線基板がフィルムを基材としている前記電子部品装置に用いられる請求項15に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【請求項17】
支持部材と、前記支持部材上に配置された電子部品と、前記支持部材及び前記電子部品を封止又は接着している請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物の硬化物と、を含む電子部品装置。
【請求項18】
コアシェル構造をもつ粒子及び第一のエポキシ樹脂の予備混合物と、第二のエポキシ樹脂と、25℃で液体の環状酸無水物と、を混合することを含む、電子部品用液状樹脂組成物の製造方法であり、前記電子部品用液状樹脂組成物は請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載の電子部品用液状樹脂組成物である、電子部品用液状樹脂組成物の製造方法。
【請求項19】
前記予備混合物に含まれる遊離塩素イオン量が100ppm以下である請求項18に記載の電子部品用液状樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品用液状樹脂組成物及びその製造方法、並びに電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランジスタ、IC等の電子部品を対象とした素子封止の分野では、電子部品の保護性能、生産性、コスト等の面から樹脂封止が主流となり、エポキシ樹脂組成物が広く用いられている。この理由としては、エポキシ樹脂が作業性、成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性のバランスがとれていることが挙げられる。COB(Chip on Board)、COG(Chip on Glass)、TCP(Tape Carrier Package)等のベアチップ実装した半導体装置においては、電子部品用液状樹脂組成物が封止材として広く使用されている。
【0003】
例えば液晶等のディスプレイでは、ディスプレイ駆動用ICの実装方法として、半導体素子を配線基板に直接バンプ接続する実装形態(フリップチップ接続方式)が採用され、電子部品用液状樹脂組成物が使用されている。この実装方法に用いられる電子部品用液状樹脂組成物は、アンダーフィル材として知られている。
【0004】
このアンダーフィル材は、上記フリップチップ接続方式による半導体実装方法において、接続端子となるバンプ間の絶縁保持及び機械的強度保持のための封止を目的として、配線基板と半導体素子の間に生じる空間に充填されて半導体装置を形成する。従ってアンダーフィル材は、(1)常温で低粘度の液体であること、(2)充填後のアンダーフィル材の熱硬化過程においての気泡(ボイド)発生を避けるために、無溶媒であること、(3)粘度の増加、浸透性の低下を避けるためにフィラー等の固形成分を含まないか、含有量を可能な限り小さくすること、(4)固形成分を含有する場合はアンダーフィル材中における固形成分の均一分散性を保ち、粘度、流動性、浸透性等を損なわない粒度分布、充填量の管理をした適切な配合であること、などの条件を満たすことが必要とされている。
【0005】
上記配線基板及び半導体装置では、配線間の間隔が狭くなる(ファインピッチ化)傾向にあり、最先端のフリップチップ実装方式の半導体装置では配線間の間隔が30μm以下のものも少なくない。そしてファインピッチ化した配線間に高い電圧が印加されることにより、電子部品用液状樹脂組成物の硬化物の絶縁信頼性を損ねる不良現象の一つであるイオンマイグレーション現象が発生することが大きな問題になっている。特に、高温高湿下では、樹脂及び配線金属の劣化が促進されるため、イオンマイグレーションが発生し易くなり、半導体装置の絶縁不良の発生の危険性がさらに高まる傾向にある。
【0006】
かかる絶縁不良を回避するため、かねてより電子部品に使用される樹脂組成物に対してはイオンマイグレーションの抑制を目的とした対策がなされてきた。例えば、金属イオン補捉剤として、無機イオン交換体を配合した樹脂組成物(例えば、特許文献1〜4参照)、ベンゾトリアジン、ベンゾトリアゾールやこれらのイソシアヌル酸付加物を配合した樹脂組成物(例えば、特許文献5〜10参照)、硬化促進剤にボレート塩を含む化合物を配合した樹脂組成物(例えば、特許文献11参照)、無水酸当量200以上の環状酸無水物を配合した樹脂組成物(例えば、特許文献12参照)、酸化防止剤を配合した樹脂組成物(例えば、特許文献13〜15参照)等が、封止材、接着剤、プリプレグ等の用途に給する樹脂組成物として公知である。
【0007】
他方、樹脂組成物にコアシェル構造をもつ粒子を添加して、樹脂組成物の硬化物と被着体の熱膨張係数のミスマッチによって生じる応力の緩和、剥離・クラックの抑制、可とう性の付与、破壊靭性の向上、耐衝撃性の向上といった物理的もしくは機械的物性を改善する方法が知られている(例えば、特許文献16参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−158492号公報
【特許文献2】特開平9−314758号公報
【特許文献3】特開2000−183470号公報
【特許文献4】特開2007−63549号公報
【特許文献5】特開2001−6769号公報
【特許文献6】特開2001−203462号公報
【特許文献7】特許第3881286号公報
【特許文献8】特開2005−72275号公報
【特許文献9】特開2005−333085号公報
【特許文献10】特許第3633422号公報
【特許文献11】特開2008−7577号公報
【特許文献12】特許第4775374号公報
【特許文献13】特開平3−39320号公報
【特許文献14】特開平10−279779号公報
【特許文献15】特開2010−254951号公報
【特許文献16】特開2010−138384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、半導体素子の接続端子のファインピッチ化、配線基板の微細配線化がさらに進み、電子部品用液状樹脂組成物には極めて狭い接続端子間、あるいは半導体素子と基板との間のギャップを隙間無く充填する性能と、絶縁耐久性能との両者を極めて高度なレベルで達成することが要求されている。これに伴い、前記の公知の対策のみではイオンマイグレーションによる絶縁不良を十分に防止することが困難となってきた。
【0010】
また、コアシェル構造をもつ粒子のような固形の粒子は、上記の性能が要求される電子部品用液状樹脂組成物に対する適用が容易ではなかった。これは、固形の粒子の添加が電子部品用液状樹脂組成物の低粘度化を妨げ、流動性や充填性能を損なう場合があること、充填不良によって発生するボイドが致命的な絶縁不良を誘発する場合があること、目開きの細かいフィルタ(例えば10μm)でろ過した際にフィルタの目詰まりが発生し、微小異物の選択的除去が困難となること、等の理由による。
【0011】
上記のように、極めて狭い接続端子間、あるいは半導体素子と基板との間のギャップを隙間無く充填する性能と、優れた絶縁耐久性能とを有する電子部品用液状樹脂組成物の実現が求められている。
【0012】
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、充填性と硬化後の耐イオンマイグレーション性の両方に優れる電子部品用液状樹脂組成物及びその製造方法、並びに電子部品装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、エポキシ樹脂と、25℃で液体の環状酸無水物と、コアシェル構造をもつ粒子とを含有し、EMD型回転粘度計を用いた25℃における粘度が1.2Pa・s以下である電子部品用液状樹脂組成物により上記の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明は、以下<1>〜<14>に関する。
<1>エポキシ樹脂と、25℃で液体の環状酸無水物と、コアシェル構造をもつ粒子とを含有し、EMD型回転粘度計を用いて測定される25℃における粘度が1.2Pa・s以下である電子部品用液状樹脂組成物。
【0015】
<2>前記コアシェル構造をもつ粒子がエポキシ樹脂に予備混合された予備混合物を用いて得られる<1>に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【0016】
<3>前記予備混合物に含まれる遊離塩素イオン量が100ppm以下である<2>に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【0017】
<4>前記コアシェル構造をもつ粒子のコアがポリシロキサン化合物を含む<1>〜<3>のいずれか1つに記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【0018】
<5>前記コアシェル構造をもつ粒子の含有率が前記電子部品用液状樹脂組成物全体の1質量%以上10質量%以下である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【0019】
<6>前記常温で液体の環状酸無水物の無水酸当量が200以上である<1>〜<5>のいずれか1つに記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【0020】
