特許第6198995号(P6198995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6198995
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】ゼリー飲料及びゼリー飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20170911BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20170911BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20170911BHJP
   A23L 29/238 20160101ALN20170911BHJP
【FI】
   A23L2/00 E
   A23L29/256
   A23D9/00 514
   !A23L29/238
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-513827(P2017-513827)
(86)(22)【出願日】2016年8月3日
(86)【国際出願番号】JP2016072830
【審査請求日】2017年3月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】折原 由希子
【審査官】 中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−195749(JP,A)
【文献】 特開2006−129868(JP,A)
【文献】 特開昭63−042659(JP,A)
【文献】 特開2000−135070(JP,A)
【文献】 特開2015−128419(JP,A)
【文献】 日清オイリオ、日清MCTパウダー[オンライン],2015.12.14[検索日 2016.10.04]、インターネット:<URL: http:products.nisshin-oillio.com/katei/koure,商品概要、「使用方法」等
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00
A23L21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂を12〜30質量%、ゲル化剤、及び水を含有し、硬さが2000〜20000N/mであるゼリー飲料であって、該油脂が粉末油脂由来の油脂であり、該粉末油脂中に乳蛋白質を5〜25質量%含有することを特徴とするゼリー飲料。
【請求項2】
前記粉末油脂中の油脂含有量が50〜85質量%であることを特徴とする請求項1に記載のゼリー飲料。
【請求項3】
前記油脂が中鎖脂肪酸トリグリセリドであることを特徴とする請求項1又は2に記載のゼリー飲料。
【請求項4】
粉末油脂及びゲル化剤を水に加熱溶解後、冷却固化する、硬さが2000〜20000N/mのゼリー飲料の製造方法であって、得られるゼリー飲料中の油脂の含有量が12〜30質量%となるように原料の粉末油脂(該粉末油脂中に乳蛋白質を5〜25質量%含有する)の配合量を調整することを特徴とするゼリー飲料の製造方法。
【請求項5】
前記油脂が構成脂肪酸中に中鎖脂肪酸を含有する油脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載のゼリー飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大量の油脂を含むにもかかわらず、長期保存や喫食時に油とゼリーの分離が起こらないゼリー飲料に関する。そして、本発明のゼリー飲料は、喫食時に油性感を感じ難いため、喫食し易く、簡便に高エネルギーを補給することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、ライフスタイルの変化によって、様々な形態の食品が生み出されている。中でも、手軽に栄養を摂取できる食品へのニーズがあり、入手性や利便性、摂取のしやすさからスパウトパウチタイプのゼリー飲料の人気が高い。現在、高エネルギータイプのゼリー飲料としては、糖類を配合したものが主であるが、より高いエネルギーを効率よく摂取するには、脂質(油脂)を配合することが望ましい。しかし、脂質(油脂)を配合すると、配合量の増加に伴い、喫食時にオイリーな後味(油性感)や胃もたれ等の不快感が生じたり、保管中に商品自体にオイルオフ(油の分離)が起きるなど、商品設計が非常に困難であった。
【0003】
