特許第6198476号(P6198476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6198476
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20170911BHJP
   A23L 29/212 20160101ALI20170911BHJP
   A23L 29/219 20160101ALI20170911BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20170911BHJP
【FI】
   A23L7/109 C
   A23L29/212
   A23L29/219
   A23L29/00
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-129285(P2013-129285)
(22)【出願日】2013年6月20日
(65)【公開番号】特開2015-2695(P2015-2695A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2015年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】100093377
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 良子
(74)【代理人】
【識別番号】100108235
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】大村 雅人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 美和
【審査官】 西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−305011(JP,A)
【文献】 特開昭57−036955(JP,A)
【文献】 特開平08−163962(JP,A)
【文献】 特開2002−262796(JP,A)
【文献】 特開平10−225269(JP,A)
【文献】 特開2015−002696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/00− 7/25
A23L 29/00−29/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製麺用の穀粉に、ヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、アセチル化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプンおよびモチ種デンプンから選ばれる少なくとも1種のデンプンを、穀粉と当該デンプンの合計質量に基づいて3〜50質量%の割合で配合し、さらに麺生地の調製に用いる水に油脂で被覆されていない有機酸を添加して調製した有機酸水溶液(但し、有機酸と共にアルカリ剤を添加した有機酸水溶液を除く)を、有機酸としての添加量が穀粉と前記デンプンの合計質量に基づいて0.03〜1質量%の割合となる量で添加して、有機酸が添加された、アルカリ剤無添加の麺生地を調製し、当該麺生地を用いて麺類(但し、油揚げ即席麺類を除く)を製造することを特徴とする油揚げ即席麺類以外の麺類の製造方法。
【請求項2】
有機酸が、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸およびアスコルビン酸から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の麺類の製造方法。
【請求項3】
モチ種デンプンが、モチ米デンプン、馬鈴薯モチデンプン、モチ小麦デンプンおよびモチトウモロコシデンプンから選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の麺類の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法によって茹麺を製造し、当該茹麺をかんすい水溶液で処理して茹麺の品質を一層向上させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の加工デンプンおよび/またはモチ種デンプンと、有機酸を添加して麺類を製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、麺生地の調製時に特定の加工デンプンおよび/またはモチ種澱粉と有機酸を添加して麺類を製造することによって、粘弾性が強く、ソフトでモチモチとした良好な食感を有する麺類を製造する方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
粘弾性が強くてモチモチとした食感を有する麺類を製造するために、麺類の製造時に加工デンプン(化工デンプン)を配合することが行われている(例えば、特許文献1〜3)。しかし、加工デンプンを配合しても、麺類の食感が向上しなかったり、風味や食味の低下をもたらすことがある。
また、高アミロペクチンデンプンと穀粉を使用して麺類を製造することが知られている(特許文献4)。しかし、この方法による場合は、高アミロペクチンデンプンに加水し、加熱・糊化(α化)してデンプン糊化物をつくり、そのデンプン糊化物を穀粉に加えて麺生地を製造する必要があるため、麺類の製造に手間および時間を要する。
【0003】
また、麺類の保存性を向上させたり、麺類の腰を強くしたり、弾力性を増すために、麺生地の調製時に有機酸や食酢を添加したり、麺の製造後に有機酸を含有する水溶液などで処理することが行われている(特許文献5〜10など)。
しかし、麺生地の調製時に有機酸や食酢を添加する前記した従来技術で得られる麺類は、粘弾性やモチモチ感の向上効果は十分ではない。
