(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
縦方向及びそれに直交する横方向を有し、肌対向面及びその反対側の非肌対向面と、前後ウエスト域の一方である第1ウエスト域と、前記前後ウエスト域の他方である第2ウエスト域と、前記第1及び第2ウエスト域間に位置するクロッチ域とを含み、前記第1及び第2ウエスト域において前記縦方向へ延びる側縁部が互いに重なり合って接合され、前記第1ウエスト域にテープファスナが取り付けられた使い捨てのパンツ型着用物品において、
前記第1及び第2ウエスト域のうちの少なくとも前記第1ウエスト域は前記横方向において弾性を有しており、
前記テープファスナは、繊維不織布シートから形成され、非展開状態における長さ方向とそれに直交する幅方向とを有し、前記幅方向において対向する両側縁と、前記第1ウエスト域に固定された近位部と、展開した状態において前記テープファスナを前記第2ウエスト域の前記非肌対向面に剥離可能に掛止めするための掛止め域を有する遠位部とを含み、前記近位部と前記掛止め域との間には、前記テープファスナの両側縁どうしが近づく方向における剛性が前記近位部よりも高い高剛性領域が形成されており、
前記テープファスナは、前記近位部及び前記遠位部を画定するベースシートを有し、前記高剛性領域は前記ベースシートに補助シート片を積層して形成されることを特徴とする着用物品。
前記テープファスナの折り畳まれた状態における、前記掛止め域の存在領域を除く部分の前記テープファスナの両側縁部どうしが近づく方向のKES曲げ剛性値は0.04〜0.44gf・cm2/cmである請求項1〜4に記載の着用物品。
前記掛止め域はメカニカルファスナのフック要素を有するフックシートから形成されており、前記テープファスナの折り畳まれた状態における、前記掛止め域の存在領域の前記テープファスナの両側縁部どうしが近づく方向のKES曲げ剛性値は、0.56〜1.8gf・cm2/cmである請求項1〜5のいずれかに記載の着用物品。
前記テープファスナは、前記遠位部が折曲された状態で仮止め部を介して前記近位部に仮止めされており、前記仮止め部は前記横方向において離間する第1及び第2仮止め部を有し、前記掛止め域は前記第1及び第2仮止め部間における前記遠位部の内面に位置する請求項1〜6のいずれかに記載の着用物品。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
図1〜3を参照すると、本発明の使い捨てのパンツ型着用物品の一例として示す使い捨ておむつ10は、縦方向Y及びそれに直交する横方向Xと、縦軸P及びそれに直交する横軸Qとを有する。
【0012】
おむつ10は、肌対向面及びそれに対向する非肌対向面と、ウエスト周り方向へ延びる環状の弾性ウエストパネル11と、弾性ウエストパネル11と接合される吸収性シャーシ12と、前ウエスト域(第1又は第2ウエスト域の一方)13と、後ウエスト域(第1又は第2ウエスト域の他方)14と、前後ウエスト域13,14間に位置するクロッチ域15とを含む。おむつ10は、縦軸Pに関して対称に形成されており、弾性ウエストパネル11は、前ウエスト域13に位置する前ウエストパネル16と、後ウエスト域14に位置する後ウエストパネル17とから構成される。後ウエストパネル17の両側部18の外面には、それぞれ、テープファスナ20が取り付けられる。ここで、「後ウエスト域14の両側部18」とは、それぞれ、後ウエスト域14の両側縁14c、14dから吸収性シャーシ12の両側縁までの部分を意味する。
【0013】
前ウエスト域13は、横方向Xへ延びる内端縁13aと、縦方向Yにおいて内端縁13aと離間対向して横方向Xへ延びる外端縁13bと、内外端縁13a,13b間において縦方向Yへ延びる両側縁13c,13dとによって画定された横長矩形状を有する。
【0014】
後ウエスト域14は、横方向Xに延びる中間内端縁14aと、縦方向Yにおいて中間内端縁14aと離間対向して横方向Xに延びる外端縁14bと、外端縁14bから内方へ直状に延びる両側縁14c,14dと、両側縁14c,14dと中間内端縁14aとを曲状に結ぶ両側内端縁14e,14fとによって画定された略台形状を有する。