これまで、油脂を含む高エネルギータイプのゼリー状食品として、水、植物性油脂、ショ糖脂肪酸エステル、及びゲル化剤を含む嚥下困難者用高栄養ゼリー食品(特開2011−182785号公報)や、油脂、糖質、及び寒天を含むエネルギー補給用ゲル状食品(特開2013−85508号公報)等が報告されているが、これらの技術は、ゼリー飲料としての物性や、喫食時及び保存時の油の分離について検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−182785号公報
【特許文献2】特開2013−85508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、長期保存や喫食時にゼリーと油の分離が起こらず、そして喫食し易い、高油分のゼリー飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、油脂を粉末油脂として配合し、ゲル化剤でゲルの固さを特定の範囲とすることで上記課題が解決される点を見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は下記のものを提供する。
(1)油脂を5〜30質量%、ゲル化剤、及び水を含有し、硬さが2000〜20000N/mであるゼリー飲料であって、該油脂が粉末油脂由来の油脂であることを特徴とするゼリー飲料。
(2)前記粉末油脂中の油脂含有量が50〜85質量%であることを特徴とする(1)に記載のゼリー飲料。
(3)前記油脂が中鎖脂肪酸トリグリセリドであることを特徴とする(1)又は(2)に記載のゼリー飲料。
(4)粉末油脂及びゲル化剤を水に加熱溶解後、冷却固化する、硬さが2000〜20000N/mのゼリー飲料の製造方法であって、得られるゼリー飲料中の油脂の含有量が5〜30質量%となるように原料の粉末油脂の配合量を調整することを特徴とするゼリー飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、大量の油脂を含むにもかかわらず、長期保存や喫食時に油とゼリーの分離が起こらないゼリー飲料が提供される。また、本発明のゼリー飲料は、喫食時に油性感を感じ難いため、喫食し易く、簡便に高エネルギー補給が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0009】
[ゼリー飲料]
本発明のゼリー飲料は、油脂、ゲル化剤、及び水を含有し、硬さが2000〜20000N/mであるゼリーを喫食時に崩して飲用する食品である。また、本発明のゼリー飲料は、油脂を粉末油脂の形態で配合するため、ゼリー飲料に適した、軟らかく、崩壊し易いゲルであっても、喫食時や保管時に油の分離が発生することを防止できる。
【0010】
本発明のゼリー飲料は、過度の力を必要とすることなく注ぎ出し、又は吸引できる程度の流動性を有する。より具体的には、飲用時に容器を振とうすることにより、容易にゼリーを崩すことができ、また、柔軟性のある容器を外部から指で押したり、潰したり、変形させたりしてゼリーを崩すことができる程度の硬さを有するものである。
【0011】
本発明のゼリー飲料の硬さは、ゼリーを崩す前の保形状態のゼリー(ゲル)を、レオメーターを用いて、直径20mmの円柱状プランジャー、圧縮速度10mm/秒、クリアランス5mm、20℃の条件で測定したときの測定値が、2000〜20000N/mである。また、本発明のゼリー飲料の硬さは、2500〜15000N/mが好ましく、3000〜10000N/mがより好ましく、4000〜7000N/mが最も好ましい。本発明のゼリー飲料の硬さが上記の範囲にあると、ゼリーを過度の力を必要とすることなく崩すことができ、飲料として摂取しやすい。なお、本発明において、ゼリー飲料の硬さとは、ゼリー飲料を調製後、静置して、ゲル化した保形状態のゼリーについて硬さを測定したときの値を指す。
【0012】
本発明のゼリー飲料は、手軽に高エネルギーを摂取できる食品である。本発明のゼリー飲料のカロリーは、好ましくは2kcal/g以上であり、より好ましくは2.5〜4kcal/gである。また、本発明のゼリー飲料の一回の摂取量は100〜250gが好ましい。
【0013】
以下、本発明のゼリー飲料中に含まれる各成分について詳述する。
[粉末油脂]
本発明に使用する粉末油脂は、微細な油滴(油脂)が、糖類、デキストリン、乳蛋白質、加工澱粉等によって被覆された構造を有する。本発明に使用する粉末油脂は、乳蛋白質を含有することが好ましい。前記粉末油脂に乳蛋白質を含有すると、本発明のゼリー飲料中の油脂が安定した乳化状態となる。なお、前記乳蛋白質としては、乳清タンパク質、カゼイン、カゼインナトリウム等が挙げられる。前記粉末油脂中の乳蛋白質の含有量は、好ましくは5〜25質量%であり、より好ましくは7〜20質量%であり、最も好ましくは8〜15質量%である。
本発明に使用する粉末油脂は、前記の成分を含む水中油型乳化液をスプレードライすることで得られる。
