(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弾性率の測定値と、前記弾性率と前記リテーナリングの圧力との関係を示す研磨条件データに従って、前記リテーナリングの圧力を調整することを特徴とする請求項2に記載の研磨方法。
前記研磨条件データは、前記弾性率および前記リテーナリングの圧力の値の組み合わせを変えながら複数のサンプル基板を研磨し、研磨された前記複数のサンプル基板の縁だれ量を測定し、弾性率ごとに前記リテーナリング圧力と前記縁だれ量とを関連付け、前記縁だれ量を最少とするリテーナリング圧力を弾性率ごとに決定することにより予め取得されることを特徴とする請求項3に記載の研磨方法。
前記研磨条件調整部は、前記弾性率の測定値と、前記弾性率と前記リテーナリングの圧力との関係を示す研磨条件データに従って、前記リテーナリングの圧力を調整することを特徴とする請求項14に記載の研磨装置。
前記研磨条件データは、前記弾性率および前記リテーナリングの圧力の値の組み合わせを変えながら複数のサンプル基板を研磨し、研磨された前記複数のサンプル基板の縁だれ量を測定し、弾性率ごとに前記リテーナリング圧力と前記縁だれ量とを関連付け、前記縁だれ量を最少とするリテーナリング圧力を弾性率ごとに決定することにより予め取得されることを特徴とする請求項15に記載の研磨装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、ウェハなどの基板の研磨中または研磨前に、研磨パッドの弾性率に基づいて研磨条件を調整する研磨方法および研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、基板と研磨パッドとを相対移動させることにより前記基板を研磨する研磨方法であって、
前記基板の研磨中に前記研磨パッドの弾性率を測定し、前記弾性率の測定値に基づいて前記基板の研磨条件を調整することを特徴とする。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記研磨条件は、前記基板の周囲に配置されたリテーナリングの前記研磨パッドに対する圧力であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記弾性率の測定値と、前記弾性率と前記リテーナリングの圧力との関係を示す研磨条件データに従って、前記リテーナリングの圧力を調整することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨条件データは、前記弾性率および前記リテーナリングの圧力の値の組み合わせを変えながら複数のサンプル基板を研磨し、研磨された前記複数のサンプル基板の縁だれ量を測定し、弾性率ごとに前記リテーナリング圧力と前記縁だれ量とを関連付け、前記縁だれ量を最少とするリテーナリング圧力を弾性率ごとに決定することにより予め取得されることを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記研磨条件は、前記研磨パッドの温度であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記弾性率が所定の目標値となるように前記研磨パッドの温度を調整することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨パッドの温度は、温度調整用の媒体を前記研磨パッドに接触させることにより調整することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記温度調整用の媒体は、前記研磨パッド上の複数の領域に別々に接触することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数の領域のうちの少なくとも1つは、前記基板の周縁部に接触する領域であることを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様は、前記研磨パッドの弾性率は、前記研磨パッドの進行方向において前記基板の上流側の領域で測定することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨パッドの弾性率は、
さらに前記基板の研磨前に
も測定することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨パッドの表面に力を加えて該研磨パッドを変形させ、前記研磨パッドの変形量を測定し、前記力を前記研磨パッドの変形量で割り算することにより前記研磨パッドの弾性率を決定することを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様は、基板と研磨パッドとを相対移動させることにより前記基板を研磨する研磨装置であって、
前記基板の研磨中に前記研磨パッドの弾性率を測定する弾性率測定器と、前記弾性率の測定値に基づいて前記基板の研磨条件を調整する研磨条件調整部とを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の好ましい態様は、前記研磨条件は、前記基板の周囲に配置されたリテーナリングの前記研磨パッドに対する圧力であり、前記研磨条件調整部は、前記弾性率の測定値に基づいて前記リテーナリングの圧力を調整するように構成されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨条件調整部は、前記弾性率の測定値と、前記弾性率と前記リテーナリングの圧力との関係を示す研磨条件データに従って、前記リテーナリングの圧力を調整することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨条件データは、前記弾性率および前記リテーナリングの圧力の値の組み合わせを変えながら複数のサンプル基板を研磨し、研磨された前記複数のサンプル基板の縁だれ量を測定し、弾性率ごとに前記リテーナリング圧力と前記縁だれ量とを関連付け、前記縁だれ量を最少とするリテーナリング圧力を弾性率ごとに決定することにより予め取得されることを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい態様は、前記研磨条件は、前記研磨パッドの温度であり、前記研磨条件調整部は、前記弾性率の測定値に基づいて前記研磨パッドの温度を調整するように構成されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記研磨条件調整部は、前記弾性率が所定の目標値となるように前記研磨パッドの温度を調整することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、温度調整用の媒体を前記研磨パッドに接触させる媒体接触機構をさらに備え、前記研磨条件調整部は、前記媒体接触機構を介して前記研磨パッドの温度を調整することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記媒体接触機構は、前記温度調整用の媒体を前記研磨パッド上の複数の領域に別々に接触させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数の領域のうちの少なくとも1つは、前記基板の周縁部に接触する領域であることを特徴とする。
