【実施例】
【0015】
第1の例において、本発明による無機コーティング組成物を、83.00重量%の脱イオン(DI)水を1.00重量%のV
2O
5および16.00重量%のBacote 20(登録商標)と混ぜ合わせることで調製した。この濃度のBacote 20(登録商標)は、3.2重量%のZrO
2を組成物に提供する。組成物のpHは、ほぼ9.5であった。既知のドローワイヤー技術を使用して、ACT HDGパネルAPR 31893およびU.S.Steel社(USS)ガルバリウム(登録商標)パネルとして知られる一連の熱浸漬亜鉛めっき(HDG;hot−dipped galvanized)パネルに無機コーティングを塗工し、1平方フィート当たり200ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり200ミリグラム)のコーティング重量を塗工した。ガルバリウム(登録商標)は、55%アルミニウム−亜鉛合金被覆鋼板の商標名である。塗工後直ちに、試験パネル上で210°F(98℃)のピーク金属温度(PMT;Peak Metal Temperature)まで、その場でコーティングを乾燥した。次いで、それぞれの時点において複数のパネルで、ASTM B117−03を使用して、中性塩水噴霧(NSS;Neutral Salt Spray)腐食試験を行った。この試験において、HDGまたはUSSガルバリウム(登録商標)のいずれかのコーティングされていないパネルは、NSS試験において24時間で100%の腐食を示した。それぞれの処理されたパネルに対する平均パーセント腐食の試験結果を下の表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
本結果は、本発明に従って調製されたコーティング組成物の有用性を示している。本発明のコーティング組成物はUSSガルバリウム(登録商標)鋼において非常に効果的であり、示される通り、1008時間まで顕著な腐食保護を付与した。これらの結果は、24時間以内に100%腐食したコーティングされていないUSSガルバリウム(登録商標)とは劇的に異なる。また、HDG基体を使用した場合も結果は顕著であったが、同様に非常に良好というわけではなかった。
【0018】
上で議論した通り、本発明のコーティング組成物のもう1つの利点は、複雑で多段階の加工または塗工を必要とせずに、腐食保護を更に増強するために、有機樹脂の添加をコーティング組成物が容易に受け入れることができることである。望ましい樹脂をコーティング組成物に単に添加するだけでよい。無機コーティング組成物を有機樹脂と混ぜ合わせる第1の例では、有機樹脂としてポリ二塩化ビニル(PVDC)を使用した。使用したPVDC樹脂はNoveon XPD−2903であった。一連のコーティング組成物を、下の表2に記載される通りに調製した。
【0019】
【表2】
【0020】
次いで、1平方フィート当たり200ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり200ミリグラム)のコーティング重量で、その場で乾燥する上記の方法を使用して、一連のHDGパネルおよび一連のUSSガルバリウム(登録商標)パネル上に、それぞれの配合物をコーティングし、210°F(98℃)のPMTまで乾燥した。一連の対照HDGおよびUSSガルバリウム(登録商標)パネルは、Henkel社より入手可能な市販のクロムを含有しないコーティングGranocoat(登録商標)342(商標)(G342)を使用して作製した。G342を、製造者の使用説明書通りに塗工した。第1の試験において、パネルに上記の通りNSS試験を行い、それぞれの時点で複数のパネルをパーセント腐食について評価し、平均値を計算した。結果を下の表3に示すが、表中、略称Gal.はUSSガルバリウム(登録商標)パネルを示す。
【0021】
【表3】
【0022】
本結果は、本発明のコーティング組成物によって腐食保護が増強されることを決定的に示している。USSガルバリウム(登録商標)パネルについてのデータを参照すると、168時間までの試験で、G342対照と比較して、全てのパネルにおいて腐食保護が向上していること、および、試験時間が長くなると、その差が増加することが先ず分かる。504時間の試験後、本発明によってコーティングされたパネルは、対照のG342パネルよりも18〜147倍少ない腐食を有する。840時間まででは、対照のG342パネルは、本発明によってコーティングされたパネルの28〜76倍の腐食を有する。1200時間の試験後においてさえ、本発明によってコーティングされたパネルは、3〜11%の腐食を有するのみである。これらの結果は劇的で、本発明によって調製されたコーティング組成物の能力を示す。また、本結果は、ポリ二塩化ビニルの濃度を10%から30%に増加しても、最終時点において腐食保護の程度に対する効果は小さいことを示す。次にHDGパネルのデータを見ると、約504時間の時点までにおいて、G342と比べ、本発明によるコーティングが増強された保護を付与することが分かる。HDGパネルの結果は、USSガルバリウム(登録商標)パネルほど劇的ではない。また、ポリ二塩化ビニルの濃度を増加させることの効果は、USSガルバリウム(登録商標)パネルで見られたものと反対のようである。HDGパネルにおいては、ポリ二塩化ビニルの濃度が高くなるほど、腐食からの保護においてコーティングは劣化するようである。
【0023】
次に、1平方フィート当たり200ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり200ミリグラム)で、表2の配合物を使用して、上記の通りUSSガルバリウム(登録商標)またはHDGの一連の腐食試験パネルをコーティングし、パネル上で210°F(98℃)のPMTまで、その場で乾燥した。次いで、湿潤環境においてパネルをそれぞれ互い接触させてシミュレートするために、積み重ね試験を行った。積み重ね試験は、第1のパネルのコーティング側に脱イオン水を噴霧し、第2のパネルのコーティング側を第1のパネルのコーティング側に置き、次いで、第1および第2のパネルを一緒に締め付けることで行った。次いで、100°F(38℃)および100%湿度の湿度試験チャンバー内に締め付けられたパネルを設置する。種々の時点後、それぞれの条件の複数のパネルを取り外し、それぞれのパーセント腐食を決定し、結果を平均する。平均した結果を下の表4に示す。
