特許第6199199号(P6199199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6199199基板処理装置、位置ずれ補正方法及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199199
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】基板処理装置、位置ずれ補正方法及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/68 20060101AFI20170911BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   H01L21/68 F
   H01L21/68 A
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-30783(P2014-30783)
(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公開番号】特開2015-156437(P2015-156437A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2016年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】飯 田 成 昭
(72)【発明者】
【氏名】森 川 勝 洋
【審査官】 梶尾 誠哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−218622(JP,A)
【文献】 特開昭64−48443(JP,A)
【文献】 特開2001−110873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/68
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の基板を置くことができる第1置き場及び第2置き場と、
前記基板を保持する基板保持具を有し、少なくとも前記第1置き場と第2置き場との間で前記基板を搬送することができる基板搬送装置と、
前記基板保持具に保持された前記基板の位置を検出する基板位置測定部と、
を備え、
前記基板位置測定部は、前記基板搬送装置から独立した位置であって、かつ、前記基板搬送装置の基板保持具により保持された前記基板を持ち込むことが可能な位置に設けられ、
前記基板位置測定部は、円周方向に沿って配置された複数の周縁位置検出装置を有し、前記基板搬送装置により保持された状態で前記基板位置測定部に持ち込まれた前記基板の周縁の位置が前記各周縁位置検出装置により検出され、この検出された周縁の位置に基づいて、前記基板保持具が前記基板を保持するときの前記基板保持具に対する前記基板の目標位置と、前記基板保持具に前記基板が実際に保持されたときの前記基板保持具に対する前記基板の実際位置との間の位置ずれを求めることができ、
前記第2置き場は、各々が基板を載置することができる複数のステージを有し、前記複数のステージの各々の中心と、前記基板位置測定部の前記複数の周縁位置検出装置が配置される円周の中心とが、一つの鉛直線上に位置し、
前記第2置き場の前記複数のステージの各々に、当該ステージに基板が置かれた時に当該ステージの中心に対する前記基板の中心のずれが許容範囲内にあるか否かを検出する過剰位置ずれ検出部が設けられている
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記第1置き場から前記第2置き場に基板を搬送する際に、前記基板搬送装置に前記基板を前記基板位置測定部に持ち込ませることと、前記基板位置測定部により前記基板保持に保持された前記基板の前記位置ずれを検出させることと、この検出された前記位置ずれに基づいて、前記基板搬送装置に前記位置ずれを打ち消すように前記第2置き場の前記複数のステージのいずれかに前記基板を置かせることと、を含む位置ずれ補正手順を実行させる制御部をさらに備えたことを特徴とする、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板搬送装置は、多関節型ロボットであることを特徴とする請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記位置ずれ補正手順を実行させる前に、前記基板搬送装置に前記基板を前記第2置き場に置かせるとともに、前記過剰位置ずれ検出部に前記許容範囲外の位置ずれの有無を検出させる過剰位置ずれ検出手順を実行させ、検出された位置ずれが許容範囲外である場合にのみ前記位置ずれ補正手順を実行させる、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記過剰位置ずれ検出手順により前記許容範囲外の位置ずれが所定の頻度以上の頻度で検出された場合に、その後の所定の期間、前記過剰位置ずれ検出手順の実行を行わずに前記位置ずれ補正手順を実行させる、請求項4記載の基板処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載された基板処理装置において基板の位置ずれを補正する位置ずれ補正方法において、
前記第1置き場から前記第2置き場に前記基板を搬送する際に、
前記基板搬送装置に前記基板を前記基板位置測定部に持ち込ませることと、
前記基板位置測定部により前記基板保持に保持されている前記基板の前記位置ずれを検出させることと、
前記位置ずれに基づいて、前記基板搬送装置に前記位置ずれを打ち消すように前記第2置き場の前記複数のステージのいずれかに基板を置かせることと、
を含む位置補正手順を実行することを備えた位置ずれ補正方法。
【請求項7】
前記位置ずれ補正手順を実行する前に、前記基板搬送装置に前記基板を前記第2置き場に置かせることと、前記過剰位置ずれ検出部に前記許容範囲外の位置ずれの有無を検出させることと、を含む過剰位置ずれ検出手順をさらに備え、
前記過剰位置ずれ検出手順により検出された位置ずれが許容範囲外である場合にのみ、前記位置ずれ補正手順が実行される、請求項6記載の位置ずれ補正方法。
【請求項8】
前記過剰位置ずれ検出手順により前記許容範囲外の位置ずれが所定の頻度以上の頻度で検出された場合に、その後の所定の期間、前記過剰位置ずれ検出手順の実行を行わずに前記位置ずれ補正手順を実行する、請求項7記載の位置ずれ補正方法。
