特許第6198198号(P6198198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6198198高分子電解質組成物、電解質膜、膜電極接合体、燃料電池及び高分子電解質膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198198
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】高分子電解質組成物、電解質膜、膜電極接合体、燃料電池及び高分子電解質膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/02 20060101AFI20170911BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20170911BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20170911BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20170911BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20170911BHJP
   H01B 1/10 20060101ALI20170911BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20170911BHJP
   C08L 71/08 20060101ALI20170911BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   C08L101/02
   H01M8/02 P
   H01M8/10
   H01B1/06 A
   H01B1/08
   H01B1/10
   H01B1/12 Z
   C08L71/08
   C08G65/40
【請求項の数】12
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2015-500367(P2015-500367)
(86)(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公表番号】特表2015-516475(P2015-516475A)
(43)【公表日】2015年6月11日
(86)【国際出願番号】KR2013002133
(87)【国際公開番号】WO2013137691
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2014年9月18日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0027059
(32)【優先日】2012年3月16日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、セオン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヘ ミ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヘ スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒュク
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ヨンチョル
(72)【発明者】
【氏名】リー、サンウー
(72)【発明者】
【氏名】ノー、テ ギュン
(72)【発明者】
【氏名】スン、キュンガ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドヨン
(72)【発明者】
【氏名】ミン、ミンキュ
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−206086(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/053297(WO,A1)
【文献】 特開2007−265926(JP,A)
【文献】 特開2004−164854(JP,A)
【文献】 特開2010−092839(JP,A)
【文献】 特表2012−506941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08G
C08K
H01B
H01M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1溶媒と、
前記第1溶媒とは異なる第2溶媒と、
前記第1溶媒および前記第2溶媒からなる混合溶媒に溶解する高分子と、
を含む高分子電解質組成物であって、
前記第1溶媒は、N、N'−ジメチルアセトアミド(N、N−dimethylacetamide、DMAc)、N−メチルピロリドン(N−methyl pyrrolidone、NMP)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)およびN、N−ジメチルホルムアミド(N、N−dimethylformamide、DMF)からなる群から選択される少なくともいずれか1つであり、
前記第2溶媒は、水であり、
前記第1溶媒と前記第2溶媒の重量比は、第2溶媒/第1溶媒で示す場合に5/95〜8/92の範囲であり、
前記高分子は、前記第1溶媒より前記第2溶媒と反応しやすい官能基を含み、
前記官能基は、−SOH、−SO、−COOH、−COO、−PO、−POおよび−PO2−2Mからなる群から選択される少なくともいずれか1つであり、
前記官能基のMは、金属性元素であり、
前記高分子は、親水性ブロックと疎水性ブロックを含むブロック型共重合体であり、
前記親水性ブロックは、下記化学式1で表される繰り返し単位を含むブロック型共重合体であり、
前記親水性ブロックの重量平均分子量は、1,000〜500,000(g/mol)であり、
前記疎水性ブロックは、下記化学式2で表される繰り返し単位を含むブロック型共重合体であり、
前記疎水性ブロックの重量平均分子量は、1,000〜500,000(g/mol)であり、
高分子電解質組成物は、前記第2溶媒と前記官能基とが反応して形成された親水性の複合体をさらに含むことを特徴とする、
高分子電解質組成物:
[化学式1]
[化学式2]
前記化学式1において、aおよびa'は0より大きい整数であり、a:a'は1000:1〜5:1であり、
mは1以上10、000以下の整数であり、
前記化学式1および2において、A、CおよびVは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して下記化学式1−1〜化学式1−3のうちいずれか1つで表され、
[化学式1−1]
[化学式1−2]
[化学式1−3]
前記化学式1−1〜1−3において、
は直接連結であるか、−C(Z)(Z)−、−CO−、−O−、−S−、−SO−および−Si(Z)(Z)−のうちいずれか1つであり、
およびZは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、水素、アルキル基、トリフルオロメチル基(−CF)およびフェニル基のうちいずれか1つであり、
およびSは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
bおよびcは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、0以上4以下の整数であり、
〜Sは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
d、e、fおよびgは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、0以上4以下の整数であり、
〜S10は、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
h、i、jおよびkは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、0以上4以下の整数であり、
前記化学式2において、
zおよびz'は、0より大きい整数であり、
z:z'は、1000:1〜5:1であり、
nは、1以上100、000以下の整数であり、
Uは、下記化学式2−1〜化学式2−4のうちいずれか1つで表され、
[化学式2−1]
[化学式2−2]
[化学式2−3]
[化学式2−4]
前記化学式2−1〜2−4において、
は、直接連結であるか、−CO−または−SO−であり、
qおよびrは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、0以上4以下の整数であり、
s、t、uおよびvは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、0以上4以下の整数であり、
wおよびxは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、0以上3以下の整数であり、
yは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、0以上4以下の整数であり、
〜Tは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、
少なくとも1つは、−SOH、−SO、−COOH、−COO、−PO、−POまたは−PO2−2Mであり、前記Mは金属性元素であり、
残りは、水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
前記化学式1および2において、
Bは、全フッ素系化合物または部分フッ素系化合物であるか、下記化学式3−1〜化学式3−3のうちいずれか1つで表され、
[化学式3−1]
[化学式3−2]
[化学式3−3]
前記化学式3−1〜3−3において、
〜Xは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、直接連結であるか、−CO−または−SO−であり、
は、直接連結またはC〜C60のアルキレン基であり、