【0024】
【表4】
【0025】
本結果は、10および20%の樹脂濃度について、本発明によるコーティング組成物は、G342コーティングよりも全ての時点において、時点に依存して16〜2.2倍の倍率で非常に良好に機能したことを示す。しかしながら、1200時間後、30%PVDCのコーティングは対照G342パネルほど良好に機能せず、2016時間までで、コーティングは対照パネルの約2倍の腐食を示した。この違いの理由は不明である。HDGパネルについては、本結果は、対照パネルと本発明によるコーティングとの間に違いは殆どないことを示す。504時間まで、全てのパネルは顕著な腐食保護を示す。それ以降では、20%および30%PVDCのコーティング組成物は、G342パネル、および10%PVDCパネルよりも不良に機能した。
【0026】
次に、1平方フィート当たり200ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり200ミリグラム)で、表2の配合物を使用して、上記の通りUSSガルバリウム(登録商標)またはHDGの一連の腐食試験パネルをコーティングし、パネル上で210°F(98℃)のPMTまで、その場で乾燥した。次いで、ASTM D4585を使用して、パネルのクリーブランド湿度試験(CHT)を行った。結果を下の表5に示す。
【0027】
【表5】
【0028】
USSガルバリウム(登録商標)の結果は、10%PVDCにおける1200時間(これは対照G342と同等である。)を除いて、本発明のコーティング組成物は対照G342コーティングよりも非常に良好に機能することを示す。また、本結果は、本発明によって調製されたコーティングの腐食保護において、PVDCの量を増加させることが非常に良い効果を有することを明瞭に示している。本発明によるコーティングを有するHDGパネルについても同様の結果が見られ、G342と比べて腐食保護が顕著に増強している。加えて、PVDCの量を増加させることで腐食保護が増強されるようである。
【0029】
次に、1平方フィート当たり200ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり200ミリグラム)で、表2の配合物を使用して、上記の通りUSSガルバリウム(登録商標)またはHDGの一連の腐食試験パネルをコーティングし、パネル上で210°F(98℃)のPMTまで、その場で乾燥した。次いで、一連のパネルに対し、バトラー浸水(BWI)試験を行った。それぞれの試験パネルを、パネルの下に1/2インチの水、およびパネルの上に3/4インチの水が存在するように、蒸留水のタンク中で支持、浸漬する。次いで、100%湿度および100°F(38℃)に設定された湿度チャンバー内に、パネルを入れたタンクを設置する。選択された時点においてパネルを取り外し、パーセント腐食を評価する。結果を下の表6に示す。
【0030】
【表6】
【0031】
USSガルバリウム(登録商標)の結果は、本発明によって調製されたコーティングが、対照G342コーティングより顕著に優れた腐食保護を付与することを示す。増強された保護は、G342と比較して、耐食性がほぼ2倍〜10倍に増加している。腐食保護におけるPVDC濃度の効果は複雑および非線形であり、最も高い濃度が10〜20重量%の濃度よりも効果が低い。また、HDGパネルも、G342と比較して、本発明によるコーティングの利益を示す。本発明によってコーティングされたパネルの全てが、G342と比較して増強された腐食保護を示した。また、PVDC濃度の効果は複雑であり、20%PVDCで最良の結果を示すようであった。
【0032】
上で示される通り、本発明のコーティングの利点は、複雑で多段階の加工または塗工を必要とせずに、腐食保護を更に増強するために、有機樹脂の添加をコーティングが容易に受け入れることができることである。望ましい樹脂をコーティング組成物に単に添加するだけでよい。無機コーティングを有機樹脂と混ぜ合わせる第2の例では、有機樹脂として、Carboset(登録商標)CR−760という名の熱可塑性スチレン−アクリルコポリマーエマルジョンを使用した。Carboset(登録商標)CR−760は、オハイオ州クリーブランド市のLubrizol Advanced Materials社より入手可能である。Carboset(登録商標)CR−760は、ほぼ42重量%の固形分を含む。追加のコーティングでは、Carboset(登録商標)CR−760を、更に、上で使用したPVDCと混ぜ合わせた。また、追加の配合物では、コーティング組成物の成形性を増大させるために、コーティング組成物にカルナバワックスエマルジョンも含有させた。使用したカルナバワックスエマルジョンは、オハイオ州シンシナティ市のMichelman社より入手可能なMichem(登録商標)Lube 160であった。一連のコーティング組成物を下の表7に記載される通りに調製した。次いで、1平方フィート当たり175〜180ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり175〜180ミリグラム)のコーティング重量で、その場で乾燥する上記の方法を使用して、一連のHDGパネルおよび一連のUSSガルバリウム(登録商標)パネル上に、それぞれの配合物をコーティングし、210°F(98℃)のPMTまで乾燥した。第1の腐食試験において、パネルに上記の通りNSS試験を行い、それぞれの時点で複数のパネルをパーセント腐食について評価した。NSS試験のそれぞれの時点における平均の結果を下の表8に示す。配合物162Bについては、NSS用のサンプルを実施しなかった。追加のパネルを使用して、それぞれ上記の通りに行ったバトラー浸水試験、クリーブランド湿度試験、および、積み重ね試験を使用してコーティングを評価した。これらの試験の結果を、それぞれ、下の表9、10および11に示す。
