特許第6196286号(P6196286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6196286基板テーブルシステム、リソグラフィ装置および基板テーブル交換方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196286
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】基板テーブルシステム、リソグラフィ装置および基板テーブル交換方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20170904BHJP
   G03F 9/00 20060101ALI20170904BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   H01L21/30 515G
   H01L21/30 516B
   G03F9/00 H
   H01L21/68 F
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-502166(P2015-502166)
(86)(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公表番号】特表2015-513225(P2015-513225A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】EP2013053084
(87)【国際公開番号】WO2013143777
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年11月11日
【審判番号】不服2016-6376(P2016-6376/J1)
【審判請求日】2016年4月28日
(31)【優先権主張番号】61/616,177
(32)【優先日】2012年3月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デ ヴェン,バスチアーン,ランバータス,ウィルヘルムス,マリヌス
(72)【発明者】
【氏名】デ グロート,アントニウス,フランシカス,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ホーゲンダム,クリスティアーン,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ループストラ,エリック,ルーロフ
(72)【発明者】
【氏名】バトラー,ハンズ
【合議体】
【審判長】 伊藤 昌哉
【審判官】 松川 直樹
【審判官】 小松 徹三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−134456号公報(JP,A)
【文献】 特開2008−147635号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板テーブルと、第1方向および前記第1方向に直交する第2方向によって画定される水平な移動平面内で前記基板テーブルを移動させる双方向性モータと、を備える基板テーブルシステムであって、前記双方向性モータは、
前記第1方向に延在する第1プッシャ構造であって、前記基板テーブルが前記第1プッシャ構造に対して移動可能であり、前記第1プッシャ構造および前記基板テーブルは、協働して、前記第1プッシャ構造と前記基板テーブルとの間に前記第1方向の力を及ぼす第1モータを形成する、第1プッシャ構造と、
前記第1方向に延在する第2プッシャ構造であって、前記基板テーブルが前記第2プッシャ構造に対して前記第1および第2方向に沿って移動可能であり、前記第2プッシャ構造および前記基板テーブルは、協働して、前記第2プッシャ構造と前記基板テーブルとの間に前記第2方向の力を及ぼす第2モータを形成する、第2プッシャ構造と、を備え、
前記第1および第2プッシャ構造は、前記第2方向に沿って延在するフレーム構造に移動可能に接続され、前記フレーム構造は、前記第2方向に沿って前記第1プッシャ構造を案内するためのガイドフレームであり、
前記第1モータは前記基板テーブルの実質的に重心に力を及ぼすように構成され、前記第2モータは非接触モータである、基板テーブルシステム。
【請求項2】
前記基板テーブルには、前記第1プッシャ構造の少なくとも一部を収容する、前記第1方向に沿って延在する開口が設けられる、請求項1に記載の基板テーブルシステム。
【請求項3】
前記フレーム構造は、前記第2方向に沿って延在する2つの平行なガイドフレームを備え、前記第1プッシャ構造は、前記第1方向に沿って、一方の前記ガイドフレームから前記ガイドフレーム間の実質的に中間まで延在する、請求項1または2に記載の基板テーブルシステム。
【請求項4】
前記第2プッシャ構造は、前記第1方向に沿って、一方の前記ガイドフレームから他方の前記ガイドフレームまで延在する、請求項3に記載の基板テーブルシステム。
【請求項5】
前記第1プッシャ構造に含まれる前記第1モータの一部は、実質的に、前記第1プッシャ構造の長さに沿って前記第1方向に延在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の基板テーブルシステム。
【請求項6】
前記第2プッシャ構造に含まれる前記第2モータの一部は、前記第1プッシャ構造に沿って延在する前記第1モータの前記一部の長さと少なくとも同じ長さに沿って前記第1方向に延在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の基板テーブルシステム。
【請求項7】
前記第1および第2モータはそれぞれ、前記第1、第2プッシャ構造それぞれに含まれる磁石と、前記基板テーブルに含まれるコイルとで形成される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の基板テーブルシステム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の基板テーブルシステムを備えるリソグラフィ装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の基板テーブルシステムを2つ備え、前記基板テーブルシステムの前記基板テーブルが、前記基板テーブルシステムの前記第2プッシャ構造同士の間に配置される、請求項8に記載のリソグラフィ装置。
