(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
シリコーン組成物を硬化させる方法は様々あり、有機金属化合物による縮合反応、有機過酸化物を用いた加硫、白金族金属触媒によるヒドロシリル化反応などが知られている。しかし上記の硬化方法では加熱が必要である。生産性向上や省エネルギー化のためには、室温硬化が要求されている。
【0003】
近年、加熱を行わず、熱以外の硬化エネルギーを与える方法として、放射線による硬化が着目されている。該硬化方法にはラジカル重合を用いたアクリル重合、エン‐チオール反応による硬化などが挙げられる。中でも酸発生によるエポキシ基の開環により硬化するカチオン重合性オルガノポリシロキサンは、酸素による硬化阻害を受けず、利便性、操作性に優れているため用途が拡大している。また硬化反応に熱を必要としないため耐熱性に乏しいフィルム基材に対して塗工可能である。そのため、特に粘着テープの背面処理剤、粘着ラベル用剥離紙、及びテープを用いた固定用ファスナーテープのコーティング剤として使用されている。
【0004】
カチオン重合により硬化物を作成する組成物として、エポキシ基を含有するカチオン重合性オルガノポリシロキサンと、放射線により酸発生を引き起こす光酸発生剤を含む組成物が特許文献1乃至4に記載されている。
【0005】
またカチオン重合性オルガノポリシロキサンは、生理用ナプキンや紙おむつといった衛生材の粘着テープ用の剥離剤(離型剤)としても使用されている。生理用ナプキンや紙おむつは、使用上、衛生上の観点から個包装されている。特にナプキン用個包装フィルムは、ポリエチレンフィルム等のフィルムに離型処理を行い、包装は、下着に固定するためのナプキン本体の粘着剤層に剥離剤(離型剤)処理されたフィルムを当接させて包み込むように行われており、この剥離剤(離型剤)面に放射線硬化性シリコーン組成物を用いることが非常に多い。
【0006】
生理用ナプキンに関する発明として、例えば、特許2987524号(特許文献5)には、基材の片面に剥離剤層を形成させた生理用ナプキン個装シートであって、前記剥離剤層は、エポキシ官能性ポリオルガノシロキサンを主成分とする剥離剤を紫外線照射にて硬化させたものであり、さらに前記エポキシ官能性ポリオルガノシロキサンは、全有機基の1〜20モル%が1価のエポキシ官能性有機基で構成されていることを特徴とする生理用ナプキン個装シートが記載されている。該生理用ナプキン個装シートは、個包装されているナプキンが、使用されるまでの間に日光や蛍光灯の光線などに曝されても個装シートが重剥離化せず、使用時にナプキンから個装シートをスムーズに剥がすことが可能である。
【0007】
特許3638850号(特許文献6)には、基材シートの表面に第1のシリコーン系化合物の層が形成され、さらに第1のシリコーン系化合物の層の表面に、前記第1のシリコーン系化合物より表面張力が低い第2のシリコーン系化合物の層が形成されていることを特徴とする汚れ付着防止効果の高いシートが記載されている。該シートでは、表面張力の異なるシリコーン系化合物を塗工することにより、多層構造であり、汚れ付着防止効果の高いシートが作成可能である。
【0008】
生理用ナプキンは香料により臭いを付与することが多いが、消費者の多様化から近年無臭タイプの生理用ナプキンの要望が多くなっている。その為、ナプキン本体及び粘着剤層の無臭化が必要であるが、ナプキン本体を使用する前に剥離される、剥離剤(離型剤)で処理された個包装用フィルムもナプキン使用前に消費者の手に触れるため、こちらも無臭化する必要がある。放射線硬化性シリコーン組成物として、カチオン重合性オルガノポリシロキサンと光酸発生剤からなる組成物の硬化物を形成した場合、カチオン重合性基であるエポキシ基由来の臭いと硬化触媒である光酸発生剤由来の臭いが若干残る傾向がある。しかし、上記特許文献はいずれもシリコーン層の臭いについては言及されていない。
【0009】
特開平11−104166号公報(特許文献7)には、合成樹脂フィルムの少なくとも一面に離型処理が施されてなる、粘着性表面が露出している衛生用品の個包装用離型フィルムが記載されている。離型剤層が、エポキシ変性シリコーン及び光カチオン重合開始剤を含む光硬化型組成物を光の照射により硬化させてなる離型剤により構成されていることを特徴とする。該フィルムでは、離型剤層にカチオン重合性オルガノポリシロキサンを使用することで無臭化を行っている。しかし、カチオン重合性オルガノポリシロキサン等に規定はないため、エポキシ基由来の臭いと、光酸発生剤由来の臭いが完全には除去できず、フィルムの無臭化が不十分である。
【0010】
このように生理ナプキン個包装の離型面の無臭化に関する発明はほとんどない。
【0011】
カチオン重合性オルガノポリシロキサン組成物の無臭化に関する発明としては、例えば、特公平6−49848号公報(特許文献8)に、実質的に無臭の紫外線硬化性オルガノポリシロキサン剥離コーティング組成物が記載されている。
該組成物は、
(A)(i)式:(R)
2SiOのジオルガノシロキシ単位、式:RR
1SiOのエポキシオルガノシロキシ単位及び式:RR
2SiOのハロアリールアルキルシロキシ単位から選ばれる約20乃至約100個の縮合シロキシ単位から本質的に成るエポキシハロアリールアルキルシロキサン、及び(ii)(i)と、約88乃至約95モル%のジオルガノシロキシ単位及び約5乃至約12モル%のエポキシオルガノシロキシ単位から選ばれる約20乃至約100個の縮合シロキシ単位から本質的に成るエポキシシロキサンとのブレンドから成る群から選ばれ、(i)と(ii)が、約76乃至約94モル%のジオルガノシロキシ単位、約5乃至約12モル%のエポキシオルガノシロキシ単位及び約1乃至約12モル%のハロアリールアルキルシロキシ単位を保つのに十分な量で存在するポリ(エポキシハロアリールアルキルシロキサン)及び