また、麺の製造後に麺を有機酸や食酢の水溶液で処理する方法は、防黴や保存性の向上の点ではある程度の効果が得られるが、麺類の粘弾性やモチモチ感の向上効果は低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−39334号公報
【特許文献2】特開2002−223713号公報
【特許文献3】特開2005−27643号公報
【特許文献4】特開昭61−031054号公報
【特許文献5】特開昭54−126744号公報
【特許文献6】特開昭56−144064号公報
【特許文献7】特開昭57−105176号公報
【特許文献8】特開昭61−119151号公報
【特許文献9】特開昭61−227748号公報
【特許文献10】特開昭63−271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高い粘弾性を有していてモチモチ感に優れると共に滑らかで食感に優れ、しかも食味などの点でも優れる麺類およびその製造方法を提供することである。
そして、本発明の目的は、高い粘弾性を有していてモチモチ感に優れると共に滑らかで食感に優れ、しかも食味などの点でも優れる麺類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく種々研究を重ね、当該研究の一環として、麺用穀粉に特定の加工デンプンおよび/またはモチ種デンプンを配合すると共に有機酸を添加して麺生地を調製して麺類を製造することを試みたところ、全く予想外なことに、従来よりも少ない加工デンプンおよび/またはモチ種デンプンの配合量、および従来よりも少ない有機酸の添加量で、しかもデンプンを予め糊化するなどの手間のかかる工程を要することなく、通常と同様の工程で、予想以上の高い粘弾性を有していてソフトでモチモチとした良好な食感を有し、その上滑らかさ、食味、風味などの点でも優れる麺類を簡単に製造できること、しかも当該製麺方法で得られた麺類の品質が、加工デンプンおよび/またはモチ種澱粉のみを添加して製造した麺類、および有機酸のみを添加して製造した麺類に比べて、一層優れていることを見出した。
さらに、本発明者らは、前記した方法で茹麺をつくり、その茹麺をかんすい水溶液で処理すると、粘弾性および滑らかさが一層向上すると共に、酸味がある場合は酸味が解消されることを見出して本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) 製麺用の穀粉に、ヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、アセチル化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプンおよびモチ種デンプンから選ばれる少なくとも1種のデンプンを、穀粉と当該デンプンの合計質量に基づいて3〜50質量%の割合で配合し、さらに有機酸を、穀粉と当該デンプンの合計質量に基づいて0.03〜1質量%の割合で添加して麺生地を調製し、当該麺生地を用いて麺類を製造することを特徴とする麺類の製造方法である。
【0008】
そして、本発明は、
(2) 有機酸が、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸およびアスコルビン酸から選ばれる少なくとも1種である前記(1)の麺類の製造方法;
(3) モチ種デンプンが、モチ米デンプン、馬鈴薯モチデンプン、モチ小麦デンプンおよびモチトウモロコシデンプンから選ばれる少なくとも1種である前記(1)または(2)に麺類の製造方法;
(4) 有機酸を麺生地の調製に用いる水に添加して有機酸水溶液にして穀粉に加える前記(1)〜(3)のいずれかの麺類の製造方法;および、
(5) 前記(1)〜(4)のいずれかの製造方法で得られる麺類;
である。
【0009】
さらに、本発明は、
(6) 前記(1)〜(4)のいずれかの製造方法によって茹麺を製造し、当該茹麺をかんすい水溶液で処理して茹麺の品質を一層向上させる方法;および、
(7) 前記(6)の方法で得られる茹麺;
である。
【発明の効果】
【0010】
製麺用の穀粉に、ヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、アセチル化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプンおよびモチ種デンプンから選ばれる少なくとも1種のデンプンを、穀粉と当該デンプンの合計質量に基づいて3〜50質量%の割合で配合し、さらに有機酸を、穀粉と当該デンプンの合計質量に基づいて0.03〜1質量%の割合で添加して麺生地を調製し、当該麺生地を用いて麺類を製造する本発明の方法により、粘弾性が強く、ソフトでモチモチとした良好な食感を有し、しかも滑らかさおよび食味などの点でも優れる麺類を得ることができる。
本発明の製造方法で得られる麺類は、黴や菌類などが発生しにくく、保存性に優れている。
さらに、前記した本発明の製造方法で茹麺を製造した後、当該茹麺をかんすい水溶液で処理することによって、茹麺の粘弾性および滑らかさを一層向上させることができ、しかも茹麺に酸味がある場合は酸味を無くすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明では、製麺用の穀粉(麺生地の調製に用いる穀粉)に、ヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、アセチル化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプンおよびモチ種デンプンから選ばれる少なくとも1種のデンプン[以下これを「デンプン(A)」ということがある]と有機酸を添加して麺生地を調製し、当該麺生地を用いて麺類を製造する。
【0012】
本発明で用いるヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、アセチル化デンプンおよびアセチル化リン酸架橋デンプンは、デンプンに特定の化学処理を施すことによって得られる加工デンプン(化工デンプン)である。
