特許第6196610号(P6196610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196610
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/02 20060101AFI20170904BHJP
【FI】
   G01N15/02 E
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-500750(P2014-500750)
(86)(22)【出願日】2013年2月21日
(86)【国際出願番号】JP2013054260
(87)【国際公開番号】WO2013125612
(87)【国際公開日】20130829
【審査請求日】2016年2月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-35375(P2012-35375)
(32)【優先日】2012年2月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100124659
【弁理士】
【氏名又は名称】白洲 一新
(72)【発明者】
【氏名】阪田 匡
(72)【発明者】
【氏名】山本芙由子
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−291704(JP,A)
【文献】 特開平11−009187(JP,A)
【文献】 特開平02−143140(JP,A)
【文献】 特開2000−292349(JP,A)
【文献】 再公表特許第01/075420(JP,A1)
【文献】 国際公開第96/024830(WO,A1)
【文献】 特開昭55−104740(JP,A)
【文献】 寺下敬次郎ほか,近赤外分光法による医薬品原料粉体の判別,粉体工学会誌,2002年 6月,Vol. 39, No. 6,p. 424-432
【文献】 氷見康二ほか,光透過法による降下ばいじん不溶性成分の粒径分布測定の検討と京浜工業地帯とその周辺地域における測定結果,大気汚染研究,1968年,Vol. 2, No. 3,p. 205-212
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00 − 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射による吸光度の測定値と粒度分布測定装置による、粒子径が0.46〜2.0μmである50%粒子径の測定値との相関関係を利用することを特徴とする乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法。
【請求項2】
相関関係が比例関係であることを特徴とする請求項1に記載の乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法。
【請求項3】
光照射が500nm〜1100nmの波長であることを特徴とする請求項1又は2に記載の乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法。
【請求項4】
光照射が800nm〜1100nmの波長であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法。
【請求項5】
乳性食品が獣乳、加工獣乳、獣乳飲料、獣乳入り清涼飲料、植物乳、加工植物乳、植物乳飲料、植物乳入り清涼飲料であることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法。
【請求項6】
獣乳が牛乳であり、植物乳が豆乳であることを特徴とする請求項に記載の乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法。
【請求項7】
吸光度を分光光度計で測定することを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法に関する。具体的には、特定の波長の光照射による吸光度の測定値を利用する、乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳性食品の粒子は、脂肪球やタンパク質粒子(カゼインミセルなど)で構成されており、均質化処理や乳化処理などにより、その寸法が制御される。例えば乳性食品の代表的なものとして、牛乳では搾乳時に、脂肪球の寸法が大きいため、そのままでは、脂肪球が浮上しやすく、いわゆるクリーミング(脂肪浮上)の現象が見られる。そのため、均質機(ホモゲナイザー)を用いて均質化処理し、脂肪球の寸法を小さくして、脂肪球の浮上速度を遅らせることで、クリーミングを抑制している(非特許文献1)。
【0003】
また、乳性食品では、脂肪球の寸法、いわゆる脂肪球径が風味や食感に影響することが知られている。すなわち、乳性食品では、栄養組成(脂質、タンパク質、糖質、灰分など)が同じでも、脂肪球径が異なると、風味や食感などが変わることは既知の事実であり、例えば脂肪球径を大きくすることで、濃厚感を高められることになる。
【0004】
