(54)【発明の名称】水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物の製造方法、および水蒸気バリア用接着剤、水蒸気バリア用フィルム、水蒸気バリア用コーティング剤、水蒸気バリア用積層体
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂(A)の主骨格が、ポリエステル、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテル、又はポリエーテルポリウレタン構造を有する請求項1〜3の何れかに記載の水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物の製造方法。
オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物が、オルトフタル酸又はその無水物、ナフタレン2,3−ジカルボン酸又はその無水物、ナフタレン1,2−ジカルボン酸又はその無水物、アントラキノン2,3−ジカルボン酸又はその無水物、及び2,3−アントラセンジカルボン酸又はその無水物から成る群から選ばれる少なくとも1つである請求項6に記載の水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物の製造方法。
樹脂(A)が、3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールにカルボン酸無水物又はポリカルボン酸を反応させることにより得られる少なくとも1個のカルボキシ基と2個以上の水酸基を有するポリエステルポリオール(A1)である請求項1〜5の何れかに記載の水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物の製造方法。
樹脂(A)が、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A2)である請求項1〜5の何れかに記載の水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物の製造方法。
ポリエステルポリオール(A2)を構成する重合性炭素−炭素二重結合を有するモノマー成分が、マレイン酸、無水マレイン酸、又はフマル酸である請求項10に記載の水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物の製造方法。
ポリエステルポリオール(A2)を構成する全モノマー成分100質量部に対して、重合性炭素−炭素二重結合を有するモノマー成分が、5〜60質量部である請求項10又は11に記載の水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物の製造方法。
前記一般式(1)で表されるポリエステルポリオール(A3)のグリセロール残基を、酸素バリア性ポリエステル樹脂組成物中に5質量%以上含有する請求項13に記載の水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物の製造方法。
樹脂(A)が、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含む多価カルボン酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多価アルコール成分を重縮合して得られるポリエステルポリオール(A4)である請求項1〜5の何れかに記載の水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物の製造方法。
オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物が、オルトフタル酸又はその無水物、ナフタレン2,3−ジカルボン酸又はその無水物、ナフタレン1,2−ジカルボン酸又はその無水物、アントラキノン2,3−ジカルボン酸又はその無水物、及び2,3−アントラセンジカルボン酸又はその無水物から成る群から選ばれる少なくとも1つの多価カルボン酸又はその無水物である請求項15に記載の水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物の製造方法。
芳香族環を有するポリイソシアネートが、メタキシレンジイソシアネート、又はメタキシレンジイソシアネートと2個以上の水酸基を有するアルコールとの反応生成物である請求項18に記載の水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、一般式(1)で表される酸性リン酸エステルで表面処理された修飾板状無機化合物を含有する水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物の製造方法であって、
(1)一般式(1)
【0017】
(式(1)中、Rは、炭素数6〜30の鎖状アルキル基若しくはアルケニル基、又は炭素数6〜30の環状アルキル基若しくはアルケニル基、nは1又は2を表す。)
で表される酸性リン酸エステルを溶剤に溶解または分散させる工程。
(2)前記(1)で得られる溶液に板状無機化合物を添加し酸性リン酸エステルと板状無機化合物を反応させて、前記修飾板状無機化合物の分散液を得る工程。
(3)前記(2)で得られる分散液に、官能基として1分子中に水酸基を2個以上有する樹脂(A)、及び官能基として1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物(B)を添加する工程を有することに特徴がある。
【0018】
(板状無機化合物)
本発明の製造法では、前記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルで表面処理された修飾板状無機化合物を樹脂組成物中に含有することが特徴である。本発明に用いられる板状無機化合物は、多層フィルムのガスバリア性を高める効果を有するが、前記一般式(1)で表される酸性リン酸エステルで表面処理された修飾板状無機化合物を用いることにより更にその効果を高めることができる。
【0019】
本発明に用いられる板状無機化合物の例として、カオリナイト−蛇紋族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等、アンチゴライト、クリソタイル等)、パイロフィライト−タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライ等)、各種金属水酸化物のうち層状構造を持つ水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、水酸化鉄、水酸化亜鉛、水酸化ニッケルのほか層状硫酸バリウム、ゼオライト、ポリリン酸アルミニウム、ベーマイト、ガラスフレーク、アルミニウムフレーク、金属箔、金属フレーク、窒化ホウ素、モンモリロナイト、バーミキュライト、雲母系化合物類、例示すると白雲母、金雲母、黒雲母、セリサイト、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等の他、ハイドロタルサイト類を例示することができる。板状無機化合物が層間にイオンを持つ粘土鉱物やハイドロタルサイトの場合では、層間イオンを有機化して溶媒分散性や膨潤性を付与した材料を用いてもよい。
【0020】
(板状無機化合物の平均粒径、アスペクト比)
板状無機化合物の平均粒径については特に制限はないが、粒径が小さすぎると板状無機化合物による迷路効果が発現にくくなるため、好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは1μm以上である。大粒径側はあまりに大きすぎると塗工面が荒れるなどの塗工適性に問題が出る場合があるため、好ましくは30μm以下、更に好ましくは20μm以下である。また、アスペクト比はガスバリアに対して高いほうが良く、好ましくは10以上であり、更に好ましくは50以上、最も好ましくは70以上である。中でも雲母系の板状無機化合物では、アスペクト比が100を超える材料も知られており特に好ましく用いられる。
【0021】
(板状無機化合物の含有率)
本発明では官能基として1分子中に水酸基を2個以上有する樹脂(A)、官能基として1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物を硬化した樹脂組成物、及び板状無機化合物の総質量を100質量%とした場合、板状無機化合物の含有率はガスバリア能が向上するならば特に限定はないが、5〜50質量%であることが好ましい。5質量%以下の場合はバリア能が向上しにくく、50質量%以上では塗工表面の粘着性が低下することによりラミネート操作がしにくくなったり、ラミネート強度が不十分になったりする可能性があるためである。板状無機化合物の含有率(配合物のPWC)は下記式(a)により求めることができる。
【0023】
(板状無機化合物を導入することによるその他の効果)
本発明では、板状無機化合物を接着層に導入することによりガスバリア性の向上のみならず接着強度も高めることができる場合もある。
【0024】
(酸性リン酸エステル)
本発明で用いる酸性リン酸エステルは、一般式(1)
【0026】
(式(1)中、Rは、炭素数6〜30の鎖状アルキル基若しくはアルケニル基、又は炭素数6〜30の環状アルキル基若しくはアルケニル基、nは1又は2を表す。)
で表される酸性リン酸エステルである。
酸性リン酸エステルは通常、製造工程上の要因により、式(1)中のnが1の化合物であるモノエステルと、nが2の化合物であるジエステルとの混合物であることが多い。モノエステルである場合はリン酸(ホスホン酸)、ジエステルである場合は亜リン酸(ホスフィン酸)部位が化合物中にあることになる。これらの両リン酸部位とも無機化合物表面と極めて反応性が高いことが知られている。特に、金属酸化物を主体とする無機化合物表面に多く分布するOH基のみならず、M-O-M(Mは金属原子)で表される酸素原子とも反応して化学結合を形成できる特徴がある。従って、金属化合物、特に、金属酸化物や金属水酸化物や、雲母、粘土等の天然鉱物に加え、表面が酸化されている単体金属箔等の表面の外周全体に有機修飾することができる。加えて、これらの反応速度は常温下でも速いことに加えて、単分子、もしくは2分子の均一な有機薄膜が形成できる。
【0027】
また、一般式(1)のRの部分が、炭素数6〜30の鎖状アルキル基若しくはアルケニル基、又は炭素数6〜30の環状アルキル基若しくはアルケニル基であることにより、汎用の溶媒に溶解、分散しやすいことで、溶媒中での板状無機化合物への修飾反応を容易に行うことができ、かつ、表面修飾後に板状無機化合物に十分な疎水性を付与することできる。