【0017】
本発明の好ましい態様は、前記弾性率測定器は、前記研磨パッドの弾性率を前記基板の研磨中に測定することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記弾性率測定器は、前記研磨パッドの進行方向において前記基板の上流側の領域で前記研磨パッドの弾性率を測定することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記弾性率測定器は、前記研磨パッドの弾性率を前記基板の研磨前に測定することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記弾性率測定器は、前記研磨パッドの表面に力を加えて該研磨パッドを変形させ、前記研磨パッドの変形量を測定し、前記力を前記研磨パッドの変形量で割り算することにより前記研磨パッドの弾性率を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、実際に測定された研磨パッドの弾性率に基づいて研磨条件が調整される。したがって、良好な基板研磨結果を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態における研磨装置を示す模式図である。
図1に示すように、研磨装置は、研磨テーブル12と、支軸14の上端に連結されたトップリングアーム16と、トップリングアーム16の自由端に取り付けられたトップリングシャフト18と、トップリングシャフト18の下端に連結されたトップリング20と、ウェハなどの基板の研磨条件を調整する研磨条件調整部47とを備えている。トップリングシャフト18は、トップリングアーム16内に配置されたトップリングモータ(図示せず)に連結されて回転駆動されるようになっている。このトップリングシャフト18の回転により、トップリング20が矢印で示す方向に回転するようになっている。
【0021】
研磨テーブル12は、テーブル軸12aを介してその下方に配置されるテーブルモータ70に連結されており、このテーブルモータ70により研磨テーブル12がテーブル軸12aまわりに矢印で示す方向に回転駆動されるようになっている。この研磨テーブル12の上面には研磨パッド22が貼付されており、研磨パッド22の上面22aがウェハなどの基板を研磨する研磨面を構成している。
【0022】
トップリングシャフト18は、上下動機構24によりトップリングアーム16に対して上下動するようになっており、このトップリングシャフト18の上下動によりトップリング20がトップリングアーム16に対して上下動するようになっている。トップリングシャフト18の上端にはロータリージョイント25が取り付けられている。圧力調整部100は、ロータリージョイント25を経由してトップリング20に連結されている。
【0023】
トップリング20は、その下面にウェハを保持できるように構成されている。トップリングアーム16は支軸14を中心として旋回可能に構成されており、下面にウェハを保持したトップリング20は、トップリングアーム16の旋回によりウェハの受取位置から研磨テーブル12の上方に移動される。そして、トップリング20を下降させてウェハを研磨パッド22の上面(研磨面)22aに押圧する。ウェハの研磨中は、トップリング20および研磨テーブル12をそれぞれ回転させ、研磨テーブル12の上方に設けられた研磨液供給ノズル(図示せず)から研磨パッド22上に研磨液を供給する。このように、ウェハを研磨パッド22の研磨面22aに摺接させてウェハの表面を研磨する。
【0024】
トップリングシャフト18およびトップリング20を昇降させる昇降機構24は、軸受26を介してトップリングシャフト18を回転可能に支持するブリッジ28と、ブリッジ28に取り付けられたボールねじ32と、支柱30により支持された支持台29と、支持台29上に設けられたACサーボモータ38とを備えている。サーボモータ38を支持する支持台29は、支柱30を介してトップリングアーム16に連結されている。
【0025】
ボールねじ32は、サーボモータ38に連結されたねじ軸32aと、このねじ軸32aが螺合するナット32bとを備えている。トップリングシャフト18は、ブリッジ28と一体となって昇降(上下動)するようになっている。したがって、サーボモータ38を駆動すると、ボールねじ32を介してブリッジ28が上下動し、これによりトップリングシャフト18およびトップリング20が上下動する。
【0026】
この研磨装置は、研磨パッド22の研磨面22aをドレッシングするドレッシングユニット40を備えている。このドレッシングユニット40は、研磨面22aに摺接されるドレッサ50と、ドレッサ50が連結されるドレッサシャフト51と、ドレッサシャフト51の上端に設けられたエアシリンダ53と、ドレッサシャフト51を回転自在に支持するドレッサアーム55とを備えている。ドレッサ50の下面はドレッシング面50aを構成し、このドレッシング面50aは砥粒(例えば、ダイヤモンド粒子)から構成されている。エアシリンダ53は、支柱56により支持された支持台57上に配置されており、これらの支柱56はドレッサアーム55に固定されている。
【0027】
ドレッサアーム55は図示しないモータに駆動されて、支軸58を中心として旋回するように構成されている。ドレッサシャフト51は、図示しないモータの駆動により回転し、このドレッサシャフト51の回転により、ドレッサ50がドレッサシャフト51まわりに矢印で示す方向に回転するようになっている。エアシリンダ53は、ドレッサシャフト51を介してドレッサ50を上下動させ、ドレッサ50を所定の押圧力で研磨パッド22の研磨面22aに押圧する。
【0028】
研磨パッド22の研磨面22aのドレッシングは次のようにして行われる。ドレッサ50がドレッサシャフト51を中心として回転し、これと同時に図示しない純水供給ノズルから純水が研磨面22aに供給される。この状態で、ドレッサ50はエアシリンダ53により研磨面22aに押圧され、ドレッシング面50aが研磨面22aに摺接される。さらに、ドレッサアーム55を支軸58を中心として旋回させてドレッサ50を研磨面22aの半径方向に揺動させる。このようにして、ドレッサ50により研磨パッド22が削り取られ、研磨面22aがドレッシング(再生)される。
