特許第6197941号(P6197941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6197941パルプ解繊用樹脂組成物、繊維強化材料、及び成形材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6197941
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】パルプ解繊用樹脂組成物、繊維強化材料、及び成形材料
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20170911BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   C08J5/04CEY
   C08J3/20 BCEY
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-251154(P2016-251154)
(22)【出願日】2016年12月26日
【審査請求日】2017年4月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】梶川 正浩
(72)【発明者】
【氏名】竹内 陽子
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/163405(WO,A1)
【文献】 特開2000−038492(JP,A)
【文献】 特表2013−531108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
15/08− 15/14
C08C 19/00− 19/44
C08F 6/00−246/00
301/00
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
C08J 3/00− 3/28
5/04− 5/10
5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子数が6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、及びアミド基を有するアクリル単量体(a2)を必須原料とする重量平均分子量が5,000〜100,000のアクリル樹脂(A)を含有し、
前記アクリル樹脂(A)の原料である単量体成分中の前記アクリル単量体(a2)が55〜70質量%の範囲である、パルプ解繊用樹脂組成物。
【請求項2】
前記アクリル樹脂(A)の原料である単量体成分中の前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)が30〜45質量%の範囲である、請求項に記載のパルプ解繊用樹脂組成物。
【請求項3】
前記アクリル樹脂(A)の原料として、メチル(メタ)アクリレートをさらに含む、請求項1又は2に記載のパルプ解繊用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のパルプ解繊用樹脂組成物及びセルロース繊維を含有することを特徴とする繊維強化材料。
【請求項5】
請求項記載の繊維強化材料及び熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする成形材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプの解繊に有用な樹脂組成物、繊維強化材料、及び成形材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年開発されたセルロースナノファイバーは、植物由来の天然原料ナノフィラーであり、低比重かつ高強度な樹脂用複合材料として注目されている。また、ポリエステル系樹脂中でセルロースを微細化して得られたセルロースナノファイバーを高濃度で含有するマスターバッチが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、このマスターバッチと、熱可塑性樹脂、特にポリエチレン等のポリオレフィン樹脂との複合体におけるセルロースの解繊状態は不十分であり、得られる成形品の機械的強度に対するセルロースの添加効果が小さいという問題があった。
【0004】
そこで、ポリオレフィン樹脂等を補強する際にも、セルロースの添加効果を十分に発揮し得る材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5273313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、セルロースの添加効果を十分に発揮し、成形品に優れた機械的強度を付与することのできるパルプ解繊性に優れた樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、炭素原子数が6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、及びアミド基を有するアクリル単量体(a2)を必須原料とする重量平均分子量が5,000〜100,000のアクリル樹脂(A)を含有するパルプ解繊用樹脂組成物が、パルプの解繊性に優れ、成形品に優れた機械的強度を付与することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、炭素原子数が6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、及びアミド基を有するアクリル単量体(a2)を必須原料とする重量平均分子量が5,000〜100,000アクリル樹脂(A)を含有することを特徴とするパルプ解繊用樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のパルプ解繊用樹脂組成物は、パルプの解繊性に優れることから、ポリエチレン等のマトリックス樹脂とセルロース繊維とからなる成形体の機械的強度を効果的に補強することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、炭素原子数が6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、及びアミド基を有するアクリル単量体(a2)を必須原料とする重量平均分子量が5,000〜100,000のアクリル樹脂(A)を含有するものである。
