(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リング素材をその周方向に回転させた状態で前記リング素材の内外周面にそれぞれ接触すると共に前記リング素材をその径方向にて圧下するように構成される回転可能なマンドレルロール及び主ロールと、前記リング素材を誘導加熱するように構成される少なくとも1つの誘導加熱体とを備える圧延装置を用いて、前記リング素材からリング圧延体を形作るリング圧延体の製造方法であって、
前記少なくとも1つの誘導加熱体が、前記リング素材の外周側領域を誘導加熱するように前記リング素材の外周側に配置される外周側誘導加熱体を含み、
さらに、前記リング素材の軸線方向から見た場合に、前記外周側誘導加熱体における前記リング素材の外周側領域の周方向に対応する方向の中心が、前記リング素材の回転軸及び前記主ロールの回転軸を前記リング素材の径方向に結んだ基準線分と、前記基準線分に対して前記リング素材の回転軸を中心に前記リング素材の回転方向とは逆方向に90度以下の角度にて回転させた境界線分とによって前記リング素材の周方向にて挟まれた内外周圧下直前領域内に配置される、リング圧延体の製造方法において、
前記圧延装置を用いて前記リング素材を圧下する作業を有するリング圧延を実施する工程であって、前記リング圧延中に前記リング素材の直径が拡大され、かつ前記リング圧延中に前記少なくとも1つの誘導加熱体によって前記リング素材が誘導加熱される、工程を含み、
前記外周側誘導加熱体が移動可能に構成され、
前記リング圧延の途中段階よりも前では、前記リング素材の軸線方向から見た場合に前記リング素材の周方向にて前記外周側誘導加熱体の中心が前記内外周圧下直前領域外に位置し、
前記リング圧延の途中段階以降に、前記リング素材の軸線方向から見た場合に前記リング素材の周方向にて前記外周側誘導加熱体の中心が前記内外周圧下直前領域内に配置されるように、前記外周側誘導加熱体が移動すると共に、前記外周側誘導加熱体が前記リング素材を誘導加熱する、リング圧延体の製造方法。
リング素材をその周方向に回転させた状態で前記リング素材の内外周面にそれぞれ接触すると共に前記リング素材をその径方向にて圧下するように構成される回転可能なマンドレルロール及び主ロールと、前記リング素材を誘導加熱するように構成される少なくとも1つの誘導加熱体とを備える圧延装置を用いて、前記リング素材からリング圧延体を形作るリング圧延体の製造方法であって、
前記少なくとも1つの誘導加熱体が、前記リング素材の外周側領域を誘導加熱するように前記リング素材の外周側に配置される外周側誘導加熱体を含み、
さらに、前記リング素材の軸線方向から見た場合に、前記外周側誘導加熱体における前記リング素材の外周側領域の周方向に対応する方向の中心が、前記リング素材の回転軸及び前記主ロールの回転軸を前記リング素材の径方向に結んだ基準線分と、前記基準線分に対して前記リング素材の回転軸を中心に前記リング素材の回転方向とは逆方向に90度以下の角度にて回転させた境界線分とによって前記リング素材の周方向にて挟まれた内外周圧下直前領域内に配置される、リング圧延体の製造方法において、
前記少なくとも1つの誘導加熱体が、前記リング素材の内周側領域を誘導加熱するように前記リング素材の内周側に配置される内周側誘導加熱体をさらに含み、
前記外周側誘導加熱体により誘導加熱される前記リング素材の外周側領域の温度が、前記内周側誘導加熱体により誘導加熱される前記リング素材の内周側領域の温度よりも高くなるように設定される、リング圧延体の製造方法。
前記圧延装置が、前記リング素材をその周方向に回転させた状態で前記リング素材の軸線方向の両端面にそれぞれ接触すると共に該リング素材を前記リング素材の軸線方向にて圧下するように構成され、かつ前記主ロールに対して前記リング素材の周方向に間隔を空けて配置される一対の回転可能なアキシャルロールをさらに備え、
前記外周側誘導加熱体と前記主ロールとの間における前記リング素材の周方向の間隔が、前記外周側誘導加熱体と前記一対のアキシャルロールとの間における前記リング素材の周方向の間隔よりも小さくなるように設定される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリング圧延体の製造方法。
前記圧延装置が、前記リング素材をその周方向に回転させた状態で前記リング素材の軸線方向の両端面にそれぞれ接触すると共に該リング素材を前記リング素材の軸線方向にて圧下するように構成され、かつ前記主ロールに対して前記リング素材の周方向に間隔を空けて配置される一対の回転可能なアキシャルロールをさらに備え、
前記圧延装置が、前記リング素材の外周側にて、前記一対のアキシャルロールから前記リング素材の回転方向側に向かって前記主ロールに至る範囲に配置されると共に前記リング素材に接触可能に構成された回転可能なガイドロールをさらに備え、
さらに、前記外周側誘導加熱体が、前記主ロールと前記ガイドロールとの間に位置する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリング圧延体の製造方法。
リング素材をその周方向に回転させた状態で前記リング素材の内外周面にそれぞれ接触すると共に前記リング素材をその径方向にて圧下するように構成される回転可能なマンドレルロール及び主ロールと、周回するように巻かれた巻線を有すると共に前記リング素材を誘導加熱するように構成される少なくとも1つの誘導加熱コイルとを用いて、前記リング素材からリング圧延体を形作るリング圧延体の製造方法であって、
前記誘導加熱コイルの外周縁部分が、前記リング素材の周方向又は軸線方向に対して傾いた方向に沿って配置された少なくとも1つの傾斜部を有する、リング圧延体の製造方法。
リング素材をその周方向に回転させた状態で前記リング素材の内外周面にそれぞれ接触すると共に前記リング素材をその径方向にて圧下するように構成される回転可能なマンドレルロール及び主ロールと、周回するように巻かれた巻線を有すると共に前記リング素材を誘導加熱するように構成される少なくとも1つの誘導加熱コイルとを用いて、前記リング素材からリング圧延体を形作るリング圧延体の製造方法であって、
前記リング素材の周方向又は軸線方向に対する前記誘導加熱コイルの傾斜を変化可能とするように構成される機構を用いて、前記誘導加熱コイルの外周縁部分を前記リング素材の周方向又は軸線方向に対して傾斜させるリング圧延体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1〜第5実施形態に係る略リング形状の圧延体(以下、「リング圧延体」という)の製造方法について、
図1〜
図15を参照しながら以下に説明する。
【0019】
なお、リング圧延体は、略リング形状の部品(以下、「リング部品」という)を作製するために用いられる。あくまでも一例であるが、かかるリング部品は、各種産業分野にて利用されるギア、回転機構の回転体等であるとよく、さらに、リング部品は、厳密な寸法管理を必要とするもの、特に、ガスタービン、蒸気タービン、航空機のジェットエンジン等に用いられるタービンディスク等であると好ましい。一例として、リング圧延体の外周の直径は約600mm以上かつ約2000mm以下であると好ましいが、本発明はこれに限定されず、リング圧延体を用いて作製するリング部品に応じて、リング圧延体の外周の直径は、約600mmよりも小さく、かつ約2000mmよりも大きくすることも可能である。
【0020】
また、リング圧延体は、略リング形状の素材(以下、「リング素材」という)にリング圧延を施すことによって形作られる。リング素材は、高温強度、高温靱性等に優れる金属材料を用いて作製されるとよく、例えば、リング素材は、高温強度、高温靱性等に優れるNi基合金、Fe基合金、Co基合金、Ti基合金等から選択される金属材料を用いて作製されるとよい。
【0021】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係るリング圧延体の製造方法について以下に説明する。
【0022】
[圧延装置について]
