(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪感放射線性組成物≫
本発明に係る感放射線性組成物は、上記一般式(1)で表される化合物を少なくとも含有する。上記一般式(1)で表される化合物は、本発明に係る感放射線性組成物において、溶剤として用いられる。本発明に係る感放射線性組成物は、溶剤として、上記一般式(1)で表される化合物のみを含有してもよいし、上記一般式(1)で表される化合物以外の有機溶剤(以下、「その他の有機溶剤」ともいう。)を更に含有してもよい。即ち、本発明に係る感放射線性組成物は、上記一般式(1)で表される化合物を溶剤の少なくとも1種として含有する。上記一般式(1)で表される化合物は、本発明に係る感放射線性組成物において、単独で又はその他の有機溶剤との混合溶剤の形態で、溶剤以外の成分(以下、「基材成分」という。)を溶解及び/又は分散する溶剤として用いられる。本発明に係る感放射線性組成物は、上記一般式(1)で表される化合物を含有するため、感度、保存安定性、塗布性、現像性、及び安全性に優れ、露光及び現像により、異物の発生が抑制されたパターンを形成することができる。本発明に係る感放射線性組成物は、例えば、ブラックマトリクス、カラーフィルタ、ブラックフォトスペーサ、集積回路、液晶素子等の製造に好適に用いることができる。
【0015】
[一般式(1)で表される化合物]
上記一般式(1)で表される化合物は、感放射線性組成物に含まれる基材成分を良好に溶解及び/又は分散することができる溶剤であり、広く感放射線性組成物一般において用いることができる。中でも、感放射線性組成物がオキシム系光重合開始剤を含む場合、上記一般式(1)で表される化合物は、オキシム系光重合開始剤の溶解性が良好である。上記一般式(1)で表される化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0016】
上記一般式(1)において、R
2又はR
3により表されるC
1〜C
3のアルキル基、及びR
4又はR
5により表されるC
1〜C
3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
R
2、R
3、R
4、及びR
5は、独立にメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0017】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、下記の各式で表される化合物が挙げられる。
【0019】
上記一般式(1)で表される化合物のうち、好ましい具体例としては、実施例で用いられる化合物1〜4が挙げられ、化合物1、即ち、下記式(E1)で表される化合物が特に好ましい。下記式(E1)で表される化合物は、高懸念物質(SVHC)に指定されておらず、毒性の低い化合物であるため、安全性が特に高い。
【0021】
本発明に係る感放射線性組成物において、溶剤の含有量は、上記感放射線性組成物の固形分濃度が1〜50質量%となる量が好ましく、5〜30質量%となる量がより好ましい。また、本発明に係る感放射線性組成物に含まれる溶剤において、上記一般式(1)で表される化合物とその他の有機溶剤との質量比は、5:95〜100:0であることが好ましく、20:80〜100:0であることがより好ましい。溶剤の含有量及び上記一般式(1)で表される化合物とその他の有機溶剤との質量比を上記の範囲とすることにより、得られる感放射線性組成物は、感度、保存安定性、塗布性、現像性、及び安全性に優れたものとなりやすく、この感放射線性組成物を露光及び現像することにより形成されるパターンは、異物の発生が抑制されたものとなりやすい。なお、その他の有機溶剤については後述する。
【0022】
<感放射線性組成物の例>
本発明に係る感放射線性組成物は、ネガ型及びポジ型のいずれであってもよい。ネガ型感放射線性組成物としては、上記一般式(1)で表される化合物と、アルカリ可溶性樹脂とを含有するネガ型感放射線性組成物;上記一般式(1)で表される化合物と、ポリアミック酸と、光塩基発生剤、光酸発生剤等の感光性成分とを含有する感放射線性ポリイミド前駆体組成物;上記一般式(1)で表される化合物と、ポリベンゾオキサゾール前駆体と、光塩基発生剤、光酸発生剤等の感光性成分とを含有する感放射線性ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物;上記一般式(1)で表される化合物を含有する感放射線性SOG(スピンオングラス)組成物等が挙げられる。ポジ型感放射線性組成物としては、上記一般式(1)で表される化合物と、アルカリ可溶性樹脂と、キノンジアジド基含有化合物とを含有するポジ型感放射線性組成物;上記一般式(1)で表される化合物と、ポリイミド樹脂と、光塩基発生剤、光酸発生剤等の感光性成分とを含有する感放射線性ポリイミド組成物;上記一般式(1)で表される化合物と、酸の作用によりアルカリに対する溶解性が増大する樹脂と、光酸発生剤とを含有する化学増幅型ポジ型感放射線性組成物等が挙げられる。以下、これらの感放射線性組成物のうち、上記一般式(1)で表される化合物と、アルカリ可溶性樹脂とを含有するネガ型感放射線性組成物(以下、「ネガ型感放射線性組成物1」という。)、上記一般式(1)で表される化合物と、ポリアミック酸と、光塩基発生剤、光酸発生剤等の感光性成分とを含有する感放射線性ポリイミド前駆体組成物(以下、「ネガ型感放射線性組成物2」という。)、上記一般式(1)で表される化合物と、ポリベンゾオキサゾール前駆体と、光塩基発生剤、光酸発生剤等の感光性成分とを含有する感放射線性ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物(以下、「ネガ型感放射線性組成物3」という。)、及び上記一般式(1)で表される化合物と、アルカリ可溶性樹脂と、キノンジアジド基含有化合物とを含有するポジ型感放射線性組成物(以下、「ポジ型感放射線性組成物1」という。)について詳細に説明する。
【0023】
<ネガ型感放射線性組成物1>
ネガ型感放射線性組成物1は、上記一般式(1)で表される化合物と、アルカリ可溶性樹脂とを含有するものであり、より具体的には、上記一般式(1)で表される化合物と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性モノマーと、光重合開始剤とを含有するものである。
【0024】
[一般式(1)で表される化合物]
一般式(1)で表される化合物としては、感放射線性組成物の一般的な説明において例示したものを用いることができる。上記一般式(1)で表される化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0025】
[アルカリ可溶性樹脂]
アルカリ可溶性樹脂とは、樹脂濃度20質量%の樹脂溶液(溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)により、膜厚1μmの樹脂膜を基板上に形成し、濃度0.05質量%のKOH水溶液に1分間浸漬した際に、膜厚0.01μm以上溶解するものをいう。
【0026】
アルカリ可溶性樹脂としては、上述のアルカリ可溶性を示す樹脂であれば特に限定されず、従来公知のアルカリ可溶性樹脂を用いることができる。アルカリ可溶性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
好適なアルカリ可溶性樹脂の一例としては、(A1)カルド構造を有する樹脂が挙げられる。(A1)カルド構造を有する樹脂としては、特に限定されるものではなく、従来公知の樹脂を用いることができる。その中でも、下記式(a−1)で表される樹脂が好ましい。
【0029】
上記式(a−1)中、X
aは、下記式(a−2)で表される基を示す。
【0031】
上記式(a−2)中、R
a1は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、R
a2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、W
aは、単結合又は下記式(a−3)で表される基を示す。
【0033】
また、上記式(a−1)中、Y
aは、ジカルボン酸無水物から酸無水物基(−CO−O−CO−)を除いた残基を示す。ジカルボン酸無水物の例としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸等が挙げられる。
【0034】
また、上記式(a−1)中、Z
aは、テトラカルボン酸二無水物から2個の酸無水物基を除いた残基を示す。テトラカルボン酸二無水物の例としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
また、上記式(a−1)中、mは、0〜20の整数を示す。
【0035】
(A1)カルド構造を有する樹脂の質量平均分子量は、1000〜40000であることが好ましく、2000〜30000であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、良好な現像性を得ながら、十分な耐熱性、膜強度を得ることができる。なお、本明細書において、質量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定されたポリスチレン換算による値をいう。
【0036】
また、好適なアルカリ可溶性樹脂の他の例としては、(A2)エポキシ樹脂が挙げられる。(A2)エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができ、エチレン性不飽和基を有さないものであっても、エチレン性不飽和基を有するものであってもよい。
【0037】
エチレン性不飽和基を有さないエポキシ樹脂としては、例えば、不飽和カルボン酸とエポキシ基含有不飽和化合物とを少なくとも共重合させて得られる樹脂(A2−1)を用いることができる。
【0038】
不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸;これらジカルボン酸の無水物;等が挙げられる。これらの中でも、共重合反応性、得られる樹脂のアルカリ溶解性、入手の容易性等の点から、(メタ)アクリル酸及び無水マレイン酸が好ましい。これらの不飽和カルボン酸は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸との両方を意味する。
【0039】
上記樹脂(A2−1)に占める不飽和カルボン酸由来の構成単位(カルボキシル基を有する構成単位)の割合は、5〜29質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましい。上記範囲とすることにより、ネガ型感放射線性組成物1の現像性を適度なものとすることができる。
【0040】
エポキシ基含有不飽和化合物は、脂環式エポキシ基を有さないものであっても、脂環式エポキシ基を有するものであってもよいが、脂環式エポキシ基を有するものがより好ましい。
【0041】
脂環式エポキシ基を有さないエポキシ基含有不飽和化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、6,7−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エポキシアルキルエステル類;α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸6,7−エポキシヘプチル等のα−アルキルアクリル酸エポキシアルキルエステル類;o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類;等が挙げられる。これらの中でも、共重合反応性、硬化後の樹脂の強度等の点から、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、6,7−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、及びp−ビニルベンジルグリシジルエーテルが好ましい。
【0042】
脂環式エポキシ基を有するエポキシ基含有不飽和化合物の脂環式基は、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。
【0043】
具体的に、脂環式エポキシ基を有するエポキシ基含有不飽和化合物としては、例えば下記式(a4−1)〜(a4−16)で表される化合物が挙げられる。これらの中でも、ネガ型感放射線性組成物1の現像性を適度なものとするためには、下記式(a4−1)〜(a4−6)で表される化合物が好ましく、下記式(a4−1)〜(a4−4)で表される化合物がより好ましい。
【0047】
上記式中、R
a3は水素原子又はメチル基を示し、R
a4は炭素数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、R
a5は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、nは0〜10の整数を示す。R
a4としては、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。R
a5としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基、−CH
2−Ph−CH
2−(Phはフェニレン基を示す)が好ましい。
【0048】
これらのエポキシ基含有不飽和化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0049】
上記樹脂(A2−1)に占めるエポキシ基含有不飽和化合物由来の構成単位(エポキシ基を有する構成単位)の割合は、5〜90質量%であることが好ましく、15〜75質量%であることがより好ましい。上記範囲とすることにより、良好な形状のパターンを形成しやすくなる。
【0050】
上記樹脂(A2−1)は、脂環式基含有不飽和化合物を更に共重合させたものであることが好ましい。
【0051】
脂環式基含有不飽和化合物の脂環式基は、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。
【0052】
具体的に、脂環式基含有不飽和化合物としては、例えば下記式(a5−1)〜(a5−8)で表される化合物が挙げられる。これらの中でも、ネガ型感放射線性組成物1の現像性を適度なものとするためには、下記式(a5−3)〜(a5−8)で表される化合物が好ましく、下記式(a5−3)、(a5−4)で表される化合物がより好ましい。
【0055】
上記式中、R
a6は水素原子又はメチル基を示し、R
a7は単結合又は炭素数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、R
a8は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。R
a7としては、単結合、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。R
a8としては、例えばメチル基、エチル基が好ましい。
【0056】
上記樹脂(A2−1)に占める脂環式基含有不飽和化合物由来の構成単位の割合は、1〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましい。
【0057】
また、上記樹脂(A2−1)は、上記以外の他の化合物を更に共重合させたものであってもよい。このような他の化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類等が挙げられる。これらの化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0058】
(メタ)アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル(メタ)アクリレート;クロロエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジメチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0059】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N−アリール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−アリール(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル−N−メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0060】
アリル化合物としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
【0061】
ビニルエーテル類としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロルフェニルエーテル、ビニル−2,4−ジクロルフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
【0062】
ビニルエステル類としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフエニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロル安息香酸ビニル、テトラクロル安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0063】
スチレン類としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロルメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2−ブロモ−4−トリフルオロメチルスチレン、4−フルオロ−3−トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
【0064】
樹脂(A2−1)の質量平均分子量は、2000〜50000であることが好ましく、5000〜30000であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、ネガ型感放射線性組成物1の膜形成能、現像性のバランスがとりやすい傾向がある。
【0065】
一方、エチレン性不飽和基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、不飽和カルボン酸とエポキシ基含有不飽和化合物とを少なくとも重合させて得られる樹脂のカルボキシル基と、エポキシ基含有不飽和化合物のエポキシ基とを反応させて得られる樹脂(A2−2)、あるいは、不飽和カルボン酸とエポキシ基含有不飽和化合物とを少なくとも重合させて得られる樹脂のエポキシ基と、不飽和カルボン酸のカルボキシル基とを反応させて得られる樹脂(A2−3)を用いることができる。
【0066】
不飽和カルボン酸、エポキシ基含有不飽和化合物としては、上記樹脂(A2−1)で例示した化合物が挙げられる。したがって、不飽和カルボン酸とエポキシ基含有不飽和化合物とを少なくとも重合させて得られる樹脂としては、上記樹脂(A2−1)が例示される。
【0067】
上記樹脂(A2−2)、(A2−3)に占める不飽和カルボン酸由来の構成単位(カルボキシル基を有する構成単位)の割合は、5〜60質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。上記範囲とすることにより、ネガ型感放射線性組成物1の現像性を適度なものとすることができる。
【0068】
また、上記樹脂(A2−2)、(A2−3)に占めるエポキシ基含有不飽和化合物由来の構成単位(エポキシ基を有する構成単位)の割合は、5〜90質量%であることが好ましく、15〜75質量%であることがより好ましい。上記範囲とすることにより、良好な形状のパターンを形成しやすくなる。
【0069】
樹脂(A2−2)、(A2−3)の質量平均分子量は、2000〜50000であることが好ましく、5000〜30000であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、ネガ型感放射線性組成物1の膜形成能、現像性のバランスがとりやすい傾向がある。
【0070】
上記のほか、(A2)エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、アミンエポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂のエポキシ基と、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等を用いることもできる。
【0071】
アルカリ可溶性樹脂の含有量は、ネガ型感放射線性組成物1の固形分に対して5〜90質量%であることが好ましく、10〜85質量%であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、ネガ型感放射線性組成物1の膜形成能、現像性のバランスをとりやすい傾向がある。
【0072】
[光重合性モノマー]
光重合性モノマーとしては、特に限定されず、従来公知の単官能モノマー、多官能モノマーを用いることができる。光重合性モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0073】
単官能モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0074】
一方、多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(即ち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN−メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能モノマーや、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0075】
光重合性モノマーの含有量は、ネガ型感放射線性組成物1の固形分に対して1〜45質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、感度、現像性、解像性のバランスがとりやすい傾向がある。
【0076】
[光重合開始剤]
光重合開始剤としては、特に限定されず、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0077】
光重合開始剤として具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−ベンゾイル−4’−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ−2−エチルヘキシル安息香酸、4−ジメチルアミノ−2−イソアミル安息香酸、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド、2−メルカプトベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン(即ち、ミヒラーズケトン)、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(即ち、エチルミヒラーズケトン)、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパン、p−メトキシトリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、「IRGACURE OXE02」、「IRGACURE OXE01」、「IRGACURE 369」、「IRGACURE 651」、「IRGACURE 907」(商品名、BASF製)、「NCI−831」(商品名、ADEKA製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0078】
これらの中でも、オキシム系光重合開始剤を用いることが感度の面で特に好ましい。
オキシム系光重合開始剤の好ましい例としては、下記式(c−1)で表される光重合開始剤が挙げられる。
【0080】
上記式(c−1)中、R
c1は、置換基を有していてもよい、複素環基、縮合環式芳香族基、又は芳香族基を示す。R
c2〜R
c4はそれぞれ独立に1価の有機基を示す。
【0081】
R
c1における複素環基としては、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子の少なくとも1つの原子を含む5員環以上、好ましくは5員環又は6員環の複素環基が挙げられる。複素環基の例としては、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基等の含窒素5員環基;ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基等の含窒素6員環基;チアゾリル基、イソチアゾリル基等の含窒素含硫黄基;オキサゾリル基、イソオキサゾリル基等の含窒素含酸素基;チエニル基、チオピラニル基等の含硫黄基;フリル基、ピラニル基等の含酸素基;等が挙げられる。この中でも、窒素原子又は硫黄原子を1つ含むものが好ましい。この複素環には縮合環が含まれていてもよい。縮合環が含まれる複素環基の例としてはベンゾチエニル基等が挙げられる。
【0082】
R
c1における縮合環式芳香族基としては、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。また、R
c1における芳香族基としては、フェニル基が挙げられる。
【0083】
複素環基、縮合環式芳香族基、又は芳香族基は、置換基を有していてもよい。特にR
c1が芳香族基である場合には、置換基を有していることが好ましい。このような置換基としては、−NO
2、−CN、−SO
2R
c5、−COR
c5、−NR
c6R
c7、−R
c8、−OR
c8、−O−R
c9−O−R