【請求項9】
請求項1記載の基板処理装置の動作を制御する制御装置としてのコンピュータにより実行されることにより、前記コンピュータが前記基板処理装置を制御して請求項6から8のうちのいずれか一項に記載された位置ずれ補正方法を実行するプログラムを格納した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に設けられる基板搬送装置により搬送される基板の位置決め技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理システムは、ロードポートなどと呼ばれる基板搬出入部を有しており、ここには複数の半導体ウエハ等の基板を収容するFOUPやキャリアなどと呼ばれる基板搬送容器が搬入される。基板搬送容器内の基板は、基板処理システム内に設けられた第1の基板搬送装置により取り出され、バッファなどと呼ばれる基板中間置場に移される。その後、基板は、多数の処理ユニットが設けられたエリア内に設置された第2の基板搬送装置により基板中間置場から取り出されて処理ユニット内に搬送される。各処理ユニットでは基板に対して所定の処理が施される。
【0003】
基板搬送装置すなわち基板搬送ロボットは、例えば特許文献1に記載されているように、水平方向(Y軸)に走行可能なフレームと、フレームに沿って上下方向(Z軸)に移動可能な昇降体と、昇降体に対して鉛直方向軸線周り(θ軸)に回転可能なベースと、ベースに対して水平方向(X軸)に進退可能な複数の基板保持具(ピック、フォーク等と呼ばれる)を有している。このような直交座標系ロボットは、ベースにセンサを設けることにより基板保持具と基板との相対的位置関係を検出することができ、ここで検出した位置ずれ分を補正し、搬送目的場所に基板を載置することが可能である。こうすることで、基板搬送装置による基板の搬送信頼性が向上する。
【0004】
しかし、水平多関節型ロボットにおいて、水平多関節型ロボット自体に上記の機能を有するセンサを設けると,センサを支持する部材によって、センサを支持する部材を避けるため、アームの動きが制約されてしまう場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−165119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基板保持具と基板との相対的位置関係を検出する部材によって基板搬送装置の動きが制約されることなく、基板搬送装置による基板の搬送信頼性を向上させる技術を提供することとを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、基板を置くことができる第1置き場および第2置き場と、基板を保持する基板保持具を有し、少なくとも前記第1置き場と第2置き場との間で基板を搬送することができる基板搬送装置と、
前記基板保持具に保持された基板の位置を検出する基板位置測定部と、を備え、前記基板位置測定部は、前記基板搬送装置から独立した位置であって、かつ、前記基板搬送装置の基板保持具により基板を保持された基板を持ち込むことが可能な位置に設けられた基板処理装置を提供する。
【0008】
また、本発明は、基板を置くことができる第1置き場および第2置き場と、基板を保持する基板保持具を有し、少なくとも前記第1置き場と第2置き場との間で基板を搬送することができる基板搬送装置と、前記基板保持具に保持された基板の位置を検出する基板位置測定部と、を備え、前記基板位置測定部が、前記基板搬送装置から独立した位置であって、かつ、前記基板搬送装置の基板保持具により基板を保持された基板を持ち込むことが可能な位置に設けられている基板処理装置において、基板の位置ずれを補正する位置ずれ補正方法において、前記第1置き場から前記第2置き場に基板を搬送する際に、前記基板搬送装置に前記基板位置測定部に基板を持ち込ませることと、前記基板位置測定部により前記基板保持部に保持された基板の位置を検出させることと、この検出された基板の位置に基づいて、前記基板保持具に基板を保持するときの前記基板保持具に対する基板の目標位置と、前記基板保持具に基板が実際に保持されたときの前記基板保持具に対する基板の実際位置との位置ずれを求めることと、求められた位置ずれに基づいて、前記基板搬送装置に前記位置ずれを打ち消すように前記第2置き場に基板を置かせることと、を含む位置補正手順を実行することを備えた位置ずれ補正方法を提供する。
さらに本発明は、上記位置ずれ補正方法を実行するためのプログラムを格納した記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板位置測定部が基板搬送装置から独立した位置に設けられているため、基板位置測定部により基板搬送装置の動きが制約されることはない。このため、基板の搬送を円滑に行いつつ、基板搬送装置による基板の搬送信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】発明の一実施形態に係る基板処理システム(基板処理装置)の概略構成を示す平面図である。
図2】多関節ロボットとして構成された第1の基板搬送装置の構成を示す斜視図である。
図3】第1の基板搬送装置が配置された搬出入ステーションの構成を示す平面図である。
図4】第1の基板搬送装置が配置された搬出入ステーションの構成を示す側面図である。
図5】受渡部の構成を示す縦方向断面図である。
図6】測定機能付き受渡ステージの構成を説明するための天井部を取り去った斜視図である。
図7】通常受渡ステージの構成を説明するための天井部を取り去った斜視図である。
図8】通常受渡ステージの作用を説明するための側面図である。
図9】通常受渡ステージに第1及び第2の基板搬送装置のウエハピックがアクセスする様子を説明するための平面図である。
図10】測定機能付き受渡ステージの作用を説明するための側面図である。
図11】ウエハの位置ずれ及びその補正のための第1の手順を説明するためのフローチャートである。
図12】ウエハの位置ずれ及びその補正のための第1の手順を説明するためのフローチャートである。
図13】2つのウエハピックを有する第1の基板搬送装置の変形例を示す斜視図である。