最初に、リング圧延に用いられる圧延装置の概略について説明する。
図1及び
図2に示すように、圧延装置は、軸線1aを基準として略回転対称に形成されるリング素材1を装着可能に構成されている。かかる圧延装置は、リング素材1の内外周面1b,1cにそれぞれ接触すると共にリング素材1をその径方向(以下、「リング径方向」という)にて圧下するように構成されるマンドレルロール2及び主ロール3と、リング素材1における軸線1aの方向(以下、「リング軸線方向」という)の両端面1d,1eに接触すると共にリング素材1をリング軸線方向にて圧下するように構成される一対のアキシャルロール4,5とを備えている。しかしながら、本発明は、一対のアキシャルロール4,5を備えない圧延装置にも適用可能である。圧延装置はまた、リング素材1と接触可能に構成された2つのガイドロール6,7を備えている。圧延装置は、リング素材1を直接的に誘導加熱するように構成された1つの外周側誘導加熱体8をさらに備えている。
【0023】
[マンドレルロール及び主ロールについて]
図1及び
図2に示すように、マンドレルロール2は、リング素材1の内周面1bに接触可能に構成される周面2aを有し、かつ主ロール3は、リング素材1の外周面1cに接触可能に構成される周面3aを有している。このような周面2a,3aは、それぞれ、回転軸線2b,3bを基準として略回転対称になっている。マンドレルロール2及び主ロール3のそれぞれは、回転軸線2b,3bを中心に回転可能に構成されている。マンドレルロール2及び主ロール3の一方又は両方は、駆動機構(図示せず)によって回転駆動可能に構成されると好ましい。マンドレルロール2及び主ロール3はまた、必要に応じて、その回転速度を制御可能とするように構成されると好ましい。特に、リング素材1の内周側に形成される空間は、リング素材1の外周側に形成される空間と比較して、駆動機構の配置スペースを十分に確保し難いという実情を鑑みれば、マンドレルロール2及び主ロール3のうち主ロール3が回転駆動可能に構成されると好ましい。
【0024】
なお、「リング素材1の内周側」は、マンドレルロール2と接触するリング素材1の表面を有するリング素材1の内周側領域を含む範囲として定義し、かつ「リング素材1の外周側」は、主ロール3及び一対のアキシャルロール4,5と接触するリング素材1の表面を有するリング素材1の外周側領域を含むと共にリング素材1の内周側領域に対してリング素材1の外周寄りに位置する範囲として定義する。
【0025】
マンドレルロール2及び主ロール3の周面2a,3aは、作製されるリング圧延体の形状に対応した形状を有している。
図1〜
図4においては、リング素材1が、その外周面1cから突出すると共にリング素材1の周方向(以下、「リング周方向」という)に沿って延びる1つの凸部分1fを有するように形成され、
図1及び
図2においては、主ロール3の周面3aが、かかる1つの凸部分1fに対応すると共に主ロール3の周方向に沿って延びる1つの凹部分3cを有するように形成されている。
【0026】
しかしながら、リング素材の外周面は、これに限定されず、略平坦に形成されるか、リング軸線方向に沿ってその直径を変化させた部分を有するように形成されるか、又は1つ以上の凸部分及び1つ以上の凹部分のうち少なくとも一方を有するように形成されてもよく、主ロールの周面は、このようなリング素材の外周面に対応して形成されるとよい。リング素材の内周面もまた、このようなリング素材の外周面と同様に形成することができ、マンドレルロールの周面は、かかるリング素材の内周面に対応して形成することができる。
【0027】
再び
図1及び
図2を参照すると、マンドレルロール2及び主ロール3は、リング径方向に移動可能に構成されている。リング素材1は、マンドレルロール2及び主ロール3の周面2a,3a間で圧下されるようになっている。圧延装置は、マンドレルロール2及び主ロール3の回転に伴って、リング素材1がリング周方向に回転できるように構成されている。なお、後述するリング圧延体の製造方法では、主ロール3がその回転方向の一方側(矢印R2により示す)に回転し、かつマンドレルロール2がその回転方向の一方側(矢印R1により示す)に回転することに伴って、リング素材1がリング周方向の一方側(矢印Fにより示す)に向かって回転する場合について説明する。
【0028】
[一対のアキシャルロールについて]
図1及び
図2に示すように、一対のアキシャルロール4,5は、主ロール3に対してリング周方向に間隔を空けて配置されている。一対のアキシャルロール4,5は、主ロール3に対してリング素材1の軸線1aを中心に角度θ間隔を空けて配置することができる。典型的には、角度θは約180度であると好ましく、言い換えれば、一対のアキシャルロール4,5は、主ロール3に対してリング周方向に間隔を空けると共にリング径方向に対向するように配置されると好ましい。しかしながら、角度θは、これに限定されず、高品質のリング圧延体を作製可能であれば、約0度より大きくかつ約360度よりも小さな範囲内としてもよく、約90度以上かつ約270度以下の範囲内としてもよく、約135度以上かつ約225度以下の範囲内としてもよい。
【0029】
一対のアキシャルロール4,5は、それぞれ、リング軸線方向の両端面1d,1eにそれぞれ接触可能に構成される周面4a,5aを有している。このような周面4a,5aは、それぞれ、回転軸線4b,5bを基準として略回転対称になっている。一対のアキシャルロール4,5のそれぞれは、回転軸線4b,5bを中心に回転可能に構成されている。このような一対のアキシャルロール4,5の一方又は両方は、駆動機構によって回転駆動可能に構成されると好ましい。一対のアキシャルロール4,5はまた、必要に応じて、その回転速度を制御可能とするように構成されると好ましい。
【0030】
一対のアキシャルロール4,5の周面4a,5aは、それぞれ、作製されるリング圧延体の形状に対応した形状を有している。リング素材1は、一対のアキシャルロール4,5の周面4a,5a間で圧下されるようになっている。圧延装置は、一対のアキシャルロール4,5の回転に伴って、リング素材1がリング周方向に回転できるように構成されている。なお、後述するリング圧延体の製造方法では、一方側のアキシャルロール4がその回転方向の一方側(矢印R3により示す)に回転し、かつ他方側のアキシャルロール5がその回転方向の一方側(矢印R4により示す)に回転することに伴って、リング素材1がリング周方向の一方側(矢印Fにより示す)に向かって回転する場合について説明する。
【0031】
[ガイドロールについて]
図1及び
図2に示すように、2つのガイドロール6,7のうち一方側のガイドロール6は、一対のアキシャルロール4,5からリング周方向の一方側(矢印Fにより示す)に向かって主ロール3に至る範囲に配置されている。2つのガイドロール6,7のうち他方側のガイドロール7は、一対のアキシャルロール4,5からリング周方向の他方側に向かって主ロール3に至る範囲に配置されている。
【0032】
2つのガイドロール6,7は、それぞれ、リング素材1の外周面1cに接触可能に構成される周面6a,7aを有している。このような周面6a,7aは、それぞれ、回転軸線6b,7bを基準として略回転対称になっている。2つのガイドロール6,7のそれぞれは、回転軸線6b,7bを中心に回転可能に構成されている。2つのガイドロール6,7は、リング素材1の外周面1cと接触すると共に回転軸線6b,7bを中心に回転しながら、リング周方向に回転するリング素材1を保持できるようになっている。
【0033】
しかしながら、本発明はこれに限定されず、圧延装置が、ガイドロールを備えない構成とすることもできる。その一方で、圧延装置が、ガイドロールを備える構成である場合には、上述のような一方側のガイドロールを少なくとも備えているとよい。
【0034】
[外周側誘導加熱体について]
図1〜
図4に示すように、外周側誘導加熱体8は、少なくとも一周周回するように巻かれた巻線を有する誘導加熱コイル8aを備えており、外周側誘導加熱体8は、誘導加熱コイル8aの巻線に交流電流を流すことによって、誘導加熱のための磁界を発生させるように構成されている。外周側誘導加熱体8はまた移動可能に構成されている。
