(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、配線基板と、その配線基板にフリップチップ実装された半導体チップとを有する半導体装置が知られている。このような半導体装置では、半導体チップが配線基板にフリップチップ実装された後に、半導体チップの周囲に樹脂が塗布され、毛細管現象を利用して半導体チップと配線基板との隙間に封止樹脂が充填される。
【0003】
また、近年では、工程削減などを目的として、半導体チップを実装する前に配線基板の上に未硬化の封止樹脂を予め形成しておき、半導体チップの接続バンプを封止樹脂に押し込むことにより、半導体チップをフリップチップ実装して封止する先封止技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。以下に、先封止技術を利用した半導体装置の製造方法の一例を説明する。
【0004】
まず、
図17(a)に示すような配線基板90を準備する。配線基板90の基板本体91の上面には、半導体チップが実装されるチップ実装領域A1に配線パターン92が形成されるとともに、配線パターン92を露出させる開口部93Xを有するソルダレジスト層93が形成されている。次に、
図17(b)に示す工程では、チップ実装領域A1に対応する部分に開口部94Xが形成されたマスキングテープ94をソルダレジスト層93上に貼付する。
【0005】
続いて、
図17(c)に示す工程では、マスキングテープ94の開口部94Xよりも一回り大きい開口部95Xを有する振込治具95をマスキングテープ94上に仮接着する。また、
図17(c)に示す工程では、未硬化の樹脂フィルム96Aと、その樹脂フィルム96A上に形成された支持フィルム96Bとを有する封止用樹脂材96を準備する。次いで、チップ実装領域A1に概ね対応する大きさに切断された複数の封止用樹脂材96を振込治具95の上に配置し、配線基板90を振動させることにより、封止用樹脂材96を振込治具95の開口部95Xに振り込んで配置する。
【0006】
次に、
図17(d)に示す工程では、各封止用樹脂材96を配線基板90に熱圧着し、各チップ実装領域A1に形成された配線パターン92及び基板本体91を被覆する未硬化の封止樹脂96Cを形成する。続いて、
図18(a)に示す工程では、マスキングテープ94を配線基板90から引き剥がす。このとき、マスキングテープ94の上に形成された封止樹脂96Cが引き裂かれて除去され、その封止樹脂96Cに接着された支持フィルム96Bがチップ実装領域A1の封止樹脂96Cから剥離される。
【0007】
次いで、
図18(b)及び
図18(c)に示す工程では、半導体チップ97の接続バンプ98を封止樹脂96Cに押し込み、接続バンプ98を配線基板90の配線パターン92にフリップチップ接合し、封止樹脂96Cを硬化させる。これにより、配線基板90上に半導体チップ97がフリップチップ実装され、半導体チップ97と配線基板90との間に封止樹脂96Cが充填された半導体装置を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して各実施形態を説明する。なお、添付図面は、特徴を分かりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、各部材の断面構造を分かりやすくするために、一部の部材のハッチングを省略している。
【0014】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態を
図1〜
図8に従って説明する。
本実施形態の半導体装置の製造方法では、まず、
図1に示すような配線基板20を用意する。配線基板20は、多面取り用基板であり、半導体装置に対応する構造体が形成される領域R1を複数有している。この配線基板20は、領域R1に半導体装置に対応する構造体が形成された後、切断線C1に沿ってダイシングブレード等によって切断される。これにより、半導体装置に対応する構造体が個片化され、複数の半導体装置が製造されることになる。配線基板20の各領域R1には、半導体チップをフリップチップ実装するための複数のチップ実装領域Aが画定されている。
【0015】
配線基板20は、基板本体21と、最上層の配線パターン22と、最下層の配線パターン23と、ソルダレジスト層24,25とを有している。基板本体21としては、最表層に配線パターン22,23が形成され、それら配線パターン22,23が基板内部を通じて相互に電気的に接続された構造を有していれば十分である。このため、基板本体21の内部には配線層が形成されていてもよく、配線層が形成されていなくてもよい。本例では、ガラスエポキシ樹脂などからなる絶縁基板にその厚さ方向に貫通する貫通孔21Xが形成され、その貫通孔21Xに充填された貫通電極26を介して配線パターン22,23が相互に電気的に接続されている。これに限らず、例えば貫通孔21Xの内壁に設けられたスルーホールめっき層(貫通電極)を介して配線パターン22,23を相互に電気的に接続し、上記スルーホールめっき層よりも内側に形成された貫通孔21Xの孔を樹脂で充填するようにしてもよい。
