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特許6198380リチウムイオン2次電池用電解質およびこれを含むリチウムイオン2次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198380
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】リチウムイオン2次電池用電解質およびこれを含むリチウムイオン2次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20170911BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20170911BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20170911BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALN20170911BHJP
【FI】
   H01M10/0562
   H01M10/0565
   H01M10/052
   !H01M10/0585
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-220929(P2012-220929)
(22)【出願日】2012年10月3日
(65)【公開番号】特開2013-214494(P2013-214494A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年9月29日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0034029
(32)【優先日】2012年4月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100159042
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 徹二
(72)【発明者】
【氏名】崔 信 政
【審査官】 小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−171995(JP,A)
【文献】 特開2010−272344(JP,A)
【文献】 特開2010−205739(JP,A)
【文献】 特開2010−033918(JP,A)
【文献】 特開2007−066703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンを挿入および/または脱離できる正極および陰極を含むリチウムイオン2次電池に用いる電解質であって、セラミック固体電解質を中心にその両面にゲル高分子電解質を含み、多層構造であり、
前記セラミック固体電解質はテフロン(登録商標)系バインダーを含む、リチウムイオン2次電池用電解質。
【請求項2】
前記セラミック固体電解質は、LiS−P、LiS−P−LiSiO、LiS−Ga−GeS、LiS−Sb−GeS、Li3.25−Ge0.25−P0.75、(La、Li)TiO(LLTO)、LiLaCaTa12、LiLaANb12(A=Ca、Sr)、LiNdTeSbO12、LiBO2.50.5、LiSiAlO、Li1+xAlGe2−x(PO(LAGP)、Li1+xAlTi2−x(PO(LATP)、Li1+xTi2−xAlSi(PO3−y、LiAlZr2−x(PO、およびLiTiZr2−x(POからなる群から選択される一つ以上の化合物を含む、請求項1に記載のリチウムイオン2次電池用電解質。
【請求項3】
前記セラミック固体電解質は、(La、Li)TiO(LLTO)、Li1+xAlTi2−x(PO(LATP)、およびLi1+xTi2−xAlSi(PO3−yからなる群から選択される一つ以上の化合物を含む、請求項1または2に記載のリチウムイオン2次電池用電解質。
【請求項4】
前記バインダーはポリフッ化ビニリデンである、請求項1から3のいずれか1項に記載のリチウムイオン2次電池用電解質。
【請求項5】
前記バインダーは前記セラミック固体電解質100重量部当り0.1重量部ないし50重量部である、請求項1から4のいずれか1項に記載のリチウムイオン2次電池用電解質。
【請求項6】
前記セラミック固体電解質の厚さは10μmないし1000μmである、請求項1からのいずれか1項に記載のリチウムイオン2次電池用電解質。
【請求項7】
前記ゲル高分子電解質は、高分子化合物を構成する単量体とリチウム塩を8:1ないし16:1のモル比で含む、請求項1からのいずれか1項に記載のリチウムイオン2次電池用電解質。
【請求項8】
