(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記銅サブマイクロ粒子を単独で含む請求項1に記載の接合材であって、前記銅ナノ粒子と、前記銅サブマイクロ粒子との質量比が、1:0.25〜1.5である接合材。
前記銅マイクロ粒子と前記銅サブマイクロ粒子との両方を含む請求項1に記載の接合材であって、前記銅ナノ粒子と、前記銅マイクロ粒子と、前記銅サブマイクロ粒子との質量比が、1:0.2〜1.6:0.2〜1.3である接合材。
前記銅マイクロ粒子が、銀、ニッケル、アルミニウム、マグネシウムから選択される一以上を含んでなる金属被覆層であって、10〜500nmの金属被覆層を設けてなる、金属被覆銅マイクロ粒子である、請求項2、3、6または7のいずれかに記載の接合材。
前記銅サブマイクロ粒子が、銀、ニッケル、アルミニウム、マグネシウムから選択される一以上を含んでなる金属被覆層であって、10〜500nmの金属被覆層を設けてなる、金属被覆銅サブマイクロ粒子である、請求項4〜7のいずれかに記載の接合材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来よりも、より安価な材料を用いて、接合体に力を負荷することなく無加圧状態で、高強度の接合を実現しうる接合材が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、接合材として、従来から用いられてきた銀ベースではなく、銅をベースとした材料を用い、さらに、銅ナノ粒子に、銅マイクロ粒子等を混合して接合性を向上させ、かつ、接合雰囲気に着目することにより、従来技術においては所望の強度が得られていない無加圧低温焼結において高接合強度を達成し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、一実施形態によれば、接合材であって、被覆剤分子層を表面に有する銅ナノ粒子を、分散溶媒中に均一に分散してなる分散液からなる銅ナノ粒子ペーストと、銅マイクロ粒子、もしくは銅サブマイクロ粒子、あるいはそれらの両方とを含んでなる。
【0011】
前記接合材において、前記銅マイクロ粒子を単独で含み、前記銅ナノ粒子と、前記銅マイクロ粒子との質量比が、1:0.25〜1.6であることが好ましい。
また、前記銅ナノ粒子と、前記銅マイクロ粒子との質量比が、1:0.4〜1.5であることがさらに好ましい。
【0012】
前記接合材において、前記銅サブマイクロ粒子を単独で含み、前記銅ナノ粒子と、前記銅サブマイクロ粒子との質量比が、1:0.25〜1.5であることが好ましい。
また、前記銅ナノ粒子と、前記銅サブマイクロ粒子との質量比が、1:0.3〜1.3であることがさらに好ましい。
【0013】
前記接合材において、前記銅マイクロ粒子と前記銅サブマイクロ粒子との両方を含み、前記銅ナノ粒子と、前記銅マイクロ粒子と、前記銅サブマイクロ粒子との質量比が、1:0.2〜1.6:0.2〜1.3であることが好ましい。
前記銅ナノ粒子と、前記銅マイクロ粒子と、前記銅サブマイクロ粒子との質量比が、1:0.3〜1.5:0.3〜1であることがさらに好ましい。
【0014】
本発明は、ある態様によれば、前記接合材において、前記銅マイクロ粒子が、銀、ニッケル、アルミニウム、マグネシウムから選択される一以上を含んでなる金属被覆層であって、10〜500nmの金属被覆層を設けてなる、金属被覆銅マイクロ粒子であることが好ましい。
【0015】
本発明は、別の態様によれば、前記接合材において、前記銅サブマイクロ粒子が、銀、ニッケル、アルミニウム、マグネシウムから選択される一以上を含んでなる金属被覆層であって、10〜500nmの金属被覆層を設けてなる、金属被覆銅サブマイクロ粒子であることが好ましい。
【0016】
本発明は、別の局面によれば、電子部品あるいは半導体装置の製造方法であって、シリコンもしくは銅基板上に、前記いずれかの接合材を塗布する工程と、前記接合材上に、半導体素子を載置する工程と、前記シリコンもしくは銅基板と、前記接合材と、前記半導体素子とを、加圧することなく、200〜450℃にて、前記酸化抑制雰囲気もしくは還元性雰囲気で加熱する工程とを含んでなる。
