特許第6199243号(P6199243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6199243使用済み衛生用品からリサイクルパルプを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199243
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】使用済み衛生用品からリサイクルパルプを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   D21C 5/02 20060101AFI20170911BHJP
   D21B 1/32 20060101ALI20170911BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   D21C5/02
   D21B1/32
   B09B3/00 304Z
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-121822(P2014-121822)
(22)【出願日】2014年6月12日
(65)【公開番号】特開2016-881(P2016-881A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2017年4月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝義
(72)【発明者】
【氏名】平岡 利夫
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−150976(JP,A)
【文献】 特開2009−183893(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/007105(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/041251(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00−D21J7/00
B09B 1/00− 5/00
B09C 1/00
B29B17/00− 17/04
C08J11/00− 11/28
A61F13/15− 13/84
A61L 2/00− 2/28
A61L11/00− 12/14
Japio−GPG/FX
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維および高吸水性ポリマーを含む使用済み衛生用品からパルプ繊維を回収し、リサイクルパルプを製造する方法であって、該方法が、
使用済み衛生用品を、多価金属イオンを含む水溶液またはpHが2.5以下の酸性水溶液中で、使用済み衛生用品に物理的な力を作用させることによって、使用済み衛生物品をパルプ繊維とその他の素材に分解する工程、
分解工程において生成したパルプ繊維とその他の素材の混合物からパルプ繊維を分離する工程、および
分離されたパルプ繊維をpHが2.5以下のオゾン含有水溶液で処理する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
オゾン含有水溶液が有機酸を含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
有機酸が酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸および酢酸からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項4】
有機酸がクエン酸であることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
多価金属イオンがアルカリ土類金属イオンであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
多価金属イオンを含む水溶液が塩化カルシウム水溶液であることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
オゾン含有水溶液中のオゾンの濃度が1〜50質量ppmであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
多価金属イオンを含む水溶液のpHが7よりも大きく11以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
分離されたパルプ繊維を脱水する工程をさらに含む請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
リサイクルパルプの灰分が0.65質量%以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
使用済み衛生用品から回収された灰分が0.11質量%以下のリサイクルパルプ。
【請求項12】
パルプ繊維および高吸水性ポリマーを含む使用済み衛生用品から回収された灰分が0.11質量%以下のリサイクルパルプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み衛生用品からリサイクルパルプを製造する方法に関する。特に、パルプ繊維および高吸水性ポリマーを含む使用済みの使い捨て紙おむつ等の衛生用品からパルプ繊維を回収し、衛生用品として再利用可能なリサイクルパルプを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済みの使い捨て紙おむつ等の衛生用品を再資源化する試みがなされている。使用済み衛生用品を再資源化するために、通常、使用済み衛生用品を水中で分解し、衛生用品の構成成分に分離し、回収することが行われる。しかし、衛生用品に含まれる高吸水性ポリマーは、水分を吸収して質量が増加する上に、ゲル状になって流動性を失い、処理装置の処理能力を低下させる。
【0003】
そこで、特許文献1は、水分を吸収した使用済み紙おむつ中の高吸水性ポリマーを石灰で脱水することを開示している(請求項2)。それにより、高吸水性ポリマーが軽量化されるとともに、ゲル状から元の状態に戻って流動性を回復するので、処理装置の処理能力低下が避けられる(段落[0020])。