【0011】
なお、本発明において「(メタ)アクリル酸」の表記は、「アクリル酸」及び「メタアクリル酸」のいずれか一方または両方を表すものであり、「(メタ)アクリレート」の表記は、「アクリレート」及び「メタアクリレート」のいずれか一方または両方を表すものであり、「(メタ)アクリルアミド」の表記は、「アクリルアミド」及び「メタアクリルアミド」のいずれか一方または両方を表すものである。また、本発明におけるアクリル基は、シクロアルキル基を含むものとする。
【0012】
前記炭素原子数が6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらの中でもラウリル(メタ)アクリレートが、パルプの解繊性に優れ、成形品により優れた機械的強度を付与する点において好ましい。なお、これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0013】
前記アミド基を有するアクリル単量体(a2)としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ドデシルアクリルアミド、N−プロポキシメチルアクリルアミド、6−(メタ)アクリルアミドヘキサン酸、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−[2,2−ジメチル−3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド等が挙げられる。なお、これらのアクリル単量体(a2)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0014】
また、前記アクリル樹脂(A)の原料としては、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、及び前記アクリル単量体(a2)の他に、必要に応じてその他の単量体(a3)を使用することができる。
【0015】
前記その他の単量体(a3)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸等のカルボキシル基を有する単量体;2−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、γ―メタクリロキシプロピルトリメトシキシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシジル(メタ)アクリレート等の官能基を有する(メタ)アクリレート;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル酸−1,4−ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−1,6−ヘキサンジオール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、ジ(メタ)アクリル酸グリセリン、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロメチルスチレン、等が挙げられる。なお、これらのその他の単量体(a3)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0016】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)の使用量は、解繊性及び得られる成形品の機械的強度がより向上することから、前記アクリル樹脂(A)の原料である単量体成分中、30〜90質量%の範囲が好ましく、35〜70質量%の範囲がより好ましい。
【0017】
前記アミド基を有するアクリル単量体(a2)の使用量は、解繊性及び得られる成形品の機械的強度がより向上することから、前記アクリル樹脂(A)の原料である単量体成分中、10〜70質量%の範囲が好ましく、20〜65質量%の範囲がより好ましい。
【0018】
また、前記アクリル樹脂(A)の重量平均分子量は、解繊性及び得られる成形品の機械的強度が優れることから、5,000〜100,000の範囲であるが、10,000〜50,000の範囲がより好ましい。ここで、重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。
【0019】
前記アクリル樹脂(A)中のアミド基の濃度は、解繊性及び得られる成形品の機械的強度がより向上することから、1.4〜9.9mmol/gの範囲が好ましく、2.8〜9.2mmol/gの範囲がより好ましい。なお、このアミド基濃度は、前記アクリル樹脂(A)の原料である単量体の仕込み量から算出したものである。
【0020】
前記アクリル樹脂(A)は、例えば、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、及び前記アミド基を有するアクリル単量体(a2)、必要に応じてその他の単量体(a3)を、有機溶剤中で、重合開始剤存在下、60〜140℃の温度でラジカル重合することによって製造することができる。なお、有機溶剤はラジカル重合後、脱溶剤工程により、除去しても構わない。
【0021】
前記有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレンのような芳香族溶剤;シクロへキサノンのような脂環族溶剤;酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル溶剤;イソブタノール、ノルマルブタノール、イソプロピルアルコール、ソルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤などを使用することができる。これらの溶剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0022】
