(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、ハイブリッド自動車や電気自動車のモータ駆動等に用いられる大容量で高出力なバッテリーとして、複数の電池(電池セル)が直列に接続されたバッテリー(具体的一例としては、リチウムイオンバッテリー等が挙げられる)が用いられている。当該バッテリーの電池の電池電圧を計測して監視・制御するための組電池システムが知られている。
【0003】
このような従来の組電池システムとして、複数の直列に接続された電池セルの高電位側の電圧と低電位側の電圧との差分により、各電池セルの電池電圧を計測するものが知られている。例えば、特許文献1には、各電池セルに接続された電源線が接続された端子のいずれか(二つ)をマルチプレクサにより選択して、差動増幅器に出力し、差動増幅器から出力されたアナログの電気信号をデジタルの電気信号に出力し、当該デジタルの電気信号に基づいて、各電池セルの電池電圧を計測する技術が記載されている。
【0004】
一方、特許文献2には、自己診断機能を備えたディジタル測定器が記載されている。特許文献2に記載のディジタル測定器は、図
9に示すように、シングル入力回路が利得(ゲイン)を切換えるレンジ切換え回路109により構成されており、当該シングル入力回路(レンジ切換え回路109)の自己診断を行う機能を有している。図
9に示したレンジ切換え回路109では、スイッチング素子SW192、193をNC側に接続するか、NO側に接続するかにより、ゲインを切換えている。
【0005】
レンジ切換え回路109のゲインを例えば、ゲインG1及びゲインG2とすると、レンジ切換え回路109に基準電圧Aを入力してゲインG1として得られた値G1×Aと、ゲインG2として得られた値G2×Aと、をAD(アナログデジタル)変換したものからゲインG1とゲインG2の比を求めて、利得の切換えが正常であるか否かを診断している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上述の特許文献2に記載の技術では、レンジ切換え回路109のゲインG1及びゲインG2自体の精度を診断するためには、基準電圧Aの精度を自己診断対象となる回路の入出力変換精度以上にしなくてはならない。
【0008】
特許文献2に記載の自己診断技術を、自己診断の対象となる回路が差動入力回路に適用した場合、入力が2系統になるため、自己診断を行うためにさらに基準電圧Bを供給する基準電圧B(基準電圧Bを供給する電圧源)が必要となる。当該基準電圧Bには、上述の基準電圧Aと同様に、自己診断対象となる回路の入出力変換精度以上の精度が必要になるという問題が発生する。
【0009】
従って、上述の特許文献1に記載の技術のように組電池システムには、差動増幅器が用いられており、当該差動増幅器の自己診断技術に特許文献2に記載の自己診断技術を適用した場合、上述の問段が発生することになる。その結果、適切に自己診断を行えない懸念が生じる。
【0010】
本発明は、上述した問題を解決するために提案されたものであり、計測手段の自己診断を適切に行うことができる、半導体回路、組電池システム、及び診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の組電池システムは、直列に接続された複数の電池と、前記複数の電池の各々に接続された複数の電源線と
、アナログ信号をデジタル信号に変換する変換手段を有し
、前記複数の電池の電池電圧を監視するために
監視対象の電池に応じた前記電源線により入力された二つ
の電気信号の差分をデジタル信号に変換して出力する計測手段と、前記計測手段から出力されたデジタル信号に対して予め定められた演算を行い、演算結果に応じた電気信号を出力する演算手段と、
第1の基準電圧を出力する基準電源と前記電源線とを接続し、前記第1の基準電圧を前記電源線に供給する第1スイッチング素子と、前記第1の基準電圧を分圧した第2の基準電圧を前記電源線に供給する基準電圧分圧部と、
前記第2の基準電圧よりも小さい第3の基準電圧の供給源と前記計測手段とを接続し、前記第3の基準電圧を前記計測手段に供給する第2スイッチング素子と、を備え、前記計測手
段は、
前記第1スイッチング素子をオン状態にし、かつ前記第2スイッチング素子をオフ状態にした場合、前記第1の基準電圧と前記第2の基準電圧との差分