【0016】
なお、配線パターン22,23及び貫通電極26の材料としては、例えば銅や銅合金を用いることができる。
また、基板本体21の上面には、配線パターン22を露出させる開口部24Xを有するソルダレジスト層24が形成されている。
図1(a)に示すように、ソルダレジスト層24の開口部24Xは、リング状に繋がって形成されている。このリング状の開口部24X内に複数の配線パターン22がペリフェラル状に並んで配置されている。このため、配線パターン22の上面は接続パッドP1として開口部24Xから露出されている。なお、必要に応じて、開口部24Xから露出された配線パターン22の表面に、はんだ層や金属層を形成するようにしてもよい。金属層の例としては、金(Au)層や、ニッケル(Ni)/Au層(配線パターン22上にNi層とAu層をこの順番で積層した金属層)や、Ni/パラジウム(Pd)/Au層(Ni層とPd層とAu層をこの順番で積層した金属層)などを挙げることができる。
【0017】
なお、
図1の例では、配線パターン22(接続パッドP1)をチップ実装領域Aの周縁部にペリフェラル状に配置するようにしたが、チップ実装領域Aの全体に配線パターン22(接続パッドP1)を格子状に配置するようにしてもよい。また、各配線パターン22の上にソルダレジスト層24の開口部をそれぞれ配置するようにしてもよい。
【0018】
図1(b)に示すように、基板本体21の下面には、配線パターン23の一部を外部接続用パッドP2として露出させる開口部25Xを有するソルダレジスト層25が形成されている。外部接続用パッドP2には、当該配線基板20をマザーボード等の実装基板に実装する際に使用されるはんだボールやリードピン等の外部接続端子が接続される。なお、必要に応じて、上記開口部25Xから露出する配線パターン23上にOSP(Organic Solderability Preservative)処理を施してOSP膜を形成し、そのOSP膜に上記外部接続端子を接続するようにしてもよい。また、上記開口部25Xから露出する配線パターン23上に金属層を形成し、その金属層に上記外部接続端子等を接続するようにしてもよい。金属層の例としては、例えばAu層、Ni層/Au層(配線パターン23上にNi層とAu層をこの順番で積層した金属層)や、Ni層/Pd層/Au層(配線パターン23上にNi層とPd層とAu層をこの順番で積層した金属層)などを挙げることができる。また、開口部25Xから露出する配線パターン23(あるいは、配線パターン23上にOSP膜や金属層が形成されている場合には、それらOSP膜又は金属層)自体を、外部接続端子としてもよい。
【0019】
また、
図1に示す工程では、配線基板20の表面のうち少なくとも、後工程で封止樹脂43(
図3参照)が接着される面を粗面化する。具体的には、基板本体21の上面及びソルダレジスト層24の表面(上面及び側面)を粗面化する。これにより、封止樹脂43に対する濡れ性を向上させることができる。上記粗面化処理は、例えばプラズマ処理やデスミア処理により行うことができる。プラズマ処理では、例えばアルゴンガスを反応ガスとして使用することができ、供給電力を500W程度とすることができる。
【0020】
次に、
図2(a)及び
図2(b)に示す工程では、基板本体21のチップ実装領域Aに対応する部分に開口部30Xが形成されたマスキングテープ(マスク材)30をソルダレジスト層24上に貼付する。開口部30Xは、ソルダレジスト層24の開口部24Xと平面視で重なる位置に形成され、その開口部24Xよりも一回り大きく形成されている。このため、各チップ実装領域Aでは、開口部24Xの近傍に形成されたソルダレジスト層24がマスキングテープ30から内側にリング状(枠状)にはみ出し、そのはみ出した部分(突出部24A)が開口部30Xから露出した状態となる。
【0021】
上記開口部30Xは、例えばマスキングテープ30がソルダレジスト層24上に貼付される前に金型により打ち抜かれて形成される。すなわち、開口部30Xが形成された状態のマスキングテープ30をソルダレジスト層24上に貼付する。
【0022】
マスキングテープ30の貼付は、例えば貼付装置(図示略)によって行うことができる。例えば、配線基板20に設けられたアライメントマーク(図示略)を貼付装置で検出することにより、配線基板20のチップ実装領域Aに開口部30Xを位置合わせした状態でマスキングテープ30をソルダレジスト層24上に貼付することができる。貼付装置を使用することにより、±0.2mm程度の高度な位置合わせ精度でマスキングテープ30を貼付することができる。このようにして、格子状のマスキングテープ30がソルダレジスト層24(配線基板20)上に形成される。ここで、マスキングテープ30の開口部30Xには、後工程で半導体チップの下側に形成される封止樹脂が充填される。このため、本工程において、マスキングテープ30の開口部30Xを位置精度良くチップ実装領域A上に配置することにより、上記封止樹脂が半導体チップから不必要にはみ出すことを抑制することができる。