上記の通り、乳性食品の粒子は、風味や食感に影響するが、このとき、乳性食品を分散体とすると、体積基準の粒度分布の測定結果の平均値を「50%粒子径」として代用することが多い。そして、この乳性食品の「50%粒子径」を測定する代表的な機器には、レーザー回折式の粒度分布測定装置(島津製作所製)などがある(特許文献1〜4)。そこで、このような粒度分布測定装置を導入できれば、乳性食品の50%粒子径を確実に測定できることとなるが、実際の購入費や維持費・修繕費などを勘案すると、必ずしも手軽に導入できるとは言い難い。
【0005】
従って、粒度分布測定装置を導入していない場合、乳性食品の均質化処理における剪断効果を考慮した上で、過去の経験から、乳性食品の50%粒子径を推測する方法などを採用してきた。例えば牛乳のクリーミングを抑制するためには、所定値以上の高圧で均質化処理し、脂肪球の寸法を小さくしてきたが、このとき、その都度では、実際の牛乳の50%粒子径を測定することはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−009187
【特許文献2】特開2001−292716
【特許文献3】特開2004−267153
【特許文献4】WO2002/037985
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】伊藤肇躬著「乳製品製造学」2004(平成16)年6月15日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況に鑑み、本発明では、粒度分布測定装置のような大掛かりで特殊な設備を使用せずに、乳性食品(液状乳性食品の脂肪球径やタンパク質粒子径など)の50%粒子径を簡便で安価に測定する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究を進めたところ、以下の知見を得た。すなわち、特定の波長の光照射による吸光度の測定値と粒度分布測定装置による乳性食品の50%粒子径の測定値とに相関関係があることを見出し、これを利用することで、粒度分布測定装置のような大掛かりで高価な設備を導入しなくとも、乳性食品の50%粒子径を簡便で安価に測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
具体的には、500nm〜1100nmの波長の光照射による吸光度の測定値と粒度分布測定装置による乳性食品の50%粒子径の測定値とに一次関数的な相関関係(比例関係)があることを見出し、この相関関係の指標となる検量線を予め作成などすることで、粒度分布測定装置よりも簡易的に設置できる分光光度計を使用して、乳性食品の50%粒子径を簡便で安価に測定できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、次の通りとなる。
[1] 光照射による吸光度の測定値と粒度分布測定装置による50%粒子径の測定値との相関関係を利用することを特徴とする乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法。
[2] 相関関係が比例関係であることを特徴とする前記[1]記載の乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法。
[3] 光照射が500nm〜1100nmの波長であることを特徴とする前記[1]又は[2]記載の乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法。
[4] 光照射が800nm〜1100nmの波長であることを特徴とする前記[1]〜[3]の何れか記載の乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法。
[5] 乳性食品の50%粒子径が0.1〜2.0μmであることを特徴とする前記[1]〜[4]の何れか記載の乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法。
[6] 乳性食品が獣乳、加工獣乳、獣乳飲料、獣乳入り清涼飲料、植物乳、加工植物乳、植物乳飲料、植物乳入り清涼飲料であることを特徴とする前記[1]〜[5]の何れか記載の乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法。
[7] 獣乳が牛乳であり、植物乳が豆乳であることを特徴とする前記[6]記載の乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法。
[8] 吸光度を分光光度計で測定することを特徴とする前記[1]〜[7]の何れか記載の乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、乳性食品の50%粒子径と、光照射による吸光度の測定値との間に相関関係が存在していることを見出し、ロケーションや装置の制限が少なく、安定した吸光度が得られることから、粒度分布測定装置のような大掛かりで特殊な設備を使用せずに、乳性食品の50%粒子径を簡便で安価に測定する方法を提供できる。そして、本発明では、汎用性の高い分光光度計を使用して、乳性食品の50%粒子径を簡易的に測定できるため、乳性食品の品質(風味、食感、物性など)を容易に管理・制御・設計などする方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明を詳細に説明するが、本発明は、個々の形態には限定されない。
【0014】
本発明は、光照射による吸光度の測定値を利用することを特徴とする乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法に関するものである。