c10等が挙げられる。
【0084】
R
c5は、それぞれ独立にアルキル基を示し、これらはハロゲン原子で置換されていてもよく、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。R
c5におけるアルキル基は、炭素数1〜5であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0085】
R
c6及びR
c7は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を示し、これらはハロゲン原子で置換されていてもよく、これらのうちアルキル基及びアルコキシ基のアルキレン部分は、エーテル結合、チオエーテル結合、又はエステル結合により中断されていてもよい。また、R
c6とR
c7とが結合して環構造を形成していてもよい。R
c6及びR
c7におけるアルキル基又はアルコキシ基は、炭素数1〜5であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
【0086】
R
c6とR
c7とが結合して形成し得る環構造としては、複素環が挙げられる。この複素環としては、少なくとも窒素原子を含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環が挙げられる。この複素環には縮合環が含まれていてもよい。複素環の例としては、ピペリジン環、モルホリン環、チオモルホリン環等が挙げられる。これらの中でも、モルホリン環が好ましい。
【0087】
R
c8は、水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基を示す。R
c8におけるアルキル基は、炭素数1〜6であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0088】
R
c9及びR
c10は、それぞれ独立にアルキル基を示し、これらはハロゲン原子で置換されていてもよく、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。好ましい炭素数やその具体例は、上記R
c1の説明と同様である。
【0089】
これらの中でも、R
c1としては、ピロリル基、ピリジル基、チエニル基、チオピラリル基、ベンゾチエニル基、ナフチル基、置換基を有するフェニル基が好ましい例として挙げられる。
【0090】
上記式(c−1)中、R
c2は、一価の有機基を示す。この有機基としては、−R
c11、−OR
c11、−COR
c11、−SR
c11、−NR
c11R
c12で表される基が好ましい。R
c11及びR
c12は、それぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、又は複素環基を示し、これらはハロゲン原子、アルキル基、又は複素環基で置換されていてもよく、これらのうちアルキル基及びアラルキル基のアルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。また、R
c11とR
c12とが結合して窒素原子とともに環構造を形成していてもよい。
【0091】
R
c11及びR
c12におけるアルキル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、炭素数1〜5のものがより好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基等の直鎖状又は分枝鎖状の基が挙げられる。また、このアルキル基は置換基を有していてもよい。置換基を有するものの例としては、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピロキシエトキシエチル基、メトキシプロピル基等が挙げられる。
【0092】
R
c11及びR
c12におけるアルケニル基としては、炭素数1〜20のものが好ましく、炭素数1〜5のものがより好ましい。アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、エテニル基、プロピニル基等の直鎖状又は分枝鎖状の基が挙げられる。また、このアルケニル基は置換基を有していてもよい。置換基を有するものの例としては、2−(ベンゾオキサゾール−2−イル)エテニル基等が挙げられる。
【0093】
R
c11及びR
c12におけるアリール基としては、炭素数6〜20のものが好ましく、炭素数6〜10のものがより好ましい。アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0094】
R
c11及びR
c12におけるアラルキル基としては、炭素数7〜20のものが好ましく、炭素数7〜12のものがより好ましい。アラルキル基の例としては、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、フェニルエチル基、フェニルエテニル基等が挙げられる。
【0095】
R
c11及びR
c12における複素環基としては、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子の少なくとも1つの原子を含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環基が挙げられる。この複素環基には縮合環が含まれていてもよい。複素環基の例としては、ピロリル基、ピリジル基、ピリミジル基、フリル基、チエニル基等が挙げられる。
【0096】
これらのR
c11及びR
c12のうち、アルキル基及びアラルキル基のアルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。
【0097】
また、R
c11とR
c12とが結合して形成し得る環構造としては、複素環が挙げられる。この複素環としては、少なくとも窒素原子を含む5員環以上、好ましくは5〜7員環の複素環が挙げられる。この複素環には縮合環が含まれていてもよい。複素環の例としては、ピペリジン環、モルホリン環、チオモルホリン環等が挙げられる。
【0098】
これらの中でも、R
c2としては、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基であることが最も好ましい。
【0099】
上記式(c−1)中、R
c3は、1価の有機基を示す。この有機基としては、炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜12のアリール基、下記式(c−2)で表される基、又は置換基を有していてもよい複素環基が好ましい。置換基としては、上記R
c1の場合と同様の基が挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0101】
上記式(c−2)中、R
c13は、酸素原子で中断されていてもよい炭素数1〜5のアルキレン基を示す。このようなアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、sec−ペンチレン基等の直鎖状又は分枝鎖状の基が挙げられる。これらの中でも、R
c13はイソプロピレン基であることが最も好ましい。
【0102】
上記式(c−2)中、R
c14は、−NR
c15R
c16で表される1価の有機基を示す(R
c15及びR
c16は、それぞれ独立に1価の有機基を示す)。そのような有機基の中でも、R
c14の構造が下記式(c−3)で表されるものであれば、光重合開始剤の溶解性を向上することができる点で好ましい。
【0104】
上記式(c−3)中、R
c17及びR
c18は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を示す。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、R
c17及びR
c18はメチル基であることが最も好ましい。
【0105】
R
c3における複素環基としては、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子の少なくとも1つの原子を含む5員環以上、好ましくは5員環又は6員環の複素環基が挙げられる。複素環基の例としては、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基等の含窒素5員環基;ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基等の含窒素6員環基;チアゾリル基、イソチアゾリル基等の含窒素含硫黄基;オキサゾリル基、イソオキサゾリル基等の含窒素含酸素基;チエニル基、チオピラニル基等の含硫黄基;フリル基、ピラニル基等の含酸素基;等が挙げられる。この中でも、窒素原子又は硫黄原子を1つ含むものが好ましい。この複素環には縮合環が含まれていてもよい。縮合環が含まれる複素環基の例としてはベンゾチエニル基等が挙げられる。
【0106】
また、複素環基は置換基を有していてもよい。置換基としては、上記R
c1の場合と同様の基が挙げられる。
【0107】
上記式(c−1)中、R
c4は、1価の有機基を示す。この中でも、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。これらの中でも、R
c4はメチル基であることが最も好ましい。
【0108】
また、オキシム系光重合開始剤の好ましい他の例としては、特開2010−15025号公報で提案されている下記式(c−4)で表される光重合開始剤が挙げられる。
【0110】
上記式(c−4)中、R
c21及びR
c22は、それぞれ独立に、R
c31、OR
c31、COR
c31、SR
c31、CONR
c32R
c33、又はCNを示す。
【0111】
R
c31、R
c32、及びR
c33は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は炭素数2〜20の複素環基を示す。アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、及び複素環基の水素原子は、更にOR
c41、COR
c41、SR
c41、NR
c42R
c43、CONR
c42R
c43、−NR
c42−OR
c43、−NCOR
c42−OCOR
c43、−C(=N−OR
c41)−R
c42、−C(=N−OCOR
c41)−R
c42、CN、ハロゲン原子、−CR
c41=CR
c42R
c43、−CO−CR
c41=CR
c42R
c43、カルボキシル基、又はエポキシ基で置換されていてもよい。R
c41、R
c42、及びR
c43は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基、又は炭素数2〜20の複素環基を示す。
【0112】
上記R
c31、R
c32、R
c33、R
c41、R
c42、及びR
c43における置換基のアルキレン部分のメチレン基は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、又はウレタン結合により1〜5回中断されていてもよく、上記置換基のアルキル部分は分岐鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、上記置換基のアルキル末端は不飽和結合であってもよく、また、R
c32とR
c33、及びR
c42とR
c43はそれぞれ結合して環構造を形成していてもよい。
【0113】
上記式(c−4)中、R
c23及びR
c24は、それぞれ独立に、R
c31、OR
c31、COR
c31、SR
c31、CONR
c32R
c33、NR
c31COR
c32、OCOR
c31、COOR
c31、SCOR
c31、OCSR
c31、COSR
c31、CSOR
c31、CN、ハロゲン原子、又は水酸基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0〜4の整数を示す。
R
c23は、−X
c2−を介して隣接するベンゼン環の炭素原子の1つと結合して環構造を形成していてもよく、R
c23とR
c24とが結合して環構造を形成していてもよい。
【0114】
上記式(c−4)中、X
c1は、単結合又はCOを示す。
【0115】
上記式(c−4)中、X
c2は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、CR
c51R
c52、CO、NR
c53、又はPR
c54を示す。R
c51、R
c52、R
c53、及びR
c54は、それぞれ独立に、R
c31、OR
c31、COR
c31、SR
c31、CONR
c32R
c33、又はCNを示す。R
c51、R
c53、及びR
c54は、それぞれ独立に、隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって環構造を形成していてもよい。
【0116】
上記式(c−4)中、R
c31、R
c32、R
c33、R
c41、R
c42、及びR
c43におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。
【0117】
上記式(c−4)中、R
c31、R
c32、R
c33、R
c41、R
c42、及びR
c43におけるアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスレニル基等が挙げられる。
【0118】
上記式(c−4)中、R
c31、R
c32、R
c33、R
c41、R
c42、及びR
c43におけるアリールアルキル基としては、ベンジル基、クロロベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、フェニルエチル基、フェニルエテニル基等が挙げられる。
【0119】
上記式(c−4)中、R
c31、R
c32、R
c33、R
c41、R
c42、及びR
c43における複素環基としては、ピリジル基、ピリミジル基、フリル基、チエニル基、テトラヒドロフリル基、ジオキソラニル基、ベンゾオキサゾール−2−イル基、テトラヒドロピラニル基、ピロリジル基、イミダゾリジル基、ピラゾリジル基、チアゾリジル基、イソチアゾリジル基、オキサゾリジル基、イソオキサゾリジル基、ピペリジル基、ピペラジル基、モルホリニル基等の5〜7員環が好ましく挙げられる。
【0120】
上記式(c−4)中、R
c32とR
c33とが結合して形成し得る環、R
c42とR
c43とが結合して形成し得る環、及びR
c23が隣接するベンゼン環と一緒になって形成し得る環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、ピペリジン環、モルホリン環、ラクトン環、ラクタム環等の5〜7員環が挙げられる。
なお、X
c2がNR
c53であり、R
c23が隣接するベンゼン環の炭素原子の1つと結合して、X
c2とともに5員環構造を形成する場合、光重合開始剤はカルバゾール骨格を有することになる。
【0121】
上記式(c−4)中、R
c31、R
c32、R
c33、R
c41、R
c42、及びR
c43を置換してもよいハロゲン原子、及びR
c24、R
c25におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0122】
上記置換基のアルキレン部分のメチレン基は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、又はウレタン結合により1〜5回中断されていてもよい。この場合、中断する結合基は1種又は2種以上の基でもよく、連続して中断し得る基の場合は2つ以上連続して中断してもよい。また、上記置換基のアルキル部分は分岐鎖があってもよく、環状アルキルであってもよく、上記置換基のアルキル末端は不飽和結合であってもよい。
【0123】
オキシム系光重合開始剤の好ましい更に他の例としては、下記式(2)で表されるオキシムエステル化合物が挙げられる。
【0124】
【化16】
(式中、R
d1は、1価の有機基、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であり、iは0〜4の整数であり、jは0又は1であり、R
d2は、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基であり、R
d3は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。)
【0125】
上記式(2)中、R
d1が1価の有機基である場合、R
d1は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から適宜選択される。R
d1が有機基である場合の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、1又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基等が挙げられる。iが2〜4の整数である場合、R
d1は同一であっても異なっていてもよい。また、置換基の炭素数には、置換基が更に有する置換基の炭素数は含まない。
【0126】
R
d1がアルキル基である場合、その炭素数は1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。また、R
d1がアルキル基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。R
d1がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、R
d1がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0127】
R
d1がアルコキシ基である場合、その炭素数は1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。また、R
d1がアルコキシ基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。R
d1がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチオキシル基、tert−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、R
d1がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0128】
R
d1がシクロアルキル基又はシクロアルコキシ基である場合、その炭素数は3〜10が好ましく、3〜6がより好ましい。R
d1がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。R
d1がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0129】
R
d1が飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、その炭素数は2〜20が好ましく、2〜7がより好ましい。R
d1が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n−ブタノイル基、2−メチルプロパノイル基、n−ペンタノイル基、2,2−ジメチルプロパノイル基、n−ヘキサノイル基、n−ヘプタノイル基、n−オクタノイル基、n−ノナノイル基、n−デカノイル基、n−ウンデカノイル基、n−ドデカノイル基、n−トリデカノイル基、n−テトラデカノイル基、n−ペンタデカノイル基、及びn−ヘキサデカノイル基等が挙げられる。R
d1が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、2−メチルプロパノイルオキシ基、n−ペンタノイルオキシ基、2,2−ジメチルプロパノイルオキシ基、n−ヘキサノイルオキシ基、n−ヘプタノイルオキシ基、n−オクタノイルオキシ基、n−ノナノイルオキシ基、n−デカノイルオキシ基、n−ウンデカノイルオキシ基、n−ドデカノイルオキシ基、n−トリデカノイルオキシ基、n−テトラデカノイルオキシ基、n−ペンタデカノイルオキシ基、及びn−ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
【0130】
R
d1がアルコキシカルボニル基である場合、その炭素数は2〜20が好ましく、2〜7がより好ましい。R
d1がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec−ペンチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec−オクチオキシルカルボニル基、tert−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0131】
R
d1がフェニルアルキル基である場合、その炭素数は7〜20が好ましく、7〜10がより好ましい。またR
d1がナフチルアルキル基である場合、その炭素数は11〜20が好ましく、11〜14がより好ましい。R
d1がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、及び4−フェニルブチル基が挙げられる。R
d1がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、2−(α−ナフチル)エチル基、及び2−(β−ナフチル)エチル基が挙げられる。R
d1が、フェニルアルキル基又はナフチルアルキル基である場合、R
d1は、フェニル基又はナフチル基上に更に置換基を有していてもよい。
【0132】
R
d1がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、N、S、及びOの合計の個数が1個以上である5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、及びキノキサリン等が挙げられる。R
d1がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は更に置換基を有していてもよい。
【0133】
R
d1が1又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例は、R
d1と同様である。1又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ノニルアミノ基、n−デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n−ブタノイルアミノ基、n−ペンタノイルアミノ基、n−ヘキサノイルアミノ基、n−ヘプタノイルアミノ基、n−オクタノイルアミノ基、n−デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α−ナフトイルアミノ基、及びβ−ナフトイルアミノ基等が挙げられる。
【0134】
R
d1に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。R
d1に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。R
d1に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0135】
R
d1の中では、化学的に安定であることや、立体的な障害が少なく、オキシムエステル化合物の合成が容易であることや、溶媒に対する溶解性が高いこと等から、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、及び炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基からなる群より選択される基が好ましく、ニトロ基又は炭素数1〜6のアルキルがより好ましく、ニトロ基又はメチル基が特に好ましい。
【0136】
R
d1がフェニル基に結合する位置は、R
d1が結合するフェニル基について、フェニル基とオキシムエステル化合物の主骨格との結合手の位置を1位とし、メチル基の位置を2位とする場合に、4位又は5位が好ましく、5位がよりに好ましい。また、iは、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0又は1が特に好ましい。
【0137】
R
d2は、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基である。また、R
d2が置換基を有してもよいカルバゾリル基である場合、カルバゾリル基上の窒素原子は、炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい。
【0138】
R
d2において、フェニル基又はカルバゾリル基が有する置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。フェニル基又はカルバゾリル基が、炭素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルコキシ基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいフェニルチオ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、アミノ基、1又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0139】
R
d2がカルバゾリル基である場合、カルバゾリル基が窒素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。これらの置換基の中では、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0140】
フェニル基又はカルバゾリル基が有してもよい置換基の具体例について、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び1又は2の有機基で置換されたアミノ基に関しては、R
