特許第6195414号(P6195414)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6195414片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含む組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6195414
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含む組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/47 20060101AFI20170904BHJP
   C07C 59/135 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   C07C51/47
   C07C59/135
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-89380(P2014-89380)
(22)【出願日】2014年4月23日
(65)【公開番号】特開2015-164906(P2015-164906A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2016年5月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-21355(P2014-21355)
(32)【優先日】2014年2月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】山根 祐治
(72)【発明者】
【氏名】坂野 安則
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/060658(WO,A1)
【文献】 特表2009−532432(JP,A)
【文献】 特開2012−072272(JP,A)
【文献】 特開2001−164279(JP,A)
【文献】 特開2004−051716(JP,A)
【文献】 特開2003−129077(JP,A)
【文献】 特開2006−181416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/47
C07C 59/135
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含む組成物を、超臨界状態または亜臨界状態の二酸化炭素を移動相としシリカゲルを固定相とするクロマトグラフィーに付し、その際、移動相を25℃以上150℃以下の間にある1の温度(T)及び7MPa以上30MPa以下の間にある1の圧力(P)の状態としてクロマトグラフィーを行って、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物との合計モルに対して片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を80モル%以上の濃度で含む画分を分取する工程を経て、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の含有率を高める方法。
【請求項2】
(i)上記画分を分取する工程の後、移動相の圧力を7MPa超35MPa以下の間にあり且つ前記圧力(P)よりも高い圧力(P’)の状態としてクロマトグラフィーを行って両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を多く含む画分を分取する工程、又は、
(ii)上記画分を分取する工程の後、移動相の温度を25℃以上100℃未満の間にあり且つ前記温度(T)よりも低い温度(T’)の状態としてクロマトグラフィーを行って両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を多く含む画分を分取する工程
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と、両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と、いずれの末端にもカルボキシル基を有さないパーフルオロポリエーテル化合物(以下、無官能性化合物という)を含む組成物を、超臨界状態または亜臨界状態の二酸化炭素を移動相としシリカゲルを固定相とするクロマトグラフィーに付し、その際、下記(i’)または(ii’)のいずれかの工程を経て、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の含有率を高める方法
(i’)移動相を25℃以上150℃以下の間にある1の温度(T)及び7MPa以上30MPa未満の間にある1の圧力(P)の状態としてクロマトグラフィーを行って無官能性化合物を90モル%以上の濃度で含む画分を分取し、次いで、移動相の圧力を7MPa超30MPa以下の間にあり且つ前記圧力(P)よりも高い圧力(P)の状態としてクロマトグラフィーを行って、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と無官能性化合物の合計モルに対して片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を80モル%以上の濃度で含む画分を分取する工程
(ii’)移動相を25℃超150℃以下の間にある1の温度(T)及び7MPa以上30MPa以下の間にある1の圧力(P)の状態としてクロマトグラフィーを行って無官能性化合物を90モル%以上の濃度で含む画分を分取し、次いで、移動相の温度を25℃以上150℃未満の間にあり且つ前記温度(T)よりも低い温度(T)の状態としてクロマトグラフィーを行って、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と無官能性化合物の合計モルに対して片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を80モル%以上の濃度で含む画分を分取する工程。
【請求項4】
(i'')前記工程(i’)の後、移動相の圧力を7MPa超35MPa以下の間にあり且つ前記圧力(P)よりも高い圧力(P)の状態としてクロマトグラフィーを行って両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を多く含む画分を分取する工程、又は、
(ii'')該工程(ii’)の後、移動相の温度を25℃以上100℃未満の間にあり且つ前記温度(T)よりも低い温度(T)の状態としてクロマトグラフィーを行って両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を多く含む画分を分取する工程
をさらに含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記シリカゲルが、水に分散した10重量%懸濁液として、25℃でpH5〜7.5を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の方法により、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の含有量が80モル%以上である組成物を製造する方法。
【請求項7】
クロマトグラフィーに付す前の組成物が、両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の該カルボキシル基の一部をフッ素化する工程を経て調製されたものである、請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
クロマトグラフィーに付す前の組成物が、
1)カルボキシル基でない官能基を両末端に有するパーフルオロポリエーテル化合物の該官能基の一部をフッ素化する工程、及び
2)上記工程1)の後に残存する官能基をカルボキシル基にする工程
を経て調製されたものである、請求項6記載の製造方法。
【請求項9】
官能基が酸フロライド基である、請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
パーフルオロポリエーテル化合物が下記構造を有する、請求項6〜9のいずれか1項記載の製造方法。
−(CF−(OCF(OCFCF(OCFCFCF(OCFCFCFCF−O(CF
(式中、dは0または1〜5の整数であり、p、qはそれぞれ独立に5〜300の整数であり、r、sはそれぞれ独立に0〜100の整数であり、かつ、p+q+r+s=10〜500であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含有する組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
