特許第6196098号(P6196098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196098
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】粒状物用包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/52 20060101AFI20170904BHJP
   B65D 30/10 20060101ALI20170904BHJP
   B65D 83/06 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   B65D75/52
   B65D30/10 Z
   B65D83/06 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-174094(P2013-174094)
(22)【出願日】2013年8月26日
(65)【公開番号】特開2014-61947(P2014-61947A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2016年8月1日
(31)【優先権主張番号】特願2012-187226(P2012-187226)
(32)【優先日】2012年8月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】古谷 寧隆
(72)【発明者】
【氏名】小泉 勇人
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−124679(JP,A)
【文献】 特開2005−170484(JP,A)
【文献】 特開2004−331179(JP,A)
【文献】 実開昭58−082378(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00−79/02
B65D 81/18−81/30
B65D 81/38
B65D 30/00−33/38
B65D 83/06
B65B 51/00−51/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装用シート(2)により形成された筒体(3)を備え、この筒体(3)の長手方向の両端部(5)に、互いに向かい合う面同士の接着により形成されたシール部(6)をそれぞれ備え、両シール部(6・6)間に粒状物(7)が収容される収容部(8)を備える粒状物用包装体であって、
少なくとも一方のシール部(6)は、筒体(3)の幅方向中間部にその幅方向に沿って形成された中間シール部(6a)と、筒体(3)の両側縁(9)近傍にそれぞれ側縁(9)側ほど収容部(8)の中央側に広がる隅シール部(6b)とを備え、
この隅シール部(6b)と上記の収容部(8)との境界(14)は、上記筒体(3)の側縁(9)に対し120〜150度の範囲内の交差角度(θ)で傾斜状に交差する直線に沿って形成してあることを特徴とする、粒状物用包装体。
【請求項2】
上記の各シール部(6)が、それぞれ上記の中間シール部(6a)と隅シール部(6b)とを備えている、請求項1に記載の粒状物用包装体。
【請求項3】
上記の隅シール部(6b)と収容部(8)との境界(14)の長さ(L0)は、上記の粒状物(7)の粒径(D)の1.0倍以上である、請求項1または請求項2に記載の粒状物用包装体。
【請求項4】
上記の収容部(8)は長手方向の寸法(L)が幅方向の寸法(W)の1.5倍以上である、請求項1からのいずれかに記載の粒状物用包装体。
【請求項5】
上記の包装用シート(2)は、少なくともアルミニウム箔と熱可塑性樹脂層とを含むラミネートシートである、請求項1からのいずれかに記載の粒状物用包装体。
【請求項6】
上記の粒状物(7)が粒状カプセルである、請求項1からのいずれかに記載の粒状物用包装体。
【請求項7】
上記の粒状物(7)の粒径(D)が0.5〜10mmの範囲内である、請求項1からのいずれかに記載の粒状物用包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品等の粒状物を収容する包装体に関し、さらに詳しくは、収容した粒状物を取り出す際に、収容部内に残留させることなく全量を容易に取り出すことができる、粒状物用包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