である第1の差分値を出力するとともに、前記第1スイッチング素子をオフ状態にし、かつ前記第2スイッチング素子をオン状態にした場合、前記第2の基準電圧と前記第3の基準電圧との差分
である第2の差分値を出力し、前記演算手段は、前記第1の差分値と前記第2の差分値とを加算した加算値が、前記第1の基準電圧に応じた値となるか否かにより
自己診断を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の
半導体回路は、直列に接続された複数の電池の各々に接続された複数の電源線と
、アナログ信号をデジタル信号に変換する変換手段を有し
、前記複数の電池の電池電圧を監視するために
監視対象の電池に応じた前記電源線により入力された二つ
の電気信号の差分をデジタル信号に変換して出力する計測手段と、前記計測手段から出力されたデジタル信号に対して予め定められた演算を行い、演算結果に応じた電気信号を出力する演算手段と、
第1の基準電圧を出力する基準電源と前記電源線とを接続し、前記第1の基準電圧を前記電源線に供給する第1スイッチング素子と、前記第1の基準電圧を分圧した第2の基準電圧を前記電源線に供給する基準電圧分圧部と、
前記第2の基準電圧よりも小さい第3の基準電圧の供給源と前記計測手段とを接続し、前記第3の基準電圧を前記計測手段に供給する第2スイッチング素子と、を備え、前記計測手
段は、
前記第1スイッチング素子をオン状態にし、かつ前記第2スイッチング素子をオフ状態にした場合、前記第1の基準電圧と前記第2の基準電圧との差分
である第1の差分値を出力するとともに、前記第1スイッチング素子をオフ状態にし、かつ前記第2スイッチング素子をオン状態にした場合、前記第2の基準電圧と前記第3の基準電圧との差分
である第2の差分値を出力し、前記第1の差分値と前記第2の差分値とを加算した加算値が、前記第1の基準電圧に応じた値となるか否かにより
自己診断が行われることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の診断方法は、直列に接続された複数の電池の各々に接続された複数の電源線と
、アナログ信号をデジタル信号に変換する変換手段を有し
、前記複数の電池の電池電圧を監視するために
監視対象の電池に応じた前記電源線により入力された二つ
の電気信号の差分をデジタル信号に変換して出力する計測手段と、前記計測手段から出力されたデジタル信号に対して予め定められた演算を行い、演算結果に応じた電気信号を出力する演算手段と、
第1の基準電圧を出力する基準電源と前記電源線とを接続し、前記第1の基準電圧を前記電源線に供給する第1スイッチング素子と、前記第1の基準電圧を分圧した第2の基準電圧を前記電源線に供給する基準電圧分圧部と、
前記第2の基準電圧よりも小さい第3の基準電圧の供給源と前記計測手段とを接続し、前記第3の基準電圧を前記計測手段に供給する第2スイッチング素子と、を備えた半導体回路の前記計測手段の診断方法であって、前記計測手段より、
前記第1スイッチング素子をオン状態にし、かつ前記第2スイッチング素子をオフ状態にした場合、前記第1の基準電圧と前記第2の基準電圧との差分
である第1の差分値を出力するステップと、前記計測手段より、
前記第1スイッチング素子をオフ状態にし、かつ前記第2スイッチング素子をオン状態にした場合、前記第2の基準電圧と前
記第3の基準電圧との差分
である第2の差分値を出力するステップと、
前記第1の差分値と前記第2の差分値とを加算した加算値が、前記第1の基準電圧に応じた値となるか否かを判定するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、計測手段の自己診断を適切に行うことができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本実施の形態の組電池システム全体の概略について説明する。
【0017】
まず、本実施の形態の組電池システムの構成について説明する。本実施の形態の組電池システムの概略構成の一例を
図1に示す。
図1に示した本実施の形態の組電池システムは、複数の電池セルを含む電池セル群12と、電池セル群12の各電池セルの電圧を測定する半導体回路14と、を備えて構成されている。
【0018】
電池セル群12は、