【0029】
図2は、ウェハWの複数の領域を独立に押圧することができる複数のエアバッグを備えたトップリング20を示す断面図である。トップリング20は、トップリングシャフト18に自由継手80を介して連結されるトップリング本体81と、トップリング本体81の下方に配置されたリテーナリング82とを備えている。
【0030】
トップリング本体81の下方には、ウェハWに当接する柔軟なメンブレン(弾性膜)86と、メンブレン86を保持するチャッキングプレート87とが配置されている。メンブレン86とチャッキングプレート87との間には、4つの圧力室(エアバッグ)C1,C2,C3,C4が設けられている。圧力室C1,C2,C3,C4はメンブレン86とチャッキングプレート87とによって形成されている。中央の圧力室C1は円形であり、他の圧力室C2,C3,C4は環状である。これらの圧力室C1,C2,C3,C4は、同心上に配列されている。
【0031】
圧力室C1,C2,C3,C4にはそれぞれ流体路F1,F2,F3,F4を介して圧力調整部100により加圧空気等の加圧気体(加圧流体)が供給されるようになっている。圧力室C1,C2,C3,C4の内部圧力は互いに独立して変化させることが可能であり、これにより、ウェハWの対応する4つの領域、すなわち、中央部、内側中間部、外側中間部、および周縁部に対する研磨圧力を独立に調整することができる。
【0032】
チャッキングプレート87とトップリング本体81との間には圧力室C5が形成され、この圧力室C5には流体路F5を介して上記圧力調整部100により加圧気体が供給されるようになっている。これにより、チャッキングプレート87およびメンブレン86全体が上下方向に動くことができる。ウェハWの周端部はリテーナリング82に囲まれており、研磨中にウェハWがトップリング20から飛び出さないようになっている。圧力室C3を構成する、メンブレン86の部位には開口が形成されており、圧力室C3に真空を形成することによりウェハWがトップリング20に吸着保持されるようになっている。また、この圧力室C3に窒素ガスやクリーンエアなどを供給することにより、ウェハWがトップリング20からリリースされるようになっている。
【0033】
トップリング本体81とリテーナリング82との間には、環状のローリングダイヤフラム89が配置されおり、このローリングダイヤフラム89の内部には圧力室C6が形成されている。圧力室C6は、流体路F6を介して上記圧力調整部100に連結されている。圧力調整部100は加圧気体を圧力室C6内に供給し、これによりリテーナリング82を研磨パッド22に対して押圧する。
【0034】
圧力調整部100からの加圧気体は、流体路F1,F2,F3,F4,F5,F6を通って圧力室C1〜C6内に供給される。圧力室C1〜C6は大気開放弁(図示せず)にも接続されており、圧力室C1〜C6を大気開放することも可能である。
【0035】
研磨条件調整部47は、各圧力室C1,C2,C3,C4に対応する位置にある膜厚計測点での研磨の進捗に基づいて、各圧力室C1,C2,C3,C4の内部圧力の目標値を決定する。研磨条件調整部47は上記圧力調整部100に指令信号を送り、圧力室C1,C2,C3,C4の内部圧力が上記目標値に一致するように圧力調整部100を制御する。複数の圧力室を持つトップリング20は、研磨の進捗に従ってウェハWの表面上の各領域を独立に研磨パッド22に押圧できるので、膜を均一に研磨することができる。
【0036】
ウェハWは研磨パッド22に対して押し付けられながら研磨されるため、ウェハWの研磨結果は研磨パッド22の弾性率によって変わりうる。弾性率は、研磨パッド22の変形しにくさを示す物性値であり、硬い研磨パッド22は高い弾性率を有し、柔らかい研磨パッド22は低い弾性率を有する。
【0037】
図3(a)および
図3(b)は、研磨パッド22の弾性率がウェハWの研磨に与える影響を説明するための図である。
図3(a)に示すように、研磨パッド22が硬いと、ウェハWは研磨パッド22内にはあまり沈み込まない。その結果、ウェハWの周縁部に接触する研磨パッド22の面積は小さい。これに対して、
図3(b)に示すように、研磨パッド22が柔らかいと、ウェハWは研磨パッド22内に沈み込み、ウェハWの周縁部に接触する研磨パッド22の面積が大きくなる。その結果、ウェハWの周縁部が他の領域に比べて多く研磨される、いわゆる縁だれが起こる。
【0038】
図4は、柔らかい研磨パッド22を用いて研磨されたウェハWの研磨レートを示す図である。
図4のグラフは、ウェハWの半径方向における各位置での研磨レート(除去レートともいう)を表している。
図4から、ウェハWの周縁部での研磨レートは、他の領域でのそれよりも大きいことが分かる。つまり、ウェハWの周縁部は、他の領域よりも多く研磨されており、結果として縁だれとなる。
【0039】
このような縁だれを防止するために、
図2に示すように、ウェハWを囲むように配置されたリテーナリング82を用いて、ウェハWの外側の研磨パッド22の領域を押し付けることが行われている。リテーナリング82は、ウェハWの周囲で研磨パッド22を押し下げることにより、研磨パッド22とウェハWの周縁部との接触面積を減少させることができる。したがって、縁だれを抑制することができる。
【0040】
しかしながら、研磨パッド22が柔らかいと、
図5に示すように、リテーナリング82とウェハWとの間で研磨パッド22が盛り上がることがある。このような場合は、リテーナリング82の研磨パッド22への圧力を大きくして、ウェハWと研磨パッド22との接触面積を小さくする。研磨パッド22が硬い場合は、
図6に示すように、研磨パッド22はあまり盛り上がらない。したがって、この場合は、リテーナリング82の圧力を少しだけ大きくすればよい。このように、研磨パッド22の弾性率にしたがって、ウェハW研磨中のリテーナリング82の圧力を調整することが必要とされる。
【0041】
研磨パッド22の弾性率は、研磨パッド22の温度によって変わる。したがって、リテーナリング82の圧力以外にも、研磨パッド22の温度を変えることによって研磨パッド22の縁だれを防止することができる。
【0042】
研磨パッド22の弾性率は、ウェハWの縁だれのみならず、エロージョンおよびディッシングにも影響を与える。具体的には、研磨パッド22が柔らかい場合、
図7に示すように、配線101が密集して形成されているパターン領域が他の領域よりも多く除去されたり(エロージョン)、絶縁膜102に形成された配線101に皿状の窪みが形成される(ディッシング)。このようなエロージョンおよびディッシングは、研磨パッド22が硬いときには起こりにくい。したがって、研磨パッド22が柔らかいときは、研磨パッド22の温度を変えることによってエロージョンおよびディッシングを防止することができる。このように、研磨パッド22の弾性率に基づいて、リテーナリング82の圧力や研磨パッド22の温度などの研磨条件を変えることが好ましい。
