【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年7月8日 http://ieeexplore.ieee.org/xpl/login.jsp?tp=&arnumber=6348794&url=http%3A%2F%2Fieeexplore.ieee.org%2Fstamp%2Fstamp.jsp%3Ftp%3D%26arnumber%3D6348794
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2012 IEEE Antennas and Propagation Society International Symposium(APSURSI),Chicago,Illinois USA,July 8−14,2012
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 THE JAPAN SOCIETY OF APPLIED PHYSICS,Extended Abstracts of the 2012 International Conference on Solid State Devices and Materials,Kyoto,(CD−ROM、USBメモリ),平成24年9月25日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年7月8日 http://ieeexplore.ieee.org/xpl/login.jsp?tp=&arnumber=6348794&url=http%3A%2F%2Fieeexplore.ieee.org%2Fstamp%2Fstamp.jsp%3Ftp%3D%26arnumber%3D6348794
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記各アンテナと前記選択部との間で送受信用の信号を伝送する線路として、所定値以上のインピーダンスを有するマイクロストリップ伝送線路が前記調整部として設けられている、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の異常組織検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係るアンテナアレイ装置及び異常組織検出装置について、乳癌を検出する乳癌センサを例に、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1について、説明する。
【0022】
まず、癌組織を検出する手法について
図1を参照して説明する。
【0023】
まず、
図1に模式的に示すように、生体表面に複数のアンテナA
1〜A
4を一定間隔で配置する。
【0024】
続いて、アンテナA
1からマイクロ波のインパルス信号を放射する。放射されたマイクロ波の一部は、生体内に伝播する。一般に、癌組織CAは、通常の生体組織に比して、5〜10倍程度の高い誘電率を有することが知られている。したがって、癌組織CAが存在する場合には、誘電率の異なる領域の界面、即ち、癌組織CAの表面で、マイクロ波が反射され、アンテナA
2〜A
4で受信される。
【0025】
ここで、マイクロ波のインパルス信号を放射してからアンテナA
2が反射波を受信するまでの時間をT
12[s]とすると、T
12・c(c:生体中の光の速度)が、マイクロ波のインパルス信号の行程距離となる。
【0026】
従って、癌組織CAは、アンテナA
1とA
2を焦点とし、アンテナA
1とA
2からの距離の和がT
12・cとなる楕円E
12上に位置することになる。
【0027】
アンテナA
3〜A
4が受信したマイクロ波についても同様の処理を行い、複数の楕円E
12〜E
14の交点を求めることにより、癌組織CAの位置を求めることができる。
【0028】
さらに、送信用のアンテナをA
2に切替て、アンテナA
2からマイクロ波を放射し、これをアンテナA
1,A
3、A
4で受信して、同様の処理を行う。以後、送信アンテナをA
3、A
4に順次切替ながら、マイクロ波を放射し、他のアンテナで反射波を受信し、同様の処理を行うことにより、癌組織CAの位置をより正確に特定することが可能となる。
【0029】
以下では、各アンテナA
kにおいて、送信用として選択されたアンテナをA
