(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一般式(1)において、電界脱離イオン化質量分析におけるN=4〜8の顔料誘導体の強度比の合計が、N=1〜8の顔料誘導体の強度比の合計の15%以下である請求項1記載のカラーフィルタ用有機顔料組成物。
質量換算でフタロシアニン顔料(A)100部当たり、前記一般式(1)で表される顔料誘導体(B)を0.1部〜50.0部含むことを特徴とする請求項1記載のカラーフィルタ用有機顔料組成物。
粗製フタロシアニンまたはフタロシアニン顔料(A)、前記一般式(1)で表される顔料誘導体(B)、水溶性無機塩、及び水溶性有機溶剤からなる混合物をソルベントソルトミリングする工程を含む請求項1〜4いずれか1項記載のカラーフィルタ用有機顔料組成物の製造方法。
粗製フタロシアニンまたはフタロシアニン顔料(A)、前記一般式(1)で表される顔料誘導体(B)、水溶性無機塩、及び水溶性有機溶剤からなる混合物にさらにアクリル樹脂を含有することを特徴とする請求項5記載のカラーフィルタ用有機顔料組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明では、フタロシアニン顔料(A)と一般式(1)で表される顔料誘導体(B)を含むことを特徴とするカラーフィルタ用有機顔料組成物および該顔料組成物を含有するカラーフィルタである。
【0027】
(一般式(1)中、Mは置換基を有してもよい金属または2Hを表し、Zは置換基を有してもよいフタルイミドアルキル基を表し、n1、n2、n3、n4は、置換基Zの数を表し、各々独立に0から4の整数であり、N=n1+n2+n3+n4としたとき1≦N≦8であり、電界脱離イオン化質量分析におけるN=3〜8の顔料誘導体の強度比の合計が、N=1〜8の顔料誘導体の強度比の合計の30%以下である。]
【0028】
本発明に用いられるフタロシアニン顔料(A)は、フタロシアニン骨格を有するフタロシアニン系顔料では、いかなる顔料でも使用できる。フタロシアニン顔料は、青色から緑色の色相を有する堅牢性の高い顔料であり、色材および電子材料、インクジェット、カラーフィルタ等の用途として幅広く利用されている。カラーフィルタの用途の青色画素部に用いられる顔料は、通常公知のε型フタロシアニン顔料が好適に用いられる。フタロシアニン顔料には、α型、β型、γ型、ε型、δ型、π型、ρ型、X型、R型等の結晶多形が存在することが知られているが、カラーフィルタ用顔料としては、耐熱性に優れ、色調の好ましいε型である銅フタロシアニン顔料が好適である。ε型である割合は高い方が、耐熱性に優れ、色調の好ましいカラーフィルタ用顔料組成物を提供することができ、結晶多形に占めるε型である割合は、好ましくは85%以上を挙げることができる。ε型フタロシアニン顔料としては、ε型銅フタロシアニン、ε型亜鉛フタロシアニン、ε型コバルトフタロシアニン、ε型ニッケルフタロシアニン、及びε型鉄フタロシアニンからなる群から選ばれる1種以上のε型フタロシアニンを挙げることができ、用いられるε型フタロシアニン顔料は1種類でも2種類以上を混合してもよい。好ましいε型フタロシアニン顔料としては、色調の面からε型銅フタロシアニンを挙げることができる。
【0029】
さらに、カラーフィルタの緑色画素に用いられる顔料は、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントグリーン59等のハロゲン化銅フタロシアニンやハロゲン化亜鉛フタロシアニンが好適に使用されている。近年高色再現を達成されるべく、青味から黄味の緑色顔料の研究が盛んにおこなわれており、これら色相の異なるハロゲン化フタロシアニンを本発明でも使用ができる。ハロゲン化フタロシアニンは、中心金属の違いにより、色相、結晶性、耐熱性が異なり、ハロゲン化銅フタロシアニン、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン、ハロゲン化アルミフタロシアニンが現状では好適に使用されている。
【0030】
本発明で使用される顔料誘導体(B)は、下記一般式で表されるものである。
【0033】
(一般式(1)中、Mは置換基を有してもよい金属または2Hを表し、Zは置換基を有してもよいフタルイミドアルキル基を表し、n1、n2、n3、n4は、置換基Zの数を表し、各々独立に0から4の整数であり、N=n1+n2+n3+n4としたとき1≦N≦8であり、電界脱離イオン化質量分析におけるN=3〜8の顔料誘導体の強度比の合計が、N=1〜8の顔料誘導体の強度比の合計の30%以下である。]
【0034】
一般式(1)において、Mは置換基を有してもよい金属または2Hを表し、具体的には、Li、Na、K等の1価金属、または、Cu、Zn、Fe、Al、Co、Ti、Pt等の2〜4価の金属、もしくは2Hである。合成方法、収率および工業製品としてのコストを勘案すると、一般に市場に紹介されている工業品として、Cu、Zn、Al、2Hが好ましい。中でも本発明で最もフタロシアニン顔料と合わせた時に、熱履歴を受けても輝度の低下が少ないものとしては、中心金属がCu、Znであった。
【0035】
次に一般式(1)において、Zと表したフタルイミドアルキル基は、フタロシアニン骨格の外郭のベンゼン環にフタルイミドアルキル基を導入した顔料誘導体である。フタルイミドアルキル基は、炭素数1〜8のアルキルにフタルイミド構造が接合した置換基である。アルキル基の長さにより、カラーフィルタ用顔料の分散性に関する効果が異なることおよびカラーフィルタでの輝度、コントラストの光学特性を左右するものである。本発明では、分散性、光学特性を考慮して炭素数1〜8の範囲のフタルイミドアルキル基を好適に使用する。さらに、炭素数1のアルキル基のフタルイミドメチル基が特に好ましい。
【0036】