〜Eは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
α、βおよびψは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、0以上4以下の整数であり、
εは、0以上3以下の整数であり、
は、直接連結であるか、−CO−または−SO−であり、
は、直接連結またはC〜C60のアルキレン基であり、
およびEは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
ζは、0以上3以下の整数であり、
θは、0以上4以下の整数であり、
は、直接連結であるか、−CO−または−SO−であり、
は、直接連結またはC〜C60のアルキレン基であり、
およびEは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
λは、0以上3以下の整数であり、
πは、0以上4以下の整数であり、
Wは、化学式1では下記化学式4で表される繰り返し単位であり、化学式2では下記化学式5で表される繰り返し単位であり、
[化学式4]
[化学式5]
前記化学式4において、m'は1、以上10、000以下の整数であり、AおよびUの定義は前記化学式1のAおよびUの定義と同一であり、
前記化学式5において、n'は、1以上100、000以下の整数であり、CおよびVの定義は前記化学式2のCおよびVの定義と同一である。
【請求項2】
前記第1溶媒は、前記疎水性ブロックより前記親水性の複合体をよく溶解することを特徴とする、
請求項1に記載の高分子電解質組成物。
【請求項3】
前記A、CおよびVは、互いに同一であるかまたは異なり、
からなる群から選択される少なくともいずれか1つであり、
前記RおよびRは、互いに同一であるかまたは異なり、独立してニトロ基(−NO)またはトリフルオロメチル基(−CF)であることを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載の高分子電解質組成物。
【請求項4】
前記Uは、
からなる群から選択される少なくともいずれか1つであり、
前記QおよびQは、互いに同一であるかまたは異なり、独立して−SOH、−SO、−COOH、−COO、−PO、−POまたは−PO2−2Mであり、前記Mは金属性元素であることを特徴とする、
請求項1から請求項までの何れか1項に記載の高分子電解質組成物。
【請求項5】
前記Bは、
からなる群から選択されるいずれか1つであり、
〜Yは、互いに同一であるかまたは異なり、独立して直接結合またはC〜C60のアルキレン基であり、
Wは、化学式1では下記化学式4で表される繰り返し単位であり、化学式2では下記化学式5で表される繰り返し単位であり、
[化学式4]
[化学式5]
前記化学式4において、m'は、1以上10、000以下の整数であり、AおよびUの定義は前記化学式1のAおよびUの定義と同一であり、
前記化学式5において、n'は、1以上100、000以下の整数であり、CおよびVの定義は前記化学式2のCおよびVの定義と同一であることを特徴とする、
請求項1から請求項までの何れか1項に記載の高分子電解質組成物。
【請求項6】
前記第1溶媒は、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)であり、
前記官能基は、−SOH又は−SOである、
請求項1から請求項までの何れか1項に記載の高分子電解質組成物。
【請求項7】
前記化学式1及び前記化学式2において、
A、C及びVは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して前記化学式1−1又は前記化学式1−2で表され、
前記化学式1−1又は前記化学式1−2において、
は、−CO−であり、
及びSは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、水素、重水素又はハロゲン基であり、
b及びcは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、1以上4以下の整数であり、
〜Sは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、水素、重水素又はヒドロキシ基であり、
d、e、f及びgは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、0以上4以下の整数であり、
Uは、前記化学式2−4で表され、
前記化学式2−4において、
は、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、
少なくとも1つは、−SOH又は−SOであり、
残りは、水素、重水素又はヒドロキシ基であり、
yは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、1以上4以下の整数である、
請求項1から請求項までの何れか1項に記載の高分子電解質組成物。
【請求項8】
及びSは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、水素、重水素又はヒドロキシ基であり、
d及びeは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、1以上4以下の整数であり、
f及びgは、0である、
請求項に記載の高分子電解質組成物。
【請求項9】
請求項1から請求項までの何れか一項に記載の高分子電解質組成物から形成されることを特徴とする、
電解質膜。
【請求項10】
カソード、アノード、および前記カソードとアノードとの間に位置する電解質膜を含む膜電極接合体であって、
前記電解質膜は、請求項に記載の電解質膜であることを特徴とする、
膜電極接合体。
【請求項11】
1つまたは2つ以上の請求項10に記載の膜電極接合体、及び、前記膜電極接合体同士の間に介在するバイポーラ板を含むスタックと、
燃料を前記スタックに供給する燃料供給部と、
酸化剤を前記スタックに供給する酸化剤供給部と、
を含むことを特徴とする、
高分子電解質型燃料電池。
【請求項12】
高分子を形成するステップと、
前記高分子、並びに、第1溶媒及び第2溶媒からなる混合溶媒を用いて高分子電解質組成物を製造するステップと、
前記高分子電解質組成物を用いて電解質膜を形成するステップと、
を含む高分子電解質膜の製造方法であって、
前記第1溶媒は、N、N'−ジメチルアセトアミド(N、N−dimethylacetamide、DMAc)、N−メチルピロリドン(N−methyl pyrrolidone、NMP)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)およびN、N−ジメチルホルムアミド(N、N−dimethylformamide、DMF)からなる群から選択される少なくともいずれか1つであり、
前記第2溶媒は、水であり、
前記第1溶媒と前記第2溶媒の重量比は、第2溶媒/第1溶媒で示す場合に5/95〜8/92の範囲であり、
前記高分子は、前記第1溶媒より前記第2溶媒と反応しやすい官能基を含み、
前記官能基は、−SOH、−SO、−COOH、−COO、−PO、−POおよび−PO2−2Mからなる群から選択される少なくともいずれか1つであり、
前記官能基のMは、金属性元素であり、
前記高分子は、親水性ブロックと疎水性ブロックを含むブロック型共重合体であり、
前記親水性ブロックは、下記化学式1で表される繰り返し単位を含むブロック型共重合体であり、
前記親水性ブロックの重量平均分子量は、1,000〜500,000(g/mol)であり、
前記疎水性ブロックは、下記化学式2で表される繰り返し単位を含むブロック型共重合体であり、
前記疎水性ブロックの重量平均分子量は、1,000〜500,000(g/mol)であり、
前記高分子、並びに、第1溶媒及び第2溶媒からなる混合溶媒を用いて高分子電解質組成物を製造するステップは、前記第2溶媒と前記官能基とが反応して、親水性の複合体が形成されるステップを含むことを特徴とする、
高分子電解質膜の製造方法:
[化学式1]
[化学式2]
前記化学式1において、aおよびa'は0より大きい整数であり、a:a'は1000:1〜5:1であり、
mは1以上10、000以下の整数であり、
前記化学式1および2において、A、CおよびVは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して下記化学式1−1〜化学式1−3のうちいずれか1つで表され、
[化学式1−1]
[化学式1−2]
[化学式1−3]
前記化学式1−1〜1−3において、
は直接連結であるか、−C(Z)(Z)−、−CO−、−O−、−S−、−SO−および−Si(Z)(Z)−のうちいずれか1つであり、
およびZは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素、アルキル基、トリフルオロメチル基(−CF)およびフェニル基のうちいずれか1つであり、
およびSは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
bおよびcは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数であり、
〜Sは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
d、e、fおよびgは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数であり、
〜S10は、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
h、i、jおよびkは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数であり、
前記化学式2において、
zおよびz'は、0より大きい整数であり、
z:z'は、1000:1〜5:1であり、
nは、1以上100、000以下の整数であり、
Uは、下記化学式2−1〜化学式2−4のうちいずれか1つで表され、
[化学式2−1]
[化学式2−2]
[化学式2−3]
[化学式2−4]
前記化学式2−1〜2−4において、
は、直接連結であるか、−CO−または−SO−であり、
qおよびrは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数であり、
