(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに直交する横方向と上下方向と前後方向とを有する前パネルと後パネルと股下パネルとによって前胴回り域と後胴回り域と股下域とのそれぞれが形成され、前記前パネルと前記後パネルとは、前記横方向での弾性的な伸長と収縮とが可能なものであり、前記横方向の両側部が合掌状に重なりあっていて前記上下方向へ直状に延びる接合域を形成するとともに内面と外面とを有する前記前後胴回り域を形成し、前記股下パネルが前記前パネルの前記外面に重なる前端部と前記後パネルの前記外面に重なる後端部とを有する使い捨てのパンツ型おむつであって、
前記前パネルおよび前記後パネルは、前記横方向の寸法が同じものであって、複数条の弾性部材が前記両側部それぞれにまで伸長状態で延びているものであり、かつ、前記前端部と前記後端部とのうちで前記上下方向における位置が上方にあるものを基準端部とするものであって、前記前パネルが前記基準端部よりも上方に位置する前方第1弾性域と、前記前方第1弾性域よりも下方に位置する前方第2弾性域とを有し、前記後パネルが前記基準端部よりも上方に位置する後方第1弾性域と、前記後方第1弾性域よりも下方に位置する後方第2弾性域とを有し、
前記前方第1弾性域、前記前方第2弾性域、前記後方第1弾性域および前記後方第2弾性域は、前記上下方向の寸法1mm当たりについて0.01Nの伸長力を前記横方向へ作用させたときに、前記前方第1弾性域と前記後方第1弾性域とは伸長割合が同じであり、前記後方第2弾性域の伸長割合が前記前方第2弾性域の伸長割合よりも大きい、ことを特徴とするおむつ。
前記股下パネルにおける前記前端部および前記後端部のそれぞれは、前記横方向へ延びる端縁部分と前記上下方向へ延びる両側縁部分のそれぞれとにおいて前記外面に接合する一方、前記両側縁部分間に位置する中央部分は前記端縁部分を除いて前記外面に対して非接合状態にある請求項1記載のおむつ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来例のパンツやパンツ型吸収性物品は、前身頃から股下域を経て後身頃へ至るように体液吸収性の芯材が延在しているものであって、その芯材が透液性表面シートと不透液性裏面シートとによってサンドウィッチされている。前身頃と後身頃との所与領域における弾性部材や前側部と後側部とにおける補助弾性部材は、表面シートと裏面シートとの間に介在して芯材を横断するように横方向へ延びている。これらのパンツまたはパンツ型吸収性物品を着用するときに、そのような弾性部材や補助弾性部材は、主として芯材の横方向の外側に位置する部分が伸長したり収縮したりするだけであるから、上下方向へほぼ垂直に延びている前身頃と後身頃との接合域は、後身頃から前身頃に向かってゆがむことがないか、たとえゆがんだとしてもゆがむ量が小さい。しかるに、このようなパンツまたはパンツ型吸収性物品の形状をそのまま大人用のパンツ型おむつ、特に高齢者向けのパンツ型おむつに適用すると、接合域が身体の側部において上下方向に延びることになり、着用者が長い時間にわたって横臥の姿勢にあるときには、その接合域によって肌を刺激することがある。
【0007】
この発明は、そのような問題の発生を防ぐことを可能にする使い捨てのパンツ型おむつの提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するためにこの発明が対象とするのは、互いに直交する横方向と上下方向と前後方向とを有する前パネルと後パネルと股下パネルとによって前胴回り域と後胴回り域と股下域とのそれぞれが形成され、前記前パネルと前記後パネルとは、前記横方向での弾性的な伸長と収縮とが可能なものであり、前記横方向の両側部が合掌状に重なりあっていて前記上下方向へ直状に延びる接合域を形成するとともに内面と外面とを有する
前記前後胴回り域を形成し、前記股下パネルが前記前パネルの前記外面に重なる前端部と前記後パネルの前記外面に重なる後端部とを有する使い捨てのパンツ型おむつである。
【0009】