【0043】
そこで、本発明では、ウェハの研磨中またはウェハの研磨前に、研磨パッド22の弾性率を測定し、この弾性率の測定値に基づいてウェハの研磨条件を調整する。
図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド22の弾性率を測定する弾性率測定器110を備えている。この弾性率測定器110は、研磨パッド22に力を与えて研磨パッド22を変形させ、その変形量から研磨パッド22の弾性率を測定するように構成されている。
【0044】
図8は、弾性率測定器110の一例を示す模式図である。弾性率測定器110は、研磨パッド22に接触する接触子111と、接触子111を研磨パッド22に対して押し付けるアクチュエータとしてエアシリンダ114と、接触子111の変位を測定する変位測定器115と、接触子111の変位および接触子111の研磨パッド22に対する荷重から研磨パッド22の弾性率を決定する弾性率決定部117とを備えている。エアシリンダ114は、研磨パッド22の上方に配置された支持アーム120に固定されており、この支持アーム120は研磨テーブル12の外側に設置された支持軸121に固定されている。支持アーム120に代えて、ドレッサアーム55にエアシリンダ114を固定してもよい。
【0045】
エアシリンダ114は、圧力レギュレータ123を経由して圧縮気体供給源125に接続されている。圧力レギュレータ123は、圧縮気体供給源125から供給される圧縮気体の圧力を調整し、圧力調整された圧縮気体をエアシリンダ114に送るようになっている。弾性率決定部117は、圧縮気体の所定の目標圧力値を圧力レギュレータ123に送信し、圧力レギュレータ123は、エアシリンダ114に送られる圧縮気体の圧力がこの目標圧力値に維持されるように動作する。接触子111から研磨パッド22に与えられる荷重は、目標圧力値とエアシリンダ114の受圧面積とから算出することができる。
【0046】
変位測定器115は、支持アーム120に対して相対的に上下方向に移動し、かつ接触子111と一体に動く。支持アーム120の高さは一定であるから、変位測定器115の支持アーム120に対する変位を測定することにより、接触子111の変位を決定することが可能である。エアシリンダ114は、接触子111を研磨パッド22に押し付け、この状態で変位測定器115は接触子111の変位、すなわち研磨パッド22の変形量を測定する。このように、変位測定器115は、研磨パッド22の変形量を測定するパッド変形測定器として機能する。変位測定器115としては、接触式または非接触式のいずれを用いてもよい。具体的には、リニアスケール、レーザ式センサ、超音波センサ、または渦電流式センサなどを変位測定器115として用いることができる。また、変位測定器115として、2点間の距離を測定する距離センサを用いてもよい。
【0047】
エアシリンダ114は、予め定められた力で接触子111を研磨パッド22に対して押し付けることにより、研磨パッド22の表面を変形させる。変位測定器115は、接触子111の変位(すなわち、研磨パッド22の変形量)を測定する。研磨パッド22に押し付けられたときの接触子111の変位は、研磨パッド22の弾性率によって変わる。したがって、接触子111の変位から研磨パッド22の弾性率を決定することができる。接触子111の先端は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの硬質の樹脂により形成されることが好ましい。
【0048】
研磨パッド22の弾性率は、ウェハの研磨中にも変わりうる。したがって、研磨パッド22の弾性率は、ウェハの研磨中に測定してもよい。この場合、接触子111が、回転する研磨パッド22に接触したときに接触子111が損傷しないように、
図9に示すように、接触子111はその先端に取り付けられた回転自在なローラ112を有してもよい。この例によれば、接触子111の損傷が防止されるのみならず、接触子111による研磨パッド22の損傷も防止される。
【0049】
接触子111を研磨パッド22に押し付けたときの接触子111の変位(研磨パッド22の変形量)は、接触子111の研磨パッド22に対する荷重と、研磨パッド22の弾性率に依存する。弾性率が一定の条件下では、接触子111の変位は、接触子111の研磨パッド22に対する荷重に比例する。
図10は、接触子111の荷重と接触子111の変位との関係を示す図である。
図10に示すグラフの傾きの逆数は、研磨パッド22のばね定数、すなわち研磨パッド22の弾性率を表している。弾性率決定部117は、接触子111の荷重差L2−L1を、この荷重差に対応する接触子111の変位差D2−D1で割り算することにより、研磨パッド22の弾性率を決定する。
【0050】
接触子111が研磨パッド22を押しているときに、支持アーム120は研磨パッド22からの反力を受けて僅かに撓む。この支持アーム120の撓みは、接触子111の変位の測定値と、接触子111の実際の変位との間に差異を生じさせてしまう。そこで、より正確な弾性率を取得するために、支持アーム120の撓み量を用いて接触子111の変位を補正することが好ましい。より具体的には、接触子111の変位の測定値から、支持アーム120の撓み量を減算することが好ましい。
図11は、接触子111の研磨パッド22に対する荷重と、支持アーム120の撓み量との関係を示す図である。
図11から分かるように、支持アーム120の撓み量は、接触子111の荷重に概ね比例する。したがって、接触子111の変位の測定値から支持アーム120の対応する撓み量を引き算することにより、正確な接触子111の変位を取得することができる。ここで述べた接触子111の変位の補正方法は、支持アーム120に代えてドレッサアーム55にエアシリンダ114を固定した場合にも適用することができる。
【0051】
図11に示す例では、接触子111の荷重L1に対応する支持アーム120の撓み量はD1’であり、接触子111の荷重L2に対応する支持アーム120の撓み量はD2’である。したがって、研磨パッド22の弾性率は、接触子111の荷重L2,L1に対応する接触子111の変位測定値D2,D1から支持アーム120の撓み量D2’,D1’をそれぞれ引き算することにより接触子111の変位を補正し、接触子111の荷重差L2−L1を、この荷重差に対応する接触子111の補正された変位差(D2−D2’)−(D1−D1’)で割り算することにより決定することができる。接触子111の荷重と、対応する支持アーム120の撓み量との関係を示す補正データは、弾性率決定部117に予め記憶されている。
【0052】