【0015】
前ウエスト域13の両側縁13c,13dのそれぞれと後ウエストパネル14の両側縁14c,14dとは、互いに重ね合わされ、縦方向Yへ断続的に位置するサイドシーム23によって連結されておむつ10の両側縁部19が形成され、ウエスト開口24及び一対のレッグ開口とが画成される。サイドシーム23は、公知の接合手段、例えば、熱エンボス/デボス加工、ソニック加工等の各種の熱溶着手段によってなされる。テープファスナ20は、
図5に示すように、その長さ方向において互いに対向する第1端(自由端)20a及び第2端(固定端)20bと、後ウエスト域14の両側部18に固定された遠位部(自由部)22と、遠位部22と連続的に延びる近位部(固定部)21とを有する(
図5参照)。
【0016】
本実施形態において、テープファスナ20は、後ウエスト域14の両側部18に取り付けられているが、後記の本発明の効果を奏する限りにおいて、一方の側部18にのみ取り付けられていてもよいし、前ウエスト域13の両側縁部又はその一方に取り付けられていてもよい。
【0017】
図3を参照すると、前ウエストパネル16は、前ウエスト域13を画定する矩形状の前ウエストシート25を有する。前ウエストシート25は、横方向Xに延び、互いに縦方向Yにおいて離間対向する内外端縁25a,25bと、縦方向Yに延び、内外端縁25a,25b間に位置する両側縁25c,25dとから形成される。前ウエストシート25は、吸収性シャーシ12の前端部12aから縦方向の外側に位置する折曲部26をさらに有し、該折曲部26は、横方向X延びる折曲ライン26aに沿って縦方向Yの内側に折曲されて後記の前弾性シート48及び吸収性シャーシ12に固定される。前ウエストシート25の折曲部26から内方に位置する主体部27と折曲部26との間、主体部27と前弾性シート48との間には、複数条のストランド状又はストリング状の前ウエスト弾性体28が横方向Xに伸長状態で収縮可能に固定される。
【0018】
後ウエストパネル17は、後ウエスト域14を画定する台形状の後ウエストシート30を有する。後ウエストシート30は、横方向Xに延び、互いに縦方向Yにおいて離間対向する中間内端縁30a及び外端縁30bと、縦方向Yへ延びる両外側縁30c,30dと、両外側縁30c,30dと内端縁30aとを結ぶ凹曲状の両側内端縁30e,30fとから形成される。後ウエストシート30は、主体部31と、吸収性シャーシ12の後端部12b縦方向Yの外側に位置し、両側縁30c,30d間において横方向Xへ延びる外折曲ライン32と、両側内端縁30e,30f間において横方向Xに延びる内折曲ライン(図示せず)と、外折曲ライン32を介して後ウエストシート30の内面側へ折曲されて吸収性シャーシ12の後端部12bの内面と主体部31の内面とに固定される外折曲部33と、内折曲ラインに沿って後ウエストシート30の内面側へ折曲されて、主体部31の内面に固定される内折曲部34とを有する。
【0019】
後ウエストシート30の主体部31と外折曲部33との間、主体部31と後記の後弾性シート49との間には、複数条のストランド状又はストリング状の後ウエスト弾性体35が横方向Xに伸長状態で収縮可能に配設される。また、内折曲部34内には、横方向Xへ延びる臀部弾性体36が伸長状態で収縮可能に配設される。
【0020】
前後ウエストシート25,30としては、質量が約10〜40g/m
2であり、繊維密度が約0.03〜0.1g/cm
3である、例えば、スパンボンド繊維不織布、SMS(スパンボンド・メルトブローン・スパンボンド)繊維不織布、エアスルー繊維不織布、プラスチックシート、またはそれらのラミネートシート等を用いることができる。前後ウエスト弾性体28,35及び臀部弾性体36は、例えば、所要の収縮力又は伸長応力を得るため、太さが約300〜800dtex、伸長倍率が1.5〜3.5倍のストリング状又はストランド状の弾性材料を用いることができるところ、その太さや伸長倍率は適宜変更することができる。
【0021】