このおむつにおいて、この発明が特徴とするところは、次のとおりである。すなわち、前記前パネルおよび前記後パネルは、前記横方向の寸法が同じものであって、複数条の弾性部材が前記両側部それぞれにまで伸長状態で延びているものであり、かつ、前記前端部と前記後端部とのうちで前記上下方向における位置が上方にあるものを基準端部とするものであって、前記前パネルが前記基準端部よりも上方に位置する前方第1弾性域と、前記前方第1弾性域よりも下方に位置する前方第2弾性域とを有し、前記後パネルが前記基準端部よりも上方に位置する後方第1弾性域と、前記後方第1弾性域よりも下方に位置する後方第2弾性域とを有する。前記前方第1弾性域、
前記前方第2弾性域、前記後方第1弾性域および前記後方第2弾性域は、前記上下方向の寸法1mm当たりについて0.01Nの伸長力を前記横方向へ作用させたときに、前記前方第1弾性域と前記後方第1弾性域とは伸長割合が同じであり、
前記後方第2弾性域の伸長割合が
前記前方第2弾性域の伸長割合よりも大きい。
【0010】
この発明の実施態様の一つにおいて、前記股下パネルにおける前記前端部および前記後端部のそれぞれは、前記横方向へ延びる端縁部分と前記
上下方向へ延びる両側縁部分のそれぞれとにおいて前記外面に接合する一方、前記両側縁部分間に位置する中央部分は前記端縁部分を除いて前記外面に対して非接合状態にある。
【0011】
この発明の実施態様の他の一つにおいて、前記前方第2弾性域の前記伸長割合が前記前方第1弾性域の前記伸長割合よりも大きい。
【0012】
この発明の実施態様の他の一つにおいて、前記後方第2弾性域の前記伸長割合は、前記後方第1弾性域の前記伸長割合を越えることがない。
【0013】
この発明の実施態様の他の一つにおいて、
前記前方第2弾性域における前記弾性部材の伸長倍率が前記後方第2弾性域における前記弾性部材の伸長倍率よりも
高い。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る使い捨てのパンツ型おむつは、前パネルにおける前方第1弾性域と後パネルにおける後方第1弾性域との伸長割合が同じであるから、おむつを着用するときには、これら両域のそれぞれで形成される胴回り開口における前方側の周縁部と後方側の周縁部とを同じように広げることができて脚をおむつに入れ易く、脚を入れた後には周縁部の全体を一様に広げながら容易に引き上げるときにそれら周縁部を同じように引き上げることができる。おむつを引き上げた後には、前方第1弾性域と後方第1弾性域とが同じように弾性的に伸長または収縮して、着用者の腹部のみを圧迫するということがない。また、
後方第2弾性域の伸長割合が
前方第2弾性域の伸長割合よりも大きいから、おむつの両側部それぞれに形成されている接合域は、上方から下方に向かうにしたがって、前パネルの縦方向の中心線に接近するように変形する。着用しているおむつの接合域がこのように変形していると、着用者が仰臥の姿勢にあっても横臥の姿勢にあっても、接合域によって着用者の肌を刺激することがない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面を参照して、この発明に係る使い捨てのパンツ型おむつの詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0017】
図1は、仮想線によって身体の一部分が示された成人の着用者100によって着用された状態にある使い捨ておむつ10の部分破断斜視図である。おむつ10は、前後方向Zの前方に位置していて前胴回り域2を形成する前パネル12と、前後方向Zの後方に位置していて後胴回り域3を形成する後パネル13と、U字形を画くように曲がっていて前後方向Zへ延びる股下域4を形成する股下パネル14とを有する。
【0018】
前パネル12と後パネル13とは、横方向Xの両側において側部16,17どうしが合掌状に重なり合い、複数の部位18において互いに溶着し、図の上下方向Yに延びる接合域19を形成している。かような前パネル12と後パネル13とは、着用者100の肌に当接する内面22,23と、内面22,23の反対側の面である外面24,25とを有し、おむつ10が着用されるときに図示の如く環状を呈することが可能な胴回り域20を形成し、胴回り域20はその内側に胴回り開口30を形成している。股下パネル14は、前端部26と、後端部27(