【0033】
【表7】
【0034】
【表8】
【0035】
USSガルバリウム(登録商標)の結果は、本発明によるコーティングが全て、上の表3で報告されている結果におけるG342コーティングよりも効果的であったことを示す。Carboset(登録商標)CR760のみのコーティングは、2016時間を超えても非常に効果的であった。配合物162Aを162Bと比較すると、この配合物にカルナバワックスを添加することで、腐食保護コーティングとしてのコーティング効果が低下するようであることが示される。また、本結果は、Carboset(登録商標)CR760をPVDCと混ぜ合わせると、Carboset(登録商標)CR760の単独使用と比べて、コーティング組成物の効果は低下するが、しかしながら、ブレンドにカルナバワックスを添加するとブレンドの効果が増大するようであることを示す。HDGサンプルでは非常に効果的に見えるコーティングはなく、カルナバワックスまたはPVDCが存在しても、Carboset(登録商標)CR760単独の性能には影響しないようである。
【0036】
【表9】
【0037】
USSガルバリウム(登録商標)パネルの結果は、Carboset(登録商標)CR760とPVDCのブレンドを除いて、全てのコーティングが表6のG342よりも良好に機能したことを示す。BWI試験において、Carboset(登録商標)CR760単独の性能に悪影響はなかった。NSS試験とは対照的に、Carboset(登録商標)CR760をPVDCおよびカルナバワックスと組み合わせたものが、BWI試験においては最良に機能した。再び、NSS試験結果において見られる通り、Carboset(登録商標)CR760をPVDCと混ぜ合わせる場合、カルナバワックスを含むことは利益がある。また、HDGパネルの結果も、本発明によって調製されたコーティングの全てが表6のG342よりも良好に機能したことを示す。カルナバワックス、PVDC、または、カルナバワックスおよびPVDCの添加と比べて、Carboset(登録商標)CR760単独で顕著に良好な性能が得られた。
【0038】
【表10】
【0039】
USSガルバリウム(登録商標)およびHDGの両方の結果は、クリーブランド湿度試験において、本発明によるコーティングの全てが、基体に関係なく、等しく良好に機能したこと、および、表5の対照G342で見られる結果よりも全て良好に機能したことを示す。
【0040】
【表11】
【0041】
USSガルバリウム(登録商標)の結果は、積み重ね試験において、本発明によるコーティングの全てが等しく良好に機能したこと、および、表4の対照G342よりも良好に機能したことを示す。HDGの結果は異なり、Carboset(登録商標)CR760単独が最も良好に機能し、他のコーティングの性能はそれより悪いようであった。表4のG342よりも非常に良好に機能するコーティングはなかった。
【0042】
別の一連の試験において、コーティング中の炭酸ジルコニウムアンモニウムの量を変化させて、コーティング組成物中のZrO
2の量を変化させ、腐食保護における効果を決定した。コーティング配合物は下の表12に示されている。加えて、上記の通りにG342で対照パネルをコーティングした。上記の通り、1平方フィート当たり、ほぼ200ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり200ミリグラム)のコーティング重量で、コーティングをUSSガルバリウム(登録商標)パネルに塗工し、210°F(98℃)のPMTまで、その場で乾燥した。次いで、NSS、バトラー浸水試験、および、積み重ね試験においてパネルを試験し、結果を、それぞれ、下の表13、14および15に示す。
【0043】
【表12】
【0044】
【表13】
【0045】
本結果は、本発明によるコーティングが全て、少なくともG342と同程度に効果的であり、その多くがG342より非常に効果的であったことを示す。また、本結果は、ZrO
2濃度を1.20%から3.2%に増加すると、本発明により調製されたコーティングの効果が劇的に増加したことも示す。
【0046】
【表14】
【0047】
本結果は、再び、本発明によるコーティングの全てが、G342よりも非常に良好に機能することを示す。加えて、本結果は、NSS試験ほど劇的ではないが、ZrO
2の量を増加すると、腐食保護におけるコーティングの効果が増加することを示す。
【0048】
【表15】
【0049】
また、本結果は、本発明によるコーティングが、対照G342よりも良好に機能することも示すが、しかしながら、ZrO
2を増加しても、他の試験で見られたのと同様の効果の増加はなかった。
【0050】
次の一連の実験において、2種類の追加の樹脂3272−096および3272−103を下で詳細に示す通りに調製し、次いで、これらの樹脂を使用して、本発明によるコーティングを下の表16に詳細に示す通りに作製した。
【0051】
<樹脂3272−096>
樹脂3272−096は、モノマーとして、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、n−ブチルメタクリレート、スチレン、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアリレート、および、ADD APT PolySurf HP(これは、メタクリレート化されたモノおよびジ−リン酸エステルの混合物である。)を含む。樹脂中の全モノマーの分布は以下の通りであった:20.00%AAEM、12.50%n−ブチルメタクリレート、15.00%スチレン、27.50%メチルメタクリレート、20.00%2−エチルヘキシルアリレート、および、5.00%ADD APT PolySurf HP。80℃の設定温度で加熱し、撹拌しながらN