前記酸化抑制雰囲気もしくは還元性雰囲気が、1〜10体積%の水素を含む窒素雰囲気であることが好ましい。
【0017】
本発明は、また別の局面によれば、金属部材の接合方法であって、シリコンもしくは銅部材上に、前記いずれかの接合材を塗布する工程と、前記接合材上に、銅部材を載置する工程と、前記シリコンチップもしくは銅部材と、前記接合材と、前記銅部材とを、加圧することなく、200〜450℃にて、酸化抑制雰囲気もしくは還元性雰囲気で加熱する工程とを含んでなる。
前記酸化抑制雰囲気もしくは還元性雰囲気が、1〜10体積%の水素を含む窒素雰囲気であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
エレクトロケミカルマイグレーションを起こす銀を主成分として用いることなく、安価な銅ナノ粒子ペーストを用いて、複雑な構造の加圧式接合装置を用いることなく、無加圧で、かつシリコンチップのような強度の低い材料を破壊することなく接合することが可能な接合材を実現することができ、接合性を向上させた、高信頼性の継手の作製が可能となった。また、無加圧で高接合強度を達成しうる、簡便かつ経済的な電子部品あるいは半導体装置の製造方法ならびに金属部材の接合方法を実現した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0021】
[第1実施形態:接合材]
本発明は、第1実施形態によれば、接合材であって、銅ナノ粒子ペーストと、銅マイクロ粒子もしくは銅サブマイクロ粒子、あるいはそれらの両方とを混合してなる。
【0022】
本実施形態において、銅ナノ粒子ペーストは、バインダー樹脂成分を含有せず、被覆剤分子層を表面に有する銅ナノ粒子を、分散溶媒中に均一に分散してなる分散液からなる。すなわち、銅ナノ粒子ペーストは、銅ナノ粒子と、被覆剤分子と、分散溶媒とから実質的に構成される。
【0023】
被覆剤分子層を表面に有する銅ナノ粒子とは、平均粒子径が、一般に、1nm〜100nmの範囲、好ましくは、2nm〜80nmの範囲、より好ましくは、3nm〜70nmの範囲の金属銅からなる粒子である。銅ナノ粒子は、実質的に銅のみからなり、ほかの金属成分を含まない。
【0024】
銅ナノ粒子の表面には、被覆剤分子層が形成されている。被覆剤分子層は、銅ナノ粒子の分散液中に銅ナノ粒子を均一に分散した状態を維持するために利用される。すなわち、銅ナノ粒子の表面は、該被覆剤分子層で被覆されているため、分散溶媒中において、銅ナノ粒子どうしの銅表面が直接接触し、融着を起こすことを防止している。また、被覆剤分子層を形成している被覆剤分子は、分散溶媒に対して、親和性を示すので、この分散溶媒に対する親和性を利用して、銅ナノ粒子の分散性を高めている。さらに、銅ナノ粒子の表面は、該被覆剤分子層で被覆されているため、銅ナノ粒子の銅表面は、酸化を受けない状態に保たれる。
【0025】
銅ナノ粒子ペースト中に含有される、被覆剤分子の体積比率と、銅ナノ粒子の体積比率の比は、一般に、1:0.1〜1:3の範囲、好ましくは、1:0.2〜1:2.5の範囲に選択することが望ましい。
【0026】
被覆剤分子は、加熱接合を行う際には、銅ナノ粒子表面から離脱した後、最終的には、分散溶媒とともに、蒸散することが可能であることが必要である。従って、200〜450℃の範囲に選択される加熱接合時の加熱温度に対して、被覆剤分子の沸点が、130℃〜250℃の範囲、好ましくは、150℃〜250℃の範囲、より好ましくは、150℃〜240℃の範囲であるものは、分散溶媒とともに、蒸散させることが可能である。
【0027】
被覆剤分子層の形成に利用される被覆剤分子は、前記銅ナノ粒子の表面との非共有結合的に分子間結合の形成に利用される原子団として、アミノ基またはカルボキシル基を有し、後述の炭化水素溶媒またはアルコール溶媒中の炭化水素基と親和性を有する炭化水素基と、前記アミノ基またはカルボキシル基で構成される有機化合物であって、その沸点が130℃〜250℃の範囲のアミノ基またはカルボキシル基を有する有機化合物からなる群より選択される。特に、該被覆剤分子の沸点は、130℃〜250℃の範囲、好ましくは、150℃〜250℃の範囲、より好ましくは、150℃〜240℃の範囲に選択される。
【0028】
