(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水素ガス供給手段は、前記水素ガス供給開始ステップ後、前記反応容器に水素ガスを0.5L/min以上の供給速度で供給する請求項1乃至6いずれか一項に記載のシリコン酸化膜の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一または対応する部材または部品については、同一または対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されるべきものである。
(成膜装置)
はじめに、本発明の本実施形態によるシリコン酸化膜の製造方法を実施するのに好適な成膜装置について図面を用いて説明する。
【0011】
図1は、本実施形態のシリコン酸化膜の製造方法を実施するのに好適な成膜装置の一例の断面図であり、
図2は、本実施形態のシリコン酸化膜の製造方法を実施するのに好適な成膜装置の一例の斜視図である。また、
図3は、本実施形態のシリコン酸化膜の製造方法を実施するのに好適な成膜装置の一例の概略上面図である。
【0012】
図1から
図3までを参照すると、この成膜装置は、ほぼ円形の平面形状を有する扁平な反応容器(チャンバ)1と、この反応容器1内に設けられ、反応容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。この際、反応容器1は真空容器とすることができる。反応容器1は、有底の円筒形状を有する容器本体12と、容器本体12の上面に対して、例えばOリングなどのシール部材13(
図1)を介して気密に着脱可能に配置される天板11とを有している。
【0013】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は反応容器1の底部14を貫通し、その下端が回転軸22(
図1)を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が反応容器1の底部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0014】
回転テーブル2の表面には、
図2及び
図3に示すように回転方向(周方向)に沿って複数(図示の例では5枚)の基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)Wを載置するための円形状の凹部24が設けられている。なお
図3には便宜上1個の凹部24だけにウエハWを示す。この凹部24は、ウエハWの直径(例えば300mm)よりも僅かに、例えば4mm大きい内径と、ウエハWの厚さにほぼ等しい深さとを有している。したがって、ウエハWを凹部24に載置すると、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが同じ高さになる。
【0015】
図2及び
図3は、反応容器1内の構造を説明する図であり、説明の便宜上、天板11の図示を省略している。
図2及び
図3に示すように、回転テーブル2の上方には、各々例えば石英からなる第1のガスノズル31、第2のガスノズル321、322、及び分離ガスノズル41、42が配置されている。図示の例では、反応容器1の周方向に間隔をおいて、搬送口15(後述)から時計回り(回転テーブル2の回転方向)に分離ガスノズル41、第1のガスノズル31、分離ガスノズル42、及び第2のガスノズル321、322の順に配列されている。これらのノズル31、321、322、41、及び42は、それぞれの基端部であるガス導入ポート31a、321a、322a、41a、及び42a(
図3)が容器本体12の外周壁に固定され、反応容器1の外周壁から反応容器1内に導入されている。そして、容器本体12の半径方向に沿って回転テーブル2に対してノズルが平行に伸びるように取り付けられている。
【0016】
本実施形態のシリコン酸化膜の製造方法においては、第2ガスノズル321、322から、水素ガスおよび酸化ガスを供給することができる。酸化ガスとしては特に限定されるものではないが、例えば酸素ガスおよび/またはオゾンガスを含むガスを用いることが好ましい。このため、
図2、
図3に示したように、第2のガスノズル321、322を2本配置し、一方の第2のガスノズル321から水素ガスを、他方の第2のガスノズル322から酸素ガスおよび/またはオゾンガスを供給するように構成できる。この際、水素ガスと、酸素ガスおよび/またはオゾンガスを供給するノズルはどちらが回転テーブルの回転方向の上流側に配置されていてもよい。すなわち、一方の第2のガスノズル321から酸素ガスおよび/またはオゾンガスを供給し、他方の第2のガスノズル322から水素ガスを供給してもよい。このように第2のガスノズル321、322を2本設ける場合、第2のガスノズル321と第2のガスノズル322とは
図2、
図3に示すように隣接し、両者が互いに略平行になるように配置することが好ましいが、係る形態に限定されるものではない。例えば、第2のガスノズル321と第2のガスノズル322とは離隔して配置することもできる。
【0017】
なお、ここでは、第2のガスノズルを2本設けた例を示したが、係る形態に限定されるものではない。例えば、第2のガスノズルを1本とし、該ガスノズルと、水素ガスの供給源および酸化ガスの供給源と、の間に混合器等を設けた構成とすることもできる。この場合、水素ガス供給開始ステップから、酸化ガス供給開始ステップまでは、第2のガスノズルからは水素ガスのみが供給され、酸化ガス供給開始ステップ後は水素ガスと、酸化ガスとの混合ガスを、第2のガスノズルから供給することができる。
【0018】
なお、後述する第2の処理領域P2の面積が広い場合、第2の処理領域P2内に十分な量の水素ガスおよび酸化ガスを供給するため、第2のガスノズルを複数組設けてもよい。例えば、第2の処理領域P2のうち、回転テーブル2の回転方向の最上流部に設けた第2のガスノズル321、322に加えて、回転テーブルの回転方向の下流側の任意の場所にさらに第2のガスノズル321、322を設置することができる。具体的には例えば、
図3中Xで示した部分、すなわち、第2の処理領域P2のうち、円周方向の中央部に第2のガスノズル321、322をもう一組配置することもできる。この場合、もう一組配置する第2のガスノズルも他のガスノズルと同様に、ガス導入ポートを容器本体12の外周壁に固定し、反応容器1の外周壁から反応容器内に導入することができる。
【0019】