【0004】
また、特許文献2は、使用済み紙おむつをリサイクルするにあたり、薬剤を使わずに紙おむつに含まれる高吸水性ポリマーを微粒子状にできる使用済みおむつの再生利用方法を開示している。その再生利用方法は、使用済み紙おむつを破断するとともにパルプ成分と非パルプ成分とに分解し、分解したパルプ成分とビニール等の非パルプ成分との混合物を水で洗浄したのちに、該混合物から非パルプ成分を分離して回収し、非パルプ成分が除去されたパルプ成分に混在していて吸水膨張している高吸水性ポリマーを、粉砕機によってパルプ成分の繊維を破断することなく10μm以下の微粒子状に破断して、微粒子状の高吸水性ポリマーとパルプ成分と水とを含む懸濁液を形成し、該懸濁液を脱水してパルプ成分から高吸水性ポリマーを水とともに除去して、パルプ成分を回収するものである(請求項1)。特許文献2は、さらに、計量工程において、紫外線ランプやオゾン(気体)やオゾン水等を用いて使用済み紙おむつの殺菌および消臭を行うことを開示している(段落[0015])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−183893号公報
【特許文献2】特開2010−59586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のように、石灰を用いて脱水された高吸水性ポリマーは、粒子サイズが数μm〜数百μmの固形粉末となり、特に微小な粒子はパルプ繊維間に引っかかりやすく、物理的な水洗だけでは完全に除去しきれない。これにより回収したパルプ繊維を再利用しようとした際には、残留した高吸水性ポリマーが異物となってしまうだけでなく、カルシウム塩の状態となっているため、回収したパルプ繊維中からは衛生用品基準値以上の灰分が検出されやすくなる。また、石灰使用により強アルカリ性となり、オゾン処理を行った場合、オゾンが失活し易くなる。
【0007】
また、特許文献2に記載のように、粉砕機によって、10μm以下の微粒子状に破断された高吸水性ポリマーは、微小な粒子のためパルプ繊維間に引っかかりやすく、物理的な水洗だけでは完全に除去しきない。これにより回収したパルプ繊維を再利用しようとした際には、残留した高吸水性ポリマーが異物となってしまう。また、吸水膨張している高吸水性ポリマーを粉砕機で粉砕するため、手間と粉砕設備および処理エネルギーが多く必要となり、生産効率が悪い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、使用済み衛生用品を、高吸水性ポリマーの吸水膨張を抑制することができる多価金属イオンを含む水溶液またはpHが2.5以下の酸性水溶液中で分解し、パルプ繊維(残留高吸水性ポリマーを含む。)とその他の材料に分離し、分離したパルプ繊維をpHが2.5以下の酸性水溶液中でオゾン処理することにより、分離したパルプ繊維中に残留する高吸水性ポリマーをオゾンにより効率的に分解除去することができ、衛生用品として再利用可能なリサイクルパルプを得ることできることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、パルプ繊維および高吸水性ポリマーを含む使用済み衛生用品からパルプ繊維を回収し、衛生用品として再利用可能なリサイクルパルプを製造する方法であって、該方法が、
使用済み衛生用品を、多価金属イオンを含む水溶液またはpHが2.5以下の酸性水溶液中で、使用済み衛生用品に物理的な力を作用させることによって、使用済み衛生物品をパルプ繊維とその他の材料に分解する工程、
分解工程において生成したパルプ繊維とその他の材料の混合物からパルプ繊維を分離する工程、および
分離されたパルプ繊維をpHが2.5以下のオゾン含有水溶液で処理する工程
を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明は、さらに、次の態様を含む。
[1]パルプ繊維および高吸水性ポリマーを含む使用済み衛生用品からパルプ繊維を回収し、衛生用品として再利用可能なリサイクルパルプを製造する方法であって、該方法が、
使用済み衛生用品を、多価金属イオンを含む水溶液またはpHが2.5以下の酸性水溶液中で、使用済み衛生用品に物理的な力を作用させることによって、使用済み衛生物品をパルプ繊維とその他の素材に分解する工程、
分解工程において生成したパルプ繊維とその他の素材の混合物からパルプ繊維を分離する工程、および
分離されたパルプ繊維をpHが2.5以下のオゾン含有水溶液で処理する工程
を含むことを特徴とする方法。
[2]pHが2.5以下のオゾン含有水溶液が有機酸を含むことを特徴とする[1]に記載の方法。
[3]有機酸が酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸および酢酸からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする[2]に記載の方法。
[4]有機酸がクエン酸であることを特徴とする[3]に記載の方法。
[5]多価金属イオンがアルカリ土類金属イオンであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6]多価金属イオンを含む水溶液が塩化カルシウム水溶液であることを特徴とする[5]に記載の方法。
[7]オゾン含有水溶液中のオゾンの濃度が1〜50質量ppmであることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]多価金属イオンを含む水溶液のpHが7よりも大きく11以下であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9]分離されたパルプ繊維を脱水する工程をさらに含む[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10]リサイクルパルプの灰分が0.65質量%以下であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11]灰分が0.11質量%以下のリサイクルパルプ。
[12]パルプ繊維および高吸水性ポリマーを含む使用済み衛生用品から回収された灰分が0.11質量%以下のリサイクルパルプ。