前記アミノ基を有する有機化合物、例えば、アルキルアミンとして、そのアルキル基は、C8〜C12の範囲に選択され、アルキル鎖の末端にアミノ基を有するものが利用できる。具体的には、炭素数8のアルキルアミンである、オクチルアミン(沸点188℃)、炭素数10のアルキルアミンである、デシルアミン(沸点220.5℃)、炭素数12のアルキルアミンである、ドデシルアミン(沸点247℃)は、実際に沸点150℃〜250℃の条件を満たしている。例えば、前記C8〜C12の範囲のアルキルアミンは、熱的な安定性もあり、また、室温付近での蒸気圧もさほど高くなく、室温等で保管する際、含有率を所望の範囲に維持・制御することが容易であるなど、ハンドリング性の面から好適に用いられる。
【0029】
一般に、銅ナノ粒子表面の銅原子に対して、配位的な結合を形成する上では、第一級アミン型のものがより高い結合能を示し好ましいが、第二級アミン型、ならびに、第三級アミン型の化合物も利用可能である。また、1,2−ジアミン型、1,3−ジアミン型など、近接する二以上のアミノ基が結合に関与する化合物も利用可能である。また、ポリオキシアルキレンアミン型のエーテル型のオキシ基(−O−)を鎖中に含む、鎖状のアミン化合物を用いることもできる。その他、末端のアミノ基以外に、親水性の末端基、例えば、ヒドロキシル基を有するヒドロキシアミン化合物、例えば、ジエタノールアミンなどを利用することもできる。
【0030】
被覆剤分子として利用可能な、カルボキシル基(−COOH)を有する有機化合物の代表として、アルカン酸などの脂肪族カルボン酸(R−COOH)を挙げることができる。被覆剤分子として、脂肪族カルボン酸中、例えば、アルカン酸として、炭素数がC4〜C10の範囲に選択され、アルキル鎖の末端にカルボキシル基(−COOH)を有するものが利用できる。具体的には、炭素数4のアルカン酸である、ブタン酸(酪酸、沸点163.5℃)、イソ酪酸(ジメチル酢酸、沸点152〜155℃)、炭素数8のアルカン酸である、オクタン酸(沸点227℃)、2−エチルヘキサン酸(沸点228℃)は、実際に沸点150℃〜240℃の条件を満たしている。また、炭素数10のアルカン酸である、ネオデカン酸(沸点243℃)は、沸点150℃〜250℃の条件を満たしている。加えて、前記炭素数がC4〜C10の範囲のアルカン酸自体は、熱的な安定性もあり、また、室温付近の蒸気圧もさほど高くなく、室温等で保管する際、含有率を所望の範囲に維持・制御することが容易であるなど、ハンドリング性の面から好適に用いられる。
【0031】
分散溶媒は、沸点が150℃〜300℃の範囲のグリコール溶媒、あるいは、沸点が150℃〜300℃の範囲のグリコールエーテル溶媒からなる群より選択される。沸点が150℃〜300℃の範囲の鎖式グリコール溶媒からなる群より選択されていることが好ましい。分散溶媒は、沸点が150℃〜300℃の範囲のグリコール溶媒からなる群、あるいは、沸点が150℃〜300℃の範囲のグリコールエーテル溶媒より選定される。特に、分散溶媒の沸点は、沸点が150℃〜300℃の範囲、好ましくは170℃から300℃の範囲、より好ましくは、180℃〜290℃の範囲に選択することができる。
【0032】
沸点が150℃〜300℃の範囲のグリコール溶媒の例として、具体的に、エチレングリコール(沸点197℃)を挙げることができるが、これには限定されない。また、分散溶媒として利用可能な、沸点が、150℃〜300℃の範囲のグリコールエーテル溶媒の例として、具体的に、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点272℃)を挙げることができるが、これには限定されない。
【0033】
分散溶媒は、銅ナノ粒子ペースト全体の質量を100%としたとき、銅ナノ粒子が、50〜85質量%となるように添加することが好ましく、70〜80質量%となるように添加することがさらに好ましい。溶媒の添加量が多くなると過剰の溶媒が銅ナノ粒子の焼結を阻害する場合がある。また、分散溶媒の量が少なすぎると、ペーストの粘度が増加し、ペースト状態を保てなくなる場合がある。
【0034】
本実施形態において用いる銅ナノ粒子ペーストにおいては、分散溶媒中に、その表面の密な被覆剤分子層が形成されている銅ナノ粒子が分散されている状態となっている。