【0014】
本発明に使用する粉末油脂は、該粉末油脂中の油脂の含有量が、好ましくは50〜85質量%であり、より好ましくは60〜80質量%であり、最も好ましくは65〜75質量%である。粉末油脂中の油脂含有量が上記の範囲にあると、本発明のゼリー飲料中の油脂の含有量を容易に増加させることができ、かつ、油脂以外の粉末油脂由来の原料の配合量を減少させることができる。また、粉末油脂中の油脂含有量が上記の範囲にあると、ゼリー飲料中の油脂が安定した乳化状態となるため、油の分離が生じにくい。
【0015】
[油脂]
本発明に使用する油脂は、上記粉末油脂の原料として使用できるものであれば特に限定されないが、喫食後の消化・吸収のされやすさから、融点が35℃以下の油脂であることが好ましい。前記融点が35℃以下の油脂としては、菜種油、大豆油、コーン油、パーム油、やし油、米油、ごま油、綿実油、ひまわり油、紅花油、亜麻仁油、シソ油、オリーブ油、落花生油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、米糠油、小麦胚芽油、及び中鎖脂肪酸油(MCT)、並びにそれら単独の油又は複数混合油のエステル交換油、及びそれら単独の油又は複数混合油の分別油等の加工油等が挙げられる。さらに、本発明に使用する油脂は、上記の油脂を2種以上使用してもよい。
【0016】
また、本発明に使用する油脂は、構成脂肪酸中に、消化・吸収が早く、エネルギーになりやすい特性をもつ中鎖脂肪酸を含有することが好ましい。ここで、中鎖脂肪酸とは、炭素数が8〜12の脂肪酸(好ましくは炭素数が8及び10の飽和脂肪酸)である。構成脂肪酸として中鎖脂肪酸を含有する油脂としては、構成脂肪酸が中鎖脂肪酸のみからなる中鎖脂肪酸トリグリセリド(以下、MCTともいう。)、構成脂肪酸が中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸からなる中・長鎖脂肪酸トリグリセリド(以下、MLCTともいう。)等が挙げられるが、速やかにエネルギー補給ができる観点からMCTが好ましい。本発明に使用する油脂としてMCTを選択した場合は、喫食後の胃部不快感を軽減できる観点から、構成脂肪酸が炭素数8及び10からなり、かつ、炭素数10の構成脂肪酸の含有量が、炭素数8の構成脂肪酸の含有量よりも多いMCTが好ましい。具体的には、MCTの構成脂肪酸に占める炭素数8の脂肪酸の含有量は、好ましくは5〜45質量%であり、より好ましくは5〜40質量%であり、最も好ましくは5〜35質量%である。他方、炭素数10の脂肪酸の含有量は、好ましくは55〜95質量%であり、より好ましくは60〜95質量%であり、最も好ましくは65〜95質量%である。
【0017】
本発明に使用する油脂は、粉末油脂の形態で配合されるが、本発明のゼリー飲料中に含まれる油脂の正味の含有量は、5〜35質量%である。本発明のゼリー飲料に含まれる油脂の正味の含有量は、好ましくは10〜30質量%であり、より好ましくは12〜28質量%であり、さらに好ましくは14〜25質量%であり、最も好ましくは16〜22質量%である。正味の油脂の含有量が上記の範囲にあると、本発明のゼリー飲料が高いエネルギーで飲みやすく、且つ、油の分離が抑制されたものになる。
【0018】
[ゲル化剤]
本発明に使用するゲル化剤は、本発明のゼリー飲料を所望の硬さに調整できるものであれば、種類、配合量は特に制限されない。例えば、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、脱アシルジェランガム、ネイティブジェランガム、グルコマンナン、キサンタンガム、アルギン酸塩等が挙げられ、これらを複数併用して用いてもよいが、カラギーナン、及びローカストビーンガムを使用すると、ゼリー飲料として飲食しやすい物性が得られる。
【0019】
[水]
本発明に使用する水は、特に限定されず、水道水、井水、精製水、イオン交換水等を用いることができる。
[その他の原料]
本発明のゼリー飲料は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記原料以外にも他の原料を配合してもよい。例えば、糖類、酸味料、ビタミン類、アミノ酸、ミネラル、果汁、香料、色素等が挙げられる。また、乳化剤を配合する場合は、ゼリー飲料の味が悪くなるため、含有量を1.5%未満にすることが好ましい。
【0020】
[ゼリー飲料の製造方法]