【請求項10】
前記第2方向に沿って見た場合、前記第1プッシャ構造は、前記第2プッシャ構造より低い高さを有し、前記基板テーブル同士の衝突を防ぐ中心クラッシュポールの周りに対称的に配置される、請求項9に記載のリソグラフィ装置。
【請求項11】
前記基板テーブルはそれぞれ、当該基板テーブルがその第2プッシャ構造に対向する側と、当該基板テーブルが他方の第2プッシャ構造に対向する側とに前記第2モータのそれぞれの一部を備える、請求項9または10に記載のリソグラフィ装置。
【請求項12】
前記リソグラフィ装置の投影システムの下に一方の前記基板テーブルを位置決めすることと、
他方の前記基板テーブルを、一方の前記基板テーブルに対して前記第1方向に隣接するように位置決めすることと、
前記他方の基板テーブルが前記投影システムの下に位置決めされる位置まで、前記一方および前記他方の基板テーブルを前記第1方向に同期的に移動させることと、
各基板テーブルに関して、それぞれの基板テーブルと、他方の前記基板テーブルシステムの前記第2プッシャ構造との間の接続を確立することと、
各基板テーブルに関して、それぞれの基板テーブルと、その基板テーブルが交換前に接続されていた前記第2プッシャ構造との間の接続を解除することと、により前記基板テーブルシステムの前記基板テーブルを交換する、請求項9または10に記載のリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001] 本出願は、2012年3月27日に出願された米国仮特許出願第61/616,177号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、基板テーブルシステム、かかる基板テーブルシステムを備えるリソグラフィ装置、および基板テーブルを交換する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上、通常、基板のターゲット部分上に付与する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に用いることができる。そうした場合、ICの個々の層上に形成される回路パターンを生成するために、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを用いることができる。このパターンは、基板(例えば、シリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば、ダイの一部、または1つ以上のダイを含む)に転写することができる。通常、パターンの転写は、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層上への結像によって行われる。一般には、単一の基板が、連続的にパターニングされる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。従来のリソグラフィ装置としては、ターゲット部分上にパターン全体を一度に露光することにより各ターゲット部分を照射する、いわゆるステッパ、および放射ビームによってある特定の方向(「スキャン」方向)にパターンをスキャンすると同時に、この方向に平行または逆平行に基板をスキャンすることにより各ターゲット部分を照射する、いわゆるスキャナが含まれる。パターンを基板上にインプリントすることにより、パターニングデバイスから基板にパターンを転写することも可能である。
【0004】
[0004] 現在、リソグラフィ用途では、基板を保持するように構成される基板テーブル(基板ステージとも特定される)を移動するために2つの異なるタイプのモータ構成が使用されている。
【0005】
[0005] 第1のタイプは、参照によりその全体が本明細書に包含される国際公開第98/40791A1号に開示されている。この構成において、基板テーブルは石材プレートなどのベースプレートにより支持される。基板テーブルは、このベースプレートの上面上を、例えば、空気軸受によって支持されて移動可能であり、この上面がX−Y水平面を画定する。Y梁はX方向に沿って延在する。Y梁のY方向の移動により、Y方向における基板テーブルの粗動位置決め(すなわち、ロングストローク)がもたらされる。Y梁に沿って基板テーブルをX方向に移動するため、Y梁にはXモータが設けられ、それにより、X方向における基板テーブルの粗動位置決め(すなわち、ロングストローク)がもたらされる。微動位置決めは、基板テーブルをXモータに対して移動させるショートストロークアクチュエータによってもたらされる。このような構成における最大処理能力(bandwidth)という点での性能は、Y梁の剛性によって大きく制限される。つまり、Y梁に生じる共振が加速度、整定時間等の点での最大性能を制限する場合がある。
【0006】
[0006] 第2のタイプは、参照によりその全体が本明細書に包含される国際公開第01/18944A1号に開示されている。この構成において、基板テーブルは磁気プレートの上を移動し、磁石が基板テーブルに設けられたコイルと組み合わされて6自由度での基板テーブルの駆動を可能にする。この構成は、真空での動作を可能にする(基板テーブルを支持するための空気軸受が必要ない)といった多くのメリットがある一方、基板テーブル内のコイルと組み合わされた磁気プレートが、基板テーブルに対してその重心下に作用する推進力を引き起こす結果となり得るため、リソグラフィ装置のその他の部分に外乱力および外乱トルクを生じる場合がある。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 高い処理能力を可能にする基板テーブルシステムを提供することが望ましい。
【0008】
[0008] 本発明の一実施形態によれば、基板テーブルと、第1方向および第1方向に直交する第2方向によって画定される水平な移動平面内で基板テーブルを移動させるための双方向性モータとを備える基板テーブルシステムであって、双方向性モータが、
