【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
[粉末油脂の調製]
表1に記載の各油脂を70℃に調温し油相を調製した。次に、表1に記載にされた油脂、カゼインナトリウム、及びデキストリンの合計質量と等量の水に、カゼインナトリウムとデキストリンを溶解させ水相を調製した。次いで、水相と油相とを混合した後、圧力式ホモジナイザーを用いて150kg/cm
2の圧力で水相と油相とを均質化し、水中油型乳化液を得た。得られた水中油型乳化液を、ノズル式スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、油脂を75質量%含有する粉末油脂1〜3を得た。
【0025】
表1に記載の各原料の詳細は下記のとおりである。
MCT1:商品名「ODO」、日清オイリオグループ(株)製、構成脂肪酸がn−オクタン酸(炭素数8)とn−デカン酸(炭素数10)であり、その質量比が75:25である中鎖脂肪酸トリグリセリド
MCT2:日清オイリオグループ(株)製造品、構成脂肪酸がn−オクタン酸(炭素数8)とn−デカン酸(炭素数10)であり、その質量比が30:70である中鎖脂肪酸トリグリセリド
菜種油:商品名「菜種白絞油(S)」、日清オイリオグループ(株)製
カゼインナトリウム:商品名「カゼインナトリウム」、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製
デキストリン:商品名「パインデックス#2」、松谷化学工業(株)製
【0026】
【表1】
【0027】
[ゼリー飲料原液の調製−1]
表2及び3に記載の配合に従い、まず、粉体原料である、カラギーナン、ローカストビーンガム、トレハロース、及び砂糖を粉体混合した後、85℃の温水に溶解した。次に前記溶解液を70〜75℃に保持し、粉末油脂、液糖、濃縮果汁、及びクエン酸を順番に均一に溶解し、ゼリー飲料原液を調製した。
【0028】
[ゼリー飲料の硬さの測定、及びカロリーの算出]
ゼリー飲料の硬さは、以下の手順で測定した。上記で調製したゼリー飲料原液を、直径40mm、高さ15mmの容器に15mm充填し、冷却ゲル化させた後、ゲルの品温を20℃に調整した。次に、レオメーター(RE−33005、(株)山電製)を用いて、直径20mmの円柱状プランジャー、圧縮速度10mm/秒、クリアランス5mmの条件で、2回圧縮により測定した。ゼリー飲料のカロリーは、栄養計算ソフトを用いて算出した。
【0029】
[ゼリー飲料の評価−1]
上記で調製したゼリー飲料原液からゼリー飲料を調製し、崩壊性評価、油分離評価、及び官能評価を行った。それぞれの評価結果を表2及び3に示す。
【0030】
(崩壊性評価)
上記で調製したゼリー飲料原液(65〜70℃)を200mLのガラスサンプル瓶に120mL充填し、密栓して、流水(水道水)で30分間冷却しゲル化させた。この時のガラスサンプル瓶のヘッドスペースは約40%であった。前記ガラスサンプル瓶を上下に5回振った時のゼリーの崩壊の程度を目視で観察して評価した。評価基準は下記の通りである。
◎:ゼリーが崩れ、流動性が生じる
○:ゼリーが崩れるが、◎と比べ流動性に乏しい
×:ゼリーが崩れない
【0031】
(油分離評価−1)
上記、崩壊性評価の手順において、ゼリーを崩壊する前の保形状態のゼリーについて、油の分離を目視で観察して評価した。評価基準は下記の通りである。
○:ゼリー表面や離水部分に油滴が認められない
×:ゼリー表面や離水部分に油滴が認められる
【0032】
(油分離評価−2)
上記、崩壊性評価後、サンプル瓶を10分間静置し、崩壊したゼリーの油の分離を目視で観察して評価した。評価基準は下記の通りである。
○:ゼリー表面や離水部分に油滴が認められない
×:ゼリー表面や離水部分に油滴が認められる
【0033】
(官能評価)
上記、油分離評価後、崩壊したゼリーをストローで吸引して官能評価を行った。評価基準は下記の通りである。