【0035】
本実施形態において用いる銅ナノ粒子ペーストは、液粘性の低い有機溶媒中に所定量の被覆材分子と銅ナノ粒子とを分散した分散液に、分散溶媒を加え、液粘性の低い有機溶媒中を減圧留去することで調製することができるが、銅ナノ粒子ペースト調製方法は、特定の方法に限定されるものではない。特開2012-119132号公報等に開示の、当業者には既知の方法によって、適宜調整することができる。
【0036】
本実施形態による接合材は、上記のような銅ナノ粒子ペーストに、銅マイクロ粒子、もしくは銅サブマイクロ粒子の少なくとも一方を添加してなるものである。以下の説明において、銅マイクロ粒子、または銅サブマイクロ粒子あるいはそれらの両方を総称して、「添加銅粒子」と指称することがある。
【0037】
一実施形態によれば、銅ナノ粒子ペーストに添加される添加銅粒子は、銅マイクロ粒子単独である。ここで、銅マイクロ粒子とは、平均粒子径が、約1μm〜100μmの金属銅を主成分とする粒子である。第1実施形態においては、銅マイクロ粒子は、実質的に銅のみからなり、表面に他の金属原子からなる被覆層を有さず、また有機物等の被覆分子層を有さない。銅マイクロ粒子の平均粒子径は、好ましくは、約1μm〜10μmであり、さらに好ましくは、約1μm〜5μmである。なお、これらの平均粒子径は、電子顕微鏡による顕微鏡写真から測定して得られたものである。銅マイクロ粒子は、上記の平均粒子径を有する限り、その外形形状は、球形に限定されず、例えば鱗片状のものであってもよい。
【0038】
銅ナノ粒子ペーストに、銅マイクロ粒子を単独で混合して本実施形態による接合材とするとき、その混合比は、銅ナノ粒子ペースト中に含まれる銅ナノ粒子と、銅マイクロ粒子との質量比が、1:0.25〜1.6であり、好ましくは、1:0.4〜1.5である。
混合質量比を上記数値範囲とすると、粒子間の空隙が少なくなり、加熱接合後の接合層の密度が高くなり、接合強度が高くなるためである。
【0039】
別の実施形態によれば、銅ナノ粒子ペーストに添加される添加銅粒子は、銅サブマイクロ粒子単独である。ここで、銅サブマイクロ粒子とは、平均粒子径が、約100nm〜1μmの金属銅からなる粒子である。第1実施形態においては、銅サブマイクロ粒子もまた、実質的に銅のみからなり、表面に他の金属原子からなる被覆層を有さず、また有機物等の被覆分子層を有さない。銅サブマイクロ粒子の平均粒子径は、好ましくは、約0.1μm〜0.8μmであり、さらに好ましくは、約0.3μm〜0.8μmである。銅サブマイクロ粒子は、上記の平均粒子径を有する限り、その外形形状は、球形に限定されず、例えば鱗片状のものであってもよい。
【0040】
銅ナノ粒子ペーストに、銅サブマイクロ粒子を単独で混合して本実施形態による接合材とするとき、その混合比は、銅ナノ粒子ペースト中に含まれる銅ナノ粒子と、銅サブマイクロ粒子との質量比が、1:0.25〜1.5であり、好ましくは、1:0.3〜1.3である。混合質量比を上記数値範囲とすると、粒子間の空隙が少なくなり、加熱接合後の接合層の密度が高くなり、接合強度が高くなるためである。
【0041】
また別の実施形態によれば、銅ナノ粒子ペーストに添加する銅粒子は、銅マイクロ粒子と銅サブマイクロ粒子との両方の混合物である。銅ナノ粒子ペーストと、銅マイクロ粒子と、銅サブマイクロ粒子とを混合して本実施形態による接合材とするとき、その混合比は、銅ナノ粒子ペースト中に含まれる銅ナノ粒子と、銅マイクロ粒子と、銅サブマイクロ粒子との質量比が、1:0.2〜1.6:0.2〜1.3であり、好ましくは、1:0.3〜1.5:0.3〜1である。混合質量比を上記数値範囲とすると、粒子間の空隙が少なくなり、加熱接合後の接合層の密度が高くなり、接合強度が高くなるためである。
【0042】
次に、本実施形態に係る接合材を、製造方法の観点から説明する。本実施形態による接合材は、上記銅ナノ粒子ペーストと、銅マイクロ粒子もしくは銅サブマイクロ粒子あるいはそれらの両方を、当業者に通常用いられる方法で、単に混合することにより得ることができる。銅ナノ粒子ペーストを製造した後、銅マイクロ粒子もしくは銅サブマイクロ粒子あるいはそれらの両方を混合することもできる。あるいは、銅ナノ粒子ペーストの材料と、銅マイクロ粒子もしくは銅サブマイクロ粒子あるいはそれらの両方をすべて同時に混合することもできる。いずれの混合態様であっても、得られる接合材の特性には変化はない。