−第1方向に延在する第1プッシャ構造であって、基板テーブルが第1プッシャ構造に対して移動可能であり、第1プッシャ構造および基板テーブルは、協働して、第1プッシャ構造と基板テーブルとの間に第1方向の力を及ぼすように配置される第1モータを形成するように配置される、第1プッシャ構造と、
第1方向に延在する第2プッシャ構造であって、基板テーブルが第2プッシャ構造に対して(第1および第2方向に沿って)移動可能であり、第2プッシャ構造および基板テーブルは、協働して、第2プッシャ構造と基板テーブルとの間に第2方向の力を及ぼすように配置される第2モータを形成するように配置される、第2プッシャ構造と、を備える、基板テーブルシステムが提供される。
【0009】
[0009] 本発明の別の実施形態では、本発明の一実施形態に係る基板テーブルシステムを備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0010】
[0010] 本発明のさらに別の実施形態によれば、測定エリアおよび露光エリアを含み、この測定エリアと露光エリアの間の境界線が第1方向に延在するデュアルステージリソグラフィ装置において基板テーブルを交換する方法であって、リソグラフィ装置の投影システムの下に一方の基板テーブルを位置決めすることと、他方の基板テーブルを測定エリアから露光エリアへ移動し、他方の基板テーブルを、上記第1の基板テーブルに対して第1方向に隣接するように位置決めすることと、上記他方の基板テーブルが投影システムの下に位置決めされる位置まで、上記第1および第2の基板テーブルを第1方向に同期的に移動することと、上記一方の基板テーブルを露光エリアから測定エリアへ移動することと、を含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
[0011] 本発明のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の概略図を参照して以下に説明する。これらの図面において同じ参照符号は対応する部分を示す。
図1】[0012] 図1は、本発明の一実施形態を設けることが可能なリソグラフィ装置を示す。
図2】[0013] 図2は、本発明の一実施形態に係る基板テーブルシステムのきわめて概略的な上面図を示す。
図3】[0014] 図3は、本発明の一実施形態に係る基板テーブルシステムの斜視図を示す。
図4】[0015] 図4Aおよび4Bはそれぞれ、本発明の一実施形態に係る基板テーブルシステムの上面図を示す。
図5】[0016] 図5A〜5Dは、本発明の一実施形態に係る基板テーブル交換方法を示す。
図6】[0017] 図6Aおよび6Bは、本発明の一実施形態に係る基板テーブルシステム(の一部)の斜視図および上面図をそれぞれ示す。
図7】[0018] 図7は、本発明の一実施形態に係る基板テーブルシステムの上面図を示す。
図8】[0019] 図8A〜8Cは、本発明の一実施形態に係る基板テーブルシステムに適用可能なリラクタンスモータの概略図を示す。
【0012】
[0020] これらの図面において、同一または同様の参照符号は同一、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0021] 図1は、本発明の一実施形態に係るリソグラフィ装置を概略的に示している。このリソグラフィ装置は、放射ビームB(例えば紫外線またはその他の好適な放射)を調整するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構築され、かつ特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1位置決めデバイスPMに連結されたパターニングデバイスサポート構造またはパターニングデバイスサポート(例えば、マスクテーブル)MTと、を含む。このリソグラフィ装置は、基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、かつ特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2位置決めデバイスPWに連結された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WTまたは「基板サポート」も含む。このリソグラフィ装置はさらに、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付けられたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSも含む。
【0014】
[0022] 照明システムとしては、放射を誘導し、整形し、または制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、またはその他のタイプの光学コンポーネント、あるいはそれらのあらゆる組合せなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。
【0015】
[0023] パターニングデバイスサポート構造は、パターニングデバイスを支持する、すなわち、パターニングデバイスの重量を支える。パターニングデバイスサポート構造は、パターニングデバイスの向き、リソグラフィ装置の設計、および、パターニングデバイスが真空環境内で保持されているか否かなどの他の条件に応じた態様で、パターニングデバイスを保持する。パターニングデバイスサポート構造は、機械式、真空式、静電式またはその他のクランプ技術を使って、パターニングデバイスを保持することができる。パターニングデバイスサポート構造は、例えば、必要に応じて固定または可動式にすることができるフレームまたはテーブルであってもよい。パターニングデバイスサポート構造は、パターニングデバイスを、例えば、投影システムに対して所望の位置に確実に置くことができる。本明細書において使用される「レチクル」または「マスク」という用語はすべて、より一般的な「パターニングデバイス」という用語と同義であると考えるとよい。
【0016】
