【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これによって何ら限定されるものではない。
【0031】
なお、実施例及び比較例で得られた試料の性能は、以下の方法により評価した。
【0032】
(1) 水溶液粘度
1L容のビーカーにイオン交換水475gを入れ、幅80mm、縦25mmの平板で先端周速が1.0m/sの条件下で攪拌しながら試料25gを投入し、攪拌を3時間継続することで5.0質量%水溶液を調製する。また、0.5質量%水溶液も同様に、1L容のビーカーにイオン交換水497.5gを入れ、幅80mm、縦25mmの平板で先端周速が1.0m/sの条件下で攪拌しながら試料2.5gを投入し、攪拌を3時間継続して調製する。
【0033】
得られた水溶液の粘度を、25℃の恒温槽に前記ビーカーごと30分以上浸し、B型回転粘度計(回転数12r/min、3分、25℃)により測定する(水溶液粘度A)。測定に使用したローターは、測定対象の粘度が500mPa・s未満の場合はローターNo.1であり、500mPa・s以上2,500mPa・s未満の場合はローターNo.2であり、2,500mPa・s以上10,000mPa・s未満の場合はローターNo.3であり、10,000mPa・s以上100,000未満の場合はローターNo.4である。
【0034】
(2) 粘度平均分子量
オストワールド粘度計を用いた極限粘度の値からStaudinger式を用いて粘度平均分子量を算出する。
【0035】
(3) 粘度保持率
上記(1)で用いた粉末状サンプルを40℃で30日間保管し、保管期間経過後の30日目の試料を用いた以外は、(1)と同様の方法により5.0質量%水溶液を調製し、測定した水溶液の粘度を水溶液粘度Bとする。
両者の水溶液粘度の値を用い、下記式から30日保存後の粘度保持率を算出する。なお、粘度保持率が80%以上であれば、分子量の低下が抑制されていると判断できる。
粘度保持率(%)=水溶液粘度B/水溶液粘度A×100
【0036】
[実施例1]
有機亜鉛/アルコール系触媒を用いて重合した、粘度平均分子量450万のポリエチレンオキシド50g及びn-ヘキサン230gを500ml容のセパラブルフラスコに仕込み、撹拌しながら、1体積%酸素含有窒素(1%O
2-N
2)45mL/minを通気しながら内温を45℃まで加熱した。次に、ラジカル発生剤として2,2’-アゾビス(2,4’-ジメチルバレロニトリル)0.005gを添加した後、45℃で5時間攪拌混合して、加熱処理した。このとき、溶媒(n-ヘキサン)中の溶存酸素濃度は2.9mg/Lであった。加熱処理終了後、処理液に、酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエン0.05gを添加し、n-ヘキサンを留去(除去)して白色粉末を得た。この粉末を分析したところ、水溶液粘度16700mPa.s(5.0質量%)、粘度平均分子量140万であった。
この粉末を40℃の恒温機で保存し、水溶液粘度の経時変化を測定したところ30日保存後で90%の粘度保持率を示した。
【0037】
[実施例2]
2,2’-アゾビス(2,4’-ジメチルバレロニトリル)の添加量を0.005gから0.025gに変更した以外は、実施例1と同様にして白色粉末を得た。この粉末を分析したところ、水溶液粘度835mPa.s(5.0質量%)、粘度平均分子量50万であった。
この粉末を40℃の恒温機で保存し、水溶液粘度の経時変化を測定したところ30日保存後で88%の粘度保持率を示した。
【0038】
[実施例3]
2,2’-アゾビス(2,4’-ジメチルバレロニトリル)の添加量を0.005gから0.250gに変更した以外は、実施例1と同様にして白色粉末を得た。この粉末を分析したところ、水溶液粘度167mPa.s(5.0質量%)、粘度平均分子量30万であった。
この粉末を40℃の恒温機で保存し、水溶液粘度の経時変化を測定したところ30日保存後で83%の粘度保持率を示した。
【0039】
[実施例4]