2下において樹脂重合反応を行った。反応容器への最初の充填物は、241.10グラムのDI水、2.62グラムのラウリル硫酸アンモニウム(Rhodapon L−22 EP)、および、2.39グラムの硫酸第一鉄0.5%FeSO
47H
2O(3ppm)であった。この最初の充填物を時間ゼロの時点で反応容器へ入れ、設定温度への加熱を開始した。30分後、5.73グラムのDI水、0.90グラムのノニオン性界面活性剤(Tergitol 15−S−20)、0.13グラムのラウリル硫酸アンモニウム(Rhodapon L−22 EP)、2.15グラムのn−ブチルメタクリレート、2.57グラムのスチレン、4.74グラムのメチルメタクリレート、3.48グラムの2−エチルヘキシルアリレート、3.41グラムのアセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、および0.85グラムのADD APT PolySurf HPの組合せを含む反応シードを反応容器に加え、設定温度への加熱を更に15分続けた。次いで、0.32グラムのHOCH
2SO
2Na、4.68グラムのDI水、0.45グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド、および、追加の4.54グラムのDI水を含む最初の開始剤充填物を容器に加え、更に30分、温度を設定温度で維持した。次いで、温度を設定温度で維持しながら3時間にわたって、モノマーおよび開始剤の共供給物を容器に加えた。モノマー共供給物は、106.92グラムのDI水、17.10グラムのTergitol 15−S−20、2.49グラムのRhodapon L−22 EP、40.89グラムのn−ブチルメタクリレート、48.83グラムのスチレン、89.97グラムのメチルメタクリレート、66.10グラムの2−エチルヘキシルアクリレート、64.77グラムのAAEM、および、16.19グラムのADD APT PolySurf HPであった。開始剤共供給物は、0.97グラムのHOCH
2SO
2Na、14.03グラムのDI水、1.39グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド、および、追加の13.61グラムのDI水であった。3時間後、追加充填物を30分にわたって容器に加えた。追加充填物は、0.32グラムのHOCH
2SO
2Na、4.88グラムのDI水、0.46グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド、および、追加の4.54グラムのDI水であった。次いで、1時間30分、設定温度で容器を保持した。次いで、設定温度からの冷却を開始し、温度が38℃となるまで2時間、継続した。次いで、バッファー共供給物を容器に加えた。バッファー共供給物は、5.19グラムの水酸化アンモニウム(28%)および18.48グラムのDI水であった。この樹脂配合物および下に詳細に示す3272−103のための樹脂配合物において、ADD APT PolySurf HPの代わりに使用することのできる他の可能性のあるリン酸エステル含有モノマーは、Radcure社製のEbecryl 168である。Tergitol 15−S−20(これは、2級アルコールエトキシレートである。)の代わりに使用することのできる他のノニオン性界面活性剤安定剤は、15〜18の親水性親油性バランスを有する他のノニオン性安定剤である。これらの安定剤の例としては、Tergitol 15−S−15などの他の2級アルコールエトキシレート;Abex 2515などのエトキシレートの配合物;Emulsogen LCN 118または258などのアルキルポリグリコールエーテル;Genapol T 200およびT 250などの獣脂脂肪族アルコールエトキシレート;Genapol X 158およびX 250などのイソトリデシルアルコールエトキシレート;Rhodasurf BC−840などのトリデシルアルコールエトキシレート;および、Rhoadsurf ON−877などのオレイルアルコールエトキシレートが挙げられる。
【0052】
<樹脂3272−103>
有機コーティング樹脂3272−103を下記の通りに調製した。樹脂は、モノマーとして、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、n−ブチルメタクリレート、スチレン、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアリレート、および、ADD APT PolySurf HP(これは、メタクリレート化されたモノおよびジ−リン酸エステルの混合物である。)を含む。樹脂中の全モノマーの分布は以下の通りであった:20.00%AAEM、12.50%n−ブチルメタクリレート、15.00%スチレン、27.50%メチルメタクリレート、20.00%2−エチルヘキシルアリレート、および、5.00%ADD APT PolySurf HP。80℃の設定温度で加熱し、撹拌しながらN
2下において樹脂重合反応を行った。反応容器への最初の充填物は、286.10グラムのDI水、2.47グラムのRhodapon L−22 EPであった。この最初の充填物を時間ゼロの時点で反応容器へ入れ、設定温度への加熱を開始した。30分後、5.44グラムのDI水、0.85グラムのTergitol 15−S−20、0.12グラムのRhodapon L−22 EP、2.04グラムのn−ブチルメタクリレート、2.44グラムのスチレン、4.49グラムのメチルメタクリレート、3.30グラムの2−エチルヘキシルアリレート、3.24グラムのアセトアセトキシエチルメタクリレート(AAEM)、および0.81グラムのADD APT PolySurf HPの組合せを含む反応シードを反応容器に加え、設定温度への加熱を更に15分続けた。次いで、4.79グラムのDI水、および0.21グラムの(NH