<7>さらに酸化防止剤を含有する<1>〜<6>のいずれか1つに記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【0021】
<8>さらにイオントラップ剤を含有する<1>〜<7>のいずれか1つに記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【0022】
<9>さらに硬化促進剤を含有する<1>〜<8>のいずれか1つに記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【0023】
<10>さらに無機充填剤を含有し、かつ前記無機充填剤の含有率が前記電子部品用液状樹脂組成物全体の10質量%以下である<1>〜<9>のいずれか1つに記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【0024】
<11>配線基板上に電子部品がフリップチップ接続された構造を有する電子部品装置に用いられる<1>〜<10>のいずれか1つに記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【0025】
<12>前記配線基板がフィルムを基材としている前記電子部品装置に用いられる<11>に記載の電子部品用液状樹脂組成物。
【0026】
<13>支持部材と、前記支持部材上に配置された電子部品と、前記支持部材及び前記電子部品を封止又は接着している<1>〜<12>のいずれか1つに記載の電子部品用液状樹脂組成物の硬化物と、を含む電子部品装置。
【0027】
<14>コアシェル構造をもつ粒子及び第一のエポキシ樹脂の予備混合物と、第二のエポキシ樹脂と、25℃で液体の環状酸無水物と、を混合することを含む、電子部品用液状樹脂組成物の製造方法。
【0028】
<15>前記予備混合物に含まれる遊離塩素イオン量が100ppm以下である<14>に記載の電子部品用液状樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、充填性と硬化後の耐イオンマイグレーション性の両方に優れる電子部品用液状樹脂組成物及びその製造方法、並びに電子部品装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】COF(Chip on Film)の一例を半導体素子の長辺側からみた概略断面図(a)及び短辺側からみた概略断面図(b)である。
図2】試験サンプルの配線パターンを説明する図である。
図3】耐イオンマイグレーション性を評価した結果、ショートと判定された試験サンプルにおける絶縁劣化状態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに本明細書において「常温で液体」とは25℃で流動性を示す状態であることを意味する。さらに本明細書において「液体」とは流動性と粘性を示し、かつ粘性を示す尺度である粘度が25℃において0.0001Pa・s〜10Pa・sである物質を意味する。
【0032】
本明細書において粘度とは、EMD型回転粘度計を25℃で1分間、所定の回毎分(rpm、1/60sec−1)で回転させた時の測定値に、所定の換算係数を乗じた値と定義する。上記測定値は、25±1℃に保たれた液体について、コーン角度3゜、コーン半径14mmのコーンロータを装着したEMD型回転粘度計を用いて得られる。前記回毎分及び換算係数は、測定対象の液体の粘度によって異なる。具体的には、測定対象の液体の粘度を予め大まかに推定し、推定値に応じて回毎分及び換算係数を決定する。
【0033】
本明細書では、測定対象の液体の粘度の推定値が0〜1.25Pa・sの場合は回毎分を100rpm、換算係数を0.0125とし、粘度の推定値が1.25〜2.5Pa・sの場合は回毎分を50rpm、換算係数を0.025とし、粘度の推定値が2.5〜6.25Pa・sの場合は回毎分を20rpm、換算係数を0.0625とし、粘度の推定値が6.25〜12.5Pa・sの場合は回毎分を10rpm、換算係数を0.125とする。
【0034】
<電子部品用液状樹脂組成物>
本発明の電子部品用液状樹脂組成物はエポキシ樹脂と、25℃で液体の環状酸無水物と、コアシェル構造をもつ粒子とを含有し、EMD型回転粘度計を用いて測定される25℃における粘度が1.2Pa・s以下である。前記電子部品用液状樹脂組成物は充填性と硬化後の耐イオンマイグレーション性の両方に優れる。
【0035】
すなわち、本発明は25℃で液体の環状酸無水物とコアシェル構造をもつ粒子とを併用することにより得られる硬化物の柔軟性と、狭いギャップ間を充填するのに適した粘度とを備えることにより、充填性と硬化後の耐イオンマイグレーション性の両方に優れる電子部品用液状樹脂組成物を実現した。
以下、前記電子部品用液状樹脂組成物の物性及び成分について説明する。
【0036】
[粘度]
前記電子部品用液状樹脂組成物は、EMD型回転粘度計を用いた25℃における粘度が1.2Pa・s以下である。前記粘度が1.2Pa・sを超えると、近年の電子部品の小型化、半導体素子の接続端子のファインピッチ化、配線基板の微細配線化に対応可能な流動性及び浸透性を確保できない場合がある。前記粘度は0.8Pa・s以下であることがより好ましく、0.7Pa・s以下であることがさらに好ましい。前記粘度の下限に特に制限はないが、実装性の観点から0.01Pa・s以上であることが好ましく、0.1Pa・s以上であることがさらに好ましい。
【0037】
前記粘度は封止や接着の対象となる電子部品及び電子部品装置の種類に応じて、上記で例示した各成分の種類や含有量を制御することによって適宜調整が可能である。
【0038】
[エポキシ樹脂(A)]
前記電子部品用液状樹脂組成物はエポキシ樹脂(A)を含む。前記エポキシ樹脂(A)は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることが好ましく、電子部品用液状樹脂組成物に一般に使用されているエポキシ樹脂を特に制限なく用いることができる。
【0039】
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ナフタレンジオール、水添ビスフェノールA等とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール化合物とアルデヒド化合物とを縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂;フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
前記エポキシ樹脂は、電子部品用液状樹脂組成物が全体として常温で液体であれば、エポキシ樹脂自体が常温で固形、液体のどちらか一方であってもよく、両者を併用してもよい。中でも、電子部品用液状樹脂組成物の低粘度化の観点からは常温で液体のエポキシ樹脂が好ましく、環状酸無水物との反応性の観点からはグリシジルエーテル型の液体エポキシ樹脂がより好ましく、中でもビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS等とエピクロルヒドリンとの反応により得られるビスフェノール型の液体エポキシ樹脂がさらに好ましい。
【0041】
さらに、これらのエポキシ樹脂は、耐イオンマイグレーション性をより向上させるため、イオンマイグレーション発生の一要因となるイオン性不純物の含有量が低いことが好ましい。このイオン性不純物としては、遊離Naイオンや遊離Clイオンが金属の腐食やイオンマイグレーションを促進させる要因であることが知られている。このため、前記エポキシ樹脂(A)中に含まれる遊離Naイオン及び遊離Clイオンの含有量が小さいことが好ましい。特に遊離Clイオンの含有量は、可能な限り低減された状態であることが好ましい。実用上は、遊離Clイオンの含有量を500ppm以下に抑制することで、電子部品用液状樹脂組成物としての耐イオンマイグレーション性向上効果を十分に発揮できるが、400ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましい。
【0042】
前記エポキシ樹脂の含有率は、流動性、硬化物性制御の観点から前記電子部品用液状樹脂組成物中に10質量%〜100量%であることが好ましく、20質量%〜90質量%であることがより好ましく、30質量%〜80質量%であることがさらに好ましい。
【0043】
[常温で液体の環状酸無水物(B)]
前記電子部品用液状樹脂組成物は常温で液体の環状酸無水物(B)を含む。常温で液体の環状酸無水物(B)は、例えばエポキシ樹脂(A)の硬化剤として機能する。また、常温で液体であることにより電子部品用液状樹脂組成物の流動性が向上する。さらに、常温で液体の環状酸無水物とコアシェル構造をもつ粒子とを組み合わせることにより金属の溶出を抑制し、接着性が向上するという効果が生じ、ファインピッチ化した電子部品装置に対する耐イオンマイグレーション性を向上させることができる。
【0044】
「環状酸無水物」とは、無水フタル酸に代表されるように「−CO−O−CO−」の二個の炭素原子Cがそれぞれ他の2個の炭素原子と化学結合しており、前記2個の炭素原子が直接又は1個以上の原子を介して結合して環状になっているものを示す。
【0045】