吸収性シャーシ12は、長方形状であって、前端部12aと、後端部12bと、前後端部12a,12b間に位置する中間部12cとを有する。吸収性シャーシ12は、肌対向面側に位置し、透液性を有する繊維不織布製の身体側ライナ40と、曲状の両側縁を有する吸液性の吸収体41と、吸収体41の底面全体を覆う不透液性の防漏シート42と、吸収性シャーシ12の非肌対向面全体を形成する不透液性又は難透液性の被覆シート43とを含む。吸収体41は、フラッフパルプと超吸収性ポリマー粒子等との混合物から形成された芯材と、芯材全体を包被するティッシュペーパ等の液吸収拡散性のコアラップシートとを含む。
【0022】
被覆シート43は、防漏シート42の両側縁から横方向Xの外側に位置する両側部44を有する。両側部44は、防漏シート42の両側縁に隣接する折曲ラインに沿って内側に折曲されて身体側ライナ40の内面に固定される。具体的には、両側部44は、身体側ライナ40に固定される縦方向Yにおいて互いに離間する両端固定部と、身体側ライナ40の両側縁部に固定される両側固定部と、両端固定部間において縦方向Yに延びる身体側ライナ40に固定されていない自由部とを有する。自由部の縁部(自由縁部)43aは被覆シート43の外側縁を折り曲げてなるスリーブ状を有し、該縁部43aには縦方向Yへ延びる複数条のストリング状又はストランド状の弾性体45が伸長状態で収縮可能に配設される。弾性体45が収縮することによって、該縁部43aが身体側ライナ40から着用者の身体側へ離間し、着用者の大腿部にフィットして排泄物の漏れを防止する。また、被覆シート43の両側部44と防漏シート42との間には、複数条のストリング状又はストランド状のレッグ弾性体46が配設される。
【0023】
吸収性シャーシ12の前後端部12a,12bの肌対向面側には、それぞれ、横方向Xへ伸長状態で収縮可能に取り付けられた前後弾性シート48,49が位置する。前弾性シート48は、横長矩形状を有し、少なくとも吸収性シャーシ12の両側縁よりも横方向Xの外側に位置する前ウエストシート25及び吸収性シャーシ12に固定される。後弾性シート49は、略台形状を有し、縦方向Yにおいて互いに対向する中間内端縁及び外端縁と、縦方向に延びる両外側縁と、両外側縁と内端縁とをむすび凹曲状の両内側縁とから形成される。後弾性シート49は、その両外側縁と両内側縁とが後ウエストシート30の両外側縁30c,30dと両側内端縁30e,30fとの一部と重なるように配置される。後弾性シート49と吸収性シャーシ12の後端部12bとの間には、横方向Xへ延びる複数条のストリング状又はストランド状の弾性体50が伸長状態で収縮可能に配設される。
【0024】
前後弾性シート48,49としては、例えば、質量が約30〜40g/m
2、繊維密度が0.01〜0.04g/cm
3の範囲であるエラストマー繊維からなる伸縮性繊維不織布を用いることができる。前後弾性シート48,49は、非伸長時の寸法よりも横方向Xに約2.4倍伸長された状態で前後ウエストシート25,30及び吸収性シャーシ12に固定される。
【0025】
図2を参照すると、後ウエスト域14は、後ウエスト弾性体35によって少なくとも横方向Xへの弾性を付与された第1弾性域51と、後弾性シート49及び弾性体50とによって少なくとも横方向Xへの弾性を付与された第2弾性域52とを有する。テープファスナ20の近位部21(
図5参照)は、後ウエスト域14の両側部18における第1弾性域51に位置しており、後記のとおり、第1弾性域51の収縮時においてその収縮力よって起伏する。ここで、第1弾性域51とは、テープファスナ20の近位部21と平面視において重なる後ウエスト弾性体35が配置された領域であって、第2弾性域52とは、第1弾性域51よりもクロッチ域15側に位置する弾性域を意味する。第1弾性域51は、その全部又は少なくとも1本の後ウエスト弾性体35が、後ウエスト域14の両側縁14c,14d間において横方向Xへ連続して延びており、その一部が吸収性シャーシ12と平面視において重なっている。