mとし、受信用として選択されたアンテナをA
nとする。
【0030】
なお、上述の例では、理解を容易にするため、2次元で説明したが、実際は、3次元で上述の処理を行うことになる。
【0031】
次に、このような手法を用いて、癌組織の有無及び位置を判別する癌検出装置10について、説明する。
【0032】
癌検出装置10は、
図2に示すように、本体11と、表示装置12とを備える。
【0033】
本体11には、
図3に示すように、アンテナアレイ13と、スイッチ回路14と、信号処理部15とが積層配置されている。
【0034】
アンテナアレイ13では、
図4に示すように、複数のアンテナA
k(k=1〜16)が4×4のマトリクス状に配列されている。
図4は、アンテナアレイ13を生体側から見ている。このアンテナアレイ13の各アンテナA
1〜A
16が、マイクロ波のインパルス信号を送受信する。
【0035】
アンテナアレイ13は、一のアンテナA
mと他のアンテナA
nとの相対距離が同じとなる送受信用のアンテナの組み合わせ(A
m、A
n)でのマイクロ波のインパルス信号の受信環境が同じになるように形成されている。
【0036】
より具体的には、アンテナアレイ13では、複数のダミーのアンテナB
1〜B
20がさらに設けられている。複数のダミーのアンテナB
1〜B
20は、各アンテナA
1〜A
16とインピーダンスが等価となる。例えば、各アンテナA
1〜A
16とそのアンテナに接続するスイッチ回路14のCMOS回路を含む全体の回路のインピーダンスが50Ωであるとすれば、アンテナB
1〜B
20を含む回路全体のインピーダンスも50Ωに設定される。
【0037】
複数のダミーのアンテナB
1〜B
20は、複数のアンテナA
1〜A
16の周囲を囲むように配列されている。ダミーのアンテナB
1〜B
20により、アンテナA
1〜A
4、A
5、A
8、A
9、A
12、A
13〜A
16についても、アンテナA
6、A
7、A
10、A
11と同じように、四方がアンテナに囲まれた状態となる。
【0038】
図3に戻り、選択部としてのスイッチ回路14は、半導体スイッチング素子を用いた半導体スイッチ回路である。スイッチ回路14は、アンテナアレイ13と信号処理部15との間に設けられている。スイッチ回路14は、信号処理部15の制御の下、送受信を行うアンテナ(A
m、A
n)の切替えを行う。より具体的には、スイッチ回路14は、複数のアンテナA
1〜A
16のうちのマイクロ波のインパルス信号を送信する一のアンテナA
mと、一のアンテナA
mから送信されたインパルス信号を受信する他のアンテナA
nとから成る送受信用のアンテナの組み合わせ(A
m、A
n)を選択する。
【0039】
信号処理部15はコンピュータである。コンピュータはCPU(Central Processing Unit)及びメモリを有する。信号処理部15は、CPUがメモリに格納されたプログラムを実行することにより、その機能が実現される。
【0040】
信号処理部15は、受信したマイクロ波の電気信号に基づいて、生体中の癌組織CAの有無を判別するための信号処理を行う。信号処理部15は、マイクロ波の送信信号をアンテナアレイ13に出力するとともに、そのマイクロ波の受信信号をアンテナアレイ13から入力する。また、信号処理部15は、スイッチ回路14を制御するための制御信号をスイッチ回路14に出力している。マイクロ波の送信信号、受信信号の入出力と、制御信号の出力とにより、信号処理部15は、アンテナアレイ13のいずれかのアンテナA
mから送信されるマイクロ波の電気信号を出力するとともに、アンテナアレイ13のいずれかのアンテナA
nで受信されたマイクロ波の電気信号を入力する。
【0041】
信号処理部15は、スイッチ回路14を制御して、送受信用のアンテナA
kの組み合わせを変えながら、マイクロ波のインパルス信号を送受信し、他のアンテナA
nで受信されたマイクロ波のインパルス信号に対する信号処理を行う。
【0042】
図5Aには、アンテナアレイ13が生体30にセットされる様子が示されている。
図5Aに示すように、癌検出装置10では、アンテナアレイ13と生体30との間には、インピーダンス整合層としての誘電膜20が挿入されている。アンテナアレイ13は、誘電膜20及び生体30の皮膚31を介して、生体30の脂肪層32と接する。
【0043】
伝送線路理論より、誘電率、真性インピーダンスをそれぞれε