図14】通常受渡ステージに設けることができる過剰位置ずれ検出装置の他の構成例を説明するための概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0012】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0013】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚のウエハWを水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0014】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウエハWを保持する基板保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、基板保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウエハWの搬送を行う。
【0015】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0016】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウエハWを保持する基板保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、基板保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウエハWの搬送を行う。
【0017】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウエハWに対して所定の基板処理を行う。
【0018】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0019】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0020】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウエハWを取り出し、取り出したウエハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウエハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0021】
処理ユニット16へ搬入されたウエハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウエハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0022】
次に、搬入出ステーション2の構成を詳細に説明する。図1において概略的に示された基板搬送装置13は、本実施形態において実際には図2に示すように水平多関節型ロボット130として形成されている。
【0023】
図2図4に示すように、水平多関節型ロボット130は、搬入出ステーション2の床面に固定されたベース131と、ベース131に鉛直方向軸線周り(θ)に回転可能かつ上下方向(Z)に移動(昇降)可能な軸132を介して取り付けられた第1アーム133と、第1アーム133に鉛直方向軸線周り(θ)に回転可能な軸(図2では見えない)を介して取り付けられた第2アーム134と、第2アーム135に鉛直方向軸線周り(θ)に回転可能な軸(図2では見えない)を介して取り付けられたウエハピック(基板保持具)136とを有している。ウエハピック136は、複数のバキュームチャック137を備えており、ウエハWを真空吸着することができる。
【0024】
水平多関節型ロボット130は、上記の各軸(θ,θ,θ,Z)に関する動作を組み合わせることにより、キャリア載置部11に載置された任意のキャリアCの任意のスロット、並びに受渡部14に設けられた任意のウエハ置場(後述の受渡ステージ1410,1420)にアクセスすることができる。
【0025】
図3及び図4には、キャリア載置部11と搬送部12との間に設けられている壁、キャリアCの載置位置に対応して設けられた開口、当該開口を塞ぐシャッタ、キャリアCの蓋を着脱する装置等の部材が参照符号12Aにより概略的に示されている。これらの部材は当該技術分野において周知であり、説明は省略する。
【0026】
次に、受渡部14の構成について図4図10を参照して説明する。
【0027】
図4に概略的に示すように、受渡部14は、下部受渡ユニット14A、上部受渡ユニット14Bを備えている。下部受渡ユニット14Aは、キャリアCから取り出された未処理のウエハWが処理ユニット16に搬送される過程(往路)で経由する。上部受渡ユニット14Bは、処理ユニット16で処理されたウエハWがキャリアCに搬送される過程(復路)で経由する。以下において、下部受渡ユニット14Aの構成を代表して説明する。
【0028】
下部受渡ユニット14Aは、最下段の測定機能付き受渡ステージ1410と、下から2段目及びそれより上方にある通常受渡ステージ1420とを有している。
【0029】
図5及び図6に示すように、最下段の測定機能付き受渡ステージ1410は、底板1411を有しており、底板1411には複数(本例では3つ)のウエハ支持ピン1412が取り付けられている。ウエハ支持ピン1412の先端で、ウエハWの下面が支持される。ウエハ支持ピン1412は、搬入出ステーション2の基板搬送装置13及び処理ステーション3の基板搬送装置17が底板1411の上方空間に進入して、後述するウエハWの位置ずれ検出及び位置ずれ補正が行われるとき、あるいはウエハWをウエハ支持ピン1412に載置するかウエハ支持ピン1412から取り除こうとしたときに、ウエハピック137がウエハ支持ピン1412に衝突することが無いような位置に設置されている。
【0030】
なお、測定機能付き受渡ステージ1410のウエハ支持ピン1412上には、通常の搬送ルーチンではウエハWが置かれることはないが、当該ウエハ支持ピン1412に対して、基板搬送装置13,17がウエハWを載置し取り除くことが可能である。
【0031】
特に図6に良く示されるように、測定機能付き受渡ステージ1410には、4つのエッジ位置検出装置1413が設けられている。各エッジ位置検出装置1413は、平行光を上方に向けて出射する光照射器1414と、光照射器1414から出射された光を受光するラインセンサ1415とを有する。各光照射器1414は底板1411に取り付けられており、各ラインセンサ1415は1つ上にある通常受渡ステージ1420の底板1421(測定機能付き受渡ステージ1410の天板でもある)に取り付けられている。