【0035】
図2に示すように、リング軸線方向から見た場合に、外周側誘導加熱体8におけるリング素材1の外周側領域の周方向に対応する方向の略中心(以下、「外周側誘導加熱体8の周方向中心」という)は、リング素材1の軸線1a及び主ロール3の回転軸線3bをリング素材1の径方向に結んだ基準線分Lに対してリング素材1の軸線1aを中心にリング周方向の他方側に90度以下の角度にて回転させた位置に配置されている。また、外周側誘導加熱体8は、リング素材1の外周側のみに位置している。
【0036】
言い換えれば、外周側誘導加熱体8の周方向中心は、マンドレルロール2及び主ロール3による圧下の直前領域(以下、「内外周圧下直前領域」という)に位置しているとよい。ここで、内外周圧下直前領域は、基準線分Lと、該基準線分Lに対してリング素材1の軸線1aを中心としてリング周方向の他方側に角度φにて回転させた境界線分Mとによってリング周方向にて挟まれた領域となっている。なお、リング素材1の温度制御をし易くすることを考慮すると、角度φは、内外周圧下直前領域に外周側誘導加熱体8を配置可能とする大きさ以上、かつ約90度以下であるとよい。また、角度φは、60度以下であると好ましく、さらに、45度以下であるとより好ましい。特に、外周側誘導加熱体8の全体が内外周圧下直前領域内に配置可能であると好ましい。このような内外周圧下直前領域は、リング周方向にて主ロール3と一方側のガイドロール6との間に位置しており、内外周圧下直前領域のリング周方向の両端に、それぞれ、主ロール3と一方側のガイドロール6とが位置していると好ましい。さらに、主ロール3と外周側誘導加熱体8との間におけるリング周方向の間隔は、一対のアキシャルロール4,5と外周側誘導加熱体8との間におけるリング周方向の間隔よりも小さくなっていると好ましい。
【0037】
なお、内外周圧下直前領域は、次のように定義することも可能である。すなわち、内外周圧下直前領域は、主ロール3に対してリング周方向の他方側、かつ主ロール3及び一対のアキシャルロール4,5間におけるリング周方向の中央に対してリング周方向の一方側に位置するものとして定義することができる。さらに、内外周圧下直前領域は、主ロール3からリング周方向の他方側に向かって、主ロール3及び一対のアキシャルロール4,5間におけるリング周方向の長さを二分割した長さの範囲内に位置するものとして定義することができる。
【0038】
圧延装置はまた、外周側誘導加熱体8以外の誘導加熱手段を備えていてもよい。しかしながら、リング素材1が一対のアキシャルロール4,5を通過した直後の領域では、リング素材1の温度を制御し難いということと、一方側のガイドロール6の影響とを鑑みれば、主ロール3に対してリング周方向の他方側、かつ主ロール3及び一対のアキシャルロール4,5間に配置される誘導加熱手段が、外周側誘導加熱体8のみであると好ましい。また、圧延装置に設けられる誘導加熱手段が、外周側誘導加熱体8のみであってもよい。
【0039】
図1〜
図4に示すように、誘導加熱コイル8aは、リング素材1の外周面1cに対してリング径方向に間隔を空けると共に巻線の巻き軸8bの方向をリング素材1の外周面1cに向けるように配置されている。また、リング素材1の外周面1cにおけるリング軸線方向の両端部が、誘導加熱コイル8aにおけるリング軸線方向の両端部に挟まれる範囲内に配置されている。かかる誘導加熱コイル8aによって、内外周圧下直前領域にてリング素材1の外周面1c、特に、主ロール3と接触するリング素材1の表面を誘導加熱することができる。ひいては、誘導加熱コイル8aによって、内外周圧下直前領域にてリング素材1の外周側領域をさらに誘導加熱することができ、一対のアキシャルロール4,5と接触するリング素材1の表面もまた誘導加熱できる。
【0040】
しかしながら、本発明はこれに限定されず、圧延装置が、リング素材の温度制御をより容易にするために、複数の外周側誘導加熱体を有していてもよい。また、内外周圧下直前領域にてリング素材の外周面又は外周側領域を誘導加熱できれば、誘導加熱コイルの巻き軸の方向はリング素材の外周面以外を向いてもよい。内外周圧下直前領域にてリング素材の外周面又は外周側領域を誘導加熱できれば、外周側誘導加熱体が、誘導加熱コイルを巻き付けた磁心を有していてもよく、この場合、磁心から生じる磁束線上のリング素材の外周面が誘導加熱されることとなる。
【0041】
図1及び
図4においては、誘導加熱コイル8aの外周縁部分は、巻き軸8bの方向から見て略四角形状に形成されている。しかしながら、誘導加熱コイルの外周縁部分は、これに限定されず、巻き軸の方向から見て略円形状、略楕円形状、略四角形状以外の略多角形状等に形成することも可能である。また、誘導加熱コイル8aの巻き数は、コイルを製造可能とする範囲にて必要な磁力線密度に応じて、複数とすることが好ましい。
【0042】
[リング圧延体の製造方法について]
次に、リング圧延体の製造方法について説明する。かかる製造方法においては、予め加熱したリング素材1を上述の圧延装置によってリング圧延する。このとき、予め加熱されるリング素材1の温度は、約850℃以上かつ約1150℃以下の範囲であると好ましい。しかしながら、かかる温度は、これに限定されず、高品質のリング圧延体を作製するように、リング素材に用いられる金属材料の種類に応じて調節可能である。
【0043】
図1及び
図2に示すように、リング圧延においては、マンドレルロール2及び主ロール3並びに一対のアキシャルロール4,5が回転し、これらの回転に伴って、予め加熱されたリング素材1が、その軸線1aを中心としてリング周方向の一方側(矢印Fにより示す)に回転する。さらに、リング素材1が回転した状態で、一対のアキシャルロール4,5によってリング素材1をリング軸線方向に圧下する作業、内外周圧下直前領域にてリング素材1の外周側に配置される外周側誘導加熱体8によってリング素材1の外周面1c又は外周側領域を誘導加熱する作業、マンドレルロール2及び主ロール3によってリング素材1をリング径方向に圧下する作業の順に、これらの作業を繰り返す。このとき、マンドレルロール2及び主ロール3の一方又は両方を、リング素材1の径方向の中心を基準としてリング径方向に相対的に移動させることによって、リング素材1を、その直径を拡大するように変形させることができる。
【0044】
かかるリング圧延中においては、外周側誘導加熱体8により誘導加熱されるリング素材1の温度を、約850℃以上かつ約1150℃以下の範囲内とすると好ましい。しかしながら、かかる温度は、これに限定されず、リング素材の径方向の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御可能とするように調節されるとよく、一例として、リング素材の径方向の温度分布を均一化するように調節されるとよい。
【0045】
[作用及び効果について]
本実施形態に係るリング圧延体の製造方法によれば、内外周圧下直前領域にて、リング素材1の内周側領域と比較して温度低下し易いリング素材1の外周面1c又は外周側領域が誘導加熱されるので、リング素材1が内外周圧下直前領域を通過した直後にマンドレルロール2及び主ロール3間にて圧下を行う領域(以下、「内外周圧下領域」という)にて、リング素材1の径方向の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御でき、その結果、作製されるリング圧延体の寸法精度等の品質を効率的に高めることができる。また、リング素材1の温度低下に伴ってリング素材1の表面及び内部間の温度分布が不均一になることを抑制できるので、作製されるリング圧延体の全体にて結晶粒の混粒化を抑制できる。すなわち、作製されるリング圧延体の全体にて結晶粒の整粒化を促すことができる。
【0046】
