特許第6196897号(P6196897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6196897ネガ型レジスト組成物、レジストパターン形成方法及び錯体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6196897
(24)【登録日】2017年8月25日
(45)【発行日】2017年9月13日
(54)【発明の名称】ネガ型レジスト組成物、レジストパターン形成方法及び錯体
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20170904BHJP
   C08F 4/16 20060101ALI20170904BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20170904BHJP
【FI】
   G03F7/027 502
   C08F4/16
   C08F20/00 510
【請求項の数】3
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-252469(P2013-252469)
(22)【出願日】2013年12月5日
(65)【公開番号】特開2015-108781(P2015-108781A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】山下 直紀
(72)【発明者】
【氏名】小室 嘉崇
(72)【発明者】
【氏名】内海 義之
(72)【発明者】
【氏名】塩野 大寿
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−530652(JP,A)
【文献】 特開2012−185484(JP,A)
【文献】 特開2007−045736(JP,A)
【文献】 特表平07−507082(JP,A)
【文献】 国際公開第93/023794(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004−7/06;7/075−7/115;
7/16−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される錯体と、
重合開始剤と、
を含有することを特徴とするネガ型レジスト組成物。
【化1】
[式中、Mはハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)である。Xは酸解離定数(pKa)が3.8以下の酸の共役塩基からなり、重合性基を有する配位子である。Yは重合性基を有しない配位子である。nは1〜4の整数である。]
【請求項2】
支持体上に、請求項1記載のネガ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び、前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を含むレジストパターン形成方法。
【請求項3】
下記一般式(1)で表される錯体。
【化2】
[式中、Mはハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)である。Xは酸解離定数(pKa)が3.8以下の酸の共役塩基からなり、重合性基を有する配位子である。Yは重合性基を有しない配位子である。nは1〜4の整数である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型レジスト組成物、レジストパターン形成方法及び錯体に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィー技術においては、例えば基板の上にレジスト材料からなるレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対し、所定のパターンが形成されたマスクを介して、光、電子線等の放射線にて選択的露光を行い、現像処理を施すことにより、前記レジスト膜に所定形状のレジストパターンを形成する工程が行われる。
露光した部分が現像液に溶解する特性に変化するレジスト材料をポジ型、露光した部分が現像液に溶解しない特性に変化するレジスト材料をネガ型という。
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速にパターンの微細化が進んでいる。
微細化の手法としては、一般に、露光光源の短波長化(高エネルギー化)が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザーやArFエキシマレーザーを用いた半導体素子の量産が開始されている。また、これらエキシマレーザーより短波長(高エネルギー)の電子線、EUV(極紫外線)、X線などについても検討が行われている。
【0003】
レジスト材料には、これらの露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性等のリソグラフィー特性が求められる。
このような要求を満たすレジスト材料としては、従来、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分と、露光により酸を発生する酸発生剤成分と、を含有する化学増幅型レジスト組成物が用いられている。
たとえば、上記現像液がアルカリ現像液(アルカリ現像プロセス)の場合、ポジ型の化学増幅型レジスト組成物としては、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂成分(ベース樹脂)と酸発生剤成分とを含有するものが一般的に用いられている。かかるレジスト組成物を用いて形成されるレジスト膜は、レジストパターン形成時に選択的露光を行うと、露光部において、酸発生剤成分から酸が発生し、該酸の作用によりベース樹脂の極性が増大して、露光部がアルカリ現像液に対して可溶となる。このため、アルカリ現像することにより、未露光部がパターンとして残るポジ型パターンが形成される。一方で、有機溶剤を含む現像液(有機系現像液)を用いた溶剤現像プロセスを適用した場合、ベース樹脂の極性が増大すると相対的に有機系現像液に対する溶解性が低下するため、レジスト膜の未露光部が有機系現像液により溶解、除去されて、露光部がパターンとして残るネガ型のレジストパターンが形成される。このようにネガ型のレジストパターンを形成する溶剤現像プロセスをネガ型現像プロセスということがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
現在、ArFエキシマレーザーリソグラフィー等において使用されるレジスト組成物のベース樹脂としては、193nm付近における透明性に優れることから、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を主鎖に有する樹脂(アクリル系樹脂)などが一般的に用いられている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
ところで、電子線またはEUVによるリソグラフィーは、反応メカニズムが通常の光リソグラフィーと異なる。また、電子線またはEUVによるリソグラフィーにおいては、数十nmの微細なパターン形成を目標としている。
