特許第6196884号(P6196884)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196884
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/02 20140101AFI20170904BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20170904BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20170904BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20170904BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   B23K26/02 A
   B23K26/00 M
   B23K26/364
   B23K26/08 D
   H01L21/78 B
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-234852(P2013-234852)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2015-93304(P2015-93304A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 貴士
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−248241(JP,A)
【文献】 特開2011−151117(JP,A)
【文献】 特開2006−263763(JP,A)
【文献】 特開2005−152906(JP,A)
【文献】 特開2012−059986(JP,A)
【文献】 特開2010−000517(JP,A)
【文献】 米国特許第06156625(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/02
B23K 26/00
B23K 26/08
B23K 26/364
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割予定ラインを備えた板状ワークを保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された板状ワークの該分割予定ラインに沿ってレーザビームを照射するレーザ発振器を備えたレーザ加工手段と、
該レーザ発振器から加工送り方向に離間して配設され、該チャックテーブルに保持された板状ワークの該分割予定ラインをレーザ発振器でレーザ加工した加工ラインを撮像する撮像カメラと、
該チャックテーブルを加工送り方向となるX方向に加工送りする加工送り手段と、
該加工送り手段を下方から支持し、割り出し送り方向となるY方向に割り出し送りする割り出し送り手段と、を備えるレーザ加工装置であって、
該割り出し送り手段による割り出し送りで該チャックテーブル及び該加工送り手段の移動方向がY方向に対して角度変化した場合、該割り出し送り手段の移動範囲において、該割り出し送り手段による複数の割り出し停止位置それぞれに対して該撮像カメラで撮像し、該撮像カメラの撮像結果から、該複数の割り出し停止位置で該レーザ発振器が板状ワークをレーザ加工した被加工点と、該分割予定ラインとのY方向における差を認識する認識部と、
該複数の割り出し停止位置それぞれに対し該認識部が認識するY方向における差を補正値として記憶する記憶部と、
該記憶部に記憶される該補正値に基づいてそれぞれの該割り出し停止位置での該加工ラインの位置を補正するよう該割り出し送り手段の駆動を制御する制御部と、
を、備えたレーザ加工装置。
【請求項2】
該記憶部が該割り出し送り手段による所定の割り出し停止位置に対する該補正値を記憶していない場合、該記憶部が記憶する複数の該補正値の中から、該所定の割り出し停止位置に最も近い2つの該補正値と直線補間法とを用いて、該所定の割り出し停止位置での該補正値を算出する算出部を備えた請求項1記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状ワークをレーザ加工するレーザ加工装置に関し、特に、半導体ウェーハ等の板状ワークにおける分割予定ラインに沿ってレーザビームを照射して加工するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に複数のデバイスが形成された板状ワークとなるウェーハは、表面を区画する分割予定ラインに沿って分割されることで、個々のデバイスチップに分割される。このようなウェーハを分割する装置としては、例えば、特許文献1及び2に開示された切削装置が知られている。
【0003】