図2に示すように、複数の電池セルCが直列に接続されている。なお、
図1及び
図2では、具体的一例として、n個の電池セルC(C
2〜Cn+1)が直列に接続されている場合を示している。本実施の形態では、電池セル群12の最高電位側が電池セルCn+1であり、最低電位側が電池セルC2である。各電池セルCの高電位側及び低電位側(電池セルC同士の間)には、端子(パッド)を介して半導体回路14の電源線V(V1〜Vn+1)が接続されている。
【0019】
半導体回路14は、制御回路22、
記憶部24、及び自己診断機能を有する電圧計測回路30(以下、単に電圧計測回路30という)を備えている。
【0020】
電圧計測回路30は、各電池セルCの高電位側の電圧と低電位側の電圧との差に基づいて、各電池セルCの電池電圧を計測する機能を有している。本実施の形態の電圧計測回路30は、セル選択SW32及び電圧計測部34を備えている。セル選択SW32により、各電池セルC毎に、電池セルCの高電位側に接続された電源線Vと、低電位側に接続された電源線Vとを選択して、それぞれに応じた電気信号(アナログ信号)を電圧計測部34に出力する。電圧計測部34は、セル選択SW32から出力された電池セルCの高電位側に接続された電源線Vに応じた電気信号と、低電位側に接続された電源線Vに応じた電気信号との差分をデジタル信号に変換し、変換した電気信号(デジタル信号)を制御回路22に出力する機能を有している。
【0021】
また、本実施の形態の電圧計測回路30は、電圧計測部34により電池電圧が適正に計測されているかを自己診断する機能を有している(詳細後述)。
【0022】
制御回路22は、電圧計測回路30により各電池セルCの電池電圧を計測するための制御信号や、電圧計測回路30に自己診断を行わせるための制御信号を出力する機能を有する論理回路である。制御回路22は、電池電圧の計測指示や、自己診断指示を受けると、プログラムが実行され、電圧計測回路30に制御信号を出力する。
【0023】
記憶部24は、詳細を後述する出力値(A−B)及び出力値(B−
VSS)等を記憶する機能を有しており、例えば、レジスタやハードディスク、メモリ等により構成されている。
【0024】
次に、電圧計測回路30の詳細について説明する。
図3に、本実施の形態の電圧計測回路30の構成の一例を示す。
図3に示すように本実施の形態の電圧計測回路30は、セル選択SW32、電圧計測部34、基準電源36、基準電圧分圧抵抗38、SW群1、SW群2、SW群3、SW群4、スイッチング素子SW7、スイッチング素子SW8、及びスイッチング素子SW10を備えている。
【0025】
SW群1は、各電源線V毎に、スイッチング素子SW1(SW11〜SW1n+1)を備えており、セル選択SW32と、電池セル群12(電池セルC)との接続状態を切換える機能を有している。SW群1をオフ状態にすることにより、セル選択SW32に対して、電池セル群12(電池セルC)からの電圧(電池電圧)の入力を遮断することができる。
【0026】
SW群2は、各電池セルCの高電位側に接続された電源線V毎に、スイッチング素子SW2(SW22〜SW2n+1)を備えており、自己診断を行う際に、セル選択SW32と電池セルCの高電位側とを接続する機能を有している。
【0027】
一方、SW群3は、各電池セルCの低電位側に接続された電源線V毎に、スイッチング素子SW3(SW31〜SW3n)を備えており、自己診断を行う際に、セル選択SW32と電池セルCの低電位側とを接続する機能を有している。
【0028】
セル選択SW32は、上述のように、電池セル群12の電池セルCの電池電圧を計測する場合は、電池セルCの高電位側に接続された電源線Vと、低電位側に接続された電源線Vとを選択して、それぞれに応じた電気信号(アナログ信号)をレベルシフタ回路40(電圧計測部34)に出力する機能を有している。
【0029】
セル選択SW32は、電源線Vのうち、所定の電源線に流れる電気信号を選択してレベルシフタ回路40に出力する機能を有していれば特に限定されないが、本実施の形態では、一例として、各電源線V毎にスイッチング素子SWを備えたMUX(マルチプレクサ)等により構成している。
【0030】