(B)ジアリールヨードニウム塩及びトリアリールスルホニウム塩から選ばれる有効な量のポリアリールオニウムヘキサフルオロメタロイド塩を含む。
【0012】
1価フェノール基を含有するエポキシ基含有オルガノポリシロキサンは従来剥離調整剤として知られている。該エポキシ基含有オルガノポリシロキサンは、該シロキサン中に残存するアリルフェノール由来の臭いを有することが確認されている。特許文献8には、剥離調整剤に、メチル−クロロフェニルエチルシロキシ単位とメチルエポキシシクロヘキシルエチルシロキシ単位を含む化合物を用いることで、臭いを抑制できることが記載されている。
【0013】
特公平6−17447号公報(特許文献9)には、紙又はプラスチック基体に、制御された剥離特性を付与する方法が記載されている。該方法は、
(A):紙又はプラスチック基体を紫外線硬化性エポキシシリコーン混合物で処理し、
(B):この処理ずみ基体を汚点のないタックフリーの接着フィルムが形成されるまで紫外線硬化させることから成り、前記紫外線硬化性エポキシシリコーン混合物が、
(C):縮合ジオルガノシロキシ単位の総モル数を基準として5乃至12モル%の縮合エポキシオルガノシロキシ単位を含むエポキシシリコーン100重量部、
(D):有効な量の感光性ポリアリールオニウムヘキサフルオロメタロイド塩、及び
(E):(i)炭素数8乃至20のアルキルフェノール及び(ii)フェノールアルキル置換オルガノジシロキサンから成る群から選ばれる制御された添加剤1種 0.1−50重量部から成ることを特徴とする。
【0014】
特許第5081826号(特許文献10)には、支持体上にシリコーン剥離性コーティングを製造する方法が記載されている。該方法は、
(a)200〜280nmの範囲の波長の短波紫外(UV−C)放射線の照射下で架橋及び/又は重合可能なシリコーン系コーティング組成物を調製する工程;
(b)前記シリコーン系コーティング組成物を支持体上にコーティングする工程;
並びに
(c)前記シリコーン系コーティング組成物でコーティングされた前記支持体を前記UV−C領域で擬似単色光を発する少なくとも1つの低圧ランプで照射して該組成物を重合させる工程:
を含み、前記組成物が(A)25℃において約10〜10000mPa・sの粘度を有し、カチオンルートで架橋及び/又は重合可能な少なくとも1つの官能基Faを有する少なくとも1種の液状ポリオルガノシロキサンモノマー、オリゴマー及び/又はポリマーA、並びに(B)有効量の、前記UV−C放射線下で活性なカチオン性光開始剤又はラジカル光開始剤を含み、前記官能基Faがエポキシ、オキセタン及びジオキソラン官能基より成る群から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0024】
(A)エポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサン
エポキシ基を有するカチオン重合性オルガノポリシロキサンは、例えば、特許3384268号及び特許3993533号に記載されているように、ハイドロジェンオルガノポリシロキサンとアルケニル基含有エポキシ化合物とを、金属触媒存在下でヒドロシリル化反応させることにより製造される。ヒドロシリル化反応後、溶剤及び揮発成分は加熱減圧留去により除去される。しかし、原料であるアルケニル基含有エポキシ化合物、及び、原料であるハイドロジェンオルガノポリシロキサン中に存在していた低分子シロキサンと前記アルケニル基含有エポキシ化合物とが反応してできた生成物は、得られたカチオン重合性オルガノポリシロキサン中に残存しやすい。これらの化合物(揮発性低分子)がカチオン重合性オルガノポリシロキサンの臭いの原因となると考えられる。
【0025】
本発明は(A)成分中に存在する105℃3時間の加熱にて揮発する成分の量が2.0質量%以下であることを特徴とする。好ましくは1.8質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である。105℃3時間の加熱にて揮発する成分の量は、カチオン重合性オルガノポリシロキサン中の臭気発生成分の量に近い。そのため、105℃3時間の加熱にて揮発する成分量を上記値以下にすることで、得られる硬化物の臭気を低減することができる。105℃3時間の加熱にて揮発する成分とは、例えば、エポキシ基を有する低分子オルガノポリシロキサンである。低分子とは、重合度8以下、特には重合度7以下であり、直鎖状、分岐状、または環状のオルガノシロキサンである。また、上記揮発成分として、カチオン重合性オルガノポリシロキサンの原料であるアルケニル基含有エポキシ化合物も挙げられる。上記揮発成分の含有量の下限値は制限されるものでなく、少なければ少ないほど無臭になりやすいため好ましい。揮発成分の含有量が上記値より多いと揮発成分が有する臭いにより無臭とはいえなくなるため好ましくない。
【0026】
105℃3時間の加熱にて揮発する成分の量の測定は送風定温恒温器を用いて行うことができる。詳細には、エポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサン(以下、試料という)2gを50mlビーカーに秤量し、該ビーカーを105℃に設定した送風定温恒温器中に3時間静置する。3時間後に該ビーカーを取り出し、デシケーター内で冷却し、秤量して、試料の質量減少量を測定する。加熱保管前の試料の質量を基に、加熱にて揮発した成分の質量割合を100分率にて算出する。本発明において送風定温恒温器はヤマト科学株式会社製(DN−610H)を使用した。加熱時の風量は12.3m