特に、一対のアキシャルロール4,5による圧下におけるリング素材1の加工率が低い場合、一対のアキシャルロール4,5による加工発熱が十分に得られず、一対のアキシャルロール4,5と接触するリング素材1の表面が冷え易く、その結果、かかる表面では割れ及び寸法精度の低下が生じ易くなる。これに対して、誘導加熱コイル8aによって、内外周圧下直前領域にてリング素材1の外周側領域をさらに誘導加熱することができ、一対のアキシャルロール4,5と接触するリング素材1の表面を誘導加熱できるので、当該表面にて割れ及び寸法精度の低下が生じることを防止できる。
【0047】
本実施形態に係るリング圧延体の製造方法によれば、主ロール3と外周側誘導加熱体8との間におけるリング周方向の間隔が、一対のアキシャルロール4,5と外周側誘導加熱体8との間におけるリング周方向の間隔よりも小さくなっている。そのため、外周側誘導加熱体8によってリング素材1の表面を誘導加熱する際に、リング素材1及び一対のアキシャルロール4,5間に生じる摩擦熱、リング素材1から一対のアキシャルロール4,5への伝熱、リング素材1の加工発熱等の影響を受け難くすることができる。その結果、リング素材1の径方向の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御できる。
【0048】
本実施形態に係るリング圧延体の製造方法によれば、外周側誘導加熱体8が主ロール3と一方側のガイドロール6との間に位置する。そのため、圧延装置が、一般的に主ロール近傍に配置されるガイドロールを備える場合であっても、リング素材1が、外周側誘導加熱体8によって誘導加熱した直後に、ガイドロールを通過せずに、主ロール3によって圧下されることとなる。その結果、リング素材1の径方向の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御できる。
【0049】
本実施形態に係るリング圧延体の製造方法によれば、リング圧延体の寸法精度等の品質を高くするためには、主ロール3の周面3aと接触するリング素材1の外周面1cの温度を適切に管理することが効率的であり、内外周圧下直前領域にて、このようなリング素材1の外周面1c全体が直接的に誘導加熱されるので、内外周圧下領域にてリング素材1の径方向の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御できる。
【0050】
特に、リング圧延においては、リング素材1の主な加工は主ロール3による圧下であるので、主ロール3と接触するリング素材1の外周面1cの温度を適切に制御することが重要となる。また、一般的な圧延装置では、リング素材1を成形するように構成される主ロール3の金型部分の体積が、リング素材1を成形するように構成されるマンドレルロール2の金型部分の体積よりも大きくなる傾向にある。さらに、主ロール3がリング素材1の外周側に位置するので、主ロール3の周長がマンドレルロール2の周長よりも大きくなって、主ロール3と接触するリング素材1の表面の面積が、マンドレルロール2と接触するリング素材1の表面の面積よりも大きくなる傾向にある。その結果、主ロール3と接触するリング素材1の表面から逃げる熱量が、マンドレルロール2と接触するリング素材1の表面から逃げる熱量よりも大きくなる傾向にある。これに対して、誘導加熱コイル8aによって、内外周圧下直前領域にてリング素材1の外周面1c全体を誘導加熱することができるので、このように主ロール3と接触するリング素材1の表面から逃げる熱量を補うことができる。
【0051】
[第1実施形態の具体例]
本発明の第1実施形態の具体例として、第1実施形態の外周側誘導加熱体8をさらに以下のように構成し、かつかかる外周側誘導加熱体8を用いてリング圧延体の製造方法を以下のように実施することができる。
【0052】
[誘導加熱体について]
図14及び
図15に示すように、外周側誘導加熱体8に関連する内外周圧下直前領域は、リング周方向にて基準線分Lと境界線分Mとの間に位置し、一方側のガイドロール6は、かかる内外周圧下直前領域のリング周方向の中間に配置される。
【0053】
さらに、リング圧延において、リング圧延の開始段階から完了段階に進むに従ってリング素材1の直径が拡大する。そのため、
図14に示すようなリング圧延の開始段階、さらには、リング圧延の途中段階よりも前では、リング周方向、好ましくは、リング素材1の外周に接する接線の方向(以下、「リング接線方向」という)にて、内外周圧下直前領域内にてリング素材1の外周側かつ一方側のガイドロール6及び境界線分M間に位置する空間(以下、「加熱体配置空間」という)の長さS1は外周側誘導加熱体8の長さTの半分以下となっている。その一方で、
図15に示すようなリング圧延の完了段階、さらには、リング圧延の途中段階以降では、リング周方向、好ましくは、リング接線方向にて、内外周圧下直前領域の加熱体配置空間の長さS2は外周側誘導加熱体8の長さTの半分よりも大きくなっている。なお、リング接線方向は、より具体的には、外周側誘導加熱体8のリング周方向の位置又は加熱体配置空間のリング周方向の位置にてリング素材1の外周に接する接線に沿った方向として定義されるとよい。
【0054】
一例として、内外周圧下直前領域の加熱体配置空間の長さS1,S2及び外周側誘導加熱体8の長さTの関係は、リング圧延の開始段階におけるリング素材1の外周の直径が約700mm以下である場合にもたらされるものとして定義することができる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、圧延装置、リング圧延等の条件に応じて、リング圧延の開始段階における外周の直径が約700mmよりも大きい場合にも、もちろん、上記長さの関係がもたらされ得る。
【0055】
このような構成において、
図14に示すように、リング圧延の途中段階よりも前では、外周側誘導加熱体8の中心は、リング周方向にて、リング素材1の外周側かつ境界線分Mよりもリング周方向の他方側(矢印Bにより示す)の空間に配置され、このとき、リング素材1と外周側誘導加熱体8とのリング径方向の距離は誘導加熱を可能とするように維持されている。その一方で、
図15に示すように、リング圧延の途中段階から完了段階までの間では、外周側誘導加熱体8の中心が内外周圧下直前領域に配置される。具体的には、リング圧延の途中段階から完了段階までの間では、外周側誘導加熱体8の中心は、リング周方向、好ましくは、リング接線方向にて、内外周圧下直前領域の加熱体配置空間に配置され、このときもまた、リング素材1と外周側誘導加熱体8とのリング径方向の距離は誘導加熱を可能とするように維持されている。
図14及び
図15に示すように、このような外周側誘導加熱体8は、リング素材1を誘導加熱可能な状態で、リング圧延の開始段階の配置位置から完了段階の配置位置まで移動可能に構成されている。
【0056】
しかしながら、本発明はこれに限定されず、外周側誘導加熱体は次のようになっていてもよい。リング圧延の途中段階よりも前において、外周側誘導加熱体が、リング素材の外周側における一方側のガイドロール及び基準線分間で、一方側のガイドロールを避けるようにリング素材の外周からリング径方向に離れて配置されてもよく、このとき、外周側誘導加熱体はリング素材を誘導加熱できない状態にあってもよい。リング周方向、好ましくは、リング接線方向で、内外周圧下直前領域の加熱体配置空間の長さが外周側誘導加熱体の長さの半分よりも大きくなっている状態であれば、外周側誘導加熱体は、リング圧延の任意のタイミングで、外周側誘導加熱体の中心を内外周圧下直前領域内に配置するように移動することができる。また、リング圧延の開始段階において、リング周方向、好ましくは、リング接線方向で、内外周圧下直前領域の加熱体配置空間の長さが外周側誘導加熱体の長さの半分よりも既に大きくなっていてもよい。
【0057】
[リング圧延体の製造方法について]
本具体例に係るリング圧延体の製造方法は、次のようにリング圧延することを含む。
図14及び
図15に示すように、リング素材1が回転した状態で、一対のアキシャルロール4,5によってリング素材1をリング軸線方向に圧下する作業、後述のように移動する外周側誘導加熱体8によってリング素材1の外周面1c全体を誘導加熱する作業、マンドレルロール2及び主ロール3によってリング素材1をリング径方向に圧下する作業の順に、これらの作業を繰り返す。このとき、マンドレルロール2及び主ロール3の一方又は両方を、リング素材1の径方向の中心を基準としてリング径方向に相対的に移動させることによって、リング素材1を、その直径を拡大するように変形させることができる。