s、t、uおよびvは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数であり、
wおよびxは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上3以下の整数であり、
yは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数であり、
〜Tは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して、
少なくとも1つは、−SOH、−SO、−COOH、−COO、−PO、−POまたは−PO2−2Mであり、前記Mは金属性元素であり、
残りは、水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
前記化学式1および2において、
Bは、全フッ素系化合物または部分フッ素系化合物であるか、下記化学式3−1〜化学式3−3のうちいずれか1つで表され、
[化学式3−1]
[化学式3−2]
[化学式3−3]
前記化学式3−1〜3−3において、
〜Xは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して直接連結であるか、−CO−または−SO−であり、
は、直接連結またはC〜C60のアルキレン基であり、
〜Eは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
α、βおよびψは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数であり、
εは、0以上3以下の整数であり、
は、直接連結であるか、−CO−または−SO−であり、
は、直接連結またはC〜C60のアルキレン基であり、
およびEは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
ζは、0以上3以下の整数であり、
θは、0以上4以下の整数であり、
は、直接連結であるか、−CO−または−SO−であり、
は、直接連結またはC〜C60のアルキレン基であり、
およびEは、互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
λは、0以上3以下の整数であり、
πは、0以上4以下の整数であり、
Wは、化学式1では下記化学式4で表される繰り返し単位であり、化学式2では下記化学式5で表される繰り返し単位であり、
[化学式4]
[化学式5]
前記化学式4において、m'は1、以上10、000以下の整数であり、AおよびUの定義は前記化学式1のAおよびUの定義と同一であり、
前記化学式5において、n'は、1以上100、000以下の整数であり、CおよびVの定義は前記化学式2のCおよびVの定義と同一である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、高分子電解質組成物、電解質膜、膜電極接合体および燃料電池に関し、高分子に対する溶解度特性に優れた高分子電解質組成物とそれを用いた電解質膜などに関する。本出願は2012年3月16日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2012−0027059号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池(以下、場合によっては「燃料電池」という)は、燃料ガス(例えば、水素)と酸素の化学的反応によって発電させる発電装置であり、次世代のエネルギーの1つとして電気機器産業や自動車産業などの分野で大きく期待されている。燃料電池は、2個の触媒層と、これらの2個の触媒層に挟められた高分子電解質膜を基本単位として構成されている。典型的な燃料電池として、水素を燃料ガスとして用いる燃料電池の発電メカニズムを簡単に説明すれば、一方の触媒層から水素がイオン化して水素イオンが生成され、生成された水素イオンが高分子電解質膜を介して他方の触媒層に伝導(イオン伝導)され、ここで酸素と反応して水を形成する。この時、2個の触媒層を外部回路に接続していれば、電流が流れて外部回路に電力が供給される。高分子電解質膜のイオン伝導は、高分子電解質膜中にある親水性チャネルを介して水の移動と共にイオンが移動することによって発現されるため、効率的にイオン伝導を発現させるためには高分子電解質膜を湿潤状態にする必要がある。このような発電メカニズムにより、燃料電池を構成する高分子電解質膜は前記燃料電池の起動/停止に応じてその湿潤状態が変化する。このように高分子電解質膜の湿潤状態が変化すれば、高分子電解質膜は、吸収/乾燥によって膨潤と収縮が交互に生じて、高分子電解質膜と触媒層の界面が微視的に破壊されるという不良が生じる場合がある。また、酷い場合は燃料電池の故障にもつながる。したがって、燃料電池に用いられる高分子電解質膜としては、吸収/乾燥に伴う膨潤/収縮(吸収寸法変化)をより低減できるほどの少ない吸収率で効率的にイオン伝導性を発現することが求められている。
【0003】
このような検討において、溶液キャスト法(solution cast method)を利用して、ブロック型共重合体高分子電解質から高分子電解質膜を製造する方法が試みられた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は、溶液キャスト法によって電解質膜を製造する時の問題点を改善するためのものであり、特に化学的性質が互いに異なるブロック間の反発から生じる相分離構造を容易に形成し、この相分離構造を制御することによって前記親水性チャネルを効率的に高分子電解質膜中に形成させるようにするためのものである。
【0005】
そこで、本出願が解決しようとする課題は、高分子の溶解度を調節できる溶媒を含む高分子電解質組成物を提供することにある。
【0006】
本出願が解決しようとする他の課題は、前記高分子電解質組成物から製造された電解質膜を提供することにある。
【0007】
本出願が解決しようとするまた他の課題は、前記電解質膜を含む膜電極接合体を提供することにある。
【0008】
本出願が解決しようとするまた他の課題は、前記膜電極接合体を含む燃料電池を提供することにある。
【0009】
本出願が解決しようとする課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及していないまた他の技術的課題は下記の記載から当業者であれば明らかに理解することができるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記解決しようとする課題を達成するための本出願の一実現例による高分子電解質組成物は、第1溶媒、前記第1溶媒と異なる化学式を有する第2溶媒、前記第1溶媒および前記第2溶媒と反応する高分子を含み、前記高分子は、前記第1溶媒と第1反応エネルギーで反応し、前記第2溶媒と第2反応エネルギーで反応する官能基を含み、前記第2反応エネルギーは、前記第1反応エネルギーに比べて小さい。前記解決しようとする他の課題を達成するための本出願の一実現例による電解質膜は前記高分子電解質組成物から製造される。
【0011】
前記解決しようとするまた他の課題を達成するための本出願の一実現例による膜電極接合体は前記電解質膜を含む。
【0012】
前記解決しようとするまた他の課題を達成するための本出願の一実現例による燃料電池は前記膜電極接合体を含む。
【0013】
その他の実現例の具体的な事項は詳細な説明および図面に含まれている。
【発明の効果】
【0014】
本出願によれば、高分子に対する溶解度特性に優れた高分子電解質組成物が提供される。これにより、効率的なモルフォロジー(morphology)形成が可能であるため、陽イオン伝導性が向上した電解質膜が提供されることができる。また、前記電解質膜を含む膜電極接合体および燃料電池も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】70℃、RH 100%において燃料電池の性能を測定したデータである。
図2】70℃、RH 50%において燃料電池の性能を測定したデータである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付図面と共に詳細に後述している実施例を参照すれば明らかになるであろう。しかし、本出願は、以下にて開示する実施例に限定されず、互いに異なる様々な形態で実現され、本実施例は、単に本出願の開示が完全になるようにし、本出願が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであって、本出願は、請求項の範囲によって定義されるのみである。図面に示された構成要素の大きさおよび相対的な大きさは説明の明瞭性のために誇張されることがある。
【0017】
他の定義がなければ、本明細書に用いられる全ての用語(技術および科学的な用語を含む)は、本出願が属する技術分野で通常の知識を有する者にとって共通に理解できる意味として用いられる。また、一般的に用いられる辞書に定義されている用語は、明らかに特に定義されていない限り、理想的にまたは過度に解釈されないものである。
【0018】
以下、図1図2を参照し、本出願の実施例による高分子電解質組成物、高分子電解質膜、膜電極接合体および燃料電池を説明する。
【0019】
本出願の一実施例による高分子電解質組成物は、第1溶媒、第2溶媒および高分子を含むことができる。
【0020】
高分子は、親水性ブロックと疎水性ブロックを含むブロック型共重合体であってもよい。
【0021】
前記親水性ブロックは、官能基としてイオン交換基を有するブロックを意味する。ここで、前記官能基は、−SOH、−SO、−COOH、−COO、−PO、−POおよび−PO2−2Mからなる群から選択される少なくともいずれか1つであってもよい。ここで、Mは金属性元素であってもよい。すなわち、官能基は親水性であってもよい。
【0022】
また、親水性ブロックの重量平均分子量は1、000〜500、000(g/mol)であり、疎水性ブロックの重量平均分子量は1、000〜500、000(g/mol)であってもよい。
【0023】