前記重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物;tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物などが挙げられる。これらの重合体開始剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、前記重合開始剤は、前記アクリル樹脂(A)の原料となる単量体の合計に対して、0.1〜10質量%の範囲内で使用することが好ましい。
【0023】
本発明のパルプ解繊用樹脂組成物は、前記アクリル樹脂(A)を含有するものであるが、必要に応じて、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、バイオポリエチレン等のポリエチレン系樹脂(PE)、ポリプロピレン系樹脂(PP)、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ビニルエーテル樹脂等のオレフィン系樹脂や、ナイロン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂、トリアセチル化セルロース、ジアセチル化セルロース等のセルロース系樹脂等、ポリアミド系樹脂としてはポリアミド6(PA6、ε−カプロラクタムの開環重合体)、ポリアミド66(PA66、ポリヘキサメチレンアジポアミド)、ポリアミド11(PA11、ウンデカンラクタムを開環重縮合したポリアミド)、ポリアミド12(PA12、ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド)等の熱可塑性樹脂に加え、相溶化剤、界面活性剤、でんぷん類、アルギン酸等の多糖類、ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質、タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物、着色剤、可塑剤、香料、顔料、流動調整剤、レベリング剤、導電剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、紫外線分散剤、消臭剤等の添加剤、を併用することができる。
【0024】
本発明の繊維強化材料は、前記パルプ解繊用樹脂組成物及びセルロース繊維を含有するものである。前記パルプ解繊用樹脂組成物を使用したパルプの解繊方法としては、例えば、パルプ解繊用樹脂組成物とパルプとの混合物を、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、一軸押出機、二軸押出機等の押出機、バンバリーミキサー、グラインダー、加圧ニーダー、2本ロール等の公知の混練機などを用いる方法が挙げられる。
【0025】
前記パルプとしては、木材パルプであっても、非木材パルプであってもよい。木材パルプとしては、機械パルプと化学パルプとがあり、これらの中でもリグニン含有量の少ない化学パルプが好ましい。また、化学パルプとしては、例えば、サルファイドパルプ、クラフトパルプ、アルカリパルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、例えば、藁、バガス、ケナフ、竹、葦、楮、亜麻等を原料としたものが挙げられる。
【0026】
本発明の成形材料は、前記繊維強化材料、及び熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として含有するものである。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらの中でも、ポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエチレンがより好ましい。
【0027】
本発明の成形材料は、機械的強度に優れる成形品が得られることから、各種成形品の製造に利用できる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例及び比較例によって、より具体的に説明する。なお、アクリル樹脂の重量平均分子量は、下記のGPC測定条件で測定したものである。
【0029】
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0030】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0031】
(実施例1:パルプ解繊用樹脂組成物(1)の製造及び評価)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコにイソプロピルアルコール(以下、「IPA」と略記する。)123質量部を仕込み80℃に昇温し、これにアクリルアミド 135.3質量部、ラウリルメタクリレート 108.2質量部、メチルアクリレート2.5質量部、IPA 246質量部、重合開始剤(和光純薬株式会社製「V−59」、アゾ開始剤)4質量部、及びメチルエチルケトン(以下、「MEK」と略記する。)10質量部の溶解混合物を2時間かけて滴下し、73〜77℃で反応を行った。次いで、反応容器内を同温度範囲で2時間ホールドし、重合反応を終了した。得られた樹脂溶液から減圧ポンプを用いて脱溶剤(0.08〜0.095MPa、60℃)した後、乾燥機を用いて80℃で30分間加熱乾燥を行い、固形物として、パルプ解繊用樹脂組成物(1)を得た。このパルプ解繊用樹脂組成物(1)の重量平均分子量は15,000であった。
【0032】
[繊維強化材料の製造]
板パルプ(Howe Sound Pulp and Paper製)を固形分50質量部になるよう水に一晩含浸させた後、粉砕したものと、実施例1で得たパルプ解繊用樹脂組成物(1)を乾燥させた粉とを固形分で同質量ずつ混合し、加圧ニーダーで90分攪拌し、繊維強化材料(1)を得た。