これらの加工デンプンのうち、ヒドロキシプロピル化デンプンは、デンプンをプロピレンオキシドでエーテル化したもので、デンプン分子の水酸基のうちのいくつかがヒドロキシプロピル基でエーテル化されている。
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンは、デンプンをトリメタリン酸またはオキシ塩化リンでエステル化すると共にプロピレンオキシドでエーテル化したもので、デンプン分子間のいくつかの水酸基がリン酸で架橋され、デンプン分子の水酸基のうちのいくつかがヒドロキシプロピル基でエーテル化されている。
アセチル化デンプンは、酢酸デンプンとも称され、デンプンを無水酢酸でエステル化したもので、デンプン分子の水酸基のうちのいくつかがアセチル化されている。
アセチル化リン酸架橋デンプンは、デンプンをオキシ塩化リンまたはトリメタリン酸と無水酢酸または酢酸でエステル化したもので、デンプン分子間のいくつかの水酸基がリン酸で架橋され、デンプン分子の水酸基のいくつかがアセチル化されている。
【0013】
ヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、アセチル化デンプンおよびアセチル化リン酸架橋デンプンのベースをなすデンプンの種類は特に制限されず、ウルチ種デンプン、モチ種デンプンのいずれをベースとするものであってもよく、例えば、馬鈴薯デンプン、モチ種馬鈴薯デンプン、小麦デンプン、モチ小麦デンプン、米デンプン、モチ米デンプン、トウモロコシデンプン(コーンスターチ)、モチトウモロコシデンプン(ワキシーコーンスターチ)、甘藷デンプン、豆デンプンなどのデンプンに前記した加工(化学処理)を施して得られたものなどを挙げることができる。
【0014】
化学処理を施した加工デンプンとしては、本発明で用いるヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、アセチル化デンプンおよびアセチル化リン酸架橋デンプン以外に、酸化デンプン、アセチル化酸化デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウムなどが挙げられるが、これらの他の加工デンプンを用いた場合には、モチモチ感、粘弾性、滑らかさなどが十分ではなく、本発明の効果を奏することが困難である。
【0015】
本発明で用いるモチ種デンプンは、加工処理を施されていないモチ種デンプンをいい、本発明で用い得るモチ種デンプンとしては、モチ米デンプン、馬鈴薯モチデンプン、モチ小麦デンプン、モチトウモロコシデンプン(ワキシーコーンデンプン、ワキシーコーンスターチ)などを挙げることができ、そのうちでも、モチ米デンプン、モチトウモロコシデンプン(ワキシーコーンデンプン)が、入手性などの点から好ましく用いられる。
【0016】
本発明では、ヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、アセチル化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプンおよびモチ種デンプンのうちの1種類だけを使用してもよいしまたは2種類以上を併用してもよい。
2種類以上を併用する場合は、モチ種デンプンを用いずに前記した4種類の加工デンプンのうちの2種類以上を併用してもよいし、前記した4種類の加工デンプンのうちの1種類または2種類以上とモチ種デンプンを併用してもよい。
また、本発明においてモチ種デンプンを用いる場合は、1種類のモチ種デンプンのみを使用してもよいし、または2種類以上のモチ種デンプンを併用してもよく、その際に前記した4種類の加工デンプンと併用しなくてもよいし、または前記した4種類の加工デンプンのうちの1種または2種以上と併用してもよい。
【0017】
本発明で用い得る有機酸としては、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸およびアスコルビン酸などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
そのうちでも、酢酸および乳酸のうちの一方または両方を用いることが、特に酢酸を用いることが、酸味がきつくない点、入手性などの点から好ましい。
本発明では、有機酸として、前記した有機酸自体を用いてもよいし、または前記した有機酸の1種または2種以上を含有する醸造酢(例えば、米酢、米黒酢、穀物酢、リンゴ酢、ブドウ酢、果実酢など)などのような有機酸水溶液を用いてもよい。
【0018】
本発明で用いる「穀粉」とは、デンプン以外の穀粉をいい、本発明では、穀粉として、麺類の製造に従来から用いられている、デンプン以外の穀粉のいずれもが使用できる。本発明で用い得る穀粉の例としては、小麦粉、そば粉、米粉、大麦粉、大豆粉などを挙げることができ、これらの穀粉の1種を単独で用いてもよいし、または2種以上の穀粉を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
小麦粉としては、麺類の製造に従来から用いられている小麦粉のいずれもが使用でき、中力粉、準強力粉、強力粉、薄力粉、デュラム小麦粉、これらの2種または3種以上をブレンドした小麦粉などを用いることができる。そのうちでも、小麦粉としては、中力粉、準強力粉、デュラム小麦粉がモチモチ感に優れる麺類が得られる点から好ましく用いられる。
また、薄力粉、中力粉、準強力粉および強力粉は、それぞれ、タンパク質含量と灰分含量に基づいて一等粉、準一等粉、二等粉、三等粉、末粉に区分されているが、本発明では、小麦粉として、灰分含量の少ない上級粉(一等粉、準一等粉)だけでなく、灰分含量の多い下等粉(例えば、二等粉など)も用いることができ、下等粉を用いた場合にも、粘弾性が強く、ソフトでモチモチとした良好な食感を有する麺類を製造することができる。
【0020】