このようにして決定された研磨パッド22の弾性率は、研磨条件調整部47に送られる。研磨条件調整部47は、決定された研磨パッド22の弾性率から、リテーナリング82の研磨パッド22に対する最適な圧力を決定する。この最適な圧力は、研磨パッド22の弾性率と、縁だれ量を最小とするリテーナリング82の圧力との関係を示す研磨条件データに基づいて決定される。この研磨条件データは、複数のサンプルウェハ(サンプル基板)を、研磨パッド22の弾性率を一定に維持した条件下で、異なるリテーナリング圧力でそれぞれ研磨し、別の複数のサンプルウェハを、研磨パッド22の弾性率を別の値に維持した条件下で、異なるリテーナリング圧力でそれぞれ研磨し、同じようにして研磨パッド22の弾性率を変えながら複数のサンプルウェハを研磨し、研磨されたサンプルウェハの縁だれ量を測定し、弾性率ごとにリテーナリング圧力とサンプルウェハの縁だれ量とを関連付け、サンプルウェハの縁だれ量を最少とするリテーナリング圧力を弾性率ごとに決定することよって予め取得される。縁だれ量は、ウェハの周縁部と他の領域との間での研磨レートまたは膜厚の差として表すことができる。サンプルウェハは、本来研磨すべきウェハWと同一または類似する構成(配線パターン、膜の種類など)を有していることが好ましい。
【0053】
研磨条件データは研磨条件調整部47に予め格納されている。したがって、研磨条件調整部47は、測定された研磨パッド22の弾性率と研磨条件データとから、研磨パッド22の弾性率に対応したリテーナリング82の最適な圧力を決定することができる。
【0054】
研磨条件調整部47は、このようにして決定された圧力でリテーナリング82が研磨パッド22を押し付けるように、圧力調整部100に指令信号を送る。この指令信号を受け、圧力調整部100は、リテーナリング82の圧力が上記決定された圧力となるようにリテーナリング圧力室C6内の気体の圧力を調整する。このようにして、研磨パッド22の弾性率がリテーナリング82の圧力に反映される。
【0055】
次に、研磨条件データを取得する具体例について説明する。研磨パッド22の弾性率が一定となるように研磨パッド22の温度が調整された条件下で、複数のサンプルウェハが研磨される。これら複数のサンプルウェハは、それぞれ、所定の異なるリテーナリング圧力で研磨される。研磨後、サンプルウェハの膜厚が膜厚測定器(図示せず)によって測定され、縁だれ量が取得される。次に、サンプルウェハの研磨時のリテーナリング82の圧力と、ウェハの周縁部に対する研磨圧力との差が取得される。リテーナリング82の圧力は、
図2に示す圧力室C6内の圧力に対応し、ウェハの周縁部に対する研磨圧力は、
図2に示す圧力室C4内の圧力に対応する。
【0056】
同じようにして、研磨パッド22の弾性率を少しずつ変えながら、各弾性率において複数のサンプルウェハを異なるリテーナリング圧力で研磨し、研磨されたサンプルウェハの縁だれ量を測定し、
図12に示すような、縁だれ量と、リテーナリング圧力とウェハ周縁部への研磨圧力との差との関係を示す複数の測定データを取得する。これら複数の測定データは、それぞれ、異なる弾性率に対応する。次に、それぞれの研磨パッド22の弾性率において、縁だれ量が最小となる圧力差(リテーナリング82の圧力とウェハ周縁部への研磨圧力との差)を決定し、
図13に示すような、研磨パッド22の弾性率と、リテーナリング圧力とウェハ周縁部への研磨圧力との差の最適値との関係を示す研磨条件データを取得する。研磨条件調整部47は、弾性率測定器110によって測定された研磨パッド22の弾性率に対応する圧力差の最適値を研磨条件データから決定し、その圧力差を実現するためのリテーナリング82の圧力を決定する。
【0057】
図14は、測定された研磨パッド22の弾性率が研磨条件にフィードバックされる工程を説明する図である。ウェハの研磨が開始されると(ステップ1)、研磨パッド22の弾性率が測定される(ステップ2)。研磨条件調整部47は、測定された弾性率に対応する最適な圧力差(リテーナリング82の圧力とウェハ周縁部に加えられる研磨圧力との差)を、上述した研磨条件データから決定する(ステップ3)。そして、研磨条件調整部47は、決定された圧力差を実現するためのリテーナリング82の圧力を算出し、その算出されたリテーナリング82の圧力の値を目標圧力値として圧力調整部100に送信する。圧力調整部100は、この目標圧力値に従ってリテーナリング圧力室C6内の圧力を制御する(ステップ4)。このステップ4では、ウェハに過度な力が加わらないようにするために、周縁部を含むウェハに加えられる研磨圧力はそのままに維持される。ステップ2からステップ4までの工程を複数回繰り返すことが好ましい。ウェハの研磨が終了すると(ステップ5)、研磨パッド22はドレッサ50によりドレッシングされる(ステップ6)。そして、次のウェハが同様にして研磨される(ステップ7)。
【0058】
研磨パッド22の弾性率は、研磨パッド22の温度に依存して変わるため、ウェハの縁だれ量は、研磨パッド22の温度によっても調整することができる。したがって、リテーナリング82の圧力に加えて、研磨パッド22の温度によってウェハの縁だれを防止することが好ましい。そこで、研磨パッド22の温度を調整することができる実施形態について説明する。
【0059】
図15は、研磨パッド22の研磨面22aに温度調整媒体を接触させる媒体接触機構140を示す図である。図示しない研磨装置の他の構成は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0060】
媒体接触機構140は、研磨パッド22の半径方向に沿って配置された複数の媒体供給ノズル141と、これらの媒体供給ノズル141に温度調整媒体を供給する媒体供給源143と、媒体供給源143から媒体供給ノズル141に送られる温度調整媒体の流量を制御する流量制御弁145とを備えている。媒体供給源143は、所定の温度範囲内に維持された温度調整媒体をその内部に貯留している。流量制御弁145は、研磨条件調整部47に接続されており、研磨条件調整部47からの指令信号に従って動作する。各媒体供給ノズル141から研磨パッド22に供給される温度調整媒体の流量は、これらの流量制御弁145によって独立に制御される。したがって、研磨パッド22の上の複数の領域のうちの1つまたはいくつかのみを温度調整することが可能である。使用される温度調整媒体は、例えば、清浄な空気、窒素、純水、またはこれらの混合流体である。
【0061】
複数の媒体供給ノズル141のうちの少なくとも1つは、ウェハの周縁部に接触する研磨パッド22の領域に温度調整媒体を供給することが好ましい。温度調整媒体は、通常、研磨パッド22を冷却するための冷却媒体であるが、場合によっては加熱媒体が使用されてもよい。
図15は、2つの媒体供給ノズル141および2つの流量制御弁145が設けられた例を示すが、3つ以上の媒体供給ノズル141および流量制御弁145を設けてもよい。さらに、複数の媒体供給ノズル141および複数の流量制御弁145に代えて、1つの媒体供給ノズル141および1つの流量制御弁145を設けてもよい。さらに、温度調整媒体として、温度調整機能を備えた固体を用いてもよい。