[0024] 本明細書において使用される「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分内にパターンを作り出すように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用できるあらゆるデバイスを指していると、広く解釈されるべきである。なお、留意すべき点として、放射ビームに付与されたパターンは、例えば、そのパターンが位相シフトフィーチャまたはいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分内の所望のパターンに正確に一致しない場合もある。通常、放射ビームに付けたパターンは、集積回路などのターゲット部分内に作り出されるデバイス内の特定の機能層に対応することになる。
【0017】
[0025] パターニングデバイスは、透過型であっても、反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、マスク、プログラマブルミラーアレイ、およびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクは、リソグラフィでは公知であり、バイナリ、レべンソン型(alternating)位相シフト、およびハーフトーン型(attenuated)位相シフトなどのマスク型、ならびに種々のハイブリッドマスク型を含む。プログラマブルミラーアレイの一例では、小型ミラーのマトリックス配列が用いられており、各小型ミラーは、入射する放射ビームを様々な方向に反射させるように、個別に傾斜させることができる。傾斜されたミラーは、ミラーマトリックスによって反射される放射ビームにパターンを付ける。
【0018】
[0026] 本明細書において使用される「投影システム」という用語は、使われている露光放射にとって、あるいは液浸液の使用または真空の使用といった他の要因にとって適切な、屈折型、反射型、反射屈折型、磁気型、電磁型、および静電型光学系、またはそれらのあらゆる組合せを含むあらゆる型の投影システムを包含していると広く解釈されるべきである。本明細書において使用される「投影レンズ」という用語はすべて、より一般的な「投影システム」という用語と同義であると考えるとよい。
【0019】
[0027] 本明細書に示されているとおり、リソグラフィ装置は、透過型のもの(例えば、透過型マスクを採用しているもの)である。また、リソグラフィ装置は、反射型のもの(例えば、上述のプログラマブルミラーアレイを採用しているもの、または反射型マスクを採用しているもの)であってもよい。
【0020】
[0028] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)以上の基板テーブルまたは「基板サポート」(および/または2つ以上のマスクテーブルまたは「マスクサポート」)を有する型のものであってもよい。そのような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブルまたはサポートは並行して使うことができ、または予備工程を1つ以上のテーブルまたはサポート上で実行しつつ、別の1つ以上のテーブルまたはサポートを露光用に使うこともできる。
【0021】
[0029] また、リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を満たすように、比較的高屈折率を有する液体(例えば水)によって基板の少なくとも一部を覆うことができるタイプのものであってもよい。また、リソグラフィ装置内の別の空間(例えば、パターニングデバイスと投影システムとの間)に液浸液を加えてもよい。液浸技術は、投影システムの開口数を増加させるために使用することができる。本明細書において使用される「液浸」という用語は、基板のような構造物を液体内に沈めなければならないという意味ではなく、単に、露光中、投影システムと基板との間に液体があるということを意味するものである。
【0022】
[0030] 図1を参照すると、イルミネータILは、放射源SOから放射ビームを受ける。例えば、放射源がエキシマレーザである場合、放射源とリソグラフィ装置は、別個の構成要素であってもよい。そのような場合には、放射源は、リソグラフィ装置の一部を形成しているとはみなされず、また放射ビームは、放射源SOからイルミネータILへ、例えば、適切な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムBDを使って送られる。その他の場合においては、例えば、放射源が水銀ランプである場合、放射源は、リソグラフィ装置の一体部分とすることもできる。放射源SOおよびイルミネータILは、必要ならばビームデリバリシステムBDとともに、放射システムと呼んでもよい。
【0023】
[0031] イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調節するように構成されたアジャスタADを含むことができる。一般に、イルミネータの瞳面内の強度分布の少なくとも外側および/または内側半径範囲(通常、それぞれσ-outerおよびσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。さらに、イルミネータILは、インテグレータINおよびコンデンサCOといった様々な他のコンポーネントを含むことができる。イルミネータを使って放射ビームを調整すれば、放射ビームの断面に所望の均一性および強度分布をもたせることができる。
【0024】
[0032] 放射ビームBは、パターニングデバイスサポート構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されているパターニングデバイス(例えば、マスク)MA上に入射して、パターニングデバイスによってパターン形成される。パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを通り抜けた後、放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSは、基板Wのターゲット部分C上にビームの焦点をあわせる。第2位置決めデバイスPWおよび位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、または静電容量センサ)を使って、例えば、様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路内に位置決めするように、基板テーブルWTを正確に動かすことができる。