d1と同様である。
【0141】
R
d2において、フェニル基又はカルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基の例としては、炭素数1〜6のアルキル基;炭素数1〜6のアルコキシ基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基;炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン−1−イル基;ピペラジン−1−イル基;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。フェニル基又はカルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0142】
R
d2の中では、ネガ型感放射線性組成物1が感度に優れる点から、下記式(3)又は(4)で表される基が好ましく、下記式(3)で表される基がより好ましく、下記式(3)で表される基であって、AがSである基が特に好ましい。
【0143】
【化17】
(R
d4は、1価の有機基、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であり、AはS又はOであり、kは、0〜4の整数である。)
【0144】
【化18】
(R
d5及びR
d6は、1価の有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。)
【0145】
式(3)におけるR
d4が有機基である場合、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。式(3)においてR
d4が有機基である場合の好適な例としては、炭素数1〜6のアルキル基;炭素数1〜6のアルコキシ基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基;炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン−1−イル基;ピペラジン−1−イル基;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。
【0146】
R
d4の中では、ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;ニトロ基が好ましく、ベンゾイル基;ナフトイル基;2−メチルフェニルカルボニル基;4−(ピペラジン−1−イル)フェニルカルボニル基;4−(フェニル)フェニルカルボニル基がより好ましい。
【0147】
また、式(3)において、kは、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0又は1であるのが特に好ましい。kが1である場合、R
d4の結合する位置は、R
d4が結合するフェニル基が原子Aと結合する結合手に対して、パラ位であるのが好ましい。
【0148】
式(4)におけるR
d5は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。R
d5の好適な例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。
【0149】
R
d5の中では、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0150】
式(4)におけるR
d6は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から選択できる。R
d6として好適な基の具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリル基が挙げられる。R
d6として、これらの基の中では置換基を有してもよいフェニル基がより好ましく、2−メチルフェニル基が特に好ましい。
【0151】
R
d4、R
d5、又はR
d6に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。R
d4、R
d5、又はR
d6に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。R
d4、R
d5、又はR
d6に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0152】
式(2)におけるR
d3は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。R
d3としては、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R
d3がメチル基である場合、式(2)で表される化合物からなる光重合開始剤は、特に感度に優れる。
【0153】
式(2)で表されるオキシムエステル化合物は、jが0である場合、例えば、下記スキーム1に従って合成することができる。具体的には、下記式(d1−1)で表される芳香族化合物を、下記式(d1−2)で表されるハロカルボニル化合物を用いて、フリーデルクラフツ反応によりアシル化して、下記式(d1−3)で表されるケトン化合物を得、得られたケトン化合物(d1−3)を、ヒドロキシルアミンによりオキシム化して下記式(d1−4)で表されるオキシム化合物を得、次いで式(d1−4)のオキシム化合物と、下記式(d1−5)で表される酸無水物((R
d3CO)
2O)、又は下記式(d1−6)で表される酸ハライド(R
d3COHal、Halはハロゲン原子。)とを反応させて、下記式(d1−7)で表されるオキシムエステル化合物を得ることができる。なお、下記式(d1−2)において、Halはハロゲン原子であり、下記式(d1−1)、(d1−2)、(d1−3)、(d1−4)、及び(d1−7)において、R
d1、R
d2、R
d3、及びiは、式(2)と同様である。
【0155】
式(2)で表されるオキシムエステル化合物は、jが1である場合、例えば、下記スキーム2に従って合成することができる。具体的には、下記式(d2−1)で表されるケトン化合物に、塩酸の存在下に下記式(d2−2)で表される亜硝酸エステル(RONO、Rは炭素数1〜6のアルキル基。)を反応させて、下記式(d2−3)で表されるケトオキシム化合物を得、次いで、下記式(d2−3)で表されるケトオキシム化合物と、下記式(d2−4)で表される酸無水物((R
d3CO)
2O)、又は下記式(d2−5)で表される酸ハライド(R
d3COHal、Halはハロゲン原子。)とを反応させて、下記式(d2−6)で表されるオキシムエステル化合物を得ることができる。なお、下記式(d2−1)、(d2−3)、(d2−4)、(d2−5)、及び(d2−6)において、R
d1、R
d2、R
d3、及びiは、式(2)と同様である。
【0157】
また、式(2)で表されるオキシムエステル化合物は、jが1であり、R
d1がメチル基であって、R
d1が結合するベンゼン環に結合するメチル基に対して、R
d1がパラ位に結合する場合、例えば、下記式(d2−7)で表される化合物を、スキーム1と同様の方法で、オキシム化及びアシル化することによって合成することもできる。なお、下記式(d2−7)において、R
d2は、式(2)と同様である。
【0159】
式(2)で表されるオキシムエステル化合物の中でも特に好適な化合物としては、下記式の化合物が挙げられる。
【0161】
オキシム系光重合開始剤の好ましい更に他の例としては、「IRGACURE OXE01」(商品名、BASF製)が挙げられる。
【0162】
光重合開始剤の含有量は、ネガ型感放射線性組成物1の固形分に対して0.3〜20質量%であることが好ましく、0.5〜15質量%であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、十分な耐熱性、耐薬品性を得ることができ、また塗膜形成能を向上させ、硬化不良を抑制することができる。
【0163】
[着色剤]
ネガ型感放射線性組成物1は、着色剤を含有してもよい。ネガ型感放射線性組成物1は、着色剤を含有することにより、例えば、液晶表示ディスプレイのカラーフィルタ形成用に好ましく使用される。また、ネガ型感放射線性組成物1は、着色剤として遮光剤を含むことにより、例えば、カラーフィルタにおけるブラックマトリクス形成用や、ブラックフォトスペーサ形成用に好ましく使用される。着色剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0164】
着色剤としては、特に限定されないが、例えば、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを用いることが好ましい。
【0165】
C.I.ピグメントイエロー1(以下、「C.I.ピグメントイエロー」は同様であり、番号のみを記載する。)、3、11、12、13、14、15、16、17、20、24、31、53、55、60、61、65、71、73、74、81、83、86、93、95、97、98、99、100、101、104、106、108、109、110、113、114、116、117、119、120、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、166、167、168、175、180、185;
C.I.ピグメントオレンジ1(以下、「C.I.ピグメントオレンジ」は同様であり、番号のみを記載する。)、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、55、59、61、63、64、71、73;
C.I.ピグメントバイオレット1(以下、「C.I.ピグメントバイオレット」は同様であり、番号のみを記載する。)、19、23、29、30、32、36、37、38、39、40、50;
C.I.ピグメントレッド1(以下、「C.I.ピグメントレッド」は同様であり、番号のみを記載する。)、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、53:1、57、57:1、57:2、58:2、58:4、60:1、63:1、63:2、64:1、81:1、83、88、90:1、97、101、102、104、105、106、108、112、113、114、122、123、144、146、149、150、151、155、166、168、170、171、172、174、175、176、177、178、179、180、185、187、188、190、192、193、194、202、206、207、208、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、243、245、254、255、264、265;
C.I.ピグメントブルー1(以下、「C.I.ピグメントブルー」は同様であり、番号のみを記載する。)、2、15、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、66;
C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン37;
C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン26、C.I.ピグメントブラウン28;
C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7。
【0166】
また、着色剤を遮光剤とする場合、遮光剤としては黒色顔料を用いることが好ましい。黒色顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム、銀等の金属酸化物、複合酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩等、有機物、無機物を問わず各種の顔料を挙げることができる。これらの中でも、高い遮光性を有するカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0167】
カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック等の公知のカーボンブラックを用いることができるが、遮光性に優れるチャンネルブラックを用いることが好ましい。また、樹脂被覆カーボンブラックを使用してもよい。
【0168】
樹脂被覆カーボンブラックは、樹脂被覆のないカーボンブラックに比べて導電性が低いことから、液晶表示ディスプレイのブラックマトリクスとして使用した場合に電流のリークが少なく、信頼性の高い低消費電力のディスプレイを製造できる。
【0169】
また、カーボンブラックの色調を調整するために、補助顔料として上記の有機顔料を適宜添加してもよい。
【0170】
また、着色剤として顔料を用いる場合、顔料と染料とを併用してもよい。顔料と併用可能な染料としては、キサンテン系染料、シアニン系染料、アゾ系染料、アントラキノン系染料、ジオキサジン系染料、トリフェニルメタン系染料等が挙げられる。
【0171】
また、着色剤を感放射線性樹脂組成物において均一に分散させるために、更に分散剤を使用してもよい。このような分散剤としては、ポリエチレンイミン系、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系の高分子分散剤を用いることが好ましい。特に、着色剤としてカーボンブラックを用いる場合には、分散剤としてアクリル樹脂系の分散剤を用いることが好ましい。
【0172】
また、無機顔料及び有機顔料は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよいが、併用する場合には、無機顔料と有機顔料との総量100質量部に対して、有機顔料を10〜80質量部の範囲で用いることが好ましく、20〜40質量部の範囲で用いることがより好ましい。
【0173】
着色剤の含有量は、ネガ型感放射線性組成物1の固形分に対して、5〜90質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましい。
【0174】
[その他の有機溶剤(一般式(1)で表される化合物以外の有機溶剤)]
ネガ型感放射線性組成物1は、その他の有機溶剤を含有してもよい。その他の有機溶剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。その他の有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル部炭酸メチル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
【0175】
ネガ型感放射線性組成物1において、溶剤の含有量は、ネガ型感放射線性組成物1の固形分濃度が1〜50質量%となる量が好ましく、5〜30質量%となる量がより好ましい。また、ネガ型感放射線性組成物1に含まれる溶剤において、上記一般式(1)で表される化合物とその他の有機溶剤との質量比は、5:95〜100:0であることが好ましく、20:80〜100:0であることがより好ましい。溶剤の含有量及び上記一般式(1)で表される化合物とその他の有機溶剤との質量比を上記の範囲とすることにより、ネガ型感放射線性組成物1は、感度、保存安定性、塗布性、現像性、及び安全性に優れたものとなりやすく、ネガ型感放射線性組成物1を露光及び現像することにより形成されるパターンは、異物の発生が抑制されたものとなりやすい。
【0176】
[その他の成分]
ネガ型感放射線性組成物1は、必要に応じて、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、増感剤、硬化促進剤、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0177】
<ネガ型感放射線性組成物2>
ネガ型感放射線性組成物2は、上記一般式(1)で表される化合物と、ポリアミック酸と、感光性成分とを含有する感放射線性ポリイミド前駆体組成物である。
【0178】
[一般式(1)で表される化合物]
一般式(1)で表される化合物としては、感放射線性組成物の一般的な説明において例示したものを用いることができる。上記一般式(1)で表される化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0179】
[ポリアミック酸]
本発明において、ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンを反応させて得られるものであれば、特に限定されず、従来からポリイミド樹脂の前駆体として知られているポリアミック酸から適宜選択される。ポリアミック酸は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0180】
好適なポリアミック酸としては、例えば、下記式(11)で表されるポリアミック酸が挙げられる。
【化23】
(式中、R
1Aは4価の有機基であり、R
2Aは2価の有機基であり、nは括弧内に示される構成単位の繰り返し数である。)
【0181】
式(11)中、R
1Aは4価の有機基であり、R
2Aは2価の有機基であり、これら有機基の炭素数は2〜50が好ましく、2〜30がより好ましい。R
1A及びR
2Aは、それぞれ、脂肪族基であっても、芳香族基であっても、これらの構造を組合せた基であってもよい。R
1A及びR
2Aは、炭素原子、及び水素原子の他に、ハロゲン原子、酸素原子、及び硫黄原子を含んでいてもよい。R
1A及びR
2Aが酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含む場合、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子は、含窒素複素環基、−CONH−、−NH−、−N=N−、−CH=N−、−COO−、−O−、−CO−、−SO−、−SO
2−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、R
1A及びR
2Aに含まれてもよく、−O−、−CO−、−SO−、−SO
2−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、R
1A及びR
2Aに含まれるのがより好ましい。
【0182】
上記式(11)で表されるポリアミック酸を加熱や触媒によって閉環させることにより、下記式(12)で表されるポリイミド樹脂が得られる。
【化24】
(式中、R
1A及びR
2Aは式(11)と同義であり、nは括弧内に示される構成単位の繰り返し数である。)
【0183】
上記式(11)で表されるポリアミック酸は、溶剤中で、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させることにより得られる。ポリアミック酸の合成原料となるテトラカルボン酸二無水物、及びジアミンは、酸無水物基とアミノ基との反応によりポリアミック酸を形成可能なものであれば特に限定されない。
【0184】
ポリアミック酸を合成する際の、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの使用量は特に限定されないが、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、ジアミンを0.50〜1.50モル用いるのが好ましく、0.60〜1.30モル用いるのがより好ましく、0.70〜1.20モル用いるのが特に好ましい。
【0185】
テトラカルボン酸二無水物は、従来からポリアミック酸の合成原料として使用されているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であっても、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。テトラカルボン酸二無水物は、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0186】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の好適な具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、及び3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物が好ましい。
【0187】
なお、ポリアミック酸を合成する際に、テトラカルボン酸二無水物とジカルボン酸無水物とを併用してもよい。これらのカルボン酸無水物を併用すると、得られるポリイミド樹脂の特性が更に良好となる場合がある。ジカルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0188】
ジアミンは、従来からポリアミック酸の合成原料として使用されているジアミンから適宜選択することができる。ジアミンは、芳香族ジアミンであっても、脂肪族ジアミンであってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族ジアミンが好ましい。ジアミンは、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0189】
芳香族ジアミンの好適な具体例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、及び4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエタン−1,1−ジイル)]ジアニリン等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
【0190】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、通常、有機溶剤中で行われる。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に使用される有機溶剤は、テトラカルボン酸及びジアミンを溶解させることができ、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンと反応しないものであれば特に限定されない。有機溶剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0191】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる有機溶剤の例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤;β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、及びε−カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;乳酸エチル、及び乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、及びエチルセルソルブアセテート等のエーテル類が挙げられる。
【0192】
これらの有機溶剤の中では、生成するポリアミック酸やポリイミド樹脂の溶解性から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤が好ましい。
【0193】
[感光性成分]
感光性成分としては、特に限定されず、例えば、光塩基発生剤、光酸発生剤等の、光の作用により分解して塩基及び酸の少なくとも一方を発生する化合物(A)が挙げられる。感光性成分は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0194】
化合物(A)を含有するネガ型感放射線性組成物2を露光することにより、ネガ型感放射線性組成物2中の化合物(A)は分解して、塩基及び酸の少なくとも一方を発生する。このようにして発生した塩基又は酸は、イミド化触媒として作用して、ネガ型感放射線性組成物2中のポリアミック酸の閉環を促進する。
【0195】
化合物(A)を含有するネガ型感放射線性組成物2を露光すると、露光部において化合物(A)が分解して塩基及び酸の少なくとも一方を発生する。このようにして発生した塩基又は酸により、ネガ型感放射線性組成物2中のポリアミック酸の閉環が促進され、露光部は現像液に対して不溶となる。一方、未露光部は、現像液に対して可溶であるため、現像液に溶解させて除去することができる。よって、ネガ型感放射線性組成物2を選択的に露光することにより、所望のパターンを形成することができる。
【0196】
化合物(A)としては、例えば、光の作用により分解してイミダゾール化合物を発生する化合物(A−1)や、オキシム化合物(A−2)が挙げられる。以下、化合物(A−1)及び(A−2)について説明する。
【0197】
(光の作用により分解してイミダゾール化合物を発生する化合物(A−1))
化合物(A−1)が発生するイミダゾール化合物は、塩基性のイミド化触媒として、ネガ型感放射線性組成物2中のポリアミック酸の閉環を促進する。化合物(A−1)が発生するイミダゾール化合物は、イミダゾールであっても、イミダゾール中の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部が置換基で置換された化合物であってもよく、下記式(3)で表されるイミダゾール化合物であることが好ましい。
【化25】
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を示す。)
【0198】
R
1、R
2、又はR
3により示される有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。この有機基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。この有機基は、通常は1価であるが、環状構造を形成する場合等には、2価以上となり得る。
【0199】
R
1及びR
2は、それらが結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。環状構造としては、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられ、縮合環であってもよい。