[13]パルプ繊維および高吸水性ポリマーを含む使用済み衛生用品からパルプ繊維を回収する方法によって得られた灰分が0.11質量%以下のリサイクルパルプであって、前記方法が、
使用済み衛生用品を、多価金属イオンを含む水溶液またはpHが2.5以下の酸性水溶液中で、使用済み衛生用品に物理的な力を作用させることによって、使用済み衛生物品をパルプ繊維とその他の素材に分解する工程、
分解工程において生成したパルプ繊維とその他の素材の混合物からパルプ繊維を分離する工程、および
分離されたパルプ繊維をpHが2.5以下のオゾン含有水溶液で処理する工程
を含むことを特徴とするリサイクルパルプ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、使用済み衛生用品から、衛生材料基準に適合した灰分のパルプを効率良く回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、パルプ繊維および高吸水性ポリマーを含む使用済み衛生用品からパルプ繊維を回収し、衛生用品として再利用可能なリサイクルパルプを製造する方法に関する。
【0012】
衛生用品としては、パルプ繊維および高吸水性ポリマーを含むものであれば、特に限定されず、使い捨ておむつ、失禁パッド、尿取りパッド、生理用ナプキン、パンティーライナー等を例示することができる。なかでも、施設等でまとめて回収される失禁パッドや使い捨ておむつが分別の手間がなくパルプ量が比較的多い点で好ましい。
【0013】
パルプ繊維としては、特に限定するものではないが、フラッフ状パルプ繊維、化学パルプ繊維等を例示することができる。
【0014】
高吸水性ポリマーとは、SAP(Superabsorbent Polymer)とも呼ばれ、水溶性高分子が適度に架橋された三次元網目構造を有するもので、数十倍〜数百倍の水を吸収するが、本質的に水不溶性であり、一旦吸収された水は多少の圧力を加えても離水しないものであり、たとえば、デンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系の粒子状または繊維状のポリマーを例示することができる。
【0015】
この明細書においては、本発明の方法によって製造されたパルプを「リサイクルパルプ」と称する。
【0016】
本発明の方法は、
使用済み衛生用品を、多価金属イオンを含む水溶液またはpH2.5以下の酸性水溶液中で、使用済み衛生用品に物理的な力を作用させることによって、使用済み衛生物品をパルプ繊維とその他の素材に分解する工程、
分解工程において生成したパルプ繊維とその他の素材の混合物からパルプ繊維を分離する工程、および
分離されたパルプ繊維をpHが2.5以下のオゾン含有水溶液で処理する工程
を含む。
本発明の方法は、好ましくは、さらに、分離されたパルプ繊維を脱水する工程を含む。
【0017】
本発明の方法は、使用済み衛生用品を、多価金属イオンを含む水溶液またはpH2.5以下の酸性水溶液中で、使用済み衛生用品に物理的な力を作用させることによって、使用済み衛生物品をパルプ繊維とその他の素材に分解する工程(以下「分解工程」ともいう。)を含む。
この工程では、使用済み衛生用品に物理的な力を作用させることによって、使用済み衛生用品をパルプ繊維とその他の素材に分解する。
衛生用品は、通常、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、不織布、プラスチックフィルム、ゴム等の各素材から構成されている。この分解工程では、使用済み衛生用品を上記各素材に分解する。分解の程度は、パルプ繊維の少なくとも一部が回収できる程度に分解されればよく、必ずしも完全でなくてもよく、部分的であってもよい。
ここで、使用済み衛生用品に物理的な力を作用させる方法としては、限定するものではないが、攪拌、叩き、突き、振動、引き裂き、切断、破砕等を例示することができる。なかでも、攪拌が好ましい。攪拌は、洗濯機のような攪拌機付きの処理槽内で行なうことができる。
【0018】
この分解工程は、多価金属イオンを含む水溶液またはpHが2.5以下の酸性水溶液中で行う。多価金属イオンを含む水溶液またはpHが2.5以下の酸性水溶液を用いることによって、使用済み衛生用品中の水を吸って膨潤した高吸水性ポリマーを脱水する。
高吸水性ポリマーは、親水性基(たとえば−COO)を有し、その親水性基に水分子が水素結合により結合することにより、大量の水を吸収することができるものであるが、水を吸収した高吸水性ポリマーを、カルシウムイオン等の多価金属イオンを含む水溶液中に入れると、親水性基(たとえば−COO)に多価金属イオンが結合し(たとえば−COO−Ca−OCO−)、親水性基と水分子の水素結合が切れ、水分子が放出され、高吸水性ポリマーが脱水される、また、水を吸収した高吸水性ポリマーを、pH2.5以下の酸性水溶液中に入れると、マイナスに帯電した親水性基(たとえば−COO)がプラスに帯電した水素イオン(H)によって中和される(たとえば−COOH)ため、親水性基のイオン反発力が弱まり、吸水力が低下し、高吸水性ポリマーが脱水される、と考えられている。
高吸水性ポリマーを脱水することによって、パルプ繊維と高吸水性ポリマーの分離が容易になる。使用済み衛生用品を、通常の水中で分解しようとすると、高吸水性ポリマーが吸水し膨潤して、槽内の固形分濃度が高まり、機械的な分解操作の処理効率が低下するが、多価金属イオンを含む水溶液またはpH2.5以下の酸性水溶液中で行うことによってそれを避けることができる。
【0019】
多価金属イオンとしては、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン等が使用できる。
アルカリ土類金属イオンとしては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムのイオンが挙げられる。好ましいアルカリ土類金属イオンを含む水溶液としては、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム等の水溶液が挙げられ、なかでも塩化カルシウム水溶液が好ましい。
【0020】