3/minであり、該恒温器の内容積は223Lであり、内寸法620×600×600mmであり、内径30mmの排気口を背面に2個有する。50mLビーカーは、柴田科学株式会社(HARIO)製50mLビーカー(品名コード010020−5051A、胴外径46mm、高さ61mm)を使用した。エポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサンを送風定温恒温器中に置くと、沸点105℃超を有する揮発性低分子化合物、例えば沸点200℃を有する揮発性低分子化合物も揮発する。
【0027】
本発明の(A)成分は、下記平均組成式(1)で示されるエポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサンであり、105℃3時間の加熱にて揮発する成分の含有量が2.0質量%以下、好ましくは1.8質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下であることを特徴とする。
R
1aR
2bSiO
(4−a−b)/2 (1)
(式(1)において、R
1はエポキシ基含有1価有機基であり、R
2は非置換または置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基であり、a>0、b>0であり、かつ0<a+b≦3である)
【0028】
上記平均組成式(1)において、R
1は互いに独立に、エポキシ基含有1価有機基である。該エポキシ基含有1価有機基としては、例えば、炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜16、さらには炭素数4〜10を有する、グリシドキシアルキル基、エポキシシクロヘキシルアルキル基、及びオキシラニルアルキル基が挙げられる。特には、下記に示される基から選ばれるのが好ましい。
【化1】
【0029】
上記平均組成式(1)において、R
2は互いに独立に、非置換または置換の、炭素数1〜10の1価炭化水素基である。該R
2としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、又はこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子などで置換したヒドロキシプロピル基、シアノエチル基、1−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などから選択される置換もしくは非置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基が挙げられる。中でも、硬化物の剥離性の点から、アルキル基またはアリール基であることが好ましい。更には、全R
2基のうち80モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0030】
上記平均組成式(1)において、a>0、b>0であり、かつ0<a+b≦3である。上記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサンの構造は、特に制限されるものでなく、直鎖状、分岐状、環状、及び三次元架橋構造のいずれであってもよい。特に好ましくは直鎖状、及び分岐鎖状のオルガノポリシロキサンである。該オルガノポリシロキサンは1種単独であっても、2種以上の混合であってもよい。(A)成分は、エポキシ当量の平均値が600〜2,500g/molであり、粘度5〜100万mPa・sを有するのがよい。さらに好ましくは、エポキシ当量の平均値が650〜2,300g/molであり、粘度10〜10万mPa・sを有するのがよい。上記オルガノポリシロキサンの粘度は回転粘度計で測定した25℃における値である。
【0031】
(A)成分中のエポキシ当量の平均値が上記下限値より小さいと、組成物から得られる硬化物が重剥離となるおそれがある。また、組成物中のエポキシ基の含有量が多くなるため、エポキシ基由来の臭いが強くなるおそれがある。また平均のエポキシ当量が上記上限値より大きいと、エポキシ基由来の臭いは少なくなるが、エポキシ基量が少なくなるため、硬化性が著しく低下してしまうおそれがある。(A)成分の粘度が上記下限値より小さいと無溶剤で塗工を行うことが困難となる場合があり、また粘度が上記上限値より大きいと粘性が高くなり取り扱いが難しくなる場合がある。
【0032】
好ましくは(A)成分は、下記平均式(3)〜(5)で示されるエポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサン(A1)〜(A3)の少なくとも1を含む。
・エポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサン(A1):
【化2】
・エポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサン(A2):
【化3】
・エポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサン(A3):
【化4】
【0033】
上記平均式(3)〜(5)において、R
1及びR