【0200】
R
1、R
2、又はR
3により示される有機基がヘテロ原子を含む場合、そのヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、珪素原子が挙げられる。ヘテロ原子を含む結合の具体例としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−R)−又は−C(=NR)−(ただし、Rは水素原子又は有機基を示す)。以下、同じ)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。中でも、イミダゾール化合物の耐熱性の観点から、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
【0201】
R
1、R
2、又はR
3により示される、有機基以外の基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。この炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0202】
R
1、R
2、及びR
3としては、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、及びハロゲン原子が好ましく、水素原子がより好ましい。R
1、R
2、及びR
3がいずれも水素原子であるイミダゾールは、立体的な障害の少ない単純な構造であるため、イミド化触媒としてポリアミック酸に容易に作用することができる。
【0203】
化合物(A−1)は、光の作用により分解してイミダゾール化合物、好ましくは上記式(3)で表されるイミダゾール化合物を発生させることができる化合物であれば特に限定されない。従来から感光性組成物に配合されている、光の作用によりアミンを発生する化合物について、露光時に発生するアミンに由来する骨格を、イミダゾール化合物、好ましくは上記式(3)で表されるイミダゾール化合物に由来する骨格に置換することにより、化合物(A−1)として使用される化合物が得られる。
【0204】
好適な化合物(A−1)としては、下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
【化26】
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、ホスフィノ基、スルホナト基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を示す。R
4及びR
5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基を示す。R
6、R
7、R
8、R
9、及びR
10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基を示す。R
6、R
7、R
8、R
9、及びR
10は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
【0205】
式(4)において、R
1、R
2、及びR
3は、式(3)について説明したものと同様である。
【0206】
式(4)において、R
4又はR
5により示される有機基としては、R
1、R
2、及びR
3について例示したものが挙げられる。この有機基は、R
1、R
2、及びR
3の場合と同様に、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0207】
R
4及びR
5としては、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルケニル基、炭素数7〜16のアリールオキシアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素数2〜11のアルキル基、水酸基を有する炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のエステル基(−COOR又は−OCOR(ただし、Rは炭化水素基を示す。))、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基であることが好ましい。より好ましくは、R
4及びR
5の両方が水素原子であるか、又はR
4がメチル基であり、R
5が水素原子である。
【0208】
式(4)において、R
6、R
7、R
8、R
9、又はR
10により示される有機基としては、R
1、R
2、及びR
3において例示したものが挙げられる。この有機基は、R
1及びR
2の場合と同様に、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0209】
R
6、R
7、R
8、R
9、及びR
10は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。環状構造としては、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられ、縮合環であってもよい。例えば、R
6、R
7、R
8、R
9、及びR
10は、それらの2つ以上が結合して、R
6、R
7、R
8、R
9、及びR
10が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成してもよい。
【0210】
R
6、R
7、R
8、R
9、及びR
10としては、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルケニル基、炭素数7〜16のアリールオキシアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素数2〜11のアルキル基、水酸基を有する炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のエステル基、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基、ニトロ基であることが好ましい。
【0211】
また、R
6、R
7、R
8、R
9、及びR
10としては、それらの2つ以上が結合して、R
6、R
7、R
8、R
9、及びR
10が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成している場合も、吸収波長が長波長化する点から好ましい。
【0212】
上記式(4)で表される化合物の中では、下記式(5)で表される化合物が好ましい。
【化27】
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、式(3)及び(4)と同義である。R
4〜R
9は式(4)と同義である。R
11は、水素原子又は有機基を示す。R
6及びR
7が水酸基となることはない。R
6、R
7、R
8、及びR
9は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
【0213】
式(5)で表される化合物は、置換基−O−R
11を有するため、有機溶剤に対する溶解性に優れる。
【0214】
式(5)において、R
11が有機基である場合、その有機基としては、R
1、R
2、及びR
3において例示したものが挙げられる。この有機基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。R
11としては、水素原子、又は炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0215】
好適な化合物(A−1)としては、下記式(6)で表される化合物も挙げられる。
【化28】
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、ホスフィノ基、スルホナト基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を示す。R
12は、置換されていてもよい炭化水素基を示す。)
【0216】
式(6)において、R
1、R
2、及びR
3は、式(3)について説明したものと同様である。
【0217】
式(6)において、R
12としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換されていてもよい炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられ、置換されていてもよい炭素数7〜20のアラルキル基が好ましい。上記アリール基又はアラルキル基が置換されている場合、置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。
【0218】
式(6)で表される化合物は、式(3)で表されるイミダゾール化合物と下記式(7)で表されるクロロギ酸エステルとの反応、式(3)で表されるイミダゾール化合物と下記式(8)で表されるジカーボネートとの反応、又は下記式(9)で表されるカルボニルジイミダゾール化合物と下記式(10)で表されるアルコールとの反応により合成することができる。
【化29】
(式(7)〜(10)中、R
1、R
2、及びR
3は、式(3)と同義である。R
12は式(6)と同義である。)
【0219】
化合物(A−1)として特に好適な化合物の具体例を以下に示す。
【化30】
【0220】
(オキシム化合物(A−2))
オキシム化合物(A−2)は、光の作用により分解して塩基及び酸の少なくとも一方を発生する。化合物(A−2)が分解して発生した塩基又は酸により、ネガ型感放射線性組成物2中のポリアミック酸の閉環が促進される。
【0221】
好適な化合物(A−2)としては、下記式(D1)で表される化合物が挙げられる。
【化31】
(式中、R
d1は、置換基を有してもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいアリール基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基であり、R
d2は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、R
d3は水素原子、又は−CO−R
d5で表される基であり、R
d5は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基であり、pは0又は1である。)
【0222】
上記式(D1)中のR
d1が置換基を有していてもよいアリール基である場合、置換基を有してもよいアリール基の例としては、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいアントリル基、及び置換基を有してもよいフェナントレニル基が挙げられる。これらの基の中では、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいナフチル基が好ましく、置換基を有してもよいフェニル基がより好ましい。
【0223】
アリール基が置換基を有する場合、アリール基に結合する置換基の数は特に限定されない。アリール基が複数の置換基を有する場合、当該複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。アリール基が有してもよい置換基の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。置換基の好適な例としては、有機基、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基が挙げられる。
【0224】
置換基が有機基である場合、当該有機基の種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から適宜選択される。有機基の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、1、又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基等が挙げられる。置換基の炭素数には、置換基が更に有する置換基の炭素数は含まない。
【0225】
有機基がアルキル基である場合、その炭素数は1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。また、有機基がアルキル基である場合、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。有機基がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、有機基がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0226】
有機基がアルコキシ基である場合、その炭素数は1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。また、有機基がアルコキシ基である場合、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。有機基がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、有機基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0227】
有機基がシクロアルキル基、又はシクロアルコキシ基である場合、その炭素数は3〜10が好ましく、3〜6がより好ましい。有機基シクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。有機基がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0228】
有機基が飽和脂肪族アシル基、又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、その炭素数は2〜20が好ましく、2〜7がより好ましい。有機基が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n−ブタノイル基、2−メチルプロパノイル基、n−ペンタノイル基、2,2−ジメチルプロパノイル基、n−ヘキサノイル基、n−ヘプタノイル基、n−オクタノイル基、n−ノナノイル基、n−デカノイル基、n−ウンデカノイル基、n−ドデカノイル基、n−トリデカノイル基、n−テトラデカノイル基、n−ペンタデカノイル基、及びn−ヘキサデカノイル基等が挙げられる。有機基が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、2−メチルプロパノイルオキシ基、n−ペンタノイルオキシ基、2,2−ジメチルプロパノイルオキシ基、n−ヘキサノイルオキシ基、n−ヘプタノイルオキシ基、n−オクタノイルオキシ基、n−ノナノイルオキシ基、n−デカノイルオキシ基、n−ウンデカノイルオキシ基、n−ドデカノイルオキシ基、n−トリデカノイルオキシ基、n−テトラデカノイルオキシ基、n−ペンタデカノイルオキシ基、及びn−ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
【0229】
有機基がアルコキシカルボニル基である場合、その炭素数は2〜20が好ましく、2〜7がより好ましい。有機基がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec−ペンチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec−オクチルオキシカルボニル基、tert−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0230】
有機基がフェニルアルキル基である場合、その炭素数は7〜20が好ましく、7〜10がより好ましい。また有機基がナフチルアルキル基である場合、その炭素数は11〜20が好ましく、11〜14がより好ましい。有機基がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、及び4−フェニルブチル基が挙げられる。有機基がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、2−(α−ナフチル)エチル基、及び2−(β−ナフチル)エチル基が挙げられる。有機基がフェニルアルキル基、又はナフチルアルキル基である場合、有機基はフェニル基、又はナフチル基上に更に置換基を有していてもよい。
【0231】
有機基がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、及びキノキサリン等が挙げられる。有機基がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は更に置換基を有していてもよい。
【0232】
有機基が、1又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、窒素原子に結合する有機基の好適な例は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例は、R
d1が置換基を有してもよいアリール基である場合に、当該アリール基が置換基として有してもよい有機基の具体例と同様である。1又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ノニルアミノ基、n−デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n−ブタノイルアミノ基、n−ペンタノイルアミノ基、n−ヘキサノイルアミノ基、n−ヘプタノイルアミノ基、n−オクタノイルアミノ基、n−デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α−ナフトイルアミノ基、及びβ−ナフトイルアミノ基等が挙げられる。
【0233】
R
d1が置換基を有してもよいアリール基である場合に、アリール基に置換基として結合する有機基に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0234】
R
d1が置換基を有してもよいアリール基である場合に、アリール基に置換基として結合する有機基に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。R
d1が置換基を有してもよいアリール基である場合に、アリール基に置換基として結合する有機基に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0235】
R
d1が置換基を有してもよいアリール基である場合に、アリール基が有する置換基としては、当該置換基が化学的に安定であることや、立体的な障害が少なく、式(D1)で表される化合物の合成が容易であることや、式(D1)で表される化合物の溶媒に対する溶解性が高いこと等から、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、及び炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基からなる群より選択される基が好ましく、ニトロ基、又は炭素数1〜6のアルキルがより好ましく、ニトロ基、又はメチル基が特に好ましい。
【0236】
R
d1が置換基を有してもよいアリール基である場合、R
d1は、下記式(D1−1)であるのが好ましい。
【化32】
(式(D1−1)中、R
d4は、有機基、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であり、qは0〜4の整数である。)
【0237】
R
d4が有機基である場合、当該有機基の好適な例は、R
d1が置換基を有してもよいアリール基である場合に、当該アリール基が置換基として有してもよい有機基の例と同様である。
【0238】
R
d4がフェニル基に結合する位置は、R
d4が結合するフェニル基について、フェニル基とオキシム化合物の主骨格との結合手の位置を1位とし、メチル基の位置を2位とする場合に、4位、又は5位が好ましく、5位がよりに好ましい。また、qは、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0又は1が特に好ましい。
【0239】
上記式(D1)中、R
d1が置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基である場合、その炭素数は1〜10である。この炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。当該脂肪族炭化水素基の炭素数は、1〜9が好ましく、1〜8がより好ましい。当該脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和結合を有する炭化水素基であってもよい。当該脂肪族炭化水素基の構造は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であっても、これらの構造を組み合わせた構造であってもよく、直鎖状であるのが好ましい。
【0240】
上記式(D1)中、R
d1が直鎖状の脂肪族炭化水素基である場合の好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、及びn−デシル基が挙げられる。
R
d1が環状の脂肪族炭化水素基である場合の好適な例としてはシクロペンチル基、シクロへキシル基が挙げられる。
R
d1が直鎖状の脂肪族炭化水素基と環状の脂肪族炭化水素基とを組み合わせた構造である場合の好適な例としては、シクロヘキシルメチル基、シクロペンチルメチル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基、3−シクロヘキシル−n−プロピル基、及び3−シクロペンチル−n−プロピル基が挙げられ、これらの基の中では2−シクロヘキシルエチル基、及び2−シクロペンチルエチル基が好ましい。
【0241】
R
d1が脂肪族炭化水素基である場合に、当該脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、炭素数2〜10の飽和脂肪族アシル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、アミノ基、1又は2の炭素数1〜6のアルキルで置換されたアミノ基、及び1又は2の置換基を有してもよいアリール基で置換されたアミノ基が挙げられる。なお、これらの置換基の炭素数は、脂肪族炭化水素基の炭素数には含まれない。
【0242】
脂肪族炭化水素基が有する置換基が、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、及び1又は2の置換基を有してもよいアリール基で置換されたアミノ基である場合、これらの基に含まれるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びフェナントリル基が挙げられ、フェニル基、及びナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0243】
脂肪族炭化水素基が有する置換基が、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、及び1又は2の置換基を有してもよいアリール基で置換されたアミノ基である場合、これらの基に含まれるアリール基が有してもよい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、及び炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基等が挙げられる。
【0244】
R
d1が脂肪族炭化水素基である場合に当該脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基として説明した以上の置換基の具体例は、以上説明した炭素数の範囲内において、R
d1がアリール基である場合に当該アリール基が有してもよい置換基と同様である。
【0245】
R
d1が置換基を有してもよいカルバゾリル基である場合、置換基の種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。カルバゾリル基が炭素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルコキシ基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいフェニルチオ基、置換基を有してもよいフェニルカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフチルカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、アミノ基、1又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0246】
R
d1が置換基を有してもよいカルバゾリル基である場合、カルバゾリル基が窒素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。これらの置換基の中では、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0247】
カルバゾリル基が有してもよい置換基の具体例について、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び1又は2の有機基で置換されたアミノ基に関しては、R
d1が置換基を有してもよいアリール基である場合の、アリール基が有する置換基の例と同様である。
【0248】
R