ここで、「イオン交換基を有するブロック」とは、該ブロックを構成する構造単位1個当たりにあるイオン交換基数で示して平均0.5個以上含まれているブロックであることを意味し、構造単位1個当たりに平均1.0個以上のイオン交換基を有していればより好ましい。
【0024】
前記疎水性ブロックは、イオン交換基を実質的に有しない前記高分子ブロックを意味する。
【0025】
ここで、「イオン交換基を実質的に有しないブロック」とは、該ブロックを構成する構造単位1個当たりにあるイオン交換基数で示して平均0.1個未満のブロックであることを意味し、平均0.05個以下であればより好ましく、イオン交換基を全く有しないブロックであればさらに好ましい。
【0026】
一方、本出願における「ブロック型共重合体」とは、親水性ブロックと疎水性ブロックが主鎖構造を形成している共重合様式のものに加え、一方のブロックが主鎖構造を形成し、他方のブロックが側鎖構造を形成しているグラフト重合の共重合様式の共重合体も含む概念である。一方、本出願に用いられる高分子は、上述したブロック型共重合体に限定されるものではなく、フッ素系元素を含む高分子も用いられることができる。この時、フッ素系元素を含む高分子も官能基を含むことができ、前記官能基は親水性であってもよい。例えば、前記官能基は、−SOH、−SO、−COOH、−COO、−PO、−POおよび−PO2−2Mからなる群から選択される少なくともいずれか1つであってもよい。ここで、Mは金属性元素であってもよい。
【0027】
本出願において、化学式で表されるOは酸素、Nは窒素、Sは硫黄、Siはケイ素、Hは水素を意味する。
【0028】
本出願に用いられるブロック型共重合体高分子は、例えば、下記化学式1で表される繰り返し単位および化学式2で表される繰り返し単位を含むブロック型共重合体であってもよいが、これに限定されるものではない。
[化学式1]
[化学式2]
【0029】
前記化学式1および2において、A、CおよびVは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して下記化学式1−1〜化学式1−3のうちいずれか1つで表されることができる。
[化学式1−1]
[化学式1−2]
[化学式1−3]
【0030】
前記化学式1−1〜1−3において、
は直接連結であるか、−C(Z)(Z)−、−CO−、−O−、−S−、−SO−および−Si(Z)(Z)−のうちいずれか1つであり、
およびZは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素、アルキル基、トリフルオロメチル基(−CF)およびフェニル基のうちいずれか1つであり、
およびSは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
bおよびcは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数である。
【0031】
〜Sは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
d、e、fおよびgは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数である。
【0032】
〜S10は互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
h、i、jおよびkは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数である。
【0033】
前記化学式1−1は下記化学式1−1−1で表されることができる。
[化学式1−1−1]
【0034】
前記化学式1−1−1において、X、S、S、bおよびcは前記化学式1−1と同一である。
【0035】
前記化学式1−2は下記化学式1−2−1で表されることができる。
[化学式1−2−1]
【0036】
前記化学式1−2−1において、S〜S、d、e、fおよびgは前記化学式1−2と同一である。
【0037】
前記化学式1−3は下記化学式1−3−1で表されることができる。
[化学式1−3−1]
【0038】
前記化学式1−3−1において、S〜S10、h、i、jおよびkは前記化学式1−3と同一である。
【0039】
前記化学式1および2において、A、CおよびVは互いに同一であるかまたは異なり、
からなる群から選択される少なくともいずれか1つであってもよく、前記RおよびRは互いに同一であるかまたは異なり、独立してニトロ基(−NO)またはトリフルオロメチル基(−CF)である。
【0040】
前記化学式1および2において、A、CおよびVは互いに同一であるかまたは異なり、
であってもよく、前記RおよびRは互いに同一であるかまたは異なり、独立してニトロ基(−NO)またはトリフルオロメチル基(−CF)である。
【0041】
前記化学式1において、Uは下記化学式2−1〜化学式2−4のうちいずれか1つで表されることができる。
[化学式2−1]
[化学式2−2]
[化学式2−3]
[化学式2−4]
【0042】
前記化学式2−1〜2−4において、
は直接連結であるか、−CO−または−SO−であり、
qおよびrは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数であり、
s、t、uおよびvは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数であり、
wおよびxは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上3以下の整数であり、
yは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数であり、
〜Tは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して少なくとも1つは−SOH、−SO、−COOH、−COO、−PO、−POまたは−PO2−2Mであり、前記Mは金属性元素であり、残りは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基である。
【0043】
前記化学式2−1は下記化学式2−1−1で表されることができる。
[化学式2−1−1]
【0044】
前記化学式2−1−1において、X、T、T、qおよびrは前記化学式2−1と同一である。
【0045】
前記化学式2−2は下記化学式2−2−1で表されることができる。
[化学式2−2−1]
【0046】
前記化学式2−2−1において、T〜T、s、t、uおよびvは前記化学式2−2と同一である。
【0047】
前記化学式2−3は下記化学式2−3−1〜2−3−3のうちいずれか1つで表されることができる。
[化学式2−3−1]
[化学式2−3−2]
[化学式2−3−3]
【0048】
前記化学式2−3−1〜化学式2−3−3において、T、T、wおよびxは前記化学式2−3と同一である。
[化学式2−4−1]
【0049】
前記化学式2−4−1において、Tおよびyは前記化学式2−4と同一である。
【0050】
前記化学式1において、Uは
からなる群から選択される少なくともいずれか1つであってもよく、前記QおよびQは互いに同一であるかまたは異なり、水素、−SOH、−SO、−COOH、−COO、−PO、−POおよび−PO2−2Mからなる群から選択される少なくともいずれか1つであり、前記Mは金属性元素である。
【0051】
前記化学式1において、Uは
からなる群から選択される少なくともいずれか1つであってもよく、前記QおよびQは互いに同一であるかまたは異なり、水素、−SOH、−SO、−COOH、−COO、−PO、−POおよび−PO2−2Mからなる群から選択される少なくともいずれか1つであり、前記Mは金属性元素である。
【0052】
前記化学式1および2において、Bは全フッ素系化合物または部分フッ素系化合物であるか、下記化学式3−1〜化学式3−3のうちいずれか1つで表されることができる。
[化学式3−1]
[化学式3−2]
[化学式3−3]
【0053】
前記化学式3−1〜3−3において、
〜Xは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して直接連結であるか、−CO−または−SO−であり、
は直接連結またはC〜C60のアルキレン基であり、
〜Eは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
α、βおよびψは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数であり、
εは0以上3以下の整数であり、
は直接連結であるか、−CO−または−SO−であり、
は直接連結またはC〜C60のアルキレン基であり、
およびEは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
ζは0以上3以下の整数であり、
θは0以上4以下の整数であり、
は直接連結であるか、−CO−または−SO−であり、
は直接連結またはC〜C60のアルキレン基であり、
およびEは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
λは0以上3以下の整数であり、
πは0以上4以下の整数であり、
Wは、化学式1では下記[化学式4]で表される繰り返し単位であり、化学式2では下記[化学式5]で表される繰り返し単位であり、
[化学式4]
[化学式5]
前記化学式4において、m'は1以上10、000以下の整数であり、AおよびUの定義は前記化学式1のAおよびUの定義と同一であり、
前記化学式5において、n'は1以上100、000以下の整数であり、CおよびVの定義は前記化学式2のCおよびVの定義と同一である。
【0054】
前記化学式3−1は下記化学式3−1−1で表されることができる。
[化学式3−1−1]
【0055】
前記化学式3−1−1において、
〜X、Y、E〜E、W、α、β、ψおよびεは前記化学式3−1と同一である。
【0056】
前記化学式3−2は下記化学式3−2−1で表されることができる。
[化学式3−2−1]
【0057】
前記化学式3−2−1において、
、Y、E、E、W、ζおよびθは前記化学式3−2と同一である。
【0058】
前記化学式3−3は下記化学式3−3−1で表されることができる。
[化学式3−3−1]
【0059】
前記化学式3−3−1において、
、Y、E、E、W、λおよびπは前記化学式3−3と同一である。