図2参照)と、中間部28とを有し、前端部26が前パネル12の外面24に重なり、後端部27が後パネル13の外面25に重なっている。中間部28は、前パネル12と後パネル13との間に延びていて、これら前後パネル12,13と協働しておむつ10の両側に脚回り開口29を形成している。
【0019】
おむつ10においてはまた、股下パネル14が内面34と外面35とを有し、股下パネル14の前端部26が横方向Xへ延びる前端縁部分31の内面34と、横方向Xの両側にあって上下方向Yへ延びる両側縁部分32の外面35とにおいてホットメルト接着剤HA2を介して前パネル12の外面24に接合している。なお、両側縁部分32のそれぞれは、後記するように股下パネル14がその両側部において股下パネル14の内面34に対して折り重ねられている部分である。そのような両側縁部分32の外面35は、前パネル12の外面24と向き合っている。両側縁部分32のそれぞれには、糸状または帯状の弾性部材36が伸長状態で取り付けられている。前パネル12と後パネル13とのそれぞれは、ホットメルト接着剤(図示せず)を介して互いに接合している内面シート41と外面シート43、内面シート42と外面シート44のそれぞれを有し、内面シート41と外面シート43との間には複数条の糸状または帯状の弾性部材45が介在し、少なくとも一方のシート41または43に対してホットメルト接着剤(図示せず)を介して伸長状態で接合している。内面シート42と外面シート44との間には複数条の糸状または帯状の弾性部材46が介在し、少なくとも一方のシート42または44に対してホットメルト接着剤(図示せず)を介して伸長状態で接合している。
【0020】
このように形成されている前パネル12と後パネル13とは、おむつ10の横方向Xにおいて、換言するとおむつ10の胴回り方向において、弾性的な伸長と収縮との反復が可能である。
図1の上下方向Yにおいて、その前パネル12は、股下パネル14における前端部26よりも上方に位置している部分である前方第1弾性域51、および前方第1弾性域51よりも下方に位置している部分である前方第2弾性域52に分けられている。前方第1弾性域51は、弾性部材45のうちの上方弾性部材45aを含み、前方第2弾性域52は弾性部材45のうちの下方弾性部材45bを含んでいる。上方弾性部材45aのうちの最上部弾性部材47aよりも上方には、内面シート41と外面シート43とを含み、弾性部材45を含むことのない頂縁部60aが形成されているが、頂縁部60aは前方第1弾性域51に含まれることのない部位である。また、下方弾性部材45bのうちの最下部弾性部材47bよりも下方には、内面シート41と外面シート43とを含み、弾性部材45を含むことのない底縁部60bが形成されているが、底縁部60bは前方第2弾性域52に含まれることのない部位である。前パネル12において、弾性部材45が収縮すると、頂縁部60aや底縁部60bにはフリルが形成される。ただし、この発明において、おむつ10は頂縁部60aおよび/または底縁部60bが形成されていないものであってもよい。
【0021】
図2は、
図1のおむつ10における後パネル13と股下パネル14の後端部27とを示すためのおむつ10の部分破断斜視図である。股下パネル14の後端部27は、横方向Xへ延びる後端縁部分61における内面34と、上下方向Yへ延びる両側縁部分32における外面35とがホットメルト接着剤HA2(
図3参照)を介して後パネル13の外面25に接合している。ただし、両側縁部分32の外面35は、後パネル13と向き合っている。後パネル13における内面シート42と外面シート44との間には複数条の弾性部材46が伸長状態で介在していて、後パネル13が横方向Xにおける弾性的な伸長と収縮とを反復可能である。その後パネル13は、股下パネル14における後端部27よりも上方に位置している部分である後方第1弾性域71および後方第1弾性域71よりも下方に位置している部分である後方第2弾性域72に分けられている。後方第1弾性域71は、弾性部材46のうちの上方弾性部材46aを含み、後方第2弾性域72は弾性部材46のうちの下方弾性部材46bを含んでいる。