【0058】
外周側誘導加熱体8の移動は次のように行われる。
図14に示したリング圧延の開始段階から途中段階よりも前までの間では、外周側誘導加熱体8の中心は、リング周方向、好ましくは、リング接線方向にて、内外周圧下直前領域の加熱体配置空間の外部に配置される。特に、外周側誘導加熱体8の中心は、リング圧延が開始段階から途中段階まで進むに従って、内外周圧下直前領域に近付くように移動すると好ましい。次に、リング圧延の途中段階から完了段階までの間では、外周側誘導加熱体8の中心は、リング周方向、好ましくは、リング接線方向にて、内外周圧下直前領域に配置される。特に、リング圧延が途中段階から完了段階まで進むに従って、外周側誘導加熱体8の中心は、主ロール3により近付くように移動すると好ましい。
【0059】
かかるリング圧延中においては、外周側誘導加熱体8により誘導加熱されるリング素材1の温度を、約850℃以上かつ約1150℃以下の範囲内とすると好ましい。しかしながら、かかる温度は、これに限定されず、リング素材の径方向の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御可能とするように調節されるとよく、一例として、リング素材の径方向の温度分布を均一化するように調節されるとよい。
【0060】
[作用及び効果について]
本具体例に係るリング圧延体の製造方法によれば、外周側誘導加熱体8が主ロール3と一方側のガイドロール6との間に位置することに基づく効果を除いて、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0061】
さらに、本具体例に係るリング圧延体の製造方法によれば、リング圧延の途中段階以降では、リング素材1の軸線方向から見た場合にリング周方向にて外周側誘導加熱体8の中心が内外周圧下直前領域内に配置されるように、外周側誘導加熱体8が移動する。また、リング圧延の途中段階よりも前では、リング周方向、好ましくは、リング接線方向にて、内外周圧下直前領域の加熱体配置空間の長さS1が外周側誘導加熱体の長さTの半分以下となっており、リング圧延の途中段階以降では、リング素材1の直径の拡大によって、リング周方向、好ましくは、リング接線方向にて、内外周圧下直前領域の加熱体配置空間の長さS2が外周側誘導加熱体の長さTの半分よりも大きくなっている。そのため、圧延装置のレイアウト、リング素材1の形状及び寸法等の制約によって、外周側誘導加熱体8が、リング圧延の開始段階にて内外周圧下直前領域内に配置することが困難な場合であっても、リング圧延の途中段階以降では、リング素材1が内外周圧下直前領域を通過した直後の内外周圧下領域にて、リング素材1の径方向の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御でき、その結果、作製されるリング圧延体の寸法精度等の品質を効率的に高めることができる。
【0062】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係るリング圧延体の製造方法について以下に説明する。なお、本実施形態に係るリング圧延体の製造方法は、リング素材1の外周側領域に、エッジ形状部を有する凸部分が形成される場合に好適に用いられる。
【0063】
[圧延装置について]
図5及び
図6に示すように、本実施形態にて用いられる圧延装置は、第1実施形態の外周側誘導加熱体8の代わりに以下に述べる外周側誘導加熱体9を有するが、その他の構成について、かかる圧延装置は、第1実施形態にて用いられる圧延装置と同様になっている。
【0064】
[誘導加熱体について]
図5及び
図6に示すように、本実施形態の外周側誘導加熱体9は、以下の点を除いて、第1実施形態の外周側誘導加熱体8と同様である。第1実施形態と異なる点を述べると、外周側誘導加熱体9においては、誘導加熱コイル9aが、リング素材1の外周面1cの凸部分1fに対してリング径方向に間隔を空けると共に巻線の巻き軸9bの方向を凸部分1fに向けるように配置されている。また、凸部分1fのリング軸線方向の両端部が、誘導加熱コイル9aにおけるリング軸線方向の両端部に挟まれる範囲内に配置されている。
図5及び
図6においては、一例として、誘導加熱コイル9aにおけるリング軸線方向の端部が、凸部分1fに形成されるエッジ形状部1gとリング素材1の外周面1cにおけるリング軸線方向の端部との間に配置されている。かかる誘導加熱コイル9aによって、内外周圧下直前領域にてリング素材1のエッジ形状部1gを重点的に誘導加熱することができる。
【0065】
しかしながら、本発明はこれに限定されず、圧延装置が、リング素材の温度制御をより容易にするために、複数の外周側誘導加熱体を有していてもよい。また、リング素材の外周側領域が1つ以上の凸部分及び1つ以上の凹部分のうち少なくとも一方を有する場合にリング素材の外周側領域に形成されるエッジ形状部を内外周圧下直前領域にて重点的に誘導加熱するように構成されているとよい。さらに、リング素材のエッジ形状部を誘導加熱できれば、誘導加熱コイルの巻き軸の方向がリング素材の外周面の凸部分以外を向いてもよい。リング素材のエッジ形状部を誘導加熱できれば、外周側誘導加熱体が、誘導加熱コイルを巻き付けた磁心を有していてもよく、この場合、磁心から生じる磁束線上にてリング素材のエッジ形状部が誘導加熱されることとなる。
【0066】
図6においては、誘導加熱コイル9aの外周縁部分は、巻き軸9bの方向から見て略四角形状に形成されている。しかしながら、誘導加熱コイルの外周縁部分は、これに限定されず、巻き軸の方向から見て略円形状、略楕円形状、略四角形状以外の略多角形状等に形成することも可能である。また、誘導加熱コイル9aの巻き数は、コイルを製造可能とする範囲にて必要な磁力線密度に応じて、複数とすることが好ましい。
【0067】
[リング圧延体の製造方法について]
本実施形態に係るリング圧延体の製造方法は、このような圧延装置によって、次のようにリング圧延することを含む。かかるリング圧延においては、マンドレルロール2及び主ロール3並びに一対のアキシャルロール4,5が回転し、これらの回転に伴って、第1実施形態と同様に予め加熱されたリング素材1が、その軸線1aを中心としてリング周方向の一方側(
図6にて矢印Fにより示す)に回転する。さらに、リング素材1が回転した状態で、一対のアキシャルロール4,5によってリング素材1をリング軸線方向に圧下する作業、内外周圧下直前領域にてリング素材1の外周側に配置される外周側誘導加熱体9によってリング素材1のエッジ形状部1gを誘導加熱する作業、マンドレルロール2及び主ロール3によってリング素材1をリング径方向に圧下する作業の順に、これらの作業を繰り返す。このとき、マンドレルロール2及び主ロール3の一方又は両方を、リング素材1の径方向の中心を基準としてリング径方向に相対的に移動させることによって、リング素材1を、その直径を拡大するように変形させることができる。
【0068】
かかるリング圧延中においては、外周側誘導加熱体9により誘導加熱されるリング素材1の温度を、約850℃以上かつ約1150℃以下の範囲内とすると好ましい。しかしながら、かかる温度は、これに限定されず、リング素材の径方向の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御可能とするように調節されるとよく、一例として、リング素材の径方向の温度分布を均一化するように調節されるとよい。
【0069】
[作用及び効果について]
本実施形態に係るリング圧延体の製造方法によれば、内外周圧下直前領域にて、特に温度低下し易いリング素材1の外周側領域のエッジ形状部1gが直接的に誘導加熱されるので、内外周圧下領域にてリング素材1の径方向の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御できる。さらに、本実施形態によれば、リング素材1の外周面1c全体を誘導加熱することにより得られる作用及び効果の代わりにかかる作用及び効果が得られる点を除いて、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0070】