【0043】
本実施形態に係る接合材は、耐熱性を要する電子部品あるいは半導体装置の製造において、金属部材の接合に使用することができる。特には、シリコン部材と銅部材、あるいは、銅部材と銅部材との接合において使用することができる。また、電子部品あるいは半導体装置以外の任意のシリコン部材と銅部材、あるいは、銅部材と銅部材の接合に用いることができる。詳細な電子部品あるいは半導体装置の製造方法及び金属部材の接合方法については、後述する。
【0044】
本発明の第1実施形態による接合材は、安価な銅ナノ粒子ペーストを用いて、無加圧で、かつシリコンチップのような強度の低い材料であっても破壊することなく接合することが可能な接合材を実現することができるという効果を有する。
【0045】
[第2実施形態:接合材]
本発明は、第2実施形態によれば、接合材であって、銅ナノ粒子ペーストと、銅マイクロ粒子もしくは銅サブマイクロ粒子、あるいはそれらの両方とを混合してなり、銅マイクロ粒子もしくは銅サブマイクロ粒子、あるいはそれらの両方が、銅以外の金属により被覆されてなる金属被覆銅マイクロ粒子もしくは金属被覆銅サブマイクロ粒子である。
【0046】
第2実施形態において、銅ナノ粒子ペーストは、バインダー樹脂成分を含有せず、被覆剤分子層を表面に有する銅ナノ粒子を、分散溶媒中に均一に分散してなる分散液からなる。すなわち、第1実施形態で説明したのと同様の銅ナノ粒子ペーストであってよく、同様の方法で調製し、用いることができるため、本実施形態においては説明を省略する。
【0047】
第2実施形態においては、銅ナノ粒子ペーストと混合される銅マイクロ粒子もしくは銅サブマイクロ粒子、あるいはそれらの両方が、銅以外の金属により被覆されてなる、金属被覆銅粒子を含むことを特徴とする。
【0048】
金属被覆銅マイクロ粒子もしくは金属被覆銅サブマイクロ粒子は、具体的には、銀、ニッケル、アルミニウム、マグネシウムから選択される一以上からなる金属被覆層をその表面に設けてなる。したがって、金属被覆層は、これらの金属のうち、1種類からなるものであってもよく、2種類以上が混合されてなるものであってもよい。また、これらの金属の特性を損なわない限りにおいて、その他の金属が含まれていることを排除するものではない。金属被覆層は、その厚みが、10〜300nmであることが好ましく、30〜200nmであることがさらに好ましい。上記厚さの金属被覆層とすることにより、金属被覆層が、粒子間の焼結を助ける助剤的な役割を果たし、焼結が最も進行しやすくなるためである。
【0049】
金属被覆銅マイクロ粒子もしくは金属被覆銅サブマイクロ粒子において、金属被覆層は、銅マイクロ粒子もしくは銅サブマイクロ粒子の表面全体に設けられていることが好ましいが、表面の少なくとも一部に設けられていればよい。また、本実施形態は、銅マイクロ粒子もしくは銅サブマイクロ粒子のすべてが、金属被覆銅マイクロ粒子もしくは金属被覆銅サブマイクロ粒子であることが好ましいが、少なくとも一部の粒子が金属被覆銅マイクロ粒子もしくは金属被覆銅サブマイクロ粒子であって、他は、実質的に銅のみからなる銅マイクロ粒子もしくは銅サブマイクロ粒子であってもよい。
【0050】
本実施形態においても、銅ナノ粒子ペーストと混合する金属被覆銅マイクロ粒子もしくは金属被覆銅サブマイクロ粒子の平均粒子径は、第1実施形態と同じであってよい。なお、金属被覆銅マイクロ粒子もしくは金属被覆銅サブマイクロ粒子の平均粒子径は、金属被覆層の厚みを含む平均粒子径をいうものとする。また、金属被覆銅マイクロ粒子もしくは金属被覆銅サブマイクロ粒子の、銅ナノ粒子ペースト中の銅ナノ粒子との混合質量比も、第1実施形態と同じであってよい。
【0051】
第2実施形態による接合材の調製方法は、第1実施形態で説明したのと同様の方法であってよい。金属被覆銅マイクロ粒子もしくは金属被覆銅サブマイクロ粒子の製造方法は既知であり、市販品を用いることができる。したがって、当業者であれば、金属被覆銅マイクロ粒子もしくは金属被覆銅サブマイクロ粒子、あるいはこれらの両方を、銅ナノ粒子ペーストと混合し、第2実施形態による接合材を調製することができる。また、第2実施形態による接合材も、第1実施形態による接合材と同様の用途において使用することができる。