本発明では、炭素数6〜30の鎖状アルキル基若しくはアルケニル基、又は炭素数6〜30の環状アルキル基若しくはアルケニル基を用いることができるが、好ましくは、炭素数6〜24の鎖状アルキル基若しくはアルケニル基、又は炭素数6〜24の環状アルキル基若しくはアルケニル基を挙げることができる。
この時、炭素数が6より小さい場合には、板状無機化合物に対して十分な疎水性を付与することができず、Rの炭素数が24より大きい場合は汎用溶媒に溶解、分散させることが相対的にやや困難になる傾向がある。鎖状アルキル基の場合には直鎖構造でも、分岐鎖構造を持っていても差し支えない。
好ましい具体的な化合物として、炭素数6〜24の直鎖、または分岐のアルキル基を持つ酸性リン酸エステルとしては、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェートが例示できる。また、アルケニル基をもつ酸性リン酸エステルとしてはオレイルアシッドホスフェート等を例示することができる。また、類似の化合物として2-エチルヘキシル-2エチルヘキシルホスホネートを例示することができる
【0028】
(モノエステルとジエステルとの量比)
酸性リン酸エステル中のモノエステルとジエステルとの量比については特に制限がなく、モノエステル100質量%でもジエステル100質量%でも差し支えない。従って、これらの混合物がどのような量比であってもさしつかえない。
【0029】
(酸性リン酸エステル中の組成物)
酸性リン酸エステル中の不純物として、式(1)中のnが3の化合物であるトリエステルが含まれる場合がある。しかし本化合物は板状無機化合物と化学結合の起点となる水酸基がないため無機化合物と反応して疎水化する機能はなく、単独の化合物として組成物内に残存して各種の問題を起こす可能性がある。従って、トリエステルの含有率は少ない必要があり、好ましくは全体の5質量%以下である必要がある。また、原料のリン酸が残存して含まれる場合があるが、本化合物も板状無機化合物とは化学結合するものの、疎水化する機能はない上、3個の水酸基が板状無機化合物同市を架橋させることで、板状化合物同士を反応させることで接着剤を増粘させる懸念があるため好ましくは全体の10質量%以下である。
【0030】
尚、本発明においては、酸性リン酸エステルにより表面が修飾された板状無機化合物を修飾板状無機化合物と称する。
【0031】
(溶剤)
本発明で用いる溶剤は、酸性リン酸エステルを溶解または分散させ、板状無機化合物に対して反応場を与えることで、板状無機化合物への酸性リン酸エステルの修飾を容易に行わせることにある。また、その後の工程で官能基として1分子中に水酸基を2個以上有する樹脂(A)及び、官能基として1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物(B)を添加する工程が含まれるため、これら(A),(B)と反応せずに溶解させる必要がある。従って、酸性リン酸エステルを溶解または分散させ、板状無機化合物を分散させることができ、且つ成分(A)、(B)と反応せずに溶解させることができる溶媒であれば特に制限はない。具体的には酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒の他、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジメチルエ−テル、ジエチルエ−テル、ジブチルエ−テル、アニソ−ル等のエ−テル類を例示することができる。中でも、酢酸エチル、2−ブタノンは現行のドライラミネート用接着剤にも多用されているため特に好ましく用いられる。
【0032】
(酸性リン酸エステルの濃度)
酸性リン酸エステルを溶解させる際の濃度は特に制限がないが、酸性リン酸エステルと板状無機化合物との反応が迅速に行いたい観点から0.001〜0.1モル/Lの間が好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.05モル/Lの間である。
【0033】
(板状無機化合物と、酸性リン酸エステルの量比)
板状無機化合物と、酸性リン酸エステルの量比は板状無機化合物のほぼ全周を酸性リン酸エステルが単層または複層の薄膜で覆うことができる量比であればよい。そのため、適切な量比は板状無機化合物の溶剤中での分散サイズにより決定される。板状無機化合物が前記溶剤に非膨潤であり無機化合物層が複数積層している場合には酸性リン酸エステル量比は少なくても良く、一般に板状無機化合物の1質量%以下となる。
一方、板状無機化合物が膨潤性であり無機化合物層が単層にまで分散している場合は数質量%程度になる場合もある。製造工程において、板状無機化合物の全周が修飾されるのに必要な量よりも大過剰の酸性リン酸エステルを工程中で加えることは、未反応の酸性リン酸エステルが、使用中に進入してくる水と会合することで水を取り込みやすくなる場合があるので注意を要する。
【0034】
(シランカップリング剤との相違点)
一般に有機修飾剤として用いられるシランカップリング剤では修飾反応が酸性リン酸エステルに比べて遅い上、無機化合物表面のOH基のみとの反応となる。前記の板状無機化合物の例中では板状の端面(エッジ)部分とは反応できるが、化合物の種類によっては水酸基が無い面部分では酸性リン酸エステルの反応が生じず完全な疎水化ができない場合がある、
更にシランカップリング剤同士の副反応が起こりやすく、その結果生じた反応物が用途によっては悪影響を及ぼす場合がある。また、反応を起すために少量の水の添加が必要な場合も多くこの制御も工程上煩雑な要因となる。一方、本発明で有機修飾剤として用いる酸性リン酸エステルにはこうした問題点がない利点がある。
【0035】
(樹脂成分)
[官能基として1分子中に水酸基を2個以上有する樹脂(A)]
本発明で使用する樹脂(A)は、官能基として1分子中に水酸基を有する樹脂であって、主骨格が、ポリエステル、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテル、又はポリエーテルポリウレタンを含有してなることに特徴を有し、本発明の目的とする接着力、又はガスバリア性を発現させうるものであれば特に限定はない。
【0036】
本発明で用いられるポリエステルは、公知の技術が使用でき、例えば多価アルコールと多価カルボン酸との反応により得ることが出来る。ポリエステルポリウレタンは、公知の技術が使用でき、例えばポリエステルポリオールとジイソシアネートとの反応により得ることが出来る。ポリエーテルは、公知の技術が使用でき、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランなどのオキシラン化合物を、例えば水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの低分子量ポリオールを開始剤として重合して得られる。ポリエーテルポリウレタンは、公知の技術が使用でき、例えばポリエーテルとジイソシアネートとの反応により得ることが出来る。
【0037】
(多価カルボン酸)
本発明で使用する樹脂(A)は、多価カルボン酸成分として具体的には、脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等を、脂環族多価カルボン酸としては1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、芳香族多価カルボン酸としては、オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物或いはエステル形成性誘導体;p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の多塩基酸を単独で或いは二種以上の混合物で使用することができる。また、これらの酸無水物も使用することができる。中でも、バリア性を得る為にはコハク酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、オルトフタル酸、オルトフタル酸の酸無水物、イソフタル酸が好ましく、更にはオルトフタル酸及びその酸無水物がより好ましい。
【0038】
(多価アルコール成分)
本発明で使用する多価アルコールは、具体的には、脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、芳香族多価フェノールとして、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノールや、これらの、エチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族を例示することができる。中でも酸素原子間の炭素原子数が少ないほど、分子鎖が過剰に柔軟にならずに、酸素透過しにくいと推定されることから、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールが好ましく、更にはエチレングリコールがより好ましい。多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合反応は、公知慣用の方法で行うことができる。
【0039】
[官能基として1分子中に水酸基を2個以上有する樹脂(A)として好ましい成分]
本発明で使用する2個以上の水酸基を有する樹脂(A)として、より具体的には、
・3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールにカルボン酸無水物又はポリカルボン酸を反応させることにより得られるポリエステルポリオール(A1)、
・重合性炭素−炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A2)、
・グリセロール骨格を有するポリエステルポリオール(A3)、
・オルト配向多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分を重縮合して得られるポリエステルポリオール(A4)、
・イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A5)、
等を挙げることができる。
以下、各ポリエステルポリオールについて説明する。
【0040】
[3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールにカルボン酸無水物又はポリカルボン酸を反応させることにより得られるポリエステルポリオール(A1)]
本発明で使用するポリエステルポリオール(A1)は、3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオール(I)にカルボン酸無水物又は多価カルボン酸を反応させることにより得られる少なくとも1個のカルボキシ基と2個以上の水酸基を有するものである。3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオール(I)は多価カルボン酸または多価アルコールの一部を三価以上とすることで得られる。