前記常温で液体の環状酸無水物は、流動性の観点からEMD型回転粘度計を用いた25℃における粘度が10Pa・s以下であることが好ましく、5Pa・s以下であることがより好ましく、1Pa・s以下であることがさらに好ましい。EMD型回転粘度計を用いた25℃における粘度の下限は、環状酸無水物の化学的安定性と安全性の観点から0.001Pa・s以上であることが好ましく、0.005Pa・s以上であることがより好ましく、0.01Pa・s以上であることがさらに好ましい。
【0046】
前記常温で液体の環状酸無水物(B)の無水酸当量は、好ましくは160以上であり、より好ましくは200以上である。「無水酸当量」は、(酸無水物の分子量)/(酸無水物分子内の無水酸基の数)で示される。無水酸当量を160以上とすることによって、硬化物中のエステル結合が減少するため、高温高湿下における加水分解の影響が最小限に抑えられ、耐湿性、特に耐イオンマイグレーション性が向上する。また、前記エステル結合の減少によって吸水率も減少するため、吸湿した水分に溶け出すCl等のイオン性不純物量が低減でき、耐イオンマイグレーション性がより向上する。この現象は、無水酸当量が200以上の環状酸無水物を使用することで、さらにより効果的に作用する。さらに、常温で液体かつ無水酸当量が200以上の環状酸無水物とコアシェル構造をもつ粒子とを併用することにより金属の溶出を抑制し、接着性が向上するという相乗効果が得られ、ファインピッチ化した電子部品装置に対しても十分な耐マイグレーション性を確保することができる。
【0047】
無水酸当量が160以上であり、常温で液体の環状酸無水物としては、例えば、無水酸当量が234である三菱化学株式会社製、商品名:YH306等が市販品として入手可能である。
【0048】
前記常温で液体の環状酸無水物(B)の構造は特に制限は無いが、耐イオンマイグレーション性の観点から分子中に塩素、臭素等のハロゲン原子、エステル結合を含まないことが好ましい。
【0049】
前記常温で液体の環状酸無水物(B)としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、メチルハイミック酸無水物、ハイミック酸無水物、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、クロレンド酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸マレイン酸付加物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物、無水マレイン酸とジエン化合物からディールス・アルダー反応で得られ、複数のアルキル基を有するアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。上記環状酸無水物の中でも耐イオンマイグレーション性向上の観点からトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸が好ましい。
【0050】
前記電子部品用液状樹脂組成物は、常温で液体の環状酸無水物(B)以外の硬化剤を含んでもよい。前記硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として一般に使用されているものを用いることができる。例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ラロミン(「ラロミン」は登録商標)、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリシクロヘキシルポリアミン混合物、N−アミノエチルピペラジン等のアミン化合物、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2−メチルイミダゾイル−(1))エチル−s−トリアジン、2−フェニルイミダゾリン、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ(1,2−a)ベンズイミダゾール等のイミダゾール化合物、3級アミン、DBU、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、N,N−ジメチル尿素誘導体などが挙げられる。中でも、低粘度化の観点からはアミン化合物が好ましい。
【0051】
前記電子部品用液状樹脂組成物が常温で液体の環状酸無水物(B)以外の硬化剤を含む場合、常温で液体の環状酸無水物(B)の含有率は、その性能を発揮するために硬化剤全量に対して30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。
【0052】
エポキシ樹脂(A)と、常温で液体の環状酸無水物(B)を含む全硬化剤との当量比は特に制限は無いが、それぞれの未反応分を少なく抑えるために、エポキシ樹脂(A)に対して全硬化剤を0.6〜1.6当量の範囲に設定することが好ましく、0.7〜1.4当量がより好ましく、0.8〜1.2当量がさらに好ましい。0.6〜1.6当量の範囲とすることで、硬化反応が十分に進行し、硬化不良に伴う信頼性の低下を避けることができる。ここで、当量とは反応当量であり、例えば、酸無水物の無水酸当量は、エポキシ基1個に対し酸無水物基1個が反応するものとして計算され、フェノール樹脂の当量は、エポキシ基1個に対しフェノール性水酸基1個が反応するものとして計算され、アミンの当量は、エポキシ基1個に対しアミノ基の活性水素1個が反応するものとして計算される。
【0053】
[コアシェル構造をもつ粒子(C)]
本発明の電子部品用液状樹脂組成物はコアシェル構造をもつ粒子(C)を含む。前記コアシェル構造をもつ粒子(C)に特に制限はなく、公知のものを用いることができる。「コアシェル構造をもつ粒子」とは、核となる粒子の表面の一部もしくは表面全体が皮膜によって覆われた構造を有する粒子を意味する。コアシェル構造をもつ粒子(C)を含むことにより、電子部品用液状樹脂組成物に可とう性が付与され、接着力が向上すると共に金属の溶出が抑制され、耐マイグレーション効果を向上できる。
【0054】
前記コアシェル構造をもつ粒子(C)の形状は均一分散性の観点から球形に近いことが好ましい。前記コアシェル構造をもつ粒子(C)の一次粒子平均粒径は5nm以上1000nm以下が好ましく、10nm以上800nm以下がより好ましく、100nm以上500nm以下がさらに好ましい。一次粒子平均粒径を5nm以上とすることで粒子同士の凝集を防ぎ、一次粒子としての分散性をより高めることができる。また、一次粒子平均粒径を1000nm以下とすることで、細かい目開きのフィルタで電子部品用液状樹脂組成物をろ過することができ、絶縁信頼性を低下させる要因となる不純物の除去を妨げることなく、高純度な電子部品用液状樹脂組成物を得ることができる。なお、本明細書において、「平均粒径」は、レーザー回折・散乱法を用い、粒径を階級、体積を度数とし、度数の累積で表記された積算分布において、積算分布が50%となる粒径を意味する。
【0055】
前記コアシェル構造をもつ粒子(C)の核となるコア材としては、ポリブタジエン;ポリイソプレン;ポリクロロプレン;ポリシロキサン;ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート等の共重合体であるゴム弾性体などが挙げられる。中でも、高耐熱性、低吸水性、高温高湿環境下における電子部品との接着保持性の観点から、ポリシロキサンを成分とするコア材が好ましい。
【0056】
前記コアシェル構造をもつ粒子(C)の外層となるシェル層としては、アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、アクリルアミド誘導体、マレイミド誘導体等の成分の重合体等から構成されたものを用いることができる。エポキシ樹脂中での均一分散性が良好であり、目開きの細かいフィルタを用いたろ過によって微小異物の選択的な除去が図れる観点から、アクリル酸エステルを成分とするシェル層が好ましい。
【0057】
ポリシロキサンを成分とするコア材とアクリル酸エステルを成分とするシェル層からなるコアシェル構造をもつ粒子としては、例えばWackerChemie社製、商品名:GENIOPERL(「GENIOPERL」は登録商標)、Rohm&Haas社製、商品名:PARALOID(「PARALOID」は登録商標)、ガンツ化成株式会社製、商品名:F351等が市販品として利用できる。
【0058】
前記コアシェル構造をもつ粒子(C)のコア材とシェル層の質量比(コア/シェル)は、アンダーフィル材として適切な弾性率、接着性を発現する観点から1/150〜1/0.01であることが好ましく、1/10〜1/0.1であることがより好ましい。
【0059】
前記コアシェル構造をもつ粒子(C)のコア材とシェル層の半径比(コア半径/シェル厚み)は、アンダーフィル材として適切な弾性率、接着性を発現する観点から、1.9/8.1〜9.97/0.03であることが好ましく、4.5/5.5〜9.7/0.3であることがより好ましい。
【0060】
前記電子部品用液状樹脂組成物にはコアシェル構造をもつ粒子(C)そのものを混合してもよいし、アルコールやケトン等の有機溶媒、エポキシ樹脂、その他液状の有機化合物中にコアシェル構造をもつ粒子(C)を予備混合によって分散させて得た予備混合物(C1)を混合してもよい。
【0061】
(予備混合物C1)