d1において、カルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基の例としては、炭素数1〜6のアルキル基;炭素数1〜6のアルコキシ基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基;炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン−1−イル基;ピペラジン−1−イル基;ハロゲン;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。カルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0249】
R
d2は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよいアリール基である。
R
d2が脂肪族炭化水素基である場合、当該脂肪族炭化水素基の炭素数は、1〜6が好ましく、1がより好ましい。当該脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和結合を有する炭化水素基であってもよい。当該脂肪族炭化水素基の構造は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であっても、これらの構造を組み合わせた構造であってもよく、直鎖状であるのが好ましい。
【0250】
R
d2が直鎖状の脂肪族炭化水素基である場合の好適な例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、及びn−デシル基が挙げられる。これらの中では、メチル基が特に好ましい。
【0251】
R
d2が置換基を有してもよいアリール基である場合の例としては、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいアントリル基、及び置換基を有してもよいフェナントレニル基が挙げられる。これらの基の中では、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいナフチル基が好ましく、置換基を有してもよいフェニル基がより好ましい。
【0252】
R
d2において、アリール基が有する置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。アリール基が、炭素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルコキシ基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいフェニルチオ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、アミノ基、1又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
【0253】
アリール基が有してもよい置換基の具体例について、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び1又は2の有機基で置換されたアミノ基に関しては、R
d1が置換基を有してもよいアリール基である場合に、アリール基が有してもよい置換基についての例示と同様である。
【0254】
R
d2において、アリール基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基の例としては、炭素数1〜6のアルキル基;炭素数1〜6のアルコキシ基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基;炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン−1−イル基;ピペラジン−1−イル基;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。アリール基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0255】
式(D1)におけるR
d3は、水素原子、又は−CO−R
d5で表される基である。−CO−R
d5で表される基において、R
d5は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基である。R
d5が置換基を有してもよいアリール基である場合、アリール基が有してもよい置換基は、前述のR
d1が置換基を有してもよいアリール基である場合に、当該アリール基が有してもよい置換基と同様である。R
d5が置換基を有してもよいアリール基である場合、アリール基は2以上の置換基を有していてもよい。この場合、アリール基が有する置換基は同一であっても異なっていてもよい。R
d5としては、水素原子、アセチル基、プロピオニル基、及びベンゾイル基が好ましく、水素原子、アセチル基、及びベンゾイル基がより好ましい。
【0256】
式(D1)で表される化合物としては、この化合物の塩基発生効率又は酸発生効率の点から、式(D1)において、R
d1が置換基を有してもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、R
d2が下記式(D1−2)で表される基である化合物、又は、式(D1)において、R
d1が下記式(D1−3)で表される基である化合物が好ましく、着色が抑制され透明性の高い樹脂が得られる点から、式(D1)において、R
d1が置換基を有してもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、R
d2が下記式(D1−2)で表される基である化合物がより好ましい。
【0257】
【化33】
(式(D1−2)中、R
d6は、1価の有機基、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であり、AはS又はOであり、rは、0〜4の整数である。)
【0258】
式(D1−2)におけるR
d6が有機基である場合、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。式(D1−2)においてR
d6が有機基である場合の好適な例としては、炭素数1〜6のアルキル基;炭素数1〜6のアルコキシ基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基;炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン−1−イル基;ピペラジン−1−イル基;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。
【0259】
R
d6の中では、ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;ニトロ基が好ましく、ベンゾイル基;ナフトイル基;2−メチルフェニルカルボニル基;4−(ピペラジン−1−イル)フェニルカルボニル基;4−(フェニル)フェニルカルボニル基がより好ましい。
【0260】
また、式(D1−2)において、rは、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0又は1であるのが特に好ましい。rが1である場合、R
d6の結合する位置は、R
d6が結合するフェニル基が酸素原子又は硫黄原子と結合する結合手に対して、パラ位であるのが好ましい。
式(D1−2)において、AはSであるのが好ましい。
【0261】
R
d6に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。R
d6に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。R
d6に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0262】
【化34】
(式(D1−3)中、R
d7及びR
d8は、それぞれ1価の有機基であり、sは0又は1である。)
【0263】
式(12)におけるR
d7は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。R
d7の好適な例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。
【0264】
R
d7の中では、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0265】
式(12)におけるR
d8は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から選択できる。R
d8として好適な基の具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリル基が挙げられる。R
d8として、これらの基の中では置換基を有してもよいフェニル基、及び置換基を有してもよいナフチル基がより好ましく、2−メチルフェニル基及びナフチル基が特に好ましい。
【0266】
R
d7又はR
d8に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。R
d7又はR
d8に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。R
d7又はR
d8に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0267】
式(D1)で表される化合物は、pが0であり、R
d2が置換基を有してもよいアリール基であり、R
d3が水素原子である場合、例えば、下記スキーム1に従って合成することができる。具体的には、下記式(1−1)で表される芳香族化合物を、下記式(1−2)で表されるハロカルボニル化合物を用いて、フリーデルクラフツ反応によりアシル化して、下記式(1−3)で表されるケトン化合物を得、得られたケトン化合物(1−3)を、ヒドロキシルアミンによりオキシム化して下記式(1−4)で表されるオキシム化合物が得られる。なお、下記式(1−2)において、Halはハロゲン原子であり、下記式(1−1)、(1−2)、(1−3)、及び(1−4)において、R
d1、及びR
d2は、式(D1)と同様である。
【0269】
式(D1)で表される化合物は、pが0であり、R
d2が置換基を有してもよいアリール基であり、R
d3が−CO−R
d5で表される基である場合、下記スキーム2に従って合成することができる。具体的には、上記スキーム1に記載の方法で得られる式(1−4)のオキシム化合物と、下記式(1−5)で表される酸無水物((R
d5CO)
2O)、又は下記式(1−6)で表される酸ハライド(R
d5COHal、Halはハロゲン原子。)とを反応させて、下記式(1−7)で表されるオキシムエステル化合物を得ることができる。なお、下記式(1−4)、(1−5)、(1−6)、及び(1−7)において、R
d1、R
d2、及びR
d5は式(1)と同様である。
【0271】
式(D1)で表される化合物は、pが0であり、R
d2が炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基であり、R
d3が水素原子である場合、R
d2−CO−R
d1で表されるケトン化合物を、スキーム1に記載の方法に従って、ヒドロキシルアミンによりオキシム化して、R
d2−C(=N−OH)−R
d1で表される化合物として得ることができる。
また、式(D1)で表される化合物は、pが0であり、R
d2が炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基であり、R
d3が−CO−R
d5で表される基である場合、R
d2−C(=N−OH)−R
d1で表されるオキシム化合物を、スキーム2に記載される方法に従ってアシル化することで、R
d2−C(=N−O−CO−R
d5)−R
d1で表される化合物として得ることができる。
【0272】
式(D1)で表される化合物は、pが1であり、R
d3が水素原子である場合、例えば、下記スキーム3に従って合成することができる。具体的には、下記式(2−1)で表されるケトン化合物に、塩酸の存在下に下記式(2−2)で表される亜硝酸エステル(RONO、Rは炭素数1〜6のアルキル基。)を反応させて、下記式(2−3)で表されるケトオキシム化合物を得、次いで、下記式(2−3)で表されるケトオキシム化合物が得られる。なお、下記式(2−1)、及び(2−3)において、R
d1、及びR
d2は、式(D1)と同様である。
【0274】
式(D1)で表される化合物は、pが1であり、R
d3が−CO−R
d5で表される基である場合、下記スキーム4に従って合成することができる。具体的には、上記スキーム3に記載の方法で得られる式(2−3)のオキシム化合物と、下記式(2−4)で表される酸無水物((R
d5CO)
2O)、又は下記式(2−5)で表される酸ハライド(R
d5COHal、Halはハロゲン原子。)とを反応させて、下記式(2−6)で表されるオキシムエステル化合物を得ることができる。なお、下記式(2−3)、(2−4)、(2−5)、及び(2−6)において、R
d1、R
d2、及びR
d5は、式(D1)と同様である。
【0276】
式(D1)で表されるオキシム化合物の中でも特に好適な化合物としては、下記式の化合物が挙げられる。
【化39】
【0286】
オキシム化合物(A−2)としては、上記式(D1)で表されるオキシム化合物以外のその他のオキシム化合物を用いることもできる。その他のオキシム化合物としては、ネガ型感放射線性組成物1において記載したオキシム系光重合開始剤を用いることができる。
【0287】
ネガ型感放射線性組成物2における感光性成分の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。ネガ型感放射線性組成物2における感光性成分の含有量は、ポリアミック酸100質量に対して1〜50質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましい。
【0288】
[その他の有機溶剤(一般式(1)で表される化合物以外の有機溶剤)]
ネガ型感放射線性組成物2は、その他の有機溶剤を含有してもよい。その他の有機溶剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。その他の有機溶剤としては、ネガ型感放射線性組成物1において例示したものを用いることができる。
【0289】
ネガ型感放射線性組成物2において、溶剤の含有量は、ネガ型感放射線性組成物2の固形分濃度が1〜50質量%となる量が好ましく、5〜40質量%となる量がより好ましい。また、ネガ型感放射線性組成物2に含まれる溶剤において、上記一般式(1)で表される化合物とその他の有機溶剤との質量比は、5:95〜100:0であることが好ましく、20:80〜100:0であることがより好ましい。溶剤の含有量及び上記一般式(1)で表される化合物とその他の有機溶剤との質量比を上記の範囲とすることにより、ネガ型感放射線性組成物2は、感度、保存安定性、塗布性、現像性、及び安全性に優れたものとなりやすく、ネガ型感放射線性組成物2を露光及び現像することにより形成されるパターンは、異物の発生が抑制されたものとなりやすい。
【0290】
[その他の成分]
ネガ型感放射線性組成物2は、必要に応じて、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、増感剤、硬化促進剤、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0291】
<ネガ型感放射線性組成物3>
ネガ型感放射線性組成物3は、上記一般式(1)で表される化合物と、ポリベンゾオキサゾール前駆体と、感光性成分とを含有する感放射線性ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物である。
【0292】
[一般式(1)で表される化合物]
一般式(1)で表される化合物としては、感放射線性組成物の一般的な説明において例示したものを用いることができる。上記一般式(1)で表される化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0293】
[ポリベンゾオキサゾール前駆体]
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成原料としては、芳香族ジアミンジオールと、特定の構造のジカルボニル化合物とを用いる。以下、芳香族ジアミンジオールと、ジカルボニル化合物とについて説明する。
【0294】
(芳香族ジアミンジオール)
本発明では、芳香族ジアミンジオールとして下記式(21)で表される化合物を用いる。芳香族ジアミンジオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化49】
(式中、R
a1は1以上の芳香環を含む4価の有機基であり、式(21)で表される芳香族ジアミンジオールに含まれる2組のアミノ基と水酸基との組み合わせに関して、それぞれの組み合わせでは、アミノ基と水酸基とは、R
a1に含まれる芳香環上の隣接する2つの炭素原子に結合している。)
【0295】
式(21)中、R
a1は、1以上の芳香環を含む4価の有機基であり、その炭素数は6〜50が好ましく、6〜30がより好ましい。R
a1は、芳香族基であってもよく、2以上の芳香族基が、脂肪族炭化水素基及びハロゲン化脂肪族炭化水素基や、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等のヘテロ原子を含む結合を介して結合された基であってもよい。R
a1に含まれる、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子等のヘテロ原子を含む結合としては、−CONH−、−NH−、−N=N−、−CH=N−、−COO−、−O−、−CO−、−SO−、−SO
2−、−S−、及び−S−S−等が挙げられ、−O−、−CO−、−SO−、−SO
2−、−S−、及び−S−S−が好ましい。
【0296】
R
a1に含まれる芳香環は、芳香族複素環であってもよい。R
a1中のアミノ基及び水酸基と結合する芳香環はベンゼン環であるのが好ましい。R
a1中のアミノ基及び水酸基と結合する環が2以上の環を含む縮合環である場合、当該縮合環中のアミノ基及び水酸基と結合する環はベンゼン環であるのが好ましい。
【0297】
R
a1の好適な例としては、下記式(1−1)〜(1−9)のいずれかで表される基が挙げられる。
【化50】
(式(1−1)中、X
1は、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数1〜10のフッ素化アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CO−、−COO−、−CONH−、及び単結合からなる群より選択される1種である。式(1−2)〜(1−5)中、Y
1は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、−CH
2−、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CO−、及び単結合からなる群より選択される1種である。)
【0298】
上記式(1−1)〜(1−9)のいずれかで表される基は、芳香環上に1又は複数の置換基を有していてもよい。置換基の好適な例としては、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のフッ素化アルキル基、炭素数1〜6のフッ素化アルコキシ基が好ましい。置換基がフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基である場合、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であるのが好ましい。
【0299】
上記式(21)で表される化合物の具体例としては、2,4−ジアミノ−1,5−ベンゼンジオール、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジオール、2,5−ジアミノ−3−フルオロ−1,4−ベンゼンジオール、2,5−ジアミノ−3,6−ジフルオロ−1,4−ベンゼンジオール、2,6−ジアミノ−1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジアミノ−2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジアミノ−3,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,3’−ジアミノ−3,2’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル、2,3’−ジアミノ−3,2’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−5,5’−ジトリフルオロメチルビフェニル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−5,5’−ジトリフルオロメチルビフェニル、2,3’−ジアミノ−3,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジトリフルオロメチルビフェニル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−5,5’−ジトリフルオロメチルビフェニル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)メタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)メタン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルジフルオロメタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ジフルオロメタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ジフルオロメタン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルジフルオロメタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)エーテル、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルエーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルケトン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)ケトン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)ケトン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルケトン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−アミノ−3’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)−2−(4’−アミノ−3’−ヒドロキシ−6’−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−アミノ−3’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチルフェニル)−2−(4’−アミノ−3’−ヒドロキシ−6’−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−5−トリフルオロメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)スルホン、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルスルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)スルフィド、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシ−6−トリフルオロメチル)スルフィド、3,4’−ジアミノ−4,3’−ジヒドロキシ−6,6’−ジトリフルオロメチルジフェニルスルフィド、(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)4−アミノ−3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)3−アミノ4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)4−アミノ−3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)3−アミノ−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、N−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)4−アミノ−3−ヒドロキシベンズアミド、N−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)3−アミノ4−ヒドロキシフェニルベンズアミド、N−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)4−アミノ−3−ヒドロキシフェニルベンズアミド、N−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)3−アミノ−4−ヒドロキシフェニルベンズアミド、2,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、2,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ビフェニル、ジ[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]エーテル、ジ[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]エーテル、2,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゾフェノン、2,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゾフェノン、2,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、2,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、2,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロベンゾフェノン、2,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロベンゾフェノン、4,4’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)オクタフルオロベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,8−ジアミノ−3,7−ジヒドロキシジベンゾフラン、2,8−ジアミノ−3,7−ジヒドロキシフルオレン、2,6−ジアミノ−3,7−ジヒドロキシキサンテン、9,9−ビス−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)フルオレン、及び9,9−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンが挙げられる。