【0041】
ポリエステルポリオール(A1)の多価アルコール成分および多価アルコール成分として、好ましくは、オルトフタル酸及びその無水物を少なくとも1種以上含む多価カルボン酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多価アルコール成分からなる3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオール(I)に、カルボン酸無水物又は多価カルボン酸を反応させることにより得られ、少なくとも1個のカルボキシ基と2個以上の水酸基を有するものである。
【0042】
(オルトフタル酸及びその無水物)
オルトフタル酸及びその無水物は、骨格が非対称構造である。従って、得られるポリエステルの分子鎖の回転抑制が生じると推定され、これによりガスバリア性に優れると推定している。また、この非対称構造に起因して非結晶性を示し、十分な基材密着性が付与され、接着力とガスバリア性に優れると推定される。さらにドライラミネート接着剤として用いる場合には必須である溶媒溶解性も高いことで取扱い性にも優れる特徴を持つ。
【0043】
(多価カルボン酸 その他の成分)
3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオール(I)を合成する際に、多価カルボン酸成分により分岐構造を導入する場合には、三価以上のカルボン酸を少なくとも一部に有する必要がある。これらの化合物としては、トリメリット酸およびその酸無水物、ピロメリット酸及びその酸無水物等があげられるが、合成時のゲル化を防ぐ為には三価以上の多価カルボン酸としては三価カルボン酸が好ましい。
【0044】
これ以外の成分として本発明のポリエステルポリオール(I)は、本発明の効果を損なわない範囲において、前述の各種脂肪族多価カルボン酸、環族多価カルボン酸、香族多価カルボン酸等を用いることができる。中でもバリア機能を付与する為にはコハク酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、オルトフタル酸、オルトフタル酸の酸無水物、イソフタル酸が好ましく、更にはオルトフタル酸及びその酸無水物がより好ましい。
【0045】
(多価アルコール成分)
本発明で使用する多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。中でも、酸素原子間の炭素原子数が少ないほど、分子鎖が過剰に柔軟にならずに、酸素透過しにくいと推定されることから、エチレングリコールを使用することが最も好ましい。
【0046】
(多価アルコール その他の成分)
3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオール(I)を合成する際に、多価アルコール成分により分岐構造を導入する場合には、三価以上の多価アルコールを少なくとも一部に有する必要がある。これらの化合物としてはグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトール等があげられるが、合成時のゲル化を防ぐ為には三価以上の多価アルコールとしては三価アルコールが好ましい。
【0047】
これ以外の成分として本発明では多価アルコール成分として、本発明の効果を損なわない範囲において、前述した他の多価カルボン酸成分を共重合させてもよい。
【0048】
次に、本発明のポリエステルポリオール(I)とカルボン酸無水物又は多価カルボン酸との反応は、以下の様にして行う。
【0049】
即ち、前記ポリエステルポリオール(I)に、多価カルボン酸又はその酸無水物をポリエステルポリオール(I)の水酸基と反応させることにより得ることができる。ポリエステルポリオール(I)と多価カルボン酸との比率は反応後の樹脂(A)の水酸基が2個以上必要であることより、多価カルボン酸はポリエステルポリオール(I)の水酸基の1/3以下と反応させることが好ましい。ここで用いられるカルボン酸無水物又は多価カルボン酸に制限はないが、多価カルボン酸とポリエステルポリオール(I)との反応時のゲル化を考慮すると、二価或いは三価のカルボン酸無水物を使用することが好ましい。二価のカルボン酸無水物としては無水コハク酸、無水マレイン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、無水フタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物等が使用でき、三価のカルボン酸無水物としてはトリメリット酸無水物等が使用できる。
【0050】
前記ポリエステルポリオール(A1)の水酸基価が20〜250であり、酸価が20〜200であることが好ましい。水酸基価はJIS−K0070に記載の水酸基価測定方法にて、酸価はJIS−K0070に記載の酸価測定法にて、測定することができる。水酸基価が20mgKOH/gより小さい場合、分子量が大きすぎる為に粘度が高くなり、良好な塗工適性が得られない。逆に水酸基価が250mgKOH/gを超える場合、分子量が小さくなりすぎる為、硬化塗膜の架橋密度が高くなりすぎ、良好な接着強度が得られない。酸価が20mgKOH/gより小さい場合、分子間の相互作用が小さくなり、良好なガスバリア性、良好な初期凝集力が得られない。逆に酸価が200mgKOH/gを超える場合、樹脂(A)とイソシアネート化合物(B)との反応が早くなり過ぎ、良好な塗工適性が得られない。
【0051】
[重合性炭素−炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A2)]
また、本発明のポリエステルポリオール(A2)として、更に、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有するものを挙げることができる。
【0052】
本発明で使用するポリエステルポリオール(A2)は、多価カルボン酸と多価アルコールを反応することにより得られ、多価カルボン酸、多価アルコールの成分として重合性炭素−炭素二重結合をもつ成分を使用することにより、ポリエステルポリオール(A2)の分子内に重合成炭素−炭素二重結合を導入することができる。
【0053】
(重合性炭素−炭素二重結合をもつ多価カルボン酸)
多価カルボン酸において重合性炭素−炭素二重結合をもつ多価カルボン酸として無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸及びその酸無水物、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸及びその無水物等があげられる。中でも、炭素原子数が少ないほど、分子鎖が過剰に柔軟にならずに、酸素透過しにくいと推定されることから、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸が好ましい。
【0054】
(その他の多価カルボン酸)
本発明のポリエステルポリオール(A2)は、重合性炭素−炭素二重結合をもつ多価カルボン酸以外の多価カルボン酸成分として前述の各種脂肪族多価カルボン酸、環族多価カルボン酸、香族多価カルボン酸等を用いることができる。中でもバリア機能を付与する為にはコハク酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、オルトフタル酸、オルトフタル酸の酸無水物、イソフタル酸が好ましく、更にはオルトフタル酸及びその酸無水物がより好ましい。
【0055】
(重合性炭素−炭素二重結合をもつ多価アルコール)
多価アルコールにおいて重合性炭素−炭素二重結合をもつ多価アルコールとして2−ブテン−1,4−ジオール等があげられる。
【0056】
(多価アルコール成分)
本発明で使用する多価アルコールは、重合性炭素−炭素二重結合をもつ多価アルコール以外の多価アルコール成分を用いても差し支えない。具体的には、前述の脂肪族多価アルコール、芳香族多価フェノール類等を使用することができる。中でも酸素原子間の炭素原子数が少ないほど、分子鎖が過剰に柔軟にならずに、酸素透過しにくいと推定されることから、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールが好ましく、更にはエチレングクリコールがより好ましい。
【0057】
また、上記ポリエステルポリオール(A2)では、重合性炭素−炭素二重結合をもつ多価カルボン酸、多価アルコールを使用することによりポリエステルポリオール(A2)に重合性二重結合を導入したが、水酸基を有するポリエステルポリオールと重合性二重結合を有するカルボン酸、又はカルボン酸無水物との反応であってもよい。この場合のカルボン酸としてはマレイン酸、無水マレイン酸、又はフマル酸等の重合性二重結合を有するカルボン酸、オレイン酸、ソルビン酸等の不飽和脂肪酸等を用いることができる。この場合のポリエステルポリオールとしては2個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールで好ましいが、イソシアネート化合物との架橋により分子伸長を考慮すると、水酸基は3個以上有することがより好ましい。ポリエステルポリオールの水酸基が1又は2個の場合、重合成二重結合を有するカルボン酸を反応することにより得たポリエステルポリオール(A2)の水酸基が0又は1個となり、イソシアネート化合物(B)との反応による分子伸長が起こり難くなり、接着剤としてのラミネート強度やシール強度、耐熱性等の特性が得られ難くなる。
【0058】
前記ポリエステルポリオール(A2)の水酸基価が20〜250mgKOH/g、酸価が0〜100mgKOH/gであることが好ましい。水酸基価はJIS−K0070に記載の水酸基価測定方法にて、酸価はJIS−K0070に記載の酸価測定法にて、測定することができる。水酸基価が20mgKOH/gより小さい場合、分子量が大きすぎる為に粘度が高くなり、良好な塗工適性が得られない。逆に水酸基価が250mgKOH/gを超える場合、分子量が小さくなりすぎる為、硬化塗膜の架橋密度が高くなりすぎ、良好な接着強度が得られない。
【0059】
また、ポリエステルポリオール(A2)を構成する全モノマー成分100質量部に対して、重合性炭素−炭素二重結合を有するモノマー成分が、5〜60質量部であることに特徴を有する。
【0060】
この範囲より低いと重合性二重結合間の架橋点が少なくなり、バリア性が得られ難くなり、高いと架橋点が多くなることにより硬化塗膜の柔軟性が著しく低下してラミネート強度が得られ難くなり好ましくない。
【0061】