本発明のゼリー飲料の製造方法は、ゼリー飲料中の油脂の含有量が5〜30質量%となるように粉末油脂の配合量を調整し、さらに、ゼリー飲料の硬さが2000〜20000N/mとなるようにゲル化剤の配合量を調整し、該粉末油脂及び該ゲル化剤を水に加熱溶解後、冷却固化する製造方法である。具体的には、所望の硬さとなる配合量のゲル化剤と、所望の油脂含量となる配合量の粉末油脂とを水に加熱溶解し、さらに、他の原料を添加して均一に混合溶解し、これを容器に充填し冷却固化することにより得ることができる。ここで、ゲル化剤は他の粉体原料と予め混合しておき、水に加熱溶解してもよい。本発明で使用する粉末油脂は、水に溶解すると安定な乳化状態になるため、別途、乳化機等で乳化をする必要がない。他方、ゼリー飲料に油脂そのものを配合する場合は、油の分離や、喫食時の油性感(オイリーな後味)を防ぐため、乳化機等で乳化状態にしなければならない。さらに、乳化時の物理的なストレスによってゲル化剤のゲル化能が低下して、所望の硬さのゲルが得られないことがある。
【0021】
本発明のゼリー飲料を殺菌する場合は、容器に充填後、密封して加熱殺菌する方法、加熱殺菌しながら容器に充填する方法、充填前に加熱殺菌し、その後無菌充填する方法等を使用できる。
【0022】
本発明のゼリー飲料の容器は、喫食時にゲルを崩して飲食できるものであれば特に制限されないが、摂取のしやすさからスパウトパウチ容器を使用することが好ましい。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
[粉末油脂の調製]
表1に記載の各油脂を70℃に調温し油相を調製した。次に、表1に記載にされた油脂、カゼインナトリウム、及びデキストリンの合計質量と等量の水に、カゼインナトリウムとデキストリンを溶解させ水相を調製した。次いで、水相と油相とを混合した後、圧力式ホモジナイザーを用いて150kg/cmの圧力で水相と油相とを均質化し、水中油型乳化液を得た。得られた水中油型乳化液を、ノズル式スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し、油脂を75質量%含有する粉末油脂1〜3を得た。
【0025】
表1に記載の各原料の詳細は下記のとおりである。
MCT1:商品名「ODO」、日清オイリオグループ(株)製、構成脂肪酸がn−オクタン酸(炭素数8)とn−デカン酸(炭素数10)であり、その質量比が75:25である中鎖脂肪酸トリグリセリド
MCT2:日清オイリオグループ(株)製造品、構成脂肪酸がn−オクタン酸(炭素数8)とn−デカン酸(炭素数10)であり、その質量比が30:70である中鎖脂肪酸トリグリセリド
菜種油:商品名「菜種白絞油(S)」、日清オイリオグループ(株)製
カゼインナトリウム:商品名「カゼインナトリウム」、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製
デキストリン:商品名「パインデックス#2」、松谷化学工業(株)製
【0026】
【表1】
【0027】
[ゼリー飲料原液の調製−1]
表2及び3に記載の配合に従い、まず、粉体原料である、カラギーナン、ローカストビーンガム、トレハロース、及び砂糖を粉体混合した後、85℃の温水に溶解した。次に前記溶解液を70〜75℃に保持し、粉末油脂、液糖、濃縮果汁、及びクエン酸を順番に均一に溶解し、ゼリー飲料原液を調製した。
【0028】
[ゼリー飲料の硬さの測定、及びカロリーの算出]
ゼリー飲料の硬さは、以下の手順で測定した。上記で調製したゼリー飲料原液を、直径40mm、高さ15mmの容器に15mm充填し、冷却ゲル化させた後、ゲルの品温を20℃に調整した。次に、レオメーター(RE−33005、(株)山電製)を用いて、直径20mmの円柱状プランジャー、圧縮速度10mm/秒、クリアランス5mmの条件で、2回圧縮により測定した。ゼリー飲料のカロリーは、栄養計算ソフトを用いて算出した。
【0029】
[ゼリー飲料の評価−1]
上記で調製したゼリー飲料原液からゼリー飲料を調製し、崩壊性評価、油分離評価、及び官能評価を行った。それぞれの評価結果を表2及び3に示す。
【0030】
(崩壊性評価)
上記で調製したゼリー飲料原液(65〜70℃)を200mLのガラスサンプル瓶に120mL充填し、密栓して、流水(水道水)で30分間冷却しゲル化させた。この時のガラスサンプル瓶のヘッドスペースは約40%であった。前記ガラスサンプル瓶を上下に5回振った時のゼリーの崩壊の程度を目視で観察して評価した。評価基準は下記の通りである。
◎:ゼリーが崩れ、流動性が生じる
○:ゼリーが崩れるが、◎と比べ流動性に乏しい
×:ゼリーが崩れない
【0031】
(油分離評価−1)
上記、崩壊性評価の手順において、ゼリーを崩壊する前の保形状態のゼリーについて、油の分離を目視で観察して評価した。評価基準は下記の通りである。
○:ゼリー表面や離水部分に油滴が認められない
×:ゼリー表面や離水部分に油滴が認められる
【0032】
(油分離評価−2)
上記、崩壊性評価後、サンプル瓶を10分間静置し、崩壊したゼリーの油の分離を目視で観察して評価した。評価基準は下記の通りである。