【0023】
マスキングテープ30の厚さは、例えば20〜50μm程度とすることができる。マスキングテープ30の材料としては、例えば塩化ビニル又はPETフィルムを用いることができる。なお、マスキングテープ30の下面にはアクリル樹脂などからなる粘着剤(図示略)が設けられており、マスキングテープ30は後工程でソルダレジスト層24から容易に剥離できる状態でソルダレジスト層24上に仮接着されている。
【0024】
なお、上記開口部30Xをレーザ加工法により形成するようにしてもよい。すなわち、基板本体21の上面全体にマスキングテープ30を貼付した後に、レーザ加工によって開口部30Xの外形を形取るようにマスキングテープ30を切断し、その部分のマスキングテープ30を除去して開口部30Xを形成するようにしてもよい。
【0025】
次に、
図3(a)に示す工程では、配線基板20の上面側を全体的に被覆する封止用樹脂材40をマスキングテープ30上に配置する。封止用樹脂材40は、配線基板20の上面側の全体にわたって一体的に形成されている。すなわち、封止用樹脂材40は、複数のチップ実装領域Aを連続して被覆するように形成されている。
【0026】
封止用樹脂材40は、樹脂フィルム41と、その樹脂フィルム41上に形成された支持フィルム42とを有している。樹脂フィルム41の材料としては、例えばエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂などの熱硬化性樹脂からなる半硬化状態(B−ステージ状態)の絶縁性樹脂を用いることができる。例えば、樹脂フィルム41の材料としては、粘着性を有するB−ステージ状態のシート状の絶縁性樹脂(例えば、NCF(Non Conductive Film))を用いることができる。支持フィルム42は、半硬化状態、つまり未硬化の樹脂フィルム41の剛性を補強する支持体として機能する。支持フィルム42の下面には離型処理が施されており、支持フィルム42は樹脂フィルム41から容易に剥離できるようになっている。
【0027】
樹脂フィルム41の厚さは例えば20〜50μm程度とすることができ、支持フィルム42の厚さは例えば50〜100μm程度とすることができる。
本工程により、封止用樹脂材40がマスキングテープ30上に配置されると、封止用樹脂材40の下側に、封止用樹脂材40とマスキングテープ30とソルダレジスト層24と基板本体21とによって囲まれた空洞部Bが形成された状態となる。
【0028】
次に、
図3(b)に示す工程では、
図3(a)に示した構造体を60〜100℃程度の温度で加熱した状態で押圧部材(図示略)により封止用樹脂材40を下側に押圧することによって、樹脂フィルム41を配線基板20に熱圧着する。これにより、流動化した樹脂フィルム41が空洞部Bに充填され、
図3(b)に示すように、空洞部B内に未硬化の封止樹脂43が形成されると同時に、封止樹脂43が配線基板20に接着される。この封止樹脂43は、チップ実装領域Aからマスキングテープ30の上面に延在するように形成され、複数のチップ実装領域Aにわたって連続的に形成される。すなわち、封止樹脂43は、基板本体21の上面と、配線パターン22の上面及び側面と、突出部24Aの側面及び上面と、マスキングテープ30の側面及び上面とを被覆するように形成される。このとき、封止樹脂43は、ソルダレジスト層24及びマスキングテープ30の上に形成された部分がそれ以外の部分よりも盛り上がって形成される。すなわち、基板本体21の上面にソルダレジスト層24及びマスキングテープ30が存在する分だけ、それらソルダレジスト層24及びマスキングテープ30の上に形成された封止樹脂43の上面43Aは、開口部24Xの上に形成された封止樹脂43の上面43Bよりも高い位置に形成される。換言すると、封止樹脂43において、ソルダレジスト層24及びマスキングテープ30の上には、上面43Bから上方に盛り上がった盛り上がり部44が形成されている。この盛り上がり部44は、断面視略台形状に形成されている。具体的には、盛り上がり部44は、下側(配線基板20側)から上側に向かうに連れて幅が小さくなるテーパ状に形成されている。また、封止樹脂43は下側に押圧されて形成されるため、その封止樹脂43の上面43A,43Bが平坦に形成される。なお、支持フィルム42は、封止樹脂43の形状に沿って形成され、複数のチップ実装領域Aにわたって連続的に形成される。
【0029】