第1のガスノズル31には、シリコン含有ガスが貯留されるシリコン含有ガス供給源が開閉バルブや流量調整器(ともに不図示)を介して接続されている。また、第2のガスノズル321、322には、それぞれ酸化ガス、水素ガスが貯留される酸化ガス供給源、水素ガス供給源が開閉バルブや流量調整器(ともに不図示)を介して接続されている。
【0020】
ここで、第1のガスノズル31から供給するシリコン含有ガスは特に限定されるものではないが、例えば3DMAS(トリスジメチルアミノシラン Si(N(CH
3)
2)
3H)、4DMAS(テトラキスジメチルアミノシラン Si(N(CH
3)
2))
4)等のアミノシラン系や、TCS(テトラクロロシラン SiCl
4)、DCS(ジクロロシラン SiH
2Cl
2)、SiH
4(モノシラン)、HCD(ヘキサクロロジシラン Si
2Cl
6)等を好ましく用いることができる。第2のガスノズル321、322から供給される水素ガス、酸化ガスのうち、酸化ガスとしては、上述のように、酸素ガスおよび/またはオゾンガスを好ましく用いることができる。特に緻密なシリコン酸化膜が得られることから、酸化ガスは、オゾンガスを含むことがより好ましい。
【0021】
また、分離ガスノズル41、42には、ArやHeなどの希ガスやN
2ガス(窒素ガス)などの不活性ガスの供給源が開閉バルブや流量調整器(ともに不図示)を介して接続されている。不活性ガスとしては特に限定されるものではなく、上記のように希ガスや、N
2ガス等を用いることができるが、例えばN
2ガスを好ましく用いることができる。
【0022】
第1のガスノズル31、第2のガスノズル321、322には、回転テーブル2に向かって下方に開口する複数のガス吐出孔33(
図5参照)が、第1のガスノズル31、第2のガスノズル321、322の長さ方向に沿って配列されている。ガス吐出孔の配置については特に限定されるものではないが、例えば10mmの間隔で配列することができる。第1のガスノズル31の下方領域は、シリコン含有ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1となる。第2のガスノズル321、322の下方領域は、第1の処理領域P1においてウエハWに吸着されたシリコン含有ガスを酸化させる第2の処理領域P2となる。
【0023】
図2及び
図3に示すように、第1のガスノズル31には、ノズルカバー34が設けられていることが好ましい。以下、
図4を参照しながら、ノズルカバー34について説明する。ノズルカバー34は、第1のガスノズル31の長手方向に沿って延び、コ字型の断面形状を有する基部35を有している。基部35は、第1のガスノズル31を覆うように配置されている。基部35の上記長手方向に延びる2つの開口端の一方には、整流板36Aが取り付けられ、他方には、整流板36Bが取り付けられている。本実施形態においては、整流板36A、36Bは回転テーブル2の上面と平行に取り付けられている。また、本実施形態においては、
図2及び
図3に示すように、回転テーブル2の回転方向に対して第1のガスノズル31の上流側に整流板36Aが配置され、下流側に整流板36Bが配置されている。
【0024】
図4(b)に明瞭に示されるように、整流板36A、36Bは、第1のガスノズル31の中心軸に対して左右対称に形成されている。また、整流板36A、36Bの回転テーブル2の回転方向に沿った長さは、回転テーブル2の外周部に向かうほど長くなっており、このため、ノズルカバー34は、概ね扇形状の平面形状を有している。ここで、
図4(b)に点線で示す扇の開き角度θは、後述する凸状部4(分離領域D)のサイズをも考慮して決定されるが、例えば5°以上90°未満であると好ましく、具体的には例えば8°以上10°未満であると更に好ましい。
【0025】
なお、本実施形態においては、第1のガスノズル31のみにノズルカバー34が設けられた例を示したが、第2のガスノズル321、322についても同様のノズルカバーを設けてもよい。
【0026】
図2及び
図3を参照すると、反応容器1内には2つの凸状部4が設けられている。凸状部4は、頂部が円弧状に切断された略扇型の平面形状を有し、本実施形態においては、内円弧が突出部5(後述)に連結し、外円弧が、反応容器1の容器本体12の内周面に沿うように配置されている。
図5は、第1のガスノズル31から第2のガスノズル321、322まで回転テーブル2の同心円に沿った反応容器1の断面を示している。図示のとおり、凸状部4は、天板11の裏面に取り付けられている。このため、反応容器1内には、凸状部4の下面である平坦な低い天井面44(第1の天井面)と、この天井面44の周方向両側に位置する、天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)とが存在している。
【0027】
また、
図5に示すとおり、凸状部4には周方向中央において溝部43が形成されており、溝部43は、回転テーブル2の半径方向に沿って延びている。溝部43には、分離ガスノズル42が収容されている。もう一つの凸状部4にも同様に溝部43が形成され、ここに分離ガスノズル41が収容されている。なお、図中に示す参照符号42hは、分離ガスノズル42に形成されるガス吐出孔である。ガス吐出孔42hは、分離ガスノズル42の長手方向に沿って所定の間隔(例えば10mm)をあけて複数個形成されている。また、ガス吐出孔42hの開口径は例えば0.3mmから1.0mmとすることができる。図示を省略するが、分離ガスノズル41にも同様にガス吐出孔を形成することができる。
【0028】
高い天井面45の下方の空間には、第1のガスノズル31、第2のガスノズル321、322がそれぞれ設けられている。第1のガスノズル31、第2のガスノズル321、322は、天井面45から離間してウエハWの近傍に設けられている。なお、説明の便宜上、
図5に示すように、第1のガスノズル31が設けられる高い天井面45の下方の空間を参照符号481で表し、第2のガスノズル321、322が設けられる高い天井面45の下方の空間を参照符号482で表す。
【0029】
低い天井面44は、狭隘な空間である分離空間Hを回転テーブル2に対して形成している。分離ガスノズル42から不活性ガス、例えばN
2ガスが供給されると、このN
2ガスは、分離空間Hを通して空間481及び空間482へ向かって流れる。このとき、分離空間Hの容積は空間481及び482の容積よりも小さいため、N
2ガスにより分離空間Hの圧力を空間481及び482の圧力に比べて高くすることができる。すなわち、空間481及び482の間において、分離空間Hは圧力障壁を提供する。しかも、分離空間Hから空間481及び482へ流れ出るN