【0052】
本発明の第2実施形態による接合材は、第1実施形態の利点を全て備え、さらに、接合強度が増加し、低温、短時間で接合することができるという効果を有する。
【0053】
[第3実施形態:電子部品あるいは半導体装置の製造方法]
本発明は、第3実施形態によれば、電子部品あるいは半導体装置の製造方法であって、シリコンもしくは銅基板上に、第1実施形態もしくは第2実施形態のいずれかの接合材を塗布する工程と、前記接合材上に、半導体素子を載置する工程と、前記シリコンチップもしく銅基板と、前記接合材と、前記半導体素子とを、加圧することなく、200〜450℃にて、酸化抑制雰囲気もしくは還元性雰囲気で加熱する工程とを含んでなる。
【0054】
本実施形態において、シリコンもしくは銅基板は、電子部品あるいは半導体装置の製造において通常用いられるものであってよく、通常使用されている前処理等を実施してから接合に供することができる。
【0055】
シリコンもしくは銅基板上に、第1実施形態もしくは第2実施形態のいずれかの接合材を塗布する工程では、メタルマスクを使用するなどの既知の任意の方法で、本発明に係る接合材を所望の厚さに、略均一に塗布する。接合材の塗布厚さは、10〜500μmとすることが好ましく、100〜300μmとすることが好ましいが、特定の厚さには限定されない。目的に応じて、当業者が適宜決定することができる。また、塗布する、とは特定の方法に限定されず、シリコンもしくは銅基板上に、接合材を適用する任意の態様をいうものとする。
【0056】
続く工程では、塗布した接合材上に半導体素子を載置する。半導体素子としては、IGBT、IC、ダイオード素子等が挙げられるが、これらには限定されない。半導体素子を構成する銅部材が、本発明に係る接合材と接触するように半導体素子を載置する。
【0057】
次いで、得られたシリコンチップもしく銅基板と、接合材と、前記半導体素子との積層体を加熱接合する工程を実施する。本実施形態において、加熱接合は、積層体を加圧することなく行うことができる。すなわち、特別な加圧式接合装置を用いることなく、所定温度に設定した加熱炉等に積層体を入れるだけで加熱接合が可能である。
【0058】
加熱条件としては、200〜450℃にて、保持時間を、0〜60分とすることが好ましく、280〜350℃にて、保持時間を、10〜30分とすることがさらに好ましい。また、酸化抑制雰囲気としては、真空(約5×10
−1Pa程度)、アルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気が挙げられる。還元性雰囲気としては、アルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気に、1%〜100%、好ましくは1%〜10%の水素ガスを混合した雰囲気が挙げられるが、これらの特定の雰囲気には限定されない。
【0059】
上記加熱工程においては、銅ナノ粒子ペーストを構成する分散溶媒及び被覆材分子が分解され、接合材を構成する銅マイクロ粒子もしくは銅サブマイクロ粒子の粒子空隙に銅ナノ粒子が入り込んだ微細組織を構成し、かつ各粒子間の焼結が進行して、緻密化された接合層を形成し、高い接合強度での電子部材あるいは半導体部材の接合を実現することができる。また、特に還元性雰囲気下で加熱接合することにより、接合材を構成する銅粒子の酸化を防止し、粒子間の焼結を促すことができる。
【0060】
第3実施形態による電子部品あるいは半導体装置の製造方法によれば、本発明に係る接合材を用いて電子部材あるいは半導体部材を接合することで、従来と比較してより簡便な方法で、電子部品あるいは半導体装置において一般的に所望される十分な接合強度を得ることができる。
【0061】
[第4実施形態:金属部材の接合方法]
本発明は、第4実施形態によれば、金属部材の接合方法であって、シリコン部材もしくは銅部材上に、第1実施形態もしくは第2実施形態のいずれかの接合材を塗布する工程と、前記接合材上に、銅部材を載置する工程と、前記シリコンもしく銅部材と、前記接合材と、前記銅部材とを、加圧することなく、200〜450℃にて、酸化抑制雰囲気もしくは還元性雰囲気で加熱する工程とを含んでなる。