【0015】
本発明において、光照射による吸光度の測定値は、公知の原理を用いて測定できれば、特に限定されない。このとき、本発明では、光照射による吸光度を簡便で安価に測定でき、汎用性も高いため、分光光度計を使用することが好ましい。なお、この分光光度計は、公知の仕様であれば、特に限定されないが、測定試料と対照試料との吸光度差を測定できるため、ダブルビーム式が好ましく、分光光度計UV−1600PC(島津製作所製)などを例示できる。この分光光度計は、いったん導入して設置すれば長期的に安定して使用できる。また、吸光度の測定温度は、測定試料や対象試料などが液状であれば、特に限定されないが、具体的には、測定試料や対象試料の取扱いの容易さなどから、10℃〜30℃が好ましく、15℃〜30℃がより好ましく、20℃〜25℃がさらに好ましい。
【0016】
本発明において、光照射の波長は、乳性食品の50%粒子径との相関関係が回帰曲線や回帰直線などで表現できれば、特に限定されない。このとき、本発明では、光照射による吸光度と乳性食品の50%粒子径との相関関係が明確であることから、光照射が500nm〜1100nm(近赤外線領域)の波長であることが好ましく、光照射が800nm〜1100nmの波長であることがより好ましい。
【0017】
本発明において、乳性食品の50%粒子径は、光照射による吸光度の測定値と粒度分布測定装置による乳性食品の50%粒子径の測定値との相関関係が明確であることから、0.1〜2.5μmであることが好ましく、0.2〜2.0μmであることがより好ましく、0.3〜2.0μmであることがさらに好ましく、0.4〜2.0μmであることがとくに好ましい。乳性食品の50%粒子径が2.5μmより大きいと、検量線の相関関係から外れやすく、乳性食品の50%粒子径が0.1μmより小さいと、実際の加工工程や製造工程で調製しにくい。
【0018】
本発明において、粒度分布測定装置による50%粒子径の測定値は、公知の原理を用いて測定できれば、特に限定されない。このとき、本発明では、50%粒子径を簡便で安価に測定でき、汎用性も高いため、粒度分布測定装置を使用することが好ましく、レーザー回折式の粒度分布測定装置SALD−2001システム(島津製作所製)などを例示できる。この粒度分布測定装置は、いったん導入して設置すれば長期的に安定して使用できる。
【0019】
本発明において、粒度分布測定装置による50%粒子径の測定値は、レーザー回折・散乱法により、乳性食品などの分散体の粒度分布を測定した結果に対して、その積算値で50%の粒子径である。ここで、積算値で50%の粒子径とは、粒子径の小さい方から粒子数を加算していき、全部の粒子数の50%に到達したところの粒子径である。乳性食品のうち、牛乳や乳飲料などでは、50%粒子径の測定値を平均脂肪球径と称することもあるが、本発明において、50%粒子径は、平均脂肪球径の意味も包含される。
【0020】
本発明において、乳性食品は、乳含有の(液状の)食品、乳由来の原料、それらの加工品などであり、特に狭義には限定されない。具体的には、牛、羊、山羊、水牛などに由来する獣乳、加工獣乳、獣乳飲料、獣乳入り清涼飲料であり、大豆などに由来する植物乳、加工植物乳、植物乳飲料、植物乳入り清涼飲料であることが好ましく、代表的に市場で流通していることから、獣乳が牛乳であり、植物乳が豆乳であることがより好ましい。なお、植物油脂とその他の原料を乳化させて構成された人工乳も、植物乳に包含される。
【0021】
本発明において、乳性食品は、例えば、牛乳の還元の度合いや加工の度合いには、特に限定されない。具体的には、生乳や生乳を殺菌処理した牛乳の他、全脂濃縮乳、全脂粉乳、部分脱脂乳、部分脱脂濃縮乳、部分脱脂粉乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳、クリーム、バターなどの還元乳製品にも、それらを液状に還元することで、本発明を適用できる。さらに、牛乳や乳製品を配合して必要な組成に調製した加工乳、牛乳を膜処理して各種の成分を濃縮や除去した加工乳、牛乳や乳製品や加工乳などを含めた乳飲料や乳入り清涼飲料にも、本発明を適用できる。そして、これらは、牛乳以外の獣乳や植物乳にも同様に、本発明を適用できる。
【0022】
本発明において、乳性食品は、商品特性に合わせて、獣乳以外や植物乳以外の食品、各種の食品添加物などを任意に添加できる。ここで、例えば、食品には、珈琲、茶、果汁、糖類、高甘味度甘味料などを挙げられ、食品添加物には、安定剤、増粘剤、防腐剤、カルシウムなどのミネラル類、香料などを挙げられる。
【0023】
本発明は、乳性食品の50%粒子径と、光照射による吸光度の測定値との間に相関関係が存在していることを見出した。つまり、従来の粒度分布測定装置による少なくとも2つの乳性食品の50%粒子径を得るステップと、当該乳性食品の光照射による吸光度を得るステップと、前記50%粒子径と前記吸光度との相関関係を割り出すステップと、当該相関関係を利用して未知の乳性食品の50%粒子径の簡易測定方法。ここでいう「相関関係」とは、前記吸光度と50%粒子径との間に、例えば、関数(一次、二次等)関係が成り立つことをいう。その相関関係によって、未知の50%粒子径を吸光度で簡単に計ることができる。また割り出す方法の具体的な方法は、サンプリングとして、少なくとも2つのサンプルを選び、前記のように粒度分布測定装置を用いてその50%粒子径を測定し、50%粒子径が得られたサンプルに光照射をあてることで得られる吸光度値と当該50%粒子径値とを線形最小自乗法を適用し、予め数式と換算係数を算出する方法が例としてあげられる。これによって、乳性食品の50%粒子径と、光照射による吸光度の測定値との間に比例関係(一次関数:吸光度=a×粒子径+b(後述する表2等を参照))という相関関係が成り立つ。また、同じ理屈で、他の相関関係、例えば、二次関数等を導き出すこともできる。