2は上記の通りである。cは互いに独立に2以上の正数であり、dは互いに独立に0または正数であり、eは2以上の正数である。(A)成分は、上記オルガノポリシロキサン(A1)〜(A3)の1種、または2種以上の混合物であってよい。c、d、及びeの上限は特に制限されるものでない。好ましくは、c、d、及びeは、オルガノポリシロキサン(A1)〜(A3)が有するエポキシ当量の平均値が600〜2,500g/molであり、粘度が5〜100万mPa・sとなる値がよく、更に好ましくは、エポキシ当量の平均値が650〜2,300g/molであり、粘度が10〜10万mPa・sとなる値がよい。上記オルガノポリシロキサンの粘度は回転粘度計で測定される25℃における値である。尚、(A)成分が上記オルガノポリシロキサン(A1)〜(A3)の2種以上の混合物である場合は、上記したエポキシ当量の平均値は混合物の平均値であり、上記した粘度は混合物の粘度である。
【0034】
エポキシ当量の平均値が上記下限値より小さいと、組成物から得られる硬化物が重剥離となるおそれがある。また、組成物中のエポキシ基の含有量が多くなるため、エポキシ基由来の臭いが強くなるおそれがある。また平均のエポキシ当量が上記上限値より大きいと、エポキシ基由来の臭いは少なくなるが、エポキシ基量が少なくなるため、硬化性が著しく低下してしまうおそれがある。粘度が上記下限値より小さいと、無溶剤で塗工を行うことが困難となる場合があり、また粘度が上記上限値より大きいと、粘性が高くなり取り扱いが難しくなる場合がある。
【0035】
また(A)成分は、下記平均式(6)で表されるエポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサン(A4)と、下記平均式(10)または平均式(11)で表されるエポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサン(A5)との混合物を含むことができる。該混合物中の(A4)成分及び(A5)成分の配合比(重量)は、(A4)成分の重量/(A5)成分の重量=0.1〜1.5、好ましくは0.3〜1.2である。該混合物は剥離調整剤(重剥離添加剤)として機能することができる。
【0036】
・エポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサン(A4):
[化5]
(R
23SiO
1/2)
f(SiO
4/2)
g(XO−SiO
3/2)
h (6)
・エポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサン(A5):
【化6】
【化7】
【0037】
上記平均式(6)において、R
2は上記した通りである。f、g、及びhは何れも正数であり、且つ、f/(g+h)=0.5〜2である。好ましくはf/(g+h)=0.6〜1.3となる正数である。f/(g+h)の値が上記下限値より小さいと混合物の粘度が高くなり使用が困難となる。またf/(g+h)の値が上記上限値より大きいと、重剥離効果が少なくなるので好ましくない。
【0038】
上記式(6)においてXは互いに独立に、水素原子または下記式(7)〜(9)から選択される1の基である。好ましくは、上記式(6)において、Xの少なくとも1が下記式(7)〜(9)で示されるいずれかの基である。特に好ましくは下記式(7)で示される基である。
【0040】
上記式(7)〜(9)において、R
1及びR
2は上記した通りである。i、z、m、n、及びoは互いに独立に0又は正数であり、pは1以上の正数であり、但し、1≦i+z≦50、1≦m+n≦50、2≦o+p≦7であり、k及びxは夫々0、1、2、又は3であり、但し、i+k≧1、n+x≧1である。好ましくは、k及びxは互いに独立に、0または1であり、i+k≧2、n+x≧2であり、p≧2であり、1≦i+z≦40、1≦m+n≦40、2≦o+p≦6である。i+k、n+x、及びpが1より小さくなると、エポキシ基含有量が少なくなり混合物の硬化性が悪くなる。i+z、m+nが上記下限値より小さいとオルガノポリシロキサンの合成が困難となる。また、i+z、m+nが上記上限値より大きいと混合物が高粘度化して取り扱いが困難となる。
【0041】
上記平均式(10)及び平均式(11)において、R
1及びR
2は上記した通りである。r、s、及びtは互いに独立に0又は正数であり、uは1以上の正数であり、但し、3≦r+s≦55、3≦t+u≦8である。qは0、1、2又は3であり、但し、s及びqは同時に0ではない。好ましくは、qは、0または1であり、3≦r+s≦40であり、3≦t+u≦7である。但し、s及びqは同時に0でない。r+sが上記上限値より大きいと混合物が高粘度化して取り扱いが困難となるため好ましくない。
【0042】
上記カチオン重合性オルガノポリシロキサン(A4)及び(A5)の混合物は、上記数値を満たし、かつ該混合物中のオルガノポリシロキサンが有するエポキシ当量の平均値が600〜2,500g/molであり、該混合物の粘度が5〜100万mPa・sとなるものがよい。更に好ましくは、該混合物中のエポキシ当量の平均値が650〜2,300g/molであり、混合物の粘度が10〜10万mPa・sとなるものがよい。上記混合物の粘度は回転粘度計で測定した25℃における値である。
【0043】
エポキシ当量の平均値が上記下限値より小さいと、エポキシ基の含有量が多くなるため、エポキシ基由来の臭いが強くなるおそれがある。また平均のエポキシ当量が上記上限値より大きいと、エポキシ基由来の臭いは少なくなるが、エポキシ基量が少なくなるため、硬化性が著しく低下するおそれがある。さらに、混合物の粘度が上記下限値より小さいと無溶剤で塗工を行うことが困難となる場合があり、粘度が上記上限値より大きいと混合物の粘性が高くなり取り扱いが難しくなる場合がある。
【0044】
