【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例及び比較例によって、より具体的に説明する。なお、アクリル樹脂の重量平均分子量は、下記のGPC測定条件で測定したものである。
【0029】
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0030】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0031】
(実施例1:パルプ解繊用樹脂組成物(1)の製造及び評価)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコにイソプロピルアルコール(以下、「IPA」と略記する。)123質量部を仕込み80℃に昇温し、これにアクリルアミド 135.3質量部、ラウリルメタクリレート 108.2質量部、メチルアクリレート2.5質量部、IPA 246質量部、重合開始剤(和光純薬株式会社製「V−59」、アゾ開始剤)4質量部、及びメチルエチルケトン(以下、「MEK」と略記する。)10質量部の溶解混合物を2時間かけて滴下し、73〜77℃で反応を行った。次いで、反応容器内を同温度範囲で2時間ホールドし、重合反応を終了した。得られた樹脂溶液から減圧ポンプを用いて脱溶剤(0.08〜0.095MPa、60℃)した後、乾燥機を用いて80℃で30分間加熱乾燥を行い、固形物として、パルプ解繊用樹脂組成物(1)を得た。このパルプ解繊用樹脂組成物(1)の重量平均分子量は15,000であった。
【0032】
[繊維強化材料の製造]
板パルプ(Howe Sound Pulp and Paper製)を固形分50質量部になるよう水に一晩含浸させた後、粉砕したものと、実施例1で得たパルプ解繊用樹脂組成物(1)を乾燥させた粉とを固形分で同質量ずつ混合し、加圧ニーダーで90分攪拌し、繊維強化材料(1)を得た。
【0033】
[成形材料の製造]
上記で得た繊維強化材料(1) 2質量部、ポリエチレン(HDPE 320Jを機械粉砕したもの)8質量部、及び酸化防止剤(BASFジャパン株式会社製「イルガノックス1010」)0.3質量部をヘンシェルミキサーで2分間混合し、140℃に加熱した二軸押出機(株式会社テクノベル製)で溶融・混練し、パルプ固形分10質量%の成形材料(1)のペレットを得た。
【0034】
[溶融・混練条件]
スクリュー直径:25mm
スクリュー回転数:300rpm
吐出量:800g/hr
温度設定:140℃
【0035】
[成形品の製造]
上記で得られた成形材料(1)のペレットを射出成形機(住友重機械製 iM18)で、ASTM4号(1.6mm厚)の成形片を作製した。
温度条件:成形機140℃、型温40℃
金型ASTM4号(1.6mm厚)
【0036】
[成形品の機械的強度の評価]
上記で得た1.6mm厚さの試験片を、引張試験機(株式会社島津製作所製「AUTOGRAPH AGS−X」)を用いて引張試験を行った。
引張速度:10mm/min
チャック間距離:64mm
【0037】
[解繊性の評価]
上記で得られた成形材料(1)のペレットをポリエチレンテレフタレート製シートに挟み、160℃で1mm厚さにプレスした後、中央部を1cm
2切り取り金属メッシュに包み、熱キシレンで樹脂を抽出後、金網に残ったセルロースを乾燥させ、SEMで5000倍に拡大観察し、サンプルの3箇所を無作為に撮影し下記の基準により解繊性を評価した。
◎:繊維径5μm以上の未解繊繊維が観察視野中に確認できなかった
〇:繊維径5μm以上10μm未満の未解繊繊維が観察視野に1本以上確認できた
×:繊維径10μm以上の未解繊繊維が観察視野に1本以上確認できた
【0038】
(実施例2
(実施例2は参考例である):パルプ解繊用樹脂組成物(2)の製造及び評価)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコにIPA 123質量部を仕込み80℃に昇温し、これにアクリルアミド 110.7質量部、ラウリルメタクリレート 110.7質量部、メタアクリル酸 12.3質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12.3質量部、IPA 246質量部、重合開始剤(和光純薬株式会社製「V−59」、アゾ開始剤)4質量部、及びメチルエチルケトン(以下、「MEK」と略記する。)10質量部の溶解混合物を2時間かけて滴下し、73〜77℃で反応を行った。次いで、反応容器内を同温度範囲で2時間ホールドし、重合反応を終了した。得られた樹脂溶液から減圧ポンプを用いて脱溶剤(0.08〜0.095MPa、60℃)した後、乾燥機を用いて80℃で30分間加熱乾燥を行い、固形物として、パルプ解繊用樹脂組成物(2)を得た。このパルプ解繊用樹脂組成物(2)の重量平均分子量は17,000であった。
【0039】
実施例1で用いたパルプ解繊用樹脂組成物(1)をパルプ解繊用樹脂組成物(2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、成形材料(2)のペレットを作製し、成形品の機械的強度及び解繊性を評価した。
【0040】
(比較例1:パルプ解繊用樹脂組成物(R1)の製造及び評価)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコにIPA 123質量部を仕込み80℃に昇温し、これにアクリルアミド 110.7質量部、メチルメタクリレート 110.7質量部、メタアクリル酸 12.3質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート12.3質量部、IPA 246質量部、重合開始剤(和光純薬株式会社製「V−59」、アゾ開始剤)4質量部、及びメチルエチルケトン(以下、「MEK」と略記する。)10質量部の溶解混合物を2時間かけて滴下し、73〜77℃で反応を行った。次いで、反応容器内を同温度範囲で2時間ホールドし、重合反応を終了した。得られた樹脂溶液から減圧ポンプを用いて脱溶剤(0.08〜0.095MPa、60℃)した後、乾燥機を用いて80℃で30分間加熱乾燥を行い、固形物として、パルプ解繊用樹脂組成物(R1)を得た。このパルプ解繊用樹脂組成物(R1)の重量平均分子量は17,000であった。
【0041】
実施例1で用いたパルプ解繊用樹脂組成物(1)をパルプ解繊用樹脂組成物(R1)に変更した以外は、実施例1と同様にして、成形材料(R1)のペレットを作製し、成形品の機械的強度及び解繊性を評価した。
【0042】
実施例1、実施例2及び比較例1で得られたパルプ解繊用樹脂組成物(1)、(2)及び(R1)の組成及び評価結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例1及び2の本発明のパルプ解繊用樹脂組成物は、パルプの解繊性に優れ、引張破断強度等に優れる成形体が得られることが確認された。
【0045】
一方、比較例1は、アクリル樹脂の原料として、炭素原子数が6〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いなかった例であるが、パルプの解繊性が劣り、成形品の引張破断強度が不十分であり、引張ひずみも大きいことが確認された。