粒状物を多数収容する包装体にあっては、その粒状物が医薬品等である場合は特に、服用時にその一部を零すことなく全量を確実に服用できることが重要である。そこでこの包装体から収容物を取り出す際に開口が狭く形成されるようにしてあると、収容物を不用意に零すことなく、所定の容器内や服用者の口内など所望の位置へ確実に受け止めることができて好ましい。このような包装体として、従来、包装用シートの両側縁を互いに貼り合わせて筒体に形成し、この筒体の長手方向における両端部で互いに向かい合う面同士を接着して筒体の幅方向にシール部を形成し、この両シール部間に収容部を形成した、いわゆるスティック型包装体がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記のスティック型包装体は、一方のシール部近傍で破断することにより、収容物を取り出すための開口が筒体の軸心と直交方向に形成される。この開口幅は収容部の長さに比べて十分に狭いので、この開口から取り出される収容物は、不用意に零れることなく、服用者の口内など所望の位置へ確実に受止められる。
【0004】
上記のシール部は筒体の前壁と後壁とが互いに接着されており、上記の収容部はシール部との境界の両端に狭い隅部を備えている。上記の収容物が粉末の場合は、この隅部に入りこんでしまう虞があるが、収容物が粒状物である場合は、粒子径が、例えば0.5mm以上であるなど、ある程度の大きさを備えているため、上記の狭い隅部に入り込んでしまうことがない。従って、この包装体を開封して上記の粒状物を取り出す際、この粒状物が収容部の隅部に残留することがなく、特に上記の包装用シートの内面が合成樹脂材料で形成されている場合は、粒状物の全量が円滑に取り出されると考えられていた。
【0005】
しかしながら、例えば図5に示すように、上記従来のスティック型包装体(50)にあっては、開封後に収容部(51)を幅方向両側から内方へ押圧して前壁(52)と後壁(53)とを離隔させたとき、開口(56)位置では、粒状物(55)の大きさに比べて前壁(52)と後壁(53)とが十分に離隔しても、収容部(51)の下側のシール部(54)では前壁(52)と後壁(53)とが互いに接着されているため、そのシール部(54)近傍においては、これらの前壁(52)と後壁(53)とを充分に離隔させることが容易でない。特に、収容部(51)の長手方向に比べて幅方向の寸法が短いほど、前壁(52)と後壁(53)とを互いに離隔させることが困難である。この結果、上記の収容部(51)内の粒状物(55)は、例えば直径が0.5mm〜数mmの大きな粒状物であると特に、シール部(54)近傍で上記の前壁(52)と後壁(53)とで挟持され、容易には取り出せなくなって収容部(51)内に残留してしまう虞があった。
【0006】
上記の問題点を解消するため、例えば上記の特許文献1に記載されているように、上記の収容部の端部を、筒体の長手方向外側に向かって凸状の円弧に形成することが考えられる。しかしながら、一般に筒体を構成する包装用シートは伸縮性がないため、曲線に沿って折れ曲がることができない。このため、スティック型包装体の収容部を幅方向両側から内方へ押圧したとき、上記の円弧状シール部近傍では、前壁と後壁はその円弧に沿って折れ曲がることができず、この円弧の弦に沿った直線に沿って折れ曲がることとなる。この結果、この折れ曲がり線よりも外側の、シール部近傍の円弧で囲まれた部分では、かえって前壁と後壁とが互いに離隔し難くなり、この部分に存在する粒状物は前壁と後壁とで挟持されやすく、取り出す際には収容部内に残留する虞があった。この現象は、上記の包装用シートが、アルミニウム箔を含むラミネートシートのように剛性を備えると顕著である。
【0007】
また、隅部近傍の空間を小さくするため、収容部の端部を、筒体の長手方向外側に向かって凹状の円弧に形成することや、収容部とシール部との境界を波形状にすることなどが考えられる。しかしこれらの場合に、収容部を幅方向両側から内方へ押圧して前壁と後壁とを互いに離隔させると、前壁や後壁は、筒体軸心と直交しシール部のうちの最も収容部側の位置を通過する直線に沿って折れ曲がろうとする。このため、これらの形状にした場合においても、その折れ曲がり線よりも外側の収容空間では前壁と後壁とが互いに離隔し難くなり、この部分に存在する粒状物は前壁と後壁とでかえって挟持されやすく、取り出す際には収容部内に一層残留する虞があった。