4)
2S
2O
8を含む最初の開始剤充填物を容器に加え、更に30分、温度を80℃で維持した。次いで、温度を設定温度で維持しながら3時間にわたって、モノマーおよび開始剤の共供給物を容器に加えた。モノマー共供給物は、103.36グラムのDI水、16.15グラムのTergitol 15−S−20、2.35グラムのRhodapon L−22 EP、38.81グラムのn−ブチルメタクリレート、46.34グラムのスチレン、85.38グラムのメチルメタクリレート、62.73グラムの2−エチルヘキシルアクリレート、61.47グラムのAAEM、および、15.37グラムのADD APT PolySurf HPであった。開始剤共供給物は、14.36グラムのDI水、および0.64グラムの(NH
4)
2S
2O
8であった。3時間後、追加充填物を30分にわたって容器に加えた。追加充填物は、0.35グラムのアスコルビン酸、4.65グラムのDI水、0.44グラムのtert−ブチルヒドロペルオキシド、追加の4.56グラムのDI水、および、2.39グラムの硫酸第一鉄0.5%FeSO
47H
2O(3ppm)であった。次いで、1時間30分、設定温度で容器を保持した。次いで、冷却を開始し、温度が38℃となるまで2時間、継続した。次いで、バッファー共供給物を容器に加えた。バッファー共供給物は、5.88グラムの水酸化アンモニウム(28%)および18.48グラムのDI水であった。
【0053】
上の樹脂を用いて一連のコーティングを作製し、コーティングに対するアルカリ処理の影響と、コーティングにV
2O
5に加えて還元剤であるシステインを含むことの利点とを検討した。V
+5のための他の還元剤としては、Sn
+2、または、アスコルビン酸、または、チオコハク酸を挙げることができ、または、硫酸バナジルまたはアセチルアセトン酸バナジルからのV
+4で開始することができる。次いで、それぞれのパネルに1平方フィート当たり、ほぼ200ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり200ミリグラム)のコーティング重量で、表16のコーティングをHDGパネルに塗工し、次いで、200°Fまたは300°F(93℃または149℃)のいずれかのPMTまで乾燥し、直接NSS試験を行うか、または、最初にアルカリ性洗浄剤PCl 338で洗浄し、次いでNSS試験を行うかのいずれかとした。PCl 338での前処理後に腐食保護が低下したことは、コーティングがアルカリ性耐性でなかったことを示すであろう。NSS試験の結果を下の表17に示す。
【0054】
【表16】
【0055】
【表17】
【0056】
本結果は、どちらの樹脂にとってもV
2O
5およびシステインの存在が腐食保護能に非常に有益であったことを示す。本発明により調製されるコーティングは、洗浄以外のリン酸塩または他の前処理を必要とせず、露出した金属基体に直接塗工するように設計されている。状況によって要求される任意の所望のコーティング重量でコーティングを塗工することができ、好ましくは、1平方フィート当たり150〜400ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり150〜400ミリグラム)、より好ましくは、1平方フィート当たり175〜300ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり175〜300ミリグラム)、最も好ましくは、1平方フィート当たり175〜250ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり175〜250ミリグラム)のコーティング重量でコーティングを塗工する。当該技術において既知の通り、本発明のコーティングは、その場で乾燥する化成コーティングであり、好ましくは、110〜350°F(43〜177℃)のピーク金属温度、より好ましくは、180〜350°F(82〜177℃)、最も好ましくは、200〜325°F(93〜163℃)のPMTまで乾燥される。
【0057】
別の一連のコーティング組成物を、IVB族およびVB族の両方の元素が必要であることを示すために調製した。最初に、下記の通り、下の表18の成分を使用して、樹脂3340−082を作製した。
【0058】
【表18】
【0059】
撹拌子、凝縮器、熱電対および窒素導入口を備える四口の3リットル(L)フラスコに、構成要素Aを加えた。窒素雰囲気下において内容物を加熱し、80℃で保持した。構成要素B1およびB2を別途に混合し、均一で透明な組成物を形成した。B1およびB2を共に混合し、プレ−エマルジョンBを形成した。5%の量のプレ−エマルジョンBおよび25%の構成要素Cをフラスコに充填し、80℃で保持した。40分後、残りのプレ−エマルジョンBおよび構成要素Cを3時間にわたってフラスコに一定速度で加えた後に、構成要素Hを使用して、フラスコ内に向けプレ−エマルジョン追加ポンプを洗い流した。フラスコの内容物を70℃まで冷却し、その時点で、構成要素Fをフラスコに加えた。30分間にわたって構成要素DおよびEをフラスコに加えた後に、1時間、70℃で混合物を保持した。次いで、混合物を40℃まで冷却し、その時点で構成要素Gを加えた。得られたラテックスは、37.2%の固形分、6.9のpH、および、123ナノメートルの粒径を有していた。次いで、ジヒドロピリジン官能体を樹脂に加え、300重量部の樹脂3340−082を0.79重量部のプロピオンアルデヒドと混ぜ合わせることにより樹脂3340−83を形成した。混合物を容器内に密封し、24時間、40℃のオーブン中に置き、それにより樹脂3340−083を形成した。一連のコーティング組成物を、下の表19に記載される通りに調製した。コーティング組成物164Qは、唯一、IVB族およびVB族の元素を含み、本発明に従って調製されたものである。コーティング組成物164Rおよび164Sは、IVB族およびVB族元素をそれぞれ含まない。次いで、1平方フィート当たり、ほぼ200ミリグラム(929.03平方センチメートル当たり200ミリグラム)のコーティング密度で、HDGまたはガルバリウム(Gal)パネルのいずれかに、それぞれのコーティング組成物を塗工し、93℃のピーク金属温度まで乾燥した。次いで、上記の通り、それぞれの条件の複数のパネルをNSS試験で試験し、それぞれの時点および条件の複数のパネルにの平均の結果を下の表20に示す。