遷移金属イオンとしては、吸水性ポリマーに取り込まれるものである限り、限定されないが、鉄、コバルト、ニッケル、銅等のイオンが挙げられる。遷移金属イオンを含む水溶液として、遷移金属の無機酸塩、有機酸塩、錯体等の水溶液が挙げられるが、費用や入手容易性等の点から、無機酸塩または有機酸塩の水溶液が好ましい。無機酸塩としては、たとえば、塩化鉄、硫酸鉄、燐酸鉄、硝酸鉄等の鉄塩、塩化コバルト、硫酸コバルト、燐酸コバルト、硝酸コバルト等のコバルト塩、塩化ニッケル、硫酸ニッケル等のニッケル塩、塩化銅、硫酸銅等の銅塩などが挙げられる。有機酸塩類としては、たとえば、乳酸鉄、酢酸コバルト、ステアリン酸コバルト、酢酸ニッケル、酢酸銅等が挙げられる。
【0021】
多価金属イオンを含む水溶液を用いる場合は、安全性と価格を考慮し、カルシウム化合物の水溶液が好ましい。カルシウム化合物の中では、後工程で用いるオゾンがアルカリ側では分解してしまう特性があるため、強アルカリの水酸化カルシウムや酸化カルシウムよりも、できるだけ中性に近い弱アルカリ性である塩化カルシウムの水溶液が好ましい。多価金属イオンを含む水溶液のpHは、特に限定されないが、好ましくは11以下である。アルカリ性の化合物を用いる場合は、水溶液のpHは7よりも大きく11以下であることが好ましい。
【0022】
多価金属イオンの量は、高吸水性ポリマー1g(乾燥質量)あたり、好ましくは4ミリモル以上、より好ましくは4.5〜10ミリモル、さらに好ましくは5〜8ミリモルである。多価金属イオンの量が少なすぎると、高吸水性ポリマーの脱水が不十分となる。多価金属イオンの量が多すぎると、余分の多価金属イオンが高吸水性ポリマーに取り込まれないまま処理液中に残るので、多価金属塩の浪費につながり、処理費用を増加させる。
【0023】
多価金属イオンを含む水溶液中の多価金属イオンの濃度は、多価金属イオンが高吸水性ポリマーに取り込まれる濃度であれば特に限定されないが、好ましくは10〜1000ミリモル/リットル、より好ましくは50〜700ミリモル/リットル、さらに好ましくは200〜400ミリモル/リットルである。濃度が低すぎると、高吸水性ポリマーの脱水が不十分となる。濃度が高すぎると、余分の多価金属イオンが高吸水性ポリマーに取り込まれないまま処理液中に残るので、多価金属イオンの浪費につながり、処理費用を増加させる。
多価金属イオンを含む水溶液として塩化カルシウム水溶液を用いるときは、塩化カルシウムの濃度は、1質量%以上であることが好ましいが、10質量%以上に高くしても、効果が変わらなくなるため、1〜10質量%が好ましく、より好ましくは3〜6質量%である。
【0024】
酸性水溶液を用いる場合、酸性水溶液のpHは2.5以下であり、好ましくは0.5〜2.5であり、より好ましくは1.0〜2.4である。pHが高すぎると、高吸水性ポリマーの脱水が不充分となるおそれがある。pHが低すぎると、強酸のために回収されるパルプ繊維が損傷するおそれがある。
【0025】
pHが2.5以下の酸性水溶液としては、pHが2.5以下である限り、無機酸、有機酸のいずれの水溶液を用いることができるが、どちらかといえば安全性の高い有機酸の水溶液が好ましい。有機酸としては、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸、酢酸を挙げることができるが、なかでもクエン酸が好ましい。
【0026】
有機酸の水溶液を用いる場合、pHが2.5以下である限り、水溶液中の有機酸の濃度は特に限定されないが、好ましくは0.1〜10.0質量%であり、より好ましくは0.5〜8.0質量%であり、さらに好ましくは1.0〜5.0質量%である。濃度が低すぎると、高吸水性ポリマーの脱水が不充分となるおそれがある。濃度が高すぎると、有機酸の浪費につながるおそれがある。
【0027】
分解工程で用いる水溶液の量は、使用済み衛生用品に物理的な力を作用させることができる量であれば、特に限定されないが、汚物を含む使用済み衛生用品1kgに対し、好ましくは3〜50kg、より好ましくは3〜10kgである。水溶液の量が少なすぎると、使用済み衛生用品を水溶液中で効果的に攪拌することができない。水溶液の量が多すぎると、多価金属イオンまたは酸の浪費につながり、処理費用を増加させる。
【0028】
分解工程で用いる水溶液の温度は、高吸水性ポリマーが脱水される温度であれば特に限定されないが、通常、0℃より高く、100℃より低い温度である。室温でも十分であるが、反応速度を速めるために加熱してもよい。加熱する場合は、室温〜60℃が好ましく、室温〜40℃がより好ましく、室温〜30℃がさらに好ましい。
【0029】
分解工程の時間は、使用済み衛生用品が分解されるのに十分な時間であれば特に限定されないが、好ましくは5〜60分であり、より好ましくは10〜50分であり、さらに好ましくは20〜40分である。
【0030】
本発明の方法は、分解工程において生成したパルプ繊維とその他の素材の混合物からパルプ繊維を分離する工程(以下単に「分離工程」ともいう。)を含む。
分離工程では、使用済み衛生用品の分解によって生成したパルプ繊維とその他の素材(高吸水性ポリマー、不織布、プラスチックフィルム、ゴム等)の混合物からパルプ繊維を分離する。この工程では、パルプ繊維の少なくとも一部を分離回収する。パルプ繊維の全部が回収されなくてもよい。また、パルプ繊維と一緒にその他の素材が分離回収されてもよい。分離方法にもよるが、通常、高吸水性ポリマーの少なくとも一部は、分離されたパルプ繊維に混入してくる。たとえば、篩分けにより分離する方法において、パルプ繊維を篩下として回収する場合は、高吸水性ポリマーの大部分が分離回収されたパルプ繊維に混入してくる。この工程では、好ましくは、分解された構成素材を、パルプ繊維および高吸水性ポリマーを含む画分と、不織布、プラスチックフィルムおよびゴムを含む画分に分離する。ただし、パルプ繊維および高吸水性ポリマーを含む画分に若干の不織布、プラスチックフィルム、ゴムが含まれてもよいし、不織布、プラスチックフィルムおよびゴムを含む画分に若干のパルプ繊維、高吸水性ポリマーが含まれてもよい。
パルプ繊維を分離する方法は、限定するものではないが、たとえば、分解された構成素材の比重差を利用して水中で沈殿分離する方法、分解されたサイズの異なる構成素材を所定の網目を有するスクリーンを通して分離する方法、サイクロン式遠心分離機で分離する方法を例示することができる。
【0031】
本発明の方法は、分離されたパルプ繊維をpHが2.5以下のオゾン含有水溶液で処理する工程(以下「オゾン処理工程」ともいう。)を含む。