また、本実施の形態のセル選択SW32は、自己診断を行う際に、所定の電源線V(本実施の形態では電池セルCの高電位側に接続された電源線V及び低電位側に接続された電源線V)を選択して、それぞれに応じた電気信号(アナログ信号)をレベルシフタ回路40(電圧計測部34)に出力する機能を有している。
【0031】
基準電源36は、第1の基準電圧としての基準電圧Aを生成し、供給する機能を有している。基準電圧分圧抵抗38は、複数の抵抗素子Rが直列に接続された分圧抵抗素子、及び当該分圧抵抗素子と第3の基準電圧としての電圧VSS(0V)とを接続するスイッチング素子SW9を備えている。
SW群4は、スイッチング素子SW4(SW41〜SW4n+1)を備えており、自己診断を行う際に、自己診断を行う電源線Vに応じて予め定められた分圧抵抗値(第2の基準電圧としての基準電圧B)
を電源線Vに供給させる機能を有している。なお、以下では、基準電源36から供給される基準電圧を基準電圧Aといい、基準電圧Aが基準電圧分圧抵抗38により分圧された分圧抵抗値を基準電圧Bという。また、電圧VSSは、0Vでも良いし、半導体回路14に接続されている電池セル群12の中で最も低電位の電池セルC2の低電位側と同じ電位でも良い。
【0032】
スイッチング素子SW7及びSW群2の所定のスイッチング素子SW2がオン状態になることにより、基準電圧Aが電源線Vに供給される。また、スイッチング素子SW9、SW群4の所定のスイッチング素子SW4,スイッチング素子SW8、及びSW群3の所定のスイッチング素子SW3がオン状態になることにより、基準電圧Bが電源線Vに供給される。また、スイッチング素子SW10は、セル選択SW32とレベルシフタ回路40とを結ぶ2つの電源線のうち、下位電位側に接続されており、スイッチング素子SW10がオン状態になることにより、電圧VSSが電源線Vに供給される。
【0033】
本実施の形態の電圧計測部34は、レベルシフタ回路40、ADコンバータ42を備えている。
【0034】
レベルシフタ回路40は、セル選択SW32から入力された二つの電気信号の差分に応じたアナログの電気信号を出力する機能を有している。本実施の形態では、このようにレベルシフタ回路40を用いているがこれに限らず、セル選択SW32から入力された二つの電気信号の差分に応じたアナログの電気信号を出力する機能を有していればその構成は特に限定されない。
【0035】
ADコンバータ42は、入力されたアナログの電気信号をデジタル信号に変換してデジタル信号を出力する機能を有するアナログデジタル変換器である。
【0036】
なお、本実施の形態では、SW群1〜SW群4の各スイッチング素子SW(SW1〜SW4)、セル選択SW32が有するスイッチング素子SW、及びスイッチング素子SW7〜スイッチング素子SW
10のオン/オフは、制御回路22から入力される制御信号により制御される。
【0037】
次に、本実施の形態の半導体回路14における、電圧計測回路30の自己診断機能について説明する。本実施の形態の自己診断動作全体の流れの一例のフローチャートを
図4に示す。当該動作は、制御回路22における診断プログラムの実行等により制御される。なお、以下では、具体的一例として、電源線Vn及び電源線Vn−1を選択して自己診断を行う場合について説明する。具体的一例の場合における電圧計測回路30の状態を示した回路図を
図6及び
図8に示す。
【0038】
なお、本実施の形態においては、自己診断を行う際の初期状態では、SW群1〜SW群4の各スイッチング素子SW(SW1〜SW4)、セル選択SW32が有するスイッチング素子SW、及びスイッチング素子SW7〜スイッチング素子SW9はオフ状態になっている。
【0039】
まず、ステップ100では、第1制御処理を行う。第1制御処理とは、セル選択SW32から入力された基準電圧Aに応じた電気信号及び基準電圧Bに応じた電気信号をレベルシフタ回路40に出力させ、レベルシフタ回路40からADコンバータ42を介して出力された電気信号(基準電圧A−基準電圧Bに応じた電気信号)を記憶部24に記憶させるよう制御する処理である。
【0040】
当該第1制御処理の一例のフローチャートを
図5に示す。
【0041】
ステップ200では、セル選択SW32により自己診断する電源線V(電池セルC)に対応する電源線Vを選択する。本実施の形態では、具体的一例として、電源線Vn及び電源線Vn−1を選択する。
【0042】