【0008】
一方、従来の粒状物用包装体にあっては、例えば上記の筒体に襞を形成して、この襞を挟んだ状態でシールすることにより、シール部近傍においてこの襞が拡がることで前壁と後壁とが互いに離隔し易い構造の、立体的なシール部とすることも考えられる(例えば、特許文献2参照。)。
しかしこのような立体的なシール部とするには、包装用シートを複雑に折り曲げる必要があるなど、安価に実施できないうえ、包装用シートが複雑に折れ曲がる等の理由から包装体のシール性能や耐久性が劣る虞もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−095333号公報
【特許文献2】特開2011−230777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、収容した粒状物を取り出す際に、収容部内に残留させることなく全量を容易に取り出すことができ、しかも安価に実施できる、粒状物用包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図4に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
すなわち本発明は粒状物用包装体に関し、包装用シート(2)により形成された筒体(3)を備え、この筒体(3)の長手方向の両端部(5)に、互いに向かい合う面同士の接着により形成されたシール部(6)をそれぞれ備え、両シール部(6・6)間に粒状物(7)が収容される収容部(8)を備える粒状物用包装体であって、少なくとも一方のシール部(6)は、筒体(3)の幅方向中間部にその幅方向に沿って形成された中間シール部(6a)と、筒体(3)の両側縁(9)近傍にそれぞれ側縁(9)側ほど収容部(8)の中央側に広がる隅シール部(6b)とを備え、この隅シール部(6b)と上記の収容部(8)との境界(14)は、上記筒体(3)の側縁(9)に対し所定の交差角度(θ)で傾斜状に交差する直線に沿って形成してあることを特徴とする。
【0012】
本発明はまた、上記の各シール部(6)が、それぞれ上記の中間シール部(6a)と隅シール部(6b)とを備えている、粒状物用包装体に関する。
本発明はまた、上記の隅シール部(6b)と収容部(8)との境界(14)の長さ(L0)が、上記の粒状物(7)の粒径(D)の1.0倍以上である、粒状物用包装体に関する。
本発明はまた、上記の隅シール部(6b)と収容部(8)との境界(14)と、上記の筒体(3)の側縁(9)とがなす鈍角側の交差角度(θ)が、120〜150度の範囲内である、粒状物用包装体に関する。
本発明はまた、上記の収容部(8)の長手方向の寸法(L)が幅方向の寸法(W)の1.5倍以上である、粒状物用包装体に関する。
本発明はまた、上記の包装用シート(2)が、少なくともアルミニウム箔と熱可塑性樹脂層とを含むラミネートシートである、粒状物用包装体に関する。
本発明はまた、上記の粒状物(7)が粒状カプセルである、粒状物用包装体に関する。
本発明はまた、上記の粒状物(7)の粒径(D)が0.5〜10mmの範囲内である、粒状物用包装体に関する。
【0013】
上記の筒体は、上記のシール部の形成により、少なくともこのシール部近傍では偏平化されており、収容部の周壁は、幅方向両端の側縁により前壁と後壁とに区画されている。
上記の粒状物用包装体を開封して、収容部を幅方向両側から内方へ押圧すると、上記のシール部近傍では、上記の前壁と後壁が、それぞれ収容部とシール部との境界で折れ曲がり、外側へ変位して収容部内が拡がる。
【0014】
このとき、上記の収容部と中間シール部との境界は筒体の幅方向に沿って形成されており、この収容部と上記の隅シール部との境界は筒体側縁に対し傾斜しているので、上記の収容部とシール部との境界が収容部の外側へ凸に屈曲している。このため、上記の前壁と後壁は、上記の変位の際、上記の境界の屈曲点から収容部内側に延びる山折れ線に沿って山折れする。この結果、前壁と後壁とが外側へ良好に変位し、隅部近傍においても、上記の粒状物がこれらの前壁と後壁とで挟持され難くなり、収容部内に保持されることが防止される。