【0062】
図7に示すエロージョンやディッシングなどの表面段差は、リテーナリング82の圧力調整では解消することが難しいが、研磨パッド22の温度調整によっては解消することができる。そこで、研磨パッド22の温度を調整することによって、エロージョンやディッシングなどのウェハの表面上の段差(凹凸)を解消する実施形態について説明する。
【0063】
図16は、研磨パッド22の弾性率とウェハの表面段差との関係を示す研磨条件データを表す図である。
図16に示す研磨条件データは、複数のサンプルウェハ(サンプル基板)を異なる弾性率の条件下で研磨し(他の研磨条件は同じ)、研磨されたサンプルウェハの表面段差の大きさを測定し、弾性率と表面段差の大きさとを関連付けることによって予め取得されたものである。表面段差の大きさは、段差計、原子間力顕微鏡、走査型電子顕微鏡などの公知の技術を用いて測定することができる。このようにして取得された研磨条件データは研磨条件調整部47に予め格納されている。
【0064】
図16から分かるように、ウェハの表面段差が最少となる研磨パッド22の弾性率が存在する。言い換えれば、この弾性率の値は、ウェハの表面段差を最少とすることができる最適な弾性率である。そこで、研磨条件調整部47は、弾性率測定器110によって測定された研磨パッド22の弾性率が上記最適な弾性率になるように、媒体接触機構140の動作を制御して研磨パッド22の温度を調整する。上記最適な弾性率は、
図16に示す研磨条件データから予め決定され、研磨パッド22の弾性率の目標値として研磨条件調整部47に予め記憶されている。
【0065】
図17は、測定された研磨パッド22の弾性率が研磨条件にフィードバックされる工程を説明する図である。ウェハの研磨が開始されると(ステップ1)、研磨パッド22の弾性率が測定される(ステップ2)。研磨条件調整部47は、測定された弾性率に基づき、研磨パッド22が上記所定の最適な弾性率を有するように、媒体接触機構140を介して研磨パッド22の温度を調整する(ステップ3)。測定された弾性率が上記所定の最適な弾性率に一致するまで、ステップ2とステップ3が繰り返される。好ましくは、ステップ2とステップ3は、研磨が終了するまで繰り返される。ウェハの研磨が終了すると(ステップ4)、研磨パッド22はドレッサ50によりドレッシングされる(ステップ5)。そして、次のウェハが同様にして研磨される(ステップ6)。
【0066】
図18の符号Qに示すように、研磨パッド22の弾性率は、ウェハと接触する研磨パッド22の領域内で測定することが好ましい。さらに、トップリング20の上流側の領域内で研磨パッド22の弾性率を測定することが好ましい。
【0067】
図19は、ドレッサ50を利用して研磨パッド22の弾性率を測定する弾性率測定器110の例を示す図である。
図19に示すように、この弾性率測定器110は、ドレッサ50を研磨パッド22に押し付けるアクチュエータとしてのエアシリンダ53と、ドレッサ50の縦方向の変位を測定する変位測定器115と、ドレッサ50の研磨パッド22に対する荷重とドレッサ50の変位とから研磨パッド22の弾性率を決定する弾性率決定部117とから基本的に構成される。エアシリンダ53は、圧力レギュレータ123を経由して圧縮気体供給源125に接続されている。圧力レギュレータ123は、圧縮気体供給源125から供給される圧縮気体の圧力を調整し、圧力調整された圧縮気体をエアシリンダ53に送るようになっている。
【0068】
弾性率決定部117は、圧縮気体の目標圧力値を圧力レギュレータ123に送信し、圧力レギュレータ123は、エアシリンダ53に送られる圧縮気体の圧力がこの目標圧力値に維持されるように動作する。ドレッサ50から研磨パッド22に与えられる荷重は、目標圧力値とエアシリンダ53の受圧面積とから算出することができる。
【0069】
変位測定器115は、ドレッサアーム55に対して相対的に上下方向に移動し、かつドレッサ50と一体に動く。ドレッサアーム55の高さは一定であり、その上下方向の位置は固定である。したがって、変位測定器115のドレッサアーム55に対する変位を測定することにより、ドレッサ50の変位を決定することが可能である。
【0070】
エアシリンダ53は、ドレッサ50の下面(ドレッシング面)を研磨パッド22に押し付け、この状態で変位測定器115はドレッサ50の変位、すなわち研磨パッド22の変形量を測定する。弾性率決定部117は、ドレッサ50の変位とドレッサ50の荷重とから上述のようにして研磨パッド22の弾性率を算出する。
図11に示す例と同じように、ドレッサアーム55の撓み量と、ドレッサ50の研磨パッド22に対する荷重との関係を示す補正データを用いて、ドレッサ50の変位の測定値を補正してもよい。研磨パッド22のドレッシング処理は、通常、研磨前(ウェハの研磨と次のウェハの研磨の間)に行われるので、ドレッシング処理後に、引き続いてドレッサ50を研磨パッド22に押し付けてドレッサ50の変位を測定することが望ましい。
【0071】
図20は、弾性率測定器110のさらに他の例を示す図である。この例の弾性率測定器110は、研磨パッド22に接触する距離センサ127と、この距離センサ127を研磨パッド22に押し付けるアクチュエータとしてのエアシリンダ114と、距離センサ127の変位および距離センサ127の研磨パッド22に対する荷重から研磨パッド22の弾性率を決定する弾性率決定部117とを備えている。この例では、距離センサ127は、研磨パッド22に接触する接触子としても機能する。エアシリンダ114は、研磨パッド22の上方に配置された支持アーム120に固定されており、この支持アーム120は研磨テーブル12の外側に設置された支持軸121に固定されている。支持アーム120に代えて、ドレッサアーム55にエアシリンダ114を固定してもよい。
【0072】
エアシリンダ114は、圧力レギュレータ123を経由して圧縮気体供給源125に接続されている。圧力レギュレータ123は、圧縮気体供給源125から供給される圧縮気体の圧力を調整し、圧力調整された圧縮気体をエアシリンダ114に送るようになっている。弾性率決定部117は、圧縮気体の所定の目標圧力値を圧力レギュレータ123に送信し、圧力レギュレータ123は、エアシリンダ114に送られる圧縮気体の圧力がこの目標圧力値に維持されるように動作する。距離センサ127から研磨パッド22に与えられる荷重は、目標圧力値とエアシリンダ114の受圧面積とから算出することができる。
【0073】