【0032】
エッジ位置検出装置1413は少なくとも3箇所に設けられていればよいが、本実施形態では4つのエッジ位置検出装置1413が円周を4等分した位置に、すなわち90度の角度間隔で配置されている。ラインセンサ1415は、直線状に配列された複数の受光素子からなる受光素子アレイ(図示せず)を有する。各ラインセンサ1415の受光素子アレイの配列方向は、全く位置ずれの無い状態の仮想ウエハW(図6中一点鎖線で示すウエハWを参照)の半径方向と一致する。ウエハWが測定機能付き受渡ステージ1410に進入したとき、ウエハWが光照射器1414から出射された光の一部を遮り、残部がラインセンサ1415に到達する。光が入射していない受光素子と光が入射している受光素子の境界が、ウエハWの周縁(エッジ)We(図8図10を参照)の位置に対応する。エッジ位置検出装置1413によりウエハWの周縁の座標、例えば受渡ステージ1410の中心Tc(図5図10を参照)を原点とするr−θ極座標系における座標(r,θ)を特定することができる。「r」はウエハWの位置ずれに応じて変化する変数であり、「θ」は各エッジ位置検出装置1413の配置位置に応じて90n(deg)(nは0,1,2または3)と記載することができる定数である。なお、極座標(r,θ)を、受渡ステージ1410の中心Tcを原点とするX−Y座標系上の座標に変換することは容易である。
【0033】
円板形状のウエハWの中心の座標は、ウエハWの周縁上の3点の座標に基づいて、周知の方法(例えば3点を通る円の方程式)を用いて幾何学的計算により求めることができることは明らかである。本実施形態では、4つのエッジ位置センサ145があり、ウエハWの周縁上の4点の座標を特定することができるので、当然にウエハの中心Wcの座標を求めることができる。また、1つの余分なエッジ位置センサ145を設けることにより、ウエハの中心の座標Wcをより少ない誤差で求めることができる。
【0034】
また、図7及び図8に示すように、通常受渡ステージ1420は、底板1421を有しており、底板1421には複数(本例では3つ)のウエハ支持ピン1422が取り付けられている。底板1421にはさらに複数(本例では4つ)のガイドピン1423(ウエハ案内部材)を有している。
【0035】
各ガイドピン1423は、ウエハWが全く位置ずれ無くウエハ支持ピン1422上に載置されたときに、ウエハWの周縁との間に所定の隙間CLが形成されるように配置されている。すなわち、ウエハWの直径をDWとしたとき、直径がDW+CLの円が、4本のガイドピン1423の内接円となるようにガイドピン1423が配置されている。
【0036】
ガイドピン1423の上端部には、下方にゆくに従ってウエハWの周縁に近づくように傾斜した傾斜面として形成された(図示例では円錐台の錐面の形状を有する)ガイド面1424が設けられている。ウエハ支持ピン1422上にウエハWを載置しようとしたときに、ガイド面1424にウエハWの周縁が接した場合、ウエハWはガイド面1424上を滑り落ちて、3本のウエハ支持ピン1422上に適切に載置される。一方、ウエハ支持ピン1422上にウエハWを載置しようとしたときに、ガイドピン1423の上端面1425にウエハWが乗り上げてしまった場合には、そのウエハWはもはや3本のウエハ支持ピン1422上に適切に載置されない(図8において破線で示したウエハWを参照)。
【0037】
このガイド面1424は、当該ガイドピン1423の中心軸線を通過するウエハWの直径方向に測定した幅SLを有している。従って、ウエハW中心から当該ガイドピン1423に向かう方向に測定したウエハWの位置ずれ量が、前記の隙間CL+幅SL未満であるなら、そのウエハWは3本のウエハ支持ピン1422上に適切に載置され、かつ、前記の方向に測定した最終的なウエハWの位置ずれ量は最大でもCL以内に収まる。
【0038】
隙間CLの値は、搬送部15の基板搬送装置17のウエハ保持具が通常受渡ステージ1420からウエハを引き取るのに支障が生じない程度の値に設定される。一例として、ウエハWが次世代18インチウエハの場合、隙間CLは例えば2〜3mmである。ガイド面1424の形状及び幅SLは、ウエハWがガイド面1424上を滑り落ちる際にウエハWのエッジ部(ベベル部)に問題となるダメージが生じないように設定される。
【0039】
通常受渡ステージ1420の底板1421にはさらに、ガイドピン1423の上端面1425にウエハWが乗り上げたことを検出する乗り上げセンサ1426が設けられている。乗り上げセンサ1426は、発光器1427と受光器1428から構成されている。発光器1427から受光器1428に向けて平行光が出射される。この平行光の光路LPは、平面視でウエハWの直径方向に延びており、また、側面視で(例えば図8を参照)ウエハ支持ピン1422の上に適切に載置されたウエハWの上面に平行かつ当該上面に非常に近接して(例えばウエハW上面と光路LPの隙間が約1mm)延びている。このような位置関係で光路LPを設定することにより、いずれのガイドピン1423へのウエハWの乗り上げが発生した場合にも、その乗り上げを唯一つの光路LPにより検出することができる。
【0040】
隣接する受渡ステージ(1410,1420)の底板(1411,1421)同士は、両底板間に設けられた支柱(1416,1429)を介して結合されている。測定機能付き受渡ステージ1410の底板1411とその真上の通常受渡ステージ1420の底板1421との間隔は、後述するエッジ位置検出装置1413によるウエハエッジ位置検出操作を行うスペースを確保するため、他の通常受渡ステージ1420に対応する隣接する底板1422同士の間隔よりも広くなっている。
【0041】
上部受渡ユニット14Bは、上述した下部受渡ユニット14Aと同じ構成とすることができる。但し、処理ユニット16から基板搬送装置17により取り出されたウエハのウエハピック170上での位置が後の工程において問題を生じさせるほどに位置ずれしていることは通常はないため、上部受渡ユニット14Bには測定機能付き受渡ステージ1410を設けなくてもよい。
【0042】
図9に、通常受渡ステージ1420に対して、基板搬送装置13(すなわち水平多関節型ロボット130のウエハピック136)がアクセスする様子と、基板搬送装置17のウエハピック(フォークとも呼ぶ)170がアクセスする様子を示している。