○:ゼリー表面や離水部分に油滴が認められない
×:ゼリー表面や離水部分に油滴が認められる
【0033】
(官能評価)
上記、油分離評価後、崩壊したゼリーをストローで吸引して官能評価を行った。評価基準は下記の通りである。
◎:ゼリーが適度な硬さで、油性感がなく、飲食しやすい
○:ゼリーが軟らかく、ゼリーの食感が弱いが、油性感がなく、飲食しやすい
×:ゼリーが軟らかく、付着感があり、飲食しにくい、又は、油性感があり、飲食しにくい
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
表2及び3の結果より、ゼリーの硬さが2861〜5908N/mであり、油脂を粉末油脂として配合したゼリー飲料(実施例1〜7)は、ゼリーが崩壊しやすく、油の分離も起きず、油性感も無く、飲料として飲みやすいものであった。また、ゼリーの硬さが1269N/mである比較例1は、ゼリーが軟らかすぎて、付着感があり、ゼリー飲料として好ましくない物性であった。なお、ゼリーの硬さが21240N/mである比較例2は、崩壊性評価においてゼリーが硬すぎて、ゼリー飲料として許容できないものであったので、その他の評価は行わなかった。
【0037】
[ゼリー飲料原液の調製−2]
次に、粉末油脂を配合せず、粉末油脂の原料油脂を直接配合したゼリー飲料を調製した。表4に記載の配合に従い、まず、粉体原料である、カラギーナン、ローカストビーンガム、トレハロース、砂糖、カゼインナトリウム、及びデキストリンを粉体混合し、該混合物及び乳化剤を順番に85℃の温水に溶解した。次に前記溶解液を70〜75℃に保持し、液糖、濃縮果汁、クエン酸、及び油脂(MCT1)を順番に均一に溶解し、ホモディスパーを用いて十分に乳化を行い、ゼリー飲料原液を調製した。なお、表4中のカゼインナトリウムとデキストリンは、粉末油脂の原料と同じものを使用し、乳化剤は、ホモゲンNo.897(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)とポエムJ−0381V(理研ビタミン(株)製)を質量比3:1で混合したものを使用した。
【0038】
[ゼリー飲料の評価−2]
上記で調製したゼリー飲料(比較例3〜5)について、「ゼリー飲料の評価−1」と同様に、崩壊性評価、油分離評価、及び官能評価を行った。それぞれの評価結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
表4の結果より、粉末油脂の原料油脂を直接配合したゼリー飲料(比較例3及び4)は、ゼリー飲料として適切な硬さであったが、油の分離が発生し、喫食時に油性感があり、飲料として飲み難いものであった。
【0041】
[ゼリー飲料の保存試験]
ゼリー飲料中の油脂含量が20質量%である、実施例3及び比較例5のゼリー飲料について保存試験を行った。具体的には、表2及び表4に記載の配合に従い、実施例3及び比較例5のゼリー飲料原液を、上記と同様に調製した。次に前記ゼリー飲料原液(65〜70℃)を容量100mLのスパウトパウチ容器に95mL充填し、密封後、80℃の温浴中で30分間、ボイル殺菌を行った。その後、前記スパウトパウチ容器を流水(水道水)で30分間冷却しゲル化させ、スパウトパウチ容器入りゼリー飲料を製造した。
次に、前記ゼリー飲料について、スパウトパウチ容器を手で3回揉み解してゼリーを崩したものと、何もしないもの(ゲルが保形状態のもの)について、5℃及び40℃の恒温槽にそれぞれ保管した。1週間後と4週間後に、スパウトパウチ容器の吸引口からゼリーを絞り出し、油の分離を目視で観察して、下記の評価基準に従い評価した。それぞれの評価結果を表5に示す。
○:ゼリー表面や離水部分に油滴が認められない
×:ゼリー表面や離水部分に油滴が認められる
【0042】
【表5】
【0043】
表5の結果より、油脂を粉末油脂として配合したゼリー飲料(実施例3)は、ゼリー崩壊の有無に関わらず、低温及び高温のいずれの保管でも油の分離が発生しなかった。他方、比較例5は、製造直後では油の分離が発生しなかったが(表4)、保存試験では、ゼリー崩壊の有無に関わらず、低温及び高温のいずれの保管でも油の分離が発生した。
【要約】
本発明の課題は、長期保存や喫食時に油とゼリーの分離が起こらず、喫食し易い、高油分のゼリー飲料を提供することである。
本発明は、油脂を5〜30質量%、ゲル化剤、及び水を含有し、硬さが2000〜20000N/mであるゼリー飲料であって、該油脂が粉末油脂由来の油脂であることを特徴とするゼリー飲料、並びに、粉末油脂及びゲル化剤を水に加熱溶解後、冷却固化する、硬さが2000〜20000N/mのゼリー飲料の製造方法であって、得られるゼリー飲料中の油脂の含有量が5〜30質量%となるように原料の粉末油脂の配合量を調整することを特徴とするゼリー飲料の製造方法を提供する。