このようにレジストパターン寸法が小さくなるほど、露光光源に対して高感度であるレジスト組成物が求められる。また、パターンの微細化が進むにつれて、形成されるレジスト膜も薄膜化している。たとえば電子線やEUV用途の場合、60nm以下の膜厚が検討されている。その際、レジスト膜に対して露光及び現像を行うことによるレジスト膜の膜減りを抑制すること、が重要となる。たとえばポジ型レジスト組成物の場合、レジスト膜未露光部が現像時に除去されずに残るが、膜減りによって、レジストパターンの上面に凹凸が生じ、解像性やパターン形状が悪化するおそれがある。加えて、レジストパターンの高さを充分に確保できず、半導体素子の形成の際のエッチングマスクとして機能しないおそれがあった。
これらの問題を改善するため、嵩高い構造のナフタレン環を有し、かつ、比較的解離しやすい構造の酸解離性溶解抑制基を含む構成単位、を主鎖に有するアクリル系樹脂をベース樹脂としたレジスト組成物が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−025723号公報
【特許文献2】特開2003−241385号公報
【特許文献3】特開2011−123463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特にEUVによるリソグラフィーでは、スループットの点で、レジスト組成物の高感度化を図る必要がある。
従来、レジスト組成物の基材成分には、有機化合物であるアクリル系樹脂等が一般的に用いられている。ところが、汎用のアクリル系樹脂等は、EUV光の吸収が低い。
これに対し、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)等の金属が炭素原子よりもEUV光に対して高吸収を示すことが知られている。しかしながら、この金属を含む錯体(金属錯体)を基材成分として含有するレジスト組成物では、経時安定性が悪く、レジストパターンを安定に得ることが難しい。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、EUV光に対して高吸収を示す金属を含有し、経時安定性の良好なレジスト組成物、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)を含む金属錯体は、錯体の中心の金属に配位するリガンドによって、その構造の安定性が大きく異なる。本発明者らは、検討により、特定の酸解離定数(pKa)をもつ酸の共役塩基をリガンドとして選択することで、金属錯体の構造の安定化が図れ、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第一の態様のネガ型レジスト組成物は、下記一般式(1)で表される錯体と、重合開始剤と、を含有することを特徴とする。
【0009】
【化1】
[式中、Mはハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)である。Xは酸解離定数(pKa)が3.8以下の酸の共役塩基からなり、重合性基を有する配位子である。Yは重合性基を有しない配位子である。nは1〜4の整数である。]
【0010】
本発明の第二の態様のレジストパターン形成方法は、支持体上に、上記本発明の第一の態様のネガ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び、前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の第三の態様の錯体は、下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする。
【0012】
【化2】
[式中、Mはハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)である。Xは酸解離定数(pKa)が3.8以下の酸の共役塩基からなり、重合性基を有する配位子である。Yは重合性基を有しない配位子である。nは1〜4の整数である。]
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、EUV光に対して高吸収を示す金属を含有し、経時安定性の良好なレジスト組成物;該レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法、該レジスト組成物に有用な錯体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】錯体(Hf−4)を含有する比較例4のネガ型レジスト組成物についての、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)により測定される赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」又は「フッ素化アルキレン基」は、アルキル基又はアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有していてもよい」と記載する場合、水素原子(−H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(−CH−)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【0016】
「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、アクリル酸(CH=CH−COOH)のカルボキシ基末端の水素原子が有機基で置換された化合物である。
アクリル酸エステルは、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該α位の炭素原子に結合した水素原子を置換する置換基(Rα0)は、水素原子以外の原子又は基であり、たとえば炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。また、置換基(Rα0)がエステル結合を含む置換基で置換されたイタコン酸ジエステルや、置換基(Rα0)がヒドロキシアルキル基やその水酸基を修飾した基で置換されたαヒドロキシアクリルエステルも含むものとする。なお、アクリル酸エステルのα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、アクリル酸のカルボニル基が結合している炭素原子のことである。
以下、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸エステルをα置換アクリル酸エステルということがある。また、アクリル酸エステルとα置換アクリル酸エステルとを包括して「(α置換)アクリル酸エステル」ということがある。
【0017】
「スチレン」とは、スチレンおよびスチレンのα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたものも含む概念とする。
「スチレンから誘導される構成単位」、「スチレン誘導体から誘導される構成単位」とは、スチレン又はスチレン誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
【0018】
上記α位の置換基としてのアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、炭素数1〜5のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基)等が挙げられる。
また、α位の置換基としてのハロゲン化アルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部または全部を、ハロゲン原子で置換した基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