上方弾性部材46aのうちの最上部弾性部材48aよりも上方には内面シート42と外面シート44とを含み、弾性部材46を含むことのない頂縁部70aが形成されているが、頂縁部70aは後方第1弾性域71に含まれることのない部位である。また、下方弾性部材46bのうちの最下部弾性部材48bよりも下方には内面シート42と外面シート44とを含み、弾性部材46を含むことのない底縁部70bが形成されているが、底縁部70bは後方第2弾性域72に含まれることのない部位である。後パネル13において、弾性部材46が収縮すると、頂縁部70aや底縁部70bにはフリルが形成される。おむつ10の上下方向Yにおいて、股下パネル14の後端部27は前端部26と同じ位置にあり、後方第1弾性域71と後方第2弾性域72それぞれの寸法は、前方第1弾性域51と前方第2弾性域52それぞれの寸法に同じである。なお、この発明において、おむつ10は頂縁部70aおよび/または底縁部70bが形成されていないものであってもよい。
【0022】
図3は、
図1のおむつ10における接合域19での前パネル12と後パネル13との接合を解いて、これら両パネル12,13と股下パネル14とを横方向Xと前後方向Zとに伸展して得られる伸展おむつ110の部分破断平面図である。図における線P−Pは、おむつ10および伸展おむつ110においての横方向Xの寸法を二等分する縦中心線であり、線Q−Qは、伸展おむつ110においての前後方向Zの寸法を二等分する横中心線である。伸展おむつ110は、縦中心線P−Pに関して対称に形成されているが、横中心線Q−Qに関しては対称に形成される場合と非対称に形成される場合とがある。図示例の伸展おむつ110は、横方向中心線Q−Qに関しても対称に形成されている場合の一例である。伸展おむつ110においては、弾性部材45,46および弾性部材36が、それらに重なって接合している部分における内面シート41や外面シート43等の不織布からギャザーが消失する程度にまで横方向Xまたは前後方向Zへ伸長された状態にある。
【0023】
図3において、前パネル12と後パネル13とは、同じ大きさの矩形のパネルであって、横方向Xの寸法Aが互いにおなじであり、前後方向Zの寸法B量も互いに同じであって、前後方向Zにおいて寸法Dだけ離間している。なお、寸法Aは、接合域19と19との間の内側の寸法である。前パネル12は熱可塑性合成繊維で形成されたスパンボンド不織布等の不織布である内面シート41と外面シート43とがホットメルト接着剤(図示せず)を介して接合することにより形成されている。内面シート41と外面シート43との間に介在する弾性部材45は、前パネル12の両側部16,16にまで届くように延びている。後パネル13もまた不織布である内面シート42と外面シート44とが接合することにより形成されている。内面シート42と外面シート44との間に介在する弾性部材46は、両側部17,17にまで届くように延びている。
【0024】
股下パネル14では、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布やスパンボンド不織布等の不織布で形成された内面シート34aと外面シート35aとの間に体液吸収性のコア37が介在している。コア37と外面シート35aとの間には不透液性プラスチックフィルムで形成された防水シート38が介在している。内面シート34aと外面シート35aとは、それらと向かい合うコア37や防水シート38に対してホットメルト接着剤(図示せず)を介して接合するとともに、コア37の周縁から延出する部分では、ホットメルト接着剤HA1を介して互いに接合している。このように接合している内面シート34aと外面シート35aとは、股下パネル14の両側それぞれにおいて前後方向Zへ延びる側縁部分32を形成しているが、図示例のおむつ10および伸展おむつ110において、その側縁部分32は内面シート34aが内側となるようにして線P−Pに平行なサイドエッジライン39において折曲されている。横方向Xにおいて対向している側縁部分32と32との間には中央部分40が形成され、側縁部分32における内面シート34aと中央部分40における内面シート34aとが股下パネル14の前端縁部分31と後端縁部分61とにおいてホットメルト接着剤HA4を介して接合している。側縁部分32における外面シート35aは、前パネル12と後パネル13とに重なる部分において、これら前後パネル12,13の外面シート43,44に対してホットメルト接着剤HA2を介して接合している。側縁部分32においてはまた、内面シート34aと外面シート35aとの間に介在する弾性部材36を形成している内側弾性部材36aと外側弾性部材36bとが前パネル12と後パネル13とに届くように前後方向Zに伸長された状態で延びている。おむつ10が