【0043】
平面視において、ウエハピック170は概ねU字形であり、ウエハWの周縁に概ね沿った円弧状輪郭部分を有している。円弧状輪郭部分からウエハWに向けて支持爪171が突出している。3つの支持爪171の各々の上面がウエハWの下面を支持することにより、ウエハWをウエハピック170により保持される。このようにウエハW周縁部の狭い領域を下から支持する形式のウエハピック170では、ウエハWの指定位置に対して実際のウエハの位置が大きくずれると、支持爪171にウエハWが乗らなくなるため、ウエハピック170がウエハWを適切に支持することができなくなる。ウエハピック170によりウエハWが適切に指示されるために許容されるウエハWの位置ずれは、ウエハWの径方向に例えば多くとも2〜3mmである。
【0044】
一方、ウエハピック136は、例えば3つのバキュームチャック(「バキュームパッド」等とも呼ばれる)137によりウエハWの下面を吸着してウエハWを保持する。ウエハピック136は、全てのバキュームチャック137がウエハWの下面に接している限りにおいて、仮にウエハの位置が大きくずれていたとしても、ウエハWを保持することが可能である。
【0045】
FOUP等の基板搬送容器(図1のキャリアCに対応)内においては、ウエハWは高精度に位置決めされているわけではない。しかしながら、基板搬送装置13(すなわち水平多関節型ロボット130のウエハピック136)は、ウエハWがキャリアC内における基準位置(例えばキャリアC内におけるウエハWの可動範囲の中央位置)に存在しているものとしてウエハWを取り出す。そして、水平多関節型ロボット130のウエハピック136は、基準位置にあるウエハWを保持したという前提で、ウエハWを通常受渡ステージ1420に置く。従って、キャリアC内でウエハWの位置ずれがあれば、その位置ずれ分だけ、通常受渡ステージ1420上のウエハWの位置がずれることになる。なお、ウエハピック136がウエハWを保持する時にウエハWの位置がずれる可能性もある。
【0046】
通常受渡ステージ1420上のウエハWの位置が許容範囲を超えてずれると、位置ずれに対する許容範囲の狭いウエハピック170は、通常受渡ステージ1420上のウエハWを適切な状態で保持して取り出すことができなくなる。また、仮にウエハWは基板搬送装置17のウエハピック170が、基板搬送装置13のウエハピック136と同様に真空吸着によりウエハWを保持するタイプであったならば、ウエハピック170がウエハWを通常受渡ステージ1420から取り出せなくなるわけではない。しかし、基板搬送装置13がキャリアCからウエハWを取り出す際の位置ずれは基板搬送装置17のウエハピック170でウエハWを保持する際にも引き継がれるので、上記の位置ずれが、基板搬送装置17が処理ユニット16にウエハWを搬入する際に処理ユニット16の基板保持具のセルフアライメント(セルフセンタリング)能力を超えた量であるなら、処理ユニット16にウエハWを搬入することができなくなる。
【0047】
上記の問題を解決するための基板搬送手順について以下に説明する。
【0048】
[第1手順]
第1手順について図10及び図11を参照して説明する。
【0049】
まず、水平多関節型ロボット130のウエハピック136がキャリアCからウエハWを取り出す(図11のステップS1)。
【0050】
ウエハWを保持したウエハピック136は、測定機能付き受渡ステージ1410内に進入する。なお、図10では、図面の見やすさを重視しているため、測定機能付き受渡ステージ1410の各構成部材の位置関係は実際とはやや異なる。各構成部材の実際の位置関係は図6に記載した通りである。ウエハピック136は、ウエハWがキャリアC内における基準位置にずれ無く置かれていた場合に、ウエハWの中心Wcが測定機能付き受渡ステージ1410の中心Tcと一致するような位置で、停止する。このとき、ウエハピック136はウエハWをウエハ支持ピン1412の上には置かない(以上、図11のステップS2)。
【0051】
この状態で、光照射器1414から平行光が出射される。なお、図10において、符号1413Aは、光照射器1414から出射される平行光の光路であり、ウエハの周縁Weの近傍を鉛直方向に延びる一点鎖線は、ウエハWの中心Wcが測定機能付き受渡ステージ1410の中心Tcとが一致している場合に、ウエハ周縁Weが位置する位置である。
【0052】
図10では、キャリアC内でウエハWの位置ずれがあったために、ウエハピック136がウエハWを保持するときのウエハピック136に対するウエハWの目標位置に対して、ウエハWの実際位置がずれていて、その結果として、ウエハWの中心Wcが測定機能付き受渡ステージ1410の中心Tcに対してずれている場合が示されている。この場合、ウエハWの周縁Weの位置もずれる。ウエハWの周縁We上の4点の座標が4つのウエハエッジ位置検出装置1413によりそれぞれ検出され、先に説明したように4つの検出値に基づいてウエハピック136に保持されたウエハWの中心Wcの座標が算出される。これにより、測定機能付き受渡ステージ1410の中心Tcに対するウエハWの中心Wcの位置ずれの方向と量がわかる。
【0053】
位置ずれの方向と量は、例えば、受渡ステージ1410の中心TcをX−Y直交座標系の原点(0,0)として、ウエハWの中心Wcの座標(例えばa、b)により表現することができる。なお、r−θ極座標系を用いることもできるが、以下においてはX−Y直交座標系を用いて説明する。(以上、図11のステップS3)
【0054】
その後、ウエハピック136は、ウエハWを測定機能付き受渡ステージ1410のエリア内に存在するいかなる物にも触れさせることなく、勿論、ウエハWをウエハ支持ピン1412上に置くこともなく、受渡ステージ1410から退出する。測定機能付き受渡ステージ1410内における上記一連の手順においてウエハWがウエハ支持ピン1412上に置かれないため、置く場合と比較して所用時間を短縮することができ、これによりスループットを向上させることができる。
【0055】
その後、ウエハピック136は、通常受渡ステージ1420に進入し、ウエハ支持ピン1422上にウエハWを載置する。このとき、ウエハピック136は、先に求めた測定機能付き受渡ステージ1410の中心Tcに対するウエハWの中心Wcの位置ずれを打ち消すように、すなわち、ウエハWのウエハ支持ピン1422上への制御上の載置目標位置をX方向に「−a」、Y方向に「−b」だけずらして、ウエハ支持ピン1422上にウエハWを載置する(以上、図11のステップS4)。