分離されたパルプ繊維には少なからず高吸水性ポリマーが混入している。この工程では、分離されたパルプ繊維に残留している高吸水性ポリマーを、分解し、低分子量化し、可溶化することにより、除去する。
この工程において用いるpHが2.5以下のオゾン含有水溶液とは、オゾンが溶解した水溶液であってpHが2.5以下のものであれば、特に限定するものではないが、オゾン水に酸を添加してpHを2.5以下にしたものでもよいし、pHが2.5以下の酸の水溶液にオゾンを吹き込むことによりオゾンを溶解させたものであってもよい。ここで、オゾン水とは、オゾンが溶解した水をいう。オゾン水は、たとえば、オゾン水発生装置(エコデザイン株式会社製オゾン水曝露試験機ED−OWX−2、三菱電機株式会社製オゾン発生装置OS−25Vなど)を用いて調製することができる。
【0032】
オゾン含有水溶液中のオゾン濃度は、高吸水性ポリマーを分解することができる濃度であれば、特に限定されないが、好ましくは1〜50質量ppmであり、より好ましくは2〜40質量ppmであり、さらに好ましくは3〜30質量ppmである。濃度が低すぎると、高吸水性ポリマーを完全に可溶化することができず、回収したパルプ繊維に高吸水性ポリマーが残留するおそれがある。逆に、濃度が高すぎると、酸化力も高まるため、パルプ繊維に損傷を与えるおそれがあるとともに、安全性にも問題を生じる虞がある。
【0033】
オゾン処理工程の処理時間は、高吸水性ポリマーを分解することができる時間であれば、特に限定されない。処理時間は、オゾン含有水溶液中のオゾン濃度が高ければ短くてよく、オゾン含有水溶液中のオゾン濃度が低ければ長い時間を要する。
オゾン含有水溶液中のオゾン濃度(ppm)とオゾン処理工程の処理時間(分)の積(以下「CT値」ともいう。)は、好ましくは100〜6000ppm・分であり、より好ましくは200〜4800ppm・分であり、さらに好ましくは300〜3600ppm・分である。CT値が小さすぎると、高吸水性ポリマーを完全に可溶化することができず、回収したパルプ繊維に高吸水性ポリマーが残留するおそれがある。逆に、CT値が大きすぎると、パルプ繊維の損傷、安全性の低下、製造原価の増加につながるおそれがある。
オゾン処理工程の処理時間は、オゾン含有水溶液中のオゾン濃度に依存することは、上述のとおりであるが、好ましくは5〜120分であり、より好ましくは10〜100分であり、さらに好ましくは20〜80分である。
【0034】
オゾン含有水溶液の量は、分離されたパルプ繊維を完全に浸すのに十分な量であれば、特に限定されないが、分離されたパルプ繊維100質量部(乾燥基準)に対し、好ましくは300〜5000質量部であり、より好ましくは500〜4000質量部であり、さらに好ましくは800〜3000質量部である。オゾン含有水溶液の量が少なすぎると、高吸水性ポリマーを完全に可溶化することができず、回収したパルプ繊維に高吸水性ポリマーが残留するおそれがある。逆に、オゾン含有水溶液の量が多すぎると、製造原価の増加につながるおそれがある。
【0035】
オゾン処理工程において、分離されたパルプ繊維をオゾン含有水溶液で処理する方法は、特に限定されないが、たとえば、処理槽にオゾン含有水溶液を入れ、そのオゾン含有水溶液の中に分離されたパルプ繊維を入れればよい。処理中、オゾン含有水溶液の攪拌は必須ではないが、適度に攪拌することが好ましい。また、容器に入れた水溶液の中にオゾンガスを吹き込み、オゾンガスの泡の上昇によって、オゾン水の中に流れを発生させてもよい。オゾン含有水溶液の温度は、高吸水性ポリマーを分解することができる温度であれば、特に限定されず、オゾン含有水溶液を加熱してもよいが、室温のままでもよい。
【0036】
オゾン処理工程では、高吸水性ポリマーがオゾンによる酸化分解作用を受け、高吸水性ポリマーの三次元網目構造が崩れ、高吸水性ポリマーは保水性を失い、低分子量化し、可溶化する。流動性が高くなった高吸水性ポリマーはオゾン含有水溶液中に溶け出す。さらに、この工程では、オゾンの消毒作用により、パルプ繊維が消毒、漂白、消臭される。
【0037】
オゾン含有水溶液はpHが2.5以下である。すなわち、オゾン処理工程は、pH2.5以下の酸性の状態で行う。酸性のオゾン含有水溶液を用いることにより、高吸水性ポリマーの吸水膨張を抑制することができ、オゾンによる高吸水性ポリマーの分解除去効果が飛躍的に向上する、すなわち短時間で高吸水性ポリマーを分解することができる。分解工程において、多価金属イオンを含む水溶液を用いたときは、高吸水性ポリマーが多価金属イオンよって脱水されているので、酸性のオゾン含有水溶液を用いなくても高吸水性ポリマーが吸水膨張することはないが、パルプ繊維の表面に付着している多価金属を酸によりを溶解し除去するためにpHが2.5以下の水溶液を用いる。一方、分解工程においてpHが2.5以下の酸性水溶液を用いたときに、オゾン処理工程においてpHが2.5以下の水溶液を用いる理由は、もっぱら高吸水性ポリマーの吸水膨張を抑制するためである。また、酸性のオゾン含有水溶液で処理することにより、酸による消毒効果も付与することができる。
オゾン含有水溶液のpHは、好ましくは0.5〜2.5であり、より好ましくは1.0〜2.4である。pHが低すぎると、得られるリサイクルパルプの吸水能力が低下するおそれがある。pHが低すぎると、得られるリサイクルパルプの吸水能力が低下する理由は定かではないが、パルプ繊維自体が変性するためと考えられる。
【0038】
pHが2.5以下のオゾン含有水溶液は、オゾン水に酸を添加することにより製造することができる。
酸としては、特に限定されるものではなく、無機酸および有機酸を用いることができるが、好ましくは有機酸である。有機酸は弱酸域で機能しかつ環境に優しいので、安全性と環境負荷の観点から有機酸の方が好ましい。有機酸としては、特に限定するものではないが、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸、酢酸等を挙げることができる。なかでもクエン酸が好ましい。
オゾン含有水溶液のpHは、酸の種類および酸の添加量により、調製することができる。オゾン含有水溶液中の有機酸の濃度は、pHが所定の範囲内にある限り、限定されないが、好ましくは0.1〜5.0質量%であり、より好ましくは0.2〜3.0質量%であり、さらに好ましくは0.5〜2.0質量%である。