【0300】
これらの中では、透明性が優れるポリベンゾオキサゾール樹脂を形成できる点から、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
【0301】
(ジカルボニル化合物)
ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成原料としては、以上説明した芳香族ジアミンジオールとともに、下記式(22)で表されるジカルボニル化合物を用いる。前述の芳香族ジアミンジオールと、下記式(22)で表されるジカルボニル化合物とを縮合させることにより、ポリベンゾオキサゾール前駆体が得られる。
【化51】
(式中、R
a2は2価の有機基であり、Aは水素原子又はハロゲン原子を表す。)
【0302】
式(22)中のR
a2は、芳香族基であってもよく、脂肪族基であってもよく、芳香族基と脂肪族基とを組み合わせた基であってもよい。得られるポリベンゾオキサゾール樹脂の耐熱性、機械的特性、耐薬品性等が良好である点から、R
a2は、芳香族基及び/又は脂環式基を含む基であるのが好ましい。R
a2に含まれる芳香族基は、芳香族炭化水素基であってもよく、芳香族複素環基であってもよい。
【0303】
R
a2は、炭素原子、及び水素原子の他に、ハロゲン原子、酸素原子、及び硫黄原子を含んでいてもよい。R
a2が酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含む場合、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子は、2価の含窒素複素環基、−CONH−、−NH−、−N=N−、−CH=N−、−COO−、−O−、−CO−、−SO−、−SO
2−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、R
a2に含まれてもよく、−O−、−CO−、−SO−、−SO
2−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、R
a2に含まれるのがより好ましい。
【0304】
式(22)中、2つのAの一方が水素原子であり、他方がハロゲン原子であってもよいが、2つのAがともに水素原子であるか、2つのAがともにハロゲン原子であるのが好ましい。Aがハロゲン原子である場合、Aとして塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0305】
式(22)で表されるジカルボニル化合物として、2つのAがともに水素原子であるジアルデヒド化合物を用いる場合、下記式(10)で表されるポリベンゾオキサゾール中間体が製造される。
【化52】
(式中、R
a1及びR
a2は、式(21)及び式(22)と同様であり、nは式(10)で表される単位の繰り返し数である。)
【0306】
式(22)で表されるジカルボニル化合物として、2つのAがともにハロゲン原子であるジカルボン酸ジハライドを用いる場合、下記式(20)で表されるポリベンゾオキサゾール中間体が製造される。
【化53】
(式中、R
a1及びR
a2は、式(21)及び式(22)と同様であり、nは式(20)で表される単位の繰り返し数である。)
【0307】
以下、ジカルボニル化合物として好適な化合物である、ジアルデヒド化合物と、ジカルボン酸ジハライドとについて説明する。
【0308】
・ジアルデヒド化合物
ポリベンゾオキサゾール前駆体の原料として用いるジアルデヒド化合物は、下記式(2−1)で表される化合物である。ジアルデヒド化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化54】
(式中、R
a2は、式(22)と同様である。)
【0309】
式(2−1)中のR
a2として好適な芳香族基又は芳香環含有基としては、以下の基が挙げられる。
【化55】
(上記式中、X
2は、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数1〜10のフッ素化アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CO−、−COO−、−CONH−、及び単結合からなる群より選択される1種である。X
2が複数である場合、複数のX
2は同一でも異なっていてもよい。Y
2は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、−CH
2−、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CO−、及び単結合からなる群より選択される1種である。p及びqは、それぞれ0〜3の整数である。)
【0310】
式(2−1)中のR
a2として好適な脂環式基又は脂環含有基としては、以下の基が挙げられる。
【化56】
(上記式中、X
2は、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数1〜10のフッ素化アルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CO−、−COO−、−CONH−、及び単結合からなる群より選択される1種である。X
2が複数である場合、複数のX
2は同一でも異なっていてもよい。Y
2は、それぞれ、同一でも異なっていてもよく、−CH
2−、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−CO−、及び単結合からなる群より選択される1種である。Zは、−CH
2−、−CH
2CH
2−、及び−CH=CH−からなる群より選択される1種である。pは、それぞれ0〜3の整数である。)
【0311】
上記のR
a2として好適な基に含まれる芳香環又は脂環は、その環上に1又は複数の置換基を有していてもよい。置換基の好適な例としては、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のフッ素化アルキル基、炭素数1〜6のフッ素化アルコキシ基が好ましい。置換基がフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基である場合、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基であるのが好ましい。
【0312】
式(2−1)で表されるジアルデヒド化合物が芳香族ジアルデヒドである場合、その好適な例としては、ベンゼンジアルデヒド類、ピリジンジアルデヒド類、ピラジンジアルデヒド類、ピリミジンジアルデヒド類、ナフタレンジアルデヒド類、ビフェニルジアルデヒド類、ジフェニルエーテルジアルデヒド類、ジフェニルスルホンジアルデヒド類、ジフェニルスルフィドジアルデヒド類、ビス(ホルミルフェノキシ)ベンゼン類、[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド類、2,2−ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン類、ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]スルフィド類、ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]スルホン類、及び含フルオレンジアルデヒドが挙げられる。
【0313】
ベンゼンジアルデヒド類の具体例としては、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、3−フルオロフタルアルデヒド、4−フルオロフタルアルデヒド、2−フルオロイソフタルアルデヒド、4−フルオロイソフタルアルデヒド、5−フルオロイソフタルアルデヒド、2−フルオロテレフタルアルデヒド、3−トリフルオロメチルフタルアルデヒド、4−トリフルオロメチルフタルアルデヒド、2−トリフルオロメチルイソフタルアルデヒド、4−トリフルオロメチルイソフタルアルデヒド、5−トリフルオロメチルイソフタルアルデヒド、2−トリフルオロメチルテレフタルアルデヒド、3,4,5,6−テトラフルオロフタルアルデヒド、2,4,5,6−テトラフルオロイソフタルアルデヒド、及び2,3,5,6−テトラフルオロテレフタルアルデヒド等が挙げられる。
【0314】
ピリジンジアルデヒド類の具体例としては、ピリジン−2,3−ジアルデヒド、ピリジン−3,4−ジアルデヒド、及びピリジン−3,5−ジアルデヒド等が挙げられる。
ピラジンジアルデヒド類の具体例としては、ピラジン−2,3−ジアルデヒド、ピラジン−2,5−ジアルデヒド、及びピラジン−2,6−ジアルデヒド等が挙げられる。
ピリミジンジアルデヒド類の具体例としては、ピリミジン−2,4−ジアルデヒド、ピリミジン−4,5−ジアルデヒド、及びピリミジン−4,6−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0315】
ナフタレンジアルデヒド類の具体例としては、ナフタレン−1,5−ジアルデヒド、ナフタレン−1,6−ジアルデヒド、ナフタレン−2,6−ジアルデヒド、ナフタレン−3,7−ジアルデヒド、2,3,4,6,7,8−ヘキサフルオロナフタレン−1,5−ジアルデヒド、2,3,4,5,6,8−ヘキサフルオロナフタレン−1,6−ジアルデヒド、1,3,4,5,7,8−ヘキサフルオロナフタレン−2,6−ジアルデヒド、1−トリフルオロメチルナフタレン−2,6−ジアルデヒド、1,5−ビス(トリフルオロメチル)ナフタレン−2,6−ジアルデヒド、1−トリフルオロメチルナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1,5−ビス(トリフルオロメチル)ナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1−トリフルオロメチル−2,4,5,6,8−ペンタフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1−ビス(トリフルオロメチル)メトキシ−2,4,5,6,8−ペンタフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド、1,5−ビス(トリフルオロメチル)−2,4,6,8−テトラフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド、及び1,5−ビス[ビス(トリフルオロメチル)メトキシ]−2,4,6,8−テトラフルオロナフタレン−3,7−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0316】
ビフェニルジアルデヒド類の具体例としては、ビフェニル−2,2’−ジアルデヒド、ビフェニル−2,4’−ジアルデヒド、ビフェニル−3,3’−ジアルデヒド、ビフェニル−4,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−3,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−2,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−3,3’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−3,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジフルオロビフェニル−4,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−2,2’−ジアルデヒド、6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−2,4’−ジアルデヒド、6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−3,3’−ジアルデヒド、6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−3,4’−ジアルデヒド、及び6,6’−ジトリフルオロメチルビフェニル−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0317】
ジフェニルエーテルジアルデヒド類の具体例としては、ジフェニルエーテル−2,4’−ジアルデヒド、ジフェニルエーテル−3,3’−ジアルデヒド、ジフェニルエーテル−3,4’−ジアルデヒド、及びジフェニルエーテル−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0318】
ジフェニルスルホンジアルデヒド類の具体例としては、ジフェニルスルホン−3,3’−ジアルデヒド、ジフェニルスルホン−3,4’−ジアルデヒド、及びジフェニルスルホン−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0319】
ジフェニルスルフィドジアルデヒド類の具体例としては、ジフェニルスルフィド−3,3’−ジアルデヒド、ジフェニルスルフィド−3,4’−ジアルデヒド、及びジフェニルスルフィド−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0320】
ジフェニルケトンジアルデヒド類の具体例としては、ジフェニルケトン−3,3’−ジアルデヒド、ジフェニルケトン−3,4’−ジアルデヒド、及びジフェニルケトン−4,4’−ジアルデヒド等が挙げられる。
【0321】
ビス(ホルミルフェノキシ)ベンゼン類の具体例としては、ベンゼン1,3−ビス(3−ホルミルフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−ホルミルフェノキシ)ベンゼン、及び1,4−ビス(4−ホルミルフェノキシ)ベンゼン等が挙げられる。
【0322】
[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド類の具体例としては、3,3’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド、3,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド、及び4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0323】
2,2−ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン類の具体例としては、2,2−ビス[4−(2−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、及び2,2−ビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0324】
ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]スルフィド類の具体例としては、ビス[4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル]スルフィド、及びビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]スルフィド等が挙げられる。
【0325】
ビス[4−(ホルミルフェノキシ)フェニル]スルホン類の具体例としては、ビス[4−(3−ホルミルフェノキシ)フェニル]スルホン、及びビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)フェニル]スルホン等が挙げられる。
【0326】
含フルオレンジアルデヒドの具体例としては、フルオレン−2,6−ジアルデヒド、フルオレン−2,7−ジアルデヒド、ジベンゾフラン−3,7−ジアルデヒド、9,9−ビス(4−ホルミルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ホルミルフェニル)フルオレン、及び9−(3−ホルミルフェニル)−9−(4’−ホルミルフェニル)フルオレン等が挙げられる
【0327】
また、下記式で表される、ジフェニルアルカンジアルデヒド又はジフェニルフルオロアルカンジアルデヒドも、芳香族ジアルデヒド化合物として好適に使用できる。
【化57】
【0328】
更に、下記式で表されるイミド結合を有する化合物も、芳香族ジアルデヒド化合物として好適に使用することができる。
【化58】
【0329】
式(2−1)で表されるジカルボニル化合物が脂環式基を含む脂環式ジアルデヒドである場合、その好適な例としては、シクロヘキサン−1,4−ジアルデヒド、シクロヘキサン−1,3−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,5−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,5−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジアルデヒド、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジアルデヒド、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−3,4−ジアルデヒド、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ−4−エン−8,9−ジアルデヒド、ペルヒドロナフタレン−2,3−ジアルデヒド、ペルヒドロナフタレン−1,4−ジアルデヒド、ペルヒドロナフタレン−1,6−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4−メタノナフタレン−2,3−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4−メタノナフタレン−2,7−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4−メタノナフタレン−7,8−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,3−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,7−ジアルデヒド、ペルヒドロ−1,4:5,8:9,10−トリメタノアントラセン−2,3−ジアルデヒド、ビシクロヘキシル−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルエーテル−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルメタン−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルメタン−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルジフルオロメタン−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルジフルオロメタン−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルジフルオロメタン−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルホン−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルホン−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルホン−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルフィド−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルフィド−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルスルフィド−4,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルケトン−3,3’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルケトン−3,4’−ジアルデヒド、ジシクロヘキシルケトン−4,4’−ジアルデヒド、2,2−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ホルミルシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ホルミルシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)ベンゼン、1,4−ビス(3−ホルミルシクロヘキシル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ホルミルシクロヘキシル)ベンゼン、3,3’−[1,4−シクロヘキシレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスシクロヘキサンカルバルデヒド、3,4’−[1,4−シクロヘキシレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスシクロヘキサンカルバルデヒド、4,4’−[1,4−シクロヘキシレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスシクロヘキサンカルバルデヒド、2,2−ビス[4−(3−ホルミルシクロヘキシル)シクロヘキシル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−ホルミルシクロヘキシル)シクロヘキシル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−ホルミルシクロヘキシル)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−ホルミルフェノキシ)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルフィド、ビス[4−(4−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルフィド、ビス[4−(3−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、ビス[4−(4−ホルミルシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、2,2’−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6’−ジアルデヒド、2,2’−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−6,6’−ジアルデヒド、及び1,3−ジホルミルアダマンタン等が挙げられる。
【0330】
以上説明したジアルデヒド化合物の中では、合成や入手が容易であることや、耐熱性及び機械的性質に優れるポリベンゾオキサゾール樹脂を得やすいことから、イソフタルアルデヒドが好ましい。
【0331】
・ジカルボン酸ジハライド
ポリベンゾオキサゾール前駆体の原料として用いるジカルボン酸ジハライドは、下記式(2−2)で表される化合物である。ジカルボン酸ジハライドは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化59】
(式中、R
a2は、式(22)と同様であり、Halはハロゲン原子である。)
【0332】
式(2−2)中、Halとしては、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0333】
式(2−2)で表される化合物として好適な化合物としては、ジアルデヒド化合物の好適な例として前述した化合物が有する2つのアルデヒド基を、ハロカルボニル基、好ましくはクロロカルボニル基に置換した化合物が挙げられる。
【0334】
以上説明したジカルボン酸ジハライドの中では、合成や入手が容易であることや、耐熱性及び機械的性質に優れるポリベンゾオキサゾール樹脂を得やすいことから、テレフタル酸二クロライドが好ましい。
【0335】