上記熱圧着は、例えば真空雰囲気下において、封止用樹脂材40(未硬化の樹脂フィルム41)をダイアフラム式ラミネート装置に設けられたダイアフラム(図示略)を用いて加熱及び加圧することにより行うことができる。このような熱圧着の処理条件としては、例えば処理室(
図3(a)に示した構造体が載置されるエリア)の真空度が100MPa、ダイアフラムが封止用樹脂材40を押圧するときの圧力が0.3MPa、封止用樹脂材40の加熱温度が100℃という条件を用いることができる。ここで、ダイアフラムは、ゴム風船のようなものであり、例えばエアーにより膨らまされる。ダイアフラムは、圧力及び加熱温度等を調整することにより、該ダイアフラムと接触する封止用樹脂材40の各部分に対して所望の圧力を印加することができる。なお、ダイアフラムの材料としては、例えばシリコーンゴムを用いることができる。
【0030】
次に、
図3(c)に示す工程では、封止樹脂43から支持フィルム42を室温(例えば、20〜30℃程度)で引き剥がす。室温の場合には、支持フィルム42の下面に施された離型処理によって支持フィルム42と封止樹脂43との接着力が弱い状態であるため、支持フィルム42側に封止樹脂43が貼り付くことなく、支持フィルム42を封止樹脂43から容易に剥離することができる。このため、封止樹脂43の上面43A,43Bに凹凸が形成されることが抑制され、封止樹脂43の上面43A,43Bが平坦な状態に維持される。
【0031】
次に、
図4(a)及び
図4(b)に示す工程では、
図3(c)に示した構造体を100〜120℃程度に加温した状態で、マスキングテープ30を配線基板20から引き剥がす。すなわち、
図3(c)に示した構造体を100〜120℃程度に加熱して封止樹脂43を軟化させた状態で、マスキングテープ30を配線基板20から引き剥がす。マスキングテープ30は、格子状に繋がっているため、配線基板20の全体にわたってマスキングテープ30が連続して剥離される。このとき、マスキングテープ30上に配置された封止樹脂43(具体的には、盛り上がり部44の一部)が引き裂かれて除去される。本工程では、封止樹脂43が加温されて軟化した状態であるため、マスキングテープ30を引き剥がすことで容易に封止樹脂43を厚み方向に引き裂くことができ、その一部が引き裂かれた切断面に欠けが生じることを抑制できる。但し、
図4(b)に示すように、盛り上がり部44のうち突出部24A上に配置された部分が残るため、その残った盛り上がり部44Aによって各封止樹脂43の周縁部が盛り上がった形状となる。
【0032】
また、封止樹脂43は、流動化することで配線基板20に接着しているため、マスキングテープ30を引き剥がす際に剥離することなく配線基板20上に残される。このようにして、マスキングテープ30の開口部30Xよりも内側に形成されていた封止樹脂43が配線基板20上に残され、配線基板20の各チップ実装領域Aに位置精度良く封止樹脂43がそれぞれ残される。すなわち、マスキングテープ30の開口部30Xの平面形状によって、封止樹脂43の平面形状が設定されている。そして、各封止樹脂43は、各チップ実装領域Aに配置された基板本体21の上面、配線パターン22及びソルダレジスト層24を被覆するように形成されている。
【0033】
次に、
図5(a)及び
図5(b)に示す工程では、
図4(b)に示した封止樹脂43の周縁部に形成された盛り上がり部44Aを除去する。具体的には、封止樹脂43の周縁部の厚さが、該周縁部よりも内側における封止樹脂43の厚さと同じ厚さに、又は上記周縁部よりも内側における封止樹脂43よりも薄くなるように、未硬化の封止樹脂43を加工する。例えば、本例では、封止樹脂43をプレス成型することにより、盛り上がり部44Aを除去するとともに、周縁部から中央部に向かうに連れて上方に盛り上がった凸構造の封止樹脂43を形成する。すなわち、本例では、チップ実装領域A上に配置された封止樹脂43が山なりに形成される。
【0034】
上記プレス成型は、例えば真空雰囲気下において、未硬化の封止樹脂43をダイアフラム(図示略)を用いて加熱及び加圧することにより行うことができる。このようなプレス成型の処理条件としては、例えば、処理室(
図4に示した構造体が載置されるエリア)の真空度が100Pa、ダイアフラムが封止樹脂43を押圧するときの圧力が0.7MPa、未硬化とされた封止樹脂43の加熱温度が70℃という条件を用いることができる。ダイアフラムは、上述したように、圧力及び加熱温度等を調整することにより、該ダイアフラムと接触する封止樹脂43の各部分に対して所望の圧力を印加することができ、封止樹脂43を所望の形状(ここでは、山なり)に形成することができる。
【0035】
なお、本工程において、盛り上がり部44Aを除去するとともに、封止樹脂43の上面を平坦化するようにしてもよい。このような封止樹脂43の上面の平坦化は、例えば上記同様に、真空雰囲気下において、未硬化の封止樹脂43をダイアフラムを用いて加熱及び加圧することにより行うことができる。このときの処理条件としては、例えば、処理室の真空度が100Pa、ダイアフラムが封止樹脂43を押圧するときの圧力が0.3MPa、未硬化とされた封止樹脂43の加熱温度が100℃という条件を用いることができる。