また、外郭ベンゼン環それぞれには、4個のフタルイミドアルキル基を導入することができるため、最大で16個の置換が可能である。これまでの先行技術では、フタルイミドアルキル基の数を規定することにより、カラーフィルタ用顔料の分散性、光学特性、耐熱性を改善していく研究はされてきていた。本発明者らは、鋭意検討した結果、フタルイミドアルキル基の置換数が多い顔料誘導体の割合が顔料誘導体全体において、多い場合は、耐熱性が極端に悪化しその結果として、熱履歴後の輝度が大幅に低下することを見出した。
【0037】
カラーフィルタにおける熱履歴は、カラーフィルタ自体の固着化およびポリイミド配向膜の膜形成等において、200℃以上で焼成されることにより受けるものであり、ディスプレイの構成によっては、温度、時間、焼成回数がさらに増えることもある。
【0038】
フタロシアニンに置換したフタルイミドアルキル基数は、電解脱離イオン化質量分析によって測定した。特に、置換基Zがフタルイミドメチル基のとき、分子イオンピーク159(m/z)のフタルイミドメチル基の置換基数をN=1とし、その倍数のイオンピークを基に置換基数を強度比から算出した。算出した結果、全置換数(N=1〜8)100%に対してN=3〜8の置換基を有する顔料誘導体が30%以下である場合、耐熱履歴後の輝度低下率が低いということが明らかになった。また、25%以下であるとより輝度低下が低く、20%以下であるとさらに輝度低下が小さいことが判明した。
【0039】
フタルイミドアルキル基の置換基数が3〜8の顔料誘導体の全顔料誘導体中の含有率が低いことにより、熱履歴後の輝度低下が低い理由としては、多置換の顔料誘導体は熱により分解を起こしやすいためと考えている。多置換の顔料誘導体は、置換数が多いために分子構造的に不安定であるため、耐熱性を悪化させる要因となる。また、多置換の顔料誘導体は、樹脂との相溶性が増す。さらに、多置換の顔料誘導体はかさ高い分子構造であるため、フタロシアニン顔料とのπ−πスタッキングなどの分子間相互作用が弱い。このため、熱履歴を受けた際に、フタロシアニン顔料に処理された顔料誘導体が、樹脂成分へと浸出し、顔料の粒子径が拡大、光散乱が生じ輝度が低下する。よって、多置換の顔料誘導体含有率を制限した本発明の有機顔料組成物は、耐熱性が高いと考えている。
【0040】
本発明の一般式(1)で表される顔料誘導体(B)のカラーフィルタ用有機顔料組成物における含有量は、フタロシアニン顔料(A)に対して0.1〜50質量%が好ましく、顔料誘導体含有率の影響による色相変化、色純度からより好ましくは2〜15質量%である。2質量%未満では、顔料誘導体の結晶成長抑制作用による耐熱性が期待できず、15質量%を超えると青色色相への影響が大きくなり好ましくない。
【0041】
本発明のカラーフィルタ用有機顔料組成物は、粗製フタロシアニンまたはフタロシアニン顔料(A)、本発明の一般式(1)で表される顔料誘導体(B)、水溶性無機塩、及び水溶性有機溶剤からなる混合物をソルベントソルトミリングすることで得ることができる。ソルベントソルトミリングに用いる装置としては、ニーダー、ミックスマーラー、特開2007−100008号公報に記載のプラネタリー型ミキサーである井上製作所株式会社製のトリミックス(商標名)や、特開2006−306996号公報に記載の連続式一軸混練機である浅田鉄工株式会社製のミラクルKCK等を用いることができる。
【0042】
このソルベントソルトミリングとは、顔料と無機塩と有機溶剤とを混練摩砕することを意味する。具体的には、顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練摩砕を行う。
【0043】
粗製フタロシアニンまたはフタロシアニン顔料(A)、本発明の一般式(1)で表される顔料誘導体(B)、水溶性無機塩、及び水溶性有機溶剤からなる混合物に、さらにアクリル樹脂を含有させることで、より好適なカラーフィルタ用有機顔料組成物をソルベントソルトミリングにより得ることができる。
【0044】
無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。この様な無機塩は、通常の無機塩を微粉砕することにより容易に得られる。
また、当該無機塩の使用量は、フタロシアニン1重量部に対して4〜20重量部とするのが好ましく、6〜15重量部とするのがより好ましい。
【0045】
有機溶剤としては、結晶成長を抑制し得る有機溶剤としての水溶性有機溶剤が好適に使用でき、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール等を用いることができるが、エチレングリコール又はジエチレングリコールが好ましい。
【0046】
当該水溶性有機溶剤の使用量は、特に限定されるものではないが、顔料1重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。
【0047】
アクリル樹脂としては、少なくとも1種以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体の重合体を用いる。また、1種以上の(メタ)アクリル酸エステルと、それに共重合可能なその他の単量体を併用した重合体であっても良い。
【0048】
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルである、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート〔ラウリル(メタ)アクリレート〕、オクタデシル(メタ)アクリレート〔ステアリル(メタ)アクリレート〕等のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環基を含有する(メタ)アクリル酸エステル;メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール#400(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、p−ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、p−ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のエーテル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル;ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステル;などを用いることができる。