(A)成分が、上記(A1)成分〜(A3)成分の少なくとも1をベースポリマーとし、上記(A4)成分と(A5)成分との混合物を剥離調整剤としてさらに含むことで、シリコーン組成物は重剥離(すなわち、粘着物質から剥離するのに要する力、剥離抵抗が大きいこと)を有する硬化物を与える。上記(A4)成分と(A5)成分の混合物の量が多ければ多いほど、剥離するのに要する力は大きくなる。(A)成分が(A4)成分と(A5)成分の混合物を含まない場合、シリコーン組成物は軽剥離(すなわち、剥離するのに要する力、剥離抵抗が小さい)を有する硬化物を与える。このような硬化物は剥離紙などに使用できる。このように本発明のシリコーン組成物は(A4)成分と(A5)成分の混合物の配合量を適宜変更することにより、軽剥離から重剥離まで様々な剥離性を有する硬化物を提供できる。シリコーン組成物が(A4)成分と(A5)成分の混合物(剥離調整剤)を含む場合、(A)成分中の(A4)成分と(A5)成分の混合物の配合量は特に制限されるものでないが、(A)成分中に好ましくは10〜90質量%、より好ましくは25〜75質量%、さらに好ましくは40〜60質量%であるのがよい。また(A)成分は上記(A4)成分と(A5)成分の混合物のみとすることもできる。
【0045】
また本発明のシリコーン組成物は剥離調整剤として、上記した(A4)成分と(A5)成分の混合物に替えて、下記(C)成分(エポキシ基を有さないオルガノポリシロキサン)と上記(A5)成分との混合物、または上記(A4)成分と上記(A5)成分と下記(C)成分(エポキシ基を有さないオルガノポリシロキサン)の混合物を含有することができる。
【0046】
(C)成分は下記平均式(6’)で示される、エポキシ基を有さないオルガノポリシロキサンである。
(R
23SiO
1/2)
f’(SiO
4/2)
g’(X’O−SiO
3/2)
h’
(6’)
上記式(6’)において、R
2は上記の通りであり、X’は互いに独立に、水素原子または下記(7’)〜(9’)から選択される1の基であり、f’、g’、及びh’は、f’/(g’+h’)=0.5〜2を満たす正数である。好ましくはf’/(g’+h’)=0.6〜1.3となる正数である。f’/(g’+h’)の値が上記下限値より小さいと混合物の粘度が高くなり使用が困難となる。またf’/(g’+h’)の値が上記上限値より大きいと、重剥離効果が少なくなるので好ましくない。上記式(6’)において好ましくは、X’は水素原子である。
【化11】
【化12】
【化13】
上記(7’)〜(9’)において、R
2は上記の通りであり、z’は1≦z’≦50の正数であり、m’は1≦m’≦50の正数であり、o’は2≦o’≦7の正数である。
【0047】
剥離調整剤が、(C)成分と(A5)成分の混合物である場合、(C)成分と(A5)成分の重量比は[(C)成分の重量/(A5)成分の重量]=0.1〜1.5、好ましくは0.3〜1.2であり、(C)成分と(A5)成分の合計質量が(A)成分と(C)成分の合計100質量部に対して1〜100質量部、好ましくは10〜90質量部、より好ましくは25〜75質量部、さらに好ましくは40〜60質量部であるのがよい。
【0048】
剥離調整剤が、(C)成分と(A4)成分と(A5)成分の混合物である場合、(C)成分と(A4)成分と(A5)成分の重量比は[((A4)成分の重量と(C)成分の重量)/(A5)成分の重量]=0.1〜1.5、好ましくは0.3〜1.2であり、(A4)成分と(C)成分と(A5)成分の合計質量が(A)成分と(C)成分の合計100質量部に対して1〜100質量部、好ましくは10〜90質量部、より好ましくは25〜75質量部、さらに好ましくは40〜60質量部であるのがよい。このとき(C)成分と(A4)成分の配合比率は特に制限されるものでない。
【0049】
カチオン重合性オルガノポリシロキサン中に含まれる上記揮発成分の含有量(質量%)を上記値以下にする方法は、特に制限されるものではなく、例えばストリッピングにより行うことができる。ストリッピング条件は、従来公知の方法に従い、カチオン重合性オルガノポリシロキサン中に含まれる上記揮発成分の含有量(質量%)が上記値以下になるように適宜選択すればよい。
【0050】
(B)光酸発生剤
本発明の(B)成分は下記一般式(2)で示されるカチオン部位を有するヨードニウム塩である。該ヨードニウム塩は光酸発生剤であり上記(A)成分を放射線硬化するための触媒として機能する。本発明の(B)成分は、下記一般式(2)におけるR
3が、置換もしくは非置換の、炭素数15〜26の一価芳香族炭化水素基であることを特徴とする。
[(R
3)−I−(R
3) ]
+ (2)
【0051】
上記式(2)において、R
3は互いに独立に、炭素数15〜26、好ましくは炭素数16〜24の、置換もしくは非置換の一価芳香族炭化水素基である。例えば、ノニルフェニル、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル、トリデシルフェニル、テトラデシルフェニル、ペンタデシルフェニル等の芳香族炭化水素基、又はこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子などで置換したヒドロキシプロピルフェニル基、シアノエチルフェニル基、1−クロロプロピルフェニル基、3,3,3−トリフルオロプロピルフェニル基などが挙げられる。中でも、芳香族炭化水素基の炭素原子に結合している水素原子の一部が、炭素数9〜20の直鎖状または分枝鎖状アルキル基で置換されている基であるのが好ましい。例えば、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル、トリデシルフェニル、テトラデシルフェニル、及びペンタデシルフェニル等である。
【0052】
R