陰極側に配置されるゲル高分子電解質は、1〜50重量%のエチレンカーボネート(EC)を含む、請求項1からのいずれか1項に記載のリチウムイオン2次電池用電解質。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載のリチウムイオン2次電池用電解質を含む、リチウムイオン2次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン2次電池用電解質およびこれを含むリチウムイオン2次電池に関する。より詳しくは、本発明はリチウムイオンを挿入および/または脱離できる正極および陰極を含むリチウムイオン2次電池用電解質であって、セラミック固体電解質を中心にその両面にゲル高分子電解質を含み、多層構造である、リチウムイオン2次電池用電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、携帯電話、カムコーダーおよびノートパソコンのような携帯用電子機器の発達および小型化、軽量化の要求により、これらの電力源として使用されるリチウムイオン2次電池の高容量、長寿命、高安全性などの特性の向上が要求されている。また、車両の電気化に対する関心が高まっており、電気自動車の電力源としてリチウムイオン2次電池が強力な代案として浮かび上がっている。
【0003】
リチウムイオン2次電池は、一般に、正極および陰極、正極と陰極の物理的な接触を防止する分離膜、リチウムイオンを伝達する電解質によって構成される。リチウムイオン2次電池は正極および陰極で電気化学的酸化、還元反応によって、電気エネルギーを生成する。
【0004】
リチウムイオン2次電池で、電解質は正極および陰極のイオンを運送する媒体として液体電解質が一般に使用される。しかしながら、液体電解質は液体漏出や可燃性素材の使用による変形および爆発の恐れがあり、揮発性溶媒の使用によって高温で不安定になることがある。
【0005】
したがって、最近は液体電解質の代わりに固体電解質を使うことが検討されている。固体電解質は難燃性素材を用いることによって、安定性が高く、非揮発性素材からなるので、高温で安定である。また、固体電解質が分離膜の役割を果たすので、既存の分離膜が不要となり、薄膜化の可能性がある。
【0006】
しかしながら、従来の固体電解質は電極と固体電解質間の点接触によって界面抵抗が高く、イオン伝導度が低く、柔軟性が低下してロール・トゥ・ロール工程に適用しにくいという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的としては、イオン伝導度に優れて柔軟性が向上した多層構造のリチウムイオン2次電池用電解質およびこれを含むリチウムイオン2次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としては、リチウムイオンを挿入および/または脱離できる正極および陰極を含むリチウムイオン2次電池用電解質であって、セラミック固体電解質を中心にその両面にゲル高分子電解質を含み、多層構造である、リチウムイオン2次電池用電解質である。
【0009】
前記セラミック固体電解質はLiS−P、(La、Li)TiO(LLTO)、Li1+xAlTi2−x(PO(LATP)、およびLi1+xTi2−xAlSi(PO3−yからなる群より選択される1種以上を含むことができる。
【0010】
前記セラミック固体電解質はバインダーを含むことができる。
【0011】
前記バインダーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)であることができる。
【0012】
前記バインダーは前記セラミック固体電解質100重量部当り0.1%重量部ないし50%重量部で含むことができる。
【0013】
前記セラミック固体電解質の厚さは10μmないし1000μmであることができる。
【0014】
前記ゲル高分子電解質は高分子化合物を構成する単量体とリチウム塩を8:1ないし16:1のモル比で含むことができる。
【0015】
前記陰極側に配置されるゲル高分子電解質は1〜50重量%のエチレンカーボネート(EC)を含むことができる。
【0016】
本発明の他の側面としては、上記電解質を含むリチウムイオン2次電池である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、イオン伝導度に優れており、薄くても柔軟性が向上したリチウムイオン2次電池用電解質を提供することができる。
【0018】
また、上記リチウムイオン2次電池用電解質を含むリチウムイオン2次電池によれば、電池容量およびレート特性が向上し、高温または過電圧条件で爆発および発火を防止できるので、安全なリチウムイオン2次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明によるリチウムイオン2次電池の組み立てを概略的に示す図である。
図2】本発明の実施例1で製造された電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、リチウムイオンを挿入および/または脱離できる正極および陰極を含むリチウムイオン2次電池用電解質であって、セラミック固体電解質を中心にその両面にゲル高分子電解質を含み、多層構造である、リチウムイオン2次電池用電解質を提供する。
【0021】
本発明で、電解質は、セラミック固体電解質を中心にその両面にゲル高分子電解質を含み、多層構造である電解質である。これは、セラミック固体電解質を中心にその両面にゲル高分子電解質が配置された構造であることができ、このとき、両面に配置されるゲル高分子電解質はその成分が同一または異なってもよい。