◎:ゼリーが適度な硬さで、油性感がなく、飲食しやすい
○:ゼリーが軟らかく、ゼリーの食感が弱いが、油性感がなく、飲食しやすい
×:ゼリーが軟らかく、付着感があり、飲食しにくい、又は、油性感があり、飲食しにくい
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
表2及び3の結果より、ゼリーの硬さが2861〜5908N/m
2であり、油脂を粉末油脂として配合したゼリー飲料(実施例1〜7)は、ゼリーが崩壊しやすく、油の分離も起きず、油性感も無く、飲料として飲みやすいものであった。また、ゼリーの硬さが1269N/m
2である比較例1は、ゼリーが軟らかすぎて、付着感があり、ゼリー飲料として好ましくない物性であった。なお、ゼリーの硬さが21240N/m
2である比較例2は、崩壊性評価においてゼリーが硬すぎて、ゼリー飲料として許容できないものであったので、その他の評価は行わなかった。
【0037】
[ゼリー飲料原液の調製−2]
次に、粉末油脂を配合せず、粉末油脂の原料油脂を直接配合したゼリー飲料を調製した。表4に記載の配合に従い、まず、粉体原料である、カラギーナン、ローカストビーンガム、トレハロース、砂糖、カゼインナトリウム、及びデキストリンを粉体混合し、該混合物及び乳化剤を順番に85℃の温水に溶解した。次に前記溶解液を70〜75℃に保持し、液糖、濃縮果汁、クエン酸、及び油脂(MCT1)を順番に均一に溶解し、ホモディスパーを用いて十分に乳化を行い、ゼリー飲料原液を調製した。なお、表4中のカゼインナトリウムとデキストリンは、粉末油脂の原料と同じものを使用し、乳化剤は、ホモゲンNo.897(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)とポエムJ−0381V(理研ビタミン(株)製)を質量比3:1で混合したものを使用した。
【0038】
[ゼリー飲料の評価−2]
上記で調製したゼリー飲料(比較例3〜5)について、「ゼリー飲料の評価−1」と同様に、崩壊性評価、油分離評価、及び官能評価を行った。それぞれの評価結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
表4の結果より、粉末油脂の原料油脂を直接配合したゼリー飲料(比較例3及び4)は、ゼリー飲料として適切な硬さであったが、油の分離が発生し、喫食時に油性感があり、飲料として飲み難いものであった。
【0041】
[ゼリー飲料の保存試験]
ゼリー飲料中の油脂含量が20質量%である、実施例3及び比較例5のゼリー飲料について保存試験を行った。具体的には、表2及び表4に記載の配合に従い、実施例3及び比較例5のゼリー飲料原液を、上記と同様に調製した。次に前記ゼリー飲料原液(65〜70℃)を容量100mLのスパウトパウチ容器に95mL充填し、密封後、80℃の温浴中で30分間、ボイル殺菌を行った。その後、前記スパウトパウチ容器を流水(水道水)で30分間冷却しゲル化させ、スパウトパウチ容器入りゼリー飲料を製造した。
次に、前記ゼリー飲料について、スパウトパウチ容器を手で3回揉み解してゼリーを崩したものと、何もしないもの(ゲルが保形状態のもの)について、5℃及び40℃の恒温槽にそれぞれ保管した。1週間後と4週間後に、スパウトパウチ容器の吸引口からゼリーを絞り出し、油の分離を目視で観察して、下記の評価基準に従い評価した。それぞれの評価結果を表5に示す。
○:ゼリー表面や離水部分に油滴が認められない
×:ゼリー表面や離水部分に油滴が認められる
【0042】
【表5】
【0043】
表5の結果より、油脂を粉末油脂として配合したゼリー飲料(実施例3)は、ゼリー崩壊の有無に関わらず、低温及び高温のいずれの保管でも油の分離が発生しなかった。他方、比較例5は、製造直後では油の分離が発生しなかったが(表4)、保存試験では、ゼリー崩壊の有無に関わらず、低温及び高温のいずれの保管でも油の分離が発生した。