【0060】
前記化学式1および2において、Bは
からなる群から選択されるいずれか1つであってもよく、
〜Yは互いに同一であるかまたは異なり、独立して直接結合またはC〜C60のアルキレン基であり、
Wは、化学式1では下記[化学式4]で表される繰り返し単位であり、化学式2では下記[化学式5]で表される繰り返し単位であり、
[化学式4]
[化学式5]
前記化学式4において、m'は1以上10、000以下の整数であり、AおよびUの定義は前記化学式1のAおよびUの定義と同一であり、
前記化学式5において、n'は1以上100、000以下の整数であり、CおよびVの定義は前記化学式2のCおよびVの定義と同一である。
【0061】
前記化学式1において、aおよびa'は0より大きい整数であり、a:a'は1000:1〜5:1であり、
前記化学式2において、zおよびz'は0より大きい整数であり、z:z'は1000:1〜5:1である。
【0062】
前記化学式1において、mは1以上10、000以下の整数であってもよく、前記化学式2において、nは1以上100、000以下の整数であってもよい。
【0063】
前記ブロック型共重合体高分子において、化学式1のブロックと化学式2のブロックは交互に(alternating)、グラフト(graft)形態にまたは任意に(randomly)配列されることができる。前記mは、ブロック型共重合体高分子において任意に配列された化学式1の繰り返し単位数の合計であってもよい。前記nは、ブロック型共重合体高分子において任意に配列された化学式2の繰り返し単位数の合計であってもよい。
【0064】
前記置換基の例示は以下で説明するが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書において、前記アリール基は単環式または多環式であってもよく、炭素数は特に限定されないが、6〜60が好ましい。アリール基の具体的な例としてはフェニル基、ビフェニル基、トリフェニル基、テルフェニル基、スチルベン基などの単環式芳香族およびナフチル基、ビナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、ペリレニル基、テトラセニル基、クリセニル基、フルオレニル基、アセナフタセニル基、トリフェニレン基、フルオランテン(fluoranthene)基などの多環式芳香族などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0066】
本明細書において、前記アルキル基は直鎖または分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1〜50が好ましい。具体的な例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基およびヘプチル基などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0067】
本明細書において、前記アルケニル基は直鎖または分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、2〜50が好ましい。具体的な例としてはスチルベニル基(stylbenyl)、スチレニル基(styrenyl)基などのアリール基が置換されたアルケニル基が好ましいが、これらのみに限定されるものではない。
【0068】
本明細書において、前記アルコキシ基は直鎖または分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1〜50が好ましい。
【0069】
本明細書において、シクロアルキル基は特に限定されないが、炭素数3〜60が好ましく、特にシクロペンチル基、シクロヘキシル基が好ましい。
【0070】
本明細書において、ハロゲン基の例としてはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素が挙げられる。
【0071】
本明細書において、フルオレニル基は2個の環状有機化合物が1個の原子を介して連結された構造であり、その例としては
などが挙げられる。
【0072】
本明細書において、フルオレニル基は開かれたフルオレニル基の構造を含み、ここで、開かれたフルオレニル基は2個の環状化合物が1個の原子を介して連結された構造において一方の環状化合物が連結が切れた状態の構造であり、その例としては
などが挙げられる。
【0073】
本明細書において、アミン基は、炭素数は特に限定されないが、1〜50が好ましい。アミン基の具体的な例としてはメチルアミン基、ジメチルアミン基、エチルアミン基、ジエチルアミン基、フェニルアミン基、ナフチルアミン基、ビフェニルアミン基、アントラセニルアミン基、9−メチル−アントラセニルアミン基、ジフェニルアミン基、フェニルナフチルアミン基、ジトリルアミン基、フェニルトリルアミン基、トリフェニルアミン基などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0074】
本明細書において、アリールアミン基の炭素数は特に限定されないが、6〜50が好ましい。アリールアミン基の例としては置換もしくは非置換の単環式のジアリールアミン基、置換もしくは非置換の多環式のジアリールアミン基または置換もしくは非置換の単環式および多環式のジアリールアミン基を意味する。
【0075】
また、本明細書において、「置換もしくは非置換」という用語は、重水素;ハロゲン基;アルキル基;アルケニル基;アルコキシ基;シクロアルキル基;シリル基;アリールアルケニル基;アリール基;ホウ素基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;アリールアミン基;カルバゾール基;アリールアミン基;アリール基;フルオレニル基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基およびシアノ基からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されるかまたはいかなる置換基も有しないことを意味する。
【0076】
本明細書において、「
」は、隣接した置換基と結合することを意味する。
【0077】
本明細書において、金属性元素は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド金属、アクチノイド金属、遷移金属または遷移後金属(post−transition metal)であってもよい。
【0078】
前記アルカリ金属はLi、Na、K、Rb、CsまたはFrであってもよい。
【0079】
前記アルカリ土類金属はBe、Mg、Ca、SrまたはBaであってもよい。
【0080】
前記ランタノイド金属はLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luであってもよい。
【0081】
前記アクチノイド金属はAc、Th、Pa、U、Np、Pu、Am、Cm、Bk、Cf、Es、Fm、Md、NoまたはLrであってもよい。
【0082】
前記遷移金属はSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Lr、Rf、Db、Sg、Bh、Hs、Mt、Ds、RgまたはCnであってもよい。
【0083】
前記遷移後金属はAl、Si、P、S、Ga、Ge、As、Se、In、Sn、Sb、Te、Tl、Pb、BiまたはPoであってもよい。
【0084】
本明細書において、部分フッ素系とは、高分子の主鎖についている側鎖(side chain)の一部分にのみフッ素原子が導入されたものを意味する。
【0085】
本明細書において、全フッ素系とは、主鎖の側鎖の全部にフッ素原子が導入されたものを意味する。
【0086】
例えば、PTFEのように−(−CF−CF−)−の構造を有するものは全フッ素系といえ、PVDFのように−(−CH−CF−)−の構造を有するものは部分フッ素系といえる。または2種類あるいはそれ以上の高分子の共重合体の場合、共重合体に用いられた高分子のうちの1つあるいはそれ以上の高分子がフッ素原子を含み、フッ素原子を含まない高分子と同時に共重合体に用いられた場合に、部分フッ素系とみなすことができる。
【0087】
その他に、前記ブロック型共重合体は、ポリスチレン(polystyrene(PS));ポリイソプレン(polyisoprene(PI));ポリアルキレン(polyalkylene);ポリアルキレンオキシド(polyalkyleneoxide);ポリアルキル(メタ)アクリレート(polyalkyl(meth)acrylate);ポリ2−ビニルピリジン(poly(2−vinylpyridine)(P2VP));ポリ4−ビニルピリジン(poly(4−vinylpyridine)(P4VP));ポリ(メタ)アクリル酸(polyacrylic acid(PAA));ポリアルキル(メタ)アクリル酸(polyalkylacrylic acid);ポリジアルキルシロキサン(polydialkylsiloxane);ポリアクリルアミド(polyacrylamide(PAM));ポリカプロラクトン(poly(ε−caprolactone)(PCL));ポリ乳酸(polylactic acid(PLA))およびポリ乳酸・グリコール酸(poly(lactic−co−glycolic acid)(PLGA))からなる群から選択される少なくともいずれか1つであってもよい(炭素数1〜20のアルキレンまたはアルキルを意味する)。
【0088】
第1溶媒は、高分子と反応して高分子を溶解できる物質であれば特に制限されない。第1溶媒は、本出願の一実施例よる高分子電解質組成物において主溶媒として機能する。
【0089】
例えば、第1溶媒はN、N'−ジメチルアセトアミド(N、N−dimethylacetamide、DMAc)、N−メチルピロリドン(N−methyl pyrrolidone、NMP)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)およびN、N−ジメチルホルムアミド(N、N−dimethylformamide、DMF)からなる群から選択される少なくともいずれか1つであってもよいが、これらのみに限定されるものではない。
【0090】