図1の状態にあるときには、これらの弾性部材36a,36bが収縮することによって、なかでも内側弾性部材36aが収縮することによって、側縁部分32は股下域4における防漏堤として機能する(
図1参照)。側縁部分32において、内側弾性部材36aの存在する部位は防漏堤における遠位縁となり、外側弾性部材36bの存在する部位は防漏堤における近位縁となる。股下パネル14の前端部26のうちの前端縁部分31と後端部27のうちの後端縁部分61とは、ホットメルト接着剤HA2を介して前パネル12と後パネル13とに接合している。前端部26と後端部27とは、図示されている部分以外の部分においては前パネル12と後パネル13とに接合しておらず、前パネル12との間および後パネル13との間に上下方向Y(
図1参照)の下方に向かって、換言すると
図3の横中心線Q−Qに向かって開口するポケット81,82を形成している。これらのポケット81,82には、おむつ10と併用するときの吸尿パッド(図示せず)の両端部それぞれを挿入することができる。
【0025】
図示例の前パネル12と後パネル13とにおいて、前方第1弾性域51と後方第1弾性域71とは
図3の前後方向Zに同じ寸法Cを有している。寸法Cは、前パネル12にあっては、前端部26から最上部弾性部材47aまで(ただし、最上部弾性部材47aを含む)の距離であり、後パネル13にあっては、後端部27から最上部弾性部材48aまで(ただし、最上部弾性部材48aを含む)の距離である。これら前方第1弾性域51と後方第1弾性域71とにおいては、上方弾性部材45a,46aとして、組成と太さとが同じであり、伸長倍率も同じである複数条のスパンデックスが使用されていて、おむつ10の胴回り開口30の周縁部では、おむつ10を着用するときに、前パネル12と後パネル13とにおける周縁部が同じように伸長したり収縮したりする。好ましいおむつ10において、スパンデックスには470−940dtexのものが1.8−2.8倍の伸長倍率で使用される。そのように形成されている胴回り開口30に脚を入れようとするときに、つま先が、前パネル12における周縁部に触れても後パネル13における周縁部に触れても、これらの周縁部は同じように容易に変形して脚を入れようとするときの妨げになることがない。また、おむつ10が高齢者用のものである場合には、それを着用したときに前方第1弾性域51と後方第1弾性域71とが着用者100の左右の腸骨(図示せず)の上方に位置できるように寸法Bや寸法D(
図3参照)を定めておくと、前方第1弾性域51および/または後方第1弾性域71は、その腸骨に身体の上方から引っかけることによって、着用したおむつ10のずり下がりを防ぐことができる。そのように作用し得る前方第1弾性域51と後方第1弾性域71とでは、上方弾性部材45a,46aによって着用者の胴回りを強く締め付けることが不要になって腹部を圧迫することがなく、おむつ10は、高齢者にとって着用することが容易で、着用感のよいものになる。
【0026】
前パネル12の前方第2弾性域52と後パネル13の後方第2弾性域72との間では、
図3の前後方向Zにおける寸法1mm当たりについて0.01Nとなる伸長力を、後記
図5の手順によって作られる前方第2弾性域52のための試片125と後方第2弾性域72のための試片126であって弾性部材45または弾性部材46が収縮状態にあるものに対して作用させたときに、
後方第2弾性域72の横方向Xにおける伸長割合が
前方第2弾性域52の横方向Xにおける伸長割合よりも大きくなるように、下方弾性部材45b,46bが使い分けられている。ここでいう伸長割合とは、前方第2弾性域52および後方第2弾性域72についての後記全長L