【0024】
本発明において、乳性食品の50%粒子径は、例えば、光照射による吸光度の測定値と粒度分布測定装置による50%粒子径の測定値との相関関係に対して、非線形最小自乗法や線形最小自乗法などの公知の近似方法を適用する。そして、その相関関係を数式などで予め算出しておき、実際に測定試料や対照試料の吸光度を測定し、その相関関係の数式などに当てはめて算出できる。ただし、乳性食品の50%粒子径は、光照射による吸光度の測定値と粒度分布測定装置による50%粒子径の測定値との相関関係を利用して算出すれば、特に限定されない。具体的には、光照射が500nm〜1100nmの波長である吸光度の測定値と粒度分布測定装置による50%粒子径の測定値との相関関係を検量線や関数電卓などで算出してから、線形最小自乗法を適用し、予め数式と換算係数を算出する。
そして、実際に測定試料や対照試料の吸光度を測定し、予め算出した数式と換算係数を適用して、乳性食品の50%粒子径を算出する。なお、これら検量線などの線形最小自乗法の相関係数(R2)では、0.90以上が好ましく、0.93以上がより好ましく、0.95以上がさらに好ましい。線形最小自乗法の相関係数が0.90未満では、検量線の精度が落ち、乳性食品の50%粒子径を精度良く算出できなくなる虞がある。
【0025】
本発明において、吸光度測定装置として、分光光度計UV−1600PC(島津製作所製)を、粒度分布測定装置として、レーザー回折式の粒度分布測定装置SALD−2001システム(島津製作所製)を例示している。ただし、本発明の実施の時点では、これらの装置のリニューアルやバージョンアップなどに伴い、これらの装置が必ずしも存在しないかも知れない。しかしながら、実際に流通や販売している同様の機能を備えた代替装置であれば、製造元、機種、型番などに関わらず、本発明を実施できることは当然である。
すなわち、光照射による吸光度の測定値と粒度分布測定装置による50%粒子径の測定値を、それらの代替装置で測定し、それぞれの測定値の相関関係を利用して、乳性食品の50%粒子径を算出できることは言うまでもない。
【実施例】
【0026】
以下では、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これにより限定されない。
【0027】
(試験例1)
生乳(無脂乳固形分:8.7%、乳脂肪分:4.1%)を3kgで用意し、ステンレス製の小型容器内で攪拌しながら、10℃から60℃まで加熱した後に、卓上均質機(NS1001、Niro Soavi社製)を用いて、表1に示した5種類の圧力で均質化処理した。これら5種類の未加熱乳を耐熱容器内に分注してから、オートクレーブを用いて、110℃、1分間で加熱した後に、氷水で10℃以下に冷却し、5種類の加熱乳(牛乳)を調製した(試料1〜5)。これらの試料1〜5を100倍に希釈してから、分光光度計(UV−1600PC、島津製作所社製)を用いて、光照射の波長が400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1000nm、1100nmの吸光度を測定すると共に、粒度分布計(SALD−2001、島津製作所社製)を用いて、50%粒子径を測定し、その結果を表1に示した。また、各波長における吸光度と、50%粒子径との相関関係を、一次直線的に近似し、その相関係数などを表2に示した。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
表2より、波長が800nmから1100nmまで、50%粒子径が0.46μmから1.97μmまでの場合、吸光度と50%粒子径との相関関係が比例しており、最小自乗法により、一次直線的に近似できた。波長が700nmで、50%粒子径が0.46μmから1.39μmまでの場合、吸光度と50%粒子径との相関関係が比例しており、最小自乗法により、一次直線的に近似できた。波長が500nmから600nmまで、50%粒子径が0.46μmから1.03μmまでの場合、吸光度と50%粒子径との相関関係が比例しており、最小自乗法により、一次直線的に近似できた。波長が400nmの場合、吸光度と50%粒子径との相関関係は比例しておらず、一次直線的に近似できなかった。
【0031】
(試験例2)
試験例1で調製した加熱乳(試料1)を40g、市販の無糖タイプの珈琲飲料(「セブンプレミアム 無糖コーヒー」)を16g、砂糖を5.6g、及び原料水を18.4gで用意し、それぞれを混合した。この混合物を耐熱容器内に分注してから、オートクレーブを用いて、110℃、1分間で加熱した後に、氷水で10℃以下に冷却し、珈琲乳飲料を調製した(試料6)。実施例1で調製した加熱乳(試料2〜5)でも、前記と同様にして、珈琲乳飲料を調製した(試料7〜10)。これらの試料6〜10を100倍に希釈してから、分光光度計(UV−1600PC、島津製作所社製)を用いて、光照射の波長が400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1000nm、1100nmの吸光度を測定すると共に、粒度分布計(SALD−2001、島津製作所社製)を用いて、50%粒子径を測定し、その結果を表3に示した。また、各波長における吸光度と、50%粒子径との相関関係を、一次直線的に近似し、その相関係数などを表4に示した。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