【0060】
【表19】
【0061】
【表20】
【0062】
表20に示す結果は、IVB族およびVB族元素の両方を組合せた利点を明瞭に示している。一方のみの元素が存在するコーティング組成物は最小の腐食保護を示す。
【0063】
別の一実施形態において、本発明に従って調製されるコーティング組成物は、少なくとも1種類の周期律表IVB族遷移金属元素、即ち、ジルコニウム、チタンおよびハフニウムの供給源と、少なくとも1種類の周期律表VB族元素またはクロムの供給源のいずれかを含む無機部分を含む。コーティング組成物は、更に、有機ポリマーを含む。この実施形態において、好ましくは、コーティング組成物は、乾燥固体コーティングの総重量をベースとして9重量%〜73重量%のIVB族元素を含む。好ましいIVB族元素はジルコニウムであり、好ましくは、炭酸ジルコニウムアンモニウムとして供給される。この実施形態において、コーティング組成物は、また、3酸化クロムなどのクロム供給源、または、バナジウム、ニオブまたはタンタルなどのVB族元素のいずれかも含む。また、この実施形態によるコーティング組成物は、その場で乾燥する化成コーティングである。また、コーティングは少なくとも1種類の広範な種々の樹脂有機ポリマーも含み、これはコーティング組成物に直接加えることができ、よって、多段階のコーティングプロセスを不要にできる。好ましくは、乾燥固体コーティングの総重量をベースとする有機ポリマー活性固体の重量パーセンテージは1%〜75%、より好ましくは25%〜73%、最も好ましくは40%〜70%である。含むことができる樹脂有機ポリマーは種々のタイプのものであり、単に例としてではあるが、エポキシ樹脂、ポリ二塩化ビニル、アクリル系樹脂、メタクリレート系樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン分散系、および、ポリウレタン分散系ハイブリッドが挙げられる。これらの樹脂ポリマーの例として、Carboset(登録商標)CR760、Hauthane HD−2120、Hauthane L−2989、Maincote(商標)PR−15、Maincote(商標)PR−71、Avanse MV−100、Rhoplex AC 337N、および、Alberdingk−Boley LV−51136およびM−2959が挙げられる。また、本発明のコーティングは、システイン、Sn
2+、アスコルビン酸、または、チオコハク酸、およびそれらの酸化生成物などの還元剤の添加を受け入れることもできる。また、任意成分として、コーティング組成物は、コーティングされた基体の成形性を助けるワックスなどの加工助剤を含むこともできる。これらの任意成分の添加は、上で記載した。化成コーティングであり、この用語が当該技術において知られている通り、コーティングプロセスの間にコーティング組成物中の成分が金属基体と反応し、その場で最終的な乾燥したコーティングを生成する。
【0064】
本発明に従って調製されるコーティング組成物は、その場で乾燥されて特有のモルホロジーを有するコーティングを生成する。その場で乾燥されて生成されるコーティングモルホロジーは2つの相を有し、意外なことに、コーティング組成物の無機部分は連続相であり、一方で、不連続相が有機ポリマーを含む。これは従来のコーティングの逆であり、予想外のことである。本発明に従って調製される一連のクロム系コーティング組成物および一連の比較用のコーティング組成物を、下の表21に示す配合に従って調製した。列挙される順序で成分を加え、混合して、コーティング組成物を調製した。下記の実験においては、使用に先立ち、全ての組成物を混合後24時間エージングした。Bacote(登録商標)20は、これらの例においてIVB族元素の供給源として機能する。乾燥固体コーティングの総重量をベースとする有機ポリマー活性固体の重量パーセンテージは、好ましくは1%〜75%、より好ましくは25%〜73%、最も好ましくは40%〜70%である。有用な有機ポリマーは、前の例において上に記載されている。この例における全ての組成物の有機ポリマー部分は、スチレン−アクリル系コポリマーラテックスCarboset(登録商標)CR760であった。Malvern Instruments社より入手可能なZetasizer 3000HSAによって測定されるレーザー光散乱を使用して、ラテックスの粒径を測定した。62〜116ナノメートルの範囲内で、平均粒径は、111ナノメートルであった。組成物21Aおよび21Bの活性コーティング固体をベースとするクロム含有量は、組成物21Cおよび21Dのクロム含有量と同一であった。比較例である組成物21Bおよび21Dにおいては、Bacote(登録商標)20を使用しなかったが、しかしながら、アンモニアを使用して、計算されるBacote(登録商標)20からのアンモニウム含有量を添加した。組成物21Aおよび21Bは、6価のクロムに特徴的な色と一致する鮮黄色であった。対照的に、還元剤であるアスコルビン酸を含む組成物21Cおよび21Dは、大部分の3価クロム組成物に特徴的な色と一致する緑褐色であった。例21Aは、乾燥コーティング固体の総重量をベースとして44%の重量パーセンテージのラテックスポリマー活性固体を有する一方で、例21Cは、それは41%であった。乾燥コーティング固体の総重量をベースとするIVB族元素の重量パーセンテージは、例21Aについては37.00%であり、例21Cについては34.50%であった。
【0065】
【表21】
【0066】