2ガスは、第1の処理領域P1からのシリコン含有ガスと、第2の処理領域P2からの水素ガス及び酸化ガスとに対するカウンターフローとして働く。したがって、第1の処理領域P1からのシリコン含有ガスと、第2の処理領域P2からの水素ガス及び酸化ガスとが分離空間Hにより分離される。よって、反応容器1内においてシリコン含有ガスと、水素ガス及び酸化ガスと、が混合して反応することを抑制できる。
【0030】
なお、回転テーブル2の上面に対する天井面44の高さh1は、成膜時の反応容器1内の圧力、回転テーブル2の回転速度、供給する分離ガス(N
2ガス)の供給量などを考慮し、分離空間Hの圧力を空間481及び482の圧力に比べて高くするのに適した高さに設定することが好ましい。
【0031】
再び
図1〜
図3を参照すると、天板11の下面には、回転テーブル2を固定するコア部21の外周を囲むように突出部5が設けられている。この突出部5は、本実施形態においては、凸状部4における回転中心側の部位と連続しており、突出部5の下面は天井面44と同じ高さに形成されている。
【0032】
先に参照した
図1は、
図3のI−I'線に沿った断面図であり、天井面45が設けられている領域を示している一方、
図6は、天井面44が設けられている領域を示す一部断面図である。
図6に示すように、略扇型の凸状部4の周縁部(反応容器1の外縁側の部位)には、回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲する屈曲部46を形成することができる。この屈曲部46は、回転テーブル2と容器本体12の内周面との間の空間を通して、空間481及び空間482(
図5)の間でガスが流通するのを抑制できる。扇型の凸状部4は、天板11に設けられ、天板11が容器本体12から取り外せるようになっていることから、屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、例えば回転テーブル2の上面に対する天井面44の高さと同様の寸法に設定することができる。
【0033】
再び
図3を参照すると、回転テーブル2と容器本体の内周面との間において、空間481と連通する第1の排気口610と、空間482と連通する第2の排気口620とが形成されている。第1の排気口610及び第2の排気口620は、
図1に示すように各々排気管630を介して真空排気手段である例えば真空ポンプ640に接続されている。なお
図1中、参照符号650は圧力調整器である。
【0034】
回転テーブル2と反応容器1の底部14との間の空間には、
図1及び
図6に示すように加熱手段であるヒータユニット7を設けることができ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWを、プロセスレシピで決められた温度に加熱できる。回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の下方の空間へガスが侵入するのを抑えるために、リング状のカバー部材71が設けられている。
図6に示すように、このカバー部材71は、回転テーブル2の外縁部及び外縁部よりも外周側を下方側から臨むように設けられた内側部材71aと、この内側部材71aと反応容器1の内壁面との間に設けられた外側部材71bと、を備えた構成にできる。外側部材71bは、凸状部4の外縁部に形成された屈曲部46の下方にて、屈曲部46と近接して設けられ、内側部材71aは、回転テーブル2の外縁部下方(及び外縁部よりも僅かに外側の部分の下方)において、ヒータユニット7を全周に亘って取り囲んでいる。
【0035】
図1に示すように、ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近におけるコア部21に接近するように上方側に突出して突出部12aをなしている。この突出部12aとコア部21との間は狭い空間になっている。また、底部14を貫通する回転軸22の貫通孔の内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間はケース体20に連通している。そしてケース体20にはパージガスであるN
2ガスを狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。さらに、反応容器1の底部14には、ヒータユニット7の下方において周方向に所定の角度間隔で、ヒータユニット7の配置空間をパージするための複数のパージガス供給管73が設けられている(
図6には一つのパージガス供給管73を示す)。さらにまた、ヒータユニット7と回転テーブル2との間には、ヒータユニット7が設けられた領域へのガスの侵入を抑えるために、外側部材71bの内周壁(内側部材71aの上面)から突出部12aの上端部との間を周方向に亘って覆う蓋部材7aが設けられている。蓋部材7aは例えば石英で作製することができる。
【0036】
パージガス供給管72からN
2ガスを供給すると、このN
2ガスは、回転軸22の貫通孔の内周面と回転軸22との隙間と、突出部12aとコア部21との間の隙間とを通して、回転テーブル2と蓋部材7aとの間の空間を流れ、第1の排気口610又は第2の排気口620(
図3)から排気される。また、パージガス供給管73からN
2ガスを供給すると、このN
2ガスは、ヒータユニット7が収容される空間から、蓋部材7aと内側部材71aとの間の隙間(不図示)を通して流出し、第1の排気口610又は第2の排気口620(
図3)から排気される。これらN
2ガスの流れにより、反応容器1の中央下方の空間と、回転テーブル2の下方の空間とを通して、空間481及び空間482内のガスが混合するのを抑制することができる。
【0037】
また、反応容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN
2ガスを供給するように構成できる。この空間52に供給された分離ガスは、突出部5と回転テーブル2との狭い空間50(
図6)を介して回転テーブル2のウエハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出される。空間50は分離ガスにより空間481及び空間482よりも高い圧力に維持され得る。したがって、空間50により、第1の処理領域P1に供給されるシリコン含有ガスと、第2の処理領域P2に供給される水素ガス及び酸化ガスとが、中心領域Cを通って混合することが抑制される。すなわち、空間50(又は中心領域C)は分離空間H(又は分離領域D)と同様に機能することができる。
【0038】
さらに、反応容器1の側壁には、
図2、