【0049】
(メタ)アクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他の単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、第3級カルボン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルピロリドン等の複素環式ビニル化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有単量体;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、tert−ブチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体を用いることができる。
【0050】
当該アクリル樹脂の使用量は、特に限定されるものではないが、顔料1重量部に対して0.01〜1重量部が好ましい。また、アクリル樹脂の使用量が多いと、カラーフィルタ用有機顔料組成物中の透明成分が増え着色力が低下するので、0.02〜0.2重量部がより好ましい。
【0051】
混練温度は、50〜120℃の間で行うことが好ましい。50℃未満の温度で混練を行っても、ε型銅フタロシアニンのε化率(銅フタロシアニンに含まれるε型結晶化率)は低く好ましくない。また、120℃を超える温度で混練を行っても、顔料粒子を十分に微細化できず、コントラスト等が低下し、カラーフィルタ用有機顔料組成物として好ましくない。
【0052】
本発明のカラーフィルタ用有機顔料組成物は遊離銅を含んでもよい。含まれる遊離銅は、銅フタロシアニンを合成する際の残存する遊離銅である場合や、合成後の銅フタロシアニンの分解によって生成したものである場合がある。また、遊離銅は酸類で洗浄を行うことができる。使用される酸類は、例えば、塩酸、硫酸を挙げることができ、塩酸や硫酸の濃度は、0.5%〜4%が好ましい。また、洗浄時の温度は、50〜90℃が好ましい。また、水を用いて洗浄してもよい。好ましい遊離銅の含有率は、顔料組成物中に900質量ppm以下である場合が挙げられ、これ以上の含有率の場合には、得られるカラーフィルタの耐熱性が低下するので好ましくない。
【0053】
本発明におけるカラーフィルタ用有機顔料組成物は、液媒体中への分散性、分散安定性が高く、後記する顔料分散液の粘度は低く、かつ微細な粒子に分散していることからニュートン流動性も高いまま安定し、カラーフィルタ青色画素部を製造した場合に、均質な塗膜を形成して輝度、コントラストおよび光透過率のいずれもが高いカラーフィルタを得ることができる。ここで、本発明におけるカラーフィルタ用有機顔料組成物は、フタロシアニン顔料(A)、前記一般式(1)で表される顔料誘導体(B)を含むことを特徴とするが、必要に応じて、ジオキサジン系顔料(C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー80等)等調色用顔料や、無金属または金属フタロシアニンのスルホン酸誘導体、無金属または金属フタロシアニンのN−(ジアルキルアミノ)メチル誘導体、無金属または金属フタロシアニンのN−(ジアルキルアミノアルキル)スルホン酸アミド誘導体、ジオキサジンバイオレットのスルホン酸誘導体、インダンスレンブルーのスルホン酸誘導体フタロシアニンスルホン酸等の有機顔料誘導体等やビックケミー社のディスパービック130、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック183、ディスパービック184、ディスパービック185、ディスパービック2000、ディスパービック2001、ディスパービック2020、ディスパービック2050、ディスパービック2070、ディスパービック2096、ディスパービック2150、エフカ社のエフカ46、エフカ47、エフカ452、エフカLP4008、エフカ4009、エフカLP4010、エフカLP4050、LP4055、エフカ400、エフカ401、エフカ402、エフカ403、エフカ450、エフカ451、エフカ453、エフカ4540、エフカ4550、エフカLP4560、エフカ120、エフカ150、エフカ1501、エフカ1502、エフカ1503、ルーブリゾール社のソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース13240、ソルスパース13650、ソルスパース13940、ソルスパース17000、18000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース36000、ソルスパース37000、ソルスパース38000、ソルスパース41000、ソルスパース42000、ソルスパース43000、ソルスパース46000、ソルスパース54000、ソルスパース71000、味の素株式会社のアジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB814、アジスパーPN411、アジスパーPA111等の分散剤や、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキッド系樹脂、ウッドロジン、ガムロジン、トール油ロジン等の天然ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、酸化ロジン、マレイン化ロジン等の変性ロジン、ロジンアミン、ライムロジン、ロジンアルキレンオキシド付加物、ロジンアルキド付加物、ロジン変性フェノール等のロジン誘導体等の樹脂を含んでも、好適にカラーフィルタ青色画素部として用いることができる。これら有機顔料誘導体や、分散剤や、樹脂の添加は、フロッキュレーションの低減、顔料の分散安定性の向上、分散体の粘度特性を向上にも寄与する。