【0022】
本発明のセラミック固体電解質とゲル高分子電解質を含むリチウムイオン2次電池用電解質は、ゲル高分子電解質によって界面抵抗を低くして電池の容量およびレート特性を高めることができ、セラミック固体電解質を用いることによって、電池が高温または過電圧条件で正極と負極の短絡によって爆発および発火することを防止することができる。
【0023】
上記セラミック固体電解質は、硫化物、酸化物およびリン化物などの無機セラミックで製造することができる。硫化物系無機セラミックとしては、LiS−P、LiS−P−LiSiO、LiS−Ga−GeS、LiS−Sb−GeS、Li3.25−Ge0.25−P0.75(Thio−LISICON)などがあり、イオン伝導度が高く、水分との反応性が大きい。酸化物系無機セラミックとしては、(La、Li)TiO(LLTO)、LiLaCaTa12、LiLaANb12(A=Ca、Sr)、LiNdTeSbO12、LiBO2.50.5、LiSiAlOなどがあり、リン化物系無機セラミックとしては、Li1+xAlGe2−x(PO(LAGP)、Li1+xAlTi2−x(PO(LATP)、Li1+xTi2−xAlSi(PO3−y、LiAlZr2−x(PO、LiTiZr2−x(POなどがある(ここで、0≦x≦1、0≦y≦1)。酸化物系およびリン化物系固体電解質は硫化物系よりイオン伝導度は相対的に低いが安定な化合物であり、電極および分離膜のコーティング材に使用可能である。本発明において、好ましくはLATP、LLTO、Li1+xTi2−xAlSi(PO3−y、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0024】
本発明で、上記セラミック固体電解質は、バインダーとしてテフロン(登録商標)系物質、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含むことができる。PVDFは柔軟な機械的性質を有するので、固体セラミック電解質に含まれることで、薄くても柔軟で、イオン伝導度が優れた電解質を製造することができる。
【0025】
上記バインダーは、セラミック固体電解質100重量部当り0.1重量部ないし50重量部であることが好ましい。この範囲内であれば電解質の機械的強度および柔軟性を向上させることができる。
【0026】
本発明で、上記セラミック固体電解質の厚さは、10μmないし1000μmの範囲であり、好ましくは10μmないし100μmの範囲である。セラミック固体電解質の厚さがこの範囲内であれば機械的強度が良好でかつ柔軟で、イオン伝導度が優れた電解質を得ることができる。
【0027】
上記ゲル高分子電解質は、高分子化合物、有機溶媒およびリチウム塩からなり、有機溶媒と塩を高分子化合物に混合したハイブリッドゲルの電解質を用いることができる。
【0028】
上記高分子化合物は、電解質の支持体の役割を果たすものであって、例えばポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリイミド、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリイミドなどが用いられ、好ましくは分子量が10万〜60万であるPEOまたはポリイミドを使用することができる。
【0029】
上記有機溶媒は、高分子化合物をよく溶解して可塑剤の役割をし、化学的に安定であることが好ましい。代表的な例としては、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなどが挙げられ、これらを単独または組み合わせて使用することができる。
【0030】
上記リチウム塩は、LiClO、LiCFSO、LiPF、LiBFおよびLiN(CFSOからなる群より選択される1種以上を使用することができ、LiClOを使うのが水分と反応する確率が少なくて安定的であるので、望ましい。
【0031】
本発明のゲル高分子電解質で高分子化合物を構成する単量体とリチウム塩のモル比は8:1ないし16:1の範囲であることが好ましい。この範囲内では電池の性能を実現するためのイオン伝導性を高くすることができる。
【0032】
本発明で陰極側に配置されるゲル高分子電解質は、1〜50重量%のエチレンカーボネート(EC)を含有してSEI(固体電解質界面)膜を形成することができる。この含有量のエチレンカーボネートを含むことによって、Liとセラミック固体電解質との間の直接的な副反応を抑制することができる。
【0033】
上記ゲル高分子電解質は流れないほど、より薄くなるように粘度を調節して、イオン伝導度をより高めることが望ましい。つまり、ゲル高分子電解質が流れてセラミック固体電解質と互いに接触しないようになることを防止し、イオン伝導度に対する限界がセラミック固体電解質にかかるように設計することが好ましい。
【0034】
また、本発明は、上記したリチウムイオン2次電池用電解質を含むリチウムイオン2次電池を提供する。例えば、リチウムイオンを挿入および/または脱離できる正極および陰極、上記した電解質を含むリチウムイオン2次電池を提供する。
【0035】