片末端に官能性基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(以下、片末端誘導体という)や、両末端に官能性基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(以下、両末端誘導体という)(以下、まとめて官能性ポリマーという)は、一般に界面活性剤や表面処理剤などの各種誘導体の前駆体として使用される。例えば、ポリマーの重合に有用な界面活性剤の前駆体として、上記官能性ポリマーのアクリル誘導体、アミン誘導体、イソシアネート誘導体が挙げられる。また表面処理剤の前駆体として、上記官能性ポリマーのアルコキシ誘導体、クロル誘導体、シラザン誘導体等が挙げられる。
【0003】
片末端誘導体と両末端誘導体とは異なる性質を有する。例えば、両末端誘導体は鎖長延長やゲル化を引き起こすが、片末端誘導体ではそのような反応を引き起こさない。また、いずれの末端にも官能基を有さない、いわゆる無官能性ポリマーを組成物中に含有すると、硬化した時に硬化不足のような問題を生じる場合がある。従って、官能性ポリマー成分の含有率を高めることは産業上重要である。なお、本明細書において「官能性」とは反応性官能基を有することを意味し、「無官能性」とは反応性官能基を有しないことを意味する。
【0004】
また、−(OCF(OCFCF(OCFCFCF(OCFCFCFCF−を主鎖構造として有するパーフルオロポリエーテル化合物の片末端に官能性基を有するポリマーは製造が困難である(前記式において、p、qは互いに独立に5〜300の整数であり、r、sは互いに独立に0〜80の整数であり、かつ、p+q+r+s=10〜500である)。特許文献1は、両末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物の前駆体を部分フッ素化することにより、片末端官能性、両末端官能性、および無官能性パーフルオロポリエーテル化合物の混合物を得た後、蒸留によって分離精製することにより、片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物を特定量含む組成物を製造することを記載している。しかし特許文献1に記載の方法は各成分の沸点差を利用して分離するため、それぞれの分子量分布が狭くないと適用できない。分子量の上限は蒸留できるサイズまでであり、実施例での上限は平均分子量1,000程度にとどまっている。そのため高分子量成分への適用は難しい。
【0005】
分子量や分子量分布を制限することなく、片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物が製造できれば、表面処理剤、潤滑剤、及びエラストマー材料として有用である。そこで、幅広い分子量範囲のポリマーに適用でき、片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物を製造できる方法の開発が望まれていた。
【0006】
特許文献2及び3には、まず、両末端官能性ポリマーを部分フッ素化して、片末端官能性ポリマー、両末端官能性ポリマー、及び無官能性ポリマーの混合物(片末端官能性ポリマーの含有量が高い)を製造した後、副生した無官能性ポリマーを除去することを記載している。特許文献2及び3は、両末端官能性ポリマーを部分フッ素化する際に、フッ素ガスの量を調整してフッ素化を制限し両末端官能性ポリマーの残存を少なくすることで、片末端官能性ポリマーを多く含んだ組成物を得ることができると記載している。しかし、該方法では同時に無官能性ポリマーも多く生成する。特許文献2及び3は、無官能性ポリマーの除去方法として、イオン交換樹脂による吸着法や薄膜蒸留法を記載している。
【0007】
特許文献4は磁気記録媒体用フッ素系潤滑剤の製造方法に関し、両末端にピペロニル基等の官能基を導入したフッ素系潤滑剤を、超臨界状態の二酸化炭素を移動相としシリカゲルを固定相とするクロマトグラフィーに付し、複数の画分に分別し、得られた画分から官能基導入率の高い画分を選択することにより、平均官能基導入率が高い、特には95%以上であるフッ素系潤滑剤を製造することを記載している。特許文献4は上記方法により、両末端官能性ポリマーの末端変性率を90%程度から99%に向上させると記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2009−532432号公報
【特許文献2】特開2012−233157号公報
【特許文献3】特開2012−72272号公報
【特許文献4】特開2001−164279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2及び3に記載の、イオン交換樹脂による吸着方法では、ポリマーに対して例えば約2倍量のイオン交換樹脂と9倍量のフッ素溶剤を必要とし、さらには塩酸を必要とする。したがって量産には不向きであり製造効率が悪い。また、フッ素系溶剤は高価なだけでなく、作業者や環境に対して悪影響を及ぼす危険性が大きい。さらに、イオン交換樹脂から溶出してくるイオン分や有機物の除去に苦慮することがある。一方、薄膜蒸留での分離は、沸点差を用いて分離するものであるため分離能が悪い。また、分子量が大きいほど官能基の有無による沸点差が小さくなるため分離がより難しくなる。従って、製品の性能が劣るという問題がある。
【0010】
また、特許文献4に記載の方法は無官能性パーフルオロポリエーテル化合物を除去して両末端官能性ポリマーを高濃度で含む組成物を得るためには有効な手段であるが、片末端官能性ポリマーを高濃度で含む組成物を選択的に且つ効率的に得ることはできない。
【0011】
そこで本発明は、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物を、効率よく且つ高い選択率で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
二酸化炭素は、臨界温度31.1℃、臨界圧力7MPaであり、他の物質と比較して温和な条件で超臨界状態になるため、取り扱いが容易である。超臨界流体は、温度と圧力によって密度が変化し、溶質溶解能力をコントロールすることが可能であり、パーフルオロポリエーテル化合物を溶解することができる。超臨界状態の二酸化炭素へのパーフルオロポリエーテル化合物の溶解性は官能基の種類や有無によって異なる。また、溶解性は分子量によっても異なり、分子量が小さい方がより温和な条件で溶解する傾向にある。そのため超臨界抽出のみで分子量分布を有するポリマーを官能基の種類や有無により分離することは極めて難しく、あらかじめ、分子量分布を狭めておく必要がある。
【0013】
しかし本発明者らは鋭意検討した結果、末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物の末端官能基を予めカルボキシル基で変性しておき、かつ、特定の温度及び圧力条件を有する超臨界状態または亜臨界状態の二酸化炭素を移動相とし、シリカゲルを固定相とするクロマトグラフィーに通すことで、カルボキシル基の有無でパーフルオロポリエーテル化合物を効率良く分離でき、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む画分を簡便に得ることができることを見出した。
【0014】
即ち、本発明は、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含む組成物を、超臨界状態または亜臨界状態の二酸化炭素を移動相としシリカゲルを固定相とするクロマトグラフィーに付し、その際、移動相を25℃以上150℃以下の間にある1の温度(T)及び7MPa以上30MPa以下の間にある1の圧力(P)の状態としてクロマトグラフィーを行って、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物との合計モルに対して片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を80モル%以上の濃度で含む画分を分取する工程を経て、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の含有率を高める方法(以下、第一の方法という)を提供する。
【0015】
また本発明は、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と、両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と、いずれの末端にもカルボキシル基を有さないパーフルオロポリエーテル化合物(以下、無官能性化合物という)を含む組成物を、超臨界状態または亜臨界状態の二酸化炭素を移動相としシリカゲルを固定相とするクロマトグラフィーに付し、その際、下記(i’)または(ii’)のいずれかの工程を経て、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の含有率を高める方法(以下、第二の方法という)を提供する。
