特許第6196878号(P6196878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196878
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】電子顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20170904BHJP
【FI】
   H01J37/20 B
   H01J37/20 C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-219740(P2013-219740)
(22)【出願日】2013年10月23日
(65)【公開番号】特開2015-82403(P2015-82403A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】菊池 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】内藤 浩喜
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 浩一郎
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭50−002351(JP,B1)
【文献】 米国特許第05581088(US,A)
【文献】 特開2012−151028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドエントリーステージを備えた電子顕微鏡において、
試料を搭載する試料ホルダと、前記試料ホルダを内挿するエアーロックシリンダと、前記エアーロックシリンダの先端に備えた球形支点と、前記球形支点の中心を軸とする首振り運動をすることにより試料を駆動する第1の駆動機構と、を備え、
前記首振り運動と概直交する方向に試料を駆動する第2の駆動機構とエアーロックシリンダの接触部において、前記第2の駆動機構側の微動先端部と、エアーロックシリンダ側の微動受けが摺動し、該摺動の軌道が前記球形支点の中心軸を中心とする球面に沿うこと、を特徴とする電子顕微鏡。
【請求項2】
サイドエントリーステージを備えた電子顕微鏡において
試料を搭載する試料ホルダと、前記試料ホルダを内挿するエアーロックシリンダと、前記エアーロックシリンダの先端に備えた球形支点と前記球形支点の中心を軸とする首振り運動をすることにより試料を駆動する第1の駆動機構と、を備え、
前記首振り運動と概直交する方向に試料を駆動する第2の駆動機構とエアーロックシリンダの接触部において、前記第2の駆動機構側の微動先端部が球面状、エアーロックシリンダ側が前記球形支点の中心軸を中心とする球面で形成されたこと、を特徴とする電子顕微鏡
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
ガイドレール上に設置された第2の駆動機構と、前記駆動機構を前記ガイドレール方向に駆動する機構を備えることを特徴とする電子顕微鏡
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡に関する。例えば、サイドエントリーステージを備えた透過型電子顕微鏡において、振動に強く移動精度のよい試料微動機構に関連する。
【背景技術】
【0002】
<TEM概要>
電子ビーム顕微鏡装置とくに透過型電子顕微鏡(TEM)に関して図6を用いて装置構成概略を説明する。電子銃51によって生成された電子ビームを電子レンズ54を用いて集束し、試料ステージ10に搭載された試料へ照射する。試料を透過した電子を検出器55によって検出し、主制御装置57へ取り込み画像化し、試料を観察する。鏡体1は除振された架台50に締結されている。試料ステージ10は主制御装置57からの指令を受け、ステージコントローラ53にて制御する。鏡体1は図示しない真空排気用ポンプにて、10-5Pa程度まで真空排気される。
【0003】
観察試料は、集束イオンビーム装置などによって数10nmオーダまで薄片化され、試料台に搭載される。その試料台は試料ホルダに取り付けられ、試料移動装置に組み込まれた予備排気室(エアーロック室)を介して、10-5Pa程度まで排気された鏡体へ導入される。観察試料位置を決定するために、試料移動装置は、鉛直方向をZ軸としてその軸に直行する平面内のX軸、Y軸と定義すると、それぞれ3軸方向に駆動される。また、試料の結晶方位を決定するために、X軸、Y軸それぞれを軸とした回転方向(それぞれα方向、β方向)に駆動される。X軸は、試料ホルダの長手方向、Y方向はX軸およびZ軸に垂直な方向として通常定義されている。
【0004】
原子レベルで観察領域を決定するためには、各軸に対して数nmのステップ移動が可能である駆動機構が選択されている。
【0005】
<ホルダ駆動方式について>
試料移動装置としては、特許文献1に記載されているような試料ホルダの先端を接触させて、X方向に駆動する方式が考案されている。また、特許文献2に記載されているように、試料ホルダの一部に段差を設けて、その段差をX軸駆動機構と接触させる方式も考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−214087
【特許文献2】特許第3736772
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
透過型電子顕微鏡の試料移動機構において、サイドエントリー型の機構が採用されている。試料の移動は球面座の中心を軸とした首振り運動によって行われる。試料を搭載するためのホルダは、球面座に支持されたエアーロックシリンダと呼ばれる筒と同軸に取り付けられている。
【0008】
試料をX軸方向のみに移動しようとした場合に、Y軸にも移動してしまう場合がある。これを回避するために、Y駆動機構によって駆動する部材(エアーロックシリンダ)にX微動機構が搭載された構造となっている。この構造では、エアーロックシリンダの質量が増大し、床振動などの外乱によって試料ステージが振動しやすい構造となってしまい、電子顕微鏡を用いて取得した画像に画像ノイズが混入するという問題が生じる。
【0009】