【0036】
このように、未硬化とされた封止樹脂43の周縁部に形成されていた盛り上がり部44Aを除去することにより、封止樹脂43に半導体チップを押圧して半導体チップを接続パッドP1にフリップチップ接合する際に、封止樹脂43に気泡が形成されにくくなる。
【0037】
次に、
図6(a)及び
図6(b)に示す工程では、一方の面(ここでは、下面)側に接続バンプ51が形成された半導体チップ50を準備する。ここで、半導体チップ50としては、例えばCPU(Central Processing Unit)チップやGPU(Graphics Processing Unit)チップなどのロジックチップを用いることができる。また、半導体チップ50としては、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)チップ、SRAM(Static Random Access Memory)チップやフラッシュメモリチップなどのメモリチップを用いることができる。また、接続バンプ51としては、例えば金バンプやはんだバンプを用いることができる。はんだバンプの材料としては、例えば鉛(Pb)を含む合金、錫(Sn)とAuの合金、SnとCuの合金、SnとAgの合金やSnとAgとCuの合金を用いることができる。
【0038】
続いて、
図7(a)及び
図7(b)に示す工程では、配線基板20を100℃程度に加熱して封止樹脂43を軟化させた状態とし、その封止樹脂43に半導体チップ50の接続バンプ51を押し込むことにより、接続バンプ51を配線基板20の接続パッドP1に圧接してフリップチップ実装する。これにより、接続パッドP1と接続バンプ51とが電気的に接続される。このとき、接続バンプ51にはんだが用いられている場合、又は接続パッドP1上にはんだが形成されている場合、又はそれらの両方の場合には、上記はんだを250℃程度の温度でリフロー加熱することにより、接続パッドP1と接続バンプ51との接続が行われる。このリフロー加熱の際に、未硬化の封止樹脂43が硬化し、半導体チップ50と配線基板20との間に硬化した封止樹脂43が充填される。
【0039】
本工程において、半導体チップ50を封止樹脂43に押し込む際には、未硬化の封止樹脂43の上面が山なりに形成されている。このため、未硬化の封止樹脂43は、中央部で盛り上がった部分が半導体チップ50の下面によって押圧されて平面方向に広がる。このとき、未硬化の封止樹脂43を平面方向に均一に広げることができるため、封止樹脂43へのボイドの巻き込みを好適に抑制することができる。
【0040】
なお、上記リフロー加熱だけでは封止樹脂43の硬化が不十分である場合は、リフロー加熱の後に170〜190℃程度の温度でキュア(熱硬化処理)を実施することにより封止樹脂43を完全に硬化させるようにしてもよい。また、接続パッドP1と接続バンプ51との接続の際にリフロー加熱を行わない場合には、接続パッドP1と接続バンプ51とを接続した後に、170〜190℃程度の温度でキュアを実施することにより封止樹脂43を硬化させるようにしてもよい。
【0041】
その後、
図7に示した構造体を切断線C1に沿って切断する。これにより、
図8に示すように、本実施形態の半導体装置60が得られる。
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
【0042】
(1)封止樹脂43から支持フィルム42を室温(例えば、20〜30℃程度)で引き剥がし、封止樹脂43を加温した状態でマスキングテープ30を配線基板20から引き剥がすようにした。ここで、室温の場合には、支持フィルム42の下面に施された離型処理によって支持フィルム42と封止樹脂43との接着力が弱い状態である。このため、室温で支持フィルム42を封止樹脂43から引き剥がすことにより、チップ実装領域Aに配置された封止樹脂43が支持フィルム42側に貼り付くことなく、支持フィルム42を封止樹脂43から容易に剥離することができる。これにより、配線基板20に残された封止樹脂43の上面43A,43Bに凹凸が形成されることが抑制され、封止樹脂43の上面43A,43Bが平坦な状態に維持される。さらに、加温により封止樹脂43が軟化した状態でマスキングテープ30が引き剥がされるため、マスキングテープ30を引き剥がすことで容易に封止樹脂43を厚み方向に引き裂くことができる。このため、チップ実装領域Aに残された封止樹脂43の切断面に欠けが生じることを好適に抑制することができる。
【0043】