図3に示すように、外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウエハWの受け渡しを行うための搬送口15を形成できる。この搬送口15は図示しないゲートバルブにより開閉できる。この場合、回転テーブル2におけるウエハ載置領域である凹部24はこの搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しを行うこととなる。このため、回転テーブル2の下方側において受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)を設けることができる。
【0039】
また、本実施形態による成膜装置には、
図1に示すように、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100を設けることができる。制御部100のメモリ内には、制御部100の制御の下に、後述する成膜方法を成膜装置に実施させるプログラムが格納することができる。このプログラムは後述の成膜方法を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの媒体102に記憶されており、所定の読み取り装置により記憶部101へ読み込まれ、制御部100内にインストールできる。
【0040】
(シリコン酸化膜の製造方法)
次に、
図7を用いて本発明の実施形態によるシリコン酸化膜の製造方法について説明する。
【0041】
本実施形態のシリコン酸化膜の製造方法は、以下の各ステップを含むことが好ましい。すなわち、例えば
図7に示した処理フローに従い、各ステップを実施することが好ましい。なお、以下に説明するシリコン酸化膜の製造方法は特定の成膜装置での実施に限定されるものではなく、各種成膜装置に適用することができる。例えば
図1〜
図6に示した回転テーブルを用いた成膜装置だけではなく、反応容器内にウエハを静止した状態で載置し、反応容器内への供給ガスを切り替えて成膜を行う成膜装置にも適用できる。以下、そのような成膜装置を用いる場合も含めて本実施形態に係るシリコン酸化膜の製造方法の説明を行う。
【0042】
まず、表面に金属膜を有する基板を反応容器内に設置する基板設置ステップ(S71)を実施する。基板設置ステップ後、水素ガス供給手段により、反応容器内に水素ガスの供給を開始する水素ガス供給開始ステップ(S72)を実施する。
【0043】
水素ガス供給開始ステップ(S72)後に、酸化ガス供給開始ステップ及びシリコン含有ガス供給開始ステップを実施する。すなわち、酸化ガス供給手段により、反応容器内に酸化ガスの供給を開始する酸化ガス供給開始ステップ(S73)、及び、シリコン含有ガス供給手段により、反応容器内にシリコン含有ガスの供給を開始するシリコン含有ガス供給開始ステップ(S74)を実施する。なお、
図7では、酸化ガス供給開始ステップ(S73)の後に、シリコン含有ガス供給開始ステップ(S74)を実施する例を示しているが、係る形態に限定されるものではない。例えば、シリコン含有ガス供給開始ステップ(S74)を先に実施し、その後に、酸化ガス供給開始ステップ(S73)を実施することもできる。また、酸化ガス供給開始ステップ(S73)と、シリコン含有ガス供給開始ステップ(S74)と、を同時に実施することもできる。
【0044】
そして、酸化ガス供給開始ステップ(S73)、及び、シリコン含有ガス供給開始ステップ(S74)の後、シリコン酸化膜成膜ステップ(S75)を実施し、シリコン酸化膜を成膜した後シリコン酸化膜の製造工程を終了することができる。
【0045】
従来のシリコン酸化膜の製造方法において、基板であるウエハ表面に形成された金属膜が酸化される原因を本発明者らが検討したところ、シリコン酸化膜を製造する際に用いるガスを供給する順番により金属膜の酸化の程度が異なることを見出し、本発明を完成した。
【0046】
具体的には上述のように、基板設置ステップ(S71)の直後にまず水素ガス供給開始ステップ(S72)を実施する。その後、酸化ガス供給開始ステップ(S73)、及び、シリコン含有ガス供給開始ステップ(S74)を実施することにより金属膜の酸化を抑制できることを見出した。これは、上述のように、酸化ガスの供給を開始する前に水素ガスを供給することにより、水素ガスが金属膜と酸化ガスとの接触を抑制して、金属膜の酸化の程度を低減できるためと推認される。
【0047】
上記一連の工程において、水素ガス供給手段、酸化ガス供給手段、シリコン含有ガス供給手段は、各ガスの供給を開始した後は、連続して、すなわち継続的に各ガスの供給を行うことが好ましい。具体的には、水素ガス供給手段は、水素ガス供給開始ステップ後、連続的に水素を反応容器内に供給することが好ましい。酸化ガス供給手段は、酸化ガス供給開始ステップ後、連続的に酸素を反応容器内に供給することが好ましい。シリコン含有ガス供給手段は、シリコン含有ガス供給開始ステップ後、連続的にシリコン含有ガスを反応容器内に供給することが好ましい。
【0048】
すなわち、
図8に示したタイムフローのように各ガスの供給手段は反応容器に各ガスを供給することができる。
【0049】
図8に示したように、まず、反応容器内にウエハを設置後、時間t1の時に水素ガス供給開始ステップを実施し、水素ガスの供給を開始し、その後連続的に供給する。次いで、時間t2に酸化ガスの供給を開始し、その後連続的に供給する。さらに、時間t3にシリコン含有ガスの供給を開始し、その後連続的に供給する。なお、上述のように、シリコン含有ガス供給開始ステップ(S74)を酸化ガス供給開始ステップ(S73)よりも先に実施し、その後に、酸化ガス供給開始ステップ(S73)を実施することもできる。このため、時間t2にシリコン含有ガスの供給を開始し、時間t3に酸化ガスの供給を開始してもよい。また、シリコン含有ガスの供給と、酸化ガスの供給と、を同時に開始することもできる。
【0050】
シリコン酸化膜の成膜後、各ガスは任意のタイミングで供給を停止することができ、例えば、全てのガスを同時に停止することができ、また、各ガスの供給を個別に順次停止することもできる。
【0051】
ここで、水素ガス供給開始ステップを実施してから、酸化ガス供給開始ステップを実施するまでの時間T1は特に限定されるものではなく、任意に選択することができる。例えば、酸化ガス供給開始ステップは、水素ガス供給開始ステップ後3秒以上経過してから実施することが好ましい。すなわち、T1は3秒以上であることが好ましい。特にT1は、30秒以上であることがより好ましく、100秒以上であることが特に好ましい。これは、水素ガスの供給を開始してから、酸化ガスの供給を開始するまでの時間を一定時間以上とすることにより、ウエハ表面に形成された金属膜の酸化を特に抑制できるためである。なお、T1は水素ガス供給開始ステップを実施してから、酸化ガス供給開始ステップを実施するまでの時間を示しており、