3の炭素数が上記下限値より小さいと、光酸発生剤が分解する際に発生する、ヨウ化アルキルベンゼン及びアルキルベンゼンが揮発しやすくなり、シリコーン組成物を硬化して得られる硬化物から臭いが発生しやすくなる。尚、R
3の炭素数を上記上限値より大きくしてもさらなる臭い低減効果は確認されない。
【0053】
また、光酸発生剤の触媒活性に関して、R
3の炭素数が上記下限値より小さいと、放射線吸収により活性化しにくくなり硬化性が低下してしまう。尚、R
3の炭素数を上記上限値より大きくしても放射線吸収による活性化がさらに向上することはない。
【0054】
尚、光酸発生剤としてスルホニウム塩が知られる。しかしスルホニウム塩は分解する際に硫黄原子を発生する。そのため得られる硬化物は該硫黄原子由来の臭いを有するため、本発明には不適である。
【0055】
本発明の(B)成分は上述したカチオン部位を有するヨードニウム塩であることを特徴とする。該ヨードニウム塩のアニオン部位は、光酸発生剤として作用する化合物であればいかなる構造でも良い。硬化性、及び、カチオン重合性オルガノポリシロキサンへの溶解性を考慮すると、好ましくは、SbF
6−、[B(C
6F
5)
4]
−、[B(C
6H
4CF
3)
4]
− 、[(C
6F
5)
2BF
2]
−、[C
6F
5BF
3]
−、[B(C
6H
3F
2)
4]
−、[(CF
3CF
2)
3PF
3]
−、[(CF
3CF
2CF
2)
3PF
3]
−、[((CF
3)
2CF)
3PF
3]
−、[((CF
3)
2CF)
2PF
4]
−、[((CF
3)
2CFCF
2)
3PF
3]
−、及び[((CF
3)
2CFCF
2)
2PF
4]
−から選ばれるのがよい。
【0056】
該(B)成分としては、例えば、ビス−(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス−(アルキルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス−(アルキルフェニル)ヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート等が挙げられる。アルキル基は、炭素数9〜20、好ましくは炭素数9〜15の直鎖状または分枝鎖状アルキル基が好ましい。これらは単独でも、2種以上を組合せて使用してもよい。またイソプロピルアルコール等の溶媒に溶解して使用してもよい。
【0057】
組成物中の(B)成分の量は、光酸発生剤としての有効量、即ち、放射線照射により(A)成分を硬化させるのに有効な量であればよく、特に限定されない。特には、(A)成分100質量部に対して0.05〜20質量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜10質量部である。
【0058】
本発明のシリコーン組成物は、各種基材上に塗布され、放射線照射により硬化されることで剥離性(離型性)を有する硬化皮膜を形成し、基材に剥離性(離型性)を付与する。これにより、剥離紙、剥離(離型)フィルムなどの物品を与える。対象となる基材は特に限定はなく、一般に使用されている種々の基材に適用可能である。例えば、グラシン紙、クレーコート紙、上質紙、ポリエチレンラミネート紙、プラスチックフィルム、ポリカーボネート等の透明樹脂等が上げられる。特に、生理用ナプキンや紙おむつなどの衛生材等の個包装フィルムに使用される、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエステルフィルム等に対して好適に使用できる。
【0059】
本発明のシリコーン組成物を基材に塗布する方法は特に制限されるものでない。例えば、ロール塗布、グラビア塗布、ワイヤードクター塗布、エアーナイフ塗布、ディッピング塗布など公知の方法を用いることができる。塗布量は使用目的に応じて適宜選択すればよく、例えば0.01〜3.0g/m
2とすればよい。得られた塗膜は放射線を照射すれば容易に硬化することができる。
【0060】
本発明のシリコーン組成物は、上記した(A)成分及び(B)成分を混合することによって調製される。上記(A)成分及び(B)成分以外に、任意成分として、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、消泡剤、流動調整剤、光安定剤、溶剤、非反応性の樹脂、およびラジカル重合性化合物などの添加剤を配合してもよい。これら任意成分の添加量は、従来公知の添加量に従い、本発明の効果を妨げない範囲で適宜選択すればよい。
【0061】
本発明のシリコーン組成物は、放射線エネルギー線を照射することにより硬化する。放射線エネルギー線は、(B)成分である光酸発生剤の分解を誘発するエネルギーを有するものであれば、いかなるものでもよい。好ましくは、高圧または超高圧の水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、蛍光灯、半導体固体レーザ、アルゴンレーザ、He−Cdレーザ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、及びF2レーザなどの光源が使用できる。該光源から得られる紫外〜可視光領域(約100〜約800nm)のエネルギー線を用いるのがよい。特には、200〜400nmの領域に強い光強度を有する放射線光源が好ましい。また、電子線及びX線などの高エネルギーを有する放射線を用いることもできる。放射線エネルギーの照射時間は、通常は常温で0.1秒〜10秒程度で十分であるが、エネルギー線の透過性が低い場合やシリコーン組成物からなる膜厚が厚い場合には、それ以上の時間をかけるのが好ましいことがある。必要であればエネルギー線の照射後、室温〜150℃で数秒〜数時間加熱し、アフターキュアーしてもよい。