(2)チップ実装領域Aに配置された封止樹脂43の周縁部の盛り上がり部44Aを解消して封止樹脂43の上面を山なり又は平坦に形成した後に、その封止樹脂43上に半導体チップ50をフリップチップ実装するようにした。このように、未硬化とされた封止樹脂43の周縁部に形成されていた盛り上がり部44Aを除去することにより、封止樹脂43に半導体チップ50を押圧して該半導体チップ50をフリップチップ実装する際に、封止樹脂43に気泡が巻き込まれることを好適に抑制することができる。
【0044】
(3)山なりに形成された未硬化の封止樹脂43に半導体チップ50を押圧して該半導体チップ50をフリップチップ実装するようにした。このため、未硬化の封止樹脂43は、中央部で盛り上がった部分が半導体チップ50の下面によって押圧されて平面方向に広がる。このとき、未硬化の封止樹脂43を平面方向に均一に広げることができるため、封止樹脂43へボイドが巻き込まれることを好適に抑制することができる。
【0045】
(4)基板本体21の上面及びソルダレジスト層24の上面を粗面化した後に、それら基板本体21及びソルダレジスト層24上に封止樹脂43を形成するようにした。粗面化により基板本体21及びソルダレジスト層24における封止樹脂43に対する濡れ性が向上するため、熱圧着により配線基板20上に封止樹脂43を形成する際に、その封止樹脂43へボイドが巻き込まれることを好適に抑制することができる。
【0046】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態を
図9〜
図11に従って説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0047】
まず、
図9(a)及び
図9(b)に示す工程では、先の
図1及び
図2に示す工程と同様の製造工程により、配線基板20のソルダレジスト層24上に、チップ実装領域Aに対応する部分に開口部30Xが形成されたマスキングテープ30を貼付する。続いて、マスキングテープ30の上に振込治具70を粘着剤で仮接着する。この振込治具70の外面にはテフロン(登録商標)などの離型剤が設けられており、容易に取り外しができるようになっている。
【0048】
振込治具70には、マスキングテープ30の開口部30Xと平面視で重なる位置に、その開口部30Xよりも一回り大きい開口部70Xが形成されている。このため、領域R1では、開口部70Xの近傍に形成されたマスキングテープ30が振込治具70から内側にリング状(枠状)にはみ出し、そのはみ出した部分(突出部30A)が開口部70Xから露出した状態となる。
【0049】
また、
図9(b)に示すように、チップ実装領域Aに概ね対応する大きさに切断された複数の封止用樹脂材80を準備する。本例では、封止用樹脂材80の大きさはマスキングテープ30の開口部30Xの面積よりも多少大きく設定され、上記突出部30Aに封止用樹脂材80の周縁部が配置されるようになっている。各封止用樹脂材80は、上記封止用樹脂材40と同様に、樹脂フィルム81と、その樹脂フィルム81上に形成された支持フィルム82とを有している。
【0050】
そして、
図9及び
図10(a)に示す工程では、多数の封止用樹脂材80を振込治具70の上に配置し、配線基板20を振動させることにより、封止用樹脂材80を振込治具70の開口部70Xに振り込んで配置する。このとき、
図10(a)に示すように、封止用樹脂材80はマスキングテープ30の突出部30Aの上に配置される。すると、封止用樹脂材80の下側に、封止用樹脂材80とマスキングテープ30とソルダレジスト層24と基板本体21とによって囲まれた空洞部B1が形成された状態となる。なお、
図9(a)に示した平面図では、封止用樹脂材80の図示が省略されている。
【0051】
次に、
図10(b)に示す工程では、先の
図3(b)に示した工程と同様の製造方法により、各樹脂フィルム81を配線基板20に熱圧着し、各樹脂フィルム81を配線基板20に貼付する。これにより、流動化した樹脂フィルム81が空洞部B1に充填され、
図10(b)に示すように、空洞部B1内に未硬化の封止樹脂83が形成されると同時に、封止樹脂83が配線基板20に接着される。この封止樹脂83は、チップ実装領域Aからマスキングテープ30の突出部30Aの上面まで延びて形成される。すなわち、封止樹脂83は、基板本体21の上面と、配線パターン22の上面及び側面と、突出部24A,30Aの側面及び上面とを被覆するように形成される。このとき、封止樹脂83の周縁部、つまりソルダレジスト層24及びマスキングテープ30の上には、それ以外の部分よりも上方に盛り上がった盛り上がり部84が形成されている。
【0052】
次に、
図10(c)に示す工程では、封止樹脂83から支持フィルム82を室温(例えば、20〜30℃程度)で引き剥がす。これにより、支持フィルム82側に封止樹脂83が貼り付くことなく、支持フィルム82を封止樹脂83から剥離することができる。その後、振込治具70を配線基板20から取り外してマスキングテープ30の上面を露出させる。