本発明では、エアーロックシリンダを軽量化し、振動などの外乱に対して強い電子顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の構成を採用する。例えば、サイドエントリーステージにおいて、X駆動機構とY駆動機構を同一部材に搭載し、エアーロックシリンダをY軸方向に駆動する時にX微動機構とエアーロックシリンダの接触点が互いに摺動する機構を備えた透過型電子顕微鏡とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エアーロックシリンダを軽量化して、試料の振動を低減することにより、TEMの分解能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例によるサイドエントリーステージである。
図2】本発明の実施例によるX微動機構である。
図3】本発明の実施例によるX微動機構のZ方向概観(Y=0)である。
図4】本発明の実施例によるX微動機構のZ方向概観(Y>0)である。
図5】本発明の実施例によるX方向に駆動可能なX微動機構である。
図6】透過型電子顕微鏡概略図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<試料移動装置概略>
図1を用いて本発明の実施の形態について説明する。鏡体1に固定された球面受け36は球形支点37と接触している。球形支点37を含むエアーロックシリンダは、球形支点37の中心を軸として首振り運動をし、その結果として、試料3をZ方向(鉛直方向)およびY方向(紙面垂直方向)に移動させることが可能となる。試料Z方向に駆動させるためには、回転筒20に固定されたZ駆動用リニア機構21を動作させる。Z駆動用リニア機構21は、その対極に位置したZバネ22によって常に反発力を受ける。図示しない紙面に垂直方向に駆動可能な別のリニア機構によってY方向へ試料ホルダ2を駆動する。
【0014】
<X微動機構の設置>
X微動機構について説明する。図1に示すように、X駆動用リニア機構10は、ベアリング23を介してベース24と締結される回転筒20に取り付けられている。X駆動用リニア機構10の駆動力は回転筒20に設けられたX微動てこ支点26を支点にしたてこ機構25によってスライダ筒30に伝えられ、試料ホルダ2をX方向へ駆動する。スライダ筒は内筒33とベローズ32にて接続されている。てこ機構25とスライダ筒30の接触部は、試料ホルダのZ軸およびY軸駆動に対して、すべり機構が必要である。
【0015】
<X微動機構のすべり機構>
図2にX微動機構の詳細図を示した。エアーロックシリンダ内のスライド筒30上にX微動受け62を固定する。回転筒20上に取り付けられたX微動機構のてこ機構25の先端には球状のX微動先端部63が取り付けられている。てこ機構25は、回転筒20およびエアーロックシリンダ外筒61にそれぞれ設けられた開口部66および65を通して、X微動受け62とX微先端部63が接するように設置する。
【0016】
X駆動用リニア機構10の動きは、てこ機構25およびスライダ筒30を介して、試料ホルダ2に伝達し、試料ホルダ2に取り付けた試料をX方向に駆動する。
【0017】
図3および図4図2をZ方向から見た図である。図3は試料がY=0の場合のエアーロックシリンダ、図4は試料がYのプラス方向に移動した場合のエアーロックシリンダの状態を示している。Y方向に試料を移動するときには、エアーロックシリンダは球形支点の軸を中心とした首振り運動をする。
【0018】
X微動機構は図示しない回転筒に固定されているため、エアーロックシリンダの首振り運度では動かず、X微動受け62上をX微動先端部63が摺動する。エアーロックシリンダの首振り運動によるX微動先端部63の軌跡は、エアーロック上では球形支点の中心軸70を中心とした円となる。紙面に垂直方向でX軸を含む平面内でのエアーロックの首振り運動(試料のZ方向駆動)を含めると、X微動突き当て部先端の軌跡はエアーロック上では、球形支点の中心軸70を中心とした球面となる。
【0019】
X微動ウケのX微動突き当て部先端と接する面を、この軌跡と一致するようにすれば、Y方向やZ方向への試料の移動に伴い、試料がX方向へ動くことはない。X微動先端63には、モリブデングリース等を塗布し、摺動抵抗を低減する。
【0020】
<X微動機構をエアーロックシリンダから切り離す効果1>
X微動機構は、エアーロックシリンダの質量に対して、20%程度である。
【0021】
図1に示すようにエアーロックシリンダはZ駆動リニア機構21に支持された構造となっている。エアーロックシリンダ質量をm、支持部のバネ定数をkとすると、エアーロックシリンダの共振周波数は(k/m)1/2となる。mの減少に伴い、共振周波数が増加するとともに、共振時の振幅は小さくなる。試料ホルダはエアーロックシリンダに内挿されており、エアーロックシリンダの軽量化は、試料ホルダの振動振幅の低減につながる。
【0022】
<X微動機構をエアーロックシリンダから切り離す効果2>
観察スループットを増加させるために、複数の試料を搭載可能な試料ホルダが考案されている。このタイプの試料ホルダは、その長手方向(X方向)に、試料装填部が複数個備えられている。
【0023】
透過型電子顕微鏡の試料は一般的に直径3mmのメッシュであるが、例えば3つの試料が装填された試料ホルダを同時に観察しようとした場合、最低でもX方向に9mm試料ホルダを移動させなければならない。X微動機構においては、リニア機構の動きをてこによって減速し、移動分解能を向上させている。この時のてこ比はおおむね1:4であり、試料をX方向に9mm動かす場合アクチュエータとしては、36mm動かす必要がある。
【0024】
このストロークを確保するためには、アクチュエータが大型化し、ステージへの実装が困難になる。
【0025】
これを解決する方法としては、図5に示すようにX微動機構を可動式とし、試料ホルダを駆動するアクチュエータ10とは別のアクチュエータを用いてX微動機構自身を駆動することによって、試料の大きな移動と、小さな移動の両方を実現し、複数の試料が搭載されたホルダでの観察を可能とする。
【符号の説明】
【0026】
1…鏡体、2…ホルダ、3…試料、4…ホルダ用Oリング、5…ホルダ位置決めピン、10…X駆動用リニア機構、20…回転筒、21…Z駆動用リニア機構、22…Zバネ、23…ベアリング、24…ベース、25…てこ機構、26…X微動てこ支点、30…スライダ筒、32…ベローズ、33…内筒、34…バルブ、35…バルブ固定部、36…球面受け、37…球形支点、38…外筒、39…ホルダガイド、40…ホルダ突き当て部、41…ピン、50…架台、51…電子銃、53…標準ステージ用コントローラ、54…電子レンズ、55…検出器、57…主制御ユニット、60…X微動ベース、61…外筒、62…X微動受け、63…X微動先端部、64…ステージ中心軸、65…外筒開口部、66…回転筒開口部、67…ガイドレール、68…X微動駆動用リニア機構、70…球形支点の中心軸、
図1
図2
図3
図4
図5
図6