なお本願においてポリエステルポリオール(A2)中の重合性炭素−炭素二重結合を有するモノマー成分量(二重結合成分比率)は、式(b)を用いて計算する。
【0063】
ここでモノマーとは前記の多価カルボン酸、多価アルコールを指す。
【0064】
また、本発明のポリエステルポリオール(A2)として、乾性油、又は半乾性油を挙げることができる。乾性油、又は半乾性油としては、炭素−炭素二重結合を有する公知慣用の乾性油、半乾性油等を挙げることができる。
【0065】
[グリセロール骨格を有するポリエステルポリオール(A3)]
本発明のポリエステルポリオール(A3)として、更に、一般式(2)で表されるグリセロール骨格を有するポリエステルポリオールを挙げることができる。
【0067】
(式(1)中、R
1〜R
3は、各々独立に、水素原子、又は一般式(3)
【0069】
(式(2)中、nは1〜5の整数を表し、Xは、置換基を有してもよい1,2−フェニレン基、1,2−ナフチレン基、2,3−ナフチレン基、2,3−アントラキノンジイル基、及び2,3−アントラセンジイル基から成る群から選ばれるアリーレン基を表し、Yは炭素原子数2〜6のアルキレン基を表す)で表される基を表す。但し、R
1〜R
3のうち少なくとも一つは、一般式(2)で表される基を表す。)
【0070】
前記一般式(1)において、R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つは前記一般式(2)で表される基である必要がある。中でも、R
1、R
2及びR
3全てが前記一般式(2)で表される基であることが好ましい。
【0071】
また、R
1、R
2及びR
3のいずれか1つが前記一般式(2)で表される基である化合物と、R
1、R
2及びR
3のいずれか2つが前記一般式(2)で表される基である化合物と、R
1、R
2及びR
3の全てが前記一般式(2)で表される基である化合物の、いずれか2つ以上の化合物が混合物となっていてもよい。
【0072】
Xは、1,2−フェニレン基、1,2−ナフチレン基、2,3−ナフチレン基、2,3−アントラキノンジイル基、及び2,3−アントラセンジイル基から成る群から選ばれ、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Xが置換基によって置換されている場合、1又は複数の置換基で置換されていてもよく、該置換基は、X上の、遊離基とは異なる任意の炭素原子に結合している。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i−プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、フェニル基又はナフチル基等が挙げられる。
【0073】
前記一般式(2)において、Yは、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、1,5−ペンチレン基、3−メチル−1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、メチルペンチレン基、ジメチルブチレン基等の、炭素原子数2〜6のアルキレン基を表す。Yは、中でも、プロピレン基、エチレン基が好ましくエチレン基が最も好ましい。
【0074】
前記一般式(1)で表されるグリセロール骨格を有するポリエステル樹脂化合物は、グリセロールと、カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸又はその無水物と、多価アルコール成分とを必須成分として反応させて得る。
【0075】
カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸又はその無水物としては、オルトフタル酸又はその無水物、ナフタレン2,3−ジカルボン酸又はその無水物、ナフタレン1,2−ジカルボン酸又はその無水物、アントラキノン2,3−ジカルボン酸又はその無水物、及び2,3−アントラセンカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。これらの化合物は、芳香環の任意の炭素原子に置換基を有していても良い。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i−プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、フェニル基又はナフチル基等が挙げられる。
【0076】
また、多価アルコール成分としては炭素原子数2〜6のアルキレンジオールが挙げられる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール等のジオールを例示することができる。
【0077】
なお、本願においてグリセロール骨格の含有量は、本願のガスバリア性接着剤用有機樹脂組成物全固形分の質量に対して、前記一般式(1)におけるR
1〜R
3を除いた残基(C
3H
5O
3=89.07)がどのくらい含まれるかを、式(c)を用いて計算する。
【0079】
P:グリセロール骨格を有するポリエステルポリオール(A3)を表す。
【0080】
本発明では、高いバリア性を発現するため、ガスバリア性接着剤用有機樹脂組成物中に5質量%以上のグリセロール残基を有することに特徴がある。
【0081】
(ガスバリア性接着剤用有機樹脂組成物固形分の質量算出方法)
ガスバリア性接着剤用樹脂組成物の質量部から希釈溶剤質量、硬化剤に含まれる揮発成分質量、無機成分を除く質量をガスバリア性接着剤用有機樹脂全固形分の質量とする。
【0082】
一方、ポリエステル成分の原料であるアシル基がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸又はその無水物は、骨格が非対称構造である。従って、得られるポリエステルの分子鎖の回転抑制が生じると推定され、これによりガスバリア性に優れると推定している。また、この非対称構造に起因して基材密着性を阻害する結晶性が低いために酢酸エチルやメチルエチルケトン等の溶剤にも高い溶解性を示し且つガスバリア性に優れると推定される。
【0083】
(多価アルコール)
本発明で使用するポリエステルポリオール(A3)は、多価アルコールとして、炭素原子数2〜6のアルキレンジオール以外の多価アルコール成分を、本発明の効果を損なわない範囲において共重合させてもよい。これには各種脂肪族多価アルコール、脂環族多価アルコール、芳香族多価フェノール等を例示することができる。
【0084】
(多価カルボン酸)
本発明のポリエステルポリオール(A3)は、多価カルボン酸成分としてカルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸又はその無水物を必須とするが、本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価カルボン酸成分を共重合させてもよい。具体的には、前述の脂肪族多価カルボン酸、不飽和結合含有多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸等を単独で或いは二種以上の混合物で使用することができる。
【0085】
[オルト配向多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分を重縮合して得られるポリエステルポリオール(A4)]
本発明で使用するポリエステルポリオール(A4)は、オルトフタル酸及びその無水物を少なくとも1種以上含む多価カルボン酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多価アルコール成分からなる。特に、前記オルトフタル酸及びその無水物の、多価カルボン酸全成分に対する使用率が70〜100質量%であるポリエステルポリオールが好ましい。
【0086】
(多価カルボン酸 その他の成分)
本発明のポリエステルポリオール(A4)は、多価カルボン酸成分として前記オルトフタル酸及びその無水物を必須とするが、本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価カルボン酸成分を共重合させてもよい。具体的には、前述の脂肪族多価カルボン酸、脂環族多価カルボン酸を単独で或いは二種以上の混合物で使用することができる。中でも、コハク酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、イソフタル酸が好ましい。
【0087】
(多価アルコール その他の成分)
多価アルコール成分及びその他の成分としては、前記エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノール以外のものを発明の効果を妨げない範囲で添加することができる。これには各種脂肪族多価アルコール、脂環族多価アルコール、芳香族多価フェノール等を例示することができる。
【0088】
[イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A5)]
本発明で使用する樹脂(A)は、下記一般式(4)で表されるイソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A5)を含むと更に好ましい。
【0090】
(一般式(3)中、R
1〜R
3は各々独立して、−(CH
2)n1−OH(但しn1は2〜4の整数を表す)、又は一般式(5)
【0092】
(一般式(4)中、n2は2〜4の整数を表し、n3は1〜5の整数を表し、Xは1,2−フェニレン基、1,2−ナフチレン基、2,3−ナフチレン基、2,3−アントラキノンジイル基、及び2,3−アントラセンジイル基から成る群から選ばれ、置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Yは炭素原子数2〜6のアルキレン基を表す。)
で表される基を表す。但しR
1、R
2及びR
3の少なくとも1つは前記一般式(4)で表される基である)
【0093】
前記一般式(3)において、−(CH
2)n1−で表されるアルキレン基は、直鎖状であっても分岐状でもよい。n1は、中でも2又は3が好ましく、2が最も好ましい。
【0094】
前記一般式(4)において、n2は2〜4の整数を表し、n3は1〜5の整数を表す。
Xは1,2−フェニレン基、1,2−ナフチレン基、2,3−ナフチレン基、2,3−アントラキノンジイル基、及び2,3−アントラセンジイル基から成る群から選ばれ、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。
【0095】