また、α位の置換基としてのヒドロキシアルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部または全部を、水酸基で置換した基が挙げられる。該ヒドロキシアルキル基における水酸基の数は、1〜5が好ましく、1が最も好ましい。
【0019】
「(メタ)アクリル酸エステル」とは、α位に水素原子が結合したアクリル酸エステルと、α位にメチル基が結合したメタクリル酸エステルの一方あるいは両方を意味する。
「(メタ)アクリレート」とは、α位に水素原子が結合したアクリレートと、α位にメチル基が結合したメタクリレートの一方あるいは両方を意味する。
「(メタ)アクリル酸」とは、α位に水素原子が結合したアクリル酸と、α位にメチル基が結合したメタクリル酸の一方あるいは両方を意味する。
【0020】
≪ネガ型レジスト組成物≫
本発明の第一の態様であるネガ型レジスト組成物は、一般式(1)で表される錯体と、重合開始剤と、必要に応じて他の成分と、を含有する。
かかるネガ型レジスト組成物は、現像液に対して可溶であり、このネガ型レジスト組成物を用いて、該錯体と重合開始剤とを含むレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的露光を行うと、該レジスト膜の露光部では該錯体同士の重合が進行し、該露光部の現像液に対する溶解性が変化する一方で、該レジスト膜の未露光部では現像液に対する溶解性が変化しないため、露光部と未露光部との間で現像液に対する溶解性の差が生じる。そのため、該レジスト膜を現像すると、未露光部が溶解除去され、露光部が残膜することでネガ型のレジストパターンが形成される。
本発明においては、レジスト膜の未露光部が溶解除去されてネガ型レジストパターンを形成するレジスト組成物をネガ型レジスト組成物という。
【0021】
<錯体>
本態様のネガ型レジスト組成物では、下記一般式(1)で表される錯体が用いられる。
該錯体は、レジスト膜形成能を有するものであり、重合開始剤の存在下で重合する性質を有する。
【0022】
【化3】
[式中、Mはハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)である。Xは酸解離定数(pKa)が3.8以下の酸の共役塩基からなり、重合性基を有する配位子である。Yは重合性基を有しない配位子である。nは1〜4の整数である。]
【0023】
前記式(1)中、Mは、ハフニウム(Hf)、又は、ジルコニウム(Zr)である。
前記式(1)中、Xは、酸解離定数(pKa)が3.8以下の酸の共役塩基からなり、重合性基を有する配位子である。
「配位子」とは、リガンドとも称し、錯体の中心原子(Hf、Zr)に配位結合している原子あるいは原子団をいう。
「重合性基」とは、重合性基を有する化合物がラジカル重合等により重合することを可能とする基であり、例えばエチレン性二重結合などの炭素原子間の多重結合を含む基をいう。
重合性基としては、例えば、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アクリロイルアリール基、メタクリロイルアリール基、ノルボルニル基等が挙げられる。
【0024】
「酸解離定数(pKa)」とは、対象物質の酸強度を示す指標として一般的に用いられているものをいう。pKa値は、常法により測定して求めることもできる。また、「ACD/Labs」(商品名、Advanced Chemistry Development社製)等の公知のソフトウェアを用いたシミュレーションから算出することもできる。さらに、pKa値には、文献値を用いてもよい。
Xの共役塩基に対応する酸のpKaは、3.8以下であり、好ましくは3.5以下であり、より好ましくは3.0以下であり、さらに好ましくは2.8以下であり、下限は特に限定されないが、例えば−10以上である。該酸のpKaを前記の範囲とすることで、金属錯体の構造の安定化が図れ、レジスト組成物の経時安定性が高まる。
【0025】
前記式(1)中のXとしては、例えば、下記の一般式(2)又は一般式(3)で表される共役塩基からなる配位子が挙げられる。
【0026】
【化4】
[式(2)中、Rは、下記の式(X−01)〜(X−07)でそれぞれ表される基からなる群より選択される基を含む重合性基である。Yは、2価の連結基又は単結合である。式(3)中、Rは、下記の式(X−01)〜(X−07)でそれぞれ表される基からなる群より選択される基を含む重合性基である。Yは、2価の連結基又は単結合である。]
【0027】
【化5】
[式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のフッ素化アルキル基である。Arは芳香族炭化水素基である。nは0〜2の整数である。*は結合手である。]
【0028】
前記式(2)中、Rは、上記の式(X−01)〜(X−07)でそれぞれ表される基からなる群より選択される基を含む重合性基である。
上記の式(X−01)〜(X−04)中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のフッ素化アルキル基である。Rにおける「炭素数1〜5のアルキル基」は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。炭素数1〜5のフッ素化アルキル基は、前記「炭素数1〜5のアルキル基」の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基である。
【0029】
上記の式(X−04)中、Arにおける芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する2価の炭化水素基である。この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素数は5〜30であることが好ましく、5〜20がより好ましく、6〜15がさらに好ましく、6〜12が特に好ましい。芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。Arにおける芳香族炭化水素基として具体的には、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子2つを除いた基(アリーレン基またはヘテロアリーレン基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から水素原子2つを除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基におけるアリール基から水素原子をさらに1つ除いた基)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
上記の式(X−07)中、nは0〜2の整数である。
【0030】
前記式(2)中、Yは、2価の連結基又は単結合である。
における2価の連結基としては、たとえば、アルキレン基、アリーレン基;エーテル結合を有するアルキレン基、チオエーテル結合を有するアルキレン基、エステル結合を有するアルキレン基、フッ素化アルキレン基などが挙げられる。
におけるアルキレン基は、炭素数1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜5がさらに好ましく、具体的には、メチレン基[−CH−]、エチレン基[−(CH−]、トリメチレン基[−(CH−]等が挙げられる。