【0039】
オゾン処理工程は、pHが2.5以下の酸性の状態で行う。分解工程においてアルカリ性のカルシウム化合物を用いたときは、オゾン処理工程に供されるパルプ繊維にはアルカリ性のカルシウム化合物が残留している場合があり、そのパルプ繊維をオゾン含有水溶液に加えると、オゾン含有水溶液のpHが変化する場合がある。オゾン含有水溶液のpHがパルプ繊維を加える前と加えた後で異なる場合は、ここでいうオゾン含有水溶液のpHとは、パルプ繊維を加えた後のオゾン含有水溶液のpHをいう。
pHの調整は、たとえば、処理槽にパルプ繊維とオゾン含有水溶液を入れ、攪拌しながら、そこに酸を添加していき、処理槽内の溶液のpHが所定のpHになったところで酸の添加を止める。
【0040】
オゾン処理工程において用いる酸としては、クエン酸が特に好ましい。
分解工程においてカルシウムイオンを含む水溶液を用いたときは、分離されたパルプ繊維の表面にはカルシウムイオンや種々のカルシウム化合物が付着している。パルプ繊維に付着しているカルシウム化合物は必ずしも水溶性のものとは限らず不溶性や難溶性のものも含まれており、水洗だけでは除去できない。クエン酸はカルシウムとキレートを形成し、水溶性のクエン酸カルシウムとなるので、パルプ繊維の表面に付着している不溶性または難溶性のカルシウム化合物を効果的に溶解除去することができる。クエン酸はカルシウム以外の金属ともキレートを形成することができるので、パルプ繊維の表面にカルシウム化合物以外の不溶性または難溶性の金属化合物が付着している場合には、カルシウム化合物のみならず、カルシウム化合物以外の不溶性または難溶性の金属化合物をも溶解除去することができる。その結果、得られるリサイクルパルプの灰分を低減することができる。
クエン酸を使用することにより、次のような利点もある。
第1に、クエン酸は酸性を示すので洗浄工程を含めた条件設定によってはリサイクルパルプのpHを弱酸性の範囲にコントロールすることができ、肌に優しい。
第2に、クエン酸は人体にとって有害物質ではないので、得られるリサイクルパルプにクエン酸が残留していたとしても、安全性が高い。
第3に、クエン酸はパルプ精製で使用する酸と比べてマイルドな弱酸であるので、得られるリサイクルパルプへのダメージを少なくすることができる。
第4に、クエン酸は比較的安価に入手できるので、回収再生費用を低減できる。
第5に、クエン酸は匂いがしないので、作業環境を悪化させない。
第6に、大掛かりな設備投資の必要がなく、現行設備で対応可能である。
【0041】
本発明の方法は、分解工程、分離工程、オゾン処理工程以外の工程を、分解工程と分離工程の間もしくは分離工程とオゾン処理工程の間または各工程の前後に含んでもよい。分解工程、分離工程、オゾン処理工程以外の工程としては、洗浄、脱水、消毒、計量等の工程が挙げられる。
本発明の方法は、好ましくは、分離工程とオゾン処理工程の間に、分離されたパルプ繊維を脱水する工程(以下「パルプ繊維脱水工程」ともいう。)を含む。分離されたパルプ繊維を脱水する方法は、限定するものではないが、たとえば、分離されたパルプ繊維を遠心分離機等の脱水機で脱水することにより行うことができる。脱水の条件は、水分率を目標とする値まで下げることができる限り、特に限定されないが、たとえば、脱水時間は、好ましくは1〜10分であり、より好ましくは2〜8分であり、さらに好ましくは3〜6分である。
本発明の方法は、所望により、オゾン処理工程に続き、リサイクルパルプを水洗する工程(以下「リサイクルパルプ水洗工程」ともいう。)を含んでもよい。
本発明の方法は、所望により、リサイクルパルプ水洗工程に続き、リサイクルパルプを脱水する工程(以下「リサイクルパルプ脱水工程」ともいう。)を含んでもよい。
リサイクルパルプ水洗工程とリサイクルパルプ脱水工程は、1回ずつでもよいが、交互に複数回繰り返してもよい。
本発明の方法は、所望により、リサイクルパルプ脱水工程に続き、リサイクルパルプパルプを乾燥する工程(以下「リサイクルパルプ乾燥工程」ともいう。)を含んでもよい。
乾燥されたリサイクルパルプは、好ましくは、シート状、ロール状、または塊状など、衛生用品の製造設備に適応し易い形態に加工され、再利用される。
【0042】
本発明の方法を用いて使用済み衛生用品からリサイクルパルプを製造する工程フローの具体例は、次のとおりである。
(1)使用済み紙おむつを計量する(計量工程)。
(2)洗浄機に使用済み紙おむつと、濃度5%の塩化カルシウム水溶液を投入し、縦型洗濯機の要領で洗浄しながら攪拌衝撃で紙おむつを分解する(分解工程)。
(3)パルプ繊維および高吸水性ポリマーを含む画分と、不織布、プラスチックフィルムおよびゴムを含む画分に分離する(分離工程)。
(4)回収されたパルプ繊維および高吸水性ポリマーを脱水する(脱水工程)。
(5)脱水後のパルプ繊維および高吸水性ポリマーをpHが2.5以下の有機酸(たとえばクエン酸)水溶液に浸漬(カルシウム除去および酸性化)し、オゾンが失活し難い酸性でオゾン処理(高吸水性ポリマー溶解、消毒、漂白および消臭)する(オゾン処理工程)。
(6)脱水、水洗浄、pH調整
(7)パルプ繊維回収
(8)脱水
(9)乾燥(二次消毒)
この例では、塩化カルシウム水溶液は弱アルカリ性で処理後排水もアルカリ性となるため、オゾン処理の酸性排水を混ぜ合わせることで、中和反応が起こり、排水pHを処理し易い中性に近づけることが可能である。
【0043】
本発明の方法を用いて使用済み衛生用品からリサイクルパルプを製造する工程フローの別の具体例は、次のとおりである。
(1)使用済み紙おむつを計量する(計量工程)。
(2)洗浄機に使用済み紙おむつと、濃度10%のクエン酸水溶液を投入し、縦型洗濯機の要領で洗浄しながら攪拌衝撃で紙おむつを分解する(分解工程)。
(3)パルプ繊維および高吸水性ポリマーを含む画分と、不織布、プラスチックフィルムおよびゴムを含む画分に分離する(分離工程)。
(4)回収されたパルプ繊維および高吸水性ポリマーを脱水する(脱水工程)。
(5)脱水後のパルプ繊維および高吸水性ポリマーをpHが2.5以下の有機酸(たとえばクエン酸)水溶液に浸漬(カルシウム除去および酸性化)し、オゾンが失活し難い酸性でオゾン処理(高吸水性ポリマー溶解、消毒、漂白および消臭)する(オゾン処理工程)。
(6)脱水、水洗浄、pH調整
(7)パルプ繊維回収
(8)脱水
(9)乾燥(二次消毒)