(i’)移動相を25℃以上150℃以下の間にある1の温度(T)及び7MPa以上30MPa未満の間にある1の圧力(P)の状態としてクロマトグラフィーを行って無官能性化合物を90モル%以上の濃度で含む画分を分取し、次いで、移動相の圧力を7MPa超30MPa以下の間にあり且つ前記圧力(P)よりも高い圧力(P)の状態としてクロマトグラフィーを行って、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と無官能性化合物の合計モルに対して片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を80モル%以上の濃度で含む画分を分取する工程
(ii’)移動相を25℃超150℃以下の間にある1の温度(T)及び7MPa以上30MPa以下の間にある1の圧力(P)の状態としてクロマトグラフィーを行って無官能性化合物を90モル%以上の濃度で含む画分を分取し、次いで、移動相の温度を25℃以上150℃未満の間にあり且つ前記温度(T)よりも低い温度(T)の状態としてクロマトグラフィーを行って、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と無官能性化合物の合計モルに対して片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を80モル%以上の濃度で含む画分を分取する工程。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法は、片末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物を効率よく提供することができる。また、本発明の方法は分子量の制限が小さいため、幅広い分子量を有するパーフルオロポリエーテル化合物に適用できる。さらに本発明の方法ではフッ素系溶剤の使用量を低減することができるため、環境負荷への影響が小さく、量産にも適している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
本発明の第一の方法は、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含む組成物を精製する方法である。該方法は、超臨界状態または亜臨界状態の二酸化炭素を移動相とし、シリカゲルを固定相とするクロマトグラフィー(以下、超臨界クロマトという)に上記組成物を付し、その際、移動相を25℃以上150℃以下、好ましくは25℃超150℃未満の間にある1の温度(T)、及び7MPa以上30MPa以下、好ましくは7MPa超30MPa未満の間にある1の圧力(P)の状態としてクロマトグラフィーを行って片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む画分を分取する工程を経ることを特徴とする。
【0019】
上記本発明の第一の方法はさらに、下記(i)または(ii)の工程を含んでいてよい。
(i)上記画分を分取する工程の後、移動相の圧力を7MPa超35MPa以下の間にあり且つ前記圧力(P)よりも高い圧力(P’)の状態としてクロマトグラフィーを行って両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を多く含む画分を分取する工程。該工程において移動相の温度は前記温度(T)のままである。但し、温度は僅かに変化してもよい。
(ii)上記画分を分取する工程の後、移動相の温度を25℃以上100℃未満の間にあり且つ前記温度(T)よりも低い温度(T’)の状態としてクロマトグラフィーを行って両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を多く含む画分を分取する工程。該工程において移動相の圧力は前記圧力(P)のままである。但し、圧力は僅かに変化してもよい。
これらの工程により両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を多く含む画分を分取することができる。
【0020】
上述した工程を経ることにより片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物(画分)を得ることができる。即ち、組成物中の片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物の含有率を高めることができる。前記高濃度で含む組成物(画分)とは、片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物を好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上で含む組成物(画分)である。例えば、片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物と両末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物との合計モルに対して、片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物を好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上で含むものである。尚、本発明において、移動相の圧力とは高圧容器内の移動相の圧力を意味し、移動相の温度とは高圧容器内の移動相の温度を意味する。
【0021】
移動相として用いる二酸化炭素は超臨界状態または亜臨界状態を有する。二酸化炭素は、臨界温度31.1℃、臨界圧力7MPaである。本発明において二酸化炭素は必ずしも超臨界状態でなくてよく亜臨界状態でもよい。本発明の方法で使用する二酸化炭素の圧力範囲は7MPa以上35MPa以下であり、好ましくは、8MPa以上30MPa以下である。また、該二酸化炭素の温度範囲は25℃以上150℃以下であり、好ましくは30℃以上100℃以下の範囲である。移動相の流量は特に制限されるものではなく、適宜選択すればよい。抽出容器が大きい場合には流量を上げるのが好ましい。抽出容器の容量は精製する組成物の量に応じて適宜選択すればよい。
【0022】
上記工程(i)を含む方法において移動相の温度は一定であるのが好ましい。移動相の温度が一定である場合、移動相の圧力が高くなるほど、官能基を有する化合物の移動相への溶解性が高くなる。移動相の圧力PP’は、組成物中に含まれるポリマーの分子量及び抽出温度Tに応じて設定する。例えば、組成物中に含まれるポリマーが重量平均分子量1,000以上15,000以下を有する場合、抽出温度Tは25℃以上150℃以下の範囲にある1の温度がよく、より好ましくは30℃以上80℃以下の範囲にある1の温度がよい。このとき圧力Pは7MPa以上30MPa以下の範囲、好ましくは7MPa超30MPa未満の範囲、さらに好ましくは8MPa以上25MPa以下の範囲にある1の圧力であり、圧力P’は8MPa以上35MPa以下の範囲、好ましくは10MPa以上30MPa以下、さらに好ましくは15MPa以上30MPa以下の範囲にある1の圧力であるのがよい。但し、圧力P’は上記圧力Pよりも高い。このとき、圧力PとP’の間で、段階的に圧力を変化させても良い。
【0023】
上記工程(ii)を含む方法において移動相の圧力は一定であるのが好ましい。移動相の圧力が一定である場合、移動相の温度が低くなるほど、官能基を有する化合物の移動相への溶解性が高くなる。移動相の温度T、T’は組成物中に含まれるポリマーの分子量及び抽出圧力Pに応じて設定する。例えば、組成物中に含まれるポリマーが重量平均分子量1,000以上15,000以下を有する場合、抽出圧力Pは7MPa以上30MPa以下の範囲にある1の圧力がよく、より好ましくは8MPa以上25MPa以下の範囲にある1の圧力がよい。このとき温度Tは28℃以上150℃未満の範囲、好ましくは30℃以上100℃以下の範囲、さらに好ましくは30℃以上80℃以下の範囲にある1の温度であり、温度T’は25℃以上100℃未満の範囲、好ましくは25℃以上80℃以下の範囲、さらに好ましくは25℃以上60℃以下の範囲にある1の温度であるのがよい。但し、温度T’は上記温度Tよりも低い。このとき、抽出温度TとT’の間で、段階的に抽出温度を変化させても良い。
【0024】
本発明の第二の方法は、いずれの末端にもカルボキシル基を有さないパーフルオロポリエーテル化合物(以下、無官能性パーフルオロポリエーテル化合物という)をさらに含む組成物を精製する方法である。即ち、クロマトグラフィーに付する組成物が、片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物、両末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物、及び無官能性パーフルオロポリエーテル化合物を含む。該方法は、下記(i’)または(ii’)のいずれかの工程を経ることを特徴とする。
【0025】