Xが置換基によって置換されている場合、1または複数の置換基で置換されていてもよく、該置換基は、X上の、遊離基とは異なる任意の炭素原子に結合している。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i−プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、フェニル基またはナフチル基等が挙げられる。
【0096】
Xの置換基は、中でもヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、フェニル基、が好ましくヒドロキシル基、フェノキシ基、シアノ基、ニトロ基、フタルイミド基、フェニル基が最も好ましい。
【0097】
前記一般式(4)において、Yは、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、1,5−ペンチレン基、3−メチル−1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、メチルペンチレン基、ジメチルブチレン基等の、炭素原子数2〜6のアルキレン基を表す。Yは、中でも、プロピレン基、エチレン基が好ましくエチレン基が最も好ましい。
【0098】
前記一般式(3)において、R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つは前記一般式(4)で表される基である。中でも、R
1、R
2及びR
3全てが前記一般式(4)で表される基であることが好ましい。
【0099】
また、R
1、R
2及びR
3のいずれか1つが前記一般式(4)で表される基である化合物と、R
1、R
2及びR
3のいずれか2つが前記一般式(4)で表される基である化合物と、R
1、R
2及びR
3の全てが前記一般式(4)で表される基である化合物の、いずれか2つ以上の化合物が混合物となっていてもよい。
【0100】
前記一般式(3)で表されるイソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A5)は、イソシアヌル環を有するトリオールと、カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸またはその無水物と、多価アルコール成分とを必須成分として反応させて得る。
【0101】
イソシアヌル環を有するトリオールとしては、例えば、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌル酸等のイソシアヌル酸のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0102】
また、カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸またはその無水物としては、オルトフタル酸またはその無水物、ナフタレン2,3−ジカルボン酸またはその無水物、ナフタレン1,2−ジカルボン酸またはその無水物、アントラキノン2,3−ジカルボン酸またはその無水物、及び2,3−アントラセンカルボン酸またはその無水物等が挙げられる。これらの化合物は、芳香環の任意の炭素原子に置換基を有していても良い。
【0103】
該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i−プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、フェニル基またはナフチル基等が挙げられる。
【0104】
また、多価アルコール成分としては炭素原子数2〜6のアルキレンジオールが挙げられる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール等のジオールを例示することができる。
【0105】
中でも、イソシアヌル環を有するトリオール化合物として1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、または1,3,5−トリス(2−ヒドロキシプロピル)イソシアヌル酸を使用し、カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸またはその無水物としてオルトフタル酸無水物を使用し、多価アルコールとしてエチレングリコールを使用したイソシアヌル環を有するポリエステルポリオール化合物が、ガスバリア性や接着性に特に優れ好ましい。
【0106】
イソシアヌル環は高極性であり且つ3官能である。従って系全体を高極性化させることができ、且つ、架橋密度を高めることが可能である。このような観点からイソシアヌル環を接着剤樹脂全固形分に対し5質量%以上含有することが好ましい。
【0107】
なお本願においてイソシアヌル環の含有量は、本願の接着剤樹脂全固形分の質量に対して、前記一般式(3)におけるR
1〜R
3を除いた残基(C
3N
3O
3=126.05)がどのくらい含まれるかを、式(d)を用いて計算する。
【0109】
P:イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A5)を表す。
【0110】
(ガスバリア性接着剤用樹脂組成物有機全固形分の質量算出方法)
ガスバリア性接着剤用樹脂組成物の質量部から希釈溶剤質量、硬化剤に含まれる揮発成分質量、無機成分を除く質量をガスバリア性接着剤用有機樹脂全固形分の質量とする。
【0111】
(樹脂(A)の合成方法の例)
樹脂(A)がポリエステルテルポリオールは、公知のポリエステルの製造方法により得ることができる。具体的には、触媒共存下、反応温度200〜220℃で、生成する水を系外へ取り除きながら反応させる製造方法にて合成できる。
【0112】
具体的な一例を示すと、原材料として用いるイソシアヌル環を有するトリオールと、カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸またはその無水物と、多価アルコール成分を一括して仕込んだ後、攪拌混合しながら昇温し、脱水縮合反応させる。JIS−K0070に記載の酸価測定法にて1mgKOH/g以下、同じくJIS−K0070に記載の水酸基価測定方法にて得られる水酸基価ZmgKOH/gが下記式(e)の右辺の数値(mgKOH/g)の±5%以内に入るまで反応を継続することで目的とするポリエステルポリオールを得ることができる。
【0114】
(式(e)中、Mnは所定の3官能ポリエステル樹脂の設定数平均分子量を表す。)
【0115】
或いは、各々の原料を多段階に分けて反応させてもよい。また、反応温度にて揮発してしまったジオール成分を追加しながら、水酸基価を±5%以内に入るように調製してもよい。
【0116】
反応に用いられる触媒としては、モノブチル酸化錫、ジブチル酸化錫等錫系触媒、テトラ−イソプロピル−チタネート、テトラ−ブチル−チタネート等のチタン系触媒、テトラ−ブチル−ジルコネート等のジルコニア系触媒等の酸触媒が挙げられる。エステル反応に対する活性が高い、テトラ−イソプロピル−チタネート、テトラ−ブチル−チタネート等の上記チタン系触媒と上記ジルコニア触媒を組み合わせて用いることが好ましい。前記触媒量は、使用する反応原料全質量に対して1〜1000ppm用いられ、より好ましくは10〜100ppmである。1ppmを下回ると触媒としての効果が得られにくく、1000ppmを上回ると後のウレタン化の反応を阻害する傾向がある。
【0117】
これらの樹脂(A)の数平均分子量は450〜5000であると接着能とガスバリア能とのバランスに優れる程度の架橋密度が得られるため特に好ましい。より好ましくは数平均分子量が500〜3000である。また硬化剤としては、後述のポリイソシアネートが最も好ましく、適度な反応時間を付与でき、接着強度とガスバリア能に特に優れる。分子量が450より小さい場合、塗工時の接着剤の凝集力が小さくなりすぎ、ラミネート時にフィルムがズレたり、貼り合せたフィルムが浮き上がるといった不具合が起こり、逆に分子量が5000よりも高い場合、塗工時の粘度が高くなり過ぎて塗工が出来ないことや、粘着性が低い事よりラミネートができないといった不具合が発生する。また、数平均分子量は得られた水酸基価と設計上の水酸基の官能基数から計算により求めた。
【0118】
本発明で使用する樹脂(A)は、ガラス転移温度が−30℃〜80℃の範囲が好ましい。より好ましくは0℃〜60℃である。更に好ましくは25℃〜60℃である。ガラス転移温度が80℃よりも高すぎる場合、室温付近でのポリエステルポリオールの柔軟性が低くなることにより、基材への密着性が劣ることで接着力が低下するおそれがある。一方−30℃よりも低すぎる場合、常温付近でのポリエステルポリオールの分子運動が激しいことにより十分なガスバリア性が出ないおそれがある。
【0119】
更に樹脂(A)をジイソシアネート化合物との反応によるウレタン伸長により数平均分子量1000〜15000としたポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオールを接着剤として用いても良い。該ポリオールには一定以上の分子量成分とウレタン結合とが存在するために、優れたガスバリア性を持つ上、初期凝集力に優れ、ラミネート時に使用する接着剤としてさらに優れる。また、樹脂(A)とジイソシアネート化合物における水酸基とイソソアネート基の比率をイソシアネート過剰とすることで、末端をイソシアネート基とすることが出来、これを硬化剤として使用してもよい。
【0120】
(接着剤 硬化剤)
本発明で使用する硬化剤は、前記樹脂(A)の水酸基と反応しうる硬化剤であれば特に限定はなく、ジイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物やエポキシ化合物等の公知の硬化剤を使用できる。中でも、接着性や耐レトルト性の観点から、ポリイソシアネート化合物を使用することが好ましい。
【0121】
ポリイソシアネート化合物としては芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネート化合物があり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート或いはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、メタキシリレンアルコール、1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4−ビスヒドロキシエチルベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタキシリレンジアミンなどの低分子活性水素化合物およびそのアルキレンオキシド付加物、各種ポリエステル樹脂類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られるアダクト体が挙げられる。
【0122】