第2溶媒は第1溶媒と異なる化学式を有するものであり、特に前記高分子の親水性官能基と反応して高分子を溶解させることができる。第2溶媒は、第1溶媒を補助して高分子を溶解させることができる。例えば、第2溶媒は水またはグリセロール(glycerol)であってもよく、ヒドロキシ基を有する物質であればこれらに限定されない。
【0091】
本出願の高分子電解質組成物内において、第1溶媒と第2溶媒の含有重量比を第2溶媒/第1溶媒で示す場合、その範囲は1/99〜10/90が好ましく、3/97〜8/92がより好ましい。
【0092】
第2溶媒/第1溶媒の値が1/99未満であれば、第2溶媒を添加しても、第2溶媒による高分子の溶解性の増加を期待し難い。一方、第2溶媒/第1溶媒の値が10/90超過であれば、主溶媒の第1溶媒の量が少なくて高分子の溶解が完全でなくなるので高分子電解質組成物の溶液化が困難である。このため、キャスト法によって電解質膜を形成するのに困難がある。すなわち、キャスト法によって電解質膜を形成するためには、基材上に前記組成物を均一に塗布しなければならないが、溶液化になっていない場合は均一に塗布されないので不均一な電解質膜が形成される。
【0093】
一方、高分子の親水性官能基は第1溶媒と第1反応エネルギーで反応することができ、第2溶媒と第2反応エネルギーで反応することができる。本願における反応エネルギーは、基準単量体と溶媒との間の安定化エネルギーを意味する。より詳しくは、基準単量体と溶媒が各々存在する時のエネルギー値と単量体と溶媒が反応して安定化した時のエネルギー値との差を意味する。
【0094】
例えば、高分子が親水性ブロックと疎水性ブロックを有するブロック型共重合体であり、第1溶媒がジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)であり、第2溶媒が水であると仮定する。この時、高分子の親水性ブロックは、例えば、−SOKのスルホン酸基を含むと仮定する。
【0095】
−SOKのスルホン酸基を含む単量体と溶媒との反応エネルギーを示す下記表1を参照すれば、第1溶媒であるジメチルスルホキシドは高分子の親水性ブロックに含まれた−SOKのスルホン酸基を含む単量体と−5.6kcal/molの第1反応エネルギーで反応して安定化する。一方、第2溶媒である水は−6.3kcal/molの第2反応エネルギーで反応して安定化する。すなわち、第2溶媒と高分子の官能基(−SOKのスルホン酸基)との間の反応エネルギー(第2反応エネルギー)が第1溶媒と高分子の官能基(−SOKのスルホン酸基)との間の反応エネルギー(第1反応エネルギー)より小さいことが分かる。このため、第1溶媒より第2溶媒が高分子の官能基とより容易に反応することができ、第2溶媒と前記官能基が反応して複合体が形成されることができる。これにより、本出願の高分子電解質組成物は親水性ブロックと第2溶媒が反応した複合体を含むことができる。
【表1】
表1の反応エネルギー値はGaussian社製のGaussian09プログラムの化学計算機能を用いて計算した。
【0096】
すなわち、−SOKのスルホン酸基と水が反応してスルホン酸−水複合体が形成されることができる。第2溶媒がグリセロール(glycerol)であれば、スルホン酸−グリセロール複合体が形成されることができる。
【0097】
一方、高分子が親水性ブロックと疎水性ブロックを含むブロック型共重合体である場合、第1溶媒内で疎水性ブロックは第1変数(variableδ1)を有することができる。親水性ブロックの官能基と第2溶媒が反応して形成された複合体も第1溶媒内で第2変数(variableδ2)を有することができる。
【0098】
変数δは物質の構成要素間の凝集程度と関連してその尺度を示し、下記のような数学式1で表わすことができる。
[数学式1]
δ=(溶質の自己混合エネルギー)−(溶媒の混合エネルギー)−ΔGfus
前記数学式1において、ΔGfusは溶質の標準溶解ギブズ自由エネルギーであり、前記単量体の自己混合エネルギーおよび前記溶媒の混合エネルギーおよび前記ΔGfusの単位はkcal/molである。
【0099】
前記溶質の自己混合エネルギー(self−mixing energy)は、前記溶質が前記溶媒(前記溶質と同一)内に液相として混合されて存在する時の化学ポテンシャル(chemical potential)値である。
【0100】
前記溶質の自己混合エネルギーは値が小さいほど安定する。前記溶媒の混合エネルギー(salvation energy)は、前記溶質が前記溶媒(前記溶質とは異なる物質または前記溶質の物質を含む2種以上の混合物)内に液相として混合されて存在する時の化学ポテンシャル値である。
【0101】
前記溶媒の混合エネルギーは値が小さいほど安定する。
【0102】
前記溶質のΔGfus(標準溶解ギブズ自由エネルギー、Gibbs free energy of fusion)は、固体状態の前記溶質が25℃で溶ける時に必要なエネルギー値である。
【0103】
前記溶質のΔGfusは、正の値であれば、溶媒と溶質の混合は吸熱反応であり、負の値であれば、溶媒と溶質の混合は発熱反応である。
【0104】
前記変数δは、溶質の標準溶解ギブズ自由エネルギーを考慮した自己混合エネルギーと溶媒の混合エネルギーとの値の差によって示された値であり、前記変数δ値が大きいほど、溶質は選択された溶媒によりよく溶けるようになる。
【0105】
前記溶質の自己混合エネルギー、溶媒の混合エネルギーおよびΔGfusは、混合前後のエネルギー差を実験的に測定するか、熱力学的モデルを予測できるコンピュータープログラムを用いて計算することができる。
【0106】
一方、前記変数δの観点から、本出願の実施例による高分子電解質組成物は下記数学式2の条件を有することができる。
[数学式2]
δ2−δ1>0
前記変数δ1は、前記数学式1において、前記溶質が前記疎水性ブロックを構成する単量体であり、前記溶媒が第1溶媒である場合の計算値であり、前記変数δ2は、前記数学式1において、前記溶質が前記親水性ブロックの官能基と前記第2溶媒が反応した親水性ブロック複合体であり、溶媒が第1溶媒である場合の計算値である。
【0107】
前記疎水性ブロック、前記親水性ブロック、前記第1溶媒および前記第2溶媒が前記数学式1で計算された前記数学式2の条件を満たす場合、第2溶媒と反応した親水性ブロック複合体は、第1溶媒内で疎水性ブロックより効率的に溶解されることができる。すなわち、高分子の疎水性ブロックの第1変数δ1より親水性ブロック複合体の第2変数δ2がより大きい場合、第1溶媒および第2溶媒に溶解される高分子はより完全に溶解されることができる。すなわち、前記第2溶媒は第1溶媒より親水性ブロックとよく反応し、前記第1溶媒は疎水性ブロックより親水性ブロックをよく溶解する。
【0108】
官能基がある親水性ブロックは疎水性ブロックに比べて第1溶媒に対する溶解度が小さいため、親水性ブロックは第1溶媒により少なめに溶解される。このため、組成物の溶液化が難しくなる。本出願は、親水性ブロックの官能基と反応する第2溶媒をさらに用いて、第1溶媒に対する溶解度が疎水性ブロックに比べて比較的に高い複合体を形成することにより、第1溶媒に溶解される高分子の溶解度を全般的に向上させることができる。これにより、第1溶媒および第2溶媒の複合異種溶媒を用いて、溶媒に溶解される高分子の溶解度を向上させることができる。
【0109】
一方、本出願の高分子電解質組成物を用いて電解質膜を形成することができる。電解質膜はキャスト法によって形成されることができる。
【0110】
溶液キャスト法とは、本出願の高分子電解質組成物をガラス基板、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどの支持基材上に流延塗布(キャスティング製膜)して塗膜を形成させ、前記塗膜から溶媒などの揮発成分を除去することによって支持基材上に高分子電解質膜を製膜する方法である。また、前記支持基材を剥離などによって除去することによって高分子電解質膜を得ることができる。
【0111】
一方、本出願の高分子電解質組成物を用いて電解質膜を製造し、前記電解質膜を用いて膜電極接合体(MEA)を形成することができる。
【0112】
膜電極接合体はカソード、アノード、および前記カソードとアノードとの間に位置する電解質膜を含み、前記電解質膜は前述した本出願による電解質膜である。
【0113】
膜電極接合体(MEA)は、燃料と空気の電気化学触媒反応が起こる電極(カソードとアノード)と水素イオンの伝達が起こる高分子膜の接合体を意味するものであり、電極(カソードとアノード)と電解質膜が接着された単一の一体型ユニット(unit)である。
【0114】
本出願の膜電極接合体は、アノードの触媒層とカソードの触媒層が電解質膜に接触するようにする形態であり、当分野で知られた通常の方法によって製造することができる。一例として、前記カソード、アノード、および前記カソードとアノードとの間に位置する電解質膜を密着させた状態で100〜400℃で熱圧着して製造することができる。
【0115】
また、本出願は、前記膜電極接合体(MEA)を含む燃料電池を提供する。燃料電池は、本出願の膜電極接合体(MEA)を用いて当分野で知られた通常の方法によって製造することができる。例えば、前記で製造された膜電極接合体(MEA)とバイポーラ板(bipolar plate)で構成して製造することができる。
【0116】
本発明の燃料電池は、スタック、燃料供給部および酸化剤供給部を含んでなる。
【0117】
前記スタックは本発明の膜電極接合体を1つまたは2つ以上含み、膜電極接合体が2つ以上含まれる場合はこれらの間に介在するバイポーラ板を含む。前記バイポーラ板は、外部から供給された燃料および酸化剤を膜電極接合体に伝達する役割とアノード電極とカソード電極を直列に連結させる伝導体の役割をする。
【0118】
前記燃料供給部は、燃料を前記スタックに供給する役割をし、燃料を貯蔵する燃料タンクおよび燃料タンクに貯蔵された燃料をスタックに供給するポンプで構成されることができる。前記燃料としては気体または液体状態の水素または炭化水素燃料が用いられることができ、炭化水素燃料の例としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたは天然ガスが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0119】