(i’)移動相を25℃以上150℃以下の間にある1の温度(T)及び7MPa以上30MPa未満の間にある1の圧力(P)の状態としてクロマトグラフィーを行って無官能性化合物を高濃度で含む画分を分取し、次いで、移動相の圧力を7MPa超30MPa以下の間にあり且つ前記圧力(P)よりも高い圧力(P)の状態としてクロマトグラフィーを行って片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む画分を分取する工程。該工程において移動相の温度は前記温度(T)のままである。但し、温度は僅かに変化してもよい。
(ii’)移動相を25℃超150℃以下の間にある1の温度(T)及び7MPa以上30MPa以下の間にある1の圧力(P)の状態としてクロマトグラフィーを行って無官能性化合物を高濃度で含む画分を分取し、次いで、移動相の温度を25℃以上150℃未満の間にあり且つ前記温度(T)よりも低い温度(T)の状態としてクロマトグラフィーを行って片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む画分を分取する工程。該工程において移動相の圧力は前記圧力(P)のままである。但し、圧力は僅かに変化してもよい。
【0026】
上記工程(i’)を含む方法において移動相の温度は一定であるのが好ましい。また、上記工程(ii’)を含む方法において移動相の圧力は一定であるのが好ましい。上記第一の方法の説明で記載した通り、超臨界クロマトでは、移動相の温度が一定である場合、移動相の圧力が高くなるほど、官能基を有する化合物の移動相への溶解性が高くなる。また、移動相の圧力が一定である場合、移動相の温度が低くなるほど、官能基を有する化合物の移動相への溶解性が高くなる。本発明の第二の方法は、上記(i’)又は(ii’)のいずれかの工程を経ることにより、片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物(画分)を得ることができ、組成物中の片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物の含有率を高めることができる。
【0027】
片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物(画分)とは、片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物を好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上で含む組成物(画分)である。例えば、片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物と両末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物と無官能性化合物の合計モルに対して、片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物を好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上で含む組成物(画分)である。また、上記において無官能性化合物を高濃度で含む画分とは、無官能性化合物を、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは100モル%で含む画分である。尚、本発明において、移動相の圧力とは高圧容器内の移動相の圧力を意味し、移動相の温度とは高圧容器内の移動相の温度を意味する。
【0028】
移動相として用いる二酸化炭素は超臨界状態または亜臨界状態を有する。二酸化炭素は、臨界温度31.1℃、臨界圧力7MPaである。本発明において二酸化炭素は必ずしも超臨界状態でなくてよく亜臨界状態でもよい。本発明の方法で使用する二酸化炭素の圧力範囲は7MPa以上35MPa以下であり、好ましくは8MPa以上30MPa以下である。また、該二酸化炭素の温度範囲は25℃以上150℃以下であり、好ましくは30℃以上100℃以下の範囲である。移動相の流量は特に制限されるものではなく、適宜選択すればよい。抽出容器が大きい場合には流量を上げるのが好ましい。抽出容器の容量は精製する組成物の量に応じて適宜選択すればよい。
【0029】
特には、上記工程(i’)において、Pが好ましくは7MPa以上25MPa以下、さらに好ましくは7MPa以上22MPa以下の間にある1の圧力であり、Pが7MPa超30MPa未満、好ましくは8MPa以上30MPa未満、さらに好ましくは8MPa以上25MPa以下の間にある1の圧力(但し、PはPより高い)であるのがよい。また、上記工程(ii’)においては、Tが好ましくは40℃以上150℃以下の間にある1の温度であり、Tが28℃以上150℃未満、好ましくは30℃以上100℃以下、さらに好ましくは30℃以上80℃以下の間にある1の温度(但し、TはTより低い)であるのがよい。
【0030】
上記本発明の第二の方法はさらに、下記(i'')または(ii'')の工程を含んでいてよい。
(i'')前記(i’)の工程の後、移動相の圧力を7MPa超35MPa以下の間にあり且つ前記圧力(P)よりも高い圧力(P)の状態としてクロマトグラフィーを行って両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を多く含む画分を分取する工程。該工程において移動相の温度は前記温度(T)のままである。但し、温度は僅かに変化してもよい。
(ii'')前記(ii’)の工程の後、移動相の温度を25℃以上100℃未満の間にあり且つ前記温度(T)よりも低い温度(T)の状態としてクロマトグラフィーを行って、両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を多く含む画分を分取する工程。該工程において移動相の圧力は前記圧力(P)のままである。但し、圧力は僅かに変化してもよい。
上記工程により両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を多く含む画分を分取することができる。
【0031】
上記工程(i’)を経る方法において、移動相の圧力P1、2、は、組成物中に含まれるポリマーの分子量及び抽出温度Tに応じて設定する。例えば、組成物中に含まれるポリマーが重量平均分子量1,000以上3,000未満を有する場合、抽出温度Tは25℃以上150℃以下の範囲にある1の温度であり、より好ましくは30℃以上80℃以下の範囲にある1の温度であるのがよい。このとき圧力Pは7MPa以上20MPa以下の範囲、好ましくは7MPa以上15MPa以下の範囲にある1の圧力であるのがよく、圧力Pは8MPa以上25MPa以下の範囲、好ましくは10MPa以上20MPa以下の範囲にある1の圧力であるのがよい。但し、圧力Pは上記圧力Pよりも高い。また、上記(i'')を含む場合、圧力Pは10MPa以上30MPa以下の範囲、好ましくは15MPa以上30MPa以下の範囲にある1の圧力であるのがよい。但し、圧力Pは上記圧力Pよりも高い。
【0032】
組成物中に含まれるポリマーが重量平均分子量3,000以上5000未満、特には3000以上4,500以下を有する場合、抽出温度Tは25℃以上150℃以下の範囲にある1の温度であり、より好ましくは30℃以上80℃以下の範囲にある1の温度であるのがよい。このとき圧力Pは7MPa以上20MPa以下の範囲、好ましくは8MPa以上18MPa以下の範囲にある1の圧力であるのがよく、圧力Pは8MPa以上27MPa以下の範囲、好ましくは10MPa以上22MPa以下の範囲にある1の圧力であるのがよい。但し、圧力Pは上記圧力Pよりも高い。また、上記(i'')を含む場合、圧力Pは10MPa以上30MPa以下の範囲、好ましくは15MPa以上30MPa以下の範囲にある1の圧力であるのがよい。但し、圧力Pは上記圧力Pよりも高い。
【0033】
また、組成物中に含まれるポリマーが重量平均分子量5,000以上7,000以下を有する場合、抽出温度Tは25℃以上150℃以下の範囲にある1の温度であり、より好ましくは30℃以上80℃以下の範囲にある1の温度であるのがよい。このとき圧力Pは7MPa以上22MPa以下の範囲、好ましくは8MPa以上20MPa以下の範囲にある1の圧力であり、圧力Pは8MPa以上30MPa未満の範囲、好ましくは10MPa以上25MPa以下の範囲にある1の圧力であるのがよい。但し、圧力Pは上記圧力Pよりも高い。また、上記(i'')を含む場合、圧力Pは10MPa以上30MPa以下の範囲、好ましくは15MPa以上30MPa以下の範囲にある1の圧力であるのがよい。但し、圧力Pは上記圧力Pよりも高い。
【0034】
下記工程(ii’)を経る方法において、移動相の温度T、T及びTは、組成物中に含まれるポリマーの分子量及び抽出圧力Pに応じて設定する。例えば、組成物中に含まれるポリマーが重量平均分子量3,000以上5,000以下を有する場合、抽出圧力Pは7MPa以上30MPa以下の範囲にある1の圧力が好ましく、より好ましくは8MPa以上25MPa以下の範囲にある1の圧力であるのがよい。このとき温度Tは40℃以上150℃以下の範囲、好ましくは50℃以上100℃以下の範囲にある1の温度であり、温度Tは30℃以上100℃以下の範囲、好ましくは35℃以上90℃以下の範囲、特に好ましくは40℃以上80℃以下の範囲にある1の温度であるのがよい。但し、温度Tは上記温度Tよりも低い。また、上記(ii'')を含む場合、温度Tは25℃以上100℃未満の範囲、好ましくは25℃以上60℃以下の範囲にある1の温度であるのがよい。但し、温度Tは上記温度Tよりも低い。