イソシアネート化合物としてはブロック化イソシアネートであってもよい。イソシアネートブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなそのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノール、などの第3級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピロラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを公知慣用の適宜の方法より付加反応させて得られる。
【0123】
中でも、良好なガスバリア性を得る為にはキシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく、メタキシリレンジイソシアネート、メタ水素化キシリレンジイソシアネートが最も好ましい。
【0124】
本発明で使用する樹脂(A)とイソシアネート化合物(B)との硬化塗膜のガラス転移温度が−30℃〜80℃の範囲が好ましい。より好ましくは0℃〜70℃である。更に好ましくは25℃〜70℃である。ガラス転移温度が80℃よりも高い場合、室温付近での硬化塗膜の柔軟性が低くなることにより、基材への密着性が劣ることで接着力が低下するおそれがある。一方−30℃よりも低い場合、常温付近での硬化塗膜の分子運動が激しいことにより十分なガスバリア性が出ないおそれや、凝集力不足による接着力低下のおそれがある。
【0125】
前記メタキシレン骨格を含むポリイソシアネート化合物としては、キシリレンジイソシアネートの3量体、アミンとの反応により合成されるビューレット体、アルコールと反応してなるアダクト体があるが、3量体、ビューレット体と比べ、ポリイソシアネート化合物のドライラミネート接着剤に用いられる有機溶剤への溶解性が得られやすいという理由からアダクト体がより好ましい。アダクト体としては、上記の低分子活性水素化合物の中から適宜選択されるアルコールと反応してなるアダクト体が使用できるが、中でも、トリメチロールプロパン、グリセロール、トリエタノールアミン、メタキシレンジアミンのエチレンオキシド付加物とのアダクト体が特に好ましい。
【0126】
前記樹脂(A)と前記硬化剤とは、樹脂(A)と硬化剤との割合が樹脂(A)の水酸基と硬化剤の反応成分とが1/0.5〜1/10(当量比)となるように配合することが好ましく、より好ましくは1/1〜1/5である。該範囲を超えて硬化剤成分が過剰な場合、余剰な硬化剤成分が残留することで接着後に接着層からブリードアウトするおそれがあり、一方、硬化剤成分が不足の場合には接着強度不足のおそれがある。
【0127】
重合性炭素−二重結合の重合を促進する為の触媒として公知の重合触媒を使用することができる。重合触媒としては遷移金属錯体があげられる。遷移金属錯体は、重合性二重結合を酸化重合させる能力を備える化合物であれば特に限定しないが、種々の金属或いはその錯体を用いることができる。例えば、コバルト、マンガン、鉛、カルシウム、セリウム、ジルコニウム、亜鉛、鉄、銅等の金属と、オクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、ステアリン酸、樹脂酸、トール油脂肪酸、桐油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸等との塩を用いることができる。遷移金属錯体は樹脂(A)に対して0〜10質量部が好ましく、より好ましくは0〜3質量部である。
【0128】
前記硬化剤は、その種類に応じて選択された公知の硬化剤或いは促進剤を併用することもできる。例えば接着促進剤としては、加水分解性アルコキシシラン化合物等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系等のカップリング剤、エポキシ樹脂等が挙げられる。シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤は、各種フィルム材料に対する接着剤を向上させる意味でも好ましい。
【0129】
(その他の成分)
本発明で使用するポリエステル樹脂組成物は、ガスバリア性を損なわない範囲で、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナなどの無機充填剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤や、硬化塗膜の耐酸性を向上させるために、フタル酸無水物、コハク酸無水物等の酸無水物等が例示できる。
【0130】
また、必要に応じて、更にガスの捕捉機能を有する化合物を添加してガスバリア効果を促進してもよい。水蒸気捕捉機能を有する化合物としては、例えば、シリカゲル類、珪酸カルシウム、ゼオライト、炭酸カルシウム、活性炭等の無機化合物が例示される。
【0131】
また、塗布直後の各種フィルム材料に対する粘着性を向上させるために、必要に応じてキシレン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂などの粘着付与剤を添加しても良い。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の総量100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲が好ましい。
【0132】
(接着剤の製造工程)
本発明の製造工程では、以上説明した、(1)酸性リン酸エステルを溶剤に溶解または分散または分散させる工程と、(2)前記(1)で得られた、酸性リン酸エステルの溶液に板状無機化合物を添加し反応させて修飾板状無機化合物とする工程と、(3)前記(2)で得られる修飾板状無機化合物の分散液に、官能基として1分子中に水酸基を2個以上有する樹脂(A)、及び官能基として1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物(B)を添加する工程とから構成される。
【0133】
(酸性リン酸エステルの溶剤への溶解または、分散工程、工程(1))
酸性リン酸エステルを溶剤に溶解または分散させる工程である工程(1)については、一般に溶剤を所定の容器に入れ、その後所定量の酸性リン酸エステルをいれ、公知慣用の方法で攪拌することで溶解させる。溶解操作は常温で実施してもよいし、酸性リン酸エステルに溶剤が溶解、または分散しにくい場合には溶剤の熱的性質によっては加温しても差し支えない。
【0134】
(板状無機化合物と酸性リン酸エステルとの反応工程(2))
板状無機化合物と酸性リン酸エステルとの反応工程(2)については、(1)で製造した溶液に対して、板状無機化合物をいれ分散させつつ、溶剤中の酸性リン酸エステルを板状無機化合物と反応させ、修飾板状無機化合物を製造するものである。一般に酸性リン酸エステルの無機化合物との反応部位である、ホスホン酸部およびホスフィン酸位と板状無機化合物との反応は迅速である。従って、具体的には(1)で製造の溶液に対して板状無機化合物を導入した後、公知慣用の方法で板状無機化合物を一定時間撹拌、分散させることで修飾反応は終了する。反応時間は一般に10分程度の接触時間でも修飾反応が進行する場合が多い。
【0135】
(工程(1)と工程(2)との順序)
反応させる板状無機化合物の溶剤に対する量が少ない場合は工程(1)と工程(2)とを逆の順に行っても良い。しかし、酸性リン酸エステルは板状無機化合物の分散剤としての機能も有するため、酸性リン酸エステルを予め溶剤に溶解または分散させた後に板状無機化合物を添加する方が、板状無機化合物の分散体が低粘度化し、工程(2)の反応工程が容易になる場合が多い
【0136】
(樹脂成分の添加工程(3))
樹脂成分の添加工程(3)は、前記(2)で得られた分散液に、官能基として1分子中に水酸基を2個以上有する樹脂(A)、及び官能基として1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物(B)を添加する工程である。
(2)で得られた分散液に対し樹脂(A)、イソシアネート化合物(B)を添加する順序はどちらからでもかまわないが、通常は(2)で得られた分散液に、樹脂(A)を添加後攪拌し、まずは酸性リン酸エステルで修飾した板状無機化合物が樹脂樹脂(A)に分散した分散体を製造する。そして、ラミネート直前に硬化剤としてイソシアネート化合物(B)を添加し、ラミネート工程に供することが、保存安定性の観点から好ましい。
【0137】
(工程(3)での修飾板状無機化合物の分散方法)
本発明での樹脂(A)及びイソシアネート化合物(B)と修飾板状無機化合物の分散方法としては公知の分散方法が利用できる。例えば、ディゾルバー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントコンディショナー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、ナノミル、SCミル、ナノマイザー等を挙げることができる。更により好ましくは、高い剪断力を発生させることのできる機器として、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、二本ロール、三本ロール等が上げられる。これらのうちの1つを単独で用いてもよく、2種類以上装置を組み合わせて用いてもよい。この時は前術の通りまずは樹脂(A)に対して修飾板状無機化合物を分散させた後、硬化剤としてのイソシアネート化合物(B)を添加することが好ましい。
【0138】
以上の工程により、接着剤中に修飾板状無機化合物がふくまれた樹脂組成物を、板状無機化合物への酸性リン酸エステルでの修飾工程と、得られた修飾板状無機化合物の樹脂への分散工程とをワンポットで行うことができる。これにより、予め板状無機化合物を修飾した修飾板状無機化合物を乾燥粉末として得るための工程が不要となり、一般的に修飾板状無機化合物を得るために必要な、濾過洗浄工程、乾燥工程が必要となくなるため、省プロセスで樹脂組成物を製造することが可能となる。
【0139】
(本発明で製造した水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物の使用法)
本発明で製造した水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物の使用法は一般的に各種の樹脂フィルムを基材に塗工することによる。
【0140】
(使用するフィルム、シート)