前記酸化剤供給部は酸化剤を前記スタックに供給する役割をする。
【0120】
前記酸化剤としては空気が代表的に用いられ、酸素または空気をポンプで注入して用いることができる。
【0121】
前記燃料電池は、高分子電解質燃料電池、直接液体燃料電池、直接メタノール燃料電池、直接ギ酸燃料電池、直接エタノール燃料電池、または直接ジメチルエーテル燃料電池などが可能である。
【実施例】
【0122】
以下、本出願を実施例によって詳細に説明すれば次の通りである。但し、下記の実施例は本出願を例示したものに過ぎず、本出願が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0123】
[実施例1]
<製造例1.炭化水素系スルホン化ブロック型共重合体の形成>
ディーン・スターク装置(Dean−Stark trap)とコンデンサーが取り付けられた1L丸底フラスコにヒドロキノンスルホン酸カリウム塩(hydroquinonesulfonic acid potassium salt)(0.9eq.)、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン(4,4'−difluorobenzophenone)(0.97eq.)、3,5−ビス(4−フルオロベンゾイル)フェニル(4−フルオロフェニル)メタノン(3,5−bis(4−fluorobenzoyl)phenyl(4−fluorophenyl)methanone)(0.02eq.)を入れ、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide:DMSO)とベンゼン溶媒において炭酸カリウム(potassium carbonate)を触媒として用いて窒素雰囲気内で準備した。次に、前記反応混合物を140℃で油浴(oil bath)において4時間攪拌して、ベンゼンが逆流しながら、ディーン・スターク装置の分子篩(molecular sieves)に共沸混合物を吸着させて除去した後、反応温度を180℃に昇温させ、20時間縮重合反応させた。前記反応終了後、前記反応物の温度を60℃に下げた後、同一フラスコに4,4'−ジフルオロベンゾフェノン(4,4'−Difluorobenzophenone)(0.2275eq.)、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオン(9,9−bis(hydroxyphenyl)fluorne)(0.335eq.)、3,5−ビス(4−フルオロベンゾイル)フェニル(4−フルオロフェニル)メタノン(0.005eq.)を入れ、DMSOとベンゼンを用いて窒素雰囲気で炭酸カリウムを触媒として用いて反応を再び開始した。次に、前記反応混合物を再び140℃で油浴(oil bath)において4時間攪拌して、ベンゼンが逆流しながら、ディーン・スターク装置の分子篩(molecular sieves)に共沸混合物を吸着させて除去した後、反応温度を180℃に昇温させ、20時間縮重合反応させた。次に、反応物の温度を室温に下げ、DMSOをさらに加えて生成物を希釈させた後、希釈された生成物を過量のメタノールに注いで溶媒から共重合体を分離した。次に、水を用いて過量の炭酸カリウムを除去した後、濾過して得た共重合体を80℃の真空オーブンで12時間以上乾燥して、疎水性ブロックと親水性ブロックが交互に化学結合で繋がった分岐したスルホン化マルチブロック型共重合体を製造した。
【0124】
<製造例2.高分子電解質組成物の製造>
第1溶媒としてジメチルスルホキシド38gを、第2溶媒として水2gを準備し、混合し2時間攪拌して、異種溶媒を製造した。次に、製造例1で製造された炭化水素系スルホン化ブロック型共重合体10gを前記異種溶媒に溶解させた後、BORUガラスフィルター(pore size 3)に濾過させてホコリなどを除去した後、高分子電解質組成物溶液を製造した。
【0125】
<製造例3.電解質膜の製造>
製造例2で製造された溶液をクリーン・ベンチ(clean bench)内のフィルムアプリケーター(film applicator)の水平板上でドクターブレードを用いて基板に高分子フィルムをキャスティングした後、50℃で2時間維持してソフトベーク(soft bake)した。次に、100℃に設定されたオーブンに入れ、24時間乾燥して、製造例2で製造された高分子電解質組成物を含む電解質膜を形成した。
【0126】
<製造例4.膜電極接合体の製造>
製造例3の電解質膜を用いて膜電極接合体を既に公知の製造工程によって製造し、製造された膜電極接合体を水素燃料電池および直接メタノール燃料電池に適用した。
【0127】
[実施例2]
第2溶媒としてグリセロール(glycerol)を準備したことを除いては、前記実施例1と同一の物質および方法で炭化水素系スルホン化ブロック型共重合体、高分子電解質組成物、膜電極接合体および燃料電池を製造した。
【0128】
[比較例1]
第2溶媒としてメタノールを準備したことを除いては、前記実施例1と同一の物質および方法で炭化水素系スルホン化ブロック型共重合体、高分子電解質組成物、膜電極接合体および燃料電池を製造した。
【0129】
[比較例2]
第2溶媒としてエチレングリコール(ethylene glycol)を準備したことを除いては、前記実施例1と同一の物質および方法で炭化水素系スルホン化ブロック型共重合体、高分子電解質組成物、膜電極接合体および燃料電池を製造した。
【0130】
[実験例1]
実施例1および2、比較例1および2で製造された高分子電解質組成物の第1変数δ1と第2変数δ2をCOSMOlogic社製のCOSMOthermプログラムを用いて計算した溶質の自己混合エネルギー、溶媒の混合エネルギーおよびΔGfusを前記数学式1で計算した。第1変数δ1は、数学式1において、前記溶媒がジメチルスルホキシドであり、前記溶質が前記スルホン化マルチブロック型共重合体の疎水性ブロックの単量体である場合の計算値であり、第2変数δ2は、数学式1において、前記溶媒がジメチルスルホキシドであり、前記溶質が前記スルホン化マルチブロック型共重合体の親水性官能基と前記第2溶媒(実施例1:水、実施例2:グリセロール、比較例1:メタノール、比較例2:エチレングリコール)が反応した親水性ブロック複合体である場合の結果値である。
測定された第1変数δ1および第2変数δ2と数学式2による結果値を表2に示す。
下記表2の結果値は前記COSMOthermプログラムを用いて計算した。
【表2】
【0131】
前記結果から明らかなように、実施例1および2のδ2−δ1の値はいずれも0より大きく、比較例1および2のδ2−δ1の値はいずれも0より小さいことが分かった。すなわち、第1溶媒に第2溶媒を混合する場合、実施例1および2は第2溶媒と反応した親水性ブロック複合体の第1溶媒に対する溶解度が疎水性ブロックに対する第1溶媒に対する溶解度より増加した反面、比較例1および2はそうでないことが分かった。これにより、炭化水素系スルホン化ブロック型共重合体は、比較例1および2より実施例1および2の溶媒において、親水性ブロック複合体が疎水性ブロックに比べて相対的に優れた溶解度を有することが分かった。
【0132】
[実験例2]
実施例1および2、比較例1および2で製造された電解質膜を含む燃料電池の性能を評価した。図1は70℃、RH 100%において燃料電池の性能を測定したデータであり、図2は70℃、RH 50%において燃料電池の性能を測定したデータである。
【0133】
図1を参照すれば、0.6Vにおいて、実施例1は約1200mA/cmの電流密度を、実施例2は1100mA/cmの電流密度を示すことが分かった。一方、0.6Vにおいて、比較例1は約1020mA/cmの電流密度を、比較例2は1050mA/cmの電流密度を示すことが分かった。
【0134】
図2を参照すれば、0.6Vにおいて、実施例1は約1100mA/cmの電流密度を、実施例2は1000mA/cmの電流密度を示すことが分かった。一方、0.6Vにおいて、比較例1は約900mA/cmの電流密度を、比較例2は850mA/cmの電流密度を示すことが分かった。すなわち、本出願の高分子電解質組成物を用いて製造された電解質膜を含む燃料電池の性能が優れることが分かった。
【0135】
以上、添付図面を参照して本出願の実施例を説明したが、本出願は前記実施例に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態で製造されることができ、本出願が属する技術分野で通常の知識を有した者であれば本出願の技術的思想や必須の特徴を変更しなくても他の具体的な形態で実施できるということを理解することができるであろう。したがって、以上で記述した実施例は全ての面で例示的であって、限定的ではないことを理解しなければならない。
[項目1]
第1溶媒、
上記第1溶媒と異なる第2溶媒、
上記第1溶媒および上記第2溶媒と反応する高分子を含み、
上記高分子は、上記第1溶媒と第1反応エネルギーで反応し、上記第2溶媒と第2反応エネルギーで反応する官能基を含み、
上記第2反応エネルギーは、上記第1反応エネルギーに比べて小さいことを特徴とする高分子電解質組成物。
[項目2]
上記高分子は、親水性ブロックと疎水性ブロックを含むブロック型共重合体であることを特徴とする、項目1に記載の高分子電解質組成物。
[項目3]
上記親水性ブロックの重量平均分子量は1、000〜500、000(g/mol)であり、疎水性ブロックの重量平均分子量は1、000〜500、000(g/mol)であることを特徴とする、項目2に記載の高分子電解質組成物。
[項目4]
上記官能基は、親水性であることを特徴とする、項目1に記載の高分子電解質組成物。
[項目5]
上記官能基は−SOH、−SO、−COOH、−COO、−PO、−POおよび−PO2−2Mからなる群から選択される少なくともいずれか1つであり、上記官能基のMは金属性元素であることを特徴とする、項目4に記載の高分子電解質組成物。
[項目6]
上記親水性ブロックは、第1溶媒より第2溶媒とよく反応することを特徴とする、項目2に記載の高分子電解質組成物。
[項目7]
上記第2溶媒と上記官能基が反応して形成された複合体をさらに含むことを特徴とする、項目2に記載の高分子電解質組成物。
[項目8]
上記疎水性ブロック、上記親水性ブロック、上記第1溶媒および上記第2溶媒は、下記数学式1で計算された下記数学式2を満たすことを特徴とする、項目7に記載の高分子電解質組成物:
[数学式1]
δ=(溶質の自己混合エネルギー)−(溶媒の混合エネルギー)−ΔGfus
上記数学式1において、ΔGfusは溶質の標準溶解ギブズ自由エネルギーであり、上記溶質の自己混合エネルギー、上記溶媒の混合エネルギーおよび上記ΔGfusの単位はkcal/molであり、
[数学式2]
δ2−δ1>0
上記変数δ1は、上記数学式1において、溶質が上記疎水性ブロックを構成する単量体であり、溶媒が第1溶媒である場合の計算値であり、
上記変数δ2は、上記数学式1において、溶質が上記親水性ブロックの官能基と上記第2溶媒が反応した親水性ブロック複合体であり、溶媒が第1溶媒である場合の計算値である。
[項目9]
上記第1溶媒は、N、N'−ジメチルアセトアミド(N、N−dimethylacetamide、DMAc)、N−メチルピロリドン(N−methyl pyrrolidone、NMP)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)およびN、N−ジメチルホルムアミド(N、N−dimethylformamide、DMF)からなる群から選択される少なくともいずれか1つであることを特徴とする、項目1に記載の高分子電解質組成物。
[項目10]
上記第2溶媒は第1溶媒より親水性ブロックとよく反応し、
上記第1溶媒は疎水性ブロックより親水性ブロックをよく溶解することを特徴とする、項目2に記載の高分子電解質組成物。
[項目11]
上記第2溶媒は、水またはグリセロールであることを特徴とする、項目1に記載の高分子電解質組成物。
[項目12]
上記ブロック型共重合体は、下記化学式1で表される繰り返し単位および化学式2で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする、項目2に記載の高分子電解質組成物:
[化学式1]
[化学式2]
上記化学式1において、aおよびa'は0より大きい整数であり、a:a'は1000:1〜5:1であり、
mは1以上10、000以下の整数であり、
上記化学式1および2において、A、CおよびVは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して下記化学式1−1〜化学式1−3のうちいずれか1つで表され、
[化学式1−1]
[化学式1−2]
[化学式1−3]
上記化学式1−1〜1−3において、
は直接連結であるか、−C(Z)(Z)−、−CO−、−O−、−S−、−SO−および−Si(Z)(Z)−のうちいずれか1つであり、
およびZは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素、アルキル基、トリフルオロメチル基(−CF)およびフェニル基のうちいずれか1つであり、
およびSは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
bおよびcは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数である。
〜Sは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
d、e、fおよびgは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数であり、
〜S10は互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
h、i、jおよびkは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数であり、
上記化学式2において、
zおよびz'は0より大きい整数であり、z:z'は1000:1〜5:1であり、
nは1以上100、000以下の整数であり、
Uは下記化学式2−1〜化学式2−4のうちいずれか1つで表され、
[化学式2−1]
[化学式2−2]
[化学式2−3]
[化学式2−4]
上記化学式2−1〜2−4において、
は直接連結であるか、−CO−または−SO−であり、
qおよびrは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数であり、
s、t、uおよびvは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数であり、
wおよびxは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上3以下の整数であり、
yは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数であり、
〜Tは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して少なくとも1つは−SOH、−SO、−COOH、−COO、−PO、−POまたは−PO2−2Mであり、上記Mは金属性元素であり、残りは水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
上記化学式1および2において、Bは全フッ素系化合物または部分フッ素系化合物であるか、下記化学式3−1〜化学式3−3のうちいずれか1つで表され、
[化学式3−1]
[化学式3−2]
[化学式3−3]
上記化学式3−1〜3−3において、
〜Xは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して直接連結であるか、−CO−または−SO−であり、
は直接連結またはC〜C60のアルキレン基であり、
〜Eは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
α、βおよびψは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して0以上4以下の整数であり、
εは0以上3以下の整数であり、
は直接連結であるか、−CO−または−SO−であり、
は直接連結またはC〜C60のアルキレン基であり、
およびEは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
ζは0以上3以下の整数であり、
θは0以上4以下の整数であり、
は直接連結であるか、−CO−または−SO−であり、
は直接連結またはC〜C60のアルキレン基であり、
およびEは互いに同一であるかまたは異なり、各々独立して水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のアルコキシ基;置換もしくは非置換のアルケニル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のホウ素基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキルアミン基;置換もしくは非置換のアラルキルアミン基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のフルオレニル基;または置換もしくは非置換のカルバゾール基であり、
λは0以上3以下の整数であり、
πは0以上4以下の整数であり、
Wは、化学式1では下記化学式4で表される繰り返し単位であり、化学式2では下記化学式5で表される繰り返し単位であり、
[化学式4]
[化学式5]
上記化学式4において、m'は1以上10、000以下の整数であり、AおよびUの定義は上記化学式1のAおよびUの定義と同一であり、
上記化学式5において、n'は1以上100、000以下の整数であり、CおよびVの定義は上記化学式2のCおよびVの定義と同一である。
[項目13]
上記A、CおよびVは互いに同一であるかまたは異なり、
からなる群から選択される少なくともいずれか1つであり、
上記RおよびRは互いに同一であるかまたは異なり、独立してニトロ基(−NO)またはトリフルオロメチル基(−CF)であることを特徴とする、項目12に記載の高分子電解質組成物。
[項目14]
上記Uは
からなる群から選択される少なくともいずれか1つであり、
上記QおよびQは互いに同一であるかまたは異なり、独立して−SOH、−SO、−COOH、−COO、−PO、−POまたは−PO2−2Mであり、上記Mは金属性元素であることを特徴とする、項目12に記載の高分子電解質組成物。
[項目15]
上記Bは
からなる群から選択されるいずれか1つであり、
〜Yは互いに同一であるかまたは異なり、独立して直接結合またはC〜C60のアルキレン基であり、
Wは、化学式1では下記化学式4で表される繰り返し単位であり、化学式2では下記化学式5で表される繰り返し単位であり、
[化学式4]
[化学式5]
上記化学式4において、m'は1以上10、000以下の整数であり、AおよびUの定義は上記化学式1のAおよびUの定義と同一であり、
上記化学式5において、n'は1以上100、000以下の整数であり、CおよびVの定義は上記化学式2のCおよびVの定義と同一であることを特徴とする、項目12に記載の高分子電解質組成物。
[項目16]
上記第1溶媒と上記第2溶媒の重量比は、第2溶媒/第1溶媒で示す場合に1/99〜10/90の範囲である、項目1に記載の高分子電解質組成物。
[項目17]
項目1〜16のいずれか一項に記載の高分子電解質組成物から形成されることを特徴とする電解質膜。
[項目18]
カソード、アノード、および上記カソードとアノードとの間に位置する電解質膜を含む膜電極接合体であって、
上記電解質膜は、項目17に記載の電解質膜であることを特徴とする膜電極接合体。
[項目19]
項目18に記載の1つまたは2つ以上の膜電極接合体と上記膜電極接合体同士の間に介在するバイポーラ板とを含むスタック、
燃料を上記スタックに供給する燃料供給部、および
酸化剤を上記スタックに供給する酸化剤供給部を含むことを特徴とする高分子電解質型燃料電池。
[項目20]
高分子を形成するステップ、
上記高分子、第1溶媒および第2溶媒を用いて高分子電解質組成物を製造するステップ、
上記高分子電解質組成物を用いて電解質膜を形成するステップを含む高分子電解質膜の製造方法であって、
上記高分子は、第1溶媒と第1反応エネルギーで反応し、上記第2溶媒と第2反応エネルギーで反応する官能基を含み、
上記第2反応エネルギーは、上記第1反応エネルギーに比べて小さい高分子であることを特徴とする高分子電解質膜の製造方法。
図1
図2