(ポリベンゾオキサゾール前駆体の製造方法)
本発明において、ポリベンゾオキサゾール前駆体は、前述の芳香族ジアミンジオールと、ジカルボニル化合物とを、溶剤中で、周知の方法に従って反応させることによって製造される。以下、ポリベンゾオキサゾール前駆体の製造方法の代表的な例として、ジカルボニル化合物がジアルデヒド化合物である場合の製造方法と、ジカルボニル化合物がジカルボン酸ハライドである場合の製造方法とについて説明する。
【0336】
・芳香族ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応
芳香族ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応は、溶剤中で行われる。芳香族ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応はシッフ塩基の形成反応であり、周知の方法に従って行うことができる。反応温度は特に限定されないが、通常、20〜200℃が好ましく、20〜160℃がより好ましく、100〜160℃が特に好ましい。
【0337】
芳香族ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応は、溶剤にエントレーナーを添加し、還流脱水しながら行われてもよい。エントレーナーとしては、特に限定されず、水と共沸混合物を形成し、室温にて水と二相系を形成する有機溶剤から適宜選択される。エントレーナーの好適な例としては、酢酸イソブチル、酢酸アリル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸−n−ブチル、及びプロピオン酸イソブチル等のエステル;ジクロロメチルエーテル、及びエチルイソアミルエーテル等のエーテル類;エチルプロピルケトン等のケトン類;トルエン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
【0338】
芳香族ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応時間は特に限定されないが、典型的には2〜72時間程度が好ましい。
【0339】
ポリベンゾオキサゾール前駆体を製造する際の、ジアルデヒド化合物の使用量は、芳香族ジアミンジオール1モルに対して、0.5〜1.5モルであるのが好ましく、0.7〜1.3モルであるのがより好ましい。
【0340】
溶剤の使用量は、芳香族ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、芳香族ジアミンジオールの質量と、ジアルデヒド化合物の質量との合計に対して、1〜40倍、好ましくは1.5〜20倍の質量の溶剤が使用される。
【0341】
芳香族ジアミンジオールとジアルデヒド化合物との反応は、生成するポリベンゾオキサゾール前駆体の数平均分子量が、1000〜20000、好ましくは1200〜5000となるまで行われるのが好ましい。
【0342】
・芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応
芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応は、溶剤中で行われる。反応温度は特に限定されないが、通常、−20〜150℃が好ましく、−10〜150℃がより好ましく、−5〜70℃が特に好ましい。芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応ではハロゲン化水素が副生する。かかるハロゲン化水素を中和するために、トリエチルアミン、ピリジン、及びN,N−ジメチル−4−アミノピリジン等の有機塩基や、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を、反応液中に少量加えてもよい。
【0343】
芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応時間は特に限定されないが、典型的には2〜72時間程度が好ましい。
【0344】
ポリベンゾオキサゾール前駆体を製造する際の、ジカルボン酸ジハライドの使用量は、芳香族ジアミンジオール1モルに対して、0.5〜1.5モルであるのが好ましく、0.7〜1.3モルであるのがより好ましい。
【0345】
溶剤の使用量は、芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、芳香族ジアミンジオールの質量と、ジカルボン酸ジハライドの質量との合計に対して、1〜40倍、好ましくは1.5〜20倍の質量の溶剤が使用される。
【0346】
芳香族ジアミンジオールとジカルボン酸ジハライドとの反応は、生成するポリベンゾオキサゾール前駆体の数平均分子量が、1000〜20000、好ましくは1200〜5000となるまで行われるのが好ましい。
【0347】
以上説明した方法により、ポリベンゾオキサゾール前駆体の溶液が得られる。ネガ型感放射線性組成物3を調製する場合には、ポリベンゾオキサゾール前駆体の溶液をそのまま用いることができる。また、減圧下に、ポリベンゾオキサゾール前駆体からポリベンゾオキサゾール樹脂への変換が生じない程度の低温で、ポリベンゾオキサゾール前駆体の溶液から溶剤の少なくとも一部を除去して得られる、ポリベンゾオキサゾール前駆体のペースト又は固体を用いることもできる。また、上記の反応により得られるポリベンゾオキサゾール前駆体の溶液に対して、溶剤等を適量加えて、固形分濃度が調整されたポリベンゾオキサゾール前駆体の溶液をネガ型感放射線性組成物3の調製に用いることもできる。
【0348】
芳香族ジアミンジオールとジカルボニル化合物との反応に用いる有機溶剤の例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、N−メチルカプロラクタム、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤;β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、及びε−カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;乳酸エチル、及び乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、及びエチルセルソルブアセテート等のエーテル類が挙げられる。
【0349】
これらの有機溶剤の中では、生成するポリベンゾオキサゾール前駆体やポリベンゾオキサゾール樹脂の溶解性から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N,2−トリメチルプロピオンアミド、N−メチルカプロラクタム、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤が好ましい。
【0350】
[感光性成分]
感光性成分としては、特に限定されず、ネガ型感放射線性組成物2の場合と同様に、例えば、光塩基発生剤、光酸発生剤等の、光の作用により分解して塩基及び酸の少なくとも一方を発生する化合物(A)が挙げられる。感光性成分は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0351】
化合物(A)を含有するネガ型感放射線性組成物3を露光することにより、ネガ型感放射線性組成物3中の化合物(A)は分解して、塩基及び酸の少なくとも一方を発生する。このようにして発生した塩基又は酸は、ネガ型感放射線性組成物3中のポリベンゾオキサゾール前駆体に作用して、ポリベンゾオキサゾール樹脂への変換を促進する。
【0352】
化合物(A)を含有するネガ型感放射線性組成物3を露光すると、露光部において化合物(A)が分解して塩基及び酸の少なくとも一方を発生する。このようにして発生した塩基又は酸により、ネガ型感放射線性組成物3中のポリベンゾオキサゾール前駆体からポリベンゾオキサゾール樹脂への変換が促進され、露光部は現像液に対して不溶となる。一方、未露光部は、現像液に対して可溶であるため、現像液に溶解させて除去することができる。よって、ネガ型感放射線性組成物3を選択的に露光することにより、所望のパターンを形成することができる。
【0353】
化合物(A)としては、ネガ型感放射線性組成物2の場合と同様に、例えば、光の作用により分解してイミダゾール化合物を発生する化合物(A−1)や、オキシム化合物(A−2)が挙げられる。化合物(A−1)が発生するイミダゾール化合物は、ネガ型感放射線性組成物3中のポリベンゾオキサゾール前駆体からポリベンゾオキサゾール樹脂への変換を促進する。また、化合物(A−2)が分解して発生した塩基又は酸により、ネガ型感放射線性組成物3中のポリベンゾオキサゾール前駆体からポリベンゾオキサゾール樹脂への変換が促進される。化合物(A−1)及び化合物(A−2)の詳細は、ネガ型感放射線性組成物2について説明したのと同様である。
【0354】
ネガ型感放射線性組成物3における感光性成分の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。ネガ型感放射線性組成物3における感光性成分の含有量は、ポリベンゾオキサゾール前駆体100質量に対して1〜50質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましい。
【0355】
[その他の有機溶剤(一般式(1)で表される化合物以外の有機溶剤)]
ネガ型感放射線性組成物3は、その他の有機溶剤を含有してもよい。その他の有機溶剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。その他の有機溶剤としては、ネガ型感放射線性組成物1において例示したものを用いることができる。
【0356】
ネガ型感放射線性組成物3において、溶剤の含有量は、ネガ型感放射線性組成物3の固形分濃度が1〜50質量%となる量が好ましく、5〜40質量%となる量がより好ましい。また、ネガ型感放射線性組成物3に含まれる溶剤において、上記一般式(1)で表される化合物とその他の有機溶剤との質量比は、5:95〜100:0であることが好ましく、20:80〜100:0であることがより好ましい。溶剤の含有量及び上記一般式(1)で表される化合物とその他の有機溶剤との質量比を上記の範囲とすることにより、ネガ型感放射線性組成物3は、感度、保存安定性、塗布性、現像性、及び安全性に優れたものとなりやすく、ネガ型感放射線性組成物3を露光及び現像することにより形成されるパターンは、異物の発生が抑制されたものとなりやすい。
【0357】
[その他の成分]
ネガ型感放射線性組成物3は、必要に応じて、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、増感剤、硬化促進剤、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0358】
<ポジ型感放射線性組成物1>
ポジ型感放射線性組成物1は、上記一般式(1)で表される化合物と、アルカリ可溶性樹脂と、キノンジアジド基含有化合物とを含有するものである。
【0359】
[一般式(1)で表される化合物]
一般式(1)で表される化合物としては、感放射線性組成物の一般的な説明において例示したものを用いることができる。上記一般式(1)で表される化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0360】
[アルカリ可溶性樹脂]
アルカリ可溶性樹脂としては、ネガ型感放射線性組成物1において例示したものを用いることができる。
【0361】
アルカリ可溶性樹脂の含有量は、ポジ型感放射線性組成物1の固形分に対して5〜90質量%であることが好ましく、10〜85質量%であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、ポジ型感放射線性組成物1の膜形成能、現像性のバランスをとりやすい傾向にある。
【0362】
[キノンジアジド基含有化合物]
キノンジアジド基含有化合物としては、特に限定されないが、フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物と、キノンジアジド基含有スルホン酸との完全エステル化物や部分エステル化物が好ましい。このようなキノンジアジド基含有化合物は、フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物とキノンジアジド基含有スルホン酸とを、ジオキサン等の適当な溶剤中において、トリエタノールアミン、炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリ等のアルカリの存在下で縮合させ、完全エステル化又は部分エステル化することにより得ることができる。キノンジアジド基含有化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0363】
上記フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物としては、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のポリヒドロキシベンゾフェノン類;
トリス(4−ヒドロシキフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン等のトリスフェノール型化合物;
2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−5−ヒドロキシフェノール、2,6−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール等のリニア型3核体フェノール化合物;
1,1−ビス〔3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル〕イソプロパン、ビス[2,5−ジメチル−3−(4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン、ビス[2,5−ジメチル−3−(4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−エチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メタン、ビス[3−(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシベンジル)−4−ヒドロキシ−5−エチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン、ビス[2,5−ジメチル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシフェニル]メタン等のリニア型4核体フェノール化合物;
2,4−ビス[2−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルベンジル]−6−シクロヘキシルフェノール、2,4−ビス[4−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシベンジル)−5−メチルベンジル]−6−シクロヘキシルフェノール、2,6−ビス[2,5−ジメチル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−ヒドロキシベンジル]−4−メチルフェノール等のリニア型5核体フェノール化合物;
ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、2,3,4−トリヒドロキシフェニル−4’−ヒドロキシフェニルメタン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−2−(3’−フルオロ−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール等のビスフェノール型化合物;
1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1−[1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン等の多核枝分かれ型化合物;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等の縮合型フェノール化合物;等が挙げられる。
【0364】
上記キノンジアジド基含有スルホン酸としては、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸、オルトアントラキノンジアジドスルホン酸等が挙げられる。
【0365】
キノンジアジド基含有化合物の含有量は、ポジ型感放射線性組成物1の固形分に対して、10〜95質量%であることが好ましく、15〜90質量%であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、ポジ型感放射線性組成物1の感度を良好なものとすることができる。
【0366】
[その他の有機溶剤(一般式(1)で表される化合物以外の有機溶剤)]
ポジ型感放射線性組成物1は、その他の有機溶剤を含有してもよい。その他の有機溶剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。その他の有機溶剤としては、ネガ型感放射線性組成物1において例示したものを用いることができる。
【0367】
ポジ型感放射線性組成物1において、溶剤の含有量は、ポジ型感放射線性組成物1の固形分濃度が1〜50質量%となる量が好ましく、5〜30質量%となる量がより好ましい。また、ポジ型感放射線性組成物1に含まれる溶剤において、上記一般式(1)で表される化合物とその他の有機溶剤との質量比は、5:95〜100:0であることが好ましく、20:80〜100:0であることがより好ましい。溶剤の含有量及び上記一般式(1)で表される化合物とその他の有機溶剤との質量比を上記の範囲とすることにより、ポジ型感放射線性組成物1は、感度、保存安定性、塗布性、現像性、及び安全性に優れたものとなりやすく、ポジ型感放射線性組成物1を露光及び現像することにより形成されるパターンは、異物の発生が抑制されたものとなりやすい。
【0368】
[その他のポリマー]
ポジ型感放射線性組成物1は、その他のポリマーを含有してもよい。その他のポリマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。その他のポリマーとしては、ネガ型感放射線性組成物2において説明したポリアミック酸や、ネガ型感放射線性組成物3において説明したポリベンゾオキサゾール前駆体や、下記一般式(31)で表される構造を主成分とするポリマーが挙げられる。
【0369】
一般式(31)で表される構造を主成分とするポリマーは、加熱又は適当な触媒により、イミド環、オキサゾール環、その他の環状構造を有するポリマーとなり得るものである。好ましくはポリイミド前駆体のポリアミック酸又はポリアミック酸エステル、ポリベンゾオキサゾール前駆体のポリヒドロキシアミドである。ここで、主成分とは、一般式(31)で表される構成単位を、ポリマーの全構成単位の50モル%以上有することを意味する。70モル%以上含有することが好ましく、90モル%以上含有することがより好ましい。
【0371】
一般式(31)中、R
1、R
2はそれぞれ同一でも異なっていてもよく炭素数2以上の2価〜8価の有機基を示す。R
3、R
4はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素又は炭素数1〜20の1価の有機基を示す。l、mは0〜2の整数、p、qは0〜4の整数を示す。ただしp+q>0である。
【0372】
上記一般式(31)中、R
1は炭素数2以上の2価〜8価の有機基を示し、酸の構造成分を表している。R
1が2価となる酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)プロパン等の芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸等を挙げることができる。R
1が3価となる酸としては、トリメリット酸、トリメシン酸等のトリカルボン酸等を挙げることができる。R
1が4価となる酸としてはピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸や、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸等の脂肪族テトラカルボン酸、これらのカルボキシル基2個の水素原子をメチル基やエチル基にしたジエステル化合物等を挙げることができる。また、ヒドロキシフタル酸、ヒドロキシトリメリット酸等の水酸基を有する酸も挙げることができる。これら酸成分を2種以上用いてもかまわないが、テトラカルボン酸の残基を1〜40モル%含むことが好ましい。また、アルカリ現像液に対する溶解性や感光性の点から、水酸基を有する酸の残基を50モル%以上含むことが好ましい。
【0373】
R
1は、耐熱性の点から芳香族環を有することが好ましく、炭素数6〜30の3価又は4価の有機基が更に好ましい。
【0374】
一般式(31)中、R
2は炭素数2個以上の2価〜8価の有機基を示し、ジアミンの構造成分を表している。R
2は、耐熱性の点から芳香族環を有することが好ましい。ジアミンの具体的な例としては、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、アミノフェノキシベンゼン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ビス(トリフルオロメチル)ベンチジン、ビス(アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス(アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(アミノ−ヒドロキシ−フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ジアミノジヒドロキシピリミジン、ジアミノジヒドロキシピリジン、ヒドロキシ−ジアミノ−ピリミジン、ジアミノフェノール、ジヒドロキシベンチジン、ジアミノ安息香酸、ジアミノテレフタル酸、これらの芳香族環の水素の少なくとも一部をアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物や、脂肪族のシクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミンを挙げることができる。これらジアミン成分を2種以上用いてもかまわないが、アルカリ現像液に対する溶解性の点から、水酸基を有するジアミンの残基を60モル%以上含むことが好ましい。
【0375】
一般式(31)のR
3及びR
4はそれぞれ独立して、水素又は炭素数1〜20の1価の有機基を示す。アルカリ現像液に対する溶解性と、ポジ型感放射線性組成物1の溶液安定性の点から、R
3及びR
4のそれぞれ10モル%〜90モル%が水素であることが好ましい。更に、R
3及びR
4がそれぞれ炭素数1〜16の1価の炭化水素基を少なくとも1つ以上含有し、その他は水素原子であることがより好ましい。
【0376】
また、一般式(31)のl及びmはカルボキシル基又はエステル基の数を示し、それぞれ独立に0〜2の整数を示す。好ましくは1又は2である。一般式(31)のp及びqはそれぞれ独立に0〜4の整数を示し、p+q>0である。
【0377】
一般式(31)で表される構造を主成分とするポリマーにおける、一般式(31)で表される構成単位の数は、10〜100,000の範囲であることが好ましく、15〜1,000の範囲であることがより好ましく、20〜100の範囲であることが更に好ましい。
【0378】
一般式(31)で表される構成単位の数は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)や光散乱法、X線小角散乱法等で質量平均分子量を測定することで容易に算出できる。繰り返し単位の分子量をM、ポリマーの質量平均分子量をMmとすると、一般式(31)で表される構成単位の数=Mm/Mである。一般式(31)で表される構成単位の数は、最も簡便なポリスチレン換算によるGPC測定を用いて算出する値をいう。
【0379】
更に、例えば、基板との接着性を向上させるために、耐熱性を低下させない範囲でシロキサン構造を有する脂肪族の基を共重合してもよい。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p−アミノ−フェニル)オクタメチルペンタシロキサン等を1〜10モル%共重合したもの等が挙げられる。
【0380】
ポジ型感放射線性組成物1におけるその他のポリマーの含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。ポジ型感放射線性組成物1におけるその他のポリマーの含有量は、アルカリ可溶性樹脂100質量に対して1〜300質量部が好ましく、1〜200質量部がより好ましい。
【0381】
[その他の成分]
ポジ型感放射線性組成物1は、必要に応じて、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、増感剤、硬化促進剤、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤、消泡剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0382】
<感放射線性組成物の調製方法>
本発明に係る感放射線性組成物は、上記の各成分を撹拌機で混合することにより調製される。なお、調製された感放射線性組成物が均一なものとなるよう、メンブランフィルタ等を用いて濾過してもよい。
【0383】
≪パターン製造方法≫
本発明に係るレジストパターンの製造方法は、本発明に係る感放射線性組成物からなる感放射線性組成物膜を基板上に形成する感放射線性組成物膜形成工程と、上記感放射線性組成物膜を位置選択的に露光する露光工程と、露光された上記感放射線性組成物膜を現像する現像工程とを含むものである。