【0056】
なお、本実施形態においては、勿論、測定機能付き受渡ステージ1410及び通常受渡ステージ1420の中心は共通の鉛直線(Tc)上に位置している(図2を参照)。但し、測定機能付き受渡ステージ1410及び通常受渡ステージ1420の中心は、そのずれ量が定量的に把握されているならば、ずれていても構わない。
【0057】
上記の手順により、ウエハピック136は、通常受渡ステージ1420の中心TcとウエハWの中心Wcが一致するように、ウエハWをウエハ支持ピン1422上にウエハWを載置することができる。このようにウエハ支持ピン1422上にウエハWが適切な位置に載置されれば、図9に記載したような基板搬送装置17のウエハピック170が適切に保持し、通常受渡ステージ1420から取り出すことができる。
【0058】
その後は、前述したように、基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されたウエハが処理ユニット16へ搬入される。
【0059】
処理ユニット16へ搬入されたウエハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14の上部受渡ユニット14B内の一つの通常受渡ステージ1420に載置される。次いで、ウエハWは、基板搬送装置13によって上部受渡ユニット14B内の前記一つの通常受渡ステージ1420から取り出され、キャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0060】
この第1手順においては、キャリアCから取り出された全てのウエハWに対して上記の手順が適用される。従って、全てのウエハWが基板搬送装置17のウエハピック170上の目標位置に精確に載置できるようになるという利点がある。
【0061】
この第1手順を実施する場合には、通常受渡ステージ1420のガイドピン1423及び乗り上げセンサ1426を省略してもかまわない。従って、受渡部14特に下部受渡ユニット14Aの装置コストをその分だけ安くすることができる。しかしながら、ウエハWをキャリアCから取り出してから通常受渡ステージ1420に載置するまでの所要時間が、測定機能付き受渡ステージ1410を経由する時間分だけ長くなる。従って、基板処理システムのスループットを重視するならば、処理ユニット16でのウエハWの処理時間が長い等、ウエハWをキャリアCから取り出してから通常受渡ステージ1420に載置するまでの搬送工程が律速段階にならないような条件下で上記第1手順を適用することが好ましい。
【0062】
[第2手順]
前述したように第1手順は全てのウエハWが基板搬送装置17のウエハピック170上の目標位置に極めて精確(実質的にずれ量はゼロ)に載置できるという利点があるが、実際にはそこまでの精度は必要とされない場合も多い。一般的には、ずれ量が例えば1〜2mm程度なら実質的問題は生じない。この程度のずれであるなら、通常は、ウエハピック170の支持爪171上にウエハWは問題なく支持されるし、また、ウエハピック170または処理ユニット16の基板保持具(メカニカルチャック)がセルフアライメント(セルフセンタリング)機能を有しているならば、この程度のずれは処理ユニット16内における処理に支障が無い程度に解消または低減することができる。上記のことを前提とした第2手順について以下に説明する。
【0063】
第2手順では、水平多関節型ロボット130のウエハピック136がキャリアCからウエハWを取り出し(図12のステップS11)、その後、測定機能付き受渡ステージ1410を経由することなく、ウエハWを、直接、通常受渡ステージ1420に搬入し、ウエハ支持ピン1412上への載置を試みる(図12のステップS12)。
【0064】
このとき、任意のガイドピン1423の方向に関するウエハWの位置ずれがCL+SL(図8を参照)未満であるなら、ウエハWは、その中心Wcが通常受渡ステージ1420の中心Tcに対してウエハWの半径方向に最大でもCL(例えば約2〜3mm)だけずれた状態で、支持ピン1422上に載置されることになる。このとき3つの支持ピン1422の全ての上面はウエハWの下面に接している。従ってこのとき、乗り上げセンサ1426の光路LPをウエハWが遮ることは無い。
【0065】
乗り上げセンサ1426により乗り上げが検出されない場合(図12のステップS13のNo)、ウエハWはそのまま通常受渡ステージ1420に残され(図12のステップS14)基板搬送装置17のウエハピック170により通常受渡ステージ1420から搬出され、処理ユニット16に搬入される。
【0066】
ウエハWの位置ずれ量がCL+SLを超えると、図8に破線で示すようにウエハWがガイドピン1423の上端面1425に乗り上げる。なお、CL+SLだけ位置ずれしたウエハWは、仮にガイドピン1423が無くウエハWを支持ピン1422に載置することができたとしても、支持ピン1422上のウエハWはウエハピック170の支持爪171上に支持されなくなる可能性が大である。
【0067】
ウエハWがガイドピン1423に乗り上げると、乗り上げセンサ1426の光路LPをウエハWが遮り、乗り上げが生じたことが検出される(図12のステップS13のYes)。
【0068】
乗り上げが生じたことが検出されると、ウエハピック136はそのウエハWを再度保持し、測定機能付き受渡ステージ1410に搬入する。受渡ステージ1410において、第1手順と同様にしてウエハWの位置ずれ量が検出される。その後、ウエハピック136は、通常受渡ステージ1420に進入し、第1手順と同様にして、ウエハWの位置ずれを打ち消すように、ウエハ支持ピン1422上にウエハWを載置する。その後のウエハWの搬送手順は第1手順で説明したものと同じである(図12のステップS15)。
【0069】
この第2手順では、所定量以上の位置ずれがあるウエハWのみに対して位置ずれ量の検出及び位置修正を行い、所定量未満の位置ずれしかないウエハWに対しては測定機能付き受渡ステージ1410への搬入が行われないため、基板処理システムのスループット向上の観点からは第1手順よりも有利である。
【0070】
搬送対象の全てのウエハWに対して上記第1手順を常時実行してもよい。また、搬送対象の全てのウエハWに上記第2手順を常時実行してもよい。但し、上記の第2手順は下記のように変更することができる。