におけるアリーレン基は、上記式(X−04)中のArについての説明の中で例示した芳香族炭化水素環から水素原子2つを除いた基と同様である。
におけるエーテル結合を有するアルキレン基、チオエーテル結合を有するアルキレン基、又はエステル結合を有するアルキレン基についてのアルキレン基は、炭素数1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。
におけるフッ素化アルキレン基についてのアルキレン基は、炭素数1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。該フッ素化アルキレン基は、アルキレン基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい。
上記のなかでも、Yとしては、メチレン基[−CH−]、エチレン基[−(CH−]、トリメチレン基[−(CH−]が特に好ましい。
【0031】
以下に、一般式(2)で表される共役塩基からなる配位子の好適な具体例を示す。
3−(メタクリロイルオキシ)−1−プロパンスルホン酸(pKa1.53)の共役塩基、3−(アクリロイルオキシ)−1−プロパンスルホン酸(pKa1.53)の共役塩基、ビニルスルホン酸(pKa−1.32)の共役塩基、スチレンスルホン酸(pKa−2.8)の共役塩基。
【0032】
前記式(3)中、Rは、上記の式(X−01)〜(X−07)でそれぞれ表される基からなる群より選択される基を含む重合性基であり、前記式(2)中のRと同様である。
前記式(3)中、Yは、2価の連結基又は単結合である。
における2価の連結基としては、たとえば、メチレン基[−CH−]、アリーレン基;エーテル結合を有するアルキレン基、チオエーテル結合を有するアルキレン基、エステル結合を有するアルキレン基、フッ素化アルキレン基などが挙げられる。
におけるアリーレン基は、上記式(X−04)中のArについての説明の中で例示した芳香族炭化水素環から水素原子2つを除いた基と同様である。
におけるエーテル結合を有するアルキレン基、チオエーテル結合を有するアルキレン基、又はエステル結合を有するアルキレン基についてのアルキレン基は、炭素数1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。
におけるフッ素化アルキレン基についてのアルキレン基は、炭素数1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。該フッ素化アルキレン基は、アルキレン基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい。
上記のなかでも、Yとしては、メチレン基[−CH−]が特に好ましい。
【0033】
以下に、一般式(3)で表される共役塩基からなる配位子の好適な具体例を示す。
メタクリル酸カルボキシメチル(pKa2.53)の共役塩基、アクリル酸カルボキシメチル(pKa2.53)の共役塩基。
【0034】
なお、以下に例示するような、酸解離定数(pKa)が3.8を超えるカルボン酸の共役塩基は、一般式(1)で表される錯体を構成する配位子には適さず、X(配位子)には含まれない。
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸(pKa4.63)の共役塩基、2−(アクリルオキシ)−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−9−カルボン酸(pKa4.9)の共役塩基、5−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イルチオ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボン酸(pKa4.83)の共役塩基、7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−1−カルボン酸(pKa4.85)の共役塩基、7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン−3−カルボン酸(pKa4.82)の共役塩基、3−オキサトリシクロ[3.2.1.02,4]オクタン−6−カルボン酸(pKa4.82)の共役塩基、3,8−ジオキサトリシクロ[5.1.0.0.2,4]オクタン−5−カルボン酸(pKa4.82)の共役塩基。
【0035】
前記式(1)中のXは、1種でもよく、2種以上を含んでいてもよい。
なかでも、前記Xは、レジスト組成物の経時安定性がより高まることから、上記の一般式(2)で表される共役塩基からなる配位子、及び一般式(3)で表される共役塩基からなる配位子より選択される1以上の配位子であることが好ましい。
そのなかでも、前記Xは、アクリル酸カルボキシメチル、メタクリル酸カルボキシメチル、3−(アクリロイルオキシ)−1−プロパンスルホン酸及び3−(メタクリロイルオキシ)−1−プロパンスルホン酸からなる群より選ばれる1以上の酸、の共役塩基からなる配位子であることが特に好ましい。
【0036】
前記式(1)中、Yは、重合性基を有しない配位子である。
Yとしては、例えば、酸素原子、イオウ原子、窒素原子、塩素原子、メチル基、エチル基、エチレン基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エチルヘキソキシ基、シクロヘキサノレート、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オレート、フェノキシ基、ナフトキシ基、メタンチオレート、エタンチオレート、プロパンチオレート、ブタンチオレート、イソプロパンチオレート、2−エチルヘキサンチオレート、シクロヘキサンチオレート、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンチオレート、ベンゼンチオレート、ナフタレンチオレート、アセテート、プロパノエート、ブタノエート、2−メチルプロパノエート、2−エチルヘキサノエート、2−ブロモ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−9−カルボキシレート、6−(2−ネフチルチオ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−カルボキシレート、エタンチオエート、プロパンチオエート、ブタンチオエート、2−メチルプロパンチオエート、2−エチルへキサンチオエート、メタンスルホネート、エタンスルホネート、プロパンスルホネート、ブタンスルホネート、シクロヘキサンスルホネート、[(1S,4R)−7,7−ジメチル−2−オキソビシクロ[2.2.1]ヘプト−1−イル]メタンスルホネート、4−メチルベンゼンスルホネート、オキサレート、アセトアセトネート、1,3−ジフェニルプロパン−1,3−ジオン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、2,2−ジメチル−4,6ジオキソ−1,3−ジオキサン−5−イド、ジシアノメタニド、シクロペンタ−2,4−ジエニド、フェニルエチニド、ニトロメタン、ニトロエチレン、硝酸メチル、フェニルアジド、メチルイソシアネート、アリルイシソシアネート、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリフェニルアルシン、トリフェニルホスフィン、t−ブチルホスフィン、トリメチルホスフィン等に由来する配位子が挙げられる。
前記式(1)中のYは、1種でもよく、2種以上を含んでいてもよい。