この例では、カルシウム化合物を使用しない工程のため、得られるリサイクルパルプの品質は良好である。
【0044】
本発明によれば、パルプ繊維(残留高吸水性ポリマーを含む。)と他の素材(プラスチックフィルム、不織布等を含む。)とを分離した後、パルプ繊維(残留高吸水性ポリマーを含む。)にオゾン処理を行うことにより、汚物が洗浄され、有機物濃度が低い状態でかつプラスチックフィルム等のオゾンガス遮蔽物が無くオゾンと触れやすい状態で処理することができるため、効率的かつ効果的に処理を行うことができ、処理時間が短縮され、未使用のパルプよりも灰分の低いリサイクルパルプを製造することができる。
また、オゾン処理対象物をある程度限定することができるため、確実な殺菌レベルを設定しやすく、かつオゾンの酸化分解による有害物質産生(変異原性物質等)を防ぐことが可能となる。
【0045】
本発明によれば、衛生材料基準に適合した灰分のパルプを効率良く回収することができる。
オゾン処理により、高吸水性ポリマーを低分子量化、可溶化するため、高吸水性ポリマーがパルプ繊維間に残留することがない。
オゾン処理工程でクエン酸を用いたときは、クエン酸のキレート効果により、カルシウムが溶解除去可能であり、カルシウムで不活性化された高吸水性ポリマー(カルシウム架橋体)に由来した灰分が、回収されたリサイクルパルプに検出されない。
多価金属イオンを含む水溶液またはpHが2.5以下の酸性水溶液中で使用済み衛生物品を分解するので、膨潤した高吸水性ポリマーによって処理槽内の流動性を失うことが無く、処理効率の低下はおこらない。
安全性の高い有機酸を使用することで、安全に処理することが可能である。
【0046】
本発明の方法により得られるリサイクルパルプは、好ましくは灰分が0.65質量%以下であり、生理用ナプキンに再利用可能なリサイクルパルプである。また、本発明によれば、pHが2.5以下のオゾン含有水溶液で処理することにより、未使用パルプ中に含まれる異物をも除去することができるので、未使用パルプの灰分よりも低い灰分のリサイクルパルプを得ることもできる。本発明の方法により得られるリサイクルパルプは、より好ましくは灰分が0.11質量%以下であり、さらに好ましくは灰分が0.05〜0.11質量である。
なお、灰分の測定方法については、後述する。
【0047】
本発明の方法により得られたリサイクルパルプは、好ましくは、衛生用品を構成する吸収体、ティッシュおよび不織布の少なくとも1つに使用される。
【実施例】
【0048】
以下の実施例および比較例において、次のオゾン水発生装置、人工汚物、生理用食塩水を用いた。
[オゾン水発生装置]
製造元: 三菱電機株式会社
名称: オゾン発生装置
型番: OS−25V
オゾン水濃度可変範囲: 1〜80mg/m
オゾン水曝露槽容積: 30L
[人工汚物]
馬血清、豚腸ムチン、グリセリンを1:1:1(質量比)で混合したもの。
[生理用食塩水]
濃度0.9%の食塩水。
【0049】
実施例1
市販の紙おむつ(ユニ・チャーム社製「ムーニー」Mサイズ)を人工汚物を1%含む生理用食塩水3Lに10分間浸漬吸水させた後、濃度5%の塩化カルシウム水溶液(pH10.5)に3分間浸漬し、おむつ中のSAPがCa架橋作用により脱水された状態にした。おむつを取り出し、メッシュ袋(30cm四方、株式会社NBCメッシュテック製N−No.250HD)に入れ、脱水槽で5分間脱水し、パルプが保水している余剰水分を除去後、濃度1%のクエン酸水溶液(pH2.2)10Lの中に入れて、80mg/mのオゾンガス(1m中80mgがオゾン、残りは酸素)を30分間吹き込み処理を行った。30分後の処理水の溶存オゾン量は、30ppmで、pH2.4であった。目開き2mm×2mmのメッシュにて、処理水を漉しとった結果、SAPはなくなり、パルプのみを回収することができた。
回収されたパルプの灰分を、生理処理用品材料規格の「2.一般試験法」の「5.灰分試験法」により分析したところ、0.10質量%にまで低減することができていた。なお、実施例および比較例に用いた市販の紙おむつにもともと含まれていたパルプ(以下「未使用パルプ」ともいう。)の灰分は0.18質量%であった。この処理により、未使用パルプがもともと含んでいた微小な残留異物までも除去することが可能で、未使用パルプよりも灰分の少ないリサイクルパルプを得ることができた。
【0050】
実施例2
市販の紙おむつ(ユニ・チャーム社製「ムーニー」Mサイズ)を人工汚物を1%含む生理用食塩水3Lに10分間浸漬吸水させた後、濃度10%のクエン酸水溶液(pH1.6)に3分間浸漬し、おむつ中のSAPが酸の作用により脱水された状態にした。おむつを取り出し、メッシュ袋(30cm四方、株式会社NBCメッシュテック製N−No.250HD)に入れ、脱水槽で5分間脱水し、パルプが保水している余剰水分を除去後、濃度1%のクエン酸水溶液(pH2.2)10Lの中に入れて、80mg/mのオゾンガスを30分間吹き込み処理を行った。30分後の処理水の溶存オゾン量は、32ppmで、pH2.0であった。目開き2mm×2mmのメッシュにて、処理水を漉しとった結果、SAPはなくなり、パルプのみを回収することができた。
回収されたパルプの灰分を実施例1と同様に分析したところ、0.06質量%にまで低減することができていた。この処理により、未使用パルプよりも灰分の少ないリサイクルパルプを得ることができた。
【0051】
比較例1
市販の紙おむつ(ユニ・チャーム社製「ムーニー」Mサイズ)に生理用食塩水200mLを吸水させた後、紙おむつを2槽式小型洗濯機(アルミス社製「晴晴」AST−01)の洗濯層に8個投入し、続けて酸化カルシウム(CaO)(和光純薬工業株式会社製)を80gを投入し、その後、濃度250ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製次亜塩素酸ナトリウムを水道水で希釈したもの)6.5Lを加えた。15分間洗濯後に洗濯槽内の液を排水し、濃度250ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製次亜塩素酸ナトリウムを水道水で希釈したもの)6.5Lを新たに投入した。15分間洗濯後、水洗濯層内の液中に浮遊するパルプのみをすくい取り、メッシュ袋(25cm四方、株式会社NBCメッシュテック製N−No.250HD)に入れ、脱水槽で5分間脱水した。回収したパルプはメッシュ袋ごと水道水で15分間すすぎ洗いを行い、再び脱水槽で5分間脱水した。回収したパルプは105℃の熱風乾燥機で24時間乾燥させた。回収されたパルプの灰分を実施例1と同様に分析したところ、8.51質量%ときわめて多く、衛生材料基準に適合しないものであった。