Rohm and Haas社製の別のアクリル系ラテックスポリマーAvanse(登録商標)MV100を有機ポリマーとして使用し、別の一連のコーティングを調製した。再び、表22の順序で成分を混合して組成物を調製し、次いで、それぞれを、使用に先立ち、24時間エージングした。
【0067】
この例における全ての組成物の有機ポリマー部分は、ラテックスポリマーAvanse(登録商標)MV100であった。Malvern Instruments社より入手可能なZetasizer 3000HSAによって測定されるレーザー光散乱を使用して、ラテックスの粒径を測定した。90〜207ナノメートルの範囲内で、平均粒径は、137ナノメートルであった。組成物22Aおよび22Bの活性コーティング固体をベースとするクロム含有量は、組成物22Cおよび22Dのクロム含有量と同一であった。比較例である組成物22Bおよび22Dにおいては、Bacote(登録商標)20を使用しなかったが、しかしながら、アンモニアを使用して、計算されるBacote(登録商標)20からのアンモニウム含有量を添加した。組成物22Aおよび22Bは、6価のクロムに特徴的な色と一致する鮮黄色であった。対照的に、還元剤であるアスコルビン酸を含む組成物22Cおよび22Dは、大部分の3価クロム組成物に特徴的な色と一致する緑褐色であった。例22Eは、本発明により調製される非クロム系の例である。この例は、無機部分が周期律表IVB族の少なくとも1種類の元素と、周期律表VB族の少なくとも1種類の元素とを含む実施形態である。それは、有機ポリマーとして、Avanse(登録商標)MV100を含む。例22Aは、乾燥コーティング固体の総重量をベースとして67%の重量パーセンテージのラテックスポリマー活性固体を有する一方で、例22Cは、それは65%であり、22Eは、それは65.9%であった。乾燥コーティング固体の総重量をベースとするIVB族元素の重量パーセンテージは、例22Aについては21.40%であり、例22Cについては20.50%であり、例22Eについては20.80%であった。
【0068】
【表22】
【0069】
比較例23として、Henkel社より入手可能な市販の6価クロム系有機コーティング溶液P3000Bを使用した。
【0070】
例24においては、洗浄されたアルミニウムパネルにワイヤードローバーによってコーティング組成物21Aを塗工し、93℃のPMTまで乾燥し、150±25ミリグラム/平方フィートの乾燥コーティング重量を得た。次いで、コーティングされた金属に、断面の切断を容易にするために、金の薄層および白金の薄層を塗工した。次いで、集束イオンビームを使用して金属の断面を切断し、コーティングされた基体の断面の非常に薄い薄片を作製した。次いで、暗視野走査透過型電子顕微鏡法によって、断面の特性解析を行った。この技術より得られる画像では、本発明に従って調製されるコーティング組成物の新規なモルホロジーが示され、それらは
図1Aおよび1Bに示されている。この技術では、画像内の領域の暗さに対する相対的な明るさが、構成要素の平均原子番号(Z)に関して、組成を反映している。明るい領域は、より高い平均Zの構成要素の存在を示し、一方、より暗い領域は、より低い平均Zの構成要素を示す。エネルギー分散型X線分析を行い、これらの領域内における元素組成を検証した。当該分析によって、連続相は、クロム、ジルコニウムおよび酸素を含む無機相であることが示された。当該技術は、連続および分散材料相の両者(これらは、平均Zが著しく異なる。)を含有する乾燥コーティングの薄い薄片を通過する透過に関するものである。その結果、3次元の画像が得られ、本発明の新規なモルホロジーが明らかとなる。塗工された例21Aのコーティングの乾燥後、炭酸ジルコニウムアンモニウムであるBacote(登録商標)20からの残渣が明るい領域を構成する。主に炭素および酸素をベースとするアクリル系ラテックスポリマーは、より暗い領域によって示される。薄片内の異なる深さで重なっているポリマーの球体は、画像の最も暗い領域になる。示される通り、分離した分散ポリマー球体が内部に存在する連続無機マトリクスを有するコーティングが本発明によって提供されることが観察される。画像内の離散ポリマー球体の大きさは、例21のアクリル系ラテックスについての粒径測定と一致する。ポリマー球体が伸張しているのは、複合材料を乾燥する際の収縮の影響による。
図1Aを見ると、白金/金のキャップ部が10において見られ、22において見られる分散ポリマー球体と、24において見られる連続無機相とを有するコーティング組成物21Aが20において見られる。基体のアルミニウムは30において見られる。
図1Bは、より高倍率の
図1Aの領域であり、連続無機相24および分散ポリマー球体22を明瞭に示している。明らかに、予想とは異なり、本発明においては、ポリマーラテックスが合着しておらず、代わりに、連続無機相中に分散相として存在する。
【0071】
例25においては、洗浄されたガルバリウム(登録商標)パネルにワイヤードローバーによって、本発明の非クロムの例である組成物22Eを塗工し、93℃のPMTまで乾燥し、200±25ミリグラム/平方フィートの乾燥コーティング重量を得た。集束イオンビームによって、コーティングされた金属の断面を切断し、薄い薄片を作製して、これを、例24において記載される通りに、暗視野走査透過型電子顕微鏡法によって特性解析した。本発明の新規で特徴的なモルホロジー、即ち、大部分が離散している分散ポリマー球体を有する連続無機相が示されている。エネルギー分散型X線分析を行い、連続相および分散相の元素組成を確認した。再び、連続相は無機であり、ジルコニウム、バナジウムおよび酸素を含んでいた。コーティング22E中で観察されるポリマー球体の大きさは、例22Eの配合物において使用されるラテックスについて行われた粒径測定と一致する。例24と比較して、例21Aおよび例22Eの配合物のアクリル含有量の差に一致して、コーティング中、より高い密度のポリマー球体が観察される。