【0054】
本発明のカラーフィルタ用有機顔料組成物は、従来公知の方法で主にカラーフィルタの青色画素部に好ましく使用することができる。また、カラーフィルタを構成する他の赤色画素部、緑色画素部、ブラックマトリックス部や、ディスプレイを構成するカラムスペーサーの着色にも使用することが可能であり、本発明のカラーフィルタ用有機顔料組成物がカラーフィルタの青色画素部の使用に限定されるものではない。
【0055】
本発明にかかる組成物の分散方法で代表的な方法としては、フォトリソグラフィー法であり、これは、後記する光硬化性組成物を、カラーフィルタ用の透明基板のブラックマトリックスを設けた側の面に塗布、加熱乾燥(プリベーク)した後、フォトマスクを介して紫外線を照射することでパターン露光を行って、画素部に対応する箇所の光硬化性化合物を硬化させた後、未露光部分を現像液で現像し、非画素部を除去して画素部を透明基板に固着させる方法である。この方法では、光硬化性組成物の硬化着色皮膜からなる画素部が透明基板上に形成される。赤色、緑色、青色の色ごとに、後記する光硬化性組成物を調製して、前記した操作を繰り返すことにより、所定の位置に赤色、緑色、青色の着色画素部を有するカラーフィルタを製造することができる。
【0056】
赤色画素部を形成するための顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド177、同209、同254等が、緑色画素部を形成するための顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、同10、同36、同47、同58、同59等が挙げられる。これら赤色画素部と緑色画素部の形成には、黄色顔料を併用することもできる。その後、必要に応じて、未反応の光硬化性化合物を熱硬化させるために、カラーフィルタ全体を加熱処理(ポストベーク)することもできる。
【0057】
後記する光硬化性組成物をガラス等の透明基板上に塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット法等が挙げられる。
【0058】
透明基板に塗布した光硬化性組成物の塗膜の乾燥条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、通常、50〜150℃で、1〜15分間程度である。また、光硬化性組成物の光硬化に用いる光としては、200〜500nmの波長範囲の紫外線、あるいは可視光を使用するのが好ましい。この波長範囲の光を発する各種光源が使用できる。
【0059】
現像方法としては、例えば、液盛り法、ディッピング法、スプレー法等が挙げられる。光硬化性組成物の露光、現像の後に、必要な色の画素部が形成された透明基板は水洗いし乾燥させる。こうして得られたカラーフィルタは、ホットプレート、オーブン等の加熱装置により、90〜280℃で、所定時間加熱処理(ポストベーク)することによって、着色塗膜中の揮発性成分を除去すると同時に、光硬化性組成物の硬化着色皮膜中に残存する未反応の光硬化性化合物が熱硬化し、カラーフィルタが完成する。
【0060】
カラーフィルタの画素部を形成するための光硬化性組成物は、本発明のカラーフィルタ用有機顔料組成物と、分散剤と、光硬化性化合物と、有機溶剤とを必須成分とし、必要に応じて熱可塑性樹脂を用いて、これらを混合することで調製することができる。画素部を形成する着色樹脂皮膜に、カラーフィルタの実生産で行われるベーキング等に耐え得る強靱性等が要求される場合には、前記光硬化性組成物を調製するに当たって、光硬化性化合物だけでなく、この熱可塑性樹脂を併用することが不可欠である。熱可塑性樹脂を併用する場合には、有機溶剤としては、それを溶解するものを使用するのが好ましい。
【0061】
前記光硬化性組成物の製造方法としては、本発明の顔料組成物と、有機溶剤と分散剤とを必須成分として使用し、これらを混合し均一となる様に攪拌分散を行って、まずカラーフィルタの画素部を形成するための顔料分散液を調製してから、そこに、光硬化性化合物と、必要に応じて熱可塑性樹脂や光重合開始剤等を加えて前記光硬化性組成物とする方法が一般的である。
【0062】
ここで分散剤、有機溶剤は、前記のものが使用可能である。
【0063】
光硬化性組成物の調製に使用する熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂等が挙げられる。
【0064】
光硬化性化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、3−メチルペンタンジオールジアクリレート等のような2官能モノマー、トリメチルロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の比較的分子量の小さな多官能モノマー、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート等の様な比較的分子量の大きな多官能モノマーが挙げられる。
【0065】
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、ベンゾイルパーオキサイド、2−クロロチオキサントン、1,3−ビス(4’−アジドベンザル)−2−プロパン、1,3−ビス(4’−アジドベンザル)−2−プロパン−2’−スルホン酸、4,4’−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルホン酸等が挙げられる。市販の光重合開始剤としては、たとえば、チバスペシャルティーケミカルズ社製「イルガキュア(商標名)−184」、「イルガキュア(商標名)−369」、「ダロキュア(商標名)−1173」、BASF社製「ルシリン−TPO」、日本化薬社製「カヤキュアー(商標名)DETX」、「カヤキュアー(商標名)OA」、ストーファー社製「バイキュアー10」、「バイキュアー55」、アクゾー社製「トリゴナールPI」、サンド社製「サンドレー1000」、アップジョン社製「デープ」、黒金化成社製「ビイミダゾール」などがある。