1、η
1とする誘電体層1、誘電率、真性インピーダンスをそれぞれε
2、η
2とする誘電体層2、誘電率、真性インピーダンスをそれぞれε
3、η
3とする誘電体層3からなる多層構造があるとき、厚さdの誘電体層2における電波の波長をλ
2、伝搬定数をβ
2とすると、実効的な電波の反射係数Γ
effは次式で表される。
【0044】
【数1】
ここで、d=λ
2/4とすると、
【数2】
のとき、
【数3】
となり、反射が最小、透過が最大になる。このとき
【数4】
であるため、
【数5】
となり、誘電体層3と誘電体層1の真性インピーダンスが等しいとき、反射は無くなる。
【0045】
ここで、2つの実施例1、2について考える。実施例1では、誘電体層1、誘電体層2、誘電体層3をそれぞれ、アンテナ基板(ε
1=10)、インピーダンス整合層、皮膚(ε
3=28)とする。周波数を10GHzとし、波長を3cmとすると、誘電体層2における波長λ
2は、3cm/√(ε
2)となる。インピーダンス整合層の誘電率は
【数6】
となり、ε
2=19が得られる。
【0046】
実施例2では、誘電体層1、誘電体層2、誘電体層3をそれぞれ、インピーダンス整合層(e
1)、皮膚(e
2=28)、脂肪(e
3=5.2)とする。周波数を10GHz、波長を3cmとすると、誘電体層2における波長λ
2は3cm/√(ε
2)となる。皮膚の誘電率は、
【数7】
となり、ε
1=150が得られる。
【0047】
このように、誘電体の構造によって値が異なる。3次元電磁界シミュレーションを用いて最適値を求めた結果を、
図5Bに示す。
図5Bには、散乱パラメータ(反射係数S
11及び透過係数S
21)の周波数特性が示されており、上側の曲線が反射係数S
11を示しており、下側の曲線が透過係数S
21を示している。誘電膜20の誘電率に応じて、散乱パラメータ(反射係数S
11及び透過係数S
21)の周波数特性は大きく変化する。このように、誘電膜20をアンテナと皮膚との間に挿入することで、S
11を−10dB以下にすることができる。このことは誘電膜20の界面で反射する電波の強さが−10dB以下、すなわち反射にともなって生じる定在波の最大最小の比が2以下に抑制できることを示している。一方、高周波側の透過係数S
21は、電波が誘電膜20を透過する程度を示しており、誘電率を上げるとS
21が下がるため、反射を最小にする散乱パラメータS
11が広い帯域にわたって、−10dB以下になるインピーダンス整合層の最適誘電率はε
2=20となる。このときのインピーダンス整合層の厚さは1mmである。ただし、このとき、皮膚の誘電率をε
2=35で計算している。
【0048】
このことから、誘電膜20の実効誘電率は、皮膚組織と脂肪組織の間の値をとることがわかる。これにより、アンテナA
mから発せられるマイクロ波のインパルス信号の伝送効率が向上する。皮膚の誘電率を28程度とし、脂肪組織の誘電率を5.2とすると、誘電膜20の実効誘電率を、例えば10〜20とすることができる。
【0049】
また、インピーダンス整合層、すなわち誘電膜20の厚さは、直接波が受信された後に、腫瘍ターゲットからの散乱波が到着するようにし、受信信号間の干渉を無くする。このためには、インピーダンス整合層の厚さをt、送受信アンテナ間距離d、パルス幅をT、実効位相速度をν
effとすると、ピタゴラスの定理から、
【数8】
を満足するtを求める。すなわち、インピーダンス整合層の厚さtはインパルス信号の幅に実効位相速度をかけた値の1/2より大きく、2倍より小さい範囲が適切である。あまり大きくすると、測定時間が長くなるため、適切ではない。
【0050】
実施例として、例えば、T=100psとし、光速をc=3×10
8m/sとし、誘電膜20の誘電率を28として、実効位相速度を5.7×10
7m/sとすると、インピーダンス整合層の厚さtは3〜6mmの範囲が適切である。
【0051】
図6には、散乱パラメータ(反射係数S
11及び透過係数S
21)の周波数特性が示されている。
図6のグラフでは、上側の曲線が反射係数S
11を示しており、下側の曲線が透過係数S
21を示している。
図6に示すように、誘電膜20の厚さに応じて、散乱パラメータ(反射係数S
11及び透過係数S
21)の周波数特性は大きく変化する。
【0052】
S