本発明では、麺生地の調製に当たって、ヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、アセチル化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプンおよびモチ種デンプンから選ばれる少なくとも1種のデンプン(A)を、穀粉とデンプン(A)の合計質量に基づいて、3〜50質量%の割合で穀粉に配合するものであり、3〜45質量%の割合で配合することが好ましく、4〜40質量%の割合で配合することがより好ましい。
デンプン(A)を前記した範囲内の量で配合することによって、粘弾性が強く、ソフトでモチモチとして良好な食感を有し、しかも滑らかさなどに優れる麺類を製造することができる。
デンプン(A)の配合量が、穀粉とデンプン(A)の合計質量に基づいて、3質量%未満であると粘弾性が強くてモチモチとした良好な食感を有する麺類が得られなくなり、一方50質量%を超えると製麺適性が悪くなる。
【0021】
本発明では、麺生地の調製に当たって、有機酸を、穀粉とデンプン(A)の合計質量に基づいて、0.03〜1質量%の割合で添加することが必要であり、0.05〜0.9質量%の割合で添加することが好ましく、0.05〜0.5質量%の割合で添加することがより好ましい。
ここで、本発明における前記した有機酸の添加量は、「有機酸」自体の添加量をいう。そのため、醸造酢などのような有機酸を含む食酢を用いる場合は、当該食酢中に含まれている有機酸の量をいう。
有機酸を前記した範囲内の量で添加することによって、粘弾性が強く、ソフトでモチモチとして良好な食感を有し、しかも滑らかさや食味にも優れる麺類を製造することができる。
有機酸の添加量が、穀粉およびデンプン(A)の合計質量に基づいて、0.03質量%未満であると、粘弾性が強く、モチモチとした良好な食感を有する麺類が得られなくなり、一方1質量%を超えると、酸味が強くなって、得られる麺類の食味や風味が低下し、しかも柔らかすぎて脆い食感となる。
【0022】
有機酸の添加に当たっては、有機酸を穀粉およびデンプン(A)中に均一に混合するために、麺生地の調製時に加える水の全量または一部に、有機酸(有機酸自体および/または食酢)を添加して有機酸の水溶液を調製し、当該有機酸水溶液を穀粉および/またはデンプン(A)に加えることが好ましい。
【0023】
穀粉にデンプン(A)および有機酸を添加して麺生地を調製する。
麺生地の調製は、麺類の種類などに応じて、従来と同様の方法で行うことができる。
一般的には、穀粉およびデンプン(A)の合計100質量部に対する加水量が、好ましくは20〜60質量部、より好ましく25〜55質量部、更に好ましくは30〜50質量部となるようにして水(好ましくは有機酸を添加して調製した有機酸水溶液)を加えて、生地が均一にまとまった状態になるまで、15〜30℃、好ましくは20〜25℃の温度で混捏作業を行うことが好ましい。
麺生地を調製する際の加水量が少なすぎると、しっとりとした生地が得られなくなって、麺類の品質(特に粘弾性、モチモチ感)が低下したものになり易く、一方加水量が多すぎると、麺生地がべたついて麺線や麺皮への切り出し工程での作業性が悪くなったり、乾燥して乾燥麺や半乾燥麺を製造する際に乾燥に長時間を要するようになったり、得られる麺類の食感が粘弾性のない弱いものになり易い。
混捏作業は、麺生地を製造する際に通常用いられている混捏装置、例えばトーキョーメンキ社製「横型ミキサー」やその他の混捏装置を用いて行なうことができる。
【0024】
本発明では、麺生地の調製時に、グルテン、油脂などの麺質改善剤を更に添加することができる。また、例えば、食塩、かんすい(かん粉)、乳化剤、着色料、防腐剤、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸などの栄養強化剤、山芋粉、卵液、卵粉末、茶粉末、海藻粉末などの添加剤の1種または2種以上を添加することができる。前記した成分を添加する際の添加量や組み合わせも特に制限されず、製造する麺の種類などに応じて、従来の製麺技術におけるのと同様にして行なえばよい。
【0025】
本発明で製造する麺の種類は特に制限されず、例えば、うどん、冷麦、そうめん、きしめん、中華麺、焼きそば、麺皮類(ギョウザ、シュウマイ、春巻、ワンタンの皮など)、日本そば、スパゲッティ、マカロニなどのいずれであってもよい。また、麺の形態も何ら制限されず、生麺、乾燥麺、半乾燥麺、茹麺、蒸麺、冷凍麺、即席麺などのいずれであってもよい。
そのため、麺生地の調製工程以降の製麺工程は、製造する麺の種類などに応じて、従来技術で採用されているのと同様の方法を採用して行うことができる。
【0026】
また、前記した本発明の製造方法に従って麺類を製造し、それによって得られる麺類が生麺、乾燥麺または半乾燥麺である場合は茹で上げて茹麺にし、また茹麺を直接製造した場合はそのままで、当該茹麺をかんすい水溶液で処理すると、粘弾性および滑らかさを一層向上させることができ、しかも茹麺に酸味があった場合は酸味を無くして食味を向上させることができる。
本発明で用いる「かんすい」は、「炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、およびリン酸類のカリウム塩又はナトリウム塩という4種類の塩のうちの1種類または2種類以上を含む、アルカリ性の液体または粉体」である。かんすいについては、食品衛生法で成分規格が定められており、前記した塩の配合組成などを変えた種々のものが市販されており、例えば、赤かんすい(オリエンタル酵母工業製)、青かんすい(オリエンタル酵母工業製)などを挙げることができる。
本発明では、食品に用い得るかんすいであればいずれも使用でき、そのうちでも、赤かんすい(オリエンタル酵母工業製)、青かんすい(オリエンタル酵母工業製)が、風味などの点から好ましく用いられる。
【0027】
茹麺をかんすい水溶液で処理する方法としては、茹麺をかんすい水溶液に浸漬する方法、茹麺にかんすい水溶液を噴霧する方法などを挙げることができ、そのうちでも茹麺をかんすい水溶液に浸漬する方法が好ましく採用される。