距離センサ127は、この距離センサ127と研磨テーブル12との距離を測定する。距離センサ127を研磨パッド22に押し付けたときの距離センサ127の変位(すなわち、研磨パッド22の変形量)は、距離センサ127と研磨テーブル12との距離の変化量である。距離センサ127に押されているときの研磨パッド22は、距離センサ127と研磨テーブル12との間に挟まれているので、距離センサ127と研磨テーブル12との距離の変化から、研磨パッド22を押したときの距離センサ127の変位を求めることができる。より具体的には、距離センサ127が実質的に荷重0で研磨パッド22に接触しているときの距離センサ127と研磨テーブル12との第1の距離を測定し、距離センサ127が0よりも大きい所定の荷重で研磨パッド22を押しているときの距離センサ127と研磨テーブル12との第2の距離を測定し、第1の距離から第2の距離を引き算することにより、距離センサ127の変位、すなわち研磨パッド22の変形量を算出することができる。上記第1の距離を研磨パッド22の直径方向に並んだ複数の点で測定することにより、研磨パッド22のプロファイルを取得することができる。
【0074】
距離センサ127としては、超音波センサなどの非接触タイプの距離センサが使用される。研磨テーブル12の上面が金属から構成されている場合には、距離センサ127として渦電流センサを用いることができる。
【0075】
図21は、
図20に示す弾性率測定器110の変形例を示す図である。この例では、先端にローラ112が回転自在に取付けられた接触子111が用いられており、このローラ112が研磨パッド22に接触するようになっている。距離センサ127は接触子111に連結されており、距離センサ127と接触子111とは一体に上下方向に移動可能となっている。距離センサ127は、研磨パッド22の表面に対向して配置されており、研磨パッド22の表面から離間して配置されている。
【0076】
接触子111のローラ112がエアシリンダ114によって研磨パッド22に押し付けられると、距離センサ127は接触子111と一体に研磨パッド22に向かって移動する。したがって、
図20に示す例と同じように、距離センサ127によって、接触子111の変位、すなわち研磨パッド22の変形量を測定することができる。この例では、ローラ112が研磨パッド22に転がり接触するので、距離センサ127および研磨パッド22の損傷が防止される。
【0077】
図22は、弾性率測定器110のさらに他の例を示す図である。この例では、鋼球131を所定の位置から研磨パッド22上に落とし、その跳ね返り高さから研磨パッド22の弾性率を測定する。すなわち、弾性率測定器110は、鋼球131と、鋼球131を研磨パッド22の表面に案内するガイド管132と、鋼球131の跳ね返り高さを測定する距離センサ133と、跳ね返り高さの測定値から研磨パッド22の弾性率を決定する弾性率決定部117とを備えている。ガイド管132および距離センサ133は、支持アーム120に固定されている。支持アーム120に代えて、ドレッサアーム55にガイド管132および距離センサ133を固定してもよい。
【0078】
弾性率決定部117には、跳ね返り高さと研磨パッド22の弾性率との関係を示す弾性率データが予め記憶されている。したがって、弾性率決定部117は、距離センサ133から送られてきた跳ね返り高さの測定値と、弾性率データとから研磨パッド22の弾性率を決定することができる。
【0079】
図8乃至
図22に示す弾性率測定器110は、研磨パッド22に接触することで研磨パッド22の弾性率を測定する接触タイプの弾性率測定器である。これに代えて、研磨パッド22に接触することなく研磨パッド22の弾性率を測定する非接触タイプの弾性率測定器110を用いてもよい。非接触タイプの弾性率測定器110は、研磨パッド22との接触に起因する粉塵を発生させないので、ウェハの研磨中での測定に好適に使用できる。
【0080】
図23は、非接触タイプの弾性率測定器110を示す模式図である。この弾性率測定器110は、研磨パッド22に加圧気体を吹き付けて研磨パッド22に窪みを形成するブロア135と、その窪みの深さを測定する距離センサ136と、窪みの深さの測定値から研磨パッド22の弾性率を決定する弾性率決定部117とを有している。距離センサ136としては、レーザ式距離センサなどの非接触タイプの距離センサが使用される。ブロア135および距離センサ136は、支持アーム120に固定されている。支持アーム120に代えて、ドレッサアーム55にブロア135および距離センサ136を固定してもよい。
【0081】
ブロア135は、流量調整弁137を経由して圧縮気体供給源125に接続されている。流量調整弁137は、圧縮気体供給源125からブロア135に供給される圧縮気体の流量を調整するようになっている。弾性率決定部117は、圧縮気体の所定の目標流量値を流量調整弁137に送信し、流量調整弁137は、この目標流量値に従って圧縮気体の流量を制御する。
【0082】
弾性率決定部117は、研磨パッド22の窪みの深さ(すなわち研磨パッド22の変形量)と研磨パッド22の弾性率との関係を示す弾性率データを予め格納している。弾性率決定部117は、距離センサ136によって取得された窪み深さの測定値と、弾性率データとから、研磨パッド22の弾性率を決定する。この弾性率測定器110は、研磨パッド22に接触することなく研磨パッド22の弾性率を測定することが可能である。したがって、この非接触タイプの弾性率測定器110を用いることにより、ウェハに傷(スクラッチ)を付けることなく研磨パッド22の弾性率を測定することができる。
【0083】
研磨パッド22の表面、すなわち研磨面22aは、ドレッサ50によってドレッシングされた結果、
図24に示すように微小な凹凸を有している。この研磨面22aの凹凸は、研磨パッド22の表面と内部とでその弾性率に差異を生じさせる。上述したように、ウェハの研磨結果は、研磨パッド22の弾性率に影響される。特に、ウェハの周縁部のプロファイルは、研磨パッド22の表面の弾性率に大きく影響される。そこで、次の実施形態は、この研磨パッド22の表面の弾性率を測定する方法を提供する。
【0084】
図25は、弾性率測定器の他の例を示す模式図である。特に説明しない構成は、
図8に示す構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態の弾性率測定器110は、研磨パッド22に接触する接触子111と、接触子111を研磨パッド22に対して押し付けるアクチュエータとしてエアシリンダ114と、接触子111の変位を測定する変位測定器115と、接触子111から研磨パッド22に加えられる荷重を測定する荷重測定器としてのロードセル150と、接触子111の変位および接触子111の研磨パッド22に対する荷重から研磨パッド22の弾性率を決定する弾性率決定部117とを備えている。
【0085】