第2弾性域52における弾性体50は、本実施形態において、後ウエスト弾性体35と同様に横方向に連続して延びているが、吸収性シャーシ12と平面視において重なる部分において切断又は実質的に収縮力が発現しない状態(例えば、1.0〜1.3倍に伸長された状態)にされていることが好ましい。かかる場合には、第1弾性域51の後ウエスト弾性体35がその収縮力によって吸収性シャーシ12を着用者の身体にフィットさせる一方、第2弾性域52の弾性体50が吸収性シャーシ12と重なる部分において非連続とされていることによってその収縮力が吸収性シャーシ12に直接的に作用せず、吸収性シャーシ12を着用者の身体(膨らんだ下腹)の形状に沿ってフィットさせることができ、身体と吸収性シャーシ12との間に生じた隙間から体液が漏れるのを防止することができる。第1弾性域51と第2弾性域52とは、同一又は異なる収縮力又は伸長応力を有するものであって、着用者の下腹部を圧迫することなくおむつ10をフィットさせ、かつ、着用時におけるずり下がり等を防止するために、第2弾性域52の収縮力又は伸長応力が第1弾性域51のそれよりも高いことが好ましい。
【0026】
図5を参照すると、後ウエスト域14の外面に固定された一対のテープファスナ20は、断面Z字型に折り畳まれた1枚のテープであるベースシート58を含む。テープファスナ20は、接合域60を介して後ウエスト域14の外面に剥離不能に固定された近位部21と、遠位部22とを有する。遠位部22は、近位部21とテープファスナ20の厚さ方向において対向する第1遠位部61と、第1遠位部61に連なりそれと厚さ方向において対向する第2遠位部62とを有する。近位部21,第1及び第2遠位部61,62は、積層された状態において第1及び第2折曲部55,56に位置する仮止め部(第1及び第2仮止め部)65,66によって仮止めされる。遠位部22は、第1折曲部55に位置する仮止め部65からサイドシーム23側に延びる摘持部63をさらに有する。仮止め部65,66間における第2遠位部62の内面には、メカニカルファスナのフック要素や感圧性接着剤から形成された掛止め域(ファスニング域)68が配置される。本実施形態においては、複数のフック要素を有するフックシートが配置されている。
【0027】
遠位部22における第2折曲部56と掛止め域68との間には、ベースシート58にそれとは別体のシート材料から形成された補助シート片69が積層される。ベースシート58と補助シート片69とが積層された領域は、近位部21及び第1遠位部61に比べて剛性が高い高剛性領域70が形成される。
【0028】
ベースシート58には、繊維不織布、例えば、質量が約20〜100g/m
2、好ましくは、約40〜80g/m
2のスパンボンド繊維不織布、補助シート片69としては、例えば、質量が約10〜60g/m
2、好ましくは、約20〜40g/m
2のスパンボンド繊維不織布を好適に用いることができる。ベースシート58と補助シート片69とを同一の繊維不織布から形成してもよいが、ベースシート58の質量が補助シートの質量よりも大きく、剛性が高いことが好ましい。ベースシート58の質量が補助シート片69の質量よりも小さい場合には、摘持部63を引っ張ったときに、そのシートの強度差によって、近位部21と補助シート片69のとの間においてベースシート58が破断するおそれがあるからである。また、補助シート片69の剛性をベースシート58のそれよりも低くすることによって、テープファスナ20の積層状態において補助シート片69の積層域の外面が比較的に柔軟となり、肌触りが良好となる。
【0029】
<曲げ剛性値>
既述のとおり、テープファスナ20は繊維不織布から形成されていることから、プラスチックフィルムから形成されている場合に比して柔軟性に優れており、さらに、テープファスナ20において最も剛性が高くなる部分は掛止め域68のフックシートが位置する部分(高剛性部)であるところ、フックシートとして比較的に柔軟な材料を使用することによって、テープファスナ20の幅方向における柔軟性をさらに向上させることができる。
【0030】
具体的には、テープファスナ20の折り畳まれた状態における、高剛性部を除く部分(高剛性領域70を除く)の縦方向Y(テープファスナ20の幅方向であって、両側縁部どうしが互いに近づく方向)のKES曲げ剛性値は0.04〜0.44gf・cm