【0062】
本実施形態においては、第3実施形態におけるシリコンもしくは銅基板に替えて、任意のシリコンもしくは銅部材を用い、第3実施形態における半導体素子に替えて銅部材を用い、同様にして積層あるいは積載する。加熱工程における加熱条件、及び加熱雰囲気は第3実施形態と同様とすることができる。
【0063】
第4実施形態による金属部材の接合方法によれば、シリコン部材と銅部材、あるいは銅部材どうしを、簡便な方法で、かつ、高い強度で接合することができる。
【0064】
以下に、実施例により、本発明をより詳細に説明する。以下の実施例は、本発明の例示であって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0065】
[実施例1]
本発明に係る接合材を調製した。被覆剤分子としては、2−エチルヘキサン酸とオクチルアミンとを質量比が1:2になるように混合した混合物を用いた。この被覆剤分子を、被覆剤分子の体積比率と、銅ナノ粒子の体積比率とが、1:0.5となるように、平均粒子径が約70nmの銅ナノ粒子に被覆して、エチレングリコールに分散させ、銅ナノ粒子ペーストを調製した。銅ナノ粒子ペースト全体の質量に対する銅ナノ粒子の質量は、77.5質量%であった。この銅ナノ粒子ペーストに含まれる銅ナノ粒子、平均粒子径が5μmの銅マイクロ粒子、平均粒子径が0.8μmの銅サブマイクロ粒子の質量比が、1:1.4:0.4となるように、銅ナノ粒子ペースト、銅マイクロ粒子、銅サブマイクロ粒子を混合し、本発明に係る接合材を得た。
【0066】
[比較例1]
実施例1で用いた銅ナノ粒子ペーストのみを用い、銅マイクロ粒子も銅サブマイクロ粒子も添加していないものを、比較例1の接合材とした。
【0067】
[実施例2]
本発明に係る別の接合材を調製した。銅ナノ粒子ペーストは実施例1と同じものを用い、銅ナノ粒子ペーストの質量を100%としたときに、平均粒子径が5μmの銅マイクロ粒子を、0質量%、33質量%、50質量%、66質量%となるように添加した接合材、ならびに、同じく、銅ナノ粒子ペーストの質量を100%としたときに、銅表面に銀を500nmの厚さに被覆した平均粒子径が5μmの銀被覆銅マイクロ粒子を、0質量%、33質量%、50質量%、66質量%となるように添加した接合材を調製した。
【0068】
[実験例1]
実施例1及び比較例1で調製した接合材を真空乾燥し、走査型電子顕微鏡写真を撮影した。
図1(A)は、実施例1に係る接合材の走査型電子顕微鏡写真であり、
図1(B)は、比較例1に係る接合材の走査型電子顕微鏡写真である。
図1(A)を参照すると、平均直径が、概ね70nm、0.8μmおよび5μmの3種類のサイズの異なる粒子で構成されていることがわかる。また、
図1(B)を参照すると、平均直径が、概ね70nmの銅ナノ粒子単一で構成されていることがわかる。
【0069】
[実験例2]
実施例1、2及び比較例1の接合材について、接合試験を行った。
図2に試験片作成の概要を示す。試験片にはφ:10mm、t:5mm及びφ=3mm、t:2mm形状のタフピッチ銅を用いた。試験片の接合面を研磨紙およびダイヤモンドペーストにより鏡面研磨し、希塩酸中で酸洗浄後、エタノールによる超音波洗浄を経て接合試験に供した。実施例1の接合材を、上記試験片の接合面に孔径φ=5mm、厚さ150μmのメタルマスクを用いて一定量塗布し、φ:3mmの試験片を重ねて接合試験片を作製した。異種金属の接合試験においては、φ=3mm、t:2mm形状のタフピッチ銅に替えて、3mm角、厚みが0.6mmで表面に金を50nmにコートしたシリコンチップを用い、金コート面を接合面とした。
【0070】
接合試験は、試験片を、無加圧下250〜350℃の条件で加熱し、接合温度に到達後、30分間保持し、自然冷却を行った。接合雰囲気には、真空(5×10
−1Pa)雰囲気、100%N
2雰囲気、およびN
2に5体積%のH
2を含む雰囲気(以下、N
2−5%H
2と略す。)を用いた。各試験条件で得られた試験片について、せん断試験測定機(STR−100)を用いて、せん断強度を室温で測定した。せん断速度は1mm/minとした。