【0015】
上記の包装体は、通常、上記の収容部のうち長手方向の一端寄り部に開封部を備え、この開封部を破断することで開口が形成される。上記の中間シール部と隅シール部は、この開封部から大きく離れた、一方のシール部にのみ形成してもよい。しかし、各シール部がそれぞれ上記の中間シール部と隅シール部とを備えていると、収容部内の粒状物は、いずれのシール部近傍に位置していても、収容部内に保持されることなく良好に取り出されるので、いずれの位置で包装体を開封してもよく、好ましい。
【0016】
上記の隅シール部と収容部との境界の長さは、特定の寸法に限定されないが、上記の粒状物の粒径の1.0倍以上であると、粒状物を良好に取り出すことができて好ましく、粒状物の粒径の1.5倍以上であるとより好ましい。
【0017】
また、この隅シール部と収容部との境界は、上記の筒体の側縁と任意の交差角度で傾斜状に交差する直線に沿って設けてあればよい。しかしこの筒体の側縁となす鈍角側の交差角度が120〜150度の範囲内であると、上記の前壁や後壁を良好に変位できて好ましく、130〜140度の範囲内であるとさらに好ましい。
【0018】
なお、上記の中間シール部は、筒体の幅方向に沿って形成されておればよく、この中間シール部と上記の収容部との境界は、通常は幅方向に、即ち、筒体の軸心と直交する方向に形成されるが、この幅方向から僅かな角度、例えば±10度程度の範囲内で傾斜したものであっても良い。
【0019】
また上記の各隅シール部は、収容部との境界の長さや筒体の側縁に対する角度が、全て同じ値に設定されていてもよく、或いは任意の隅シール部が互いに異なる値に設定されていてもよい。
【0020】
さらに上記の中間シール部や隅シール部は、任意のシール構造を備えたものであってもよく、例えば点状や線状のエンボス加工を施す等により、シール性能を高めたものであってもよい。これらのシール部と収容部との境界は、直線に沿って形成されておればよく、上記のエンボス加工等により細かな波形状に形成されたものであってもよい。
【0021】
上記の粒状物用包装体は、径方向の寸法に比べて長手方向に長い、いわゆるスティック型包装体であると、粒状物を所望の位置へ確実に受け止めることができて好ましい。このため上記の収容部は、任意の寸法に設定できるが、長手方向の寸法が幅方向の寸法の1.5倍以上であると好ましく、長手方向の寸法が幅方向の寸法の2倍以上であるとより好ましい。
【0022】
上記の包装用シートは、例えば側縁を互いに貼り合わせるなどして筒体に形成でき、長手方向両端部で互いに向かい合う面同士を接着できるものであればよく、たとえば熱可塑性樹脂シートや、片面に熱可塑性樹脂層を備えた紙など、任意の材質で構成できる。しかしこの包装用シートが、少なくともアルミニウム箔と熱可塑性樹脂層とを含むラミネートシートであると、包装体の耐久性や収容部の保密性を良好にできるうえ、収容部の周壁等が適度の剛性を備えており、開封時に粒状物を良好に取り出すことができて好ましい。
熱可塑性樹脂層としては、例えば、ポリエチレン樹脂層、ポリエチレンテレフタレート樹脂層、ポリプロピレン樹脂層、ポリスチレン樹脂層、ABS樹脂層等が挙げられ、これらを一種類用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。熱可塑性樹脂層は、好ましくは、ポリエチレン樹脂層、ポリエチレン樹脂層とポリエチレンテレフタレート樹脂層との組み合わせである。
包装用シートは、当該分野で公知の材料を適宜選択し得るが、少なくともアルミニウム箔と熱可塑性樹脂層とを含むラミネートシートである。
包装用シートは、好ましくは、ポリエチレン樹脂層とアルミニウム箔とポリエチレンテレフタレート樹脂層とを含むラミネートシートである。
包装用シートは、約20μm〜約110μm、好ましくは約70〜約80μmの厚さを有する。
【0023】