基材として使用する積層用のフィルムは、特に限定はなく、所望の用途に応じた熱可塑性樹脂フィルムを適宜選択することができる。例えば食品包装用としては、PETフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:直鎖低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)やポリプロピレンフィルム(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等が挙げられる。これらは延伸処理を施してあってもよい。延伸処理方法としては、押出成膜法等で樹脂を溶融押出してシート状にした後、同時二軸延伸或いは逐次二軸延伸を行うことが一般的である。また逐次二軸延伸の場合は、はじめに縦延伸処理を行い、次に横延伸を行うことが一般的である。具体的にはロール間の速度差を利用した縦延伸とテンターを用いた横延伸を組み合わせる方法が多く用いられる。更にこれら樹脂フィルム以外にも紙、布等のシート状物を基材として用いても差し支えない。
【0141】
また、フィルム表面には、膜切れやはじきなどの欠陥のない接着層が形成されるように必要に応じて火炎処理やコロナ放電処理などの各種表面処理を施してもよい。
【0142】
本発明で製造の樹脂組成物は、さらに高いバリア機能を付与するために、必要に応じてアルミニウム等の金属、或いはシリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を積層したフィルムや、アルミ箔等の金属箔と併用しても良い。
【0143】
(水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物の使用方法(水蒸気バリア用接着剤))
本発明により製造される水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物は前記のフィルム、シートを2枚貼り合せるのに用いるラミネート用接着剤として使用することができる。本発明で製造される樹脂組成物は溶剤を含んだ形で製造されるため、ドライラミネーション方式に使用する接着剤として用いるのが適している。ドライラミネーション方式は、具体的には、基材フィルムの一方に樹脂組成物をグラビアロール方式で塗工後、もう一方の基材フィルムを重ねてドライラミネーション(乾式積層法)により貼り合わせる。ラミネートロールの温度は室温〜60℃程度が好ましい。ラミネート処理後はエージング処理を行うことが好ましく、その処理条件は室温〜80℃で、12〜240時間の間であり、この間に樹脂(A)とイソシアネート化合物(B)とが架橋反応することで接着強度が生じる。但し、溶媒を除去する工程を加えることで、無溶剤型接着剤用の水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物とすることも可能である。
【0144】
(水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物の使用方法(水蒸気バリア用積層体))
本発明により製造される水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物は前記のように水蒸気バリア接着剤として使用された場合には、水蒸気バリア用積層体として用いることができる。この時の積層体の構成としては最外層にPETフィルム、OPPフィルム等の延伸フィルムを、最内層にLLDPE、CPP等の未延伸フィルムを持つ構成にして、そのフィルム間を接着する接着剤として、本発明により製造される樹脂組成物を用いればよい。また、積層体に用いるフィルムは2層には限らず、中間層としてもう一層フィルムが入る3層のフィルムの積層体で少なくとも何れか2層の接着用途に本発明での樹脂組成物を用いる場合や、フィルムの一部に蒸着フィルム、透明蒸着フィルム、PVDCコート層やポリビニルアルコール(PVA)コート層、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム層、メタキシリレンアジパミドフィルム層等のガスバリアフィルムを用いてバリア機能を更に高めた積層体としても良い。
【0145】
(水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物の使用方法(水蒸気バリア用コーティング剤))
本発明で得られた樹脂組成物での樹脂構造や分子量や硬化剤の種類を適切に選定することで塗工、乾燥後に粘着性を持たないようにすることで、溶剤系コーティング材料として用いることもできる。この場合は接着剤で用いる樹脂と比べて高分子量で且つ高ガラス転移点の樹脂を用い、さらに添加剤としてブロッキング防止剤としてフィラー類を添加すると好適に用いることができる。
【0146】
(水蒸気バリア接着剤用樹脂組成物の使用方法(水蒸気バリア用フィルム))
本発明により製造された樹脂組成物は前記のように水蒸気バリアコーティング剤として各種フィルムに塗布した場合には、水蒸気バリア接着剤用フィルムとして使用することができる。コーティングする基材として用いるフィルムとしては延伸フィルムでも未延伸フィルムでも良いが、コーティング操作の容易さからは延伸フィルムを用いることが好ましい。この場合もまた前記の水蒸気バリア用積層体と同様に各種のバリアフィルムを併用しても良い。
【0147】
(透過を遮断できるガス成分種類)
本発明で得た樹脂組成物層を持つ積層体やフィルムが遮断できるガスとしては水蒸気の他、ガス分子が極性構造を持つメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール成分、フェノール、クレゾール等のフェノール類の他、低分子化合物からなる香気成分類、例えば、醤油、ソース、味噌、メントール、サリチル酸メチル、コーヒー、ココアシャンプー、リンス、等の香り成分を例示することができる。
【実施例】
【0148】
次に、本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明をする。例中断りのない限り、「部」「%」は質量基準である。
【0149】
製造例1〜3には実施例、比較例、参考例に用いた樹脂(A)としての各種ポリエステルポリオール樹脂の製造例を示した。
【0150】
(製造例1)オルトフタル酸とエチレングリコールからなるポリエステルポリオール樹脂「EGoPA」製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸396.34部、エチレングリコール173.73部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.05部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量600、水酸基価119.4mgKOH/gのポリエステルポリオール樹脂「oPAEG」を得た。尚、本ポリエステルポリオールは前記のポリエステルポリオール(A4)の特徴を持つものである。
【0151】
(製造例2)グリセロールとオルトフタル酸とエチレングリコールからなるポリエステルポリオール樹脂「GLY3oPA7EG5」製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、グリセロールを276.27部、無水フタル酸1036.84部、エチレングリコール325.87部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.16部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量1497.46、水酸基価183.3mgKOH/gのポリエステルポリオール樹脂「GLY3oPA7EG5」を得た。このポリエステルポリオール樹脂は1分子あたり平均3つのグリセロールを有する。尚、本ポリエステルポリオールは前記のポリエステルポリオール(A3)、(A4)の特徴を持つものである。
【0152】
(製造例3)グリセロールとトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートとイソフタル酸とエチレングリコールからなるポリエステルポリオール樹脂「{Gly(oPAEG)oPA}2THEIoPA」製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸740.5部、エチレングリコール124.2部、グリセロール184.2部、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート261.2部及びチタニウムテトライソプロポキシドを多価カルボン酸と多価アルコールとの合計量に対して100ppmに相当する量を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が40mgKOH/gになったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量約1350、水酸基価172.4mgKOH/g、酸価40mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。尚、本ポリエステルポリオールは前記のポリエステルポリオール(A1)、(A3)、(A4)、(A5)の特徴を持つものである。
【0153】
以下に、硬化剤(a)〜(c)として各実施例、参考例、比較例で用いた硬化剤を記す。
(硬化剤(a))
三井化学製「タケネートD−110N」(メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体 不揮発成分75.0% NCO% 11.5%)と三井化学製「タケネート500」(メタキシリレンジイソシアネートモノマー不揮発分>99%,NCO% 44.6%)を75/25(質量比)の割合で混合し硬化剤(a)とした。
硬化剤aの不揮発分は、81.0%、NCO% 20.0%である。
【0154】
(硬化剤(b))
三井化学製「タケネートD−110N」(メタキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体 不揮発成分75.0% NCO% 11.5%)を硬化剤(b)とした。
【0155】
(硬化剤(c))
住化バイエルウレタン社製「デスモジュールL−75」(トリメチロールプロパンと2,6―トリレンジイソシアネートとのアダクト体(不揮発分は75.0%、NCO%は13.4%)を硬化剤(c)とした。
【0156】
(使用した板状無機化合物)
以下に板状無機化合物A〜Dとして、実施例及び比較例で用いた各種無機化合物での品番、材料、平面の最大の平均長さ及び、短片の平均幅、及びメーカーを記した。ここで示した平面の最大の平均長さ、及び、短辺の平均幅とは、各5nm厚のプラチナ蒸着を行った後、走査型電子顕微鏡(SEM)(S−3400、日立ハイテク製)を用いた観察を実施した。粒子径に応じて倍率1000〜10000倍で観察した。まずは粒子が板状物主体かの判定を行った、板状であればこれらの粒子の形状を代表する100個の粒子を選択した。この時、分級の残りと想定されるような微小粒子や、板状物の表面にへばりつき、独立粒子として機能しないと想定される粒子は選択より除いた。また、板状粒子がある部分で結合し、集合体として存在する場合は、その集合体自体を1個の粒子とみなして観察を行った。各板状物の平面の最大長さ、及び、短辺の幅を計測しこれを平均することで、板状無機化合物の平面の最大長さの平均値、及び板状無機化合物の短片の幅の平均値を算出した。