【0071】
[実験例3]
実施例2により作製した本発明の接合材で接合した試験片のせん断試験結果を
図3に示す。銅マイクロ粒子、及び銀被覆銅マイクロ粒子を添加したものは、いずれも、銅ナノペースト単独の接合材と比較してせん断強度が増加しており、接合性の向上が確認された。特には、銀被覆銅マイクロ粒子を用いた場合に、接合性の著しい向上が確認された。
【0072】
次に、実施例1及び比較例1で調製した接合材を用い、N
2またはN
2−5%H
2雰囲気中で300℃、無加圧の条件で焼成した試験片の接合強度に及ぼす焼成雰囲気の影響を比較したグラフを
図4に示す。比較例1の接合材を用いてN
2−5%H
2雰囲気中で焼成した試験片は、約15MPaの接合強度を示した。一方、実施例1の接合材を用いた試験片は、N
2雰囲気中では、10MPa程度の接合強度であったが、N
2−5%H
2雰囲気を用いると、接合強度が急激に増加し、45MPa以上の高接合強度を示した。この値は、比較例1の接合材を用いて加圧力15MPa、350℃で焼成した試験片の接合強度に匹敵する。N
2−5%H
2雰囲気では、H
2による還元効果により、粒子表面および銅基板表面の酸化層が還元、また、銅粒子表面の被覆剤分子層が分解され易くなるため、焼結が低温から進行し、高接合強度が得られたものと思われる。また、比較例1の接合材よりも実施例1の接合材を用いて接合した試験片が高接合強度を示す理由については、銅ナノ粒子単一だけでなく、銅マイクロ粒子、銅サブマイクロ粒子が混合されることにより、接合層の密度が増加するためであると考えられる。
【0073】
実施例1で調製した接合材を用い、銅とシリコンチップを接合して、N
2−5%H
2雰囲気中で300℃、無加圧の条件で焼成した試験片の接合強度を、同じ接合材を用い、同じ条件で焼成した銅と銅との接合試験片の接合強度と比較した。グラフを
図5に示す。せん断試験においては、銅とシリコンチップの試験片では、高接合のため、シリコンチップが破壊されて低強度となるが、チップ破壊後でも、25MPa以上の接合強度を保持した。銅基板とシリコンチップの接合強度測定から得られたこのような結果は、半導体装置の製造において、本発明に係る接合材が、十分な強度で接合材として機能することを示すものである。
【0074】
[実験例4]
試験片の接合層の破面観察を行った。実施例1の接合材を用いて、N
2およびN
2−5%H
2雰囲気で350℃、無加圧の条件で得られた試験片をせん断試験後、破面を観察した。その結果、N
2雰囲気中で焼成した試験片の接合破面が、茶褐色化しているに対し、N
2−5%H
2雰囲気中で焼成した接合面は、酸化程度の低い、淡赤色を示していた(図示せず)。焼成後のべ一ストの色の変化からも、H
2による銅粒子の還元効果が確認された。
【0075】
実施例1の接合材を用いた場合の、せん断試験後の破断面を観察した結果を
図6に示す。破断面試料には、せん断試験後のφ:10mmの下部基板を用いた。N
2−5%H
2雰囲気中で焼成を行った試験片からは、延性破壊を示すディンプル状の延性破壊面が観察された(
図6(B))。これは、粒子間の焼結が進み、接合層の強度が高くなっていることを示し、N
2雰囲気中で焼成した試験片よりも接合強度が高くなったことと一致する。いっぽう、N
2雰囲気中で焼成を行った試験片の微細構造からは、粒子状の形態が多く確認され、粒子間の焼結および接合層の緻密化の程度は、N
2−5%H
2雰囲気中で焼成を行った場合よりは低いことが分かった(
図6(A))。
【0076】
図7は、実施例1の接合材を用いて、N
2−5%H
2雰囲気で、350℃、無加圧の条件で得られた試験片の断面観察結果を示す。
図7(A)において、接合層と基板の界面は、剥離等の目立った痕跡はなかった。接合層厚さは約50μmであり、焼成によってペースト中の溶媒等が分解され、接合層全体が収縮していることがわかった。
図7(B)は、
図7(A)の拡大写真である。本発明にかかる接合材の接合層内の微構造から、銅マイクロ粒子、及び銅サブマイクロ粒子が均一に分散しており、その粒子間隙にナノ粒子が入り込んでいる微細組織が観察された。低強度の要因となりうるこのような粒子間隙をナノ粒子が上手く埋めることにより、接合層が緻密化されたものと考えられる。