【0066】
また上記光重合開始剤に公知慣用の光増感剤を併用することもできる。光増感剤としては、たとえば、アミン類、尿素類、硫黄原子を有する化合物、燐原子を有する化合物、塩素原子を有する化合物またはニトリル類もしくはその他の窒素原子を有する化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。光重合開始剤の配合率は、特に限定されるものではないが、質量基準で、光重合性あるいは光硬化性官能基を有する化合物に対して0.1〜30%の範囲が好ましい。0.1%未満では、光硬化時の感光度が低下する傾向にあり、30%を超えると、顔料分散レジストの塗膜を乾燥させたときに、光重合開始剤の結晶が析出して塗膜物性の劣化を引き起こすことがある。
【0067】
前記した様な各材料を使用して、質量基準で、本発明のカラーフィルタ用有機顔料組成物100部当たり、300〜1000部の有機溶剤と、1〜100部の分散剤とを、均一となる様に攪拌分散して前記顔料分散液を得ることができる。次いでこの顔料分散液に、本発明の顔料組成物1部当たり、熱可塑性樹脂と光硬化性化合物の合計が0.5〜20部、光硬化性化合物1部当たり0.05〜3部の光重合開始剤と、必要に応じてさらに有機溶剤を添加し、均一となる様に攪拌分散してカラーフィルタ青色画素部を形成するための光硬化性組成物を得ることができる。
【0068】
現像液としては、公知慣用の有機溶剤やアルカリ水溶液を使用することができる。特に前記光硬化性組成物に、熱可塑性樹脂または光硬化性化合物が含まれており、これらの少なくとも一方が酸価を有し、アルカリ可溶性を呈する場合には、アルカリ水溶液での洗浄がカラーフィルタ画素部の形成に効果的である。
【0069】
顔料分散法のうち、フォトリソグラフィー法によるカラーフィルタ画素部の製造方法について詳記したが、本発明のカラーフィルタ用有機顔料組成物を使用して調製されたカラーフィタ画素部は、その他の電着法、転写法、ミセル電解法、PVED(PhotovoltaicElectrodeposition)法、インクジェット法、反転印刷法、熱硬化法等の方法で画素部を形成して、カラーフィルタを製造してもよい。
【0070】
カラーフィルタは、青色顔料、赤色顔料、緑色顔料を使用して得た各色の光硬化性組成物を使用し、平行な一対の透明電極間に液晶材料を封入し、透明電極を不連続な微細区間に分割すると共に、この透明電極上のブラックマトリクスにより格子状に区分けされた微細区間のそれぞれに、赤、緑および青のいずれか1色から選ばれたカラーフィルタ着色画素部を交互にパターン状に設ける方法、あるいは基板上にカラーフィルタ着色画素部を形成した後、透明電極を設ける様にすることで得ることができる。
【0071】
本発明のカラーフィルタ用有機顔料組成物より得られる有機顔料分散体は、鮮明性と明度に優れた顔料分散体であり、カラーフィルタ用途の他、塗料、プラスチック(樹脂成型品)、印刷インク、ゴム、レザー、捺染、静電荷像現像用トナー、インクジェット記録用インキ、熱転写インキ等の着色にも適用することができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、もとより本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」はいずれも質量基準である。
【0073】
また、合成例、実施例、比較例における下記項目については、以下のように測定を行った。
【0074】
(顔料誘導体の置換基分布測定)
日本電子株式会社製JMS−T100GCを用いて、電界脱離イオン化質量分析法で顔料誘導体の置換基分布を測定した。サンプル5mgをジブチルヒドロキシトルエン不含のテトラヒドロフラン1.0mLに加え、超音波にて懸濁させたものを測定に使用した。
[測定条件]
エミッタ電流:0mA〜40mA[25.6mA/分]
対向電極:−10000V
測定質量範囲:m/z=50〜200
測定時間:2分
電界脱離イオン化質量分析法により得られた質量分析スペクトルにおいて、置換基Zの置換基数N=1〜8の顔料誘導体の分子ピークイオン強度の合計を100%とし、N=1〜8の顔料誘導体の分子ピークイオン強度に対する、N=3〜8の顔料誘導体の分子ピークイオン強度比を算出した。
【0075】
(焼成前後の輝度差ΔYの評価)
230℃焼成前と230℃焼成後のカラーフィルタを用いて、C光源における色度y=0.110の輝度Yを、MCPD−3000(大塚電子株式会社製)で測定した。焼成後の輝度Yから焼成前の輝度Yを差し引いて、焼成前後の輝度差ΔYを求めた。輝度差ΔYが0に近いほど輝度の低下が小さく、耐熱性に優れる。
【0076】
(合成例1)[顔料誘導体(B−1)の合成]
攪拌機、温度計および冷却管を装備したフラスコに、氷冷しながら98%硫酸(日本燐酸株式会社製)988部、25%発煙硫酸(和光純薬工業株式会社製)366部を仕込んだ。30℃に昇温した後、フタルイミド(和光純薬工業株式会社製)55部を加え、40℃に昇温した後、92%パラホルムアルデヒド(三菱ガス化学株式会社製)20部を加え、30分攪拌した。次に、β型銅フタロシアニン顔料(DIC株式会社製)80部を加え、30分攪拌した。続いて、80℃に昇温し、4時間攪拌した後、室温まで冷却した。冷却後、室温の水7500部を加え、1時間攪拌した後、反応液を濾過し、濾液の比電導度が原水の比電導度+50μS/cm以下となるまで水洗することによって顔料誘導体のウエットケーキを得た。得られたウエットケーキを90℃で24時間送風乾燥させ、顔料誘導体(B−1)を得た。
【0077】
顔料誘導体(B−1)を電界脱離イオン化質量分析し、顔料誘導体(B−1)が、一般式(1)においてMが銅原子、置換基Zがフタルイミドメチル基、N=1〜8で表される化合物であることを確認した。電界脱離イオン化質量分析の結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
(合成例2)[顔料誘導体(B−2)の合成]