図2Aと、
図2Aで示される領域のより高倍率のものの
図2Bに結果を示す。白金/金のキャップ部が60において見られ、コーティング組成物50はポリマー球体54および連続無機相52を含み、基体は40において見られる。
【0072】
例26においては、洗浄されたアルミニウムパネルにワイヤードローバーによって比較例23を塗工し、93℃のPMTまで乾燥し、150±25ミリグラム/平方フィートの乾燥コーティング重量を得た。集束イオンビームによって、コーティングされた金属の断面を切断し、薄い薄片を作製して、これを、例24において記載される通りに、暗視野走査透過型電子顕微鏡法によって特性解析した。この技術より得られる画像によって、市販のクロム系コーティング中には、本発明により調製されるコーティングの新規なモルホロジーは存在しないことが示されている。観察されるのは、従来のポリマーコーティングの特徴である、ポリマーが合着して生じる連続有機相を含むフィルムである。エネルギー分散型X線分析を行い、連続相の元素組成を確認した。
図3において、基体は80において見られ、合着したポリマーは90において見られ、白金/金のキャップ部は100において見られる。
【0073】
上で議論した通り、現在のクロム系コーティング組成物の不具合の1つは、コーティング組成物を基体に塗工した後、コーティング組成物の外にクロムが浸出する傾向である。よって、本発明に従う例での浸出を、例27の比較サンプルと比較した。例27においては、洗浄された熱浸漬亜鉛めっき鋼(HDG)およびガルバリウム(登録商標)パネルに、ワイヤードローバーによって、例21および22のクロムを含有するコーティング組成物それぞれを塗工し、93℃のPMTまで乾燥した。HDGパネル上の乾燥コーティング重量は175±25ミリグラム/平方フィートであった。ガルバリウム(登録商標)パネル上の乾燥コーティング重量は150±25ミリグラム/平方フィートであった。コーティング後、パネルに試験用プロトコルを施し、水への曝露によってクロムを浸出する、それぞれの傾向を決定した。50℃の1.5リットルの脱イオン水(温水)中に30秒間パネルを浸漬し、その後、冷水で30秒間パネルをリンスし、乾燥した。試験用プロトコルをパネルに施す前後において、Cianflone Scientific Instruments社製のPortspec X線分光器モデル2501を使用して、コーティングされたパネルのクロム含有量を決定した。浸漬のプロトコルの後のクロム含有量の差を計算した。クロム減量のパーセンテージに対する評価を、次の通りに0〜5の数字で示した:0は5%未満、1は5%〜19.99%、2は20.00%〜39.99%、3は40.00%〜59.99%、4は60.00%〜79.99%、5は80.00%〜100.00%。結果を下の表28に示す。本結果は、幾つかの顕著な傾向を示す。第1に、本発明により調製されるコーティングは、いずれの基体からも著しい浸出はしなかった。第2に、ほとんど全ての比較例が、全ての基体から浸出した。第3に、大部分の3価クロムの比較例が、大部分の6価クロムの比較例よりも著しく浸出した。最後に、全ての比較組成物は、ガルバリウム(登録商標)と比較して、HDG上にてより良好に機能した。
【0074】
【表23】
【0075】
例29においては、洗浄された熱浸漬亜鉛めっき鋼およびガルバリウム(登録商標)パネルに、ワイヤードローバーによって、組成物21A、21Cおよび比較用の市販品の例23を塗工し、93℃のPMTまで乾燥した。達成された乾燥コーティング重量は、HDG上では200±25ミリグラム/平方フィートであり、ガルバリウム(登録商標)パネル上では150±25ミリグラム/平方フィートであった。次いで、それぞれの組成物について、3枚の複製パネルをASTM−B117−07Aに従って、中性塩水噴霧試験を行い、一定の間隔を空けて検査した。それぞれの間隔において、腐食を%表面錆として評価した。塩水噴霧への曝露の最初の168時間の間は24時間毎に評価を行い、その後、168時間の間隔で評価を行った。3枚の複製パネルのそれぞれについて、%表面錆が10%および25%の限界に到達、または超えた曝露時間の長さを時間(hr)で記録した。規定した限界に到達、または超えた平均曝露時間を下の表29にまとめる。本結果は、本発明に従って調製されたコーティング組成物が、試験した市販のクロム系コーティング組成物よりも著しく良好であることを明瞭に示している。加えて、HDG上よりもガルバリウム(登録商標)上の方が、全てのものが顕著に良好に機能している。
【0076】
【表24】
【0077】
例30においては、例22のコーティング組成物を比較例23と比較した。例22A、22Cおよび比較例23を、洗浄された熱浸漬亜鉛めっき鋼およびガルバリウム(登録商標)パネルにワイヤードローバーによって塗工し、93℃のPMTまで乾燥した。達成された乾燥コーティング重量は、HDG上では200±25ミリグラム/平方フィートであり、ガルバリウム(登録商標)パネル上では150±25ミリグラム/平方フィートであった。次いで、それぞれの組成物について、3枚の複製パネルを中性塩水噴霧中に配置し、192時間および144時間の2つの間隔を除いて、全試験期間中、168時間の間隔で検査した。それぞれの間隔において、腐食を%表面錆として評価した。3枚の複製パネルのそれぞれについて、%表面錆が3%の限界に到達、または超えた曝露時間の長さを時間(hr)で記録した。平均曝露時間を下の表30にまとめる。再び、本発明は比較例よりも機能し、HDG上よりもガルバリウム(登録商標)上の方が、全てのものが良好であった。
【0078】
【表25】
【0079】
以上の発明は、関連する法定基準に従って記載されており、したがって、その説明は本質的に限定するのではなく、例示である。開示された実施形態の変更および改変は、当業者には明らかであろうし、かつ本発明の範囲内である。したがって、本発明に与えられる法的保護の範囲は、下記の特許請求の範囲の検討によってのみ決定することができる。