加熱処理時間を5時間から3時間に変更した以外は、実施例2と同様にして白色粉末を得た。この粉末を分析したところ、水溶液粘度6270mPa.s(5.0質量%)、粘度平均分子量100万であった。
この粉末を40℃の恒温機で保存し、水溶液粘度の経時変化を測定したところ30日保存後で88%の粘度保持率を示した。
【0040】
[実施例5]
加熱処理時間を5時間から1時間に変更した以外は、実施例2と同様にして白色粉末を得た。この粉末を分析したところ、水溶液粘度30500mPa.s(5.0質量%)、粘度平均分子量175万であった。
この粉末を40℃の恒温機で保存し、水溶液粘度の経時変化を測定したところ30日保存後で82%の粘度保持率を示した。
【0041】
[実施例6]
粘度平均分子量450万のポリエチレンオキシドの代わりに粘度平均分子量850万のポリエチレンオキシドを使用した以外は、実施例2と同様にして白色粉末を得た。この粉末を分析したところ、水溶液粘度2040mPa.s(5.0質量%)、粘度平均分子量70万であった。
この粉末を40℃の恒温機で保存し、水溶液粘度の経時変化を測定したところ30日保存後で90%の粘度保持率を示した。
【0042】
[実施例7]
粘度平均分子量450万のポリエチレンオキシドの代わりに粘度平均分子量520万のポリエチレンオキシドを使用し、加熱処理温度を45℃から35℃に変更した以外は、実施例2と同様にして白色粉末を得た。この粉末を分析したところ、水溶液粘度38200mPa.s(5.0質量%)、粘度平均分子量190万であった。
この粉末を40℃の恒温機で保存し、水溶液粘度の経時変化を測定したところ30日保存後で85%の粘度保持率を示した。
【0043】
[実施例8]
加熱処理温度を35℃から40℃に変更した以外は、実施例7と同様にして白色粉末を得た。この粉末を分析したところ、水溶液粘度8240mPa.s(5.0質量%)、粘度平均分子量110万であった。
この粉末を40℃の恒温機で保存し、水溶液粘度の経時変化を測定したところ30日保存後で88%の粘度保持率を示した。
【0044】
[実施例9]
加熱処理温度を35℃から45℃に変更した以外は、実施例7と同様にして白色粉末を得た。この粉末を分析したところ、水溶液粘度1470mPa.s(5.0質量%)、粘度平均分子量60万であった。
この粉末を40℃の恒温機で保存し、水溶液粘度の経時変化を測定したところ30日保存後で92%の粘度保持率を示した。
【0045】
[実施例10]
加熱処理温度を35℃から50℃に変更した以外は、実施例7と同様にして白色粉末を得た。この粉末を分析したところ、水溶液粘度335mPa.s(5.0質量%)、粘度平均分子量40万であった。
この粉末を40℃の恒温機で保存し、水溶液粘度の経時変化を測定したところ30日保存後で91%の粘度保持率を示した。
【0046】
[実施例11]
有機亜鉛/アルコール系触媒を用いて重合した、粘度平均分子量850万のポリエチレンオキシド50g及びn-ヘキサン230gを500ml容のセパラブルフラスコに仕込み、撹拌しながら、0.1体積%酸素含有窒素(0.1%O
2-N
2)45mL/minを通気しながら内温を45℃まで加熱した。次に、2,2’-アゾビス(2,4’-ジメチルバレロニトリル)0.025gを添加した後、45℃で5時間攪拌混合して、加熱処理した。このとき、溶媒(n-ヘキサン)中の溶存酸素濃度は0.5mg/Lであった。加熱処理終了後、処理液に、ジブチルヒドロキシトルエン0.05gを添加し、n-ヘキサンを留去して白色粉末を得た。この粉末を分析したところ、水溶液粘度6230mPa.s(5.0質量%)、粘度平均分子量100万であった。
この粉末を40℃の恒温機で保存し、水溶液粘度の経時変化を測定したところ30日保存後で88%の粘度保持率を示した。
【0047】
[比較例1]