上記の粒状物は任意の材質のものであってもよいが、粒状物に過度の外力を加えることなく収容部から円滑に取り出すことができるので、粒状カプセル(ソフトカプセル、或いはシームレスカプセルと言うこともある)など、圧潰強度を高めることが容易でない粒状物の包装に特に適している。ここで、粒状カプセルとは、主にゼラチン等を主成分とする継ぎ目のない皮膜で、薬効成分、栄養補助成分、健康食品成分等を含む、液状等の配合物を封入したものをいい、球形のほか、任意の形状の粒状物に形成されている。この粒状カプセルの好適な例としては、例えば国際公開第2009/004999号パンフレットまたは国際公開第2009/087938号パンフレットに記載のシームレスカプセルが挙げられる。
【0024】
上記の粒状物の大きさは特に限定されないが、その粒径が0.5〜10mmの範囲内であると好ましく、1〜8mm程度であるとさらに好ましい。ここで粒径とは、粒状物が球体である場合はその直径をいい、回転楕円体など、球形以外の場合は、粒状物の中心を通過する最も短い寸法をいう。
【発明の効果】
【0025】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
(1)開封時に収容部を幅方向両側から内方へ押圧すると、シール部近傍では、前壁と後壁がそれぞれ収容部とシール部との境界で折れ曲がり、外側へ変位する。このとき、収容部とシール部との境界が屈曲している点から収容部内側に延びる山折れ線に沿って、前壁と後壁が山折れし、外側へ良好に変位する。この結果、隅部近傍においても前壁と後壁とによる粒状物の挟持を防止でき、これらの粒状物を収容部内に残留させることなく全量を容易に取り出すことができる。
【0026】
(2)筒体の長手方向両端部に形成されるシール部は、筒体の幅方向中間部に形成された中間シール部と、筒体の各側縁近傍に形成された隅シール部とを備えるだけでよく、包装用シートを複雑に折り曲げる必要がないので、安価に実施できるうえ、包装体のシール性能や耐久性を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態を示す、粒状物用包装体の一部破断図である。
図2】本発明の実施形態の、粒状物用包装体の要部を拡大した断面図である。
図3】本発明の実施形態の、開封した粒状物用包装体の要部を破断した斜視図である。
図4】本発明の実施例の取り出し性を比較例と対比して示す、対比グラフである。
図5】従来の開封されたスティック型包装体の、要部を破断した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明を具体的に説明する。
図1に示すように、この粒状物用包装体(1)は、包装用シート(2)により形成された筒体(3)を備える。この包装用シート(2)はアルミニウム箔と熱可塑性樹脂層とを含むラミネートシートからなり、この包装用シート(2)の両側縁を互いに合掌状に貼り合わせることで、図2に示すように、背貼り部(4)を有する上記の筒体(3)に形成してある。
【0029】
上記の筒体(3)は、長手方向両端部(5)に、互いに向かい合う面同士の接着により形成されたシール部(6)をそれぞれ備えている。この両シール部(6・6)間に、粒状カプセル等の粒状物(7)が収容される収容部(8)が形成されている。上記の筒体(3)は、上記のシール部(6)の形成により偏平化されており、この筒体(3)の両側縁(9)により、上記の収容部(8)の周壁は前壁(10)と後壁(11)とに区画されている。
【0030】
上記の各シール部(6)はいずれも、筒体(3)の幅方向中間部の中間シール部(6a)と、両側縁(9)近傍の隅シール部(6b)とを備える。上記の中間シール部(6a)は、筒体(3)の幅方向に沿って形成されており、この中間シール部(6a)と上記の収容部(8)との境界(13)は、筒体(3)の幅方向に、即ち、筒体(3)の軸心(3a)と直交する方向に形成されている。これに対し、上記の隅シール部(6b)は側縁側ほど収容部(8)の中央側に広がるように形成されており、この隅シール部(6b)と上記の収容部(8)との境界(14)は、筒体(3)の側縁(9)に対し所定の交差角度(θ)で傾斜状に交差する直線に沿って、形成してある。より具体的には、筒体(3)の側縁(9)となす鈍角側の交差角度(θ)が135度である直線に沿って、上記の境界(14)が形成してある。
従って、上記のシール部(6)と収容部(8)との境界(12)は、中間シール部(6a)と隅シール部(6b)との境目(B)で、収容部(8)の外側へ凸に屈曲している。
