【実施例】
【0034】
以下、本発明による亜酸化銅粉末およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0035】
[実施例1]
まず、1Lの反応槽内に48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液76.4gと純水323.6gを入れ、反応槽内の攪拌棒の回転数を441rpmに調整し、反応槽内の温度を27.6℃に調整して、アルカリ溶液を用意した。
【0036】
次に、硫酸銅5水和物93.4gを純水258.3gに溶解させた硫酸銅水溶液に、2価の鉄イオンとして硫酸鉄(II)7水和物(キシダ化学製)0.032gを添加した水溶液を、上記の反応槽内のアルカリ溶液に添加した後、10分間攪拌しながら熟成させて水酸化銅を析出させた。
【0037】
次に、還元剤としてブドウ糖100.9gを純水170.1gに溶解させて作製したブドウ糖水溶液を反応槽内のスラリーに添加し、1.2℃/分で70.6℃まで昇温させ、70.6℃の温度を30分間保持した後、攪拌を止め、吸引ろ過により固液分離を行い、その後、純水で洗浄して得られたケーキを一晩真空乾燥して、亜酸化銅粉末を得た。
【0038】
[実施例2〜9]
硫酸鉄(II)7水和物の添加量をそれぞれ0.100g(実施例2)、0.169g(実施例3)、0.240g(実施例4)、0.659g(実施例5)、1.357g(実施例6)、2.050g(実施例7)、2.751g(実施例8)、3.446g(実施例9)とした以外は、実施例1と同様の方法により、亜酸化銅粉末を得た。
【0039】
[実施例10]
まず、24Lの反応槽内に48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液2.23kgと純水8.33kgを入れ、反応槽内の攪拌棒の回転数を220rpmに調整し、反応槽内の温度を27.6℃に調整して、アルカリ溶液を用意した。
【0040】
次に、硫酸銅5水和物2.74kgを純水6.54kgに溶解させた硫酸銅水溶液に、2価の鉄イオンとして硫酸鉄(II)7水和物(キシダ化学製)2.181gを添加した水溶液を、上記の反応槽内のアルカリ溶液に添加した後、10分間攪拌しながら熟成させて水酸化銅を析出させた。
【0041】
次に、還元剤としてブドウ糖0.74kgを純水3.72kgに溶解させて作製したブドウ糖水溶液を反応槽内のスラリーに添加し、1.2℃/分で70.6℃まで昇温させ、70.6℃の温度を30分間保持して亜酸化銅を生成させた後、攪拌を止め、吸引ろ過により固液分離を行い、その後、純水で洗浄して得られたケーキを一晩真空乾燥して、亜酸化銅粉末を得た。
【0042】
[実施例11〜13]
硫酸鉄(II)7水和物の添加量をそれぞれ4.363g(実施例11)、8.725g(実施例12)、17.45g(実施例13)とした以外は、実施例10と同様の方法により、亜酸化銅粉末を得た。
【0043】
[比較例1]
硫酸鉄(II)7水和物を添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、亜酸化銅粉末を得た。
【0044】
[比較例2]
硫酸鉄(II)7水和物の代わりに、3価の鉄イオンとして硫酸鉄(III)n水和物(和光純薬工業株式会社製)の添加量を0.117gとした以外は、実施例1と同様の方法により、亜酸化銅粉末を得た。
【0045】
これらの実施例および比較例で得られた亜酸化銅粉末を電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)(日立製作所製のS−4700型)によって観察した5万倍のFE−SEM画像において、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(マウンテック社のMac−View Ver4)を用いて100個の粒子のHeywood径(投影面積円相当径)、すなわち、FE−SEM画像上の粒子の面積と同一の面積の円の直径を求めて、それらを算術平均することにより、50%粒径(SEM50%粒径)を求めた。なお、5万倍のFE−SEM画像では100個の粒子のHeywood径を求めることができない場合に、倍率を下げて撮影した画像を用いて粒子径を測定した。その結果、実施例1〜13、比較例1および2では、SEM50%粒径はそれぞれ0.50μm(実施例1)、0.27μm(実施例2)、0.26μm(実施例3)、0.20μm(実施例4)、0.13μm(実施例5)、0.09μm(実施例6)、0.06μm(実施例7)、0.06μm(実施例8)、0.06μm(実施例9)、0.33μm(実施例10)、0.24μm(実施例11)、0.17μm(実施例12)、0.12μm(実施例13)、0.81μm(比較例1)及び0.96μm(比較例2)であった。
【0046】
また、実施例および比較例で得られた亜酸化銅粉末の50%粒径(D
50)をレーザー回折式粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製のLS−230)を用いて測定した。なお、測定試料として、実施例および比較例で得られた亜酸化銅粉末と純水をレーザー回折式粒度分布測定装置に表示される偏向散乱強度(PIDS)が45〜55%になるようにビーカーに入れて超音波分散槽などにより十分に分散させて得られた液(濃度調整した液)を使用し、光学モデルとして、液体の屈折率の実数部を1.332、試料の屈折率の実数部を2.7、虚数部を0.01に設定した。その結果、実施例1〜13、比較例1および2では、50%粒径(D
50)はそれぞれ0.8μm(実施例1)、0.4μm(実施例2)、0.3μm(実施例3)、0.2μm(実施例4)、0.1μm(実施例5)、0.1μm(実施例6)、0.1μm(実施例7)、0.1μm(実施例8)、0.1μm(実施例9)、0.5μm(実施例10)、0.3μm(実施例11)、0.2μm(実施例12)、0.1μm(実施例13)、1.1μm(比較例1)および1.0μm(比較例2)であった。
【0047】