次のステップ202では、選択した電源線V(選択した電源線Vのうち高電位側)と基準電源36とを接続するSW群2のスイッチング素子SW7をオン状態にする。
図6に示すように、ここでは、スイッチング素子SW2nをオン状態にする。また、スイッチング素子SW7をオン状態にする。これにより、基準電源36から供給された基準電圧Aに応じた電気信号がセル選択SW32に入力される。
【0043】
次のステップ204では、選択した電源線V(選択した電源線Vのうち低電位側)と基準電圧分圧抵抗38とを接続するSW群3のスイッチング素子SW3をオン状態にする。
図6に示すように、ここでは、スイッチング素子SW3n−1をオン状態にする。また、スイッチング素子SW8をオン状態にする。さらに、基準電圧Aを分圧して、電池セルC(電池セルCn)に応じた電圧が供給されるように、当該電池セルCに応じたSW群4のスイッチング素子SW4と、スイッチング素子SW9とをオン状態にする。
図6に示すように、ここでは、SW群4のスイッチング素子SW4nをオン状態にする。なお、本実施の形態では、このように自己診断を行う際に、各電池セルCに応じた電圧を供給するようにしているがこれに限らず、その他、自己診断用の電圧を供給するようにしてもよい。なお、各電池セルCの電池電圧の計測を行う際と同様の状態(条件)により自己診断を行うことが好ましく、本実施の形態のように、各電池セルCに応じた電圧を供給することにより、診断精度を高めることができる。
【0044】
これにより、基準電源36から供給された基準電圧Aが基準電圧分圧抵抗38により分圧された基準電圧Bに応じた電気信号がセル選択SW32に入力される。
【0045】
次のステップ206では、レベルシフタ回路40がセル選択SW32から入力された基準電圧Aに応じた電気信号と、基準電圧Bに応じた電気信号の差分に応じた電気信号を出力する。これにより、基準電圧A−基準電圧Bに応じたアナログの電気信号がADコンバータ42に入力される。
【0046】
次のステップ208では、入力された基準電圧A−基準電圧Bに応じたアナログの電気信号をデジタル信号に変換して出力すると、次のステップ210では、出力された基準電圧A−基準電圧Bに応じたデジタルの電気信号(以下、出力値(A−B)という)を記憶部24に記憶させた後、本処理を終了する。なお、本実施の形態においては、第1制御処理の終了後は、SW群1〜SW群4の各スイッチング素子SW(SW1〜SW4)、セル選択SW32が有するスイッチング素子SW、及びスイッチング素子SW7〜スイッチング素子SW9をオフ状態にする。
【0047】
このようにしてステップ100の第1制御処理が終了すると次のステップ102では、第2制御処理を行う。第2制御処理とは、セル選択SW32から出力された基準電圧Bに応じた電気信号と、電圧VSSに応じた電気信号とをレベルシフタ回路40に入力させ、レベルシフタ回路40からADコンバータ42を介して出力された電気信号(基準電圧B−電圧VSSに応じた電気信号)を記憶部24に記憶させるよう制御する処理である。
【0048】
当該第2制御処理の一例のフローチャートを
図7に示す。
【0049】
ステップ300では、セル選択SW32により自己診断する電源線V(電池セルC)に対応する電源線Vを選択する。本実施の形態では、具体的一例として、電源線Vn及び電源線Vn−1を選択する。
【0050】
次のステップ302では、選択した電源線V(選択した電源線Vのうち高電位側)と基準電圧分圧抵抗38とを接続するSW群3のスイッチング素子SW3をオン状態にする。
図8に示すように、ここでは、スイッチング素子SW3
nをオン状態にする。また、スイッチング素子SW8をオン状態にする。さらに、基準電圧Aを分圧して、電池セルC(電池セルCn)に応じた電圧が供給されるように、当該電池セルCに応じたSW群4のスイッチング素子SW4と、スイッチング素子SW9とをオン状態にする。
図8に示すように、ここでは、SW群4のスイッチング素子SW4nをオン状態にする。なお、本実施の形態では、このように自己診断を行う際に、各電池セルCに応じた電圧を供給するようにしているがこれに限らず、その他、自己診断用の電圧を供給するようにしてもよい。なお、各電池セルCの電池電圧の計測を行う際と同様の状態(条件)により自己診断を行うことが好ましく、本実施の形態のように、各電池セルCに応じた電圧を供給することにより、診断精度を高めることができる。これにより、基準電圧Bに応じた電気信号がセル選択SW32に入力される。