11は、反射の度合いを示すパラメータであるから、できるだけ小さいほうがよい。ひとつの目安として、反射にともなって生じる定在波の大きさである定在波比2以下を基準とする。これをデシベル表示すると、−10dBとなり、これ以下であれば反射が小さいといえる。この観点から
図6の上の方のデータを見ると、d=1mmの場合、3〜10GHzの帯域すべてにおいて、−10dB以下であるから、良好な特性と判断できる。
【0053】
一方、
図6の下の方の曲線は、透過係数S
21を表しており、膜厚が厚くなると、S
21が大きくなっている。これは減衰が少なく、信号が伝送しやすいことを表しており、好ましいことではあるが、上述のS
11が悪化しており、ほとんど信号は伝送されないので、厚い膜は採用できない。このことからも、d=1mmが最適と判断される。
【0054】
このように、誘電膜20をアンテナと皮膚との間に挿入することで高周波側の透過係数S
21が改善されているが、誘電膜20の厚みdが5mm以上になると、ほとんどの周波数範囲で反射していることがわかる。
【0055】
なお、
図7に示すように、誘電膜20は、誘電膜20Aと誘電膜20Bの2層構成であってもよい。誘電膜を2層にすると、散乱パラメータ(反射係数S
11及び透過係数S
21)の周波数特性は、さらに良好なものになる。
【0056】
ここで、実施例1として、誘電率10.2の誘電膜20Aと誘電率38の誘電膜20Bを用いてインピーダンス整合層を形成する場合を考える。この場合、アンテナアレイ13の誘電率が10.2であることから、誘電膜20Aの誘電率を、これに合わせる。また、皮膚31の誘電率が28であるので、それに近い物質の38の誘電率を選択する。このとき、膜厚を最適化することにより整合条件を見つける。
【0057】
図8Aに示すように、誘電膜20Aの膜厚が1mm、誘電膜20Bの膜厚が4mmのときに、S
11が3.9〜11GHzの帯域で−10dB以下となる反射の少ない条件を得ることができる。このとき、透過係数S
21も帯域を確保している。
【0058】
インピーダンス整合層を2層にすることで、最適化の自由度を向上することができ、その時の構造はアンテナ基板に接する側の誘電率ε
Aはアンテナ基板に近い値を、皮膚に接する側の誘電率ε
Bは皮膚に近い誘電率を選択する。このときの平均的な値は
【数9】
となり、インピーダンス整合層の実効的な誘電率は皮膚と脂肪の値の間の値となる。
【0059】
実施例2として、
図8Bに、2層構造の全膜厚が10mmの場合について、シミュレーションした結果を示す。誘電膜20Aの膜厚が1mm、誘電膜20Bの膜厚が9mmのときに、S
11が4〜11GHzの帯域で−10dB以下となる反射の少ない条件を得ることができる。
【0060】
図9には、幾つかのアンテナの組み合わせで受信された受信信号の一例が示されている。このグラフには、アンテナA
1を送信用のアンテナA
mとし、アンテナA
5を受信用のアンテナA
nとした場合の受信信号Tx1_Rx5と、アンテナA
7を送信用のアンテナA
mとし、アンテナA
11を受信用のアンテナA
nとした場合の受信信号Tx7_Rx11と、アンテナA
11を送信用のアンテナA
mとし、アンテナA
15を受信用のアンテナA
nとした場合の受信信号Tx11_Rx15と、が示されている。
図9に示すように、受信信号Tx1_Rx5と、受信信号Tx7_Rx11と、受信信号Tx11_Rx15とは、構造対称性から、信号波形が良く一致している。
【0061】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、マイクロ波のインパルス信号を送信する一のアンテナA
mとインパルス信号を受信する他のアンテナA
nとの相対距離が同じである送受信用のアンテナの組み合わせ(A
m、A
n)では、マイクロ波のインパルス信号の受信環境が同じになるように形成されている。これにより、
図9に示すように、各アンテナA
nでの受信信号を同じとすることができるので、受信された複数の受信信号に基づいて、生体内の癌組織CAを精度良く検出することができる。この結果、マイクロ波のインパルス信号の受信効率を向上することができる。
【0062】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について、説明する。
【0063】
本実施の形態では、アンテナアレイ13における各アンテナA
k、ダミーのアンテナB
1〜B