特許文献1の切削装置は、ウェーハを保持するチャックテーブルと、ウェーハを分割予定ラインに沿って切削する回転ブレードとを備えている。また、切削装置は、基台上にそれぞれ設置される加工送り手段及び割り出し送り手段を備えている。
【0004】
チャックテーブルでは、格子状に形成される分割予定ラインをX方向及びY方向に平行とした状態でウェーハが保持される。加工送り手段は、チャックテーブルをX方向に加工送りし、この加工送り中に回転する回転ブレードをウェーハに接触させることで、X方向に延びる分割予定ラインに沿って加工ラインが形成される。割り出し送り手段は、回転ブレードをY方向に割り出し送り可能に設けられ、加工ラインが形成される毎に分割予定ラインの間隔分だけ回転ブレードを割り出し送りする。これにより、ウェーハにおいて、Y方向に並ぶ複数の分割予定ラインに加工ラインが順次形成される。
【0005】
ここで、加工ラインの形成にあっては、分割予定ラインの位置に一致するよう加工位置の精度を高めることが求められる。そこで、特許文献2の切削装置では、回転ブレードに対してX方向に並ぶ位置にCCDカメラからなる撮像手段を設けている。撮像手段は、回転ブレードによって形成された加工ラインと分割予定ラインとを撮像し、その撮像結果から、加工ライン及び分割予定ラインのY方向における差(離間距離)を測定する。そして、測定した差に応じた移動量、割り出し送り手段によってY方向に回転ブレードを移動することで、分割予定ラインに対して加工ラインが一致するように補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−308034号公報
【特許文献2】特許第2501970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2の切削装置では、割り出し送り手段を構成する送りねじやスライダ等に歪みが生じて割り出し送り方向が傾いたり曲がったりし、回転ブレードの加工送り方向に対して割り出し送り方向が直交しなくなる場合がある。このため、分割予定ラインと加工ラインとが一致するように補正しても、かかる補正後の切削加工で加工ラインが分割予定ラインから離脱し、ウェーハへの加工精度が低下するという問題がある。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、割り出し送り手段による割り出し送り方向の角度が変化しても、加工精度が低下することを抑制することができるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のレーザ加工装置は、分割予定ラインを備えた板状ワークを保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された板状ワークの分割予定ラインに沿ってレーザビームを照射するレーザ発振器を備えたレーザ加工手段と、レーザ発振器から加工送り方向に離間して配設され、チャックテーブルに保持された板状ワークの分割予定ラインをレーザ発振器でレーザ加工した加工ラインを撮像する撮像カメラと、チャックテーブルを加工送り方向となるX方向に加工送りする加工送り手段と、加工送り手段を下方から支持し、割り出し送り方向となるY方向に割り出し送りする割り出し送り手段と、を備えるレーザ加工装置であって、割り出し送り手段による割り出し送りでチャックテーブル及び加工送り手段の移動方向がY方向に対して角度変化した場合、割り出し送り手段の移動範囲において、割り出し送り手段による複数の割り出し停止位置それぞれに対して撮像カメラで撮像し、撮像カメラの撮像結果から、複数の割り出し停止位置でレーザ発振器が板状ワークをレーザ加工した被加工点と、分割予定ラインとのY方向における差を認識する認識部と、複数の割り出し停止位置それぞれに対し認識部が認識するY方向における差を補正値として記憶する記憶部と、記憶部に記憶される補正値に基づいてそれぞれの割り出し停止位置での加工ラインの位置を補正するよう割り出し送り手段の駆動を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、複数の割り出し停止位置それぞれの補正値を求め、それぞれの割り出し停止位置で加工ラインの位置を補正する制御を行うので、割り出し送り方向が変化しても、複数の分割予定ラインに対して加工ラインを一致させることができる。これにより、板状ワークの加工精度を良好に維持することができ、ひいては、加工された製品の品質等を高めることができる。しかも、割り出し送り手段が加工送り手段を下方から支持するので、それぞれが異なる位置に設置される場合に比べ、割り出し送りと加工送りとの相対角度を容易に維持することができ、これによっても、加工精度向上を図ることができる。
【0011】