【0051】
次のステップ304では、セル選択SW32とレベルシフタ回路40とを接続する2つの電源線のうち低電位側に接続されたスイッチング素子SW10をオン状態にする。これにより、電圧VSSが
レベルシフタ回路40に入力される。次のステップ306では、レベルシフタ回路40がセル選択SW32から入力された基準電圧Bに応じた電気信号と、電圧VSSに応じた電気信号の差分に応じた電気信号を出力する。これにより、基準電圧B−電圧VSSに応じたアナログの電気信号がADコンバータ42に入力される。次のステップ308では、入力された基準電圧B−電圧VSSに応じたアナログの電気信号をデジタル信号に変換して出力すると、次のステップ310では、出力された基準電圧B−電圧VSSに応じたデジタルの電気信号(以下、出力値(B−
VSS)という)を記憶部24に記憶させた後、本処理を終了する。なお、本実施の形態においては、第2制御処理の終了後は、SW群1〜SW群4の各スイッチング素子SW(SW1〜SW4)、セル選択SW32が有するスイッチング素子SW、及びスイッチング素子SW7〜スイッチング素子SW
10をオフ状態にする。
【0052】
このようにしてステップ102の第2制御処理が終了すると次のステップ104では、第1制御処理により記憶部24に記憶させた出力値(A−B)と、第2制御処理により記憶部24に記憶させた出力値(B−
VSS)と、を加算し、加算した値が基準電圧A−電圧VSSと同じであるか否かを判断する。
【0053】
各電源線V(Vn、Vn−1)、セル選択SW32、及びレベルシフタ回路40に故障等の異常が生じていない場合、第1制御処理により記憶部24に記憶させた出力値(A−B)と、第2制御処理により記憶部24に記憶させた出力値(B−
VSS)と、を加算した値は、基準電圧A−電圧VSSになる。従って、ここで基準電圧A−電圧VSSではないと判断された場合は、各電源線V(Vn、Vn−1)、セル選択SW32、及びレベルシフタ回路40(少なくともこれらのいずれか)に故障等の異常が生じていることを示している。なお、異常と判断されない、すなわち正常と判断されるためには、出力値(A−B)と出力値(B−
VSS)との加算値が基準電圧A−電圧VSSと完全に同一ではなくともよく、電圧計測部34の精度等に応じた予め定められた基準電圧A
−電圧VSSと同等と見なせる範囲(許容範囲)内の電圧であればよい。
【0054】
否定された場合は、異常が生じているため、ステップ106へ進み、例えば、組電池システム10の動作を停止したり、異常が生じている旨の報知を行ったり等、所定の措置を行った後、ステップ110へ進む。一方、ステップ104で肯定された場合は、正常に動作している(異常が生じていない)ため、ステップ108で正常とみなした後、ステップ110へ進む。
【0055】
次のステップ110では、本処理を終了するか否か判断する。未だ全ての電池セルCに応じた電源線Vに対して自己診断を行っていない場合は、否定されてステップ100に戻り本処理を繰り返す。一方、全ての電池セルCに応じた電源線Vに対して自己診断を行った場合は、肯定されて本処理を終了する。
【0056】
なお、本実施の形態では、各電池セルC毎に、ステップ100〜ステップ110の処理を行っているがこれに限らず、ステップ100の第1制御及びステップ102の第2制御を全ての各電池セルCに行い、全ての電池セルCの出力値(A−B)及び出力値(B−
VSS)を記憶部24に記憶させた後、ステップ104の処理を各電池セルC毎に行うようにしてもよい。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態の半導体回路14に備えられた電圧計測回路30は、セル選択SW32、電圧計測部34、基準電源36、基準電圧分圧抵抗38、SW群1、SW群2、SW群3、SW群4、スイッチング素子SW7、及びスイッチング素子SW8を備えている。また、電圧計測部34は、レベルシフタ回路40、及びADコンバータ42を備えている。
【0058】