【0071】
乗り上げセンサ1426により連続してウエハWの乗り上げが検出された場合、そのウエハWを収納しているキャリアCでは、例えば搬送中の振動等の理由により、全てのウエハWの位置が大きくずれていることが予測される。このような場合に、キャリアCから取り出したウエハWをまずは通常受渡ステージ1420に搬入するという手順を実行することは好ましくない。その理由は、(1)測定機能付き受渡ステージ1410への搬入を行わなければならないであろう確率が高いウエハWを通常受渡ステージ1420に搬入することは搬送時間の無駄であること、(2)デバイスが形成されていない裏面とはいえ、ウエハWが傾いた状態でガイドピン1423に衝突させることは好ましくないこと、が挙げられる。
【0072】
従って、第2手順を実行している際に、乗り上げセンサ1426によるウエハWの乗り上げの検出頻度が所定頻度を超えた場合、例えば連続して所定枚数のウエハWに対して乗り上げが検出された場合、あるいは、所定枚数のウエハWにおいて乗り上げが検出されたウエハの比率が所定値を超えた場合には、第2手順から第1手順に切り換えるのがよい。
【0073】
第2手順から第1手順への切り換えがなされた後は、例えば、その時点でウエハWが取り出されているキャリアCから全てのウエハWが取り出されるまで第1手順の実行を継続し、別のキャリアCからウエハWが取り出されるようになったら第2の手順に戻すことができる。あるいは、第1手順の実行により検出されるウエハWの位置ずれ量が、複数のウエハにおいて所定値(通常受渡ステージ1420にてガイドピン1423へのウエハWの乗り上げが生じ無い程度の値)以下で安定した場合に、第2の手順に戻してもよい。
【0074】
上記の説明では、キャリアCからウエハWを取り出して処理ユニット16に向けて搬送する途中(往路)でのウエハWの位置補正について説明したが、処理ユニット16により処理されたウエハWをキャリアCに向けて搬送する途中(復路)でウエハWの位置補正を行ってもよい。なお、このときには復路用の上部受渡ユニット14B(下部受渡ユニット14Aと同じ構成を有する)が用いられる。
【0075】
この場合、基板搬送装置17のウエハピック170が通常受渡ステージ1420にウエハWを搬入するときから、上記の第2手順に準じた手順を実行することができる。すなわち、ウエハピック170が通常受渡ステージ1420のウエハ支持ピン1412上への載置を試みたときに、乗り上げセンサ1426によりウエハWの乗り上げが検出されなければ、基板搬送装置13のウエハピック136が通常受渡ステージ1420からウエハWを取り出し、そのウエハWをキャリアCに搬入する。
【0076】
一方、乗り上げセンサ1426によりウエハWの乗り上げが検出されたら、基板搬送装置13のウエハピック136が通常受渡ステージ1420からウエハWを取り出して測定機能付き受渡ステージ1410に搬入し(支持ピン1411上にはウエハWを置かない)、そこでウエハWの位置ずれ量が定量的に測定され、この位置ずれを打ち消すように、そのウエハWをキャリアCに搬入する。
【0077】
なお、復路の場合も、前述した第1手順と同様の手順を実行することも可能である。すなわち、基板搬送装置17のウエハピック170が、測定機能付き受渡ステージ1410にウエハWを搬入し(支持ピン1411上にはウエハWを置かない)、ウエハWの位置ずれを検出し、その検出結果に基づいて、位置ずれを打ち消すように通常受渡ステージ1420の支持ピン1422上にウエハWを置く。その後、基板搬送装置13のウエハピック136が通常受渡ステージ1420からウエハWを取り出し、そのウエハWをキャリアCに搬入する。
【0078】
図2に示した唯一つのウエハピック136を有する基板搬送装置13(130)に代えて、図13に示す複数例えば2つのウエハピック136、136’を有する基板搬送装置13’(130’)を用いることができる。これら2つのウエハピック136、136’は同一直線上にあるそれぞれの鉛直方向回動軸線回り(θ,θ’)に互いに独立して回転することができる。すなわち、例えば、一方のウエハピック136によりあるウエハWの載置場所に対してウエハを置いたり取り出したいしたい場合には、他方のウエハピック136’は図13に示すようにウエハピック136と反対方向を向いて退避することができる。また、2枚のウエハWを同時にキャリアCから取り出したい場合には、上方から見て2つのウエハピック136、136’が重なるような位置関係をとることができる。上記の点を除いて、図13の基板搬送装置13’は図2の基板搬送装置13と同じ構成であり、重複説明は省略する。
【0079】
図13に示す基板搬送装置130’を用いる場合の、第1手順について以下に説明する。
【0080】
まず、ウエハピック136、136’がキャリアCから2枚のウエハWを同時に取り出す。
【0081】
まず、一方のウエハピック(例えばウエハピック136)が測定機能付き受渡ステージ1410内に進入し、当該ウエハピック136が保持しているウエハWの位置ずれが測定される。この一連の動作中、他方のウエハピック136’はウエハピック136と反対方向を向いて(図13を参照)退避している。
【0082】
次に、ウエハピック136が測定機能付き受渡ステージ1410から退出する。次いで、ウエハピック136’が測定機能付き受渡ステージ1410内に進入し、当該ウエハピック136’が保持しているウエハWの位置ずれが測定される。この一連の動作中、ウエハピック136はウエハピック136’と反対方向を向いて退避している。
【0083】
次に、ウエハピック136は、上記の測定結果に基づいて、保持しているウエハWの位置ずれを打ち消すように、ある一つの通常受渡ステージ1420のウエハ支持ピン1422上にウエハWを載置する。このときウエハピック136’はウエハピック136と反対方向を向いて(図13を参照)退避している。
【0084】
次に、ウエハピック136’は、上記の測定結果に基づいて、保持しているウエハWの位置ずれを打ち消すように、上記通常受渡ステージ1420に隣接する通常受渡ステージ1420のウエハ支持ピン1422上にウエハWを載置する。このときウエハピック136はウエハピック136’と反対方向を向いて(図13を参照)退避している。
【0085】
その後は、基板搬送装置17のウエハピック170が各通常受渡ステージ1420からウエハWを順次取り出してゆくことになる。