かかるYは、錯体の安定性や、溶剤溶解性、現像液溶解性、塗膜性等を考慮して適宜選択すればよい。なお、錯体の安定性の点では、pKa3.8以下の酸の共役塩基となるものを用いることが好ましい。
【0037】
前記式(1)中、nは、1〜4の整数であり、好ましくは2〜4であり、特に好ましくは4である。
【0038】
以下に、一般式(1)で表される錯体の好適な具体例を示す。
【0039】
【化6】
【0040】
本態様のネガ型レジスト組成物において、一般式(1)で表される錯体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本態様のネガ型レジスト組成物中、一般式(1)で表される錯体の含有量は、形成しようとするレジスト膜厚等に応じて調整すればよく、例えばネガ型レジスト組成物の固形分中、50〜99.5質量%であることが好ましく、70〜99質量%であることがより好ましく、80〜97質量%であることがさらに好ましい。また、ネガ型レジスト組成物中、一般式(1)で表される錯体の含有量は、例えば、錯体と重合開始剤と他の成分(任意成分)との総量に対して、50〜99.5質量%であることが好ましく、70〜99質量%であることがより好ましく、80〜97質量%であることがさらに好ましい。
【0041】
<重合開始剤>
本態様のネガ型レジスト組成物における重合開始剤は、露光により上記錯体の重合反応を開始させるものであればよく、従来公知の光重合開始剤などを用いることができる。
該重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;ジアセチルなどのα−ジケトン類;ベンゾインなどのアシロイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのアシロインエーテル類;チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸;チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン;ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;アセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、α,α’−ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン類;アントラキノン、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1,4−ナフトキノンなどのキノン類;フェナシルクロライド、トリブロモメチルフェニルスルホン、p−メトキシトリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンなどのハロゲン化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド; ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシドなどの過酸化物;1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、エタノン;4−ベンゾイル−4'−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−イソアミル、o−ベンゾイル安息香酸メチル;ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾル−3−イル]、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−(o−アセチルオキシム)、ジベンゾスベロン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート;2−メルカプトベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;アゾビスイソブチロニトリル、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパン等が挙げられる。
【0042】
本態様のネガ型レジスト組成物において、重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のなかでも、重合開始剤としては、錯体の重合が進行しやすいことから、アセトフェノン類を用いることが好ましい。
本態様のネガ型レジスト組成物中、重合開始剤の含有量は、上記の錯体100質量部に対して0.5〜50質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましく、1〜15質量部が特に好ましい。重合開始剤の含有量を前記の範囲とすることにより、塗膜形成能を向上させ、硬化不良を抑制することができる。
【0043】
<任意成分>
本態様のネガ型レジスト組成物には、一般式(1)で表される錯体及び重合開始剤に加えて、必要に応じて他の成分を含有してもよい。
かかる他の成分としては、例えば、錯体と共重合し得るモノマー、界面活性剤、増感剤、硬化促進剤、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤、熱重合禁止剤、消泡剤等が挙げられる。
錯体と共重合し得るモノマーとしては、従来公知の単官能モノマー、多官能モノマー等の重合性モノマーが挙げられ、なかでも、(メタ)アクリレート系の重合性モノマーを用いることが特に好ましい。該モノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。錯体と共重合し得るモノマーを用いる場合、ネガ型レジスト組成物中、共重合し得るモノマーの含有量は、得られるレジストパターンの無機性を考慮して適宜設定すればよく、例えば、上記の錯体100質量部に対して10〜150質量部が好ましい。
【0044】
本態様のネガ型レジスト組成物は、一般式(1)で表される錯体と、重合開始剤と、必要に応じて他の成分と、を有機溶剤成分に溶解させて製造することができる。
この有機溶剤成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジスト組成物の溶剤として公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
かかる有機溶剤成分としては、たとえば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。
本態様のネガ型レジスト組成物において、有機溶剤成分は、単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
なかでも、有機溶剤成分としては、PGME、ELが好ましい。
有機溶剤成分の使用量は、特に限定されず、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%の範囲内となるように有機溶剤成分は用いられる。
【0045】
≪レジストパターン形成方法≫
本発明の第二の態様であるレジストパターン形成方法は、支持体上に、上記本発明の第一の態様のネガ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び、前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程を含む。
本態様のレジストパターン形成方法は、例えば以下のようにして行うことができる。