図8では、時間t2に酸化ガスの供給を開始することから、時間t1から時間t2までの間がT1となる。ただし、上述のように、時間t3に酸化ガスの供給を開始する場合には、時間t1から時間t3までの間がT1となる。
【0052】
T1の上限値は特に限定されるものではないが、酸化ガスの供給を開始するまでの時間が長くなりすぎると成膜工程を開始するまでに長い時間を要することとなり生産性が低くなる恐れがある。このため、T1は、例えば3分以下とすることが好ましい。
【0053】
また、酸化ガス供給開始時と、シリコン含有ガス供給開始時と、の間の時間、すなわち、
図8における時間t2と時間t3間の時間T2は特に限定されるものではない。例えば、酸化ガス供給開始ステップと、シリコン含有ガス供給開始ステップとは同時に実施することもできる。すなわちT2は0とすることもできる。特に、T2は1秒以上とすることが好ましい。T2の上限値は特に限定されるものではないが、T2が長すぎると生産性を低下させる恐れがあることから、1分以下であることが好ましく、30秒以下であることがより好ましい。なお、シリコン含有ガスの供給開始後、酸化ガスの供給を開始する場合にも、シリコン含有ガスの供給開示時と、酸化ガス供給開始時と、の間の時間T2を任意に選択することができ、例えば上述のT2の範囲とすることが好ましい。
【0054】
そして、本実施形態のシリコン酸化膜の製造方法においては、シリコン含有ガス供給開始ステップ(S74)後、シリコン酸化膜を成膜するシリコン酸化膜成膜ステップ(S75)が実施されることとなる。
【0055】
これらの各ステップを実施する成膜装置は上述のように特に限定されるものではなく、各種成膜装置を用いることができる。
【0056】
例えば、反応容器内に回転可能に収容された回転テーブルと、シリコン含有ガスを供給する第1のガス供給部と、水素ガスおよび酸化ガスを供給する第2のガス供給部と、を備えた成膜装置を好ましく用いることができる。
【0057】
係る成膜装置において、回転テーブルは複数の基板(ウエハ)が載置される載置部を上面に有することができる。第1のガス供給部は、シリコン含有ガス供給手段を備え、回転テーブルの上面の上方において区画される第1の処理領域に配置され、回転テーブルの上面に向けてシリコン含有ガスを供給することができる。また、第2のガス供給部は、水素ガス供給手段、および、酸化ガス供給手段を備え、回転テーブルの周方向に沿って第1の処理領域から離間する第2の処理領域に配置され、回転テーブルの上面に向けて水素ガスおよび酸化ガスを供給することができる。具体的には、例えば既述の成膜装置を好適に用いることができる。
【0058】
そして、本実施形態のシリコン酸化膜の製造方法は、成膜準備工程と、吸着工程と、反応工程とを含んでいることが好ましい。
【0059】
ここで成膜準備工程は、上述した基板設置ステップと、水素ガス供給開始ステップと、酸化ガス供給開始ステップと、シリコン含有ガス供給開始ステップとを有することができる。成膜準備工程ではまず、基板設置ステップの後に水素ガス供給開始ステップを実施することが好ましい。そして、水素ガス供給開始ステップの後に、酸化ガス供給開始ステップ、及び、シリコン含有ガス供給開始ステップを実施することができる。酸化ガス供給開始ステップ、及び、シリコン含有ガス供給開始ステップは、いずれのステップを先に実施してもよく、また、酸化ガス供給開始ステップ、及び、シリコン含有ガス供給開始ステップは同時に実施することもできる。
【0060】
吸着工程とは、回転テーブルを回転しながら、第1の処理領域において、回転テーブル上に載置されたウエハにシリコン含有ガスを吸着させる工程とすることができる。また、反応工程としては、回転テーブルを回転しながら、第2の処理領域において、ウエハの表面に吸着したシリコン含有ガスと、第2の処理領域に供給された水素ガス及び酸化ガスと、を反応させる工程とすることができる。
【0061】
上述した本実施形態のシリコン酸化膜の製造方法について、上述の成膜装置を用いて実施する場合を例に説明する。
【0062】
まず、成膜準備工程について具体的に説明する。
【0063】
最初に基板設置ステップ(S71)を実施する。具体的は、例えば図示しないゲートバルブを開き、搬送アーム10により搬送口15(
図3)を介してウエハWを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに凹部24の底面の貫通孔を介して反応容器1の底部側から不図示の昇降ピンが昇降することにより行われる。このようなウエハWの受け渡しを、回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウエハWを載置する。なお、この際用いるウエハWとしては、その表面に金属膜が形成されたウエハWを用いることができる。なお、金属膜は、ウエハWの表面全面に形成されている必要はなく、その一部に形成されていればよい。また、金属膜の材質は特に限定されるものではないが、例えばタングステンを好ましく用いることができる。
【0064】
続いてゲートバルブを閉じ、真空ポンプ640により反応容器1を最低到達真空度まで排気する。その後、分離ガスノズル41、42から分離ガスであるN
2ガスを所定の流量で吐出し、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72、73(
図1)からもN
2ガスを所定の流量で吐出する。これに伴い、圧力調整器650により反応容器1内を予め設定した処理圧力に調整する。すなわち、この場合、基板設置ステップ(S71)と水素ガス供給開始ステップ(S72)との間に分離ガス供給開始ステップ(図示せず)を実施することができる。
【0065】
次いで、回転テーブル2を時計回りに回転させる。回転テーブル2を回転させる際、回転テーブル2の回転速度は特に限定されないが、回転テーブル2の回転速度を5rpm以上240rpm以下とすることが好ましい。これは、回転テーブル2の回転速度を240rpm以下とすることにより、第2の処理領域P2に供給された水素ガスおよび酸化ガスと、ウエハW上に吸着されたシリコン含有ガスとを十分反応させ、緻密で膜質に優れたシリコン酸化膜を製造できるためである。また、回転テーブル2の回転速度を5rpm以上とすることにより、生産性を保ちつつシリコン酸化膜を製造することができる。生産性の向上と、シリコン酸化膜の膜質の向上との観点から、回転テーブル2の回転速度は、20rpm以上120rpm以下とすることがより好ましい。
【0066】