攪拌機、温度計および冷却管を装備したフラスコに、氷冷しながら98%硫酸(日本燐酸株式会社製)485部、25%発煙硫酸(和光純薬工業株式会社製)170部を仕込んだ。30℃に昇温した後、フタルイミド(和光純薬工業株式会社製)38部を加え、40℃に昇温した後、92%パラホルムアルデヒド(三菱ガス化学株式会社製)17部を加え、30分攪拌した。次に、β型銅フタロシアニン顔料(DIC株式会社製)110部を加え、30分攪拌した。続いて、80℃に昇温し、4時間攪拌した後、室温まで冷却した。冷却後、室温の水7500部を加え、1時間攪拌した後、反応液を濾過し、濾液の比電導度が原水の比電導度+50μS/cm以下となるまで水洗することによって顔料誘導体のウエットケーキを得た。得られたウエットケーキを90℃で24時間送風乾燥させ、顔料誘導体(B−2)を得た。
【0080】
顔料誘導体(B−2)を電界脱離イオン化質量分析し、顔料誘導体(B−2)が、一般式(1)においてMが銅原子、置換基Zがフタルイミドメチル基、N=1〜8で表される化合物であることを確認した。電界脱離イオン化質量分析の結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
(合成例3)[顔料誘導体(B−3)の合成]
攪拌機、温度計および冷却管を装備したフラスコに、氷冷しながら98%硫酸(日本燐酸株式会社製)520部、25%発煙硫酸(和光純薬工業株式会社製)170部を仕込んだ。30℃に昇温した後、フタルイミド(和光純薬工業株式会社製)26部を加え、40℃に昇温した後、92%パラホルムアルデヒド(三菱ガス化学株式会社製)10部を加え、30分攪拌した。次に、β型銅フタロシアニン顔料(DIC株式会社製)118部を加え、30分攪拌した。続いて、80℃に昇温し、4時間攪拌した後、室温まで冷却した。冷却後、室温の水7500部を加え、1時間攪拌した後、反応液を濾過し、濾液の比電導度が原水の比電導度+50μS/cm以下となるまで水洗することによって顔料誘導体のウエットケーキを得た。得られたウエットケーキを90℃で24時間送風乾燥させ、顔料誘導体(B−3)を得た。
【0083】
顔料誘導体(B−3)を電界脱離イオン化質量分析し、顔料誘導体(B−3)が、一般式(1)においてMが銅原子、置換基Zがフタルイミドメチル基、N=1〜8で表される化合物であることを確認した。電界脱離イオン化質量分析の結果を表3に示す。
【0084】
【表3】
【0085】
(合成例4)[顔料誘導体(B−4)の合成]
攪拌機、温度計および冷却管を装備したフラスコに、氷冷しながら98%硫酸(日本燐酸株式会社製)988部、25%発煙硫酸(和光純薬工業株式会社製)366部を仕込んだ。30℃に昇温した後、フタルイミド(和光純薬工業株式会社製)55部を加え、40℃に昇温した後、92%パラホルムアルデヒド(三菱ガス化学株式会社製)20部を加え、30分攪拌した。次に、亜鉛フタロシアニン顔料(DIC株式会社製)81部を加え、30分攪拌した。続いて、70℃に昇温し、4時間攪拌した後、室温まで冷却した。冷却後、室温の水7500部を加え、1時間攪拌した後、反応液を濾過し、濾液の比電導度が原水の比電導度+50μS/cm以下となるまで水洗することによって顔料誘導体のウエットケーキを得た。得られたウエットケーキを90℃で24時間送風乾燥させ、顔料誘導体(B−4)を得た。
【0086】
顔料誘導体(B−4)を電界脱離イオン化質量分析し、顔料誘導体(B−4)が、一般式(1)においてMが亜鉛原子、置換基Zがフタルイミドメチル基、N=1〜8で表される化合物であることを確認した。電界脱離イオン化質量分析の結果を表4に示す。
【0087】
【表4】
【0088】
(合成例5)[顔料誘導体(B−5)の合成]
攪拌機、温度計および冷却管を装備したフラスコに、氷冷しながら98%硫酸(日本燐酸株式会社製)520部、25%発煙硫酸(和光純薬工業株式会社製)170部を仕込んだ。30℃に昇温した後、フタルイミド(和光純薬工業株式会社製)25部を加え、40℃に昇温した後、92%パラホルムアルデヒド(三菱ガス化学株式会社製)10部を加え、30分攪拌した。次に、亜鉛フタロシアニン顔料(DIC株式会社製)125部を加え、30分攪拌した。続いて、70℃に昇温し、4時間攪拌した後、室温まで冷却した。冷却後、室温の水7500部を加え、1時間攪拌した後、反応液を濾過し、濾液の比電導度が原水の比電導度+50μS/cm以下となるまで水洗することによって顔料誘導体のウエットケーキを得た。得られたウエットケーキを90℃で24時間送風乾燥させ、顔料誘導体(B−5)を得た。
【0089】
顔料誘導体(B−5)を電界脱離イオン化質量分析し、顔料誘導体(B−5)が、一般式(1)においてMが亜鉛原子、置換基Zがフタルイミドメチル基、N=1〜8で表される化合物であることを確認した。電界脱離イオン化質量分析の結果を表5に示す。
【0090】
【表5】
【0091】
(合成例6)[比較顔料誘導体(B’−1)の合成]
攪拌機、温度計および冷却管を装備したフラスコに、氷冷しながら98%硫酸(日本燐酸株式会社製)913部、25%発煙硫酸(和光純薬工業株式会社製)366部を仕込んだ。30℃に昇温した後、フタルイミド(和光純薬工業株式会社製)70部を加え、40℃に昇温した後、92%パラホルムアルデヒド(三菱ガス化学株式会社製)28部を加え、30分攪拌した。次に、β型銅フタロシアニン顔料(DIC株式会社製)80部を加え、30分攪拌した。続いて、80℃に昇温し、4時間攪拌した後、室温まで冷却した。冷却後、室温の水7500部を加え、1時間攪拌した後、反応液を濾過し、濾液の比電導度が原水の比電導度+50μS/cm以下となるまで水洗することによって顔料誘導体のウエットケーキを得た。得られたウエットケーキを90℃で24時間送風乾燥させ、比較顔料誘導体(B’−1)を得た。
【0092】
比較顔料誘導体(B’−1)を電界脱離イオン化質量分析し、比較顔料誘導体(B’−1)が、一般式(1)においてMが銅原子、置換基Zがフタルイミドメチル基、N=1〜8で表される化合物であることを確認した。電界脱離イオン化質量分析の結果を表6に示す。