【0035】
上記第一の方法及び第二の方法において、各画分を分取する時間は、組成物中に含まれるポリマーの分子量及び配合割合に応じて適宜設定すればよい。例えば、溶出した画分中に含まれる化合物の構造をモニタリングすることも可能である。モニタリングは例えばIRの吸収により行うことができる。
【0036】
上記第一の方法及び第二の方法で使用する固定相はシリカゲルである。シリカゲルは従来公知の、例えば市販品のシリカゲルを適宜選択することができる。シリカゲルの形状は球状であることが好ましい。シリカゲルの粒径は30〜300μmが好ましく、より好ましくは40〜100μmである。また、シリカゲルは中性から弱酸性の範囲にあるpHを有するのが好ましく、より好ましくはシリカゲルを水に分散して10重量%懸濁液とした時の25℃でのpHが5〜7.5の範囲、さらに好ましくは6.5〜7.5の範囲にあるのが良い。塩基性のシリカゲルを使用すると、カルボキシル基がトラップされて回収できなくなる恐れがある。上記シリカゲルのpHは、JIS Z 0701「包装用シリカゲル乾燥剤」に記載の方法に準拠して測定された値である。
【0037】
特許文献3に記載されるようなイオン交換樹脂を固定相として使用すると片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む画分を得ることはできない。これに対し本発明の方法は固定相を上記シリカゲルとすることにより、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む画分を得ることができる。
【0038】
片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含む組成物
本発明の方法にて使用する組成物は、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物、及び両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含む組成物である。または、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物、両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物、及び無官能性パーフルオロポリエーテル化合物を含む組成物である。本発明の製造方法によってクロマトグラフィーに付される組成物は、化合物の末端にある官能基がカルボキシル基に変性されている必要がある。
【0039】
上記パーフルオロポリエーテル化合物とは、−C2jO−で示される繰返し単位が複数結合されたポリフルオロオキシアルキレン構造を有する化合物である(該構造においてjは1以上、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4の整数である)。特には、該繰返し単位を10〜500個、好ましくは15〜200個、さらに好ましくは20〜100個、より好ましくは25〜80個有するのがよい。
【0040】
上記繰返し単位−C2jO−は直鎖型及び分岐型のいずれであってもよい。例えば下記の単位が挙げられ、これらの繰り返し単位の2種以上が結合されたものであってもよい。
−CFO−
−CFCFO−
−CFCFCFO−
−CF(CF)CFO−
−CFCFCFCFO−
−CFCFCFCFCFO−
−C(CFO−
【0041】
上記ポリフルオロオキシアルキレン構造は、特には、−(CF−(OCF(OCFCF(OCFCFCF(OCFCFCFCF−O(CF−で示される(式中、dは0または1〜5の整数であり、p、qはそれぞれ独立に5〜300の整数であり、r、sはそれぞれ独立に0〜100の整数であり、かつ、p+q+r+s=10〜500、好ましくは15〜200であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい)。
【0042】
片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物は、上記ポリフルオロオキシアルキレン構造を有し、片末端にカルボキシル基を有する化合物である。例えば、下記式(a)で示すことができる。

A−Rf−B (a)

式(a)中、Rfは直鎖状または分岐型のポリフルオロオキシアルキレン基であり、−OC2j−で示される(式中、jは上述の通り)繰返し単位を10〜500個、好ましくは15〜200個、さらに好ましくは20〜100個、より好ましくは25〜80個有するのがよい。
【0043】
上記Rfは、特に好ましくは、−(CF−(OCF(OCFCF(OCFCFCF(OCFCFCFCF−O(CF−で示されるポリフルオロオキシアルキレン基である(式中、d、p、q、r、sは上記の通りである)。
更に好ましくは、分子中に(OCF)で示される単位と(OCFCF)で示される単位を、それぞれ独立に5〜80個、かつ、合計が20〜150個となるように有するのがよい。
【0044】
上記式(a)において、A及びBはカルボキシル基または−CF基であり、A及びBのいずれか一方がカルボキシル基である。
【0045】
両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物は、上記ポリフルオロオキシアルキレン構造を有し、両末端にカルボキシル基を有する化合物である。例えば、下記式(b)で示すことができる。
HOOC−Rf−COOH (b)
(上記式においてRfは上述した通りである)
【0046】
無官能性パーフルオロポリエーテル化合物は、上記ポリフルオロオキシアルキレン構造を有し、いずれの末端にもカルボキシル基を有さない化合物である。例えば、下記式(c)で示すことができる。
C−Rf−CF (c)
(上記式においてRfは上述した通りである)
【0047】
片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含む組成物は、両末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物の末端基を部分フッ素化することで調製される。該部分フッ素化において、供給するフッ素ガスの量を調製してフッ素化を制御することによりフッ素化率を調製することができる。末端基のフッ素化率は50%〜90%、さらには60%〜90%が好ましく、特には65%〜85%がより好ましい。フッ素化率が上記下限値より低いと両末端官能性ポリマーの含有率が多くなり、上記上限値より大きいと無官能性ポリマーの含有率が多くなる。これにより片末端官能性ポリマーの回収率が低くなるため好ましくない。
【0048】
特には、クロマトグラフィーに付す前の組成物中に含まれる両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の含有量が、両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の合計モルに対して35モル%以下が好ましく、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは20モル%以下、更に好ましくは15モル%以下であるのがよい。該条件を満たすことにより、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の含有率が85モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である画分を分取することがより確実になる。
【0049】
片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含む組成物の調製は、例えば、両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の末端カルボキシル基を部分フッ素化することにより調製することができる。または、カルボキシル基でない官能基を両末端に有するパーフルオロポリエーテル化合物の末端官能基を部分フッ素化し、その後に、残存する末端官能基をカルボキシル基に変性することにより調製することもできる。カルボキシル基でない官能基とは、ヒドロキシル基、エステル基、酸クロライド基及び酸フロライド基が挙げられる。好ましくは酸フロライド基(―C(=O)―F)である。上記官能基をカルボキシル基に変換する方法は従来公知の方法に従えばよい。例えば、酸フロライド基は水と作用させることでカルボキシル基に変換することができる。
【0050】