【0052】
比較例2
市販の紙おむつ(ユニ・チャーム社製「ムーニー」Mサイズ)を人工汚物を1%含む生理用食塩水3Lに10分間浸漬吸水させた後、濃度1%のクエン酸水溶液(pH2.2)10Lの中に入れて、80mg/mのオゾンガスを30分間吹き込み処理を行った。30分後の処理水の溶存オゾン量は、1ppmで、pH3.0であった。この比較例では、オゾンが人工汚物の分解に消費されたために、30分後の処理水の溶存オゾン量が実施例1や実施例2に比べ低くなった。目開き2mm×2mmのメッシュにて、処理水を漉しとった結果、ゼリー状のSAPが多く残留し、パルプのみを回収することができなかった。回収されたパルプの灰分を実施例1と同様に分析したところ、0.55質量%と多かった。オゾン処理のCT値を高めなければ、SAP分解が進まず、この条件では、低品質パルプとなってしまう。オゾン処理する前に汚物を分離除去しておかないとオゾン処理効果が悪いことが分かる。
【0053】
実施例および比較例で回収されたパルプの灰分、吸水性能および保水性能を測定した結果を表1にまとめて示す。
なお、灰分、吸水性能および保水性能の測定方法は、次のとおりである。
ちなみに、実施例および比較例に用いた市販の紙おむつにもともと含まれていたパルプの灰分、吸収性能および保水性能は、0.18質量%、16.4g/gおよび7.60g/gであった。
【0054】
[灰分]
灰分とは、有機質が灰化されてあとに残った無機質または不燃性残留物の量をいう。灰分は、生理処理用品材料規格の「2.一般試験法」の「5.灰分試験法」に従って測定する。すなわち、灰分は、次のようにして測定する。
あらかじめ白金製、石英製または磁製のるつぼを500〜550℃で1時間強熱し、放冷後、その質量を精密に量る。試料2〜4gを採取し、るつぼに入れ、その質量を精密に量り、必要ならばるつぼのふたをとるか、またはずらし、初めは弱く加熱し、徐々に温度を上げて500〜550℃で4時間以上強熱して、炭化物が残らなくなるまで灰化する。放冷後、その質量を精密に量る。再び残留物を恒量になるまで灰化し、放冷後、その質量を精密に量り、灰分の量(%)とする。
【0055】
[吸水性能]
吸水性能とは、単位質量あたりのパルプ繊維が吸収する水の質量をいい、次のように測定する。
(1)ナイロンネット(株式会社NBCメッシュテック製250メッシュナイロンネット)の袋(200mm×200mm)を準備し、その質量N(g)を測定する。
(2)ナイロンネットに測定サンプル約5gを入れ、ナイロンネットの袋を含む質量A(g)を測定する。
(3)ビーカーに0.9%濃度の生理食塩水1Lを入れ、準備したサンプル入りのナイロンネットの袋を浸漬させ3分間放置する。
(4)袋を引き上げ、水切りネット上に3分間静置し、水切りする。
(5)サンプルの入ったナイロンネットの袋の水切り後の質量A(g)を測定する。
(6)同一のサイズにて切り出したナイロンネットをもう1セット準備し、サンプルを入れずに(3)、(4)を同様に実施し、水切り後のナイロンネットの袋のみの質量N(g)を測定する。
(7)次式により、吸水性能(g/g)を算出する。
吸水性能=(A−N−(A−N))/(A−N
(8)測定は10回行い、10回の測定値を平均する。
【0056】
[保水性能]
保水性能は、次のようにして測定する。
吸収性能測定後のサンプルを、遠心分離機(国産遠心株式会社製分離機、型H130、回転数850rpm=150G)にて、150Gで90秒間脱水後の質量B(g)を測定する。
保水性能=(B−N−(A−N))/(A−N
測定は10回行い、10回の測定値を平均する。
【0057】
【表1】
【0058】
[クエン酸と塩化カルシウムの高吸水性ポリマー脱水効果の検証]
市販の紙おむつ(ユニ・チャーム社製「ムーニー」Mサイズ)を生理用食塩水3Lに10分間浸漬させた後、引き上げ、直ちに、吸水した紙おむつの質量を測定し、吸水後質量とした。次いで、吸水した紙おむつを種々の濃度(質量%)のクエン酸水溶液または塩化カルシウム水溶液3Lに3分間浸漬させた後、引き上げ、直ちに質量を測定し、脱水後質量とした。脱水後質量/吸水後質量×100の値(以下単に「質量比率」ともいう。)を算出した。各濃度ごとにN=3で測定した結果の平均値を表2に示す。なお、表2には、各濃度のクエン酸水溶液または塩化カルシウム水溶液のpHも併せて示す。
【0059】
【表2】
【0060】
屎尿を吸水したSAPが処理槽内でさらに吸水膨張すると、体積が大きくなり過ぎ、処理が難しくなるため、質量比率は少なくとも100%より大きくならないことが重要で、より体積が小さくなるほど処理が簡単になり、処理効率が高まる。よって、質量比率は好ましくは100%以下、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは80%以下である。
【0061】
[人工汚物によるオゾン処理効率変化の検証]
処理水(クエン酸1%水溶液)10Lに高吸水性ポリマー29gおよび人工汚物100gを添加し、80mg/mのオゾンガスを30分間吹き込み処理を行った。30分後の処理水の溶存オゾン量は1.2ppmであり、高吸水性ポリマーの分解率は36%であった。
人工汚物を添加せずに、同様の処理を行ったところ、30分後の処理水の溶存オゾン量は25ppmであり、高吸水性ポリマーの分解率は99%であった。
排泄物を模した人工汚物を処理水中に添加した場合、汚物無しに比べ、処理溶液中の溶存オゾン濃度が低下するとともに、高吸水性ポリマーの解率が低下することが確認された。これはオゾンが汚物の分解に大量消費され、高吸水性ポリマーの分解が進み難くなっているためである。
本発明においては、高吸水性ポリマーが吸水膨張しない溶液中で、使用済み衛生用品を洗浄、分解し、主成分がパルプと残留高吸水性ポリマーになった後、オゾン処理を行うことで、効率的に処理を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の方法により製造されたリサイクルパルプは、再度、衛生用品の製造に好適に利用することができる。