リチウムイオン2次電池で使用される電極は、通常、活物質、バインダーおよび導電剤を溶媒と混合してスラリーを形成し、これを電極集電体に塗布し、乾燥およびプレスして製造される。
【0036】
本発明のリチウムイオン2次電池では、陰極活物質として天然黒鉛、人造黒鉛、炭素繊維、コークス、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、活性炭、リチウム金属やリチウム合金などを使用することができ、正極活物質としてはLiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiMnO、LiMn、LiFePOなどのようなリチウム金属酸化物を使用することができる。
【0037】
リチウムイオン2次電池の集電体は、活物質の電気化学反応によって電子を集めたり、電気化学反応に必要な電子を供給する役割を果たす。
【0038】
陰極集電体は、電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、焼成炭素、ステンレススチール、銅またはステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などを処理したもの、アルミニウム−カドミウム合金などが用いられる。
【0039】
また、正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、アルミニウムまたはステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などを処理したものなどが用いられる。
【0040】
これら集電体の表面に微細な凹凸を形成して電極活物質の結合力を強化することもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発砲体、不織布体など多様な形態に用いることができる。
【0041】
上記バインダーは、活物質と導電剤を結着させて集電体に固定させる役割を果たし、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン−ジエンポリマー(EPDM)、ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴムなどリチウムイオン2次電池で通常使用されるものなどを使用できる。
【0042】
上記導電剤は、電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば人造黒鉛、天然黒鉛、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サマーブラック、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、アルミニウム、ニッケルなどの金属粉末などが用いることができる。
【0043】
本発明のリチウムイオン2次電池は、ゲル高分子電解質がコーティングされた正極および陰極に、好ましくは一般にリチウムイオン2次電池で使用される液体電解質を一滴落とした後、その間にセラミック固体電解質を位置させ、真空乾燥することによって製造でき、このとき、セラミック固体電解質の両面に配置されるゲル高分子電解質はその構成成分が同一または異なってもよい。
【0044】
また、本発明によるリチウムイオン2次電池の形状としては、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、扁平型および角型など通常リチウムイオン2次電池に使用されるものを使用できる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
【0046】
(実施例1)
「セラミック固体電解質の製造」
LiCO、Al、TiO、(NH)HPO原料をそれぞれ0.7:0.2:1.6:3のモル比で機械的に混合した後、350℃で48時間焼成して(NH)HPOを溶解した。その後、焼成した試料をジルコニアボールミルで粉砕し、メッシュを用いて8mm以下の粒子をろ過した。選別された粒子を再び950℃で8時間熱処理してLATPパウダーを得た。
【0047】
このようにして得られたLATPパウダー10gを、バインダーとして1gのPVDFと均一に混合した。この混合物を用いて、ペレットプレス装置(モデル名:4350、Carver社製)を使用して、厚さ100μm、直径16mmの円形のセラミック固体電解質を製造した。製造されたシート型固体電解質を用いて、撓み柔軟性テストを行った。
【0048】
「正極の製造」
正極活物質としてLiCoO、導電剤としてデンカブラック(Denka Black)およびPVDFバインダーを、それぞれ94:3:3で混合した後に、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)溶媒を用いてスラリーを製造した。得られた混合物をAl箔上にバーコーティングし、120℃で真空乾燥して正極を製造した。
【0049】
「ゲル高分子電解質の製造」