また、本実施形態のシリコン酸化膜の製造方法においては、第2の処理領域P2に供給された水素ガスと、酸化ガスと、が反応し、OH・(ヒドロキシラジカル)やO・(酸素ラジカル)を生成することが好ましい。特に、OH・(ヒドロキシラジカル)は酸化力が強いため、単に酸化ガスを供給し、ウエハ表面に吸着した物質を酸化処理する場合と比較して、シリコン含有ガスの酸化反応を特に進行させることができる。
【0067】
そこで、第2の処理領域に供給された水素ガスと、酸化ガスと、が反応し、ヒドロキシラジカル等を生成する反応をより促進できるよう、回転テーブル2を回転する際、ヒータユニット7によりウエハWを加熱することが好ましい。この際の温度としては特に限定されないが、第2の処理領域に供給された水素ガスと、酸化ガスとがウエハWの表面に至るまでに、十分なOH・(ヒドロキシラジカル)や、O・(酸素ラジカル)を生成する温度に加熱することが好ましい。具体的には例えば、基板であるウエハWを400℃以上900℃以下の範囲の温度に加熱することが好ましい。なお、酸化ガスがオゾンガスを含む場合には、オゾンガスの分解を抑制するため、400℃以上700℃以下の範囲の温度に加熱することが好ましい。特にヒドロキシラジカルや酸素ラジカルの生成反応を促進し、かつ、第2の処理領域に供給したガスの分解を抑制する観点から、ウエハWを450℃以上680℃以下に加熱することがより好ましい。ヒータユニット7によるウエハWの加熱は、少なくともシリコン酸化膜成膜ステップ(S75)の間実施されることが好ましく、特に、基板設置ステップ(S71)からシリコン酸化膜成膜ステップ(S75)を終了し、基板を搬出するまで実施されることがより好ましい。
【0068】
上記のように回転テーブル2の回転を開始した後、反応容器1に対し、第2のガスノズル321から水素ガスの供給を開始し、水素ガス供給開始ステップ(S72)を実施する。水素ガスはそのまま連続して供給することができる。水素ガス供給開始ステップ(S72)後は、水素ガスのみが供給された第2の処理領域P2を、回転テーブル2上に配置されたウエハが通過することとなる。
【0069】
次いで、第2のガスノズル322から酸化ガスの供給を開始し、酸化ガス供給開始ステップ(S73)を実施する。酸化ガスはそのまま連続して供給することが好ましい。なお、既述のように、水素ガスを第2のガスノズル322から供給し、酸化ガスを第2のガスノズル321から供給することもできる。酸化ガスとしては、上述のように、酸素ガスおよび/またはオゾンガスを好ましく用いることができ、特にオゾンガスを含有していることが好ましい。酸化ガス供給開始ステップ(S73)後は、水素ガス及び酸化ガスが供給された第2の処理領域P2を回転テーブル2上に配置されたウエハが通過することとなる。
【0070】
次に、シリコン含有ガスを第1のガスノズル31の供給を開始し、シリコン含有ガス供給開始ステップ(S74)を実施する。シリコン含有ガスもそのまま連続して供給することができる。シリコン含有ガスとしては特に限定されるものではないが、既述のように例えば3DMAS(トリスジメチルアミノシラン Si(N(CH
3)
2)
3H)、4DMAS(テトラキスジメチルアミノシラン Si(N(CH
3)
2))
4)等のアミノシラン系や、TCS(テトラクロロシラン SiCl
4)、DCS(ジクロロシラン SiH
2Cl
2)、SiH
4(モノシラン)、HCD(ヘキサクロロジシラン Si
2Cl
6)等を好ましく用いることができる。
【0071】
なお、既述のように、酸化ガス供給開始ステップ(S73)、及び、シリコン含有ガス供給開始ステップ(S74)の順番は限定されるものではなく、シリコン含有ガス供給開始ステップ(S74)後に、酸化ガス供給開始ステップ(S73)を実施することもできる。また、酸化ガス供給開始ステップ(S73)と、シリコン含有ガス供給開始ステップ(S74)とを同時に実施することもできる。
【0072】
酸化ガス供給開始ステップ(S73)、及び、シリコン含有ガス供給開始ステップ(S74)後は、第1の処理領域P1にはシリコン含有ガスが供給され、第2の処理領域P2には水素ガスおよび酸化ガスが供給された状態となっている。そして、後述するようにウエハWは回転テーブル2の回転により、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを交互に通過し、第1の処理領域P1で吸着工程を、第2の処理領域P2で反応工程をそれぞれ実施する。
【0073】
なお、第2のガス供給部は、2本の第2のガスノズルを備え、一方の第2のガスノズル(水素ガス供給用第2のガスノズル)からは水素ガスを、他方の第2のガスノズル(酸化ガス供給用第2のガスノズル)からは酸化ガスを、それぞれ供給できる。また、第2のガスノズルを1本のガスノズルとし、該ガスノズルと、水素ガスの供給源および酸化ガスの供給源と、の間に混合器等を設けた構成とすることもできる。この場合、水素ガス供給開始ステップから、酸化ガス供給開始ステップまでは、第2のガスノズルからは水素ガスのみが供給され、酸化ガス供給開始ステップ後は水素ガスと、酸化ガスとの混合ガスを、第2のガスノズルから供給することができる。
【0074】
また、第2のガス供給部を第2の処理領域P2に複数設置することもできる。すなわち、既述のように第2のガスノズルを複数組設置することができる。この場合の第2のガス供給部の設置位置は特に限定されないが、具体的には例えば、第2の処理領域のうち、回転テーブルの回転方向の上流側の位置と、
図3のXで示した位置、すなわち、第2の処理領域P2の円周方向の中央部に設置することができる。
【0075】
第1のガスノズル31から供給するシリコン含有ガスの供給条件は特に限定されるものではなく、回転テーブル2により回転するウエハWが第1の処理領域P1を通過する際に、ウエハWの表面にシリコン含有ガスを吸着できるよう任意に選択することができる。例えば、シリコン含有ガスの供給速度は0.1L/min以上とすることが好ましく、0.3L/min以上とすることがより好ましい。また、第1の処理領域内のシリコン含有ガスの圧力を200Pa以上とすることが好ましく、500Pa以上とすることがより好ましい。
【0076】
第2のガスノズル321、322から供給する水素ガス、酸化ガスの供給条件についても特に限定されるものではなく、ウエハWの表面に吸着したシリコン含有ガスを十分に酸化できるように任意に選択することができる。
【0077】
例えば、第2の処理領域P2に供給された水素ガス及び酸化ガスから十分にヒドロキシラジカル等を生成するために、水素ガス供給手段は、前記水素ガス供給開始ステップ後、前記反応容器に水素ガスを0.5L/min以上の供給速度で供給することが好ましい。特に、水素ガスを0.75L/min以上の供給速度で供給することがより好ましい。