また、本発明の上記レーザ加工装置において、記憶部が割り出し送り手段による所定の割り出し停止位置に対する補正値を記憶していない場合、記憶部が記憶する複数の補正値の中から、所定の割り出し停止位置に最も近い2つの補正値と直線補間法とを用いて、所定の割り出し停止位置での補正値を算出する算出部を備えているとよい。この構成では、補正値を求めた割り出し送り停止位置に対し、レーザ加工する割り出し送り停止位置の本数や位置が異なっていても、各割り出し送り停止位置に対して補正値をそれぞれ求めて加工ラインの形成位置を補正することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、それぞれの割り出し停止位置で加工ラインの軌跡を補正する制御を行うので、割り出し送り手段による割り出し送り方向の角度が変化しても、加工精度が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態に係るレーザ加工装置の概略斜視図である。
図2】本実施の形態に係るレーザ加工装置の平面図である。
図3】ウェーハの平面図である。
図4】チャックテーブルの移動方向が角度変化した場合の説明用平面図である。
図5】チャックテーブルの移動方向が角度変化した場合の説明用平面図である。
図6図5の視野内を拡大した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係るレーザ加工装置の概略斜視図である。図2は、本実施の形態に係るレーザ加工装置の平面図である。図1及び図2に示すように、レーザ加工装置1は、レーザ光線を照射するレーザ加工手段2と、板状ワークとしてのウェーハWを保持したチャックテーブル3とを相対移動させて、ウェーハWを加工するように構成されている。
【0015】
レーザ加工装置1は、直方体状の基台4を有している。基台4の上面には、チャックテーブル3をX方向及びY方向に移動するチャックテーブル移動機構5が設けられている。チャックテーブル移動機構5の後方には、立壁部41が立設されている。立壁部41の前面からはアーム部42が突出しており、アーム部42にはチャックテーブル3に対向するようにレーザ加工手段2及び撮像カメラ6が支持されている。
【0016】
チャックテーブル移動機構5は、基台4の上面に配設された割り出し送り手段51と、割り出し送り手段51の上部に配設された加工送り手段52とを備えている。加工送り手段52は、割り出し送り手段51に下方から支持されている。
【0017】
割り出し送り手段51は、基台4の上面に配置されたY方向に平行な一対のガイドレール51aと、一対のガイドレール51aにスライド可能に設置されたY軸テーブル51bとを有している。Y軸テーブル51bの下面側には、図示しないナット部が形成され、このナット部にボールネジ51cが螺合されている。ボールネジ51cの一端部には、駆動モータ51dが連結されている。Y軸テーブル51b、加工送り手段52及びチャックテーブル3は、駆動モータ51dが回転駆動されることで、割り出し送り方向となるY方向に割り出し送りされる。
【0018】
加工送り手段52は、Y軸テーブル51bの上面に配置されたX方向に平行な一対のガイドレール52aと、一対のガイドレール52aにスライド可能に設置されたX軸テーブル52bとを有している。X軸テーブル52b上部には、チャックテーブル3が設けられている。X軸テーブル52bの下面側には、図示しないナット部が形成され、このナット部にボールネジ52cが螺合されている。ボールネジ52cの一端部には、駆動モータ52dが連結されている。X軸テーブル52b及びチャックテーブル3は、駆動モータ52dが回転駆動されることで、加工送り方向となるX方向に加工送りされる。
【0019】
チャックテーブル3は、円板状に形成されており、θテーブル31を介してX軸テーブル52bの上面に回転可能に設けられている。チャックテーブル3の上面には、ポーラスセラミックス材により吸着面が形成されている。チャックテーブル3の周囲には、一対の支持アームを介して4つのクランプ部32が設けられている。4つのクランプ部32がエアアクチュエータ(不図示)により駆動されることで、ウェーハWの周囲のリングフレームFが四方から挟持固定される。
【0020】
図3は、ウェーハWの平面図である。図3に示すように、ウェーハWは、略円板状に形成されている。ウェーハWの表面(上面)は、複数の交差する分割予定ラインSTによって複数の領域に区画され、この区画された各領域にそれぞれデバイスDが形成されている。また、図1に戻り、ウェーハWは、デバイスDが形成された面を上向きにして、環状のリングフレームFに張られた粘着シートSに貼着されている。
【0021】
レーザ加工手段2は、アーム部42の先端に設けられたレーザ発振器21を有している。レーザ発振器21は、レーザビームを下向きに照射し、チャックテーブル3上に保持されたウェーハWの分割予定ラインST(図3参照)をレーザ加工する。レーザ発振器21によるレーザビームの照射中に、チャックテーブル3をX方向に加工送りすることで、分割予定ラインSTに所定深さの溝状をなす加工ラインL(図3参照)が形成される。