同様に、第1位置決めデバイスPMおよび別の位置センサ(図1には明示的に示されていない)を使い、例えば、マスクライブラリから機械的に取り出した後またはスキャン中に、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを放射ビームBの経路に対して正確に位置決めすることもできる。通常、パターニングデバイスサポート(例えば、マスクテーブル)MTの移動は、第1位置決めデバイスPMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)およびショートストロークモジュール(微動位置決め)を使って達成することができる。同様に、基板テーブルWTまたは「基板サポート」の移動も、第2ポジショナPWの一部を形成するロングストロークモジュールおよびショートストロークモジュールを使って達成することができる。ステッパの場合は(スキャナとは対照的に)、パターニングデバイスサポート(例えば、マスクテーブル)MTは、ショートストロークアクチュエータのみに連結されてもよく、または固定されてもよい。パターニングデバイス(例えば、マスク)MAおよび基板Wは、パターニングデバイスアライメントマークM1およびM2と、基板アライメントマークP1およびP2とを使って、位置合わせされてもよい。例示では基板アライメントマークが専用ターゲット部分を占めているが、基板アライメントマークをターゲット部分とターゲット部分との間の空間内に置くこともできる(これらは、スクライブラインアライメントマークとして公知である)。同様に、複数のダイがパターニングデバイス(例えば、マスク)MA上に設けられている場合、パターニングデバイスアライメントマークは、ダイとダイの間に置かれてもよい。
【0025】
[0033] 例示の装置は、以下に説明するモードのうち少なくとも1つのモードで使用できる。
1.ステップモードにおいては、パターニングデバイスサポート構造(例えば、マスクテーブル)MTまたは「マスクサポート」および基板テーブルWTまたは「基板サポート」を基本的に静止状態に保ちつつ、放射ビームに付けられたパターン全体を一度にターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一静的露光)。その後、基板テーブルWTまたは「基板サポート」は、Xおよび/またはY方向に移動され、それによって別のターゲット部分Cを露光することができる。ステップモードにおいては、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光時に結像されるターゲット部分Cのサイズが限定される。
2.スキャンモードにおいては、パターニングデバイスサポート構造(例えば、マスクテーブル)MTまたは「マスクサポート」および基板テーブルWTまたは「基板サポート」を同期的にスキャンする一方で、放射ビームに付けられたパターンをターゲット部分C上に投影する(すなわち、単一動的露光)。パターニングデバイスサポート構造(例えば、マスクテーブル)MTまたは「マスクサポート」に対する基板テーブルWTまたは「基板サポート」の速度および方向は、投影システムPSの(縮小)拡大率および像反転特性によって決めることができる。スキャンモードにおいては、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光時のターゲット部分の幅(非スキャン方向)が限定される一方、スキャン動作の長さによって、ターゲット部分の高さ(スキャン方向)が決まる。
3.別のモードにおいては、プログラマブルパターニングデバイスを保持した状態で、パターニングデバイスサポート構造(例えば、マスクテーブル)MTまたは「マスクサポート」を基本的に静止状態に保ち、また基板テーブルWTまたは「基板サポート」を動かす、またはスキャンする一方で、放射ビームに付けられているパターンをターゲット部分C上に投影する。このモードにおいては、通常、パルス放射源が採用されており、さらにプログラマブルパターニングデバイスは、基板テーブルWTまたは「基板サポート」の移動後ごとに、またはスキャン中の連続する放射パルスと放射パルスとの間に、必要に応じて更新される。この動作モードは、前述の型のプログラマブルミラーアレイといったプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0026】
[0034] 上述の使用モードの組合せおよび/またはバリエーション、あるいは完全に異なる使用モードもまた採用可能である。
【0027】
[0035] 図2は、本発明の一実施形態に係る基板テーブルシステムのきわめて概略的な上面図を示す。この基板テーブルシステムは、石材要素( stone element)の表面のようなベース面によって支持される基板テーブルWTを備える。基板テーブルはベース面の上を移動可能であり、したがって、ベース面は、X方向(第1方向とも呼ぶ)およびY方向(第2方向とも呼ぶ)によって画定される移動平面を形成する。基板テーブルシステムは、X方向に延在する第1プッシャ構造FPSを備える。基板テーブルWTは、第1モータを使用することで第1プッシャ構造FPSに対して移動可能となっており、これについては以下でより詳細に説明する。第1モータは、作動すると基板テーブルに力を及ぼす。第2プッシャ構造SPSは、基板テーブルに隣接してX方向に、すなわち、基板テーブルの第1方向に延在する一辺に沿って延在する。基板テーブルは、第2プッシャ構造に沿って第1(X)方向に移動可能となっており、したがって、第1プッシャ構造に設けられた第1モータによる推進力を受けると基板テーブルは第1方向に移動することができる。第2モータは、第2プッシャ構造に対して第2方向の力を基板テーブルに及ぼすように設けられる。図2に示すような構成は、第1モータが基板テーブルの実質的に重心に力を及ぼし、かつ/または第2モータが基板テーブルの実質的に重心に力を及ぼすことを可能にし得る。広範囲にわたる第1方向の移動を提供するために、第2プッシャ構造に含まれる第2モータの一部が第2プッシャ構造の長さのかなりの部分に沿って延在してよい。第1プッシャ構造は、基板テーブルの適当な開口内まで延在してよい。