【0078】
また、水素ガスと、酸化ガスと、の供給量の比率も特に限定されるものではなく、任意に選択することができる。例えば第2のガスノズル321、322から供給するガス全体の単位時間当たりの供給量を1とした場合に、水素ガスの供給量の比率が0.1以上0.6以下となるように水素ガスを供給することが好ましい。すなわち、酸化ガスとして、酸素ガスおよび/またはオゾンガスを用いる場合、[H
2]/([H
2]+[O
2]+[O
3])が0.1以上0.6以下となるように水素ガスを供給することが好ましい。
【0079】
なお、上記式における[H
2]とは、単位時間当たりに第2のガスノズルから供給するガス中の水素ガス供給量を示す。[O
2]、[O
3]は同様に、それぞれ単位時間当たりに第2のガスノズルから供給するガス中の酸素ガス、オゾンガスの供給量を示している。
【0080】
上記比率になるように水素ガスを供給することにより、十分なヒドロキシラジカル等を生成し、ウエハ表面に吸着したシリコン含有ガスの酸化反応を特に進行することができる。このため、成膜したシリコン酸化膜の膜収縮率を抑制することができる。また、成膜したシリコン酸化膜の膜収縮率を特に抑制するため、水素ガスの供給量の比率が0.2以上0.4以下となるように水素ガスを供給することがより好ましい。
【0081】
第2の処理領域P2における水素ガスと酸化ガスとの圧力は特に限定されるものではないが、回転テーブル上に載置されたウエハが第2の処理領域P2を通過する際、ウエハW表面に吸着したシリコン含有ガスを十分に酸化できるよう選択することが好ましい。具体的には例えば0.5kPa以上1.3kPa以下とすることが好ましく、0.67kPa以上1.0kPa以下とすることがより好ましい。
【0082】
なお、既述のように本実施形態の成膜装置においては、反応容器1内において、第1の処理領域P1と、第2の処理領域P2との間に、回転テーブル2の上面に対して分離ガスを供給する分離ガス供給部、すなわち、分離ガスノズル41、42が配置されている。そして、分離ガス供給部からの分離ガスを第1の処理領域と第2の処理領域へ導く狭溢な空間(分離空間H)を回転テーブル2の上面に対して形成する天井面44含む分離領域Dが配置されている。なお、天井面44は、回転テーブル2の外延に向かう方向に沿って、回転テーブル2の周方向に沿う幅が大きくなる様に形成できる。このため、回転テーブル2を回転しながら、分離ガス供給部から分離ガスを供給して第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離空間H(
図5)により分離し、反応容器1内で第1の処理領域内のガスと第2の処理領域内のガスとが互いに混合することを防止できる。
【0083】
次に、吸着工程と、反応工程について説明する。
【0084】
上述したシリコン酸化膜成膜ステップ(S75)は、吸着工程と、反応工程と、を含むステップとすることができる。ここで、吸着工程と、反応工程とは、回転テーブル2上にウエハWを載置して回転させ、シリコン含有ガスと水素ガスおよび酸化ガスとを連続的に供給することにより交互に実施できる。まず、回転テーブル2の回転によりウエハWが第1の処理領域P1を通過すると、ウエハWの表面にシリコン含有ガスを吸着する吸着工程が実施される。次いで、ウエハWが第2の処理領域Pを通過する際、ウエハWの表面に吸着したシリコン含有ガスと、第2の処理領域P2に供給された水素ガス及び酸化ガスと、が反応する反応工程が実施される。これにより、ウエハWの表面にシリコン酸化膜を成膜できる。吸着工程と反応工程とは、回転テーブル2が回転することにより交互に繰り返し実施される。
【0085】
なお、反応工程において、ウエハWに吸着されたシリコン含有ガスと、水素ガス及び酸化ガスとが反応する前に、第2の処理領域P2に供給された水素ガスと、酸化ガスとが反応してOH・(ヒドロキシラジカル)やO・(酸素ラジカル)を生成することが好ましい。これは、既述のようにOH・(ヒドロキシラジカル)は酸化力が強いため、単に酸素ガスやオゾンガスを供給し、ウエハ表面に吸着した物質を酸化処理する場合と比較して、シリコン含有ガスの酸化反応を特に進行できるためである。このため、ウエハW表面に吸着したシリコン含有ガスの酸化をより確実に進めることができ、均質な膜質を有し、加熱処理等を行った場合でも膜収縮率の小さいシリコン酸化膜を形成できる。
【0086】
図1〜
図6に示した回転テーブルを用いた成膜装置を用いた場合、吸着工程、反応工程においてシリコン含有ガス、水素ガス、酸化ガスは、回転する回転テーブル2の上面に向けて供給され、ウエハWは回転テーブル2の上面に配置されている。このため、第1のガスノズル31、第2のガスノズル321、322から供給されるガスの供給方向と、ウエハの表面(シリコン酸化膜の形成面)とが略垂直となる。そして、各ガスノズルからのガスの供給方向と、ウエハWの表面とが略垂直な状態を保ちつつ、ウエハWは、回転テーブル2の回転により、第1のガスノズル31、第2のガスノズル321、322の下面を通過することになる。このため、ウエハWの表面に対して、各ガスノズルからのガスを均一に供給することができ、ウエハ表面に均一な膜厚のシリコン酸化膜を形成することが可能になる。
【0087】
以上のようにシリコン含有ガス、水素ガス、酸化ガスを連続的に供給しながらウエハWを載置した回転テーブル2を回転させ、吸着工程と、反応工程とを交互に所定時間繰り返し実施することにより、ウエハW表面に所定の膜厚のシリコン酸化膜を形成できる。そして、所定の時間経過後、反応容器1へのガスの供給を停止し、回転テーブル2の回転を停止し、反応容器1内にウエハWを搬入したときの手順と逆の手順により、反応容器1内からウエハWを搬出する。これによりシリコン酸化膜の成膜操作が終了する。
【0088】
以上に説明した本発明の実施形態によるシリコン酸化膜の製造方法によれば、反応容器内にウエハを設置した後、所定の順番でガスの供給を開始することにより、ウエハ表面に形成された金属膜の酸化を抑制することが可能になる。
【実施例】
【0089】
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって、なんら限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例では、
図1〜
図6に示した成膜装置を用い、第1のガスノズル31からは、シリコン含有ガスとしてトリスジメチルアミノシラン(Si(N(CH
3)
2)