ポリエチレンオキサイド(PEO;−(CHCHO)−)とLiClOを高分子化合物を構成する単量体とリチウム塩のモル比が8:1となるように混合し、この混合粉末1gをアセトニトリル9gに溶かして粘性のある混合液を得た。この混合液を正極およびLi陰極にバーコーティングした後、有機溶媒を乾燥蒸発させてゲル高分子電解質がコーティングされた陰極と正極を製造した。
【0050】
「電池の組み立て」
上記製造したゲル高分子電解質がコーティングされた正極と陰極に液体電解質(1.3MのLiPF、EC:EMC:DEC=3:2:5溶液)を一滴落とし、その間にセラミック固体電解質を位置させて真空乾燥させ、電池を製造した。このような過程を図1に示し、このように組み立てられた電池の構造を図2に示す。
【0051】
「評価」
上記製造した電池を4.2Vまで充電した後、150℃まで5℃/分で温度上昇させた後、150℃で10分間放置した。
【0052】
上記製造した電池を12Vまで0.2Cで充電した。
【0053】
(実施例2)
「セラミック固体電解質の製造」
上記実施例1と同様に製造した。
【0054】
「正極の製造」
正極活物質としてLiMnを使ったことを除いては、上記実施例1の正極製造と同様である。
【0055】
「ゲル高分子電解質の製造」
上記実施例1と同様に製造した。
【0056】
「電池の組み立て」
上記実施例1と同様に組み立てた。
【0057】
「評価」
上記実施例1と同様に評価した。
【0058】
(比較例1)
「セラミック固体電解質の製造」
上記実施例1と同様に製造した。
【0059】
「正極の製造」
上記実施例1と同様に製造した。
【0060】
「ゲル高分子電解質の製造」
ポリエチレンオキサイド(PEO;−(CHCHO)−)とLiClOを高分子化合物を構成する単量体とリチウム塩のモル比が8:1となるように混合し、この混合粉末1gをアセトニトリル9gに溶かして粘性のある混合液を得た。この混合液をLi陰極にバーコーティングした後、有機溶媒を乾燥蒸発させてゲル高分子電解質がコーティングされた陰極を製造した。
【0061】
「電池の組み立て」
ゲル高分子電解質がコーティングされたLi陰極とゲル高分子電解質がコーティングされない正極を使って、その間にセラミック固体電解質を位置させ、電池を組み立てた。
【0062】
「評価」
上記実施例1と同様に評価した。
【0063】
(比較例2)
正極活物質としてLiMnを使ったことを除いては、上記比較例1と同様に電極の製造、電池の組み立て、評価を行った。
【0064】
(比較例3)
電池の組立時にセラミック固体電解質の代わりに同じ厚さのゲル高分子電解質を使ったことを除いては、上記実施例1と同様な方法で電池を製造し、同様の評価を行った。
【0065】
(比較例4)
電池の組立時にセラミック固体電解質の代わりに同じ厚さのゲル高分子電解質を使ったことを除いては、上記実施例2と同様な方法で電池を製造し、同様の評価を行った。
【0066】
(比較例5)
「正極の製造」
上記実施例1と同様に製造した。
【0067】
「電池の組み立て」
上記製造した正極、Li陰極、PE分離膜、液体電解質(1.3MのLiPF、EC:EMC:DEC=3:2:5溶液)を用いてセラミック固体電解質なしに電池を製造し、上記実施例1と同様に評価した。
【0068】
(比較例6)
「正極の製造」
上記実施例2と同様に製造した。
【0069】
「電池の組み立て」
上記製造した正極、Li陰極、PE分離膜、液体電解質(1.3MのLiPF、EC:EMC:DEC=3:2:5溶液)を用いてセラミック固体電解質なしに電池を製造し、上記実施例1と同様に評価した。
【0070】
(比較例7)
厚さ1000μmに製造したことを除いては、セラミック固体電解質を上記実施例1と同様な方法で製造し、セラミック固体電解質の柔軟性をテストした。
【0071】
上記実施例および比較例で得られたセラミック固体電解質のイオン伝導度および柔軟性を測定し、その結果を下記の表1に示す。
【0072】
「イオン伝導度の測定」
Maker:Bio−Logic SASのVSPモデルのインピーダンス測定器を利用して、セラミック固体電解質のイオン伝導度を測定した。このとき、開路電位で10mVのamplitude、1MHzから1Hzまでの周波数をスキャンした。
【0073】
「柔軟性の測定」
柔軟性の測定は、次の通りである。曲げない状態で1cm×1cmのサンプルを0℃としてセットして、サンプルを曲げることで割れ始めるときの、水平線と、サンプルの開始部とサンプルの終点部とをつなぐ線との角度として柔軟性を定義する。
【0074】
「電池容量の測定」
電池に対して3.0Vから4.2Vまで0.1Cで充放電を2回行った。
【0075】
「安全性の評価」
高温評価:製造した電池を4.2Vまで1Cで充電した後、5℃/分の上昇速度で150℃まで温度を上昇させた後、150℃で10分間放置した。
【0076】
過充電:製造した電池を12Vまで0.2Cで充電した。
【0077】
【表1】
【0078】
上記表1からわかるように、セラミック固体電解質とゲル高分子電解質を含む本発明のリチウムイオン電池は、ゲル高分子電解質がコーティングされない正極を用いた電池(比較例1、2)より電池容量が大きく、セラミック固体電解質を含まない電池(比較例3ないし6)より高温、過充電安全性に優れている。
図1
図2