【0022】
撮像カメラ6は、顕微鏡によって所定倍率に拡大して投影されたウェーハWの表面領域を視野V(図4参照)内において撮像可能なCCDカメラ等により構成される。撮像カメラ6は、分割予定ラインSTと、加工ラインLとを撮像し、撮像結果を制御手段7に出力する。
【0023】
制御手段7は、レーザ加工装置1の各部を統括制御する。制御手段7は、各種処理を実行するプロセッサや、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶媒体を含んで構成される。制御手段7は、たとえば、撮像カメラ6から出力された撮像結果を入力し、その撮像結果に応じ、割り出し送り手段51及び加工送り手段52の駆動する方向や駆動量を制御する。
【0024】
制御手段7の認識部71において、撮像カメラ6の撮像結果から分割予定ラインSTと、加工ラインL上となる被加工点とのY方向における差(離間距離)を認識する。認識部71では、撮像結果が複数となる場合、各撮像結果それぞれに対して差を認識する。制御手段7の記憶部72において、認識部71が認識するY方向における差を補正値として記憶し、差が複数となる場合、各差それぞれに対して補正値を記憶する。制御手段7の制御部73において、記憶部72に記憶される補正値に基づいて加工ラインLの軌跡を補正するよう割り出し送り手段51の駆動を制御する。制御手段7の算出部74において、直線補間法の関数式に、記憶部72に記憶された所定の補正値を代入して所定位置での補正値を算出する。
【0025】
ここで、本実施の形態のようなレーザ加工装置1にあっては、チャックテーブル3及び加工送り手段51の移動方向がY方向に対して角度変化する歪みが、製品毎に固有に生じる場合がある。具体例としては、図4及び図5に示す状態となる。図4及び図5は、チャックテーブルの移動方向が角度変化した場合の説明用平面図である。なお、図4及び図5では、説明の便宜上、分割予定ラインSTを2本の点線で図示し、デバイスDを省略する。また、符号Vで示す円は、撮像カメラ6の視野Vであり、符号Pで示す点は、レーザ発振器21のレーザビームの照射位置Pである。図4及び図5において、ガイドレール51aが図4及び図5に示す矢印A1方向に曲がった状態となり、これに沿って割り出し送り方向も曲がってY方向と平行にならない状態となる。この状態では、ウェーハWに対して複数の加工ラインLを形成すると、ぞれぞれの加工ラインLと加工ラインLが形成された分割予定ラインSTとのY方向における相対位置が変化することとなる。例えば、図4の位置では、分割予定ラインSTの幅方向中心位置に加工ラインLが形成されるものの、図5の位置では、分割予定ラインSTの幅方向中心位置から図5中上方にずれた位置に加工ラインLが形成される。そこで、本実施の形態では、レーザ加工装置1の出荷時や設置時等において、製品用のウェーハWに対する加工を行う前に以下に述べる準備工程が行われる。
【0026】
準備工程は、先ず、図1に示すように、粘着シートSを介してフレームFにダミーのウェーハWが装着されるものとする。ウェーハWの粘着シートS側がチャックテーブル3によって保持され、フレームFがクランプ部32に保持される。
【0027】
ウェーハWが保持された後、チャックテーブル3がX方向及びY方向に移動され、撮像カメラ6の直下にウェーハWが位置付けられる。次いで、撮像カメラ6によってウェーハWの表面が撮像され、複数の分割予定ラインSTのうち少なくとも1本が検出される。そして、撮像カメラ6で検出された分割予定ラインSTがX方向と平行となるように、θテーブル31を介してチャックテーブル3が回転される。その後、検出された分割予定ラインSTにおけるX方向の任意の位置において、分割予定ラインSTの幅方向中心位置が、レーザ発振器21から照射されるレーザビームの照射位置と一致するようにチャックテーブル3が位置付けられる。
【0028】
次に、レーザ発振器21からレーザビームを照射しながら、チャックテーブル3がX方向に相対移動されることで、X方向に平行な分割予定ラインSTに沿って加工ラインLがレーザ加工される。このレーザ加工中、X方向の任意の位置で撮像カメラ6によってウェーハW表面を撮像するよう制御手段7の認識部71で制御される。認識部71では、撮像カメラ6の視野Vの画像が撮像結果として入力される。また、認識部71では、図5及び図6に示すように、視野V内での加工ラインLの任意の被加工点L1に対し、分割予定ラインSTの幅方向(Y方向)両側の形成縁までの距離y1、y2が画像処理等によって求められる。そして、被加工点L1と、分割予定ラインSTの幅方向中心位置cとのY方向における差をdとした場合、d=(y1−y2)/2とする演算を行い、差dが認識される。この差dは、記憶部72に出力され、記憶部72において補正値hとして記憶される。
【0029】