【0093】
【表6】
【0094】
(合成例7)[比較顔料誘導体(B’−2)の合成]
攪拌機、温度計および冷却管を装備したフラスコに、氷冷しながら98%硫酸(日本燐酸株式会社製)913部、25%発煙硫酸(和光純薬工業株式会社製)366部を仕込んだ。30℃に昇温した後、フタルイミド(和光純薬工業株式会社製)70部を加え、40℃に昇温した後、92%パラホルムアルデヒド(三菱ガス化学株式会社製)28部を加え、30分攪拌した。次に、亜鉛フタロシアニン顔料(DIC株式会社製)81部を加え、30分攪拌した。続いて、70℃に昇温し、4時間攪拌した後、室温まで冷却した。冷却後、室温の水7500部を加え、1時間攪拌した後、反応液を濾過し、濾液の比電導度が原水の比電導度+50μS/cm以下となるまで水洗することによって顔料誘導体のウエットケーキを得た。得られたウエットケーキを90℃で24時間送風乾燥させ、比較顔料誘導体(B’−2)を得た。
【0095】
比較顔料誘導体(B’−2)を電界脱離イオン化質量分析し、比較顔料誘導体(B’−2)が、一般式(1)においてMが亜鉛原子、置換基Zがフタルイミドメチル基、N=1〜8で表される化合物であることを確認した。電界脱離イオン化質量分析の結果を表7に示す。
【0096】
【表7】
【0097】
(調整例1)[粗製フタロシアニン(C−1)の調整]
FASTOGEN Blue RF(DIC株式会社製α型銅フタロシアニン顔料)270部、FASTOGEN Blue AE−8(DIC株式会社製ε型銅フタロシアニン顔料)15部、顔料誘導体(B−1)15部、粉砕した塩化ナトリウム(日本食塩製造株式会社製)2400部、ジエチレングリコール(三菱化学株式会社製)450部を双腕型ニーダー(株式会社井上製作所製)に仕込み、120〜130℃で6時間混練した。得られた内容物を大過剰の水で洗浄、濾過し、濾液の比電導度が原水の比電導度+50μS/cm以下となるまで水洗することによって、ε型銅フタロシアニン顔料のウエットケーキを得た。ウエットケーキを90℃で24時間送風乾燥させ、粗製フタロシアニン(C−1)を得た。
【0098】
(調整例2)[粗製フタロシアニン(C−2)の調整]
FASTOGEN Blue RF(DIC株式会社製α型銅フタロシアニン顔料)270部、FASTOGEN Blue AE−8(DIC株式会社製ε型銅フタロシアニン顔料)15部、顔料誘導体(B−3)15部、粉砕した塩化ナトリウム(日本食塩製造株式会社製)2400部、ジエチレングリコール(三菱化学株式会社製)450部を双腕型ニーダー(株式会社井上製作所製)に仕込み、120〜130℃で6時間混練した。得られた内容物を大過剰の水で洗浄、濾過し、濾液の比電導度が原水の比電導度+50μS/cm以下となるまで水洗することによって、ε型銅フタロシアニン顔料のウエットケーキを得た。ウエットケーキを90℃で24時間送風乾燥させ、粗製フタロシアニン(C−2)を得た。
【0099】
(調整例3)[粗製フタロシアニン(C−3)の調整]
FASTOGEN Blue RF(DIC株式会社製α型銅フタロシアニン顔料)270部、FASTOGEN Blue AE−8(DIC株式会社製ε型銅フタロシアニン顔料)15部、比較顔料誘導体(B’−1)15部、粉砕した塩化ナトリウム(日本食塩製造株式会社製)2400部、およびジエチレングリコール(三菱化学株式会社製)450部を双腕型ニーダー(株式会社井上製作所製)に仕込み、120〜130℃で6時間混練した。得られた内容物を大過剰の水で洗浄、濾過し、濾液の比電導度が原水の比電導度+50μS/cm以下となるまで水洗することによって、ε型銅フタロシアニン顔料のウエットケーキを得た。ウエットケーキを90℃で24時間送風乾燥させ、粗製フタロシアニン(C−3)を得た。
[実施例1]
【0100】
粗製フタロシアニン(C−1)85部、顔料誘導体(B−1)5部、アクリル樹脂として特開2013−228714号公報記載の重合体(B−5)10部、粉砕した塩化ナトリウム(日本食塩製造株式会社製)1000部、およびジエチレングリコール(三菱化学株式会社製)160部を双腕型ニーダー(株式会社井上製作所製)に仕込み、80〜90℃で12時間混練した。得られた内容物を大過剰の水で洗浄、濾過し、濾液の比電導度が原水の比電導度+20μS/cm以下となるまで水洗することによってウエットケーキを得た。得られたウエットケーキをビーカーに移し、2%塩酸(ダイキン工業株式会社製)水溶液3000部を加え、攪拌分散してスラリーとし、70℃で1時間攪拌後、濾過、水洗し、ウエットケーキを得た。得られたウエットケーキをビーカーに移し、室温の水3000部を加え、攪拌分散してスラリーとした。引き続き、平均置換基数0.8の銅フタロシアニンスルホン酸誘導体(DIC株式会社製)5部の水酸化ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)水溶液を前記顔料スラリー中に添加し、1時間攪拌後、塩酸(ダイキン工業株式会社製)を添加してスラリーのpHを7まで戻し、銅フタロシアニンスルホン酸誘導体を顔料の表面に析出させた。そのまま1時間保持後、濾過、温水洗浄、乾燥、粉砕し、青色有機顔料組成物(D−1)を得た。
【0101】
このようにして得られた青色有機顔料組成物(D−1)20部をポリビンに入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(ダイセル化学工業株式会社製)110部、DISPERBYK LPN21116(ビックケミー株式会社製)14部、0.3−0.4mmφセプルビーズ(サンゴバン株式会社製)を加え、ペイントコンディショナー(東洋精機株式会社製)で4時間分散し、顔料分散液を得た。この顔料分散液75.00部とポリエステルアクリレート樹脂(アロニックスM7100、東亜合成化学工業株式会社製)5.50部、ジペンタエリスレートヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、日本化薬株式会社製)5.00部、ベンゾフェノン(KAYACURE BP−100、日本化薬株式会社製)1.00部、ユーカーエステルEFP(ダウケミカル株式会社製)13.5部を分散攪拌機で攪拌し、孔径1.0μmのフィルターで濾過し、カラーレジストを得た。このカラーレジストスピンコーターにより50mm×50mm、1mmのガラス基板上に塗布し、90℃で20分間予備乾燥して塗膜を形成させた。次いで、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を0.5%の炭酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)水溶液中で洗浄し、230℃で60分間焼成することでカラーフィルタとした。