[第2実施形態の具体例]
本発明の第2実施形態の具体例として、第2実施形態の外周側誘導加熱体9の構成に、第1実施形態の具体例にて記載した外周側誘導加熱体8の構成を適用することができる。また、かかる外周側誘導加熱体9を用いたリング圧延体の製造方法は、リング素材1の外周面1c全体を誘導加熱する代わりにリング素材1のエッジ形状部1gを誘導加熱する点を除いて、第1実施形態の具体例に係るものと同様になっている。さらに、本具体例に係るリング圧延体の製造方法によれば、リング素材1の外周面1c全体を誘導加熱することに基づく作用及び効果の代わりにリング素材1のエッジ形状部1gを誘導加熱することに基づく作用及び効果が得られる点を除いて、第1実施形態の具体例と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0071】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係るリング圧延体の製造方法について以下に説明する。
【0072】
[圧延装置について]
本実施形態にて用いられる圧延装置は、第1又は第2実施形態にて用いられる圧延装置に、内周側誘導加熱体をさらに設けた構成となっている。以下においては、
図7〜
図9に示すように、第1実施形態にて用いられる圧延装置に内周側誘導加熱体10を設けた場合について説明する。しかしながら、第2実施形態に用いられる圧延装置に内周側誘導加熱体を設けることも可能である。
【0073】
[内周側誘導加熱体について]
図7〜
図9に示すように、内周側誘導加熱体10、その誘導加熱コイル10a、及びその巻き軸10bは、以下の点を除いて、第1実施形態の外周側誘導加熱体8、その誘導加熱コイル8a、及びその巻き軸8bと同様である。第1実施形態と異なる点を述べると、内周側誘導加熱体10は、内外周圧下直前領域にてリング素材1の内周側に配置されている。
【0074】
圧延装置は、外周側誘導加熱体8及び内周側誘導加熱体10以外に、リング素材1を直接的に誘導加熱する手段を備えていてもよいが、特に、リング素材1が一対のアキシャルロール4,5を通過した直後の領域ではリング素材1の温度を制御し難いということに鑑みれば、上述の内外周圧下直前領域には、外周側誘導加熱体8及び内周側誘導加熱体10のみが配置されると好ましい。外周側誘導加熱体8及び内周側誘導加熱体10が、リング素材1の断面を挟んでリング径方向にて対向するように配置されるとより好ましい。また、リング素材1を直接的に誘導加熱する手段が、外周側誘導加熱体8及び内周側誘導加熱体10のみであってもよい。
【0075】
このような内周側誘導加熱体10は、リング素材1の内周面1b全体を誘導加熱するように構成されている。また、外周側誘導加熱体8により誘導加熱されるリング素材1の外周側領域の温度は、内周側誘導加熱体10により誘導加熱されるリング素材1の内周側領域の温度よりも高くするように設定されている。
【0076】
しかしながら、本発明はこれに限定されず、圧延装置が、リング素材の温度制御をより容易にするために、複数の内周側誘導加熱体を有していてもよい。また、内周側誘導加熱体、その内周側誘導加熱コイル、及びその巻き軸は、上述の点を除いて、第2実施形態の外周側誘導加熱体9、その誘導加熱コイル9a、及びその巻き軸9bと同様に構成されてもよい。
【0077】
[リング圧延体の製造方法について]
本実施形態に係るリング圧延体の製造方法は、このような圧延装置によって、次のようにリング圧延することを含む。
図7及び
図8に示すように、かかるリング圧延においては、マンドレルロール2及び主ロール3並びに一対のアキシャルロール4,5が回転し、これらの回転に伴って、第1実施形態と同様に予め加熱されたリング素材1が、その軸線1aを中心としてリング周方向の一方側(矢印Fにより示す)に回転する。さらに、リング素材1が回転した状態で、一対のアキシャルロール4,5によってリング素材1をリング軸線方向に圧下する作業、内外周圧下直前領域にてリング素材1の内外周側にそれぞれ配置される外周側誘導加熱体8及び内周側誘導加熱体10によってリング素材1の内外周面1b,1c全体を誘導加熱する作業、マンドレルロール2及び主ロール3によってリング素材1をリング径方向に圧下する作業の順に、これらの作業を繰り返す。このとき、マンドレルロール2及び主ロール3の一方又は両方を、リング素材1の径方向の中心を基準としてリング径方向に相対的に移動させることによって、リング素材1を、その直径を拡大するように変形させることができる。
【0078】
かかるリング圧延中においては、外周側誘導加熱体8により誘導加熱されるリング素材1の外周側領域の温度を、内周側誘導加熱体10により誘導加熱されるリング素材1の内周側領域の温度よりも高くする。このような外周側誘導加熱体8及び内周側誘導加熱体10によりそれぞれ誘導加熱されるリング素材1の外周側領域及び内周側領域の温度を、それぞれ、約850℃以上かつ約1150℃以下の範囲内とすると好ましい。しかしながら、これらの温度は、これに限定されず、リング素材の径方向の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御可能とするように調節されるとよく、一例として、リング素材の径方向の温度分布を均一化するように調節されるとよい。
【0079】
[作用及び効果について]
本実施形態に係るリング圧延体の製造方法によれば、内外周圧下直前領域にて、温度低下し易いリング素材1の外周側領域を誘導加熱する温度がリング素材1の内周側領域を誘導加熱する温度よりも高くなるように、リング素材1の外周側及び内周側部分が誘導加熱されるので、リング素材1が内外周圧下直前領域を通過した直後の内外周圧下領域にて、リング素材1の径方向の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御でき、その結果、作製されるリング圧延体の寸法精度等の品質を効率的に高めることができる。
【0080】
[第3実施形態の第1具体例]
本発明の第3実施形態の第1具体例として、圧延装置が、第3実施形態の外周側誘導加熱体8の代わりに、第1実施形態の具体例の外周側誘導加熱体8を有することもできる。なお、本具体例において、内周側誘導加熱体10は、リング周方向にて外周側誘導加熱体8の移動に追従して移動するように構成されてもよい。本具体例に係るリング圧延体の製造方法は、第3実施形態に係るリング圧延体の製造方法にて、外周側誘導加熱体8を第1実施形態の具体例と同様に動作させたものとなっている。さらに、本具体例に係るリング圧延体の製造方法によれば、第1実施形態の具体例における作用及び効果に加えて、第3実施形態に記載された作用及び効果を得ることができる。
【0081】
[第3実施形態の第2具体例]
本発明の第3実施形態の第2具体例として、圧延装置が、第3実施形態の外周側誘導加熱体8の代わりに、第2実施形態の具体例の外周側誘導加熱体9を有することもできる。なお、本具体例において、内周側誘導加熱体10は、リング周方向にて外周側誘導加熱体9の移動に追従して移動するように構成されてもよい。本具体例に係るリング圧延体の製造方法は、第3実施形態に係るリング圧延体の製造方法にて、外周側誘導加熱体9を第2実施形態の具体例と同様に動作させたものとなっている。さらに、本具体例に係るリング圧延体の製造方法によれば、第2実施形態の具体例における作用及び効果に加えて、第3実施形態に記載された作用及び効果を得ることができる。
【0082】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態に係るリング圧延体の製造方法について以下に説明する。
【0083】
[圧延装置について]