本発明の方法は、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上で含む組成物を効率よく簡便に製造することができる。また、本発明の製造方法は、両末端に官能性基を有するポリマーしか製造できないような構造のパーフルオロポリエーテル化合物を原料として、片末端に官能性基を有するポリマーを高濃度で有する組成物を製造することを可能にする。また、本発明の方法においてポリマーの分子量は二酸化炭素に溶解できるものであればよく、幅広い分子量のポリマーに適用することができる。特には、重量平均分子量1,000〜100,000、更には1,000〜15,000を有するパーフルオロポリエーテル化合物の精製に適用するのが好ましい。
【0051】
上述したように特許文献3に記載されるようなイオン交換樹脂を使用した分離精製方法は大量のフッ素系溶剤と塩酸を使用するため量産には不向きである。また、薄膜蒸留による精製では、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物が得られず、量産した時に製品としての性能が劣るおそれがある。これに対し本発明の方法は、量産性への障害はなく、高い性能を有する製品を効率的に製造することができる。従って、表面処理剤、潤滑剤、エラストマー材料等に使用する原料の製造に有用である。
【0052】
例えば、本発明の製造方法で得た組成物のカルボキシル基末端に加水分解性基を有する基を導入することにより、片末端に加水分解性基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物を提供することができる。該組成物は表面処理剤として好適に使用することができる。また、これに限るものではなく、公知の方法で、アクリル誘導体、アミン誘導体、イソシアネート誘導体等種々の誘導体に変換できる。
【0053】
加水分解性基を有する基とは、例えば下記に示される基が挙げられる。
【化1】
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基であり、Xは加水分解性基であり、aは2又は3である)
【0054】
上記式(1)において、Xは互いに異なっていてよい加水分解性基である。このようなXとしては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1〜10のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基などの炭素数2〜10のオキシアルコキシ基、アセトキシ基などの炭素数1〜10のアシロキシ基、イソプロペノキシ基などの炭素数2〜10のアルケニルオキシ基、クロル基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基などが挙げられる。中でもメトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基、クロル基が好適である。
【0055】
上記式(1)において、Rは、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基であり、中でもメチル基が好適である。aは2又は3であり、反応性、基材に対する密着性の観点から、3が好ましい。cは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。
【0056】
上記式(1)で示す基を有する、片末端加水分解性基含有パーフルオロポリエーテル化合物は下記式(2)で示すことができる。
【化2】
(式中、Rf基は上述の通りであり、Aは−CF基である。Qは2価の有機基であり、Zはシロキサン結合を有する2〜8価のオルガノポリシロキサン残基であり、R及びXは上記の通りである。aは2又は3、bは1〜7の整数、cは1〜10の整数であり、αは0または1である。)
【0057】
上記式(2)において、Qは2価の有機基であり、Rf基とZ基との連結基、またはRf基と−(CH−基との連結基である。好ましくは、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、又はビニル結合から成る群より選ばれる1以上の結合を含んでよい、炭素数2〜12の有機基である。好ましくは、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、又はビニル結合から成る群より選ばれる1以上の結合を含んでよい、非置換又は置換の、炭素数2〜12の2価炭化水素基である。例えば、下記の基が挙げられる。
【化3】
【0058】
上記式(2)において、Zはシロキサン結合を有する2〜8価のオルガノポリシロキサン残基であり、ケイ素原子数2〜13個、好ましくは、ケイ素原子数2〜5個の鎖状または環状オルガノポリシロキサン残基である。但し、2つのケイ素原子がアルキレン基で結合されたシルアルキレン構造、即ちSi−(CH−Si、を含んでよい(前記式においてnは2〜6の整数)。
【0059】
該オルガノポリシロキサン残基は、炭素数1〜8、より好ましくは1〜4のアルキル基又はフェニル基を有するものが良い。また、シルアルキレン結合におけるアルキレン基は、炭素数2〜6、好ましくは2〜4であるのが良い。
【0060】
このようなZとしては、下記に示されるものが挙げられる。
【化4】
【0061】
加水分解性基を有する基の導入は従来公知の方法に従えばよく、例えば特開2012−72272号公報(特許文献3)及び特開2012―233157号公報(特許文献2)に記載の方法が使用できる。例えば、以下の工程(1)〜(3)を経ることにより導入できる。
【0062】
(1)末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を含む組成物を、金属水素化物を用いた還元、あるいは貴金属触媒を用いた接触水素化に供し、末端カルボキシル基の一部をヒドロキシル基にする。金属水素化物としては例えば水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム等が使用できる。貴金属触媒としては例えばルテニウムが使用できる。
【0063】
(2)次に、末端ヒドロキシル基に脂肪族不飽和基を導入する。導入方法は従来公知の方法に従えばよい。脂肪族不飽和基としては、例えば炭素数2〜12のアルケニル基が挙げられる。例えば、上記脂工程(1)により得られたポリマー組成物と、臭化アリル等のハロゲン化アルケニル化合物とを、硫酸水素テトラブチルアンモニウムの存在下で反応させた後、水酸化ナトリウムを滴下してアルカリ性にすることで、ポリマーの末端にアリル基等のアルケニル基が導入される。
【0064】
(3)次に、末端脂肪族不飽和基に加水分解性シリル基を導入する。導入は、上記脂工程(2)により得られたポリマー組成物と、一方の末端にSiH基を有し他方の末端に加水分解性基(X)を有する有機ケイ素化合物とを、付加反応させることにより行えばよい。該有機ケイ素化合物としては、末端加水分解性基(X)含有オルガノハイドロジェンシラン等が挙げられる。付加反応は公知の反応条件で行えばよく、付加反応触媒、例えば白金族化合物の存在下で行えばよい。
【0065】
上記方法により、上記式(2)で示される、片末端に加水分解性基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物を提供することができる。該組成物は表面処理剤として好適に使用することができる。
【0066】
表面処理剤は上記式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の部分加水分解縮合物を含んでも良い。該部分加水分解縮合物とは、上記式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の末端加水分解性基の一部を予め公知の方法により加水分解し縮合させて得られる生成物である。
【0067】
表面処理剤には、必要に応じて、加水分解縮合触媒、例えば、有機錫化合物(ジブチル錫ジメトキシド、ジラウリン酸ジブチル錫など)、有機チタン化合物(テトラn−ブチルチタネートなど)、有機酸(酢酸、メタンスルホン酸、フッ素変性カルボン酸など)、無機酸(塩酸、硫酸など)を添加してもよい。これらの中では、特に酢酸、テトラn−ブチルチタネート、ジラウリン酸ジブチル錫、フッ素変性カルボン酸などが望ましい。添加量は触媒量でよい。通常、パーフルオロポリエーテル化合物及び/又はその部分加水分解縮合物100質量部に対して0.01〜5質量部、特に0.05〜1質量部である。
【0068】