【0384】
まず、感放射線性組成物膜形成工程では、例えば、基板上に、ロールコーター、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いて本発明に係る感放射線性組成物を塗布し、必要に応じて、乾燥により溶媒を除去して、感放射線性組成物膜を形成する。
【0385】
また、感放射線性組成物膜形成工程では、支持フィルム上に設けられた上記感放射線性組成物からなる感放射線性組成物膜(ドライフィルム)を基板に貼り付けることにより、上記基板上に感放射線性組成物膜を形成することもできる。ドライフィルムは、常法により、上記感放射線性組成物を支持フィルム上に塗布した後、乾燥させることで形成することができる。
【0386】
次いで、露光工程では、所定パターンのマスクを介して、感放射線性組成物膜に紫外線、エキシマレーザー光等の放射線を照射し、感放射線性組成物膜を位置選択的に露光する。露光には、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯等の紫外線を発する光源を用いることができる。露光量は感放射線性組成物の組成によっても異なるが、例えば10〜600mJ/cm
2程度が好ましい。
【0387】
次いで、現像工程では、露光後の感放射線性組成物膜を現像液で現像することにより、所定のパターンを形成する。現像方法は特に限定されず、浸漬法、スプレー法等を用いることができる。現像液の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機系のものや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、4級アンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。
【実施例】
【0388】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0389】
<材料>
実施例及び比較例で用いた各成分の詳細は下記の通りである。
・アルカリ可溶性樹脂
カルド樹脂1:固形分55質量%(溶剤:3−メトキシブチルアセテート、質量平均分子量:4,000)
アクリル樹脂1:メタクリル酸(MAA)とメタクリル酸トリシクロデカニル(TCDMA)とメタクリル酸2,3−エポキシシクロヘキシルメチル(ECHM)とメタクリル酸グリシジル(GMA)とをMAA/TCDMA/ECHM/GMA=15/20/40/25(質量比)で混合し、常法により付加重合して得た、下記式で表される構成単位を有するアクリル樹脂(質量平均分子量10,000)
【0390】
【化61】
【0391】
アクリル樹脂2:メタクリル酸ベンジル(BzMA)とメタクリル酸(MAA)とをBzMA/MAA=80/20(質量比)で混合し、常法により付加重合して得たアクリル樹脂(質量平均分子量15,000)
・光重合性モノマー
光重合性モノマー1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)
・光重合開始剤
光重合開始剤1:「NCI−831」(商品名、ADEKA製)
光重合開始剤2:2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾ−ル二量体
光重合開始剤3:「IRGACURE OXE01」(商品名、BASF製)
光重合開始剤4:「IRGACURE OXE02」(商品名、BASF製)
着色剤1:カーボン分散液「CFブラック」(商品名、御国色素社製、固形分25%、溶剤:3−メトキシブチルアセテート)
着色剤2:黒色顔料Experimental Black 582(商品名、BASF製)を、分散剤を用い、定法によってビーズミルで分散させて、顔料の平均粒子径が90〜190nmとなるように製造した顔料分散液(固形分15質量%、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
着色剤3:R254(C.I.ピグメントレッド254)/Y139(C.I.ピグメントイエロー)(混合質量比:85/15)を、分散剤とアクリル樹脂2(対顔料固形分比率:10質量%)とを併用し、定法によってビーズミルで分散させて、顔料の平均粒子径が90〜190nmとなるように製造した顔料分散液(固形分18質量%、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
着色剤4:G36(C.I.ピグメントグリーン36)/Y150(C.I.ピグメントイエロー150)(混合質量比:70/30)から、着色剤3と同様にして、顔料の平均粒子径が90〜190nmとなるように製造した顔料分散液(固形分18質量%、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
着色剤5:B156(C.I.ピグメントブルー156)/V23(C.I.ピグメントバイオレット23)(混合質量比:90/10)から、着色剤3と同様にして、顔料の平均粒子径が90〜190nmとなるように製造した顔料分散液(固形分15質量%、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
・界面活性剤
界面活性剤1:「グラノール440」(商品名、共栄社化学株式会社)
・化合物1〜4:それぞれ下記式(E1)〜(E4)で表される化合物
【0392】
【化62】
【0393】
・その他の有機溶剤
MBA:3−メトキシブチルアセテート
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
EEP:3−エトキシプロピオン酸エチル
EL:乳酸エチル
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
GBL:γ−ブチロラクトン
【0394】
カルド樹脂1は、以下の処方に従って合成したものである。
まず、500ml四つ口フラスコ中に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量235)235g、テトラメチルアンモニウムクロライド110mg、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール100mg、及びアクリル酸72.0gを仕込み、これに25ml/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。次に、溶液が白濁した状態のまま徐々に昇温し、120℃に加熱して完全溶解させた。この際、溶液は次第に透明粘稠になったが、そのまま撹拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱撹拌を続けた。酸価が目標値に達するまで12時間を要した。そして室温まで冷却し、無色透明で固体状の下記構造式(a−4)で表されるビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレートを得た。
【0395】
【化63】
【0396】
次いで、このようにして得られた上記のビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート307.0gに3−メトキシブチルアセテート600gを加えて溶解した後、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物80.5g及び臭化テトラエチルアンモニウム1gを混合し、徐々に昇温して110〜115℃で4時間反応させた。酸無水物基の消失を確認した後、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸38.0gを混合し、90℃で6時間反応させ、カルド樹脂1を得た。酸無水物基の消失はIRスペクトルにより確認した。このカルド樹脂1は、前述の一般式(a−1)で表される化合物に相当する。
【0397】
<透明レジストの作製>
表1に記載の組成及び配合量(単位:質量部)に従って、アルカリ可溶性樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、及び界面活性剤を、表2に示す組成の溶剤と混合して、固形分濃度20質量%のネガ型感放射線性組成物を調製した。
【0398】
[異物]
680mm×880mm×0.7mm厚のガラス基材にネガ型感放射線性組成物をスピン塗布し、塗膜を100℃で120秒間乾燥させて、厚さ1.2μmの感光性樹脂層を形成した。次いで、露光量100mJ/cm
2で、感光性樹脂層を露光した。次いで、KOH0.04質量%と界面活性剤エマルゲンA60(花王製)0.1質量%とを含む水溶液を現像液として用い、23℃にて60秒間シャワー現像を行い、得られたパターン中の異物を自動光学検査装置(タカノ製)でカウントした。結果を表2に示す。
【0399】
[感度]
680mm×880mm×0.7mm厚のガラス基材にネガ型感放射線性組成物をスピン塗布し、塗膜を100℃で120秒間乾燥させて、厚さ1.2μmの感光性樹脂層を形成した。次いで、ラインアンドスペースパターンのマスクを用いて、種々の露光量で、感光性樹脂層を露光した。次いで、KOH0.04質量%と界面活性剤エマルゲンA60(花王製)0.1質量%とを現像液として用い、23℃にて60秒間シャワー現像を行った。得られたラインパターンのCD(Critical Dimension)がマスクのCD+1μmとなる露光量を求め、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
○:100mJ/cm
2未満、△:100〜140mJ/cm
2、×:140mJ/cm
2超
【0400】
[析出物]
−5℃で2週間、ネガ型感放射線性組成物をエージング処理した後、10cm角のガラス基材にスピン塗布し、析出した異物の個数をカウントして、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
○:0〜2個、△:3〜10個、×:11個以上
【0401】
[粘度変化]
40℃で2週間、エージング処理したネガ型感放射線性組成物の粘度を測定し、初期粘度5mPa・sからの変化量を求めて、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
○:変化量が0.5mPa・s未満、△:変化量が0.5〜2mPa・s、×:変化量が2mPa・s超
【0402】
[塗布むら]
680mm×880mm×0.7mm厚のガラス基材にネガ型感放射線性組成物をスピン塗布し、塗膜を100℃で120秒間乾燥させた際に、ピンむらや放射むら等の塗布むらが発生したか否かを目視で確認し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
○:塗布むらは発生しなかった、△:局所的に塗布むらが発生した、×:全面で塗布むらが発生した
【0403】
【表1】
【0404】
【表2】
【0405】
表2から分かるように、上記一般式(1)で表される化合物を含有する実施例のネガ型感放射線性組成物は、感度、保存安定性、及び塗布性に優れており、露光及び現像により、異物の発生が抑制されたパターンを形成することができた。
これに対し、上記一般式(1)で表される化合物を含有しない比較例のネガ型感放射線性組成物は、感度及び保存安定性に劣り、用いる溶剤によっては、更に、塗布性に劣り、及び/又は、露光及び現像により形成されたパターン中でより多くの異物が発生した。
【0406】
<ブラックマトリクス用レジスト、カラーフィルタ用レジスト、及びブラックフォトスペーサ用レジストの作製>
表3に記載の組成及び配合量(単位:質量部)に従って、アルカリ可溶性樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、着色剤、及び界面活性剤を、表4〜8に示す組成の溶剤と混合して(着色剤の配合量は固形分換算)、固形分濃度18質量%のネガ型感放射線性組成物を調製した。
得られたネガ型感放射線性組成物について、上記「透明レジストの作製」と同様にして、異物、感度、粘度変化、及び塗布むらの評価を行った。結果を表4〜8に示す。
【0407】
[凝集物]
40℃で2週間、ネガ型感放射線性組成物をエージング処理した後、10cm角のガラス基材にスピン塗布し、凝集した異物の個数をカウントして、以下の基準で評価した。結果を表4〜8に示す。
○:0〜2個、△:3〜10個、×:11個以上
【0408】
【表3】
【0409】
なお、表3の最上段において、BMは、実施例2−1〜2−11及び比較例2−1〜2−4を表し、Rは、実施例3−1〜3−7及び比較例3−1〜3−4を表し、Gは、実施例4−1〜4−7及び比較例4−1〜4−4を表し、Bは、実施例5−1〜5−7及び比較例5−1〜5−4を表し、BPSは、実施例6−1〜6−7及び比較例6−1〜6−4を表す。
【0410】
【表4】
【0411】
【表5】
【0412】
【表6】
【0413】
【表7】
【0414】
【表8】
【0415】
表4〜8から分かるように、上記一般式(1)で表される化合物を含有する実施例のネガ型感放射線性組成物は、感度、保存安定性、及び塗布性に優れており、露光及び現像により、異物の発生が抑制されたパターンを形成することができた。
これに対し、上記一般式(1)で表される化合物を含有しない比較例のネガ型感放射線性組成物は、保存安定性に劣り、露光及び現像により形成されたパターン中でより多くの異物が発生し、用いる溶剤によっては、更に、塗布性に劣っていた。また、着色剤として遮光剤を含有する比較例のネガ型感放射線性組成物は、感度に劣っていた。
【0416】
<ポジ型感放射線性組成物の調製>
2,4,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン1モルとナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホニルクロリド3モルとのエステル化反応生成物2gとクレゾールノボラック樹脂8gとを、表1に示す組成の溶剤40gに溶解して、ポジ型感放射線性組成物を調製した。このようにして得たポジ型感放射線性組成物について、以下の評価試験を行った。
【0417】
[析出物の有無]
調製したポジ型感放射線性組成物を0.2μmメンブレンフィルターで濾過したものを40℃で静置し、2ヶ月経過時点でのポジ型感放射線性組成物中の析出物の有無について調べた。結果を表9に示す。
【0418】
[感度変化]
3ヶ月後のポジ型感放射線性組成物の感度変化の有無について調べた。即ち、調製直後のポジ型感放射線性組成物を基材に塗布して乾燥させた場合と、調製して3ヶ月経過したポジ型感放射線性組成物を基材に塗布して乾燥させた場合の最小露光量(感度)を比較し、全く変化のなかった場合を「○」、感度が低下した場合を「×」とした。結果を表9に示す。
【0419】
[断面形状]
調製したポジ型感放射線性組成物をガラス基板上にスリットコートし、ホットプレートで90℃、90秒間乾燥して膜厚1.3μmのレジスト膜を形成し、この膜にステッパーを用いて、所定のマスクを介して露光した後、ホットプレート上で110℃、90秒間加熱し、ついで2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)で現像し、30秒間水洗・乾燥して得られたレジストパターンの断面形状を観察し、以下の基準で評価した。結果を表9に示す。なお、アンダーカットとは、レジストパターンの断面において、ガラス基板と接触するレジストパターン最下部の幅がレジストパターン最上部の幅よりも狭くなっていることをいう。
○:ガラス基板とレジストパターンとの接触部分にアンダーカットが生じていない。
×:ガラス基板とレジストパターンとの接触部分にアンダーカットが生じている。
【0420】
[塗布状態]
調製したポジ型感放射線性組成物をガラス基板上にスリットコートし、ホットプレートで90℃、90秒間乾燥したものの膜厚を測定し、面内で均一に塗布されている場合を「良好」、面内で均一に塗布されていないものを「不良」とした。結果を表9に示す。
【0421】
【表9】
【0422】
表9から分かるように、上記一般式(1)で表される化合物を含有する実施例のポジ型感放射線性組成物は、保存安定性、現像性、及び塗布性に優れていた。
これに対し、上記一般式(1)で表される化合物を含有しない比較例のポジ型感放射線性組成物は、保存安定性、現像性、及び塗布性に劣っていた。
【0423】
<ポリアミック酸含有ネガ型感放射線性樹脂組成物の調製>
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却機、窒素ガス導入管を備えた容量5Lのセパラブルフラスコに、テトラカルボン酸二無水物であるピロメリット酸二無水物(PMDA)654.4gと、ジアミンである4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)672.8gと、表10に示す組成の溶剤とを投入した。窒素ガス導入管よりフラスコ内に窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気とした。次いで、フラスコの内容物を撹拌しながら、50℃で20時間、上記テトラカルボン酸二無水物と上記ジアミンとを反応させて、ポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液に、感光性成分である「IRGACURE OXE02」(商品名、BASF製、オキシムエステル化合物)278gを添加し撹拌して、固形分濃度30質量%のネガ型感放射線性樹脂組成物を調製した。
得られたネガ型感放射線性樹脂組成物について、「透明レジストの作製」と同様にして、異物、粘度変化、及び塗布むらの評価を行った。結果を表10に示す。
【0424】
【表10】
【0425】
表10から分かるように、上記一般式(1)で表される化合物を含有する実施例のネガ型感放射線性樹脂組成物は、保存安定性及び塗布性に優れており、露光及び現像により、異物の発生が抑制されたパターンを形成することができた。
これに対し、上記一般式(1)で表される化合物を含有しない比較例のネガ型感放射線性樹脂組成物は、保存安定性及び塗布性が劣っており、露光及び現像により形成されたパターン中でより多くの異物が発生した。
【0426】
<ポリベンゾオキサゾール前駆体含有ネガ型感放射線性樹脂組成物の調製>
回転子を入れた三角フラスコに、芳香族ジアミンジオールである2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン2mmolと、表11に示す組成の溶剤1mLとを加えた後、マグネッチックスターラーを用いてフラスコの内容物5分間撹拌した。その後、ジカルボニル化合物であるイソフタルアルデヒド2mmolをフラスコ内に入れ、窒素雰囲気下でフラスコの内容物を3時間還流させて反応を行った。次いで、減圧蒸留にて、反応液を脱水し、ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液を得た。
得られたポリベンゾオキサゾール前駆体溶液に、感光性成分である「IRGACURE OXE02」(商品名、BASF製、オキシムエステル化合物)0.5mmolを添加し撹拌して、固形分濃度30質量%のネガ型感放射線性樹脂組成物を調製した。
得られたネガ型感放射線性樹脂組成物について、「透明レジストの作製」と同様にして、異物、粘度変化、及び塗布むらの評価を行った。結果を表11に示す。
【0427】
【表11】
【0428】
表11から分かるように、上記一般式(1)で表される化合物を含有する実施例のネガ型感放射線性樹脂組成物は、保存安定性及び塗布性に優れており、露光及び現像により、異物の発生が抑制されたパターンを形成することができた。
これに対し、上記一般式(1)で表される化合物を含有しない比較例のネガ型感放射線性樹脂組成物は、保存安定性及び塗布性が劣っており、露光及び現像により形成されたパターン中でより多くの異物が発生した。
【0429】
<ポリアミック酸含有ポジ型感放射線性樹脂組成物の調製1>
[ヒドロキシル基含有酸無水物(a)の合成]
窒素気流下、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHF)18.3g(0.05mol)とアリルグリシジルエーテル34.2g(0.3mol)をGBL100gに溶解させ、−10℃に冷却した。ここにGBL50gに溶解させた無水トリメリット酸クロリド22.1g(0.11mol)を滴下した。このとき反応液の温度が0℃を越えないように滴下速度を調整した。滴下終了後、0℃で5時間撹拌した。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、トルエン1Lに投入して、下記式で表されるヒドロキシル基含有酸無水物(a)を得た。
【0430】
【化64】
【0431】
[ポリマーAの合成]
窒素気流下、4,4’−ジアミノフェニルエーテル4.40g(0.022mol)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005mol)をNMP50gに溶解させた。ここに合成例1で得られたヒドロキシル基含有酸無水物(a)21.4g(0.030モル)を加えて、20℃で1時間反応させ、次いで40℃で2時間反応させた。その後、4−アミノフェノール0.65g(0.006mol)を加え、更に40℃で45分間反応させた。その後、N、N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール7.14g(0.06mol)をNMP5gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、40℃で3時間撹拌した。反応終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を45℃の真空乾燥機で80時間乾燥し、ポリイミド前駆体であるポリマーAを得た。GPCにより、ポリマーAの質量平均分子量を測定し、上記一般式(31)で表される構成単位の数が10〜500の範囲内であることを確認した。
【0432】
[ノボラック樹脂Aの合成]
窒素気流下、m−クレゾール70.2g(0.65mol)、p−クレゾール37.8g(0.35mol)、37重量%ホルムアルデヒド水溶液75.5g(ホルムアルデヒド0.93mol)、シュウ酸二水和物0.63g(0.005mol)、メチルイソブチルケトン264gを仕込んだ後、油浴中に浸し、反応液を還流させながら、4時間重縮合反応を行った。その後、油浴の温度を3時間かけて昇温し、その後、フラスコ内を減圧し、揮発分を除去し、溶解している樹脂を室温まで冷却して、ノボラック樹脂Aのポリマー固体を得た。GPCによると、ノボラック樹脂Aの質量平均分子量は4,000であった。
【0433】
[組成物の調製]
ポリマーAの固体6g、ノボラック樹脂A4g、下記式で表されるキノンジアジド化合物A2g、HMOM−TPHAP(商品名、本州化学工業(株)製)6.0g、BIR−PC(商品名、旭有機材工業(株)製)1g、ビニルトリメトキシシラン0.3gを測りとり、それらを表12に示す組成の溶剤に溶解させて、固形分濃度30質量%のポジ型感放射線性樹脂組成物を得た。
得られたポジ型感放射線性樹脂組成物について、「透明レジストの作製」と同様にして、異物、粘度変化、及び塗布むらの評価を行った。結果を表12に示す。
【0434】
【化65】
[上記式中、DはH又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基であり、Dの1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基による平均エステル化率は59.9%である。なお、分子によりDの置換数や置換位置にばらつきがあるため、上記の通り、Dが1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基である平均割合(平均エステル化率(%))を示す。以下、同じ。]
【0435】
【表12】
【0436】
表12から分かるように、上記一般式(1)で表される化合物を含有する実施例のポジ型感放射線性樹脂組成物は、保存安定性及び塗布性に優れており、露光及び現像により、異物の発生が抑制されたパターンを形成することができた。
これに対し、上記一般式(1)で表される化合物を含有しない比較例のポジ型感放射線性樹脂組成物は、保存安定性及び塗布性が劣っており、露光及び現像により形成されたパターン中でより多くの異物が発生した。
【0437】
<ポリアミック酸含有ポジ型感放射線性樹脂組成物の調製2>
ポリマーAの固体6g、ノボラック樹脂A4g、下記式で表されるキノンジアジド化合物B2g、HMOM−TPHAP(商品名、本州化学工業(株)製)6.0g、BIR−PC(商品名、旭有機材工業(株)製)1g、ビニルトリメトキシシラン0.3gを測りとり、それらを表13に示す組成の溶剤に溶解させて、固形分濃度30質量%のポジ型感放射線性樹脂組成物を得た。なお、ポリマーA及びノボラック樹脂Aは、「ポリアミック酸含有ポジ型感放射線性樹脂組成物の調製1」で得たものである。
得られたポジ型感放射線性樹脂組成物について、「透明レジストの作製」と同様にして、異物、粘度変化、及び塗布むらの評価を行った。結果を表13に示す。
【0438】
【化66】
[上記式中、DはH又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基であり、Dの1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基による平均エステル化率は54.7%である。]
【0439】
【表13】
【0440】
表13から分かるように、上記一般式(1)で表される化合物を含有する実施例のポジ型感放射線性樹脂組成物は、保存安定性及び塗布性に優れており、露光及び現像により、異物の発生が抑制されたパターンを形成することができた。
これに対し、上記一般式(1)で表される化合物を含有しない比較例のポジ型感放射線性樹脂組成物は、保存安定性及び塗布性が劣っており、露光及び現像により形成されたパターン中でより多くの異物が発生した。