第1プッシャ構造は、その一端でガイドフレームGFに移動可能に接続され、このガイドフレームに沿って第2方向に第1プッシャ構造を移動するためのモータが設けられてよい。同じように、第2プッシャ構造は、本実施形態においてはその両端でガイドフレームGFに移動可能に接続され、このガイドフレームに沿って第2方向に第2プッシャ構造を移動するためのモータがそれぞれ設けられてよい。その結果、第2プッシャ構造を移動し、第1プッシャ構造を適切に追従させ、それにより第2プッシャ構造が(第2モータを介して)基板テーブル上に力を及ぼすことで、基板テーブルの第2方向におけるロングストローク(粗動)位置決めが提供され得る。なお、図2は、水平(すなわち、第1、x)方向に沿った2つの位置にある基板テーブルWTを示しており、基板テーブルWTは、第1プッシャ構造FPSに関連付けられた第1モータにより及ぼされる力を使用して一方の位置から他方の位置へと動かされていることに留意すべきである。また、図2以降において、および図2以降に関連して「基板テーブル」と特定されるものは、別の位置決めデバイス、例えば、基板テーブルの精密なショートストローク位置決めを含んでもよい。つまり、第1および第2プッシャ構造に関連付けられた第1および第2モータは、基板の直接駆動、(追加のショートストローク基板位置決め構成を介した)間接駆動を提供し得る。
【0028】
[0036] 本明細書に開示される概念は、第1および第2モータによって基板テーブルの重心に力を及ぼすことを可能にすることに加えて、高い処理能力も可能にする。第1に、第1プッシャ構造が基板テーブルに対して第1方向に、すなわち、第1プッシャ構造が延在するのと同じ方向に力を及ぼすため、第1プッシャ構造における共振モード効果を大幅に回避することができる。第2に、第2プッシャ構造は第2モータを介して基板テーブルに接続されている。一実施形態において、第2モータはローレンツモータのような非接触モータである。そのため、現状の技術においては基板テーブルの位置不正確な移動へと変換されることになるであろう、第2プッシャ構造におけるいずれの共振モードも基板テーブルから切り離すことができる。そのため、高い処理能力を達成可能であり、第2プッシャ構造を比較的軽量に構築することが可能であり、このことは処理能力にプラスの影響をもたらす傾向があり得る。また、大型の磁気プレートを有する公知のモータ構成と異なり、本発明に係る構成では垂直方向に大きな力が生成されることがなく、それにより高レベルの固有安全性を発揮し得る。また、このような公知の構成と比較して、必要となる磁石が少なく、このことが材料コストの削減につながる可能性もある。なお、第1および第2モータは任意の好適なタイプのアクチュエータを備えてよいことに留意すべきである。
【0029】
[0037] 図2に示す例において、第2プッシャ構造は、国際公開第98/40791A1号に記載されるような従来のモータにおけるいわゆるY梁と同様の構造により形成されてよい。さらに別の例が記載されており、これは図3〜4を参照して以下で説明される。
【0030】
[0038] 図3は、デュアルステージリソグラフィ装置において使用し得る、デュアルステージ基板テーブルシステム(すなわち、2つの(デュアル)基板テーブルシステムを備えるシステム)の斜視図を示す。各基板テーブルシステムは、図2に示す実施形態に関して上述された原理に基づいて構築されている。両方の基板テーブルが移動可能に接続されたガイドフレームGFが設けられる。基板W1を保持する第1の基板テーブルWT1は、対応する第1プッシャ構造FPS1および第2プッシャ構造SPS1に関連付けられる。モータM1によって、第1プッシャ構造FPSに対して第1方向の力が基板テーブルWT1に及ぼされる一方、第2モータM2によって、基板テーブルと第2プッシャ構造との間に第2方向の力が及ぼされる。基板W2を保持する第2の基板テーブルWT2は、対応する第1プッシャ構造FPS2および第2プッシャ構造SPS2に関連付けられる。第1基板テーブルWT1は、例えば、基板表面の平坦度測定が行われる測定エリアにおいて移動することができる一方、第2基板テーブルは、例えば、パターン形成された放射ビームで基板を露光することが行われ得る露光エリアにおいて移動する。基板テーブル(WT1およびWT2)は第2プッシャ構造(SPS1およびSPS2)の間に配置される。すなわち、各基板テーブルの第2プッシャ構造は、それぞれの基板テーブルの一辺であって、(第2方向に見て)他方の基板テーブルに対向するのと反対側の一辺に設けられることにより、最大の移動範囲をもたらし、第2支持構造が例えば他方の基板テーブルに衝突することを大幅に回避することができる。各基板テーブルの第1プッシャ構造は、デュアル基板テーブルシステムのほぼ中心まで延在することにより、以下で説明されるように、基板テーブルが第1方向に見て互いに隣り合うように配置され、例えば、交換を行うことができるようにしている(以下でより詳細に説明される)。(例えば、第2プッシャ構造SPS1およびSPS2の移動範囲が制限されることを回避しつつ、基板テーブル同士の衝突を防ぐため、第2プッシャ構造より低い高さの)中央クラッシュポールCCPがさらに設けられてもよい。第1および第2モータは、それぞれ、ローレンツモータのような非接触モータであってよく、それにより、基板テーブルが第1、第2プッシャ構造それぞれの共振を捕捉することを大幅に防ぐことが可能である。同じように、第1および第2プッシャ構造をガイドフレームGFのガイド梁GB1およびGB2に対して駆動するモータも、ローレンツモータのような非接触モータであってよい。各モータにおいて、静止部に磁石が設けられる一方、可動部にコイルが設けられる(しかしながら、これと反対の構成もまた可能である)。第1プッシャ構造は、断面図において、第1方向に沿ってその両側に窪みがあり、この窪みの長さに沿って磁石が設けられ、また、協働するコイルが基板テーブルの対応する突出部に設けられることにより、第1モータが形成される。同じように、第2プッシャ構造には、第2プッシャ構造の基板テーブルに対向する側に沿って第1方向に延在する窪みが設けられる。同様に、この窪みに沿って磁石が設けられる一方、基板テーブルの対応する突出部にコイルが設けられ、この磁石とコイルとが(電源を投入されると)第2方向に力を発生させるように構成され、これにより第2モータが形成される。広い移動範囲を提供するため、窪みと対応する磁石とは第2プッシャ梁の長さに沿って延在し得る。第2モータを形成する突出部およびコイルは、基板テーブルの両側に(すなわち、第2プッシャ構造に対向する側と、第2プッシャ構造に対向する側と反対側に)設けることにより、以下で説明されるように、交換を可能にすることができる。さらに、第2モータM2を2つのコイルで形成し(例えば、基板テーブルの両側それぞれに2つコイルを設け、それぞれの側においてコイル同士を第1方向に離間させる)、生成される力に回転成分、この例においては垂直軸(すなわち、第1および第2方向に直交する軸)周りのトルク、を許容するようにしてもよい。磁石を窪みの中に設け、この窪み内で延在する突出部にコイルを設けるという類似のモータ構成を、第1および第2プッシャ構造ならびにガイドフレームに形成することにより、第1および第2プッシャ構造をガイドフレームGFに対して移動させるモータが形成される。