【0053】
続いて、
図11(a)に示す工程では、
図10(c)に示した構造体を100〜120℃程度に加温した状態で、マスキングテープ30を配線基板20から引き剥がす。マスキングテープ30は、格子状に繋がっているため、配線基板20の全体にわたってマスキングテープ30が連続して剥離される。このとき、マスキングテープ30の上(具体的には、突出部30A)に配置された封止樹脂83(具体的には、盛り上がり部84の一部)が引き裂かれて除去される。また、封止樹脂83は、流動化することで配線基板20に接着しているため、マスキングテープ30を引き剥がす際に剥離することなく配線基板20上に残される。このとき、盛り上がり部84のうち突出部24A上に配置された部分が残るため、その残った盛り上がり部84Aによって各封止樹脂83の周縁部が盛り上がった形状となる。
【0054】
次に、
図11(b)に示す工程では、先の
図5に示した工程と同様の製造方法により、封止樹脂83の周縁部の厚さが、該周縁部よりも内側における封止樹脂83の厚さと同じ厚さに、又は上記周縁部よりも内側における封止樹脂83よりも薄くなるように、未硬化の封止樹脂83を加工する。例えば、封止樹脂83をプレス成型することにより、盛り上がり部84Aを除去するとともに、周縁部から中央部に向かうに連れて上方に盛り上がった凸構造の封止樹脂83を形成する。以上の製造工程により、先の
図5に示した構造体と同様の構造体を得ることができる。
【0055】
続いて、
図11(c)に示す工程では、先の
図6及び
図7に示した工程と同様の製造方法により、半導体チップ50の接続バンプ51を封止樹脂83に押し込み、接続バンプ51を配線基板20の接続パッドP1にフリップチップ接合し、封止樹脂83を硬化させる。その後、
図11(c)に示した構造体を切断線C1に沿って切断することにより、本実施形態の半導体装置を得る。
【0056】
以上説明した本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏する。
(他の実施形態)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
【0057】
・上記各実施形態において、マスキングテープ30のチップ実装領域Aに対応する部分には、半導体チップ50の平面形状と同様の形状(ここでは、矩形状)の開口部30Xを形成するようにした。しかし、マスキングテープ30の開口部の平面形状はこれに限定されない。
【0058】
例えば
図12(a)に示すように、マスキングテープ30に、全体的には平面視略矩形状であって、且つ上記矩形の四隅のコーナー部Cにおいて局所的に広く開口される開口部30Yを形成するようにしてもよい。すなわち、局所的に広く開口されたコーナー部Cは、上記矩形の辺よりも外側に飛び出るように形成されている。
図12(a)に示した例では、コーナー部Cは、例えば平面視略矩形状に形成されている。このように開口部30Xを開口部30Yに変更した場合の半導体装置60の製造方法を以下に簡単に説明する。
【0059】
まず、
図12(a)及び
図12(b)に示すように、上記開口部30Yを有するマスキングテープ30をソルダレジスト層24上に貼付する。すると、ソルダレジスト層24の一部がコーナー部Cから露出した状態となる。
【0060】
続いて、先の
図3〜
図5(または、
図9〜
図11(b))に示した工程と同様の製造方法により、
図13(a)及び
図13(b)に示した構造体を得る。すなわち、
図13(b)に示すように、基板本体21上に、その基板本体21の上面、配線パターン22及びソルダレジスト層24の上面の一部を被覆する、未硬化の封止樹脂43を形成する。このときの封止樹脂43の平面形状は、上記マスキングテープ30の開口部30Yの平面形状によって設定される。具体的には、封止樹脂43の平面形状は、開口部30Yの平面形状と略同様の形状となる。このため、
図13(a)に示すように、封止樹脂43は、全体的には平面視略矩形状に形成され、且つ、上記矩形の四隅のコーナー部43Cにおいて局所的に形成領域が広がるように形成されている。本例のコーナー部43Cの平面形状は略矩形状に形成されている。
【0061】
次いで、
図14(a)及び
図14(b)に示す工程では、先の
図6及び
図7に示した工程と同様の製造方法により、半導体チップ50を封止樹脂43に押し込み、その半導体チップ50の接続バンプ51を配線基板20の接続パッドP1にフリップチップ接合し、封止樹脂43を硬化させる。本工程において、半導体チップ50を封止樹脂43に押し込む際には、未硬化の封止樹脂43が半導体チップ50の下面によって押圧されて平面方向に広がる。そして、平面方向に広がった封止樹脂43の一部が半導体チップ50の側面に延在され、封止樹脂43の周縁部にフィレット43Fが形成される。