茹麺をかんすい水溶液で処理する際のかんすい水溶液としては、茹麺の粘弾性および滑らかさの向上効果、茹麺の酸味の解消などの点から、粉末状のかんすいを水に溶解したものとして、濃度が0.01〜2.0質量%がかんすい水溶液が好ましく用いられ、濃度が0.05〜1.5質量%のかんすい水溶液がより好ましく用いられる。
茹麺をかんすい水溶液に浸漬する際のかんすい水溶液の温度は2〜50℃、特に5〜40℃が好ましく、浸漬時間は1〜300秒、特に1〜180秒が好ましい。
【実施例】
【0028】
以下に実施例などによって本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の例によって何ら限定されない。
【0029】
《実施例1》
(1) 水3550gに、酢酸50gおよび食塩400gを添加し溶解させて酢酸水溶液4000gを調製した。
(2) 小麦粉(日清製粉株式会社製「特雀」)6000gに、ヒドロキシプロピル化デンプン(松谷化学工業社製「ゆり」)4000gを混合し、上記(1)で調製した酢酸水溶液の全量を加えて混捏装置(トーキョーメンキ社製の横型ミキサー)を使用して、20℃で10分間混捏して麺生地を調製した。
(3)上記(2)で得られた麺生地を製麺ロールにてロール間隔10mmで麺帯にまとめ、室温下(20℃)にビニール袋中で30分間熟成させた。熟成後、この麺帯を更に製麺ロールにて圧延して約2.5mm厚の麺帯にした後、No.10角切刃を用いて麺線に切り出して生麺(生うどん)を製造した。
(4) 上記(3)で得られた生麺(生うどん)を十分量の沸騰水中で茹で歩留りが250%になるようにして茹で時間を調節しながら茹上げた後、直ちに冷水(水温5℃)中で水洗いし、ザルに上げて水を切って茹麺(茹うどん)を製造した。
(5) 上記(4)で得られた茹麺の粘弾性および滑らかさを下記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、上記(4)で得られた茹麺について酸味の有無を下記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0030】
《実施例2〜7》
(1) 実施例1の(2)において、ヒドロキシプロピル化デンプン4000gの代わりに、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン(松谷化学工業社製「あさがお」)、アセチル化デンプン(松谷化学工業社製「さくら」)、アセチル化リン酸架橋デンプン(松谷化学工業社製「すいせん」)、モチ米デンプン(上越スターチ社製「モチールB」)、ワキシーコーンデンプン(日本食品化工株式会社製「日食ワキシースターチ」)または馬鈴薯モチデンプン(AVEBE社製「Eliane」)4000gを混合した以外は、実施例1の(1)〜(4)と同じ操作を行なって、茹麺を製造した。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の粘弾性および滑らかさを下記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた茹麺について酸味の有無を下記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0031】
《実施例8》
(1) 実施例1の(1)において、酢酸50gの代わりに、乳酸50gを用いた以外は、実施例1の(1)〜(4)と同じ操作を行なって、茹麺を製造した。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の粘弾性および滑らかさを下記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた茹麺について酸味の有無を下記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0032】
《実施例9》
(1) 実施例5において、酢酸50gの代わりに、クエン酸50gを用いた以外は、実施例5と同じ操作を行なって、茹麺を製造した。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の粘弾性および滑らかさを下記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた茹麺について酸味の有無を下記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0033】
《比較例1〜6》
(1) 実施例1の(2)において、ヒドロキシプロピル化デンプン4000gの代わりに、酸化デンプン(松谷化学工業社製「スタビローズTA−8」)、リン酸架橋デンプン(松谷化学工業社製「フードスターチT−1」)、米デンプン(ウルチ種デンプン)(上越スターチ社製「ファインスノウ」)、コーンスターチ(ウルチ種デンプン)(日本コーンスターチ社製「コーンスターチ」)、馬鈴薯デンプン(ウルチ種デンプン)(東海澱粉社製「美幌」)または小麦デンプン(ウルチ種デンプン)(長田産業社製「宝船」)4000gを用いた以外は、実施例1の(1)〜(4)と同じ操作を行なって、茹麺を製造した。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の粘弾性および滑らかさを下記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた茹麺について酸味の有無を下記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