【0062】
放射線のエネルギー量は波長領域が254nmにおけるエネルギー量が5〜500mJ/cm
2が有効であり、好ましくは10〜450mJ/cm
2、更に好ましくは15〜400mJ/cm
2である。エネルギー量が上記下限値より低いと十分に硬化することができない。尚、エネルギー量が上記上限値より高くても硬化性がさらに向上することはない。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。下記において、粘度は回転粘度計で測定した25℃における値である。また、下記において、構造式中のMeはメチル基、Epは下記のエポキシ基含有有機基を示す。
【化14】
【0064】
[揮発成分量測定]
下記実施例及び比較例において、エポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサン中の105℃3時間の加熱にて揮発する成分の含有量(以下の実施例及び比較例では単に「揮発成分量」という)は、以下に示す方法に従い算出した。
エポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサン(以下、サンプルという)2gを50mLビーカーに秤量し、105℃に設定した送風定温恒温器(ヤマト科学株式会社製)中に3時間静置した。3時間後に該ビーカーを取り出し、デシケーター内で冷却し、秤量してサンプルの質量減少量を測定した。加熱保管前のサンプルの質量を基に、加熱にて揮発した成分の質量割合を100分率にて算出した。
送風定温恒温器はヤマト科学株式会社製(DN−610H)を使用した。加熱時の風量は12.3m
3/minであり、恒温器の内容積は223L、内寸法620×600×600mm、排気口は内径30mm×2個(背面)である。50mLビーカーは、柴田科学株式会社(HARIO)製50mLビーカー(品名コード010020−5051A、胴外径46mm、高さ61mm)を使用した。
【0065】
[実施例1]
(A)成分:下記平均式(a−a)で表されるエポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサンと平均式(a−b)で表されるエポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサンの混合物(a−1)(平均のエポキシ当量は1100g/molであり、揮発成分量は1.2質量%であり、25℃における粘度は150mPa・sである)100質量部、
【化15】
【化16】
及び(B)光酸発生剤:イソプロピルアルコールに50質量%溶解したビス−[4−nアルキル(C10〜C13)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート溶液(b−1)2.0質量部を均一に混合し、シリコーン組成物1を得た。
【0066】
[実施例2]
(B)光酸発生剤を、イソプロピルアルコールに50質量%溶解したビス−[4−nアルキル(C10〜C13)フェニル]ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート溶液(b−2)とした以外は実施例1を繰り返し、シリコーン組成物2を得た。
【0067】
[実施例3]
(B)光酸発生剤を、イソプロピルアルコールに50質量%溶解したビス−[4−nアルキル(C10〜C13)フェニル]ヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート溶液(b−3)とした以外は実施例1を繰り返し、シリコーン組成物3を得た。
【0068】
[実施例4]
(A)成分を、実施例1記載の(a−1)50質量部と、下記式(12)で表されるエポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサン(A4)及び下記式(14)で表されるエポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサン(A5)の混合物(a−2)50質量部との混合物とした以外は実施例1を繰り返し、シリコーン組成物4を得た。
上記混合物(a−2)において、(A4)成分と(A5)成分の重量比は[(A4)成分/(A5)成分]=1.0であり、平均のエポキシ当量は800g/molであり、揮発成分量は1.6質量%であり、25℃における粘度は350mPa・sであった。
[化17]
(Me
3SiO
1/2)
f(SiO
4/2)
g(XO−SiO
3/2)
h (12)
上記式(12)においてf/(g+h)=0.7であり、Xは下記(13)で示す基である。
【化18】
【化19】
【0069】
[実施例5]
(B)光酸発生剤を、イソプロピルアルコールに50質量%溶解したビス−[4−nアルキル(C10〜C13)フェニル]ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート溶液(b−2)とした以外は実施例4を繰り返し、シリコーン組成物5を得た。
【0070】
[実施例6]
(B)光酸発生剤を、イソプロピルアルコールに50質量%溶解したビス−[4−nアルキル(C10〜C13)フェニル]ヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート溶液(b−3)とした以外は実施例4を繰り返し、シリコーン組成物6を得た。
【0071】
[比較例1]