図14(b)に示すように、本例の半導体チップ50は、その下面及び側面が封止樹脂43に被覆されるように封止樹脂43内に埋め込まれている。また、本例のフィレット43Fは、半導体チップ50の側面全面を被覆するように形成され、さらに上面が半導体チップ50の上面と略面一に形成されている。このようなフィレット43Fは、
図14(a)に示すように、半導体チップ50の四隅の側面を含む外周全周を被覆するように形成されている。
【0062】
ここで、未硬化の封止樹脂に半導体チップを押し込んで、その半導体チップの側面に延在するフィレットを形成する場合には、半導体チップの四隅では樹脂量が不足する傾向にあるため、半導体チップの四隅の側面には樹脂が回り込み難い。このため、半導体チップの四隅に十分なフィレットを形成できない場合がある。これに対し、本例では、半導体チップ50の四隅に対応する部分に、封止樹脂43の形成領域が局所的に広がるように(樹脂量が局所的に増加するように)コーナー部43Cが形成されている。このため、コーナー部43Cによる樹脂量の増加によって、半導体チップ50の四隅の側面にも樹脂を十分に回り込ませることができるようになる。これにより、半導体チップ50の四隅にもフィレット43Fを好適に形成することができる。
【0063】
また、封止樹脂43の樹脂量を全体的に増加させた場合には、半導体チップ50の各辺の中央部に形成されるフィレット43Fが他の部分よりも外側に突出するという問題がある。これに対し、本例では、封止樹脂43の四隅にのみ形成領域を広げるコーナー部43Cを設けるようにしたため、半導体チップ50の各辺の中央部においてフィレット43Fが外側に突出することを好適に抑制することができ、フィレット43Fを含む封止樹脂43の平面形状を矩形状に近づけることができる。すなわち、半導体チップ50実装前の封止樹脂43の平面形状を調整することにより、半導体チップ50実装後の封止樹脂43の広がり形状を調整することができる。換言すると、半導体チップ50実装前の封止樹脂43の平面形状を設定するマスキングテープ30の開口部30Yの形状を調整することにより、半導体チップ50実装後の封止樹脂43の広がり形状を調整することができる。
【0064】
・
図12〜
図14に示した変形例において、半導体チップ50実装前の封止樹脂43の平面形状は、封止樹脂43の四隅において局所的に樹脂量を増加させることのできる形状であれば特に限定されない。
【0065】
例えば、
図15に示すように、封止樹脂43のコーナー部43Cの平面形状を略円形状に変更してもよい。また、封止樹脂43のコーナー部43Cの平面形状を、例えば三角形や五角形などの多角形状に変更してもよい。
【0066】
また、
図16に示すように、平面視矩形状の封止樹脂43の各辺を窪ませた形状としてもよい。
・上記各実施形態では、配線基板20上に未硬化の封止樹脂43,83を形成する前に、基板本体21の上面を粗面化するようにしたが、この粗面化処理を省略してもよい。
【0067】
・上記各実施形態では、封止樹脂43,83の周縁部に形成された盛り上がり部44A,84Aがなくなるように封止樹脂43,83を加工した後に、半導体チップ50をフリップチップ実装するようにした。これに限らず、盛り上がり部44A,84Aを除去するために封止樹脂43,83を加工する工程を省略してもよい。
【0068】
・上記各実施形態では、プレス成型により封止樹脂43,83を加工することにより、その封止樹脂43,83の周縁部の盛り上がり部44A,84Aを解消するようにした。これに限らず、例えばエッチング加工により封止樹脂43,83の周縁部の少なくとも一部を除去することにより、封止樹脂43,83の周縁部の盛り上がり部44A,84Aを解消するようにしてもよい。
【0069】
・上記第2実施形態では、マスキングテープ30の開口部30Xに振込治具70を利用して封止用樹脂材80を配置しているが、マスキングテープ30の代わりにマスク治具を粘着剤などで配線基板20に仮接着するようにしてもよい。例えば、マスク治具はその外面にテフロン(登録商標)などの離型剤がコーティングされており、配線基板20から容易に剥離することができる。マスク治具を使用する場合には、マスク治具が振込治具70の機能を兼ねることができるため、振込治具70を省略することができる。
【0070】
・上記各実施形態では、マスク材としてマスキングテープ30を挙げた。これに限らず、マスキングテープ30の代わりに、ソルダレジスト層24(配線基板20)に容易に仮接着でき、且つ容易に剥離できる各種のマスク材を用いることができる。
【0071】
・上記各実施形態では、多数個取りの製造方法に具体化したが、単数個取り(一個取り)の製造方法に具体化してもよい。すなわち、多数個取り用の配線基板20の代わりに、1個の半導体装置60となるサイズの配線基板を用いて、半導体装置60の製造を行うようにしてもよい。