まず、支持体上に、上述したネガ型レジスト組成物をスピンナーなどで塗布し、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、たとえば80〜150℃の温度条件にて40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施すことにより、錯体と重合開始剤とを含むレジスト膜を形成する。該レジスト膜の膜厚は、好ましくは10〜300nm程度、より好ましくは20〜200nm程度である。
次に、該レジスト膜に対し、例えばEUV露光装置等の露光装置を用いて、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介した露光、またはマスクパターンを介さない大面積露光等による選択的露光を行う。
その後、ベーク(ポストエクスポージャーベーク(PEB))処理を、たとえば80〜150℃の温度条件にて40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施す。
次に、前記露光及びベーク(PEB)後のレジスト膜を現像処理する。
現像処理は、前記レジスト膜の未露光部が可溶性を示し、露光部が難溶性を示す現像液を用いて行う。
現像処理後、好ましくはリンス処理を行う。
現像処理後又はリンス処理後、乾燥を行う。また、場合によっては、現像処理の後にベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。
このようにして、レジストパターンを得ることができる。
【0046】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
また、支持体としては、上述のような基板上に、無機系及び/又は有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)や多層レジスト法における下層有機膜等の有機膜が挙げられる。
ここで、多層レジスト法とは、基板上に、少なくとも一層の有機膜(下層有機膜)と、少なくとも一層のレジスト膜(上層レジスト膜)とを設け、上層レジスト膜に形成したレジストパターンをマスクとして下層有機膜のパターニングを行う方法であり、高アスペクト比のパターンを形成できるとされている。すなわち、多層レジスト法によれば、下層有機膜により所要の厚みを確保できるため、レジスト膜を薄膜化でき、高アスペクト比の微細なパターン形成が可能となる。
多層レジスト法には、基本的に、上層レジスト膜と下層有機膜との二層構造とする方法(2層レジスト法)と、上層レジスト膜と下層有機膜との間に一層以上の中間層(金属薄膜等)を設けた三層以上の多層構造とする方法(3層レジスト法)と、に分けられる。
【0047】
露光に用いる波長は、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。なかでも、炭素原子よりもEUV光に対して高吸収を示すハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)を含む金属錯体を基材成分として含有するネガ型レジスト組成物を用いていることから、EBまたはEUV用として有用であり、EUV用として特に有用である。
【0048】
レジスト膜の露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)であってもよい。
液浸露光は、予めレジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で露光(浸漬露光)を行う露光方法である。
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ、露光されるレジスト膜の有する屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましい。かかる溶媒の屈折率としては、前記範囲内であれば特に制限されない。
空気の屈折率よりも大きく、かつ、前記レジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒としては、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
フッ素系不活性液体の具体例としては、CHCl、COCH、COC、C等のフッ素系化合物を主成分とする液体等が挙げられ、沸点が70〜180℃のものが好ましく、80〜160℃のものがより好ましい。フッ素系不活性液体が上記範囲の沸点を有するものであると、露光終了後に、液浸に用いた媒体の除去を、簡便な方法で行えることから好ましい。
フッ素系不活性液体としては、特に、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル化合物が好ましい。パーフルオロアルキル化合物としては、具体的には、パーフルオロアルキルエーテル化合物やパーフルオロアルキルアミン化合物を挙げることができる。
さらに、具体的には、前記パーフルオロアルキルエーテル化合物としては、パーフルオロ(2−ブチル−テトラヒドロフラン)(沸点102℃)を挙げることができ、前記パーフルオロアルキルアミン化合物としては、パーフルオロトリブチルアミン(沸点174℃)を挙げることができる。
液浸媒体としては、コスト、安全性、環境問題、汎用性等の観点から、水が好ましく用いられる。
【0049】
現像液としては、露光前のレジスト膜を溶解し得るものであればよく、好ましくは、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)が用いられる。この有機系現像液が含有する有機溶剤は、公知の有機溶剤の中から適宜選択できる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、ニトリル系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
ケトン系溶剤は、構造中にC−C(=O)−Cを含む有機溶剤である。エステル系溶剤は、構造中にC−C(=O)−O−Cを含む有機溶剤である。アルコール系溶剤は、構造中にアルコール性水酸基を含む有機溶剤であり、「アルコール性水酸基」は、脂肪族炭化水素基の炭素原子に結合した水酸基を意味する。アルコール系溶剤は、炭素数4以上の脂肪族炭化水素基の炭素原子に水酸基が結合したものが好ましい。ニトリル系溶剤は、構造中にニトリル基を含む有機溶剤である。アミド系溶剤は、構造中にアミド基を含む有機溶剤である。エーテル系溶剤は、構造中にC−O−Cを含む有機溶剤である。
有機溶剤の中には、構造中に上記各溶剤を特徴づける官能基を複数種含む有機溶剤も存在するが、その場合は、当該有機溶剤が有する官能基を含むいずれの溶剤種にも該当するものとする。たとえば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、上記分類中の、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤のいずれにも該当するものとする。
炭化水素系溶剤は、ハロゲン化されていてもよい炭化水素からなり、ハロゲン原子以外の置換基を有さない炭化水素溶剤である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
上記の中でも、有機溶剤は、極性溶剤が好ましく、エステル系溶剤が特に好ましい。
【0050】
エステル系溶剤としては、たとえば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、乳酸エチルが好ましい。