有機亜鉛/アルコール系触媒を用いて重合した、粘度平均分子量850万のポリエチレンオキシド50g及びn-ヘキサン230gを500ml容のセパラブルフラスコに仕込み、撹拌しながら、純窒素45mL/minを通気しながら内温を45℃まで加熱した。次に、2,2’-アゾビス(2,4’-ジメチルバレロニトリル)0.025gを添加した後、45℃で5時間攪拌混合して、加熱処理した。このとき、溶媒(n-ヘキサン)中の溶存酸素濃度は0.0mg/Lであった。加熱処理終了後、処理液に、ジブチルヒドロキシトルエン0.05gを添加し、n-ヘキサンを留去して白色粉末を得た。この粉末を分析したところ、5.0質量%水溶液では測定できなかったため、0.5質量%水溶液で測定したところ、水溶液粘度285mPa.s(0.5質量%)、粘度平均分子量420万までしか分子量が低下しなかった。
【0048】
[比較例2]
2,2’-アゾビス(2,4’-ジメチルバレロニトリル)の添加量を0.025gから0.0004gに変更した以外は、実施例9と同様にして白色粉末を得た。この粉末を分析したところ、5.0質量%水溶液では測定できなかったため、0.5質量%水溶液で測定したところ、水溶液粘度295mPa.s(0.5質量%)、粘度平均分子量420万までしか分子量が低下しなかった。
【0049】
[比較例3]
2,2’-アゾビス(2,4’-ジメチルバレロニトリル)の添加量を0.025gから0.750gに変更し、加熱処理時間を5時間から1時間に変更した以外は、実施例9と同様にして白色粉末を得た。この粉末を分析したところ、水溶液粘度3120mPa.s(5.0質量%)、粘度平均分子量80万であった。
この粉末を40℃の恒温機で保存し、水溶液粘度の経時変化を測定したところ30日保存後で30%の粘度保持率しか示さなかった。
【0050】
[比較例4]
加熱処理温度を35℃から25℃に変更した以外は、実施例7と同様にして白色粉末を得た。この粉末を分析したところ、5.0質量%水溶液では測定できなかったため、0.5質量%水溶液で測定したところ、水溶液粘度410mPa.s(0.5質量%)、粘度平均分子量480万までしか分子量が低下しなかった。
【0051】
[比較例5]
有機亜鉛/アルコール系触媒を用いて重合した、粘度平均分子量850万のポリエチレンオキシド50g及びn-ヘキサン230gを500ml容のセパラブルフラスコに仕込み、撹拌しながら、1.0体積%酸素含有窒素(1%O
2-N
2)45mL/minを通気しながら内温を45℃まで加熱した。次に、2,2’-アゾビス(2,4’-ジメチルバレロニトリル)0.025gを添加した後、45℃で5時間攪拌混合して、加熱処理した。このとき、溶媒(n-ヘキサン)中の溶存酸素濃度は2.9mg/Lであった。加熱処理終了後、処理液に、ジブチルヒドロキシトルエンを添加せずに、n-ヘキサンを留去して白色粉末を得た。この粉末を分析したところ、水溶液粘度50mPa・s(5.0質量%)、粘度平均分子量20万であった。
この粉末を40℃の恒温機で保存し、水溶液粘度の経時変化を測定したところ30日保存後で17%の粘度保持率しか示さなかった。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例6と比較例1の結果より、スラリー中の溶存酸素が0.5mg/Lより小さい場合、分子量の低下効果がほとんど得られないことがわかる。
実施例9と比較例2の結果より、ラジカル発生剤の添加量がポリアルキレンオキシド100質量部に対して0.001質量部より小さい場合、分子量の低下効果がほとんど得られないことがわかる。
実施例9と比較例3の結果より、ラジカル発生剤の添加量がポリアルキレンオキシド100質量部に対して1質量部より大きい場合、40℃-30日保存後の粘度保持率が悪化することがわかる。
【0054】
実施例9及び実施例7と比較例4の結果より、処理温度が35℃より低い場合、分子量の低下効果がほとんど得られないことがわかる。
実施例6と比較例5の結果より、酸化防止剤の添加量がポリアルキレンオキシド100質量部に対して0.001質量部より小さい場合、分子量の低下が進み過ぎてしまい溶媒留去後の粘度が低くなりすぎてしまうだけでなく、30日保存後の粘度保持率が悪化することがわかる。
なお、比較例1、2及び4に関しては、5.0質量%の水溶液粘度を測定することができなかったので、40℃-30日保存後の粘度保持率を算出することができなかった。