2/cm、高剛性部の縦方向Y(テープファスナ20の幅方向であって、両側縁部70どうしが互いに近づく方向)におけるKES曲げ剛性値は約0.56〜1.8gf・cm
2/cmである。従来における、廃棄用またはサイズ調整用として使用される、プラスチックフィルムから形成されたテープファスナの折り畳まされた状態におけるKES曲げ剛性値は、約2.0gf・cm
2/cmであることから、本実施形態のテープファスナは従来のテープファスナに比べて幅方向における曲げ剛性値が低く、柔軟性に優れる。かかる曲げ剛性値となるために、ベースシート58及び補助シート片69には質量約30〜100g/m
2のスパンボンド不織布を用いることが好ましく、少なくとも折り畳まれた状態におけるテープファスナ20の両側縁部から所与寸法離間して仮止め部65,66が位置し、かつ、積層された部分の対向面全体が仮止めされていないことが好ましい。このように、テープファスナ20の幅方向(おむつ10の縦方向Y)における曲げ剛性値が比較的に低いことから、体を反らしたり前屈したりしてテープファスナ20の着用者の身体が間接的に当接する場合であっても、それが肌に食い込んで跡が付いたり痛みを与えたりするおそれはない。
【0031】
接合域60には、例えば、質量約5〜20g/m
2の好ましくは疎水性のホットメルト接着剤を使用することができる。第1及び第2仮止め部65,66は、公知の加圧処理や加圧加熱処理を施すことによって設けることができ、例えば、エンボス/デボス処理またはソニック処理によって設けることができる。テープファスナ20自体が熱可塑性の合成繊維を有するものである場合には、加圧加熱処理を施し、繊維が互いに熱融着することによってより安定的に仮止めすることができる。
【0032】
後ウエスト域14は後ウエスト弾性体35の収縮作用によって横方向Xに収縮し、横方向Xに連続する複数の皺71が形成される。また、後ウエスト域14におけるテープファスナ20の近位部21が位置する領域には、少なくとも1条の後ウエスト弾性体35が位置しており、該弾性体35の収縮によって、テープファスナ20は後ウエスト域14とともにウエスト周り方向へ連続する起伏が生じる。第1仮止部65と第2仮止部66との間において近位部21に積層された第1及び第2遠位部61,62は、近位部21が変形してその長さ寸法が小さくなることによる影響を受けて、後ウエスト域14の外面から離間する方向へ浮き上がったような状態となり、摘持部63も外面から離間するので、テープファスナ20の操作時に着用者又は着用補助者は、摘持部63を摘み易くなる。また、遠位部22がこのように後ウエスト域14の外面から離間することによって、テープファスナ20が積層された状態であってもその配置領域が着用者に違和感を与える程度に高い剛性を有することはない。かかる構成を有するテープファスナ20において、仮想線で示すとおり、おむつ10の着用者又は着用補助者が摘持部63を摘んで矢印Fの方向へ引っ張り上げることによって、仮止め部65,66による仮止めが解除され、テープファスナ20が展開される。
【0033】
図6及び
図7を参照すると、展開したテープファスナ20は、第2遠位部62の掛止め域68を介して前ウエスト域13の外面に掛止められる。テープファスナ20のベースシート58は、繊維不織布製であるので、それが比較的に剛性の高いプラスチックシートから形成される場合に比して柔軟であり、湾曲した前ウエスト域13の外面に沿って延びる。また、前記のとおり、近位部21が後ウエスト域14の収縮に応じて変形し易く、遠位部22全体にはそれを後ウエスト域14側に引っ張ろうとする力が作用する。したがって、前ウエスト域13の外面に掛止めされた遠位部22が後方へ引っ張られて、おむつ10の両側縁部が近位部21と遠位部22との間で引き寄せられるので、前後ウエスト域13,14を着用者の身体にフィットさせることができ、サイズ調整が容易である。なお、掛止め域68は、フック要素のほかに粘着剤を塗布することによって設けてもよい。掛止め域68が、メカニカルファスナのフック要素から形成されている場合には、繊維不織布から形成された前ウエストシート25に直接掛止めることのほかに、前ウエスト域13の外面にループ要素を有するランデング又はターゲットシートを貼付して該シートに掛止めてもよい。