前記コアシェル構造をもつ粒子(C)は、電子部品用液状樹脂組成物中に均一に分散し、かつコアシェル構造をもつ粒子(C)が一次粒子の状態で安定して均一分散していることが、耐イオンマイグレーション性を向上させるために好ましい。このような分散状態を得るためには、コアシェル構造をもつ粒子(C)を予め有機溶媒、エポキシ樹脂、その他液状の有機化合物等に混合・分散させて得た予備混合物(C1)を電子部品用液状樹脂組成物中に混合することが効果的である。
【0062】
予備混合物(C1)は、例えば高圧湿式微粒化装置を使用し、25℃〜80℃の温度で30分間分散処理することにより調製することができる。前記高圧湿式微粒化装置としては、例えば、(吉田機械興業株式会社製、商品名:ナノマイザーNM−2000AR(「ナノマイザー」は登録商標))を用いることができる。予備混合物(C1)中のコアシェル構造をもつ粒子(C)の含有率は、被着体との接着耐久性と耐イオンマイグレーション性の観点から1質量%〜70質量%であることが好ましく、5質量%〜60質量%であることがより好ましい。
【0063】
特に、予備混合物(C1)がコアシェル構造をもつ粒子(C)とエポキシ樹脂(A1)との混合物であることで、エポキシ樹脂(A)との相溶性や、エポキシ樹脂と常温で液体の環状酸無水物(B)との反応性を向上させ、コアシェル構造をもつ粒子(C)を電子部品用液状樹脂組成物の硬化物中に均一に分散させることができ、電子部品用液状樹脂組成物の耐イオンマイグレーション性をより向上させることができる。さらに、調製工程の効率化や量産性を高めることができる。
【0064】
予備混合物(C1)に含まれるエポキシ樹脂(A1)と電子部品用液状樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂(A)とは同一の化合物であっても異なる化合物であってもよい。上記予備混合物およびエポキシ樹脂(A)に液状樹脂組成物としてのエポキシ当量に応じた常温で液体の環状酸無水物(B)を配合することで、電子部品用液状樹脂組成物を得ることができる。
【0065】
コアシェル構造をもつ粒子(C)を分散させるエポキシ樹脂(A1)としては、例えば、前記エポキシ樹脂(A)で例示したエポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、常温において低粘度の液体であるものが好ましい。
【0066】
コアシェル構造をもつ粒子(C)が、上記のエポキシ樹脂(A1)中に一次粒子の状態で安定して均一分散し、かつ電子部品用液状樹脂組成物として十分低い粘度の液体という性状を維持できる予備混合物(C1)としては、株式会社カネカ製、商品名:カネエースMX(MX−136:コアシェル構造をもつ粒子25質量%、MX−960:コアシェル構造をもつ粒子25質量%、等(「カネエース」は登録商標))が市販品として入手、利用できる。
【0067】
前記コアシェル構造をもつ粒子(C)とエポキシ樹脂(A1)との混合物(C1)中に含まれる遊離Naイオン及び遊離Clイオンの含有量、特に遊離Clイオンの含有量は、前記電子部品用液状樹脂組成物の耐イオンマイグレーション性をさらに向上させる観点から可能な限り低減された状態であることが好ましい。実用上は、遊離Clイオンの含有量を100ppm以下に低減することで電子部品用液状樹脂組成物の耐イオンマイグレーション性向上効果をさらに発揮できるが、80ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。
【0068】
前記コアシェル構造をもつ粒子(C)の含有率は、電子部品用液状樹脂組成物に対して1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上9.0質量%以下であることがより好ましい。含有率を1.0質量%以上とすることで、耐イオンマイグレーション性を向上する効果がより発揮できる。含有率を10.0質量%以下とすることで、液状樹脂組成物の流動性、電子部品の狭いギャップ中への含浸性を実用上充分な程度に確保することができる。
【0069】
前記コアシェル構造をもつ粒子(C)と前記常温で液体の環状酸無水物(B)の質量比((C)/(B))は、接着耐久性、耐マイグレーション性向上の観点から1/0.5〜1/50であることが好ましく、1/1〜1/10であることがより好ましく、1/2〜1/5であることがさらに好ましい。
【0070】
[酸化防止剤(D)]
前記電子部品用液状樹脂組成物は、酸化防止剤(D)をさらに含むことが好ましい。前記酸化防止剤(D)を含むことにより、耐イオンマイグレーション性をさらに向上でき、硬化物の劣化をより確実に抑制できる。酸化防止剤に特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。酸化防止剤としては、フェノール性水酸基のオルト位に少なくとも1つのアルキル基を有するフェノール化合物系酸化防止剤、ジシクロヘキシルアミン、有機硫黄化合物系酸化防止剤、アミン化合物系酸化防止剤、リン化合物系酸化防止剤等が挙げられる。
【0071】
フェノール性水酸基のオルト位に少なくとも1つのアルキル基を有するフェノール化合物系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、2,4−1−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ジエチル[〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル〕メチル]ホスホネート、2,5,7,8−テトラメチル−2−(4’,8’,12’−トリメチルトリデシル)クロマン−6−オール、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0072】
ジシクロヘキシルアミンとしては、新日本理化株式会社製、商品名:D−CHA−T等が市販品として入手可能であり、その誘導体としては、亜硝酸ジシクロヘキシルアミンアンモニウム、N,N−ビス(3−メチル−シクロヘキシル)アミン、N,N−ビス(2−メトキシ−シクロヘキシル)アミン、N,N−ビス(4−ブロモ−シクロヘキシル)アミン等が挙げられる。
【0073】
有機硫黄化合物系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾール、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、2,4−1−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0074】
アミン化合物系酸化防止剤としては、N,N’−ジアリル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、オクチル化ジフェニルアミン、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0075】
リン化合物系酸化防止剤としては、トリスノニルフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2−[〔2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエ−テル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル〕オキシ]−N,N−ビス[2−{〔2,4,8,10−テトラキス(1,1ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル〕オキシ}−エチル]エタナミン、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、ジエチル[〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル〕メチル]ホスホネート等が挙げられる。
【0076】
上記酸化防止剤は1種を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なお、前記酸化防止剤のうちフェノール性水酸基と、リン原子、硫黄原子又はアミンのいずれかを一つ以上同一分子中に含む化合物の中には、フェノール化合物系酸化防止剤の群とその他の酸化防止剤の群とに重複して記載されているものが含まれている。
【0077】
前記酸化防止剤の中でも、特にフェノール性水酸基のオルト位に少なくとも1つのアルキル基を有するフェノール化合物系酸化防止剤及びジシクロヘキシルアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種が耐イオンマイグレーション性向上の観点からより好ましい。フェノール性水酸基のオルト位に少なくとも1つのアルキル基を有するフェノール化合物系酸化防止剤では、オルト位のアルキル基が電子供与基であるため、フェノール水酸基の酸素原子の不対電子部位において電子濃度が高まり、酸化防止剤が陽極金属表面に配位して金属の酸化劣化を抑制し、耐イオンマイグレーション性がより向上すると考えられる。また、ジシクロヘキシルアミンでは、アミンの窒素原子の不対電子部位において電子濃度が高まり、酸化防止剤が陽極金属表面に配位して金属の酸化劣化を抑制し、耐イオンマイグレーション性がより向上すると考えられる。
【0078】