0に対する伸長後の長さの割合である。例えば
図3において、下方弾性部材45bと46bとは、組成と太さが同じであり、
図1の上下方向Yにおいて同じ位置にあるが、下方弾性部材45bの伸長倍率が下方弾性部材46bの伸長倍率よりも高くなるように下方弾性部材45bを伸長して前パネル12に取り付けられている。その結果として、弾性部材45,46が収縮した状態にあるおむつ10に対して、一定の伸長力、例えば前後方向Zにおける寸法1mm当たりについて横方向Xへ一定の伸長力を作用させると、
後方第2弾性域72の伸長量が
前方第2弾性域52の伸長量よりも大きくなる。おむつ10を着用するときに、このような状態にある前パネル12の前方第2弾性域52は、後パネル13の後方第2弾性域72よりも伸長しにくい部位である。一方、後パネル13の後方第2弾性域72は、伸長しやすい部位であって、前パネル12によって胴回り方向へ引っ張られ、胴回り方向において前パネル12よりも長く延びることが可能であって、おむつ着用者の臀部に容易にフィットする。後方第2弾性域72が横方向Xへ弾性的に伸長できるのは、横方向Xにおいて股下パネル14の外側に位置する部位と、股下パネル14の中央部分40と対向している部位、すなわちポケットの内側の部位である。着用者100の胴回り寸法の大きさや体型にもよるが、後方第2弾性域72がこのように横方向Xの広い範囲にわたって引っ張られ、伸長することによって、
図3においては縦中心線P−Pに平行して延びていた側部16と17とが、
図1のおむつ10においては、おむつ10の側方から
図3の縦中心線P−Pへ近づくように前方に向かって引っ張られ、側部16と17とで形成される接合域19が例示の如く曲がった状態になり得る。この状態にあるおむつ10では、合掌状に重なり合いおむつ10の外側に向かって突出している側部16と17との大部分、すなわち突出している接合域19の大部分が着用者の腹側に位置することになるから、着用者が横臥の姿勢や仰臥の姿勢にあっても、接合域19によって肌を圧迫して刺激するということがない。このように作用することが可能な前方第2弾性域52では、下方弾性部材45bとして、例えば470−940dtexのスパンデックスが2.2−3.2倍の伸長倍率で使用される。下方弾性部材46bとしては、例えば470−940dtexのスパンデックスが1.6−2.6倍の伸長倍率であって、かつ下方弾性部材45bの伸長倍率よりも低い伸長倍率で使用される。なお、前パネル12において、下方弾性部材45bの伸長倍率を上方弾性部材45aの伸長倍率よりも高くしておいて、その下方弾性部材45bの収縮作用によって前方第2弾性域52と後方第2弾性域72とのいずれかをおむつ着用者の腸骨稜や大転子に間接的に圧接させて、着用したおむつ10のずり下がりを防ぐこともできる。
【0027】
すなわち、おむつ10では、前方第1弾性域51と後方第1弾性域71とが、着用者100の腹部を圧迫することがないように容易に伸長するとともに腸骨よりも上方に位置することによっておむつ10のずり下がりを防ぐことができる。また、前方第2弾性域52と後方第2弾性域72とが着用者100の下腹部レベルに位置して腸骨稜や大転子に間接的に圧接することでもおむつ10のずり下がりを防ぐことができる。前方第2弾性域52や後方第2弾性域72が腸骨稜等に圧接するときの力を高めるには、下方弾性部材45bの伸長倍率を高めに設定することが好ましい。
【0028】
図4は、実施態様の一例を示す
図3と同様な図である。図示された伸展おむつ110では、前パネル12として
図3と同一の前パネル12が使用され、その前パネル12に対して股下パネル14が
図3と同一の態様で接合している。前パネル12と後パネル13とは、
図3の場合と同様に寸法Dだけ離間している。しかし、後パネル13と、後パネル13に対する股下パネル14の接合態様とは
図3のそれと異なっている。
【0029】
図4において、後パネル13は、前後方向Zにおいて前パネル12の寸法と同じ寸法Bを有するが、後パネル13のうちの後方第1弾性域71は寸法Eを有し、その寸法Eは