(A)成分を、下記平均式(a−a)で表されるエポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサン及び(a−c)で表されるエポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサンの混合物(y−1)(平均のエポキシ当量は1100g/molであり、揮発成分量は2.5質量%であり、25℃における粘度は140mPa・sである)100質量部とした以外は実施例1を繰り返し、シリコーン組成物7を得た。
【化20】
【化21】
【0072】
[比較例2]
(B)光酸発生剤を、イソプロピルアルコールに50質量%溶解したビス−[4−nアルキル(C10〜C13)フェニル]ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート溶液(b−2)とした以外は比較例1を繰り返し、シリコーン組成物8を得た。
【0073】
[比較例3]
(B)光酸発生剤を、イソプロピルアルコールに50質量%溶解したビス−[4−nアルキル(C10〜C13)フェニル]ヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート溶液(b−3)とした以外は比較例1を繰り返し、シリコーン組成物9を得た。
【0074】
[比較例4]
(A)成分を、比較例1記載の(y−1)50質量部と、下記式(15)で表されるエポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサン(A4’)及び下記式(17)で表されるエポキシ基含有カチオン重合性オルガノポリシロキサン(A5’)の混合物(y−2)50質量部との混合物とした以外は比較例1を繰り返し、シリコーン組成物10を得た。
混合物(y−2)において、(A4’)成分と(A5’)成分の重量比は[(A4’)成分/(A5’)成分]=1.0であり、平均のエポキシ当量は750g/molであり、揮発成分量は3.0質量%であり、25℃における粘度は320mPa・sであった。尚、比較例4で使用したカチオン重合性オルガノポリシロキサン(A4’)及び(A5’)の構造は、上記実施例4で使用したカチオン重合性オルガノポリシロキサン(A4)及び(A5)の構造と同じである。しかし比較例4で使用したカチオン重合性オルガノポリシロキサン(A4’)及び(A5’)は揮発成分であるエポキシ基含有低分子シロキサンを多く含むため、混合物(y−2)の平均のエポキシ当量は混合物(a−2)の平均のエポキシ当量よりも少なくなる。
[化22]
(Me
3SiO
1/2)
f(SiO
4/2)
g(XO−SiO
3/2)
h (15)
上記式(15)においてf/(g+h)=0.7であり、Xは下記(16)で示す基である。
【化23】
【化24】
【0075】
[比較例5]
光酸発生剤を、イソプロピルアルコールに50質量%溶解した4−(イソプロピル)フェニル(p−トリル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(z−1)とした以外は実施例1を繰り返し、シリコーン組成物11を得た。
【0076】
[比較例6]
光酸発生剤を、イソプロピルアルコールに50質量%溶解した4−(イソプロピル)フェニル(p−トリル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート溶液(z−2)とした以外は実施例1を繰り返し、シリコーン組成物12を得た。
【0077】
[比較例7]
光酸発生剤を、イソプロピルアルコールに50質量%溶解した4−(イソプロピル)フェニル(p−トリル)ヨードニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート溶液(z−3)とした以外は実施例1を繰り返し、シリコーン組成物13を得た。
【0078】
上記実施例及び比較例で得たシリコーン組成物及び該組成物の硬化物の物性を、下記の方法に従い評価した。
【0079】
[硬化性]
上記各シリコーン組成物を調整後、ロール塗布により、ポリエチレンラミネート上質紙上に約0.8g/m
2の塗布量となるように塗布した。80W/cmの高圧水銀灯を2灯用い、15mJ/cm
2の照射量の紫外線を照射して硬化し、硬化皮膜を形成した。組成物全体が硬化した場合をAとし、一部に未硬化部分が残る場合をBとし、組成物全体が未硬化の場合をCとした。結果を表1に示す。
【0080】
[剥離するのに要する力(剥離力)]
上記シリコーン組成物から得られる硬化皮膜を粘着物質から剥離するのに要する力を下記の方法にて測定した。
各シリコーン組成物をPEラミネート紙上に、約0.8g/m
2の塗布量で塗布して塗膜を形成した。得られた塗膜に、80W/cmの高圧水銀灯を2灯用いて75mJ/cm
2の照射量の紫外線を照射し、硬化皮膜を形成した。該硬化皮膜表面に幅25mmのアクリル粘着テープTESA7475(商品名)を貼り付け、2Kgのローラーを一往復させて圧着し、試験体を作成した。該試験体に70g/cm
2の荷重をかけながら、70℃で20〜24時間エージングした。その後、引っ張り試験機を用いて180°の角度で剥離速度0.3m/分にて、貼り合わせたテープを引っ張り、剥離するのに要する力(N/25mm)を測定した。結果を表1に示す。
【0081】
[臭い測定]
上記剥離力の測定試験にて形成した硬化皮膜の臭いを、20人のパネラーにより評価した。以下の指標に従い点数を付け、平均点を算出した。結果を表1に示す。
4:無臭 3:わずかに臭う 2:臭う 1:強く臭う
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】