さらに前記フェノール性水酸基のオルト位に少なくとも1つのアルキル基を有するフェノール化合物系酸化防止剤としては、一般に固形又は粉末の性状の化合物が知られている。電子部品用液状樹脂組成物の粘度、浸透性、流動性の低下を避けるためには、電子部品用液状樹脂組成物の一成分となるエポキシ樹脂(A)に対し、電子部品用液状樹脂組成物が硬化した際に十分な耐イオンマイグレーション性を有する程度に溶解することがさらに好ましい。具体的には、一般のエポキシ樹脂、例えば、本発明でも常温で液体のエポキシ樹脂として使用される周知のビスフェノールF型エポキシ樹脂に対する飽和溶解量が5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。前記飽和溶解量が5質量%以上であると、フェノール化合物系酸化防止剤がエポキシ樹脂に溶解することにより、フェノール化合物系酸化防止剤が電子部品用液状樹脂組成物中に均一に分散することができ、耐イオンマイグレーション性がより高まる傾向にある。ここで、前記の飽和溶解量は、電子部品用液状樹脂組成物の塗布が通常は室温で行われることから、電子部品用液状組成物の安定性を考慮して、室温(25℃)での値である。
【0079】
前記フェノール性水酸基のオルト位に少なくとも1つのアルキル基を有するフェノール化合物系酸化防止剤のうち、上記飽和溶解量が5質量%以上であるフェノール化合物系酸化防止剤の例としては4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
【0080】
さらに前記常温で液体のエポキシ樹脂に溶解するフェノール化合物系酸化防止剤の中でも、フェノール核のオルト位に1つのメチル基を有するフェノール化合物系酸化防止剤は耐イオンマイグレーション性の向上効果がより大きい傾向にある。これは、メチル基は立体障害が少なく、かつ電子供与基であり、酸化防止剤のフェノール水酸基の不対電子が、より陽極金属表面に配位しやすいためと考えられる。このようなフェノール化合物系酸化防止剤としては、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
【0081】
また、ジシクロヘキシルアミンは、常温における性状が液体である。このため、固形又は粉末の酸化防止剤と比較して電子部品用液状樹脂組成物の粘度、浸透性、流動性を損なわずに均一に分散するという利点がある。
【0082】
前記電子部品用液状樹脂組成物が酸化防止剤を含む場合、その含有率は耐イオンマイグレーション性向上の観点から0.005質量%〜0.5質量%であることが好ましく、0.01質量%〜0.1質量%であることがより好ましい。
【0083】
前記電子部品用液状樹脂組成物がフェノール性水酸基のオルト位に少なくとも1つのアルキル基を有するフェノール化合物系酸化防止剤を含む場合、その含有率はエポキシ樹脂(A)に対して0.1質量%〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5質量%〜5.0質量%である。含有率を0.1質量%以上とすることでイオンマイグレーションの抑制効果をさらに発揮することができ、10質量%以下とすることで電子部品用液状樹脂組成物の流動性低下をより確実に抑制することができる。なお、前記フェノール性水酸基のオルト位に少なくとも1つのアルキル基を有するフェノール化合物系酸化防止剤のエポキシ樹脂(A)に対する飽和溶解量Xが5質量%<X質量%<10質量%である場合の含有率は、0.1質量%〜X質量%が好ましく、より好ましくは0.5質量%〜5.0質量%である。
【0084】
電子部品用液状樹脂組成物がジシクロヘキシルアミンを含む場合、その含有率はエポキシ樹脂(A)に対して0.1質量%〜30質量%が好ましく、より好ましくは0.5質量%〜10質量%である。含有率を0.1質量%以上とすることでイオンマイグレーションの抑制効果をさらに発揮することができ、30質量%以下とすることで電子部品用液状樹脂組成物の保存安定性の低下及び硬化物のガラス転移温度の低下をより確実に避けることができる。
【0085】
[イオントラップ剤(E)]
前記電子部品用液状樹脂組成物は、イオントラップ剤(E)をさらに含むことが好ましい。イオントラップ剤(E)を含むことにより、耐イオンマイグレーション性、耐湿性及び高温放置特性がより向上する傾向にある。
【0086】
前記電子部品用液状樹脂組成物がイオントラップ剤(E)を含む場合、その含有量は配線板及び半導体装置への適用時における電子部品用液状樹脂組成物の充填性や流動性を損なわない範囲であり、ハロゲンイオン等の陰イオンを捕捉するのに十分であれば特に制限はない。例えば、イオントラップ剤(E)の含有率は耐イオンマイグレーション性の観点から電子部品用液状樹脂組成物に対して0.1質量%〜3.0質量%が好ましく、より好ましくは0.3質量%〜1.5質量%である。イオントラップ剤の平均粒径は、流動性確保の観点からは0.1μm〜3.0μmが好ましく、最大粒径は異物除去性の観点からは10μm以下が好ましい。イオントラップ剤としては特に制限は無く、従来公知のものを用いることができる。特に、下記組成式(I)で表されるハイドロタルサイト又は下記組成式(II)で表されるビスマスの含水酸化物が好ましい。
【0087】
Mg1−XAl(OH)(COX/2・mHO (I)
(式(I)中、0<X≦0.5、mは正の数)
【0088】
BiO(OH)(NO (II)
(式(II)中、0.9≦x≦1.1、0.6≦y≦0.8、0.2≦z≦0.4)
【0089】
なお、上記式(I)の化合物は、市販品として協和化学工業株式会社製、商品名:DHT−4Aとして入手可能である。また、上記式(II)の化合物は、市販品として東亞合成株式会社製、商品名:IXE500として入手可能である。また、必要に応じてその他のイオントラップ剤を用いてもよい。例えば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、アンチモン等から選ばれる元素の含水酸化物などが挙げられる。これらのイオントラップ剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
[硬化促進剤(F)]
前記電子部品用液状樹脂組成物は、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進する硬化促進剤(F)をさらに含むことが好ましい。硬化促進剤としては、電子部品用液状樹脂組成物の硬化性とポットライフを両立するためには、潜在性硬化促進剤が効果的である。潜在性硬化促進剤とは、ある特定の温度等の条件の下で硬化促進機能が発現されるものである。例えば、通常の硬化促進剤が、マイクロカプセル等で保護されたり、各種化合物と付加した塩の構造となっていたりするものが挙げられる。潜在性硬化促進剤は、特定の温度を超えるとマイクロカプセルや付加物から硬化促進剤が開放されて硬化促進機能を発現する。
【0091】
潜在性硬化促進剤の例としては、常温で固体のアミノ基を有する化合物からなるコアを常温で固体のエポキシ化合物からなるシェルで被覆してなる潜在性硬化促進剤が挙げられる。このような潜在性硬化促進剤の市販品として、味の素ファインテクノ株式会社製、商品名:アミキュア(「アミキュア」は登録商標)や、マイクロカプセル化されたアミンをビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂に分散させた旭化成イーマテリアルズ株式会社製、商品名:ノバキュア(「ノバキュア」は登録商標)等が使用できる。
【0092】
さらには、電子部品用液状樹脂組成物系に不溶であり、常温で固体の粒子であり、加熱成形時に解離して硬化促進作用を発現するアミン化合物又はリン化合物の塩類及びこれらにπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物も潜在性硬化促進剤として使用できる。
【0093】
これらの化合物の例としては、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]ノネン、5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物とπ結合をもつ化合物とを付加してなる分子内分極を有する化合物;トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物の誘導体;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物の誘導体;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物に、無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂などのπ結合をもつ化合物を付加してなる、分子内分極を有するリン化合物、及びこれらの誘導体;トリフェニルホスフィントリフェニルボロン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のフェニルボロン塩及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
上記硬化促進剤の中でも、保存安定性、速硬化性の観点からは、マイクロカプセル化されたアミンをビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂に分散させたものが好ましい。
【0095】