図3における前方第1弾性域51の寸法Cよりも小さい。参考として、その寸法Cは
図4の前パネル12に対して記載されている。この伸展おむつ110から得られるパンツ型おむつ10は、
図1のパンツ型おむつ10とよく似ているものではあるが、
図1の上下方向Yにおいて、股下パネル14における後端部27が前端部26よりも上方に位置している。このように上下方向Yでの前端部26と後端部27との位置が異なる場合のおむつ10においては、前パネル12と後パネル13とにおける前方第1弾性域51と後方第1弾性域71とが次のように定義される。すなわち、前方第1弾性域51と後方第1弾性域71とは、股下パネル14の前端部26と後端部27とのうちで上方に位置しているものを基準端部とし、前端部26と後端部27とにおいてその基準端部よりも上方の部分を意味する。この定義によれば、
図4の伸展おむつ110から得られるおむつ10では、前パネル12と後パネル13とについて、後端部27よりも上方にあって上下方向に寸法Eを有する部分が前方第1弾性域51と後方第1弾性域71とになる。
図4には、その前方第1弾性域51と後方第1弾性域71とが仮想線で示されている。なお、前方第1弾性域51の下方には前方第2弾性域52が形成され、後方第1弾性域71の下方には後方第2弾性域72が形成される。この発明に係る前パネル12と後パネル13との間において、弾性部材の本数や太さ、伸長倍率、配置状態は同一であってもよいし、同一でなくてもよいのであるが、
図4に基づいて定義される前方第1弾性域51と後方第1弾性域71との伸長割合の関係および前方第2弾性域52と後方第2弾性域72との伸長割合の関係は、
図1のおむつ10の場合と同じ伸長割合の関係を維持することができるようにそれらの弾性部材を使用する。ちなみに、
図1のおむつ10においては、股下パネル14の前端部26と後端部27とは、上下方向Yにおける位置が同じであるから、どちらも基準端部になり得る。
【0030】
図5は、前方第1弾性域51と後方第1弾性域71との伸長力と伸長割合との関係および前方第2弾性域52と後方第2弾性域72との伸長力と伸長割合との関係を知るための手順を説明するための図である。その手順は、次のとおりである。
【0031】
1.
図4の伸展おむつ110から得られるおむつ10を2個用意する。
【0032】
2.各おむつ10において、前パネル12の下端縁12aと後パネル13の下端縁13aとに沿って股下パネル14をはさみ150で切断し、股下パネル14の前端部26と後端部27とを残して股下パネル14を前後パネル12,13から切り離す(
図5(a)参照)。
【0033】
3.はさみ150を使用して、頂縁部60aと70a、および底縁部60bと70bを切り取り、前パネル12と後パネル13とから前方第1弾性域51と後方第1弾性域71とが接合域19で一体となった2個の第1リング121と、前方第2弾性域52と後方第2弾性域72とが接合域19で一体となった2個の第2リング122を作る(
図5(b)参照)。
【0034】
4.2個の第1リング121のうちの一方においては、接合域19に沿って後方第1弾性域71を切り落とし、前方第1弾性域51のための試片123を作る。第1リング121のうちのもう一方においては、接合域19に沿って前方第1弾性域51を切り落とし、後方第1弾性域71のための試片124を作る。第1リング121のうちのもう一方においては、接合域19に沿って前記第1弾性域51を切り落とし、後方第1弾性域71のための試片124を作る。
【0035】
5.2個の第2リング122のうちの一方においては、接合域19に沿って後方第2弾性域72を切り落とし、前方第2弾性域52のための試片125を作る。また、第2リング122のうちのもう一方においては、接合域19に沿って前方第2弾性域52を切り落とし、後方第2弾性域72のための試片126を作る。
【0036】
6.試片123−126のそれぞれについて、不織布と弾性部材とが重なり合っている部位に沿って不織布に形成されているギャザーに注目しながら、そのギャザーが消失する程度にまで試片を引っ張り、伸展させて、接合域19と19との間の内側の寸法をmm単位で測定し、得られた寸法を各試片についての全長L