20の配列が、上記実施の形態1と同じである。
【0064】
この実施の形態では、送受信アンテナの組み合わせは、アンテナ間の相対距離を同じくする2組の送信アンテナ及び受信アンテナの組み合わせである。例えば、アンテナA
kのマトリックス座標を、
図10に示すように、(1,1)〜(4,4)とする。
【0065】
ここで、生体表面に一定間隔で行・列のマトリクス状に配置された複数のアンテナについて、例えば、マトリクス座標(1,1)、(3,1)に対応する送信、受信アンテナの組み合わせを第1の組とし、マトリクス座標(1,2)、(3,2)に対応する送信、受信アンテナの組み合わせを第2の組とする。
【0066】
信号処理部15は、第1の組の送信アンテナ(A
1(1,1))から送信したインパルス信号を第1の組の受信アンテナ(A
9(3,1))で受信して得られる信号から、第2の組の送信アンテナ(A
2(1,2))から送信したインパルス信号を第2の組の受信アンテナ(A
10(3,2))で受信して得られる信号を引き算する。
【0067】
図11(A)に示すように、送信アンテナ(A
1(1,1))から受信アンテナ(A
9(3,1))に至る直接波は、送信アンテナ(A
2(1,2))から受信アンテナ(A
10(3,2))に至る直接波とほぼ同一である。このため、引き算により得られる信号は、腫瘍ターゲットで散乱された成分だけからなる信号(
図11(B)参照)となる。信号処理部15は、これを用いて共焦点画像処理を行って、ターゲット位置を計算する。
【0068】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について、説明する。
【0069】
図12(A)には、本実施の形態2に係る癌検出装置10の本体11の内部構造が示されている。
図12(A)に示すように、癌検出装置10は、加速度センサ17をさらに備えている。また、アンテナアレイ13が形成される平面をXY平面とする。
【0070】
図12(B)に示すように、癌検出装置10では、本体11をX軸方向、Y軸方向にΔX、ΔYずつずらしながら、皮膚の上に接触させて複数回検出が行われる。これによって、案手難の数を見かけ上増やして解像度を上げることができる。加速度センサ17は、各アンテナA
kの位置を検出するためのセンサとして用いられる。信号処理部15は、加速度センサ17の出力により、検出時の各アンテナA
kの位置を算出する。このようにすれば、検出の度に、ターゲットTAと各アンテナとの位置関係を変えて、実質的に、測定点の数を増やすことができる。これにより、検出精度を向上することができる。
【0071】
なお、本実施の形態では、加速度センサ17に限らず、各アンテナA
kの位置を検出するためのセンサであれば、任意のセンサを用いることもできる。
【0072】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について、説明する。
【0073】
本実施の形態では、アンテナアレイ13における各アンテナA
kの配列が、上記実施の形態1と異なる。また、アンテナアレイ13には、ダミーのアンテナB
1〜B
20は設けられていない。
【0074】
図13には、アンテナアレイ13におけるアンテナA
k(k=1〜16)の配列が示されている。
図13に示すように、このアンテナアレイ13では、各アンテナA
kが所定の距離だけ離隔して配置されている。各アンテナA
kの間隔は、縦がamm(例えば10mm程度)であり、横がbmm(例えば6mm程度)であるが、本発明はこの間隔に限定されない。
【0075】
より具体的には、このアンテナアレイ13では、各アンテナA
kが、千鳥足状に配置されている。このようにすれば、アンテナアレイ13における各アンテナA
kの間隔をさらに広げ、隣接するアンテナA
kからの電波のしみだしの影響を最小限に留めることができる。
【0076】
図14には、幾つかのアンテナの組み合わせで受信された受信信号の一例が示されている。このグラフでも、アンテナA
1を送信用アンテナとし、アンテナA
5を受信用アンテナとした場合の受信信号Tx1_Rx5と、アンテナA
7を送信用アンテナとし、アンテナA
11を受信用アンテナとした場合の受信信号Tx7_Rx11と、アンテナA
11を送信用アンテナとし、アンテナA
15を受信用アンテナとした場合の受信信号Tx11_Rx15と、が示されている。