【0034】
かかる状態において、本実施形態のようにベースシート58が繊維不織布から形成される場合には、近位部21による遠位部22を後方へ引っ張ろうとする力によって第2遠位部62が反り返り、掛止め域68が前ウエスト域13の外面から剥がれてしまうおそれがある。一方、かかる不利益を防止するために、ベースシート58全体の剛性を比較的に高くすると、近位部21が後ウエスト域14の起伏に沿って変形できず、後ウエスト域14の外面から近位部21の一部が剥がれてしまうおそれがある。また、ベースシート58全体の剛性を比較的に低くして、接合域60を形成するホットメルト接着剤の質量を増やしてより接合強度を上げる場合には、近位部21近傍の後ウエスト域14の両側部18が他の領域に比して剛性が高くなり、ごわごわして肌に違和感を与えるおそれがある。
【0035】
本実施形態に係るテープファスナ20においては、その掛止めされた状態において全体が後ウエスト域14の収縮によって後方へ引っ張れたとしても、近位部21と掛止め域68との間に高剛性領域70が形成されていることによって、掛止め域68が安定的に前ウエスト域13の外面に掛止められ、それが解除されるおそれはない。すなわち、前後ウエスト域13,14がウエスト周り方向に伸縮することによって、テープファスナ20はウエスト周り方向へ引っ張られ、テープファスナ20が変形してその両側縁部20c,20dが反り返ったような状態となる。このように両側縁部20c,20dが反り返ることによって掛止め域68には剥離力が作用して剥離し易くなるところ、近位部21と掛止め域68との間に高剛性領域70を配置することによって、テープファスナ20を変形しようとする力を分散し、その変形を抑えることができる。また、テープファスナ20を前ウエスト域13に掛止めることによって、サイドシーム23が位置するおむつ10の側縁部が前ウエスト域13側へ倒伏される。倒伏された側縁部は、元の状態に復帰しようとしてそれに対向して接する第1遠位部61に外方へ向かう力を加え、遠位部22を凸曲状に変形させようとする。側縁部近傍の遠位部22がこのように変形することによって、掛止め域68には剥離力が作用するが、高剛性領域70がおむつ10の側縁部と掛止め域68との間に位置することによって遠位部22の変形を抑え、掛止め域68に剥離力が作用するのを抑制することができる。
【0036】
かかる効果を奏するために、遠位部22のうちの近位部21と掛止め域68との間に位置する部分、すなわち、第1遠位部61全域及び第2遠位部62の一部とに連続して補助シート片69が配置され、高剛性領域70が形成されていてもよい。かかる態様の場合には、近位部21から掛止め域68におけるテープファスナ20の反り返りや変形を抑えることができるからである。また、高剛性領域70は、近位部21と仮止め部66との間に位置していてもよいし、一部が掛止め域68と重なるように位置していてもよい。
【0037】
図8を参照すると、おむつ10を廃棄する態様の一例が示され、まず、おむつ10の使用後に、サイドシーム23を剥離して前後ウエスト域13,14の両側縁部を離間させ、該両側縁部を内側へ折り曲げ、クロッチ域15を前後ウエスト域13,14に向かって丸め込むように折り曲げる。次に、テープファスナ20の遠位部22を掛止め域68を介してクロッチ域15の外面に掛止めする。これにより、おむつ10を丸めた状態を保持することができ、排泄物を外部に漏らすことなく衛生的に廃棄することができる。特に、通常のテープファスナを備えた開放型おむつにおいては、おむつを丸めた状態を比較的に長時間維持することができず、廃棄用の収容箱に一時的に保管しているときにテープファスナの掛止め力が低下して、掛止めが解除されるおそれがあるところ、本実施形態におけるおむつ10によれば、かかる不利益を生じるおそれはない。また、既述のとおり、掛止め域68はメカニカルファスナのフック要素や粘着剤等によって形成することができるが、フック要素で形成されている場合には、感圧性接着剤で形成されている場合に比して比較的に長時間掛止め状態を維持することができる。また、掛止め域68がフック要素で形成されている場合には、体液で濡れても掛止め強度が低下することがなく、さらに、おむつ10を丸めて廃棄するときに、掛止めが解除された場合やおむつ10の丸めた状態を維持するためにさらに強く締め付ける場合等において繰り返し掛止め操作を行うことができる。