【0031】
図2に示すように、上記の隅シール部(6b)と上記の収容部(8)との境界(14)の長さ(L0)は、上記の粒状物(7)の粒径(D)の1.0倍以上であると好ましく、具体的には、この実施形態では、例えば粒径(D)の1.8倍程度に設定してある。また、上記の境目(B)から筒体(3)の側縁(9)までの寸法、即ち上記の隅シール部(6b)の幅方向の寸法(L1)は、上記の粒径(D)の1.25倍程度に設定してあり、上記の境目(B)から収容部(8)の中央部側へ広がる寸法、即ち隅シール部(6b)の長手方向の寸法(L2)も、上記の粒径(D)の1.25倍程度に設定してある。
【0032】
なお、上記の中間シール部(6a)の幅方向の寸法(L3)は、収容部(8)の幅方向の寸法(W)の30%以上であると好ましく、より好ましくは50%以上に設定され、具体的にこの実施形態では、約67%に設定してある。
【0033】
上記の粒状物用包装体(1)は、筒体(3)の軸心(3a)方向に長い、いわゆるスティック型包装体であり、上記の収容部(8)は、長手方向の寸法(L)が幅方向の寸法(W)よりも長く、例えば幅方向の寸法(W)の1.5倍以上であり、具体的にこの実施形態では、例えば約2.67倍に設定してある。
【0034】
上記の収容部(8)に収容される粒状物(7)としては、任意の材質のものであってもよいが、この実施形態ではゼラチンを主成分とする継ぎ目のない皮膜で液剤等を封入した粒状カプセルが用いてある。その粒径(D)は、例えば0.5〜10mmの範囲内の、任意の寸法のものが用いられ、具体的にこの実施形態では、例えば3〜5mm程度のものが用いてある。
【0035】
次に、上記の粒状物用包装体を開封する手順について説明する。
上記の粒状物用包装体(1)には、一方のシール部(6)の近傍に、例えば上記の包装用シート(2)の合成樹脂層にミシン目を入れるなどした、切取り線(15)が設けてある。上記の粒状物(7)を取り出す際には、この切取り線(15)に沿って包装用シート(2)を破断する。これにより、例えば図3に示すように、上記の収容部(8)に開口(16)が形成され、上記の粒状物(7)はこの開口(16)から取り出される。
なお上記の包装用シート(2)の破断は、上記の切取り線(15)以外の位置で、鋏等の切断器具により破断してもよい。従って本発明の粒状物用包装体(1)は、上記の切取り線(15)を省略したものであってもよい。
【0036】
上記の粒状物用包装体(1)の両端には前記のシール部(6)が形成されているため、上記の収容部(8)は、特にシール部(6)近傍で偏平化されている。このためこのシール部(6)近傍に位置する粒状物(7)は、収容部(8)の前壁(10)と後壁(11)とに挟持され易い。そこで、例えば図3に示すように、この収容部(8)の幅方向両側から内方へ押圧する。これにより、上記の前壁(10)と後壁(11)が、それぞれ収容部(8)とシール部(6)との境界(12)で折れ曲がり、外側へ変位する。このとき、前壁(10)と後壁(11)は、図3に示すように、それぞれ境界(12)が屈曲している上記の境目(B)から収容部(8)内側に延びる山折れ線(17)に沿って山折れする。この結果、上記の収容部(8)内が良好に拡がり、上記の粒状物(7)はこの収容部(8)内を開口(16)側へ容易に移動して、その開口(16)から取り出される。
【実施例】
【0037】
次に、実施例により本発明の粒状物用包装体を具体的に説明するが、本発明はこの実施例に記載のものに限定されるものではない。
ポリエチレン樹脂層とアルミニウム箔とポリエチレンテレフタレート樹脂層とを含むラミネートフィルムからなる、厚さが約80μmの包装用シートを用い、この包装用シートの両側縁を合掌状に貼り合わせて筒体を形成し、下端部をシールしてその上方に収容部を形成した。このシール部は、幅方向中間部に筒体軸心と直交する中間シール部を備え、その両側に、収容部との境界が傾斜状となっている隅シール部を備えている。この隅シール部と収容部との境界は、筒体の側縁となす鈍角側の交差角度を135度とし、隅シール部の幅方向の寸法を5mmとした。従って隅シール部の長手方向の寸法も5mmであり、収容部との境界の長さは約7.07mmである。
【0038】