【0102】
実施例1で得られたカラーフィルタを用いて、230℃焼成前後の輝度差ΔYをMCPD−3000(大塚電子株式会社製)で測定したところ、ΔYは−0.04であった。
[実施例2]
【0103】
実施例1の粗製フタロシアニン(C−1)に変えて、粗製フタロシアニン(C−2)を用いた以外は実施例1と同様にして、青色有機顔料組成物(D−2)を得た。それを用いてカラーフィルタとし、230℃焼成前後の輝度差ΔYをMCPD−3000(大塚電子株式会社製)で測定したところ、ΔYは−0.03であった。
[実施例3]
【0104】
実施例1の粗製フタロシアニン(C−1)に変えて、粗製フタロシアニン(C−3)を、顔料誘導体(B−3)に変えて、顔料誘導体(B−1)を用いた以外は実施例1と同様にして、青色有機顔料組成物(D−3)を得た。それを用いてカラーフィルタとし、230℃焼成前後の輝度差ΔYをMCPD−3000(大塚電子株式会社製)で測定したところ、ΔYは−0.06であった。
[実施例4]
【0105】
実施例1の粗製フタロシアニン(C−1)に変えて、粗製フタロシアニン(C−3)を、顔料誘導体(B−3)に変えて、顔料誘導体(B−2)を用いた以外は実施例1と同様にして、青色有機顔料組成物(D−4)を得た。それを用いてカラーフィルタとし、230℃焼成前後の輝度差ΔYをMCPD−3000(大塚電子株式会社製)で測定したところ、ΔYは−0.07であった。
[実施例5]
【0106】
実施例1の粗製フタロシアニン(C−1)に変えて、粗製フタロシアニン(C−3)を用いた以外は実施例1と同様にして、青色有機顔料組成物(D−5)を得た。それを用いてカラーフィルタとし、230℃焼成前後の輝度差ΔYをMCPD−3000(大塚電子株式会社製)で測定したところ、ΔYは−0.08であった。
[実施例6]
【0107】
実施例1の顔料誘導体(B−3)に変えて、比較顔料誘導体(B’−1)を用いた以外は実施例1と同様にして、青色有機顔料組成物(D−6)を得た。それを用いてカラーフィルタとし、230℃焼成前後の輝度差ΔYをMCPD−3000(大塚電子株式会社製)で測定したところ、ΔYは−0.14であった。
[実施例7]
【0108】
実施例1の粗製フタロシアニン(C−1)に変えて、粗製フタロシアニン(C−2)を、顔料誘導体(B−3)に変えて比較顔料誘導体(B’−1)を用いた以外は実施例1と同様にして、青色有機顔料組成物(D−7)を得た。それを用いてカラーフィルタとし、230℃焼成前後の輝度差ΔYをMCPD−3000(大塚電子株式会社製)で測定したところ、ΔYは−0.13であった。
[実施例8]
【0109】
実施例1の粗製フタロシアニン(C−1)に変えて、粗製フタロシアニン(C−2)を、顔料誘導体(B−3)に変えて顔料誘導体(B−4)を用いた以外は実施例1と同様にして、青色有機顔料組成物(D−8)を得た。それを用いてカラーフィルタとし、230℃焼成前後の輝度差ΔYをMCPD−3000(大塚電子株式会社製)で測定したところ、ΔYは−0.08であった。
[実施例9]
【0110】
実施例1の粗製フタロシアニン(C−1)に変えて、粗製フタロシアニン(C−2)を、顔料誘導体(B−3)に変えて顔料誘導体(B−5)を用いた以外は実施例1と同様にして、青色有機顔料組成物(D−9)を得た。それを用いてカラーフィルタとし、230℃焼成前後の輝度差ΔYをMCPD−3000(大塚電子株式会社製)で測定したところ、ΔYは−0.05であった。
【0111】
(比較例1)
実施例1の粗製フタロシアニン(C−1)に変えて、粗製フタロシアニン(C−3)を、顔料誘導体(B−3)に変えて比較顔料誘導体(B’−1)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較青色有機顔料組成物(D’−1)を得た。それを用いてカラーフィルタとし、230℃焼成前後の輝度差ΔYをMCPD−3000(大塚電子株式会社製)で測定したところ、ΔYは−0.18であった。
【0112】
(比較例2)
実施例1の粗製フタロシアニン(C−1)に変えて、粗製フタロシアニン(C−3)を、顔料誘導体(B−3)に変えて比較顔料誘導体(B’−2)を用いた以外は実施例1と同様にして、比較青色有機顔料組成物(D’−1)を得た。それを用いてカラーフィルタとし、230℃焼成前後の輝度差ΔYをMCPD−3000(大塚電子株式会社製)で測定したところ、ΔYは−0.20であった。
【0113】
上記合成例1〜7のまとめを表8に、実施例1〜9および比較例1〜2の評価結果を表9に示した。
【0114】
【表8】
【0115】
【表9】
【0116】
上記表9の実施例1〜7と、比較例1との対比および、実施例8、9と比較例2の対比から分かる通り、顔料誘導体(B)として、電界脱離イオン化質量分析におけるN=3〜8の顔料誘導体の強度比の合計が、N=1〜8の顔料誘導体の強度比の合計の30%以下であるものを使用したほうが、焼成前後の輝度差ΔYが格段に小さく、劇的に耐熱性の高い有機顔料組成物が得られていることは明白である。また、α型銅フタロシアニン顔料からε型銅フタロシアニンを調整する際に使用する顔料誘導体と、ε型銅フタロシアニンから青色有機顔料組成物を合成する際に使用する顔料誘導体の、両者をN=3〜8の顔料誘導体の強度比の合計が30%以下の顔料誘導体(B)としても良いし、片方のみとしても格別に耐熱性の高い有機顔料組成物が得られる。