上記の表2の結果にみるように、実施例1〜9では、小麦粉に、ヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、アセチル化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプンおよびモチ種デンプンから選ばれるデンプンを、小麦粉と当該デンプンの合計質量に基づいて3〜50質量%の範囲内の量で配合し、さらに有機酸を、小麦粉と当該デンプンの合計質量に基づいて0.03〜1質量%の範囲内の量で添加して麺生地を調製し、当該麺生地を用いて麺類を製造したことにより、実施例1〜9で得られた麺(茹麺)は、小麦粉に、ヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、アセチル化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプンおよびモチ種デンプン以外のデンプンを配合し、有機酸を添加して製造した比較例1〜6の麺(茹麺)に比べて、麺の粘弾性が強くてソフトでモチモチとした食感を有し、しかも滑らかさにも優れている。
【0037】
《実施例10》
(1) 実施例1において、小麦粉とヒドロキシプロピル化デンプンの配合割合を下記の表3に示すように変えた以外は実施例1と同様にして麺類を製造した。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の粘弾性および滑らかさを上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表3に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた茹麺について酸味の有無を上記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0038】
《実施例11》
(1) 実施例3において、小麦粉とアセチル化デンプンの配合割合を下記の表3に示すように変えた以外は実施例3と同様にして麺類を製造した。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の粘弾性および滑らかさを上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表3に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた茹麺について酸味の有無を上記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0039】
《実施例12》
(1) 実施例5において、小麦粉とモチ米デンプンの配合割合を下記の表3に示すように変えた以外は実施例5と同様にして麺類を製造した。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の粘弾性および滑らかさを上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表3に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた茹麺について酸味の有無を上記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0040】
《実施例13》
(1) 実施例6において、小麦粉とワキシーコーンデンプンの配合割合を下記の表3に示すように変えた以外は実施例6と同様にして麺類を製造した。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の粘弾性および滑らかさを上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表3に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた茹麺について酸味の有無を上記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0041】
【表3】
【0042】
上記の表3の結果から、麺生地の調製に用いる穀粉に、ヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、アセチル化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプンおよびモチ種デンプンから選ばれるデンプンと有機酸を配合して麺生地を調製し、当該麺生地を用いて麺類を製造するに当たっては、前記デンプンの配合量を、穀粉とデンプンの合計質量に基づいて3〜50質量%とすることによって、粘弾性および滑らかさに優れる高品質の麺類が得られることが分かる。
【0043】
《実施例14》
(1) 実施例1において、酢酸の添加量を下記の表4に示すように変えた以外は実施例1と同様にして麺類を製造した。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の粘弾性および滑らかさを上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表4に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた茹麺について酸味の有無を上記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表4に示すとおりであった。
【0044】
《実施例15》
(1) 実施例3において、酢酸の添加量を下記の表4に示すように変えた以外は実施例3と同様にして麺類を製造した。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の粘弾性および滑らかさを上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表4に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた茹麺について酸味の有無を上記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表4に示すとおりであった。
【0045】
《実施例16》