上記表面処理剤は溶媒を含んでよい。溶媒は、好ましくはフッ素変性脂肪族炭化水素系溶媒(パーフルオロヘプタン、パーフルオロクタンなど)、フッ素変性芳香族炭化水素系溶媒(m−キシレンヘキサフルオライド、ベンゾトリフルオライド、1,3−トリフルオロメチルベンゼンなど)、フッ素変性エーテル系溶媒(メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)など)、フッ素変性アルキルアミン系溶媒(パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミンなど)、炭化水素系溶媒(石油ベンジン、ミネラルスピリッツ、トルエン、キシレンなど)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)であるのがよい。中でも、溶解性、濡れ性などの点で、フッ素変性された溶媒(フッ素系溶剤という)が望ましく、特には、1,3−トリフルオロメチルベンゼン、m−キシレンヘキサフルオライド、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロトリブチルアミン、及びエチルパーフルオロブチルエーテルが好ましい。
【0069】
上記溶媒はその2種以上を混合してもよく、フルオロオキシアルキレン基含有ポリマー及び/またはその部分加水分解縮合物を均一に溶解させることが好ましい。なお、溶媒に溶解させるフルオロオキシアルキレン基含有ポリマーの最適濃度は、表面処理剤の使用方法に応じて適宜選択すればよく制限されるものではない。通常は0.01〜30重量%、好ましくは0.02〜20重量%、更に好ましくは0.05〜5重量%となるように溶解させる。
【0070】
表面処理剤は蒸着処理により基材に施与され、良好な膜を形成することができる。蒸着処理の方法は特に限定されるものではなく、例えば抵抗加熱方式、または電子ビーム加熱方式を使用することができる。硬化条件は表面処理方法に応じて適宜選択すればよい。例えばスプレー、インクジェット、刷毛塗りやディッピングで施与する場合は、室温(20±15℃)から100℃の範囲が望ましい。また、硬化は加湿下で行われることが反応を促進する上で望ましい。硬化被膜の膜厚は、処理する基材の種類により適宜選定されるが、通常0.1nm〜100nm、特に1〜20nmである。
【0071】
表面処理剤で処理される基材は特に制限されず、紙、布、金属及びその酸化物、ガラス、プラスチック、セラミック、石英など各種材質のものであってよい。本発明の表面処理剤は前記基板に撥水撥油性、低動摩擦性、及び耐擦傷性を付与することができる。特に、SiO処理及びまたはプラズマ処理されたガラスまたは石英基板の表面処理剤として好適に使用することができる。
【0072】
表面処理剤で処理される物品としては、例えば、ガラス、ハードコートフイルム、高硬度フイルム、反射防止フイルム、眼鏡レンズ、光学レンズ、及び石英基板などが挙げられる。特に、強化ガラス、及び反射防止処理されたガラスの表面に撥水撥油層を形成するための処理剤として有用である。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。下記実施例及び比較例において、移動相の圧力とは高圧容器内の移動相の圧力を意味し、移動相の温度とは高圧容器内の移動相の温度を意味する。下記において、シリカゲルのpHは、JIS Z 0701「包装用シリカゲル乾燥剤」に記載の方法に準拠して測定された、10%水懸濁液でのpHである。詳細には、試料20gに蒸留水200mlを加え、80℃で30分間加温した後、室温に冷却した上澄液を用いて、JIS Z 8802「pH測定方法」に準拠してpHを測定した。
【0074】
実施例及び比較例にて下記に示す(1a)、(1b)、及び(1c)より成る混合物(組成物F50〜F90)を用いた。該混合物は、下記式(1b)で示される両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を、フッ素ガスを用いて部分フッ素化して調製されたものである。フッ素ガスの導入率を制御することにより、下記表1に記載される各含有比率(モル%、以下同様)を有する混合物が得られる。表1に記載される各成分の含有比率は、カルボン酸を有するポリマーを酸吸着剤に吸着させることで分取し、19F−NMRにより決定したものである。
【化5】
【0075】
【表1】
【0076】
[実施例1]
組成物F60 10gを、超臨界二酸化炭素を移動相とし、シリカゲル60N(関東化学社製、pH6.5〜7.5(25℃10重量%水懸濁液での値)、粒子径40〜100μm、乾式充填)を充填した25mLの高圧容器に通した。移動相の流量は15ml/minであり、温度は40℃であり、圧力は8MPaから25MPaへ変化させた。先ず、40℃、8MPaで超臨界状態にした二酸化炭素を流した。その後、移動相の圧力を12MPaにした。移動相の圧力12MPaの状態で60分間画分を分取し、その後移動相の圧力を18MPaにして60分間画分を分取し、次いで移動相の圧力を25MPaにして60分間画分を分取した。各画分中に含まれる成分の比率を下記表2に示す。該成分比率は19F−NMRにより決定したものである。
【0077】
【表2】
【0078】
[実施例2]
組成物F70 10gを、超臨界二酸化炭素を移動相とし、シリカゲル60N(関東化学社製、pH6.5〜7.5(25℃10重量%水懸濁液での値)、粒子径40〜100μm、乾式充填)を充填した25mLの高圧容器に通した。移動相の流量は15ml/minであり、温度は40℃であり、圧力は8MPaから25MPaへ変化させた。先ず、40℃、8MPaで超臨界状態にした二酸化炭素を流した。その後、移動相の圧力を12MPaにした。移動相の圧力12MPaの状態で60分間画分を分取し、その後移動相の圧力を18MPaにして60分間画分を分取し、次いで移動相の圧力を25MPaにして60分間画分を分取した。各画分中に含まれる成分の比率を下記表3に示す。該成分比率は19F−NMRにより決定したものである。なお、25MPaで抽出した成分は、抽出量が少ないため、分析できなかった。
【0079】
【表3】
【0080】
[実施例3]
組成物F80 10gを、超臨界二酸化炭素を移動相とし、シリカゲル60N(関東化学社製、pH6.5〜7.5(25℃10重量%水懸濁液での値)、粒子径40〜100μm、乾式充填)を充填した25mLの高圧容器に通した。移動相の流量は15ml/minであり、温度は40℃であり、圧力は8MPaから25MPaへ変化させた。先ず、40℃、8MPaで超臨界状態にした二酸化炭素を流した。その後、移動相の圧力を12MPaにした。移動相の圧力12MPaの状態で60分間画分を分取し、その後移動相の圧力を18MPaにして60分間画分を分取し、次いで移動相の圧力を25MPaにして60分間画分を分取した。各画分中に含まれる成分の比率を下記表4に示す。該成分比率は19F−NMRにより決定したものである。なお、25MPaで抽出した成分は、抽出量が少ないため、分析できなかった。
【0081】
【表4】
【0082】
[実施例4]
組成物F90 10gを、超臨界二酸化炭素を移動相とし、シリカゲル60N(関東化学社製、pH6.5〜7.5(25℃10重量%水懸濁液での値)、粒子径40〜100μm、乾式充填)を充填した25mLの高圧容器に通した。移動相の流量は15ml/minであり、温度は40℃であり、圧力は8MPaから25MPaへ変化させた。先ず、40℃、8MPaで超臨界状態にした二酸化炭素を流した。その後、移動相の圧力を12MPaにした。移動相の圧力12MPaの状態で60分間画分を分取し、その後移動相の圧力を18MPaにして60分間画分を分取し、次いで移動相の圧力を25MPaにして60分間画分を分取した。各画分中に含まれる成分の比率を下記表5に示す。該成分比率は19F−NMRにより決定したものである。なお、25MPaで抽出した成分は、抽出量が少ないため、分析できなかった。
【0083】
【表5】
【0084】
[実施例5]
実施例5では、下記式(2a)の化合物50モル%、式(2b)の化合物5モル%、式(2c)の化合物45モル%からなる組成物を使用した。
【化6】
【0085】
上記組成物10gを、超臨界二酸化炭素を移動相とし、シリカゲル60N(関東化学社製、pH6.5〜7.5(25℃10重量%水懸濁液での値)、粒子径40〜100μm、乾式充填)を充填した25mLの高圧容器に通した。移動相の流量は15ml/minであり、温度は40℃であり、圧力は8MPaから25MPaへ変化させた。先ず、40℃、8MPaで超臨界状態にした二酸化炭素を流した。その後、移動相の圧力を10MPaにした。移動相の圧力10MPaの状態で60分間画分を分取し、その後移動相の圧力を15MPaにして60分間画分を分取し、次いで移動相の圧力を25MPaにして60分間画分を分取した。各画分中に含まれる成分の比率を下記表6に示す。該成分比率は19F−NMRにより決定したものである。なお、25MPaで抽出した成分は、抽出量が少ないため、分析できなかった。
【0086】
【表6】
【0087】
[実施例6]
実施例6では、下記式(3a)の化合物52モル%、式(3b)の化合物5モル%、式(3c)の化合物43モル%からなる組成物を使用した。
【化7】
【0088】