0とする。また、各試片123−126について、全長L
0まで伸長してあるときの幅方向(
図1における上下方向Y)の寸法をmm単位で測定し、得られた寸法を各試片123−126についての全幅W
0とする。全幅W
0は、おむつ10が伸展した状態にあるときの上下方向Yの寸法、すなわち伸展おむつ110においての前方第1弾性域51、前方第2弾性域52、後方第1弾性域71、後方第2弾性域72の前後方向Zの寸法である。なお、図示例において、前方第1弾性域51と後方第1弾性域71との全幅W
0は同じであり、前方第2弾性域52と後方第2弾性域72との全幅W
0は同じであるが、おむつ10において例えば最下部弾性部材48aと最下部弾性部材48bとで上下方向Yの位置が異なる場合には、前方第2弾性域52と後方第2弾性域72との間で全幅W
0の値の異なることがある。
【0037】
7.弾性部材45,46が収縮状態にあるときの試片123−126のそれぞれについて、接合域19を引張試験機(INSTRON製 Model No.3380またはそれの同等品)のチャックで把持し、300mm/minの引張速度で、全長L
0の70%に相当する長さにまで引っ張るときの伸長力(全幅W
0の1mm当たりについての伸長力、N/mm)の変化および最大伸長力(N)を求める。その最大伸長力を前方第1弾性域51、前方第2弾性域52、後方第1弾性域71および後方第2弾性域72についての70%伸長力と呼ぶ。
【0038】
前方第1弾性域51、前方第2弾性域52、後方第1弾性域71および後方第2弾性域72の伸長割合および伸長量(長さ)を比較するときには、全幅W
0を有する試片についての幅1mm当たりの伸長力が0.01Nであるときの伸長割合(全長L
0に対する%で表した伸長割合)をもって比較する。おむつ10は、前方第1弾性域51の伸長割合と後方第1弾性域71の伸長割合とが同じであり、
後方第2弾性域72の伸長割合が
前方第2弾性域52の伸長割合よりも大きいものである。さらに好ましいおむつ10では、前方第2弾性域52の伸長割合は前方第1弾性域51の伸長割合よりも大きく、後方第2弾性域72の伸長割合が前方第1弾性域51の伸長割合と同じであるかまたは前方第1弾性域51の伸長割合よりも小さい。
【0039】
図6は、
図5に示された手順に基づいて得られる試片123−126のうちの試片125,126についての伸長力と伸長割合との関係を模式的に示す図である。
図6の縦軸は、試片が長さL
0にあるときの幅1mm当たりについての伸長割合であるN/W
0の値を示している。横軸は、試片の長さL
0に対する伸長割合を%単位で示している。図示例では、試片125,126に対する伸長力が0.01N/1mmであるときに、試片125の伸長割合m(%)よりも試片126の伸長割合n(%)が大きく、後方第2弾性域72が前方第2弾性域52よりも容易に伸長することがわかる。おむつ10において、伸長割合nは伸長割合mの少なくとも1.3倍となるように設定される。
【0040】
このようにして伸長割合と伸長力とを求めるこの発明では、伸長力が0.01N/1mmであるときに後方第1弾性域71の伸長割合が前方第1弾性域51の伸長割合の0.8−1.2倍の範囲内にあるときに、前方第1弾性域51と後方第1弾性域71との伸長割合は同じであるとみなす。
【0041】
なお、この発明において、おむつ10における弾性部材45,46の伸長倍率を求めるには、
図5の試片123−126のそれぞれについて、それが長さL
0であるときにおける弾性部材45,46の長さを求めて、その長さをM
0とする。次に、その試片をトルエンに例えば5時間浸漬してホットメルト接着剤を溶解させ、不織布から弾性部材45,46を分離し、乾燥する。乾燥後における弾性部材45,46の長さをMとして、M
0/Mの値を伸長倍率とする。
【0042】
この発明の図示例において、おむつ10の股下パネル14は体液吸収性のコア37を含むものであったが、股下パネル14はそのようなコアを含まずに吸尿パッドの使用を予定しているものであってもよい。股下パネル14はまた、その側縁部分32が中央部分40とは別体のものとして用意された部材をその中央部分40に接合することにより形成されているものであってもよい。