(1) 実施例5において、酢酸の添加量を下記の表4に示すように変えた以外は実施例5と同様にして麺類を製造した。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の粘弾性および滑らかさを上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表4に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた茹麺について酸味の有無を上記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表4に示すとおりであった。
【0046】
《実施例17》
(1) 実施例6において、酢酸の添加量を下記の表4に示すように変えた以外は実施例6と同様にして麺類を製造した。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の粘弾性および滑らかさを上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表4に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた茹麺について酸味の有無を上記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表4に示すとおりであった。
【0047】
【表4】
【0048】
上記の表4の結果から、麺生地の調製に用いる穀粉に、ヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、アセチル化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプンおよびモチ種デンプンから選ばれるデンプンと有機酸を配合して麺生地を調製し、当該麺生地を用いて麺類を製造するに当たっては、有機酸を、穀粉と前記デンプンの合計質量に基づいて0.03〜1質量%の割合で添加することによって、粘弾性および滑らかさに優れ、酸味がないか、酸味の低い、高品質の麺類が得られることが分かる。
【0049】
《実施例18》
(1) 実施例1において、小麦粉の使用量を8000gおよびヒドロキシプロピル化デンプンの使用量を2000gに変え、酢酸の量を10g(小麦粉とデンプンの合計質量に基づいて0.1質量%)に変えた以外は、実施例1の(1)〜(4)と同じ操作を行なって、茹麺を製造した。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の粘弾性および滑らかさを上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表5に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた茹麺について酸味の有無を上記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表5に示すとおりであった。
【0050】
《実施例19》
(1) 実施例18の(1)と同じに行って製造した茹麺[茹で上げ後に直ちに冷水(水温5℃)中で水洗いし、ザルに上げて水を切った茹麺]を、濃度0.5質量%のかんすい(オリエンタル酵母工業株式会社製「青かんすい」)水溶液(水溶液温度20℃)中に1分間浸漬した後、ザルに上げて水を切った。
(2) 上記(1)で得られたかんすい水溶液処理後の茹麺の粘弾性および滑らかさを上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表5に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られたかんすい水溶液処理後の茹麺について酸味の有無を上記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表5に示すとおりであった。
【0051】
《実施例20》
(1) 実施例18において、ヒドロキシプロピル化デンプン2000gの代わりに、アセチル化デンプン2000gを用いた以外は、実施例18と同様にして、茹麺を製造した。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の粘弾性および滑らかさを上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表5に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた茹麺について酸味の有無を上記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表5に示すとおりであった。
【0052】
《実施例21》
(1) 実施例20の(1)と同じに行って製造した茹麺[茹で上げ後に直ちに冷水(水温5℃)中で水洗いし、ザルに上げて水を切った茹麺]を、濃度0.5質量%のかんすい(オリエンタル酵母工業株式会社製「青かんすい」)水溶液(水溶液温度20℃)中に1分間浸漬した後、ザルに上げて水を切った。
(2) 上記(1)で得られたかんすい水溶液処理後の茹麺の粘弾性および滑らかさを上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表5に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られたかんすい水溶液処理後の茹麺について酸味の有無を上記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表5に示すとおりであった。
【0053】
《実施例22》