表4より、波長が800nmから1100nmまで、50%粒子径が0.46μmから1.97μmまでの場合、吸光度と50%粒子径との相関関係が比例しており、最小自乗法により、一次直線的に近似できた。波長が500nmから700nmまで、50%粒子径が0.46μmから1.39μmまでの場合、吸光度と50%粒子径との相関関係が比例しており、最小自乗法により、一次直線的に近似できた。波長が400nmの場合、吸光度と50%粒子径との相関関係は比例しておらず、一次直線的に近似できなかった。すなわち、吸光度と50%粒子径との相関関係について、加熱乳(牛乳)で確認された傾向が、珈琲成分などを添加した珈琲乳飲料でも確認されることが分かった。
【0035】
(試験例3)
脱脂粉乳を271.8g、無塩バターを127.5g、原料水を2600.7gで用意し、それぞれを混合した。この調合乳(無脂乳固形分:8.7%、乳脂肪分:3.6%)をステンレス製の大型容器内で攪拌しながら、10℃から60℃まで加熱した後に、卓上均質機(NS1001、Niro Soavi社製)を用いて、表5に示した5種類の圧力で均質化処理した。これら5種類の未加熱加工乳を耐熱容器内に分注してから、オートクレーブを用いて、110℃、1分間で加熱した後に、氷水で10℃以下に冷却し、5種類の加熱加工乳(加工乳)を調製した(試料11〜15)。これらの試料11〜15を100倍に希釈してから、分光光度計(UV−1600PC、島津製作所社製)を用いて、光照射の波長が400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1000nm、1100nmの吸光度を測定すると共に、粒度分布計(SALD−2001、島津製作所社製)を用いて、50%粒子径を測定し、その結果を表5に示した。また、各波長における吸光度と、50%粒子径との相関関係を、一次直線的に近似し、その相関係数などを表6に示した。
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
表6より、波長が600nmから1100nmまで、50%粒子径が0.54μmから1.74μmまでの場合、吸光度と50%粒子径との相関関係が比例しており、最小自乗法により、一次直線的に近似できた。波長が500nmで、50%粒子径が0.54μmから1.42μmまでの場合、吸光度と50%粒子径との相関関係が比例しており、最小自乗法により、一次直線的に近似できた。波長が500nmから1100nmまで、50%粒子径が2.59μmの場合、吸光度と50%粒子径との相関関係は比例しておらず、一次直線的に近似できなかった。波長が400nmの場合、吸光度と50%粒子径との相関関係は比例しておらず、一次直線的に近似できなかった。すなわち、吸光度と50%粒子径との相関関係について、加熱乳(牛乳)で確認された傾向が、還元乳原料で調製した加工乳でも確認されることが分かった。
【0039】
(試験例4)
生乳を52680g、脱脂濃縮乳を2070g、原料水を5250gで用意し、それぞれを混合した。この調合乳(無脂乳固形分:8.8%、乳脂肪分:3.6%)をタンク内で攪拌しながら、10℃から60℃まで加熱した後に、均質機(ホモゲナイザー)を用いて、表7に示した3種類の圧力で均質化処理した。これら3種類の未加熱加工乳について、プレート式熱交換機を用いて、85℃で予熱してから、130℃、2秒間で加熱した後に、10℃以下に冷却し、3種類の加熱加工乳(加工乳)を調製した(試料16〜18)。これらの試料16〜18を100倍に希釈してから、分光光度計(UV−1600PC、島津製作所社製)を用いて、光照射の波長が800nm、850nm、900nm、1000nm、1100nmの吸光度を測定すると共に、粒度分布計(SALD−2001、島津製作所社製)を用いて、50%粒子径を測定し、その結果を表7に示した。また、各波長における吸光度と、50%平均粒子径との相関関係を、一次直線的に近似し、その相関係数などを表8に示した。
【0040】
【表7】
【0041】
【表8】
【0042】
表8より、波長が800nmから1100nmまで、50%粒子径が0.68μmから1.29μmまでの場合、吸光度と50%粒子径との相関関係が比例しており、最小自乗法により、一次直線的に近似できた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明では、乳性食品の50%粒子径と、光照射による吸光度の測定値との間に相関関係が存在していることを見出し、ロケーションや装置の制限が少なく、安定した吸光度が得られることから、粒度分布測定装置のような大掛かりで特殊な設備を使用せずに、乳性食品の50%粒子径を簡便で安価に測定する方法を提供できる。そして、本発明では、汎用性の高い分光光度計を使用して、乳性食品の50%粒子径を簡易的に測定できるため、乳性食品の品質(風味、食感、物性など)を容易に管理・制御・設計などする方法を提供できる。