また、実施例および比較例で得られた亜酸化銅粉末中の鉄含有量を誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置(サーモ・ジャーレル・アッシュ社製のIRIS/AP)によって測定したところ、それぞれ90ppm(実施例1)、200ppm(実施例2)、270ppm(実施例3)、350ppm(実施例4)、882ppm(実施例5)、2400ppm(実施例6)、3800ppm(実施例7)、4600ppm(実施例9)、100ppm(実施例10)、190ppm(実施例11)、420ppm(実施例12)、810ppm(実施例13)、10ppm(比較例1)および140ppm(比較例2)であった。
【0048】
これらの結果を表1に示す。また、実施例および比較例において、溶液中の銅イオンの量に対する2価の鉄イオンの添加量とSEM50%粒径との関係を
図1に示し、亜酸化銅粉末中の鉄含有量とSEM50%粒径との関係を
図2に示し、亜酸化銅粉末中の鉄含有量と2価の鉄イオンの添加量との関係を
図3に示す。さらに、実施例5で得られた亜酸化銅粉末の5万倍のFE−SEM画像を
図4に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、実施例1〜13で得られた亜酸化銅粉末では、SEM50%粒径およびレーザー回折式粒度分布測定装置によって測定した50%粒径(D
50)が、比較例1および2と比べて小さく、また、50%粒径(D
50)がサブミクロン領域になっている。また、
図1に示すように、2価の鉄イオンの添加量が増加するに従って、得られる亜酸化銅粉末の粒径が小さくなり、2価の鉄イオンの添加量によって亜酸化銅粉末の粒径の調整が可能であることがわかる。また、
図2に示すように、亜酸化銅粉末の粒径が小さくなるに従って、亜酸化銅粉末中の鉄の含有量が多くなり、
図3に示すように、2価の鉄イオンの添加量が増加するに従って、得られる亜酸化銅粉末中の鉄の含有量が多くなり、2価の鉄イオンの添加量が亜酸化銅粉末の粒径に寄与することがわかる。
【0051】
[実施例14]
実施例10と同様の方法により、還元剤をスラリーに添加して亜酸化銅を生成させた後、2.3L/分の流量で空気を200分間バブリングさせて得られたスラリーを窒素雰囲気中で静置した。その後、上澄み液を除去し、純水2400gを加えてスラリーの重量を4800gに調整した。このスラリーを攪拌して温調しながら、純度80%の抱水ヒドラジン368.8g(ヒドラジン当量で2.15当量)を数回に分けて添加して銅粉を得た。具体的には、44℃で0.22当量のヒドラジンを添加した後、49℃まで昇温させ、合計で0.67当量のヒドラジンを分割して添加し、その後、0.25℃/分で83℃まで昇温させ、合計で1.26当量のヒドラジンを分割して添加して銅粉を得た。なお、このヒドラジン当量は、亜酸化銅を全て金属銅に還元するために要するヒドラジンの化学量論量を1当量としたときの、そのヒドラジンの化学量論量に対する割合であり、例えば、90分経過した時点でヒドラジンの添加量が0.1当量であれば、90分経過した時点で、亜酸化銅を全て金属銅に還元するために要するヒドラジンの化学量論量の1/10のヒドラジンを添加したことを意味する。
【0052】
[実施例15〜16]
硫酸鉄(II)7水和物の添加量をそれぞれ4.363g(実施例15)、8.725g(実施例16)とした以外は、実施例14と同様の方法により、銅粉を得た。
【0053】
[比較例3]
硫酸鉄(II)7水和物を添加しなかった以外は、実施例14と同様の方法により、銅粉を得た。
【0054】
実施例14〜16および比較例3で得られた銅粉の粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置(SYMPATIC社製のHELOS H0780)を用いて焦点距離20mmのレンズで測定し、10%粒子径(D
10径)、50%粒子径(D
50径)および90%粒子径(D
90径)を算出したところ、実施例14では、D
10=1.6μm、D
50=2.7μm、D
90=3.7μm、実施例15では、D
10=1.3μm、D
50=2.4μm、D
90=3.4μm、実施例16では、D
10=1.3μm、D
50=2.6μm、D
90=3.8μm、比較例3では、D
10=2.2μm、D
50=3.1μm、D
90=4.0μmであった。
【0055】
また、実施例14〜16および比較例3で得られた銅粉中の鉄含有量を誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置(サーモ・ジャーレル・アッシュ社製のIRIS/AP)によって測定したところ、それぞれ50ppm(実施例14)、170ppm(実施例15)、440ppm(実施例16)および2ppm(比較例3)であった。
【0056】
また、実施例14〜16および比較例3で得られた銅粉の酸素含有量を酸素・窒素分析装置(LECO社製のTC-436型)により測定したところ、それぞれ0.08質量%(実施例14)、0.10質量%(実施例15)、0.15質量%(実施例16)および0.11質量%(比較例3)であった。
【0057】
また、実施例14〜16および比較例3で得られた銅粉の炭素含有量を炭素・硫黄分析装置(堀場製作所製のEMIA-220V)により測定したところ、それぞれ0.05質量%(実施例14)、0.05質量%(実施例15)、0.07質量%(実施例16)および0.06質量%(比較例3)であった。
【0058】
さらに、実施例14〜16および比較例3で得られた銅粉のBET比表面積をBET比表面積測定装置(ユアサイオニクス株式会社製の4ソーブUS)を用いてBET法により求めたところ、それぞれ0.40m
2/g(実施例14)、0.49m
2/g(実施例15)、0.50m
2/g(実施例16)および0.36m
2/g(比較例3)であった。また、これらのBET比表面積から銅単体粒子の密度を8.9g/cm
2としてBET粒径を算出したところ、それぞれ1.7μm(実施例14)、1.4μm(実施例15)、1.4μm(実施例16)および1.9μm(比較例3)であった。
【0059】
これらの結果を表2に示す。
【0060】
【表2】