(1) 実施例18において、ヒドロキシプロピル化デンプン2000gの代わりに、モチ米デンプン2000gを用いた以外は、実施例18と同様にして、茹麺を製造した。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の粘弾性および滑らかさを上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表5に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた茹麺について酸味の有無を上記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表5に示すとおりであった。
【0054】
《実施例23》
(1) 実施例22の(1)と同じに行って製造した茹麺[茹で上げ後に直ちに冷水(水温5℃)中で水洗いし、ザルに上げて水を切った茹麺]を、濃度0.5質量%のかんすい(オリエンタル酵母工業株式会社製「青かんすい」)水溶液(水溶液温度20℃)中に1分間浸漬した後、ザルに上げて水を切った。
(2) 上記(1)で得られたかんすい水溶液処理後の茹麺の粘弾性および滑らかさを上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表5に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られたかんすい水溶液処理後の茹麺について酸味の有無を上記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表5に示すとおりであった。
【0055】
《実施例24》
(1) 実施例18において、ヒドロキシプロピル化デンプン2000gの代わりに、ワキシーコーンデンプン2000gを用いた以外は、実施例18と同様にして、茹麺を製造した。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の粘弾性および滑らかさを上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表5に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた茹麺について酸味の有無を上記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表5に示すとおりであった。
【0056】
《実施例25》
(1) 実施例24の(1)と同じに行って製造した茹麺[茹で上げ後に直ちに冷水(水温5℃)中で水洗いし、ザルに上げて水を切った茹麺]を、濃度0.5質量%のかんすい(オリエンタル酵母工業株式会社製「青かんすい」)水溶液(水溶液温度20℃)中に1分間浸漬した後、ザルに上げて水を切った。
(2) 上記(1)で得られたかんすい水溶液処理後の茹麺の粘弾性および滑らかさを上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表5に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られたかんすい水溶液処理後の茹麺について酸味の有無を上記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表5に示すとおりであった。
【0057】
《実施例26〜33》
(1) 実施例18〜25において、酢酸10gの代わりに、酢酸100g(小麦粉とデンプンの合計質量に基づいて1.0質量%)を用いた以外は、実施例18〜25と同様に行って、かんすい水溶液で浸漬してない茹麺およびかんすい水溶液で浸漬処理した茹麺をそれぞれ製造した。
(2) 上記(1)で得られた茹麺の粘弾性および滑らかさを上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表5に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた茹麺について酸味の有無を上記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表5に示すとおりであった。
【0058】
【表5】
【0059】
上記の表5の結果にみるように、ヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、アセチル化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプンおよびモチ種デンプンから選ばれる少なくとも1種のデンプンを、穀粉と当該デンプンの合計質量に基づいて3〜50質量%の割合で配合し、さらに有機酸を、穀粉と当該デンプンの合計質量に基づいて0.03〜1質量%の割合で添加して麺生地を調製し、当該麺生地を用いて製造した茹麺を、かんすい水溶液で処理すると、麺の粘弾性および滑らかさが一層向上し、しかも茹麺に酸味がある場合は、酸味がなくなって食味がより良好になることがわかる。
【0060】
《実施例34》
(1) 実施例19において、浸漬処理に用いるかんすい水溶液のかんすい濃度を下記の表6に示すように変え、それ以外は実施例19と同様に行った。
(2) 上記(1)で得られたかんすい水溶液処理後の茹麺の粘弾性および滑らかさを上記の表1に示す評価基準にしたがって10名のパネラーに点数評価してもらい、その平均値を採ったところ、下記の表6に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られたかんすい水溶液処理後の茹麺について酸味の有無を上記の表1に示す評価基準に従って評価したところ、下記の表6に示すとおりであった。
【0061】
【表6】
【0062】
上記の表6の結果から、茹麺をかんすい水溶液で処理するに当たっては、濃度が0.05〜1.5質量%のかんすい水溶液を用いるのがより好ましいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の製造方法によって、粘弾性が強く、ソフトでモチモチとした良好な食感を有し、しかも滑らかさおよび食味にも優れる麺類を円滑に製造することができるため、本発明の製造方法は高品質の麺類の製造方法として有用である。