【0033】
[成形材料の製造]
上記で得た繊維強化材料(1) 2質量部、ポリエチレン(HDPE 320Jを機械粉砕したもの)8質量部、及び酸化防止剤(BASFジャパン株式会社製「イルガノックス1010」)0.3質量部をヘンシェルミキサーで2分間混合し、140℃に加熱した二軸押出機(株式会社テクノベル製)で溶融・混練し、パルプ固形分10質量%の成形材料(1)のペレットを得た。
【0034】
[溶融・混練条件]
スクリュー直径:25mm
スクリュー回転数:300rpm
吐出量:800g/hr
温度設定:140℃
【0035】
[成形品の製造]
上記で得られた成形材料(1)のペレットを射出成形機(住友重機械製 iM18)で、ASTM4号(1.6mm厚)の成形片を作製した。
温度条件:成形機140℃、型温40℃
金型ASTM4号(1.6mm厚)
【0036】
[成形品の機械的強度の評価]
上記で得た1.6mm厚さの試験片を、引張試験機(株式会社島津製作所製「AUTOGRAPH AGS−X」)を用いて引張試験を行った。
引張速度:10mm/min
チャック間距離:64mm
【0037】
[解繊性の評価]
上記で得られた成形材料(1)のペレットをポリエチレンテレフタレート製シートに挟み、160℃で1mm厚さにプレスした後、中央部を1cm切り取り金属メッシュに包み、熱キシレンで樹脂を抽出後、金網に残ったセルロースを乾燥させ、SEMで5000倍に拡大観察し、サンプルの3箇所を無作為に撮影し下記の基準により解繊性を評価した。
◎:繊維径5μm以上の未解繊繊維が観察視野中に確認できなかった
〇:繊維径5μm以上10μm未満の未解繊繊維が観察視野に1本以上確認できた
×:繊維径10μm以上の未解繊繊維が観察視野に1本以上確認できた
【0038】
(実施例2(実施例2は参考例である):パルプ解繊用樹脂組成物(2)の製造及び評価)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコにIPA 123質量部を仕込み80℃に昇温し、これにアクリルアミド 110.7質量部、ラウリルメタクリレート 110.7質量部、メタアクリル酸 12.3質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12.3質量部、IPA 246質量部、重合開始剤(和光純薬株式会社製「V−59」、アゾ開始剤)4質量部、及びメチルエチルケトン(以下、「MEK」と略記する。)10質量部の溶解混合物を2時間かけて滴下し、73〜77℃で反応を行った。次いで、反応容器内を同温度範囲で2時間ホールドし、重合反応を終了した。得られた樹脂溶液から減圧ポンプを用いて脱溶剤(0.08〜0.095MPa、60℃)した後、乾燥機を用いて80℃で30分間加熱乾燥を行い、固形物として、パルプ解繊用樹脂組成物(2)を得た。このパルプ解繊用樹脂組成物(2)の重量平均分子量は17,000であった。
【0039】
実施例1で用いたパルプ解繊用樹脂組成物(1)をパルプ解繊用樹脂組成物(2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、成形材料(2)のペレットを作製し、成形品の機械的強度及び解繊性を評価した。
【0040】
(比較例1:パルプ解繊用樹脂組成物(R1)の製造及び評価)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコにIPA 123質量部を仕込み80℃に昇温し、これにアクリルアミド 110.7質量部、メチルメタクリレート 110.7質量部、メタアクリル酸 12.3質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12.3質量部、IPA 246質量部、重合開始剤(和光純薬株式会社製「V−59」、アゾ開始剤)4質量部、及びメチルエチルケトン(以下、「MEK」と略記する。)10質量部の溶解混合物を2時間かけて滴下し、73〜77℃で反応を行った。次いで、反応容器内を同温度範囲で2時間ホールドし、重合反応を終了した。得られた樹脂溶液から減圧ポンプを用いて脱溶剤(0.08〜0.095MPa、60℃)した後、乾燥機を用いて80℃で30分間加熱乾燥を行い、固形物として、パルプ解繊用樹脂組成物(R1)を得た。このパルプ解繊用樹脂組成物(R1)の重量平均分子量は17,000であった。
【0041】
実施例1で用いたパルプ解繊用樹脂組成物(1)をパルプ解繊用樹脂組成物(R1)に変更した以外は、実施例1と同様にして、成形材料(R1)のペレットを作製し、成形品の機械的強度及び解繊性を評価した。
【0042】
実施例1、実施例2及び比較例1で得られたパルプ解繊用樹脂組成物(1)、(2)及び(R1)の組成及び評価結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例1及び2の本発明のパルプ解繊用樹脂組成物は、パルプの解繊性に優れ、引張破断強度等に優れる成形体が得られることが確認された。
【0045】
一方、比較例1は、アクリル樹脂の原料として、炭素原子数が6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いなかった例であるが、パルプの解繊性が劣り、成形品の引張破断強度が不十分であり、引張ひずみも大きいことが確認された。
【要約】
【課題】セルロースの添加効果を十分に発揮し、成形品に優れた機械的強度を付与することのできるパルプ解繊性に優れた樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】炭素原子数が6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、及びアミド基を有するアクリル単量体(a2)を必須原料とする重量平均分子量が5,000〜100,000のアクリル樹脂(A)を含有することを特徴とするパルプ解繊用樹脂組成物を用いる。
【選択図】なし