【0031】
[0039]図4Aは、図3を参照して上述されたデュアルステージ設計の上面図を示す。第1および第2プッシャ構造を一定の距離に保ち、それにより、第1および第2プッシャ構造を同期的に駆動させる際のエラーによって機械的損傷が生じることを可能な限り防ぐように、第1および第2プッシャ構造はインターロックILによって機械的に相互連結されてよい。
【0032】
[0040] 次に、図4Aおよび4Bを参照して基板ステージ交換について説明する。例えば、図4Aに示されるような並置状態からスタートし、測定側にある基板テーブルWT2を露光側に移動して基板テーブル同士が第1(x)方向に見て隣接するように位置決めする。そして、両方の基板テーブルを第1方向に同期的に移動して、(露光側で投影システムの下にあった)第1基板テーブルを投影システムから離れるように移動する一方、他方の基板テーブルを投影システムの下になる位置に移動する。これにより、例えば、基板と投影システムの最終光学要素との間に液浸液が供給される液浸システムにおいて、迅速な交替を行い得る。各基板テーブルには、突出部と、両方の基板テーブルと協働するための対応するコイルとが設けられているため、両方の基板テーブルは、(例えば、第2モータの対応するコイルに電源を入れたり切ったりすることにより)それぞれの第2プッシャ構造から切り離され、それぞれの他方の第2支持構造に接続される。すると、第1基板テーブルは測定エリアに移動することができ、このようにして基板テーブルの交換が行われる。
【0033】
[0041] 第1および第2基板テーブルを第1方向に互いに隣接するように位置決めし、これらを第1方向に同期的に移動することで他方の基板テーブルを投影システムの下に位置決めした後、投影システムの下にあった一方の基板テーブル(すなわち、露光が行われた基板テーブル)を測定エリアに移動するという上述の交換スキームは、(例えば、別のタイプのモータを使用する)あらゆる駆動構成において、操作に必要となる追加のスペースを最小限に抑えながら迅速な基板ステージ交換を可能にすることに留意すべきである。この交換の一例が図5A〜5Dに示されている。ここで、第1方向は、測定エリアと露光エリアの間の境界線に平行な方向であって、図5A〜5Dにおいて点線で示される通りであることに留意すべきである。図5Aは、第1基板テーブルWT1が露光領域にあって、かつ投影システム(PSとして概略的に表されている)の下にあり、第2基板テーブルWT2が測定領域にある状態を示している。第2基板テーブルWT2は露光領域へと移動し、その結果が図5Bに示される。両方の基板テーブルが第1方向に同時に移動することにより、第2基板テーブルWT2が投影システムPSの下となり(図5C)、第1基板テーブルWT1は測定エリアへと移動する(図5D)。
【0034】
[0042] 上記において簡単に述べたように、様々なタイプのモータを適用し得る。プッシャ構造に磁石を設け、基板テーブルにコイルを設けたローレンツモータを有する実施形態を図6Aおよび6Bを参照して説明し、プッシャ構造にコイルを、基板テーブルに磁石を有する実施形態を、図7を参照して説明する。
【0035】
[0043] 図6Aは、基板テーブルシステムの一部、実質的には、図3および4を参照して説明されたような基板テーブルシステムの半分を表す斜視図を示す。第1モータの第1磁石MGM1は第1プッシャ構造に設けられる。この例では、第1モータM1のコイル(図に示されず)と協働して第1方向に力を及ぼすために、反対の磁極をもつ第1磁石のアレイが第1方向に延在している。第2プッシャ構造SPSには第2磁石MGM2が設けられ、この第2磁石が第2モータCM2のコイルと協働する。なお、図示された実施形態において、交換を可能にし、かつ、上述のようなデュアルステージ構成において他方の第2支持構造と基板テーブルとが協働することを可能にするため、基板テーブルは(上述の通り)両側で第2プッシャ構造と協働するように配置されている。ここで、現在アクティブになっている第2モータCM2のコイルは、基板テーブルの第2支持構造に対向する側のコイルであると理解すべきであり、それにより、磁石MGM2とともに第2モータM2が形成される。なお、磁石は、該当のモータによって生成される力の方向に見て、交互に反対の極性を有していることに留意すべきである。図6Bは、同一または同様の構成の上面図を示し、モータ1およびモータ2の対応するコイルCM1およびCM2を示している。モータM1がX方向のロングストロークを提供する一方、モータM2がY方向のショートストロークを提供する。同様に、第1プッシャ構造FPS1の、ガイド梁GB1(に設けられた対応する磁石)と協働する部分にコイルが設けられ、Y方向における第1プッシャ構造のロングストロークモータLSY3が形成される。同様に、第2プッシャ構造SPS1の両端部にあるコイルがガイド梁と協働して、第2プッシャ構造の、したがって、基板テーブルWT1のロングストロークモータLSY、LSY2を形成する。同様の構成が第2基板テーブルWT2にも設けられる。なお、第1および第2モータはそれぞれ、当該モータによる力の向きと直交する方向に互いに一定の距離を置いて延在する2つの(デュアル)コイルを備えるため、当該コイルの差動駆動により(例えば、Z軸に対して)トルクを生成することも可能であることに留意すべきである。
【0036】