加工ラインLを1本形成する毎に、分割予定ラインSTのY方向のピッチ間隔分、ウェーハWが割り出し送り方向となるY方向に移動して停止される。この停止位置は、割り出し送り手段51の割り出し停止位置とされる。その後、上記と同様の動作を繰り返すことで、X方向と平行な分割予定ラインST全てに加工ラインLが順次加工される。この加工において、割り出し送り手段51の移動範囲となる全ての加工ラインLが撮像カメラ6によって撮像され、認識部71で認識された複数箇所の差dが、記憶部72において補正値hとしてそれぞれ記憶される。記憶部72で記憶される各補正値hのデータは、割り出し停止位置となる分割予定ラインSTのY方向の位置に対応して関連付けられた状態で記憶される。以上により準備工程が完了する。
【0030】
続いて、準備工程完了後における製品用のウェーハWのレーザ加工方法について説明する。この加工方法においては、先ず、上記準備工程と同様に、製品用のウェーハWをチャックテーブル3に保持させる。そして、分割予定ラインSTの幅方向中心位置に対しレーザビームの照射位置が一致するようにチャックテーブル3が位置付けられる。この位置付けにおいて、制御部73によって割り出し送り手段51の駆動が制御され、対応する分割予定ラインSTのY方向の位置(割り出し停止位置)に関連付けて記憶部72に記憶された補正値h分、チャックテーブル3のY方向の位置が変位される。これにより、準備工程での加工ラインLのY方向の差dが補正され、X方向に平行な分割予定ラインSTの幅方向中心位置に加工ラインLが一致するようにレーザ加工される。
【0031】
加工ラインLを1本形成する毎に、分割予定ラインSTのY方向のピッチ間隔分、ウェーハWが割り出し送り方向となるY方向に移動して停止される。このようにして、X方向と平行な分割予定ラインST全てに加工ラインLが形成された後、θテーブル31を介してチャックテーブル3が90°回転される。すると、格子状の分割予定ラインSTのうち、加工ラインLが未形成の分割予定ラインSTがX方向と平行とされる。この状態から前述と同様にX方向と平行な分割予定ラインST全てに加工ラインLが形成され、格子状の分割予定ラインST全てにおいて加工ラインLが形成される。
【0032】
なお、準備工程で用いたウェーハWとは分割予定ラインSTの本数が変更となったウェーハWを加工する場合、割り出し停止位置となる分割予定ラインSTのうち、補正値hが関連付けて記憶されていない分割予定ラインST(以下、「補正値なしラインST」と称する)が存在することとなる。この場合、算出部74において、記憶部72が記憶する複数の補正値hの中から、補正値なしラインSTにY方向で最も近い2つの補正値hを検索する。そして、検索された補正値hを直線補間法の関数式に代入し、補正値なしラインSTの補正値hが算出される。
【0033】
以上のように、本実施の形態に係るレーザ加工装置によれば、割り出し停止位置となる分割予定ラインSTそれぞれで加工ラインLのY方向の位置を補正するよう制御することができる。これにより、割り出し送り手段51の割り出し送り方向が曲がってしまい、Y方向に対して角度変化しても、全ての分割予定ラインSTそれぞれに対して加工ラインLが一致するようレーザ加工することができる。この結果、ウェーハWに対する加工精度を良好に保つことができ、デバイスDの品質向上を図ることができる。しかも、割り出し送り手段51が加工送り手段52を下方から支持するので、それぞれが基台4の異なる位置に設置される場合に比べ、割り出し送りと加工送りとの相対角度を維持し易くなり、レーザ加工の精度向上に寄与することができる。
【0034】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0035】
例えば、上記実施の形態の加工対象は、半導体製品のパッケージ、セラミック、ガラス、サファイヤ、シリコン系の基板、各種電気部品やミクロンオーダーの精度が要求される各種加工材料等の板状ワークとしてもよい。
【0036】
また、割り出し送り方向がY方向と平行にならない状態としては、図4及び図5に示す矢印A1方向に曲がる状態の他、矢印A2のようにS字状に曲がったりする状態でも、上記実施の形態の要領によって加工ラインLの軌跡を補正できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上説明したように、本発明は、割り出し送り手段による割り出し送り方向の角度が変化しても、加工精度が低下することを抑制することができるという効果を有し、特に、ウェーハに対して加工ラインをレーザ加工する装置に有用である。
【符号の説明】
【0038】
1 レーザ加工装置
2 レーザ加工手段
3 チャックテーブル
6 撮像カメラ
21 レーザ発振器
51 割り出し送り手段
52 加工送り手段
71 認識部
72 記憶部
73 制御部
74 算出部
L 加工ライン
L1 被加工点
ST 分割予定ライン
W ウェーハ(板状ワーク)
図1
図2
図3
図4
図5
図6