【0038】
図9及び
図10は、テープファスナ20の変更例を示すものであって、本変更例においては、テープファスナ20が後ウエスト域14の横方向Xの中央部に1つ配置されている。このように、複数ではなく単数のテープファスナ20が後ウエスト域14に配置されている場合であっても、おむつ10の廃棄時に、おむつ10を丸めた状態でテープファスナ20の摘持部63を摘んで展開させながらウエスト開口側へ引っ張って前ウエスト域13に掛け止めることによって、丸めた状態を維持し、かつ、排泄物の漏れを防止することができる。
【0039】
<第2実施形態>
図11を参照すると、本実施形態において、補助シート片69は、第2遠位部62の全域に配置されている。かかる態様においては、より効果的に遠位部22の反り返りを防止することができるとともに、テープファスナ20の外面全体が柔軟性を有し、着用者の身体に対する肌当たりが良好となる。
【0040】
<第3実施形態>
図12を参照すると、本実施形態において、ベースシート58は、近位部21を形成する第1テープ81と、遠位部22を形成する第2テープ82とから構成される。第1テープ81と第2テープ82とは、接合部84において互いに接合される。仮止め部65,66は、接合部84と第2テープ82の折曲部位とに位置し、それらのテープどうしの積層状態が維持される。本実施形態において、前記の本願発明による効果を奏するために、少なくとも遠位部22の剛性が近位部21の剛性よりも高くなっていることが好ましく、換言すれば、第2テープ82の剛性が第1テープ81のそれよりも高いものであることが好ましい。かかる剛性の相関関係であっても、近位部21と遠位部22の掛止め域68との間において、近位部21よりも剛性の高い高剛性領域70が形成されるからである。
【0041】
<第4実施形態>
図13を参照すると、本実施形態に係るテープファスナ20において、ベースシート58が二つに折り曲げられており、第2端20bが接合域60の外端よりも横方向Xの外側に位置している。本実施形態のように、ベースシート58が複数折曲された態様でなくてもよい
。
【0042】
<第5実施形態>
図14を参照すると、本実施形態に係るテープファスナ20は、ベースシート58が折曲されずに横方向Xに延びており、使用前の状態において、接合域60から横方向Xの外側へ所与寸法離間して掛止め域68が位置し、掛止め域68を介して遠位部22が後ウエスト域14の側部に掛止められている。補助シート片69は、ベースシート58の遠位部22のうちの掛止め域68の少なくとも一部と平面視において互いに重なって位置しており、該積層された部分に高剛性領域70が形成される。
【0043】
<第6実施形態>
図15を参照すると、本実施形態に係るテープファスナは、第5実施形態と同様に、テープファスナ20は、ベースシート58が折曲されてない状態で横方向Xに直状に延びている。ベースシート58は、接合域60と高剛性領域70との間に弾性部90を有する。ベースシート58が弾性部90を有するために、近位部21と弾性部90を除く遠位部22の部分が非弾性のシートで形成され、弾性部90がそれらに接合された弾性シートから形成されていてもよいし、ベースシート58全体が弾性シートから形成されていてもよい。後者の場合には、近位部21は接合域60を介して後ウエスト域14に固定されていることから非弾性化され、高剛性領域70において補助シート片69が積層されていることによってベースシート58の弾性が低減、抑制され、低弾性域又は非弾性域となる。これらいずれの場合であっても、ベースシート58に弾性部90が設けられることによってより、テープファスナ20の締結力が向上するとともに、高剛性領域70によって掛止め域68に対するそれを剥離しようと力が抑制されるので、安定的に掛止めできる。