前記電子部品用液状樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、潜在性硬化促進剤のみを含んでも、非潜在性硬化促進剤のみを含んでも、両者を併用してもよい。前記電子部品用液状樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、その含有率は硬化促進効果が達成される量であれば特に制限されるものではない。例えば、エポキシ樹脂全量に対して0.1質量%〜40質量%が好ましく、より好ましくは0.5質量%〜30質量%である。前記含有率を0.1質量%以上とすることで、短時間での硬化性を向上させることができる。前記含有率を40質量%以下とすることで、硬化速度が速すぎて制御が困難になったり、ポットライフ、シェルライフ等の保存安定性が劣ったりする傾向を避けることができる。
【0096】
[無機充填剤(G)]
前記電子部品用液状樹脂組成物は、無機充填剤(G)をさらに含むことが好ましい。無機充填剤(G)を含むことで、電子部品用液状樹脂組成物が硬化した際の熱膨張係数をより効果的に制御でき、クラック、剥離の発生をより確実に抑制できる。
【0097】
無機充填剤は電子部品用液状樹脂組成物に一般に使用されるものでよく、特に制限はない。無機充填剤としては、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミニウム、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。さらにはアルコキシド化合物の加水分解・縮合反応により得られるナノシリカ等の無機ナノ粒子を充填剤として用いることも出来る。これらの無機充填剤は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0098】
無機充填剤の形状は、流動性等の成形性の観点から球形に近いことが好ましい。無機充填剤の平均粒径は、5nm〜10μmの範囲が好ましく、10nm〜1μmの範囲がより好ましい。平均粒径を10μm以下とすることで、無機充填剤の沈降を防ぎ、電子部品用液状樹脂組成物の微細ギャップへの浸透性・流動性の低下や、未充填をより確実に避けることができる。必要に応じて表面をカップリング剤で処理した無機充填剤を用いてもよい。
【0099】
前記電子部品用液状樹脂組成物が無機充填剤(G)を含む場合の含有率は、ギャップ間の充填性や流動性を損なわない範囲とすることが好ましい。例えば、電子部品用液状樹脂組成物の10質量%以下が好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。含有率を10質量%以下とすることで、電子部品用液状樹脂組成物の硬化物とフィルム基板を用いたフレキシブル配線板との線膨張係数差の増大による界面での剥離をより確実に防ぐことができる。また、電子部品用液状樹脂組成物の粘度上昇や表面張力の増加を避けることができるため、流動性を確保しつつ熱膨張係数の制御や、クラック、剥離をより確実に抑制できる。無機充填剤(G)の含有率は、熱膨張係数制御の観点から0.1質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。
【0100】
[カップリング剤]
前記電子部品用液状樹脂組成物は、カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤を含むことにより、電子部品用液状樹脂組成物と電子部品との濡れ性や接着性を向上できる傾向にある。カップリング剤に特に制限は無く、従来公知のものを用いることができる。例えば、1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基からなる群より選択される少なくとも1つを有するシラン化合物、エポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシラン化合物、チタン化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウム/ジルコニウム化合物などが挙げられる。カップリング剤は1種を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
カップリング剤の中でもシランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0102】
チタネートカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等が挙げられる。
【0103】
前記電子部品用液状樹脂組成物がカップリング剤を含む場合、その含有率は電子部品用液状樹脂組成物に対して0.037質量%〜5.0質量%であることが好ましく、0.05質量%〜4.75質量%であることがより好ましく、0.1質量%〜2.5質量%であることがさらに好ましい。含有率を0.037質量%以上とすることで、基板と電子部品用液状樹脂組成物との密着性を向上させることができる。含有率を5.0質量%以下とすることで、ガラス転移温度や曲げ強度等の物性の低下をより確実に避けることができる。
【0104】
[レベリング剤]
前記電子部品用液状樹脂組成物はレべリング剤を含んでもよい。レべリング剤を含むことで、電子部品用液状樹脂組成物の電子部品に対する濡れ性や浸透性を制御できる。レベリング剤に特に制限はなく、例としては一般的なシリコーン変性エポキシ樹脂を挙げることができる。シリコーン変性エポキシ樹脂の添加は電子部品用液状樹脂組成物のレベリング性及びフィレット形成性の向上、ボイドの低減に効果が有る。流動性確保の観点からは常温で液体であるシリコーン変性エポキシ樹脂が好ましい。シリコーン変性エポキシ樹脂は、液体の表面に局在化し、液体の表面張力を下げることができる。これにより、液体の濡れ性が高くなり、流動しやすくなるため、狭ギャップへの浸透性向上や巻き込みボイドの低減に効果がある。
【0105】
シリコーン変性エポキシ樹脂は、エポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンとエポキシ樹脂との反応物として得ることができる。具体的には、エポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンとエポキシ樹脂とを130℃〜150℃で6時間〜8時間混合する方法が挙げられる。
【0106】
シリコーン変性エポキシ樹脂を得るためのエポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンの例としては、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、フェノール性水酸基、メルカプト基等を1分子中に1個以上有するジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサンなどが挙げられる。オルガノシロキサンの重量平均分子量としては500〜5000の範囲が好ましい。重量平均分子量を500以上とすることで樹脂系との過剰な相溶性を防ぎ、添加剤としての効果を十分に発揮することができる。重量平均分子量を5000以下とすることでレベリング剤の成形時の分離・しみ出しを防ぎ、接着性や外観を損なうこと無く、流動性や濡れ性を向上させることができる。
【0107】
シリコーン変性エポキシ樹脂を得るためのエポキシ樹脂としては、電子部品用液状樹脂組成物の樹脂系に相溶するものであれば特に制限は無く、電子部品用液状樹脂組成物に一般に使用されているエポキシ樹脂を用いることができる。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ナフタレンジオール、水添ビスフェノールA等とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール化合物とアルデヒド化合物とを縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂;フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。低粘度化の観点からは、常温で液体のエポキシ樹脂が好ましい。
【0108】
前記電子部品用液状樹脂組成物がレべリング剤を含む場合、その含有率は流動性、濡れ性制御の観点から電子部品用液状樹脂組成物に対して0.005質量%〜1.0質量%であることが好ましく、0.01質量%〜0.1質量%であることがより好ましく、0.015質量%〜0.08質量%であることがさらに好ましい。
【0109】
[難燃剤]
前記電子部品用液状樹脂組成物は難燃剤を含んでもよい。難燃剤を含むことにより、電気的ショートが発生した場合の燃焼の拡大を抑制できる。難燃剤としては、臭素化エポキシ樹脂や三酸化アンチモンを用いることができる。安全性、環境対応性の観点からはノンハロゲン、ノンアンチモンの難燃剤を用いるのが好ましい。ノンハロゲン、ノンアンチモンの難燃剤としては、赤リン、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂等で被覆された赤リン、リン酸エステル、酸化トリフェニルホスフィン等のリン化合物、メラミン、メラミン誘導体、メラミン変性フェノール樹脂、トリアジン環を有する化合物、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体等の窒素含有化合物、シクロホスファゼン等のリン及び窒素含有化合物、ジシクロペンタジエニル鉄等の金属錯体化合物、酸化亜鉛、錫酸亜鉛、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等の亜鉛化合物、酸化鉄、酸化モリブデン等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、下記組成式(III)で示される複合金属水酸化物などが挙げられる。