次に、上記の収容部に直径4mmの粒状カプセルを80粒収容し、上端部を下端部と同様にシールして、実施例の粒状物用包装体を得た。このとき、上記の収容部は、シール部近傍の偏平化した部分での幅方向の寸法を30mmとし、長手方向の寸法を80mmとした。
【0039】
上記の比較例と対比するため、上記のシール部が筒体の全幅に亘って軸心と直交しており、上記の隅シール部を備えていない点以外は、上記の実施例と同様にして、比較例の粒状物用包装体を得た。
【0040】
上記の実施例と比較例について、パネラー10人により粒状物包装体からの粒状カプセルの取り出し性を評価した。評価は、各パネラーが7包ずつ、合計70包について、上端近傍で切取り線に沿って破断して開口し、粒状物包装体をその開口が下側となる逆さ姿勢にしたときに、収容部内に粒状カプセルが残留している粒状物包装体の数を計測し、その包数が少ないほど取り出し性が優れているとした。その取り出し性の測定結果を図4の対比グラフに示す。
【0041】
この対比グラフから明らかなように、隅シール部を備えていない比較例では、70包のうち、約半数の34包において、収容部内に粒状カプセルが残留しており、粒状カプセルを円滑に取り出すことができなかった。これに対し、上記の隅シール部を備える本発明の実施例にあっては、僅か2包においてのみ粒状カプセルが残留したが、大部分を占める他の粒状物包装体においては、粒状カプセルが収容部内に残留せず、円滑に粒状カプセルを取り出すことができた。
【0042】
上記の実施形態や実施例で説明した粒状物用包装体は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部の寸法や形状、構造、材料等をこの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0043】
例えば上記の実施形態では、筒体(3)の両端に形成した各シール部(6)が、それぞれ上記の中間シール部(6a)と隅シール部(6b)とを備えている場合について説明した。しかし本発明では、切取り線から遠い位置のシール部のみが、上記の中間シール部と隅シール部とを備えたものであってもよい。
【0044】
また、上記の実施形態では、上記の隅シール部(6b)と収容部(8)との境界(14)が、筒体(3)の側縁(9)となす鈍角側の交差角度(θ)が135度である直線に沿って形成された場合について説明した。しかしこの交差角度は、例えば120〜150度の範囲内の、任意の角度に設定することができる。またこの交差角度は、それぞれの隅シール部で互いに異なっていてもよい。
【0045】
また上記の実施形態では、隅シール部(6b)と収容部(8)との境界(14)が直線状に形成されている場合について説明した。しかし本発明では、この境界(14)は、上記の所定の直線に沿って形成されておればよく、例えばシール部をエンボス加工により形成した場合などを含めて、上記の境界が細かな波形状等に形成されたものであってもよい。
【0046】
上記の実施形態では、包装用シートにアルミニウム箔と熱可塑性樹脂層とを含むラミネートシートを用いたが、他の材質の包装用シートを用いてもよい。
また上記の実施形態では、1枚の包装用シートの両側縁を互いに貼り合わせて筒体を形成した。しかし本発明では、2枚の包装用シートを用い、対面する両側縁を互いに貼り合わせて筒体に形成したものであってもよい。
また上記の収容部に収容する粒状物は、粒状カプセル以外のものであってもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の粒状物用包装体は、収容した粒状物を取り出す際に、収容部内に残留させることなく全量を容易に取り出すことができるので、特に医薬品等の粒状物を包装する包装体として有用であるが、他の用途の粒状物の包装体にも有用である。
【符号の説明】
【0048】
1…粒状物用包装体
2…包装用シート
3…筒体
5…筒体(3)の長手方向の端部
6…シール部
6a…中間シール部
6b…隅シール部
7…粒状物
8…収容部
9…筒体(3)の側縁
14…隅シール部(6b)と収容部(8)との境界
D…粒状物(7)の粒径
L…収容部(8)の長手方向の寸法
L0…隅シール部(6b)と収容部(8)との境界(14)の長さ
W…収容部(8)の幅方向の寸法
θ…境界(14)と側縁(9)とがなす鈍角側の交差角度
図1
図2
図3
図4
図5