[0044] 図7は、(第1および第2モータに関して)第1および第2プッシャ構造FPS1、FPS2、SPS1、SPS2にコイルCM1、CM2がそれぞれ設けられる一方、磁石(ここでは図示されていない)が基板テーブルに設けられることにより、同様のモータ:ロングストロークxLSX、ショートストロークY(Y1、Y2)およびロングストロークY(LSY、LSY2、LSY3)が設けられる構成を示している。
【0037】
[0045] なお、図示された例において、第1および第2プッシャ構造には、第2方向に見た両側に第1方向に沿って延在する窪みが設けられ、第1および第2モータは、例えば、窪みの壁の中と、この窪みの内部に向かって突出する基板テーブルの突出部の中とにそれぞれあるコイルおよび磁石によって形成されることに留意すべきである。
【0038】
[0046] ローレンツモータを適用する代わりに、他のモータ構成、例えば、図8A〜8Cを参照して説明されるようなリラクタンス型モータを適用することも可能である。第2プッシャ構造によって提供される「Yプッシャ」は、基板テーブルを移動するために必要な力の合計を作り出さなければならない。これには比較的大きな散逸(dissipation)が必要となり得る。標準的なプル・プル(pull-pull)型のリラクタンスアクチュエータは、X梁がキャリアから離れて移動可能でなければならないため、使用できない場合がある。ソーヤ(Saywer)型の構造を有するリラクタンスモータは使用し得る。各モータは、(第2プッシャ構造の梁に接続された)ステータ内のティースと、可動部(基板テーブル)上のコイルとを使用する。可動部MVとステータSTのいずれも、(少なくとも部分的に)鉄または鉄含有金属合金からなる。コイルCLSを流れる電流が図8Aにおける平衡位置に向けて力をもたらす。しかしながら、この平衡位置において水平方向に力がかからない場合がある。そのため、モータはわずかに平衡を外れて使用され得る。
【0039】
[0047] 図8Bに示されるように、コイル電流によって可動部に左向きにかかる力を作り出すことができる。左右両方の向きに力を作り出すことができるように、図8Cに示す上面図にあるような2組のアクチュエータを適用する。左から数えてモータ1およびモータ4は、作動すると+y方向にモータを駆動し、モータ2およびモータ3は、作動すると−y方向にモータを駆動する。このようにして、両方向に力を作用させることができる(プル・プル概念)。このような低電力リラクタンスアクチュエータは、モータを切断することでX梁から基板テーブルを切り離すことを可能にしつつ、使用することができる。+yおよび−y両方向の力を発生し得る。
【0040】
[0048] 本明細書において、IC製造におけるリソグラフィ装置の使用について具体的な言及がなされているが、本明細書記載のリソグラフィ装置が、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンスパターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造といった他の用途を有し得ることが理解されるべきである。当業者にとっては当然のことであるが、そのような別の用途においては、本明細書で使用される「ウェーハ」または「ダイ」という用語はすべて、それぞれより一般的な「基板」または「ターゲット部分」という用語と同義であるとみなしてよい。本明細書に記載した基板は、露光の前後を問わず、例えば、トラック(通常、基板にレジスト層を塗布し、かつ露光されたレジストを現像するツール)、メトロロジーツール、および/またはインスペクションツールで処理されてもよい。適用可能な場合には、本明細書中の開示内容を上記のような基板プロセシングツールおよびその他の基板プロセシングツールに適用してもよい。さらに基板は、例えば、多層ICを作るために複数回処理されてもよいので、本明細書で使用される基板という用語は、すでに多重処理層を包含している基板を表すものとしてもよい。
【0041】
[0049] 光リソグラフィの関連での本発明の実施形態の使用について上述のとおり具体的な言及がなされたが、当然のことながら、本発明は、他の用途、例えば、インプリントリソグラフィに使われてもよく、さらに状況が許すのであれば、光リソグラフィに限定されることはない。インプリントリソグラフィにおいては、パターニングデバイス内のトポグラフィによって、基板上に創出されるパターンが定義される。パターニングデバイスのトポグラフィは、基板に供給されたレジスト層の中にプレス加工され、基板上では、電磁放射、熱、圧力、またはそれらの組合せによってレジストは硬化される。パターニングデバイスは、レジストが硬化した後、レジスト内にパターンを残してレジストの外へ移動される。
【0042】
[0050] 本明細書で使用される「放射」および「ビーム」という用語は、紫外線(UV)(例えば、365nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長、またはおよそこれらの値の波長を有する)、および極端紫外線(EUV)(例えば、5〜20nmの範囲の波長を有する)、ならびにイオンビームや電子ビームなどの微粒子ビームを含むあらゆる種類の電磁放射を包含している。
【0043】
[0051] 「レンズ」という用語は、文脈によっては、屈折、反射、磁気、電磁気、および静電型光学コンポーネントを含む様々な種類の光学コンポーネントのいずれか1つまたはこれらの組合せを指すことができる。
【0044】
[0052] 以上、本発明の具体的な実施形態を説明してきたが、本発明は、上述以外の態様で実施できることが明らかである。例えば、本発明は、上記に開示した方法を表す1つ以上の機械読取可能命令のシーケンスを含むコンピュータプログラムの形態、またはこのようなコンピュータプログラムが記憶されたデータ記憶媒体(例えば、半導体メモリ、磁気ディスクまたは光ディスク)の形態であってもよい。
【0045】
[0053] 上記の説明は、制限ではなく例示を意図したものである。したがって、当業者には明らかなように、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本記載の発明に変更を加えてもよい。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図7
図8A
図8B
図8C