図14に示すように、受信信号Tx1_Rx5と、受信信号Tx7_Rx11と、受信信号Tx11_Rx15とは、良く一致している。
【0077】
このように、本実施の形態でも、マイクロ波のインパルス信号を送信する一のアンテナA
mとインパルス信号を受信する他のアンテナA
nの相対距離が同じ送受信用のアンテナの組み合わせ(A
m、A
n)では、隣接するアンテナA
kを離隔することにより、マイクロ波のインパルス信号の受信環境が同じになるように形成されている。これにより、
図8に示すように、癌組織CAがない状態での各アンテナA
kでの受信信号を同じとすることができるので、その受信信号から、生体30内の癌組織CAを精度良く検出することができる。この結果、マイクロ波のインパルス信号の受信効率を向上することができる。
【0078】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について、説明する。
【0079】
本実施の形態では、アンテナアレイ13における各アンテナA
kの配列が、上記実施の形態1と異なる。また、アンテナアレイ13には、ダミーのアンテナB
1〜B
20は設けられていない。
【0080】
なお、
図15に示すように、アンテナアレイ13では、各アンテナA
1〜A
16の間に吸収体40が挿入されている。このような吸収体40としては、例えばフェライトの薄膜を用いることができる。このようにすれば、各アンテナA
kからの電波のしみだしは、吸収体40によって吸収され、各アンテナで受信される受信信号への影響を最小限に留めることができる。
【0081】
このように、本実施の形態でも、マイクロ波のインパルス信号を送信する一のアンテナA
mとインパルス信号を受信する他のアンテナAnの相対距離が同じ送受信用のアンテナの組み合わせ(A
m、A
n)では、隣接するアンテナA
k間に吸収体40を挿入することにより、マイクロ波のインパルス信号の受信環境が同じになるように形成されている。これにより、癌組織CAがない状態での各アンテナA
kでの受信信号を同じとすることができるので、その受信信号から、生体30内の癌組織CAを精度良く検出することができる。この結果、マイクロ波のインパルス信号の受信効率を向上することができる。
【0082】
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6について、説明する。
【0083】
図16には、アンテナA
kと、アンテナA
kに接続されたスイッチ回路14のスイッチ70とを接続する回路構成が示されている。
図16に示すように、各アンテナA
kとスイッチ70との間で信号を伝送する伝送線路60が設けられている。伝送線路60は、インピーダンスが所定値以上となっている。伝送線路60は、十分に高インピーダンスとなっている。これにより、スイッチ70がオンとなっていてもオフとなっていても、アンテナA
kにおけるインピーダンスはほぼ一定であるとみなすことができる。
【0084】
このように、本実施の形態でも、マイクロ波のインパルス信号を送信する一のアンテナA
mとインパルス信号を受信する他のアンテナA
nの相対距離が同じ送受信用のアンテナの組み合わせ(A
m、A
n)では、アンテナA
kとスイッチ70との間を高インピーダンスな伝送線路60で接続して、アンテナA
kのインピーダンスを安定させることにより、各アンテナA
kでマイクロ波のインパルス信号の受信環境が同じになるように形成されている。これにより、癌組織CAがない状態での各アンテナA
kでの受信信号を同じとすることができるので、その受信信号から、生体30内の癌組織CAを精度良く検出することができる。この結果、マイクロ波のインパルス信号の受信効率を向上することができる。
【0085】
(実施の形態7)
次に、本発明の実施の形態7について、説明する。
【0086】
図17には、本実施の形態に係る本体11の断面が示されている。
図17に示すように、本実施の形態では、アンテナアレイ13と、スイッチ回路14との間にアンテナアレイ13をカバーする吸収体膜16がさらに形成されている。吸収体膜16は、例えばフェライトである。
【0087】
この吸収体膜16により、アンテナA
kから発せられたマイクロ波が、スイッチ回路14を流れる信号に混入するのを防止することができる。
【0088】
(実施の形態8)
次に、本発明の実施の形態8について、説明する。
【0089】