【0157】
(板状無機化合物A)
TM−10、天然マイカ、板状、平面の最大の平均長さ12μm、短片の平均幅0.22μm、株式会社ヤマグチマイカ製
(板状無機化合物B)
SP−40、タルク、板状、平面の最大の平均長さ15μm、短片の平均幅3.5μm、富士タルク工業株式会社製
(板状無機化合物C)
ソマシフMEA、有機化マイカ、板状、平面の最大の平均長さ7.3μm、短片の平均幅0.38μm、コープケミカル株式会社製
(板状無機化合物D)
シルキーフレークF01、ガラス、板状、平面の最大の平均長さ17μm、短片の平均幅0.38μm、日本板硝子株式会社製
【0158】
(使用した酸性リン酸エステル)
(酸性リン酸エステルa)
アルキルの炭素数が8である2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(大八化学工業株式会社製)を酸性リン酸エステルaとして用いた。
(酸性リン酸エステルb)
アルキルの炭素数が24であるテトラコシルアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社製)を酸性リン酸エステルbとして用いた。
(酸性リン酸エステルc)
アルケニルの炭素数が18であるオレイルアシッドホスフェート(城北化学工業株式会社製)を酸性リン酸エステルcとして用いた。
【0159】
(実施例1)
ステンレス容器に酢酸エチル35.7gを仕込み、酸性リン酸エステルaである2-エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.1635g仕込んで、スターラーで攪拌を行い、酸性リン酸エステルaを完全に溶解させた(第一の工程)。これに板状無機化合物Aを32.1g仕込み酸性リン酸エステルaが溶解した酢酸エチルへ分散させた(第二の工程)。この時酸性リン酸エステルaが分散剤的な作用もして低粘度の分散体を得ることができた。この分散液を1時間分散機により攪拌したのち、製造例1で製造した樹脂31.5gを添加しさらに1時間ディスパー型分散機により攪拌した。最後に硬化剤(a)を34.9g添加し15分間攪拌することで(第三の工程)で、接着剤1Aを得た。
【0160】
(実施例2)
実施例1で用いた板状無機化合物Aを板状無機化合物Bに変更した以外は実施例1と同様な方法で接着剤2Aを得た。
【0161】
(実施例3)
実施例1で用いた板状無機化合物Aを板状無機化合物Cに変更し、酸性リン酸エステルを酸性リン酸エステルcのオレイルアシッドホスフェートに変更した以外は実施例1と同様な方法で接着剤3Aを得た。
【0162】
(実施例4)
ステンレス容器に2-ブタノン(MEK)41.8gを仕込み、酸性リン酸エステルbであるテトラコシルアシッドホスフェートを0.3025g仕込んで、スターラーで攪拌を行い、酸性リン酸エステルbを均一分散させた(第一の工程)。これに板状無機化合物Aを40.0g仕込み酸性リン酸エステルbが溶解したMEKへ分散させた(第二の工程)。この時酸性リン酸エステルbが分散剤的な作用もして低粘度の分散体を得ることができた。この分散液を1時間攪拌したのち、製造例2で製造した樹脂35.0gを添加しさらに1時間ディスパー型分散機により攪拌した。最後に硬化剤(b)を61.7g添加し15分間攪拌することで(第三の工程)で、接着剤4Aを得た。
【0163】
(実施例5)
実施例4で用いた板状無機化合物Aを板状無機化合物Bに変更した以外は実施例4と同様な方法で接着剤5Aを得た。
【0164】
(実施例6)
ステンレス容器にMEKを41.8gを仕込み、酸性リン酸エステルcであるオレイルアシッドホスフェートを0.2802g仕込んで、スターラーで攪拌を行い、酸性リン酸エステルcを完全に溶解させた(第一の工程)。これに板状無機化合物Dを40.0g仕込み酸性リン酸エステルcが溶解したMEKへ分散させた(第二の工程)。この時酸性リン酸エステルcが分散剤的な作用もして低粘度の分散体を得ることができた。この分散液を1時間攪拌したのち、製造例3で製造した樹脂35.0gを添加しさらに1時間ディスパー型分散機により攪拌させた。最後に硬化剤(c)を57.9g添加し15分間攪拌することで(第三の工程)で、接着剤6Aを得た。
【0165】
(比較例1〜3)
実施例1〜3の第一の工程で添加した酸性リン酸エステルa,cを含まないこと以外は実施例1〜3と同様な方法で、接着剤1B〜3Bを得た。これらの比較例での製造工程では、第二の工程で板状無機化合物が酢酸エチル中に分散しにくいことに起因して、第3の工程で樹脂成分を添加した後に高粘度となる傾向があった。
【0166】
(比較例4〜6)
実施例4〜6の第一の工程で添加した酸性リン酸エステルb,cをふくまない代わりに分散剤としてDISPERBYK-164(ビックケミージャパン株式会社製)を実施例4〜6の酸性リン酸エステルと各同量を溶剤に溶解させた以外は実施例4〜6と同様な方法で、接着剤4B〜6Bを得た。これらの比較例での製造工程では、分散剤を含んでいたため比較例1〜3とは異なり第二の工程で板状無機化合物が溶剤中に分散しにくく高粘度となる問題は生じなかった。
【0167】
(参考例1〜3)
板状無機化合物を含まない接着剤として以下の比較例用接着剤を作成した。
・参考例1(接着剤1C):酸性リン酸エステルと板状無機フィラーを含まない以外は実施例1と同じ
・参考例2(接着剤2C):酸性リン酸エステルと板状無機フィラーを含まない以外は実施例4と同じ
・参考例3(接着剤3C):酸性リン酸エステルと板状無機フィラーを含まない以外は実施例6と同じ
【0168】
(塗工方法、及び積層体の製造その1)
ポリエステルポリオール樹脂塗工液を、バーコーター#8を用いて厚さ12μmのPETフィルム(東洋紡績(株)製「E−5100」)に塗布し、温度70℃に設定したドライヤーで希釈溶剤を揮発させ乾燥し、この複合フィルムと厚さ15μmのナイロン(Ny)フィルム(ユニチカ(株)製「エンブレムON―BC」)を温度40℃、圧力0.4MPa、ラミネート速度40m/minにてドライラミネートしてこの複合フィルムを40℃/3日間かけて硬化(エージング)させ、PET/接着剤/Ny積層体である積層体Aを得た。
【0169】
(塗工方法、及び積層体の製造その2)
ポリエステルポリオール樹脂塗工液を、バーコーター#8を用いて厚さ15μmのナイロン(Ny)フィルム(ユニチカ(株)製「エンブレムON―BC」)に塗布し、温度70℃に設定したドライヤーで希釈溶剤を揮発させ乾燥し、次いで、この複合フィルムと未延伸LLDPEフィルム(東セロ社製TUX−HC 60μ)を温度40℃、圧力0.4MPa、ラミネート速度40m/minにてドライラミネートしてこの複合フィルムを40℃/3日間かけて硬化(エージング)させ、Ny/接着剤/LLDPE積層体である積層体Bを得た。
【0170】
(板状無機化合物の含有率)
板状無機化合物の含有率(配合物のPWC)を前述の式(a)により算出した。
【0171】
(水蒸気透過率)
エージングが終了した積層体Aを、水蒸気透過度試験法 伝導度法「ISO−15106−3」に準じ、Illinois社製測定装置を用いて、PETフィルムを加湿面とした上で40℃、90%RHの雰囲気下で評価を行った。なおRHとは、湿度を表す。
また、ポリエステル樹脂組成物を硬化させた樹脂塗膜単体の水蒸気透過率(バリア性)はPET/接着層/Ny積層体の測定結果より、式(f)を用いて計算した。
【0172】
【数6】
【0173】
P :水蒸気バリア性積層フィルムの水蒸気透過率
P1:接着層単体の水蒸気透過率
P2:12μmPETフィルムの水蒸気透過率(46g/m
2・24時間として計算)
P3:15μmナイロンフィルムの水蒸気透過率(260g/m
2・24時間として計算)
【0174】
(ラミネート強度の測定方法)
エージングが終了した積層体Bを、塗工方向と平行に15mm幅に切断し、NyフィルムとLLDPEフィルムとの間を、(株)オリエンテック製テンシロン万能試験機を用いて、雰囲気温度25℃、剥離速度を300mm/分に設定し、180度剥離方法で剥離した際の引っ張り強度をラミネート強度とした。ラミネート強度の単位はN/15mmとした。
【0175】
(ラミネートフィルムの外観)
エージングが終了した積層体Aを目視で判定した。均一透明な場合は○、フィルムに浮き部分がみられ気泡が入っているものは×、○と×の中間程度の状況のものを△と判定した。
【0176】
(板状無機分散物含有の接着剤粘度)
接着剤の製造の工程の全てを終了し、硬化剤まで配合を終了した際の接着液の粘度について目視で判定した。板状無機化合物の分散性が良好であることに起因し、粘度が低い場合は“低”、分散性が不良であることにより粘度が高い場合は“高”と判定した。
【0177】
以上、実施例1〜6での配合及び評価結果を表1に、比較例1〜6での配合、評価結果を表2に、参考例1〜3での配合、評価結果を表3に示した。
【0178】
【表1】
【0179】
【表2】
【0180】
【表3】
【0181】
この結果、実施例1〜6に示した本発明の方法により得た樹脂組成物を接着層に持つ多層フィルムは、酸性リン酸エステルにより修飾された修飾板状無機化合物を接着剤中に持つことにより、良好な水蒸気バリア機能(即ち低水蒸気透過率)を持ち、実施例1〜3では30g/m
2・日以下、実施例4〜6では20g/m
2・日以下となった。これらを参考例1〜3の板状無機化合物を含有しない接着層と比較した場合、水蒸気透過率を約1/4にすることができた。また、ラミネート強度も各参考例よりも高い上、接着剤粘度も低い結果となった。
以上は本発明の方法により得た接着剤では板状無機化合物が酸性リン酸エステルにより製造工程中で表面修飾処理されたことにより水蒸気バリア機能が強化され且つ、該化合物が分散剤としても機能していることを示している。加えて、接着剤の製造工程も濾過、洗浄、乾燥工程を含まずに簡便であった。
【0182】
一方、比較例1〜3に示した酸性リン酸エステルを含まない接着剤の製造方法では、板状無機化合物の分散がしにくい傾向にあったため接着剤の粘度が高く、且つ得られたフィルムの外観が良好ではなかった。また、板状無機化合物により水蒸気透過率を半分程度にしか低下させることができなかった。比較例4〜6の汎用の分散剤の添加工程を持つ製法により得られた接着剤では、板状無機化合物の分散性が良好であったことにより接着剤粘度が低く、フィルム外観も良好であった。しかし、水蒸気透過率が板状無機化合物を含まない参考例2、3の70%程度とバリア機能の向上が十分ではなかった。