【0086】
次に、図13に示す基板搬送装置130’を用いる場合の、第2手順について以下に説明する。
【0087】
まず、ウエハピック136、136’がキャリアCから2枚のウエハWを同時に取り出す。
【0088】
次に、ウエハピック136、136’が、隣接する通常受渡ステージ1420のそれぞれの支持ピン1422上に、ウエハWを同時に置こうと試みる。
【0089】
2枚のウエハWがともにガイドピン1423に乗り上げることなく支持ピン1422上に置かれたことが検出されたなら、これら2枚のウエハWは、その後、基板搬送装置17のウエハピック170により順次取り出されることになる。
【0090】
2枚のウエハWがともにガイドピン1423に乗り上げたことが検出されたなら、ウエハピック136、136’は隣接する2つの通常受渡ステージ1420にあるウエハWを同時に取り出し、その後、第1の手順1が実行される。
【0091】
一方のウエハWがガイドピン1423に乗り上げることなく支持ピン1422上に置かれ、他方のウエハWがガイドピン1423に乗り上げたことが検出されたなら、ウエハピック136、136’のいずれか一方(好ましくは乗り上げが生じたウエハWを通常受渡ステージ1420に搬入したウエハピック(例えばウエハピック136)がその乗り上げた生じたウエハWを対応する通常受渡ステージ1420から取り出す。このとき、ウエハピック136’はウエハピック136と反対方向を向いて(図13を参照)退避している。乗り上げが生じていないウエハWはそのまま通常受渡ステージ1420で待機し、基板搬送装置17のウエハピック170により取り出されるのを待つ。
【0092】
次いで、通常受渡ステージ1420から取り出されたウエハWを保持しているウエハピック136が測定機能付き受渡ステージ1410内に進入し、当該ウエハピック136が保持しているウエハWの位置ずれが測定される。この一連の動作中、他方のウエハピック136’はウエハピック136と反対方向を向いて(図13を参照)退避している。
【0093】
次に、ウエハピック136は、上記の測定結果に基づいて、保持しているウエハWの位置ずれを打ち消すように、先に当該ウエハが搬入された通常受渡ステージ1420のウエハ支持ピン1422上にウエハWを載置する。このときウエハピック136’はウエハピック136と反対方向を向いて(図13を参照)退避している。その後、当該ウエハWはそのまま通常受渡ステージ1420で待機し、基板搬送装置17のウエハピック170により取り出されるのを待つ。
【0094】
上記実施形態によれば、第1の基板搬送装置13自体にウエハWの位置ずれを定量的に測定できるデバイスを装着できない場合でも、第1の基板搬送装置13から独立して別体に設けられた測定機能付き受渡ステージ1410を用いることにより、ウエハWの位置ずれを的確に把握して、その位置ずれデータに基づいてウエハWの位置ずれを確実に補正することができる。
【0095】
また、上記実施形態では、測定機能付き受渡ステージ1410に設けられたエッジ位置検出装置1413により、ウエハWをウエハ支持部材(例えば支持ピン1412等)の上に置かずに、ウエハWの位置ずれが検出される。このため、ウエハWをウエハ支持部材を置くことに起因して生じる搬送時間の無駄や、ウエハWをウエハ支持部材と衝突させることに起因して生じうるウエハW下面の損傷若しくはパーティクルの発生等を防止することができる。
【0096】
また、上記実施形態では、通常受渡ステージ1420にガイドピン1423及び乗り上げセンサ1426が設けられており、支持ピン1422上にウエハWを置くときの支持ピン1422に対するウエハWの目標位置に対するウエハの実際位置のずれが許容範囲内にあるか否かを定性的(可否判断のみであり、定量的測定はしない)に判定する過剰位置ずれ検出が行われる(第2手順の場合)。この過剰位置ずれ検出(おおざっぱな判断による篩い分け)に基づいて、測定機能付き受渡ステージ1410へのウエハWの搬入の要否判断、あるいは過剰位置ずれ検出の省略の要否判断を行うことができるので、必要の無い搬送や必要の無い位置ずれ計測に無駄な時間を費やすことを防止することができる。
【0097】
なお、上記実施形態では、通常受渡ステージ1420ではウエハWがガイドピン1423に乗り上げることによりウエハWの高さが変化することを利用して、この高さ変化を検出することにより、ウエハWが載置許容範囲内にあるか否かを検出したが、これに限定されるものではない。受け渡しステージ1420間にスペースが十分に確保できるのであれば、通常受渡ステージ1420に測定機能付き受渡ステージ1410に設けたエッジ位置検出装置1413を設けることも可能である。あるいは、例えば図14に概略的に示すように、発光部と受光部とからなる検出器1440をウエハW周囲の複数例えば4箇所に設け、受光部の受光の有無に基づいて、許容範囲外の位置ずれの有無を判定してもよい。この場合、例えば、ウエハWが許容範囲(円WAで示す)に位置している場合には、全ての検出器においてウエハWが発光部から受光部に向かう鉛直方向に延びる光路Ldを完全には遮らないように、かつ、許容範囲を超えた位置ずれが生じたら光路Ldを完全に遮られるように、検出器を設置する。そうすれば、1つの検出器において受光が無くなったことが確認されれば、ウエハWが許容範囲外に位置している、すなわち過剰な位置ずれがあることがわかる。なお、図14において円WOは目標位置にあるウエハWの輪郭線を示している。
【0098】
また、上記実施形態では、測定機能付き受渡ステージ1410が通常受渡ステージ1420と一体化されて単一のユニットを形成されていたが、これに限定されるものではない。測定機能付き受渡ステージ1410と通常受渡ステージ1420とはなるべく近くに配置することが好ましいが、測定機能付き受渡ステージ1410は、基板搬送装置13がアクセスできる任意の位置に設けることができる。
【符号の説明】
【0099】
W 基板
4 制御部
11,C 基板の第1置き場(キャリア載置部及びキャリア)
13 基板搬送装置
14 基板の第2置き場(受渡部)
1413 基板位置測定部(エッジ位置検出装置)
1422 載置台(支持ピン)
1426,1440 過剰位置ずれ検出部(乗り上げセンサ、検出器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14