本実施の形態では、信号処理部15における生体の癌組織CAの検出方法について説明する。
【0090】
図18には、信号処理部15の処理の流れが示されている。
図18に示すように、まず、信号処理部15は、相対距離が同じ送受信用のアンテナの全ての組み合わせ(A
m、A
n)でマイクロ波のインパルス信号を送受信し、受信信号をそれぞれ取得する(ステップS1)。
【0091】
続いて、信号処理部15は、取得した複数の受信信号の平均信号パターンを基準信号として算出する(ステップS2)。
【0092】
図19に示すように、相対距離が同じ送受信用のアンテナの組み合わせ(A
m、A
n)として、(A
1、A
5)、(A
6、A
10)、(A
5、A
9)などと相対距離が同じアンテナA
kの組み合わせ(A
m、A
n)では、癌組織CAがなければ、受信信号のパターンは同じになる。
【0093】
また、生体30には、受信信号を変化させる癌組織CAが含まれている場合がある。癌組織CAがあると、各アンテナA
kで受信される受信信号の信号パターンは変化する。各アンテナA
kで受信される受信信号が、癌組織CAによってどのように変化するかは、アンテナA
kと癌組織CAとの位置関係によって決まる。例えば、アンテナA
5を送信用とし、アンテナA
9を受信用とした場合の受信信号における癌組織CAの成分の出現位置と、アンテナA
6を送信用としアンテナA
10を受信用とした場合の受信信号における癌組織CAの成分の出現位置とは、それぞれ異なっている。
【0094】
このように、各アンテナA
kで受信される受信信号における癌組織CAの成分の出現位置はそれぞれ異なるため、各アンテナA
kで受信された受信信号の平均をとれば、受信信号から、癌組織CAの成分を抑圧することができる。本実施の形態では、癌組織CAの成分が抑圧され、かつ、生体30を用いて実際に測定された受信信号を基準信号として、癌組織CAの成分を検出する。
【0095】
図18に戻り、続いて、信号処理部15は、基準信号とアンテナアレイ13の各アンテナA
kで受信されたマイクロ波のインパルス信号との違いに基づいて、生体30内の癌組織CAを検出する(ステップS3)。ステップS3終了後、信号処理部15は、処理を終了する。
【0096】
このように、本実施の形態によれば、相対距離が同じ各アンテナA
kの組み合わせでそれぞれ受信される受信信号の平均パターンを基準とする。このようにすれば、生体30内に癌組織CAが有ると無いとに関わらず、その生体30で観測される癌組織CAがなく、かつ、生体30の特性に沿った受信信号の信号パターンを実質的に得ることができる。この結果、癌組織CAを高精度に検出することができる。
【0097】
(実施の形態9)
次に、本発明の実施の形態9について、説明する。
【0098】
図20、
図21を参照して、実際の臨床において、乳がんを検出するための、もうひとつの基準信号の作成方法について説明する。
図19又は
図10において、相対距離が同じ送受信用のアンテナの組み合わせとして、(A
5、A
9)、(A
6、A
10)、(A
7、A
11)などのように、相対距離が同じアンテナA
kの組み合わせ(A
m、A
n)があるとする。例えば、(A
5、A
9)と(A
6、A
10)の組み合わせで、
図20(A)、
図20(B)に示すように、一方の組み合わせが、乳がんターゲットが真ん中にあり、もう一方の組み合わせがd
m=11.6mmだけ離れていた場合、それぞれ受信された受信波形の差分(
図21(A)参照)をとると、直接波は、構造対称性から等しいため消滅する。よって、乳がんターゲットに散乱されて遅れた信号だけが位置関係の違いから差分信号(
図21(B)参照)として残る。これによって、平均化しなくても、2組の受信信号の差分によって、散乱信号だけを作ることができる。この方式は、基準信号を平均ではなく、差分で形成するために、コモンノイズを抑制することができ、信号雑音比が向上できる。2組4個の送受信アンテナの組み合わせをアンテナアレイについて行い、その差分信号を用いて、共焦点画像することにより、比較的簡単なアルゴリズムでイメージングできる。
【0099】
上記各実施の形態では、アンテナの数を16個としたが、本発明はこれには限られず、アンテナの数は任意でよい。
【0100】
本発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。