上記組成物10gを、超臨界二酸化炭素を移動相とし、シリカゲル60N(関東化学社製、pH6.5〜7.5(25℃10重量%水懸濁液での値)、粒子径40〜100μm、乾式充填)を充填した25mLの高圧容器に通した。移動相の流量は15ml/minであり、温度は40℃であり、圧力は8MPaから25MPaへ変化させた。先ず、40℃、8MPaで超臨界状態にした二酸化炭素を流した。その後、移動相の圧力を14MPaにした。移動相の圧力14MPaの状態で60分間画分を分取し、その後移動相の圧力を20MPaにして60分間画分を分取し、次いで移動相の圧力を25MPaにして60分間画分を分取した。各画分中に含まれる成分の比率を下記表7に示す。該成分比率は19F−NMRにより決定したものである。なお、25MPaで抽出した成分は、抽出量が少ないため、分析できなかった。
【0089】
【表7】
【0090】
[実施例7]
組成物F50 10gを、超臨界二酸化炭素を移動相とし、シリカゲル60N(関東化学社製、pH6.5〜7.5(25℃10重量%水懸濁液での値)、粒子径40〜100μm、乾式充填)を充填した25mLの高圧容器に通した。移動相の流量は15ml/minであり、温度は40℃であり、圧力は8MPaから25MPaへ変化させた。先ず、40℃、8MPaで超臨界状態にした二酸化炭素を流した。その後、移動相の圧力を12MPaにした。移動相の圧力12MPaの状態で60分間画分を分取し、その後移動相の圧力を18MPaにして60分間画分を分取し、次いで移動相の圧力を25MPaにして60分間画分を分取した。各画分中に含まれる成分の比率を下記表8に示す。該成分比率は19F−NMRにより決定したものである。
【表8】
【0091】
実施例7で使用した原料組成物F50は両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を24モル%(片末端化合物と両末端化合物の合計に対し31.5モル%)有する。該組成物を精製して得た画分は片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の含有率88モル%であった。該結果に示す通り、原料組成物中に含まれる両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の比率が多いと、画分中の片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の含有率が下がる。そのため、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の含有率が90モル%以上である画分を得るには、原料組成物中に含まれる両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の比率が30モル%以下であるのが好ましい。
【0092】
[実施例8]
組成物F70 10gを、超臨界二酸化炭素を移動相とし、シリカゲル60N(関東化学社製、pH6.5〜7.5(25℃10重量%水懸濁液での値)、粒子径40〜100μm、乾式充填)を充填した25mLの高圧容器に通した。移動相の流量は5ml/minであり、圧力は13MPaであり、温度は80℃から30℃へ変化させた。先ず、80℃、13MPaで超臨界状態にした二酸化炭素を流した。移動相の圧力13MPa、温度80℃の状態で60分間画分を分取し、その後移動相の温度を35℃にして60分間画分を分取した。各画分中に含まれる成分の比率を下記表9に示す。該成分比率は19F−NMRにより決定したものである。
【0093】
【表9】
【0094】
[実施例9]
組成物F70 10gを、超臨界二酸化炭素を移動相とし、シリカゲル60(関東化学社製、pH5.0〜7.0(25℃10重量%水懸濁液での値)、粒子径40〜100μm、乾式充填)を充填した25mLの高圧容器に通した。移動相の流量は15ml/minであり、温度は40℃であり、圧力は8MPaから25MPaへ変化させた。先ず、40℃、8MPaで超臨界状態にした二酸化炭素を流した。その後、移動相の圧力を12MPaにした。移動相の圧力12MPaの状態で60分間画分を分取し、その後移動相の圧力を18MPaにして60分間画分を分取し、次いで移動相の圧力を25MPaにして60分間画分を分取した。各画分中に含まれる成分の比率を下記表10に示す。該成分比率は19F−NMRにより決定したものである。なお、25MPaで抽出した成分は、抽出量が少ないため、分析できなかった。
【0095】
【表10】
【0096】
上記実施例1〜9に示す通り、本発明の製造方法に依れば、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の含有率が高い画分を効率的に且つ簡便に得ることができる。従って、組成物中の片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の含有率を高めることができる。特には、原料組成物中の両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の含有率を制御することにより、組成物中の片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の含有率を90モル%以上、さらには95モル%以上にすることが可能である。
【0097】
[比較例1]
組成物F70を、超臨界二酸化炭素を移動相とし、シリカゲルを使用せずに25mLの高圧容器に通した。移動相の流量は15ml/minであり、温度は50℃であり、圧力は8MPaから20MPaへ変化させた。先ず、50℃、8MPaで超臨界状態にした二酸化炭素を流した。その後、移動相の圧力を13MPaにした。移動相の圧力13MPaの状態で30分間画分を分取し、その後移動相の圧力を14MPaにして30分間画分を分取し、その後移動相の圧力を15MPaにして60分間画分を分取し、次いで移動相の圧力を20MPaにして60分間画分を分取した。各画分中に含まれる成分の比率を下記表11に示す。
【0098】
【表11】
【0099】
上記表11に記載の通り、シリカゲルを使用しないと、画分中の片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の含有量を80モル%以上にすることができなかった。これは、超臨界抽出のみの場合は、末端基の違いよりもポリマーの分子量の違いで分離される傾向にあるためである。超臨界抽出のみで片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の濃度を高めるためには、分子量分布を狭くするか、末端に超臨界二酸化炭素への溶解性に影響を及ぼす大きな基を導入する必要がある。これに対し、本発明の方法は、上記の通り、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含有する画分を効率よく得ることができる。
【0100】
[比較例2]
組成物F70を、超臨界二酸化炭素を移動相とし、陰イオン交換樹脂B−20HG(オルガノ社製)を充填した25mLの高圧容器に通した。移動相の流量は15ml/minであり、温度は40℃、圧力は8〜25MPaである。実施例1と同じく移動相の圧力を8MPaから順に12MPa、18MPa、25MPaへと変化させたが、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を抽出することはできなかった。
【0101】
比較例2は、特開2012−72272号公報に記載されるような陰イオン交換樹脂を固定相として用いた例である。上記の通り該方法では、カルボン酸が陰イオン交換樹脂に吸着してしまうため、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を抽出することはできない。
【0102】
[比較例3]
組成物F70を、超臨界二酸化炭素を移動相とし、シリカゲル60N(関東化学社製、pH6.5〜7.5(25℃10重量%水懸濁液での値)、粒子径40〜100μm、乾式充填)を充填した25mLの高圧容器に通した。移動相の流量は15ml/minであり、温度は40℃、圧力は18MPaである。移動相の温度及び圧力を変化させず、先ず10分間画分を分取し、次いで10分間画分を分取し、その後60分間画分を分取した。各画分中に含まれる成分の比率を下記表12に示す。
【0103】
【表12】
【0104】
上記表12に記載の通り、温度及び圧力のいずれも変化させないと、片末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を高濃度(即ち、80モル%以上)で含む画分を分取することはできない。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の方法は、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物を効率よく簡便に製造することができる。また本発明の製造方法は、両末端官能性ポリマーしか製造できない構造のパーフルオロポリエーテル化合物を原料として片末端に官能性基を有するポリマーを高濃度で有する組成物を製造することを可能にする。また本発明の方法は、幅広い分子量の化合物を含むポリマーに適用することができる。従って、表面処理剤、潤滑剤、エラストマー材料等に使用する原料の精製に有用である。