図10に示すように、本実施形態にて用いられる圧延装置は、第1又は第3実施形態の外周側誘導加熱体8の代わりに以下に述べる誘導加熱体11を有するが、その他の構成について、かかる圧延装置は、第1又は第3実施形態にて用いられる圧延装置と同様になっている。
【0084】
[誘導加熱体について]
図10に示すように、本実施形態の誘導加熱体11、その誘導加熱コイル11a、及びその巻き軸11bは、以下の点を除いて、第1実施形態の外周側誘導加熱体8、その誘導加熱コイル8a、及びその巻き軸8bと同様である。第1実施形態と異なる点を述べると、誘導加熱コイル11aの外周縁部分は、巻き軸11bの方向から見て略楕円形状に形成され、かつその長軸をリング素材1の軸線1aに対してリング周方向に傾斜させるように配向されている。かかる誘導加熱コイル11aの外周縁部分におけるリング周方向の両縁部のそれぞれは、リング素材1の外周面1cにおけるリング軸線方向の両端部間にてリング素材1の軸線1aに対してリング周方向に傾斜する方向に沿って配置された傾斜部11cを有している。
【0085】
なお、リング素材1の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御すべく、リング素材1の軸線1aに対する傾斜部11cの傾きは、リング素材1の送り速度、リング素材1に用いられる金属材料の種類、リング素材1の形状、リング素材1及び誘導加熱コイル11a間の距離、リング素材1をリング圧延前に予め加熱する温度、リング素材1を誘導加熱する温度等のうち少なくとも1つに対応して定めることができる。また、誘導加熱コイル11aの巻き数は、コイルを製造可能とする範囲にて必要な磁力線密度に応じて、複数とすることが好ましい。
【0086】
しかしながら、誘導加熱コイルは、これに限定されず、誘導加熱コイルの外周縁部分が、少なくとも1つの傾斜部を有していればよい。この場合、誘導加熱コイルの外周縁部分は、巻き軸の方向から見て、かかる傾斜部を含む略多角形状に形成されるとよい。
【0087】
さらに、
図10及び
図11に示すように、誘導加熱コイル11aは、リング素材1の軸線1aに対する傾斜部11cの傾きを調節可能に構成されてもよい。例えば、誘導加熱コイル11aは、回転機構(図示せず)によって、その巻き軸11b又はその他のリング径方向に沿った軸線を中心に回転可能に構成することができる。なお、
図11には、巻き軸11bを中心とした誘導加熱コイル11aの回転によって、リング素材1の軸線1aに対する傾斜部11cの傾きを、
図10に示した傾斜部11cの傾きよりも小さくした状態が示されている。
【0088】
このような誘導加熱体11は、第1実施形態と同様の作用及び効果を得るという観点によれば、第1実施形態の外周側誘導加熱体8と同様に配置されると好ましい。しかしながら、誘導加熱体11は、内外周圧下直前領域の外周側だけでなく、それ以外の領域においてもリング素材1の外周側に配置可能である。
【0089】
なお、本実施形態にて用いられる圧延装置が、上述の誘導加熱体11を除いて、第3実施形態にて用いられる圧延装置と同様になっている場合には、内周側誘導加熱体10に相当する誘導加熱体を、リング素材1の内周側を誘導加熱するという点を除いて、誘導加熱体11と同様に構成することができる。
【0090】
[リング圧延体の製造方法について]
本実施形態に係るリング圧延体の製造方法は、このような圧延装置によって、次のようにリング圧延することを含む。かかるリング圧延においては、マンドレルロール2及び主ロール3並びに一対のアキシャルロール4,5が回転し、これらの回転に伴って、第1又は第3実施形態と同様に予め加熱されたリング素材1が、その軸線1aを中心としてリング周方向の一方側(
図10及び
図11にて矢印Fにより示す)に回転する。さらに、リング素材1が回転した状態で、一対のアキシャルロール4,5によってリング素材1をリング軸線方向に圧下する作業、内外周圧下直前領域にてリング素材1の外周側に配置される誘導加熱体11の誘導加熱コイル11aによって少なくともリング素材1の外周面1c又は外周側領域を誘導加熱する作業、マンドレルロール2及び主ロール3によってリング素材1をリング径方向に圧下する作業の順に、これらの作業を繰り返す。このとき、マンドレルロール2及び主ロール3の一方又は両方を、リング素材1の径方向の中心を基準としてリング径方向に相対的に移動させることによって、リング素材1を、その直径を拡大するように変形させることができる。
【0091】
かかるリング圧延中においては、誘導加熱体11により誘導加熱されるリング素材1の温度を、約850℃以上かつ約1150℃以下の範囲内とすると好ましい。しかしながら、かかる温度は、これに限定されず、リング素材の径方向の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御するように調節されるとよく、一例として、リング素材の径方向の温度分布を均一化するように調節されるとよい。
【0092】
さらに、
図10及び
図11に示すように、リング圧延中又はリング圧延前にて、リング素材1の送り速度に応じて、リング素材1の軸線1aに対する誘導加熱コイル11aの傾斜部11cの傾きを回転機構によって変化させることができる。特に、リング素材1が誘導加熱コイル11aの磁力線下を通過する所要時間がリング素材1の表面の様々な部位に応じて変更されるように、リング素材1の軸線1aに対する傾斜部11cの傾きを調節する場合、誘導加熱体11により誘導加熱されるリング素材1の温度を、適切な圧延温度範囲とするように制御することができる。例えば、リング素材の温度分布をより均一化するためには、リング素材1の軸線1aに対する傾斜部11cの長手方向を、リング素材1の送り速度を増加させる場合にリング周方向に近づけるように傾け、かつリング素材1の送り速度を減少させる場合にリング軸線方向に近づけるように傾ける調節を行うと好ましい。なお、リング素材の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御するために、回転機構によって、リング素材の軸線に対する傾斜部の傾きを、リング素材の送り速度、リング素材に用いられる金属材料の種類、リング素材の形状、リング素材及び誘導加熱コイル間の距離、リング素材を予め加熱する温度、リング素材を誘導加熱する温度等のうち少なくとも1つに対応して調節することも可能である。
【0093】
[作用及び効果について]
本実施形態に係るリング圧延体の製造方法によれば、誘導加熱コイル11aの外周縁部分が、リング素材1の周方向又は軸線方向に対して傾いた方向に沿って配置された傾斜部11cを有するので、リング素材1の外周面1cにおける軸線方向の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御するように、誘導加熱コイル11aにおける磁界の範囲を軸線方向に沿って変化させることができ、その結果、作製されるリング圧延体の寸法精度等の品質を効率的に高めることができる。
【0094】
本実施形態に係るリング圧延体の製造方法によれば、リング素材1の周方向又は軸線方向に対する誘導加熱コイル11aの傾斜を変化可能とするように構成される回転機構を用いて、誘導加熱コイル11aの外周縁部分をリング素材1の周方向又は軸線方向に対して傾斜させるので、リング素材1の外周面1cにおける軸線方向の温度分布をより適切な温度範囲に効率的に制御するように、誘導加熱コイル11aにおける磁界の範囲を軸線方向に沿って変化させることができ、その結果、作製されるリング圧延体の寸法精度等の品質をより効率的に高めることができる。
【0095】
[第4実施形態の変形例]
第4実施形態の変形例として、
図12に示すように、誘導加熱体12の誘導加熱コイル12aの外周縁部分を略平行四辺形形状に形成することができる。誘導加熱コイル12aにおけるリング周方向の両縁部のそれぞれには、リング素材1の外周面1cにおけるリング軸線方向の両端部間にてリング素材1の軸線1aに対してリング周方向の他方側に傾斜する傾斜部12cが設けられている。なお、誘導加熱コイル12aの巻き軸12bは、第4実施形態の誘導加熱コイル11aの巻き軸11bと同様に配向されている。