【0110】
p(M)・q(M)・r(M)・mHO (III)
(組成式(III)で、M、M及びMは互いに異なる金属元素を示し、a、b、c、d、p、q及びmは正の数、rは0又は正の数を示す。)
【0111】
上記組成式(III)中のM、M及びMは互いに異なる金属元素であれば特に制限はない。難燃性の観点からは、Mが第3周期の金属元素、IIA族のアルカリ土類金属元素、IVB族、IIB族、VIII族、IB族、IIIA族及びIVA族に属する金属元素からなる群より選ばれ、MがIIIB〜IIB族の遷移金属元素からなる群より選ばれることが好ましく、Mがマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群より選ばれ、Mが鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛からなる群より選ばれることがより好ましい。流動性の観点からは、Mがマグネシウム、Mが亜鉛又はニッケルで、r=0のものが好ましい。p、q及びrのモル比は特に制限はないが、r=0で、p/qが1/99〜1/1であることが好ましい。なお、金属元素の上記の分類は、典型元素をA亜族、遷移元素をB亜族とする長周期型の周期律表に基づいている。上記した難燃剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
[希釈剤]
前記電子部品用液状樹脂組成物は希釈剤を含んでもよい。希釈剤を含むことで、電子部品用液状樹脂組成物の粘度を容易に調整できる。希釈剤に特に制限はないが、相溶性の観点からはエポキシ基を有する反応性希釈剤が好ましい。エポキシ基を有する反応性希釈剤としては、n−ブチルグリシジルエーテル、バーサティック酸グリシジルエーテル、スチレンオキサイド、エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの希釈剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
[その他の添加剤]
前記電子部品用液状樹脂組成物は、必要に応じて上記成分以外のその他の添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては染料、カーボンブラック、酸化チタン、鉛丹等の着色剤、応力緩和剤、消泡剤、接着促進剤などが挙げられる。電子部品用液状樹脂組成物がこれらの添加剤を含む場合は、配線板及び半導体装置への適用時における電子部品用液状樹脂組成物の充填性や流動性を損なわない範囲で添加することが好ましい。
【0114】
[電子部品用液状樹脂組成物の調製方法]
前記電子部品用液状樹脂組成物の調製方法は、上記成分を均一に分散混合できるのであれば特に制限はない。一般的な方法の例としては、所定量の成分をらいかい機、ミキシングロール、プラネタリミキサ、高圧湿式微粒化装置等を用いて混合、混練し、必要に応じて脱泡する方法を挙げることができる。
【0115】
上記方法は、コアシェル構造をもつ粒子及び第一のエポキシ樹脂の予備混合物と、第二のエポキシ樹脂と、25℃で液体の環状酸無水物と、を混合することを含むものであってもよい。
【0116】
<電子部品装置>
本発明の電子部品装置は、支持部材と、前記支持部材上に配置された電子部品と、前記電子部品を封止又は接着している前記電子部品用液状樹脂組成物の硬化物と、を含む。前記電子部品の封止又は接着に前記電子部品用液状樹脂組成物を使用するので、イオンマイグレーションを主原因とする電子部品の絶縁不良を低減することができる。このため、ファインピッチ化した電子部品であっても長期絶縁信頼性を確保することができる。
【0117】
前記電子部品装置の例としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、リジッド又はフレキシブルな配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等の受動素子などの電子部品を実装し、必要な部分を前記電子部品用液状樹脂組成物で封止又は接着して得られる電子部品装置が挙げられる。
【0118】
前記電子部品用液状樹脂組成物は特に、フィルムを基材とする配線基板上に電子部品を直接バンプ接続した電子部品装置の封止に用いる場合に、狭いギャップ間の絶縁性能をより顕著に発揮することができる。このような電子部品装置の例としては、リジッド又はフレキシブルな配線板やガラス等の支持部材上に形成した配線に半導体素子をバンプ接続によりフリップチップボンディングした半導体装置が挙げられる。前記半導体装置の具体的な例としては、フリップチップBGA、COF(Chip On Film)、COG(Chip On Glass)等が挙げられる。前記電子部品用液状樹脂組成物は特に、優れた耐イオンマイグレーション性が要求されるCOF用のアンダーフィル材として好適である。また、プリント回路板にも前記電子部品用液状樹脂組成物は有効に使用できる。
【0119】
前記電子部品用液状樹脂組成物を用いて基板上に配置された電子部品を封止又は接着して電子部品装置を得る方法に特に制限はない。例えば、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等の方法が挙げられる。電子部品の実装方式に応じてそれぞれ適切な方法を用いることで封止、接着することができる。
【0120】
図1(a)はCOF(Chip on Film)の一例を半導体素子の長辺側からみた概略断面図、図1(b)は上記COFを半導体素子の短辺側からみた概略断面図である。図1(a)及び図1(b)に示すように、ポリイミド製のフレキシブル基板(FPC)2上に、半導体素子1がフリップチップ実装されている。具体的には、基板2側のSnめっきされたCu配線3と半導体素子1側の接続端子(バンプ)4とがAu/Snの共晶(不図示)によって接続されている。接続端子4としてはAuから形成された接続端子、AuめっきしたCuから形成された接続端子、ハンダ接続端子等を用いることができる。隣接する接続端子4間のギャップ、及び半導体素子1と基板2の隙間に充填された電子部品用液状樹脂組成物の硬化物5により、接続端子4間の絶縁を図るとともに物理的に保護する。ソルダレジスト6は、硬化前の電子部品用液状樹脂組成物が基板2上で流れ拡がらないよう、堰としての役割も担っている。
【実施例】
【0121】
以下、実施例を参照して本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0122】
<電子部品用液状樹脂組成物の調製>
以下の材料を表1及び表2に示す質量部でらいかい機(株式会社石川工場製、製品名6RA)を用いて25℃で30分混練分散した。その後、脱泡装置(株式会社EME製、製品名UFO−20)を用いて25℃で10分真空脱泡した。これにより、実施例1〜34及び比較例1〜4の電子部品用液状樹脂組成物を調製した。
【0123】
実施例3、5、9、11、20、22、26及び28では、コアシェル粒子1又はコアシェル粒子2をエポキシ樹脂4又はエポキシ樹脂5に混合して予備混合物を作製した。具体的には、高圧湿式微粒化装置(吉田機械興業株式会社製、商品名:ナノマイザーNM−2000AR(「ナノマイザー」は登録商標))を使用し、25℃で30分混合処理を施した。
実施例2、6、8、12〜17、19、23、25、29〜34及び比較例2〜4では、市販のコアシェルエポキシ分散液1又はコアシェルエポキシ分散液2を予備混合物として使用した。
【0124】
エポキシ樹脂1:エポキシ当量160のビスフェノールF型液体エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製、商品名:YDF−8170C)
エポキシ樹脂2:エポキシ当量185のビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製、商品名:YDF−127)
酸無水物1:無水酸当量234の常温で液体の環状酸無水物、三菱化学株式会社製、商品名:YH306、粘度0.13Pa・s)
酸無水物2:無水酸当量166の常温で液体の環状酸無水物、日立化成工業株式会社製、商品名:HN−2200、粘度0.07Pa・s)
酸無水物3:無水酸当量155の常温で固体の環状酸無水物、新日本理化株式会社製、商品名:リカシッドHH、「リカシッド」は登録商標)
アミン化合物:三菱化学株式会社製、商品名:jERキュアW(添加量:25phr(エポキシ樹脂100質量部に対して25質量部)、「jERキュア」は登録商標)
【0125】
コアシェル粒子1:ガンツ化成株式会社製、商品名:F351(シリコーン系コア、アクリル系シェル、一次粒子平均粒径:200〜300nm)
コアシェル粒子2:WackerChemie社製、商品名:GENIOPERL−P52(シリコーン系コア、アクリル系シェル、一次粒子平均粒径:100〜150nm)
コアシェル粒子を予備混合するためのエポキシ樹脂4:エポキシ当量165のビスフェノールF型液体エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、商品名:jER806、「jER」は登録商標)