エアシリンダ114は、研磨パッド22の上方に配置された支持アーム120に固定されており、この支持アーム120は研磨テーブル12の外側に設置された支持軸121に固定されている。支持アーム120に代えて、ドレッサアーム55にエアシリンダ114を固定してもよい。接触子111は、シャフト151の下端に固定されており、ロードセル150はシャフト151の上端に固定されている。ロードセル150は、シャフト151とエアシリンダ114のロッドとの間に配置されている。したがって、エアシリンダ114によって発生された下向きの力は、ロードセル150およびシャフト151を介して接触子111に伝えられる。接触子111は、円形の下面を有しており、この下面が研磨パッド22の研磨面22aに接触する。接触子111の下面は、四角形など、円形以外の形状であってもよい。接触子111から研磨パッド22に加えられる荷重は、ロードセル150によって測定される。
【0086】
変位測定器115は支持アーム120に連結されており、変位測定器115の上下方向の位置は固定されている。変位測定器115は、支持アーム120に対する接触子111の相対的な位置を測定する。なお、
図8に示すように、変位測定器115を接触子111に連結して、変位測定器115自身が接触子111と一体に上下方向に移動可能としてもよい。
【0087】
接触子111が研磨パッド22の研磨面22aを押し付けると、
図26に示すように、まず、研磨面22aの凹凸のうちの凸部が接触子111の下面によって押しつぶされる。凸部が押しつぶされた後は、研磨パッド22の全体がその厚さ方向に圧縮される。
図27は、接触子111の荷重と変位との関係を示すグラフである。
図27から分かるように、単位荷重あたりの変位の増加(以下、これを変位レートという)は、研磨面22aの凸部が押しつぶされたときの荷重L3の前後で大きく変化する。すなわち、接触子111が研磨パッド22に接触してから研磨面22aの凸部が押しつぶされるまでの変位レートは高く、凸部が押しつぶされた後の変位レートは低い。したがって、変位レートの変化から、研磨面22aの凸部が押しつぶされたことを検出することができる。
【0088】
本明細書では、研磨パッド22の表面の弾性率は、接触子111が研磨パッド22に接触してから研磨面22aの凸部が押しつぶされるまでに取得された接触子111の荷重と変位から算出された弾性率をいう。弾性率決定部117は、変位レートが低下して所定のしきい値に達したときの接触子111の荷重と変位を決定し、決定された荷重と変位とから研磨パッド22の表面の弾性率を算出する。変位レートは、弾性率の逆数であるから、弾性率決定部117は、単位荷重ごとに弾性率を算出し、弾性率が増加して所定のしきい値に達したときの接触子111の荷重と変位を決定し、決定された荷重と変位とから研磨パッド22の表面の弾性率を算出してもよい。
【0089】
図28は、
図25に示す弾性率測定器の変形例を示す模式図である。研磨パッド22の研磨面22aに形成されている凹凸のサイズはμmオーダーであるため、接触子111の研磨面22aへの押し付けは精度よく行わなければならない。
図28に示す弾性率測定器は、研磨面22aに対する接触子111の押付力をより精密に調整することができるように構成されている。特に説明しない
図28の構成は、
図25の構成と同じである。
【0090】
図28に示すように、ロードセル150は、接触子111を研磨パッド22に対して押し付けるアクチュエータとしてエアシリンダ158に連結されている。このエアシリンダ158のシリンダ部とピストン部とが互いに摺接する部分には低摩擦材料が使用されており、エアシリンダ158のピストンロッドは気体の圧力を受けて滑らかに動くことが可能となっている。エアシリンダ158は、電空レギュレータ159を経由して圧縮気体供給源125に接続されている。
【0091】
エアシリンダ158は、接触子111を所定の位置にまで移動させる接触子移動機構としてのエアシリンダ160に連結されている。このエアシリンダ160も圧縮気体供給源125に接続されているが、エアシリンダ160と圧縮気体供給源125との間には電空レギュレータは配置されていない。エアシリンダ160は、エアシリンダ158、ロードセル150、および接触子111を一体に所定の位置まで移動させる。この所定の位置では、接触子111は研磨パッド22には接触しない。この状態で、電空レギュレータ159によって制御された圧力の気体(例えば空気)がエアシリンダ158に供給され、エアシリンダ158は接触子111を研磨パッド22に押し付ける。このように、接触子111の鉛直方向の移動はエアシリンダ160によって行われ、接触子111の押し付けはエアシリンダ158によって行われる。接触子移動機構として、エアシリンダ160に代えて、ボールねじとサーボモータとの組み合わせを使用してもよい。
【0092】
図29は、
図25に示す弾性率測定器の他の変形例を示す模式図である。この弾性率測定器は、エアシリンダ158に代えて、圧電素子(ピエゾ素子)163が使用されている。圧電素子163は電源165に接続されており、電源165によって可変電圧が圧電素子163に印加されるようになっている。圧電素子163は、印加される電圧に応じて変形する素子であり、その変形量はμmオーダーである。よって、圧電素子163は、接触子111の押付力を精密に調整することができる。この例では、接触子111の鉛直方向の移動はエアシリンダ160によって行われ、接触子111の押し付けは圧電素子163によって行われる。
【0093】
図30は、
図25に示す弾性率測定器のさらに他の変形例を示す模式図である。この弾性率測定器は、接触子111を研磨パッド22に対して押し付けるアクチュエータ、および接触子111を移動させる接触子移動機構として、ボールねじ170およびサーボモータ171の組み合わせが使用されている。ボールねじ170は、ねじ軸170aと、このねじ軸170aが螺合するナット170bとを備えている。ナット170bは、ロードセル150に連結されている。さらに、ナット170bは、鉛直方向に延びるリニアガイドレール174によって上下動可能に支持されている。
【0094】
サーボモータ171は、支持アーム120に固定されている。サーボモータ171にはモータドライバ175が接続されている。このモータドライバ175は弾性率決定部117からの指令を受けて動作し、サーボモータ171を駆動する。ボールねじ170およびサーボモータ171の組み合わせは、μmオーダーで接触子111を鉛直方向に移動させることが可能である。よって、ボールねじ170およびサーボモータ171の組み合わせは、接触子111の押付力を精密に調整することができる。
【0095】
図15に示すように、研磨パッド22の研磨面22aに温度調整媒体を接触させる場合、研磨パッド22の表面の弾性率が変わりやすい。したがって、
図25乃至
図30に示す弾性率測定器110は、
図15に示す媒体接触機構140と組み合わせることが好ましい。
【0096】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。