【0096】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態に係るリング圧延体の製造方法について以下に説明する。
【0097】
[圧延装置について]
図13に示すように、本実施形態にて用いられる圧延装置は、第1又は第3実施形態の外周側誘導加熱体8の代わりに以下に述べる誘導加熱体13を有するが、その他の構成について、かかる圧延装置は、第1又は第3実施形態にて用いられる圧延装置と同様になっている。
【0098】
[誘導加熱体について]
図13に示すように、本実施形態の誘導加熱体13、その誘導加熱コイル13a、及びその巻き軸13bは、以下の点を除いて、第1実施形態の外周側誘導加熱体8、その誘導加熱コイル8a、及びその巻き軸8bと同様である。第1実施形態と異なる点を述べると、誘導加熱コイル13aの外周縁部分は、巻き軸13bの方向から見て略菱形形状に形成されている。かかる誘導加熱コイル13aの外周縁部分におけるリング周方向の両縁部のそれぞれは、リング素材1の外周面1cにおけるリング軸線方向の略中央部からそのリング軸線方向の両端部にそれぞれ向かうに従ってリング素材1の軸線1aに対して誘導加熱コイル13aのリング周方向の中心側に傾斜する2つの傾斜部13cを有している。
【0099】
なお、リング素材1の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御すべく、リング素材1の軸線1aに対する傾斜部13cの傾きを、リング素材1の送り速度、リング素材1に用いられる金属材料の種類、リング素材1の形状、リング素材1及び誘導加熱コイル13a間の距離、リング素材1をリング圧延前に予め加熱する温度、リング素材1を誘導加熱する温度等のうち少なくとも1つに対応して定めることができる。また、誘導加熱コイル13aの巻き数は、コイルを製造可能とする範囲にて必要な磁力線密度に応じて、複数とすることが好ましい。
【0100】
しかしながら、誘導加熱コイルは、これに限定されず、誘導加熱コイルの外周縁部分におけるリング周方向の少なくとも一方の縁部のみが2つの傾斜部を有していてもよい。この場合、誘導加熱コイルの外周縁部分は、巻き軸の方向から見て、これらの傾斜部を含む略多角形状に形成されるとよい。
【0101】
さらに、誘導加熱コイル13aは、リング素材1の軸線1aに対する傾斜部13cの傾きを調節可能に構成されてもよい。例えば、誘導加熱コイル13aは、回転機構(図示せず)によって、その巻き軸13b又はその他のリング径方向に沿った軸線を中心に回転可能に構成することができる。
【0102】
このような誘導加熱体13は、第1実施形態と同様の作用及び効果を得るという観点によれば、第1実施形態の外周側誘導加熱体8と同様に配置されると好ましい。しかしながら、誘導加熱体13は、内外周圧下直前領域の外周側だけでなく、それ以外の領域においてもリング素材1の外周側に配置可能である。
【0103】
なお、本実施形態にて用いられる圧延装置が、上述の誘導加熱体13を除いて、第3実施形態にて用いられる圧延装置と同様になっている場合には、内周側誘導加熱体10に相当する誘導加熱体を、リング素材1の内周側を誘導加熱するという点を除いて、ここまで述べた誘導加熱体13と同様に構成することができる。
【0104】
[リング圧延体の製造方法について]
本実施形態に係るリング圧延体の製造方法は、このような圧延装置によって、次のようにリング圧延することを含む。かかるリング圧延においては、マンドレルロール2及び主ロール3並びに一対のアキシャルロール4,5が回転し、これらの回転に伴って、第1又は第3実施形態と同様に予め加熱されたリング素材1が、その軸線1aを中心としてリング周方向の一方側(
図13にて矢印Fにより示す)に回転する。さらに、リング素材1が回転した状態で、一対のアキシャルロール4,5によってリング素材1をリング軸線方向に圧下する作業、内外周圧下直前領域にてリング素材1の外周側に配置される誘導加熱体13の誘導加熱コイル13aによって少なくともリング素材1の外周面1c又は外周側領域を誘導加熱する作業、マンドレルロール2及び主ロール3によってリング素材1をリング径方向に圧下する作業の順に、これらの作業を繰り返す。このとき、マンドレルロール2及び主ロール3の一方又は両方を、リング素材1の径方向の中心を基準としてリング径方向に相対的に移動させることによって、リング素材1を、その直径を拡大するように変形させることができる。
【0105】
かかるリング圧延中においては、誘導加熱体13により誘導加熱されるリング素材1の温度を、約850℃以上かつ約1150℃以下の範囲内とすると好ましい。しかしながら、かかる温度は、これに限定されず、リング素材の径方向の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御するように調節されるとよく、一例として、リング素材の径方向の温度分布を均一化するように調節されるとよい。
【0106】
さらに、リング圧延中又はリング圧延前にて、リング素材1の送り速度に応じて、リング素材1の軸線1aに対する誘導加熱コイル13aの傾斜部13cの傾きを回転機構によって変化させることができる。特に、リング素材1が誘導加熱コイル13aの磁力線下を通過する所要時間がリング素材1の表面の様々な部位に応じて変更されるように、リング素材1の軸線1aに対する傾斜部13cの傾きを調節する場合、誘導加熱体13により誘導加熱されるリング素材1の温度を、適切な圧延温度範囲とするように制御することができる。なお、リング素材の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御するために、リング圧延中又はリング圧延前にて、回転機構によって、リング素材1の軸線1aに対する傾斜部13cの傾きを、リング素材1の送り速度、リング素材1に用いられる金属材料の種類、リング素材1の形状、リング素材1及び誘導加熱コイル13a間の距離、リング素材11を予め加熱する温度、リング素材1を誘導加熱する温度等のうち少なくとも1つに対応して調節することも可能である。
【0107】
[作用及び効果について]
本実施形態に係るリング圧延体の製造方法によれば、誘導加熱コイル13aの外周縁部分が、リング素材1の周方向又は軸線方向に対して傾いた方向に沿って配置された2つの傾斜部13cを有するので、リング素材1の外周面1cにおける軸線方向の温度分布を適切な温度範囲に効率的に制御するように、誘導加熱コイル13aにおける磁界の範囲を軸線方向に沿って変化させることができ、その結果、作製されるリング圧延体の寸法精度等の品質を効率的に高めることができる。
【0108】
本実施形態に係るリング圧延体の製造方法によれば、リング素材1の周方向又は軸線方向に対する誘導加熱コイル13aの傾斜を変化可能とするように構成される回転機構を用いて、誘導加熱コイル13aの外周縁部分をリング素材1の周方向又は軸線方向に対して傾斜させるので、リング素材1の外周面1cにおける軸線方向の温度分布をより適切な温度範囲に効率的に制御するように、誘導加熱コイル13aにおける磁界の範囲を軸線方向に沿って変化させることができ、その結果、作製されるリング圧延体の寸法精度等の品質をより効率的に高めることができる。
【0109】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、その技術的思想に基づいて変形かつ変更可能である。
本発明は、リング素材1からリング圧延体を作製するリング圧延体の製造方法に関する。かかる製造方法は、リング素材1を圧延する工程であって、リング素材1をその周方向の一方側に回転させた状態でリング素材1をその内外周両側からマンドレルロール2及び主ロール3間にて圧下し、かつ誘導加熱体8〜14によってリング素材1を誘導加熱する作業を有する工程を含み、誘導加熱体8〜10,14を上記圧下の直前領域にてリング素材1の外周側のみ若しくは内外周両側に配置するか、又は誘導加熱体11〜13のコイル11a〜13aにおける外周縁部分に傾斜部11c〜13cを設ける。(