3H(以下、「3DMAS」とも記載する))を供給した。また、一方の第2のガスノズル321からは水素ガスを、他方の第2のガスノズル322から酸化ガスとして酸素ガスをそれぞれ供給してウエハW上にシリコン酸化膜を製造した。なお、ウエハWとしては、一方の面に膜厚10nmのタングステン膜を形成した直径300mmのシリコンウエハを用いた。なお、タングステン膜はスパッタ法により形成した。
主な成膜条件は、以下のとおりである。
・ウエハWの温度: 600℃
・3DMASの供給速度:0.3L/min
・水素ガスの供給速度:0.75L/min
・酸素ガスの供給速度:3L/min
・分離ガスの供給量(分離ガスノズル41、42の各々からの供給量):8slm
・回転テーブル2の回転速度:120rpm
そして、上記ウエハWを
図1〜
図6に示した成膜装置に設置し、反応容器1内を真空引きした後、分離ガスノズル41、42から分離ガスであるN
2ガスの供給を開始した。なお、この際、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72、73からも分離ガスを供給している。そして、回転テーブル2の回転を開始してから、以下の(a)〜(d)のステップをその順により実施してシリコン酸化膜の成膜を行った。
【0090】
なお、ウエハWの加熱は、ウエハWを成膜装置に設置してから、シリコン酸化膜を成膜後、ウエハWを搬出するまで行った。
(a)第2のガスノズル321から水素ガスの供給を開始し、水素ガス供給開始ステップを行った。水素ガス供給開始ステップ後、水素ガスは連続して供給した。
(b)水素ガス供給開始ステップ後、30秒経過した時点で第2のガスノズル322から酸素ガスの供給を開始し、酸化ガス供給開始ステップを行った。すなわち、
図8におけるT1を30秒とした。酸化ガス供給開始ステップ後、酸素ガスは連続して供給した。
(c)酸化ガス供給開始ステップ後、3秒経過した時点で第1のガスノズル31からシリコン含有ガスの供給を開始し、シリコン含有ガス供給開始ステップを行った。すなわち、
図8におけるT2を3秒とした。シリコン含有ガス供給開始ステップ後、シリコン含有ガスは連続して供給した。
(d)シリコン含有ガス、水素ガス、酸素ガスの供給を連続的に行いつつ、回転テーブル2を回転させ、ウエハ表面にシリコン酸化膜が5nm成膜されるまでシリコン酸化膜成膜ステップを実施した。
【0091】
シリコン酸化膜成膜ステップ終了後、ガスの供給を停止し、回転テーブル2の回転を止め、ウエハWを取り出して、ウエハW表面に形成されたタングステン膜の状態について評価を行った。
【0092】
ウエハW表面に形成されたタングステン膜の状態の評価は、XPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)(PHI社製 製品名:Quantera SXM)を用いて行った。具体的には、タングステン膜と、タングステン膜上に形成したシリコン酸化膜をXPSにより分析し、タングステン膜とシリコン酸化膜との界面に形成される酸化タングステン膜の膜厚を測定した。
【0093】
本実施例においては、タングステン膜表面に形成された酸化物膜の厚さは
図9に示すように1.75nmであった。
[実施例2]
実施例1の(b)工程において、水素ガス供給開始ステップ後、178秒経過した時点で第2のガスノズル322から酸素ガスの供給を開始し、酸化ガス供給開始ステップを行った点以外は実施例1と同様にしてシリコン酸化膜の成膜を行った。すなわち、
図8におけるT1を178秒とした点以外は実施例1と同様にして行った。
【0094】
ウエハW表面に形成されたタングステン膜の状態の評価も実施例1と同様にして行ったところ、タングステン膜表面に形成された酸化物膜の厚さは
図9に示すように0.48nmであった。
[比較例1]
(a)〜(d)ステップに代えて、以下の(a´)〜(d´)の手順で実施した点以外は実施例1と同様にしてシリコン酸化膜の成膜を行った。なお、(a´)ステップより前の操作手順については、実施例1の(a)ステップの前の操作手順と同様であるため、ここでは記載を省略する。
(a´)第2のガスノズル322から酸素ガスの供給を開始し、酸化ガス供給開始ステップを行った。酸化ガス供給開始ステップ後、酸素ガスは連続して供給した。
(b´)酸化ガス供給開始ステップ後3秒経過した時点で、第2のガスノズル321から水素ガスの供給を開始し、水素ガス供給開始ステップを行った。水素ガス供給開始ステップ後、水素ガスは連続して供給した。
(c´)水素ガス供給開始ステップから3秒経過した時点で、第1のガスノズル31からシリコン含有ガスの供給を開始し、シリコン含有ガス供給開始ステップを行った。シリコン含有ガス供給開始ステップ後、シリコン含有ガスは連続して供給した。
(d´)シリコン含有ガス、水素ガス、酸素ガスの供給を連続的に行いつつ、回転テーブル2を回転させ、ウエハ表面にシリコン酸化膜が5nm成膜されるまでシリコン酸化膜成膜ステップを実施した。
【0095】
シリコン酸化膜成膜ステップ終了後、実施例1と同様にしてウエハWを取り出して、ウエハW表面に形成されたタングステン膜の状態について評価を行ったところ、タングステン膜表面に形成された酸化物膜の厚さは
図9に示すように4.6nmであった。
[参照例1]
参照例1として、実施例1と同様にスパッタ法によりウエハW表面にタングステン膜を形成した試料について、XPSを用いて実施例1と同様にしてタングステン膜表面に形成された酸化膜の厚さを測定したところ、酸化タングステン層の厚さは2.1nmであった。
【0096】
以上の実施例1、2、比較例1、参照例1の結果を
図9にまとめて示す。
【0097】
実施例1、2については、参照例1よりも酸化タングステン膜の膜厚が薄くなっていることが確認できた。これは、水素ガスのみを反応容器内に最初に供給することにより、タングステン膜の酸化を抑制し、さらにはタングステン膜に含まれていた酸化タングステンを還元したためと考えられる。特に水素ガス単独で供給している時間が長い実施例2においては、酸化タングステン層の膜厚が実施例1の場合よりもさらに薄くなっていることが確認された。
【0098】
これに対して、比較例1では、酸化タングステン膜の厚さが参照例1や実施例1、2よりも極めて厚くなっていることが確認された。これは、酸化ガスである酸素ガスを最初に供給することにより、タングステン膜の酸化が進行し、酸化タングステン層が厚くなったためと考えられる。
【0099】
以上の結果から、本実施形態のシリコン酸化膜の製造方法によれば、シリコン酸化膜を成膜する際に用いるガスを所定の順番で供給することにより、ウエハ表面に形成した金属膜の酸化を抑制できることが確認できた。