【0051】
有機系現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としては、たとえば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、たとえばイオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤を配合する場合、その配合量は、有機系現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%であり、0.005〜2質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましい。
【0052】
現像処理は、公知の現像方法により実施することが可能であり、たとえば現像液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、支持体表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している支持体上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0053】
溶剤現像プロセスで現像処理後のリンス処理に用いるリンス液が含有する有機溶剤としては、たとえば前記有機系現像液に用いる有機溶剤として挙げた有機溶剤のうち、レジストパターンを溶解しにくいものを適宜選択して使用できる。通常、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤およびエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を使用する。これらのなかでも、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤およびアミド系溶剤から選択される少なくとも1種類が好ましく、アルコール系溶剤およびエステル系溶剤から選択される少なくとも1種類がより好ましく、エステル系溶剤が特に好ましい。
これらの有機溶剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記以外の有機溶剤や水と混合して用いてもよい。ただし、現像特性を考慮すると、リンス液中の水の配合量は、リンス液の全量に対し、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下さらに好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
リンス液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としては、例えば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、前記と同様のものが挙げられ、非イオン性の界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤を配合する場合、その配合量は、リンス液の全量に対して、通常0.001〜5質量%であり、0.005〜2質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましい。
【0054】
リンス液を用いたリンス処理(洗浄処理)は、公知のリンス方法により実施できる。該方法としては、たとえば一定速度で回転している支持体上にリンス液を塗出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【0055】
上述した本態様のレジストパターン形成方法においては、重合によって、錯体における配位子中の重合性基が開裂して複数の錯体が結合し、錯体が高分子量化することで現像液に不溶となり、レジストパターンが形成される。
また、得られるレジストパターンは、金属(Hf、Zr)が含まれていることから、耐エッチング性にも優れる。
【0056】
≪一般式(1)で表される錯体≫
本発明の第三の態様である錯体は、下記一般式(1)で表される金属錯体であり、上述した本発明に係るネガ型レジスト組成物についての中で説明した一般式(1)で表される錯体と同様である。
【0057】
【化7】
[式中、Mはハフニウム(Hf)又はジルコニウム(Zr)である。Xは酸解離定数(pKa)が3.8以下の酸の共役塩基からなり、重合性基を有する配位子である。Yは重合性基を有しない配位子である。nは1〜4の整数である。]
【0058】
本態様の錯体は、レジスト材料のなかで、レジストパターンを形成する樹脂成分(重合体)の原料(モノマー)として有用な化合物である。ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)が炭素原子よりもEUV光に対して高吸収を示すことから、EUVによるリソグラフィーに用いられるレジスト組成物の、レジスト膜形成能を有する基材成分として特に好適なものである。
【0059】
本態様の錯体は、例えば一般式(1)中のnが4である場合、ハフニウム(Hf)のアルコキシド化合物、又はジルコニウム(Zr)のアルコキシド化合物を、重合性基を有する酸解離定数(pKa)が3.8以下の酸と、溶剤(例えばテトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン等)中で混合し、精製等を行うことにより得ることができる。
また、一般式(1)中のnが1〜3である場合、ハフニウム(Hf)のアルコキシド化合物、又はジルコニウム(Zr)のアルコキシド化合物を、重合性基を有する酸解離定数(pKa)が3.8以下の酸と、重合性基を有しない配位子となり得る化合物と、を溶剤(例えばテトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン等)中で混合し、精製等を行うことにより得ることができる。
前記のアルコキシド化合物と、特定の酸と、nが1〜3である場合には重合性基を有しない配位子となり得る化合物と、を混合する際の温度条件は、使用する溶剤の沸点にもよるが20〜200℃程度に設定すればよく、混合時間は30分間以上10時間以下とするのが好ましい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0061】
<錯体の合成>
(合成例1)
フラスコ内で、ハフニウムブトキシド(1.17g)と、メタクリル酸(1.27g)と、溶剤としてジクロロメタン(20g)と、を室温23℃で60分間撹拌した。得られた溶液を、メチルtert−ブチルエーテル(TBME)で洗浄した後、ろ過し、減圧乾燥5時間を実施することにより錯体(Hf−4)を得た(収量1.26g、収率73.3%)。
なお、後述の図1で示すように、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)により測定される赤外線吸収スペクトルにおいて、メタクリル酸がもつカルボニルのピーク(通常1700cm−1)が1600cm−1付近(図中の縦方向の破線の位置)へシフト(配位化合物に特有のシフト)していることから、ハフニウムにメタクリル酸の共役塩基が配位し、錯体(Hf−4)が形成されていることが確認された。
【0062】
【化8】
【0063】
(合成例2〜4)
メタクリル酸に代えて、3−(メタクリロイルオキシ)−1−プロパンスルホン酸、メタクリル酸カルボキシメチル、メタクリル酸2−カルボキシエチルをそれぞれ用いた他は、合成例1と同様にして錯体(Hf−1)、錯体(Hf−2)、錯体(Hf−3)をそれぞれ得た。