コアシェル粒子を予備混合するためのエポキシ樹脂5:エポキシ当量163のビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製、商品名:YDF−870GS)
【0126】
コアシェルエポキシ分散液1:株式会社カネカ製、商品名:MX−136(ブタジエン系コア、アクリル系シェル、一次粒子平均粒径:100〜500nm、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、粒子含有量:25質量%)
コアシェルエポキシ分散液2:株式会社カネカ製、商品名:MX−960(シリコーン系コア、アクリル系シェル、一次粒子平均粒径:100〜500nm、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、粒子含有量:25質量%)
【0127】
ゴム粒子成分:アクリロニトリル・ブタジエン・メタクリル酸・ジビニルベンゼン共重合物(JSR株式会社製、商品名:XER−91P、「XER」は登録商標)をビスフェノールF型液体エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製、商品名:YDF−8170C)に質量比(共重合物/エポキシ樹脂)=1/4で、反応釜にて85℃/5時間+115℃/3時間で加熱混融、微分散させて得たゴム変性エポキシ樹脂
カップリング剤:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−403)
レベリング剤:水酸基当量750のフェノール変性シリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名:BY16−799)とビスフェノールF型液体エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製、商品名:YDF−8170C)を質量比1/1で、130℃で6時間加熱混融して得られたシリコーン変性エポキシ樹脂
【0128】
硬化促進剤1:2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名:2E4MZ)
硬化促進剤2:旭化成イーマテリアルズ株式会社製、商品名:ノバキュアHX−3921HP)
酸化防止剤1:3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(株式会社ADEKA製、商品名:AO−80)
酸化防止剤2:ジシクロヘキシルアミン(新日本理化株式会社製、商品名:D−CHA−T)
イオントラップ剤:ビスマス系イオントラップ剤(東亞合成株式会社製、商品名:IXE−500、「IXE」は登録商標)
無機充填剤:比表面積1m/g、平均粒径4μmの球状合成シリカ(MRCユニテック株式会社製、商品名QS−4F2)
【0129】
<評価>
実施例1〜34及び比較例1〜4で作製した電子部品用液状樹脂組成物を次の各試験により評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0130】
(1)粘度
コーン角度3゜、コーン半径14mmのコーンロータを装着したEMD型回転粘度計(株式会社トキメック製)を用い、25±1℃に保たれた電子部品用液状樹脂組成物について、100rpmで1分間回転させた時の測定値に換算係数0.0125を乗じ、これを電子部品用液状樹脂組成物の粘度とした。
【0131】
(2)ゲル化時間
150℃の熱板上に0.1gの電子部品用液状樹脂組成物を滴下し、スパチュラで広がりすぎないようにかき混ぜた。滴下した後、電子部品用液状樹脂組成物の粘度が上がり、スパチュラを上に持ち上げた時に糸引き無く電子部品用液状樹脂組成物が切断されるまでの時間をゲル化時間とした。
【0132】
(3)吸水率
電子部品用液状樹脂組成物を150℃、2時間の条件で硬化させ、50mm×50mm×1mmの試験片を作製した。前記試験片の初期質量W1を測定した後、85℃/85%の高温高湿槽に入れ、100時間後の質量W2を測定した。下式により吸水率を求めた。
(吸水率)={(W2−W1)/W1}×100 (%)
【0133】
(4)接着力
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製、商品名:カプトン(「カプトン」は登録商標))上に電子部品用液状樹脂組成物を1mm厚の量で塗布し、150℃、2時間の条件で硬化させ、長さ50mm、幅10mmの短冊状に切断して試験片を得た。引張試験器(株式会社島津製作所製)を用い、前記試験片からポリイミドフィルムを90度上向きで剥離させる際のピール強度を測定し、このピール強度を接着力とした。
【0134】
(5)浸入性
2枚のガラスで厚さ20μmのSUS製スペーサーを挟み、幅5mm、高さ20μmの流路を作った。これを70℃のホットプレート上に水平に置いた後、電子部品用液状樹脂組成物を流路の開口部に滴下し、流路中に深さ20mmまで浸入する時間を測定した。3分未満を良、3分以上を不良とした。
【0135】
(6)耐イオンマイグレーション性
図1(a)及び図1(b)に示すCOFの基板2と半導体素子1との隙間に実施例1〜34及び比較例1〜4で作製した電子部品用液状樹脂組成物をディスペンス法によって塗布し、150℃、2時間で硬化させて試験サンプルを作製した。この試験サンプルでは、接続端子4はAuで形成されたものを使用した。フレキシブル基板(FPC)2の外形は、短辺25mm×長辺40mmであり、基板2上に実装されている半導体素子1のサイズは、短辺2mm×長辺20mmであった。隣接する接続端子4間のギャップは約10μmであり、半導体素子1と基板2の隙間は約20μmであった。
【0136】
次に、隣接する配線とバンプの接続部の間に電圧を印加することで耐イオンマイグレーション性を評価した。接続部間のギャップは10μm、印加電圧は直流60V、試験環境は110℃/85%RHとし、試験時間は500時間とした。試験中は試験サンプルの抵抗値を連続的に測定し、抵抗値が10Ω以下になった試験サンプルをショートと判定した。表1に示した実施例、比較例それぞれに対し、50個ずつのサンプルを評価し、ショートと判定したサンプルの個数を比較した。判定基準とショート個数の関係は以下の通りとし、B判定以上の場合を合格とした。
【0137】
(判定基準)
AA:0〜2個
A:3〜5個
B:6〜10個
C:11〜20個
D:21〜50個
【0138】
試験サンプルの接続パターンの概略を図2に示す。図2(a)が試験サンプルを半導体素子1側からみた図であり、図2(b)が半導体素子1及び電子部品用液状樹脂組成物の硬化物5を透過で図示し、接続される配線パターンを示した図である。図1に示す部材と同じ部材には、図1と同じ符号を付してある。
【0139】
上述の耐イオンマイグレーション性の評価においては、ソルダレジスト開口部に設けられた接続パッド7、7’にリード線をハンダ付けし(2箇所)、直流電圧を印加する。上記評価では電圧の+−は図2に図示した位置であったが、逆になっていてもよい。図2(b)を用いて説明すると、+側は一方の接続パッド7から金属配線3を経由して接続端子4に印加される。−側はもう一方の接続パッド7’から金属配線3を経由して接続端子4に接続され、半導体素子1上に形成された配線8を経由してさらに接続端子4に印加される。これによって、接続端子4に対して+−の電圧が交互に印加され、接続端子間の耐イオンマイグレーション性を評価することができる。なお、図2には12個の接続端子のみが図示されているが、実際には同様の接続端子が約500個配置されていた。
【0140】
耐マイグレーション性の評価結果は、コアシェル構造をもつ粒子を含まない比較例1、硬化剤にアミンを使用した比較例2、常温で固体の酸無水物を使用した比較例3はいずれも不合格であった。また、コアシェル構造をもつ粒子を含んでいても、室温における粘度が本発明の範囲に含まれない比較例4では電子部品への浸透性が低く、ボイドが発生して絶縁不良を生じたサンプルが見られ、イオンマイグレーション性の評価が困難であった。
【0141】
これに対し、実施例1〜34に示す本発明の電子部品用液状樹脂組成物は、粘度、ゲル化時間、吸水率、接着力、浸入性等の電子部品用液状樹脂組成物として必須となる諸特性を損なうことなく、耐イオンマイグレーション性が良好であった。なお、ショートと判定した試験サンプルの接続端子近傍を観察した結果、図3に示すようにフィラメント状の絶縁劣化部10、接続端子4の間に形成された絶縁破壊部11、配線金属の腐食部12等が確認された。このようなイオンマイグレーションを原因とする絶縁不良が比較例と比べて少ない実施例の場合では、コアシェル構造をもつ粒子及び常温で液体の環状酸無水物による効果と、低粘度で狭いギャップ間にボイド無く充填できる性質によって、高温高湿環境下における電子部品用液状樹脂組成物の硬化物の劣化が抑制され、不純物イオンの生成や絶縁性の低下が抑制されていると考えられる。
【0142】
【表1】
【0143】
【表2】
【符号の説明】
【0144】
1 半導体素子
2 基板(フレキシブル基板)
3 金属(Cu)配線
4 接続端子(バンプ)
5 電子部品用液状樹脂組成物の硬化物
6 ソルダレジスト
7、7’ ソルダレジスト開口部に設けられた接続パッド
8 半導体素子1上に形成された配線
9 ソルダレジスト開口部(デバイスホール)
10 フィラメント状の絶縁劣化部
11 接続端子(バンプ)4間の絶縁破壊部
12 配線金属の腐食部
図1
図2
図3