【0044】
<第7実施形態>
図16を参照すると、本実施形態にかかるおむつ10は、弾性ウエストパネル11の外面がキルト模様91の繊維不織布から形成される。テープファスナ20の外面、すなわち、遠位部22の外面には弾性ウエストパネル11の外面と同様にキルト模様91を有する繊維不織布から形成された補助シート片69が配置される。このように、非展開状態におけるテープファスナ20の外面の繊維不織布として、おむつ10本体の外面に用いた不織布と同一のものを用いたり、同一若しくは互いに相似するエンボスパターンの不織布を用いたり、または、同一の色彩、同一又は互いに相似する模様、図柄を施したものを用いることによって、おむつ10の外面に取り付けられたテープファスナ20がおむつ本体と視覚的に一体感が得られ、おむつ本体に別体のテープファスナ20を取り付けることによる異物感を低減することができる。
【0045】
おむつ10を構成する各構成材料には、特に限定されている場合を除き、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている、各種公知の材料を制限なく使用することができる。また、おむつ10は、前ウエスト域13と、後ウエスト域14と、クロッチ域15とが一連に形成された態様であってもよい。本明細書及び特許請求の範囲において、用語「第1」、「第2」及び「第3」は、同種の要素、位置等を単に区別するために用いられている。
【0046】
以上に記載した本発明に関する開示は、少なくとも下記事項に整理することができる。
前記第1及び第2ウエスト域のうちの少なくとも前記第1ウエスト域は前記横方向において弾性を有しており、前記テープファスナは、繊維不織布シートから形成され、非展開状態における長さ方向とそれに直交する幅方向とを有し、前記幅方向において対向する両側縁と、前記第1ウエスト域に固定された近位部と、展開した状態において前記テープファスナを前記第2ウエスト域の前記
非肌対向面に剥離可能に掛止めするための掛止め域を有する遠位部とを含み、前記近位部と前記掛止め域との間には、前記テープファスナの両側縁どうしが近づく方向における剛性が前記近位部よりも高い高剛性領域が形成され
ており、前記テープファスナは、前記近位部及び前記遠位部を画定するベースシートを有し、前記高剛性領域は前記ベースシートに補助シート片を積層して形成される。
【0047】
上記段落0046に開示した本発明は、少なくとも下記の実施の形態を含むことができる。該実施の形態は、分離して又は互いに組み合わせて採択することができる。
(
1)前記ベースシートは、その長さ方向へ連続するシート部材から形成される。
(
2)前記補助シート片の剛性が前記ベースシートの剛性よりも低い。
(
3)
前記ベースシートは、前記近位部を形成する第1テープと、前記遠位部を形成する第2テープとから構成されており、前記第2テープの剛性が前記第1テープの剛性よりも
高くなっている。
(
4)前記テープファスナの折り畳まれた状態における、前記掛止め域の存在領域を除く部分の前記テープファスナの両側縁部どうしが近づく方向のKES曲げ剛性値は0.04〜0.44gf・cm
2/cmである。
(
5)前記掛止め域はメカニカルファスナのフック要素を有するフックシートから形成されており、前記テープファスナの折り畳まれた状態における、前記掛止め域の存在領域の前記テープファスナの両側縁部どうしが近づく方向のKES曲げ剛性値は、0.56〜1.8gf・cm
2/cmである。
(
6)前記テープファスナは、前記遠位部が折曲された状態で仮止め部を介して前記近位部に仮止めされており、前記仮止め部は前記横方向において離間する第1及び第2仮止め部を有し、前記掛止め域は前記第1及び第2仮止め部間における前記遠位部の内面に位置する。
(
7)前記掛止め域は、メカニカルファスナのフック要素である。
(
8)前記テープファスナは、前記遠位部と前記高剛性領域との間に位置する弾性部をさらに有する。