自己診断を行う場合は、まず、制御回路22による第1制御により、SW群1のスイッチング素子SW1を全てオフ状態にしたまま、電池セルCの高電位側の電源線Vと基準電源36とを接続するSW群2のスイッチング素子SW2及びスイッチング素子SW7をオン状態にして、基準電圧Aに応じた電気信号をセル選択SW32に入力させる。基準電圧Aを分圧して電池セルCに応じた基準電圧Bとするように、SW群4のスイッチング素子SW4と、スイッチング素子SW9とをオン状態にすると共に、電池セルCの低電位側の電源線Vと基準電圧分圧抵抗38とを接続するSW群3のスイッチング素子SW3及びスイッチング素子SW8をオン状態にして、基準電圧Bに応じた電気信号をセル選択SW32に入力させる。レベルシフタ回路40から出力された基準電圧Aに応じた電気信号と基準電圧Bに応じた電気信号の差分に応じたアナログの電気信号がADコンバータ42に入力され、ADコンバータ42でデジタル信号に変換された電気信号(出力値(A−B)が出力される。
【0059】
次に、第2制御により、基準電圧Aを分圧して電池セルCに応じた基準電圧Bとするように、SW群4のスイッチング素子SW4と、スイッチング素子SW9とをオン状態にすると共に、電池セルCの高電位側の電源線Vと基準電圧分圧抵抗38とを接続するSW群3のスイッチング素子SW3及びスイッチング素子SW8をオン状態にして、基準電圧Bに応じた電気信号をセル選択SW32に入力させる。また、スイッチング素子SW10をオン状態にして、電圧VSSを
レジルシフタ回路40に入力させる。レベルシフタ回路40から出力された基準電圧Bに応じた電気信号と電圧VSSとの差分に応じたアナログの電気信号がADコンバータ42に入力され、ADコンバータ42でデジタル信号に変換された電気信号(出力値(B−
VSS))が出力される。
【0060】
さらに、第1制御により得られた出力値(A−B)と出力値(B−
VSS)とを加算し、加算値が基準電圧A−電圧VSSと同一又は許容範囲内であるとみなせるか否か判断する。同一であるとみなせない場合は、各電源線V(Vn、Vn−1)、セル選択SW32、及びレベルシフタ回路40(少なくともこれらのいずれか)に故障等の異常が生じていると診断する、一方、同一であるとみなせる場合は、正常である(異常が生じていない)と診断する。
【0061】
このように本実施の形態では、各電源線V(Vn、Vn−1)、セル選択SW32、及びレベルシフタ回路40を介してADコンバータ42から出力された出力値(A−B)と、直接入力された基準電圧BがADコンバータ42から出力された出力値(B−
VSS)とに基づいて、入出力変換特性を自己診断しているため、基準電圧Bの精度を診断対象回路(例えば、レベルシフタ回路40)の入出力変換精度以上としなくとも、診断対象回路の入出力特性の精度を診断することができる。従って、基準電圧Bの精度にかかわらず、自己診断を適切に行うことができる。
【0062】
また、本実施の形態では、セル電圧Cの経路(電源線V)毎に異なる固有の電圧(基準電圧B)を用いたので、セル選択SW32の故障を検知することができる。
【0063】
なお、本実施の形態では、電池セルC毎に高電位側に接続された電源線Vと低電位側に接続された電源線Vとを用いて自己診断を行っているがこれに限らず、電位差が生じている二つの電源線Vを用いればよい。なお、本実施の形態のように、電池セルC毎に高電位側に接続された電源線Vと低電位側に接続された電源線Vとを用いることにより、通常の、電圧計測回路30による電池セルCの電池電圧の測定に用いられる計測処理(計測処理のプログラム)を流用することができるため好ましい。
【0064】
また、複数の電池セルC間の電池電圧(測定対象である電池セル群12の最上位電位と最下位電位間の電圧)を一度に測定する場合には、基準電圧Aは当該最上位電位の電源線V(本実施の形態では電源線Vn+1)に、基準電圧Bは、当該最下位電位の電源線V(本実施の形態では電源線V1)に供給するように接続することが好ましい。
【0065】
また、本実施の形態では、基準電圧Aを電圧計測回路30の内部に備えられた基準電源36により供給しているがこれに限らず、電圧計測回路30の外部から供給されるようにしてもよいし、さらに半導体回路14の外部から供給されるようにしてもよい。
【0066】
また、本実施の形態で説明した組電池システム10、半導体回路14、及び電圧計測回路30等の構成、故障診断動作等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。