FT−IRにより測定される赤外線吸収スペクトルの解析から、いずれの錯体においても、メタクリロイルにおけるカルボニルのピークのシフト(配位化合物に特有のシフト)が認められたことから、ハフニウムに各酸の共役塩基が配位し、錯体(Hf−1)、錯体(Hf−2)、錯体(Hf−3)がそれぞれ形成されていることが確認された。
【0064】
【化9】
【0065】
(合成例5)
ハフニウムブトキシドに代えて、ジルコニウムブトキシドを等モルで用いた他は、合成例1と同様にして錯体(Zr−4)を得た。
【0066】
【化10】
【0067】
(合成例6〜8)
メタクリル酸に代えて、3−(メタクリロイルオキシ)−1−プロパンスルホン酸、メタクリル酸カルボキシメチル、メタクリル酸2−カルボキシエチルをそれぞれ用いた他は、合成例5と同様にして錯体(Zr−1)、錯体(Zr−2)、錯体(Zr−3)をそれぞれ得た。
【0068】
【化11】
【0069】
<酸解離定数(pKa)>
上記合成例1〜8のなかで用いた下記の酸(3−(メタクリロイルオキシ)−1−プロパンスルホン酸、メタクリル酸カルボキシメチル、メタクリル酸2−カルボキシエチル、メタクリル酸)についてのpKaは、「ACD/Labs v11.02」(商品名、Advanced Chemistry Development社製)を用いて算出した。そのpKa値を以下に示す。
【0070】
【化12】
【0071】
<ネガ型レジスト組成物の調製>
(実施例1〜4、比較例1〜6)
表1〜2に示す各成分を混合して溶解することにより、各例のネガ型レジスト組成物を調製した。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
表1〜2中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(A)−1:上記錯体(Hf−1)。
(A)−2:上記錯体(Hf−2)。
(A)−3:上記錯体(Hf−3)。
(A)−4:上記錯体(Hf−4)。
(A)−5:上記錯体(Zr−1)。
(A)−6:上記錯体(Zr−2)。
(A)−7:上記錯体(Zr−3)。
(A)−8:上記錯体(Zr−4)。
(I)−1:下記化学式(I−1)で表される重合開始剤。
(S)−1:プロピレングリコールモノメチルエーテル。
【0075】
【化13】
【0076】
<評価>
得られたネガ型レジスト組成物を用い、以下に示す残膜性、解像性、経時安定性の各評価を行った。これらの結果を表3、表4〜5に示した。
【0077】
[残膜性の評価]
ヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理(90℃、36秒間)を施した8インチのシリコンウェーハ上に、各例のネガ型レジスト組成物を、スピンナーを用いてそれぞれ塗布し、ホットプレート上で、110℃で60秒間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。
次に、該レジスト膜に対し、ArF露光装置NSR−S302[Nikon社製;NA(開口数)=0.60,Annular]により、フォトマスクを介さず、ArFエキシマレーザー(193nm)を照射した。その際、照射量を2〜100mJ/cmの範囲で2mJ/cmずつ増加させながら、ArFエキシマレーザーを照射した。
その後、130℃で60秒間の露光後加熱(PEB)処理を行った。
次いで、23℃にて、乳酸エチルで30秒間の溶剤現像を施し、振り切り乾燥を行った。
そして、Nanospec 6100A(ナノメトリクス社製)により、各照射量のレジスト膜厚(照射スポットごとのレジスト膜厚)を確認し、残膜曲線をプロットした。そして、下記の評価基準に基づいて残膜性を評価した。その結果を表3に示した。
評価基準
残膜あり:溶剤現像・振り切り乾燥後のレジスト膜厚が80nm以上であった場合。
残膜なし:照射量が2〜100mJの範囲で硬化せず、溶剤現像・振り切り乾燥後にレジスト膜が残らなかった場合。
【0078】
【表3】
【0079】
[解像性の評価]
HMDS処理(90℃、36秒間)を施した8インチのシリコンウェーハ上に、各例のネガ型レジスト組成物を、スピンナーを用いてそれぞれ塗布し、ホットプレート上で、110℃で60秒間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。
次に、該レジスト膜に対し、ArF露光装置NSR−S302[Nikon社製;NA(開口数)=0.60,Annular]により、フォトマスク(ターゲットサイズ:ライン幅250nm、ピッチ幅500nm)を介して、ArFエキシマレーザー(193nm)を照射した。
その後、130℃で60秒間の露光後加熱(PEB)処理を行った。
次いで、23℃にて、乳酸エチルで30秒間の溶剤現像を施し、振り切り乾燥を行った。
そして、所定のラインアンドスペースのレジストパターン(250LSパターン)が形成されているか否か、について確認することにより、解像性を評価した。
表4、5中、250LSパターンが形成されている場合を「解像」として示した。
【0080】
[経時安定性の評価]
各例のネガ型レジスト組成物を調製した後、常温下(23℃)で10日間保存した。 調製直後(初期)、経時6日の時点で、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)により、各組成物について赤外線吸収スペクトルをそれぞれ測定し、そのスペクトル形状の変化(特に3000cm−1超付近のヒドロキシ基(HO)に帰属するもの、及び、1700cm−1付近のカルボニル基(C=O)に帰属するもの)を観察した。
そして、経時6日時点までに、スペクトル形状に変動が現れていた場合を×(そのネガ型レジスト組成物は経時安定性が悪い);経時6日時点までに、スペクトル形状に変動が認められない場合を○(そのネガ型レジスト組成物は経時安定性が良い)とし、ネガ型レジスト組成物の経時安定性についての評価を行った。
これらの結果を「スペクトル形状の変動の有無」、「経時安定性(経時6日時点)」として表4、5に示した。
実施例1〜4のネガ型レジスト組成物については、経時10日時点でも、スペクトル形状の変動が認められず、経時安定性が良好であった。
【0081】
図1は、錯体(Hf−4)を含有する比較例4のネガ型レジスト組成物についての、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)により測定される赤外線吸収スペクトルを示す図である。各スペクトルについて、縦軸は透過率(%)である。図1では、初期、経時6日時点のそれぞれの赤外線吸収スペクトルが、横軸を共通にして示されている。
経時6日時点では、3000cm−1超に、初期時点と比べて、スペクトル形状の変動(図中の丸で囲まれた範囲)が現れている。これは、経時で加水分解が生じたことに起因する。
また、図1では、1700cm−1付近にもスペクトル形状の変動が現れている。このように、経時に伴って1700cm−1付近(カルボニル基に帰属)にピークが現れたのは、配位子が錯体から遊離したことが推測される。
すなわち、かかる経時安定性の評価結果から、比較例4のネガ型レジスト組成物は、錯体(Hf−4)の構造が経時変化を生じやすく、経時安定性が不良であり、レジストパターンを安定に得られないこと、が認められる。
【0082】
【表4】
【0083】
【表5】
【0084】
以上の評価結果から、本発明を適用した実施例1〜4のネガ型レジスト組成物は、EUV光に対して高吸収を示す金属(Hf、Zr)を含有し、経時安定性の良好であることが分かる。
図1